ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、光学中心がレンズ幾何中心から偏倚して設けられることによりQOVの向上が図られたコンタクトレンズであって、左眼用と右眼用の区別なく製造して取扱うことが可能であると共に、光学中心の偏倚方向を示すマーク等も不要とされた新規な構造のコンタクトレンズを提供することにある。
以下、前述の課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の第一の態様の特徴とするところは、レンズ中央部分に位置する光学領域に、互いに異なるレンズ度数が設定された第一の度数領域と第二の度数領域が設けられたコンタクトレンズであって、前記第一の度数領域が一つのレンズ径方向線である対称径線に関して線対称に一対設けられていると共に、それら一対の第一の度数領域の外周側に前記第二の度数領域が設けられて、前記光学領域が全体として該対称径線に関して線対称形状とされており、更に、装用状態で前記対称径線が装用眼の上下方向にのびて該一対の第一の度数領域の何れか一方が該装用眼の瞳孔中心に対して位置合わせされるように、装用状態での瞳孔中心に対する該光学領域の左右方向への偏倚量に対応して該一対の第一の度数領域の光学中心が該対称径線の両側にそれぞれ離隔して偏倚されていると共に、レンズ周方向の安定位置を与える周方向位置決め手段が設けられているコンタクトレンズにある。
本発明に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、装用状態下で略鉛直方向にのびる径方向線に関して左右両側で線対称に第一及び第二の度数領域が設けられている。それ故、コンタクトレンズが左右眼の何れに装用されて、コンタクトレンズの幾何中心が瞳孔中心に対して左右の何れの側に偏倚した場合でも、略同様な見え方の質が発揮され得る。その結果、左眼用と右眼用とで各別に規格化して製造、管理等する必要がなくなり、コンタクトレンズのメーカーやユーザーの負担が軽減される。特に、本発明に係るコンタクトレンズでは、左右の別規格が不要とされることから、例えば見込み生産でレンズを提供する場合でも、在庫量を従来の半分にすることが出来て、製造や管理に要する必要コストを大幅に軽減することが可能になる。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域が近方視用の視力矯正度数を有する一方、前記第二の度数領域が遠方視用の視力矯正度数を有するものである。
また、本発明の第三の態様は、前記第一の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域が遠方視用の視力矯正度数を有する一方、前記第二の度数領域が近方視用の視力矯正度数を有するものである。
かかる第二、第三の態様のコンタクトレンズでは、レンズ幾何中心が瞳孔中心に対して耳側に偏倚した装用状態下で、例えば作業灯のもとでの読書やコンピューターモニター視での入力作業などに伴う近方視に際して瞳孔径が絞られて小径化しても、レンズ幾何中心に対して左右線対称に設けられた一対の第一の度数領域の一方、或いは第二の度数領域が瞳孔内に安定して位置せしめられ得る。一方、例えば夜間の車両運転などに伴う遠方視に際しては、瞳孔径が開いて大径化することから、第一の度数領域および第二の度数領域が瞳孔内に十分な面積をもって位置せしめられることとなり、同時視型のコンタクトレンズとして、第一の度数領域および第二の度数領域による矯正効果が有効に発揮され得る。
本発明の第四の態様は、前記第一の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域が明所視用の視力矯正度数を有する一方、前記第二の度数領域が暗所視用の視力矯正度数を有するものである。
本態様のコンタクトレンズでは、レンズ幾何中心が瞳孔中心に対して耳側に偏倚した装用状態下で、明所視に際して瞳孔径が絞られて小径化しても、コンタクトレンズ幾何中心に対して左右線対称に設けられた一対の第一の度数領域の一方が瞳孔内に安定して位置せしめられ得る。一方、暗所視に際しては、瞳孔径が開いて大径化することから、第一の度数領域に加えて第二の度数領域も瞳孔内に十分な面積をもって位置せしめられることとなり、同時視型のコンタクトレンズとして、第二の度数領域による矯正効果も有効に発揮され得る。なお、明所視状態は、例えば昼間の屋外等における環境下であり、人種や個人差にもよるが一般に2〜3mm程度の瞳孔径となる。
本発明の第五の態様は、前記第二の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域には、前記第二の度数領域に対して+0.25〜+4.0ディオプターの付加度数が設定されているものである。
また、本発明の第六の態様は、前記第三の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第二の度数領域には、前記第一の度数領域に対して+0.25〜+4.0ディオプターの付加度数が設定されているものである。
かかる第五の態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域を近方視用とすると共に第二の度数領域を遠方視用とした、同時視型の例えば老視矯正用のコンタクトレンズが効果的に実現され得る。具体的には、例えば第二の度数領域が−3.0Dの場合、第一の度数領域は−2.75D〜+1.0Dの範囲内で設定されることとなる。
あるいは、かかる第六の態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域を遠方視用とすると共に第二の度数領域を近方視用とした、同時視型の例えば老視矯正用のコンタクトレンズが効果的に実現され得る。具体的には、例えば第一の度数領域が−3.0Dの場合、第二の度数領域は−2.75D〜+1.0Dの範囲内で設定されることとなる。
本発明の第七の態様は、前記第一〜六の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記対称径線に関してレンズ全体が線対称形状とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、装用状態で上下方向にのびる対称径線に関して、光学領域だけでなく周辺部を含めた全体形状が線対称とされていることから、光学特性だけでなく装用感等についても、左右眼の何れに装用しても同等の特性を発揮することとなる。
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記光学領域が、前記対称径線に直交する直交径線に関しても線対称とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、装用状態での左右方向だけでなく上下方向にも線対称な光学特性が発揮されることから、特にユーザーの装用に際しての取扱いが一層容易となる。また、装用時に上下方向を特定する必要がなくなることから、周方向位置決め手段として上下方向の区別なく位置決め可能な構成を採用することも可能となり、設計自由度も大きくなる。
本発明の第九の態様は、前記第八の態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記周方向位置決め手段が、装用状態で前記対称径線方向の両端の何れが上方に位置するかの区別なく、上下反転位置となる周上の2方向においてレンズ周方向の安定位置をそれぞれ与えるようにされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、周上の2方向で安定位置が与えられることから、ユーザーが方向を特別に意識することなく眼に装用しても、目的とする安定位置に一層速やかに導かれて目的とする視力補正等の効果が発揮されることとなる。
本発明の第十の態様は、前記第一〜八の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記周方向位置決め手段が、装用状態で前記対称径線方向における特定の一端が上方に位置するように、周上の1方向においてレンズ周方向の安定位置を与える構成とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、周上の1方向で安定位置が与えられることから、例えば光学領域及び/又は周辺部分において、対称径線に直交する直交径線に関して上下非対称の形状を採用する場合でも、ユーザーは上下を意識することなく装用して、目的とする視力補正効果や装用感等を安定して得ることが可能になる。
本発明の第十一の態様は、前記第一〜七の何れかの態様に係るコンタクトレンズであって、前記対称径線に直交する直交径線によって仕切られた両側領域の何れか一方の側に前記一対の第一の度数領域が偏倚して設けられることにより、前記光学領域が該直交径線に関して非対称とされていると共に、前記周方向位置決め手段が、装用状態で前記対称径線方向における特定の一端が上方に位置するように、周上の1方向においてレンズ周方向の安定位置を与えるものとされているコンタクトレンズである。
本態様のコンタクトレンズでは、装用状態でのコンタクトレンズの幾何中心に対する瞳孔中心の偏倚方向や偏倚量を考慮して、装用状態での左右方向だけでなく上下方向においても、コンタクトレンズにおける第一の度数領域の中心位置を一層適切に設定することが可能になる。具体的には、例えばデスクワークや読書等の近方視作業に際しては、装用状態でのコンタクトレンズの幾何中心に対して瞳孔中心が鼻側下方に偏倚し易いことを考慮して、近方視用の光学特性を設定した第一の度数領域を、直交径線に対して装用状態で下方に偏倚して設定することが可能になり、それによって、近方視作業に際してより適切な視力補正効果等を提供することが可能になる。
本発明の第十二の態様は、前記第一〜十一の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記一対の第一の度数領域が相互に離隔して設けられているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、装用状態のコンタクトレンズにおいて左右方向で相互に離隔して一対の第一の度数領域が設けられていることから、何れの第一の度数領域上に瞳孔中心が位置する場合でも、第一の度数領域の外周の全周に亘って第二の度数領域または第一の度数領域から第二の度数領域への移行領域を設定することが可能になる。それ故、第一の度数領域だけでなく第二の度数領域、または、第一の度数領域と第二の度数領域との間のレンズ度数が設定された移行領域による光学特性も、一層効果的に得ることが可能になる。
本発明の第十三の態様は、前記第十二の態様に係るコンタクトレンズであって、相互に離隔して設けられた前記一対の第一の度数領域において、装用状態で前記瞳孔中心上に位置せしめられる一方の該第一の度数領域に対して他方の該第一の度数領域による影響が実質的に回避されるように、装用状態でのレンズ安定位置に対する該瞳孔中心のずれ量に応じて該一対の第一の度数領域における相互間の離隔距離が設定されているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、装用状態で一方の第一の度数領域上に瞳孔中心が位置する場合に、他方の第一の度数領域による見え方への悪影響が一層効果的に防止されて、一層優れた見え方の質が実現される。なお、コンタクトレンズの直交径線方向において、一対の第一の度数領域における相互間の離隔距離Lは、0.10mm以上とすることが望ましく、より好適には0.30mm以上とされる。
本発明の第十四の態様は、前記第一〜十三の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記一対の第一の度数領域における幾何中心点が、前記対称径線に対して0.30mm〜4.0mmの偏倚量をもって、該対称径線に対して互いに反対側に偏倚せしめられているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、平均的な人眼において、角膜形状等によるコンタクトレンズの角膜中心からの偏倚量と人眼における光学に対する視軸の偏倚量(角膜中心に対する瞳孔中心の偏倚量)を考慮して、第一の度数領域によって良好なQOVを与え得るコンタクトレンズを提供することができる。なお、かかる偏倚量が0.30mm〜4.0mmの領域を外れると、瞳孔径が小さくなった状況下での第一の度数領域による光学作用が十分に発揮され難くなったり、瞳孔径が大きくなった状況下で他方の第一の度数領域による悪影響を受けたりして、見え方の質が低下してしまうおそれがある。
本発明の第十五の態様は、前記第一〜十四の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域が1.0〜2.5mmの外径寸法とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域による光学的作用を安定して一層効果的に享受することができる。
本発明の第十六の態様は、前記第一〜十五の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記一対の第一の度数領域が円形領域とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域が円形外周形状とされることにより、略円形である瞳孔外周形状と対応することとなる。その結果、瞳孔内の略中央部分における第一の度数領域による光学特性や、瞳孔内の略外周部分における第二の度数領域による光学特性が、各度数領域の有効面積を効率的に確保し得ることにより一層効果的に発揮され得ることとなる。
本発明の第十七の態様は、前記第一〜十五の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記一対の第一の度数領域が楕円形領域とされているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、例えば第一の度数領域において装用時の各方向の外径寸法を相対的に異ならせることができる。それ故、例えば第一の度数領域の外径寸法を上下方向より左右方向で大きくすることにより、装用時のレンズ幾何中心に対する瞳孔中心の左右方向への偏倚量の個人差が大きい場合でも良好に対応できるようにすること等も可能になる。
本発明の第十八の態様は、前記第一〜十七の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域と前記第二の度数領域との間には、該第一の度数領域のレンズ度数と該第二の度数領域のレンズ度数との間のレンズ度数が設定された移行領域が設けられているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域および第二の度数領域におけるチューニング対象とされた視認距離の中間領域における見え方の質が、移行領域の光学特性によって向上され得る。また、移行領域を設けたことにより、第一の度数領域と第二の度数領域との境界部分の光学的悪影響によって発生する見え方の質の低下も軽減され得る。なお、かかる移行領域における、第一の度数領域と第二の度数領域との中間のレンズ度数は、例えば以下の第十九〜二十一の何れかの態様をもって設定されるのが好ましい。
本発明の第十九の態様は、前記第十八の態様に係るコンタクトレンズであって、前記移行領域において、前記第一の度数領域のレンズ度数から前記第二の度数領域のレンズ度数に向かって漸次に変化するレンズ度数が設定されてプログレッシブ構造とされているものである。
本発明の第二十の態様は、前記第十八の態様に係るコンタクトレンズであって、前記移行領域において、前記第一の度数領域のレンズ度数から前記第二の度数領域のレンズ度数に向かって段階的に変化する複数段階のレンズ度数が設定されてマルチフォーカル構造とされているものである。
本発明の第二十一の態様は、前記第十八の態様に係るコンタクトレンズであって、前記移行領域において、全体に亘って一定のレンズ度数が設定されているものである。
なお、本発明では、第一の度数領域と第二の度数領域に設定されるレンズ度数の少なくとも一方が次第に変化する態様も採用される。即ち、本発明の第二十二の態様は、前記第一〜二十一の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記第一の度数領域のレンズ度数と前記第二の度数領域のレンズ度数の少なくとも一方において、漸次に変化するレンズ度数が設定されて、前記光学領域がプログレッシブ構造とされているものである。
本発明の第二十三の態様は、前記第十八〜二十一の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、互いに離隔して設けられた前記一対の第一の度数領域の間には、前記移行領域が設けられており、該移行領域を介して該一対の第一の度数領域が接続状態で位置せしめられているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域の外周側の全周に亘って移行領域が設けられていることから、移行領域の光学特性による前述の如き見え方の質の向上効果を一層有利に得ることが可能になる。
本発明の第二十四の態様は、前記第一〜二十三の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、前記一対の第一の度数領域が何れも全周に亘って前記第二の度数領域で取り囲まれており、互いに離隔して設けられた該一対の第一の度数領域の間にも該第二の度数領域が設けられているものである。
本態様のコンタクトレンズでは、第一の度数領域の外周側の全周に亘って第二の度数領域が設けられていることから、第一の度数領域だけでなく第二の度数領域の光学特性による見え方の質の更なる向上が図られ得る。
本発明の第二十五の態様は、前記第一〜二十四の何れかの態様に係るコンタクトレンズにおいて、乱視矯正用のレンズ度数が設けられてトーリックレンズとされているものでる。
本発明におけるコンタクトレンズは、老視のみを矯正するコンタクトレンズに限定されず、例えば乱視矯正用のレンズ度数が設けられた老視用トーリックレンズとしても採用され得る。
本発明に従う構造とされたコンタクトレンズにおいては、左右眼の何れに装用されてレンズ幾何中心が瞳孔中心に対して左右の何れの側に偏倚した装用状態下でも、左右対称に設けられた一対の第一の度数領域の何れかが、瞳孔中心と略同じ位置に設定され得る。それ故、装用状態下でのレンズ幾何中心の瞳孔中心に対する偏倚を考慮してレンズ幾何中心に対して第一の度数領域を偏倚設定するに際しても、左右を区別する必要がなくなる。その結果、左眼用と右眼用とで各別に規格化して製造、管理等する必要もなく、また、光学中心の偏倚方向を示すマーク等も不要となり、装用時の瞳孔中心に対する偏倚量を予め考慮してレンズ幾何中心に対して偏倚設定された第一の度数領域と、その外周の第二の度数領域によって発揮される優れた光学特性を効果的に享受することが可能になるのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜2には、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズ10が示されている。このコンタクトレンズ10は、図1に示す正面視においてレンズ幾何中心12を通る中心軸回りの円形外周縁を有しており、全体として略球冠形状とされている。そして、良く知られているように、湾曲凹面形状のレンズ後面において眼球の角膜の表面に重ね合わせて装用されるようになっている。
なお、本実施形態のコンタクトレンズ10は、ハードタイプとソフトタイプ、複合タイプの何れでも良く、その材料は何等限定されるものでない。例えば、ハードタイプとしては、シリコーン含有成分等の共重合成分とレンズ形成用モノマーとの重合体材料からなる酸素透過性材料(RGP)からなるコンタクトレンズ等に適用可能である。また、ソフトタイプとしては、例えば、PHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)やPVP(ポリビニルピロリドン)等の含水性材料の他、アクリルゴムやシリコーン等の非含水性材料からなるコンタクトレンズ等に適用可能である。更に、それらハードタイプの材料とソフトタイプの材料を、例えば中央部分と外周部分とで使い分けた複合タイプのコンタクトレンズ等にも適用可能である。
かかるコンタクトレンズ10は、レンズ幾何中心12を中心とする中央部分に略円形状の光学領域14を有しており、光学領域14の外周側には略円環形状の周辺部16が設けられている。また、周辺部16の外周には、レンズ前後面を滑らかに繋ぐエッジ部18が円環形状をもって形成されている。光学領域14は、レンズ装用者の眼光学系に光学作用を及ぼす光学特性を備えており、所定のレンズ度数が設定されている。周辺部16は、眼光学系への光学作用を直接に及ぼすものでないが、角膜上でのレンズ安定性や装用感等を満足させることができるように所定の内外面形状を備えている。
光学領域14には、互いに異なるレンズ度数が設定された第一の度数領域20と第二の度数領域22が設けられている。光学領域14は、これら第一の度数領域20と第二の度数領域22とにより、眼光学系に対して、同時視型の矯正作用を発揮するものであり、特に本実施形態では、近方視と遠方視との両方に対応した光学特性を与えることにより老視矯正用のコンタクトレンズを提供するものである。
具体的には、図1に示されたレンズ正面視において、円形とされた第一の度数領域20が、一対設けられている。これら一対の第一の度数領域20,20は、互いに同一の光学特性および形状をもって形成されている。そして、レンズ幾何中心軸12を通って図1中の上下方向に延びる対称径線24に関して、一対の第一の度数領域20,20が線対称に設けられている。
換言すれば、一対の第一の度数領域20,20は、その外形中心26,26が、レンズ幾何中心12を挟んだ両側にそれぞれ偏倚量δだけ離れて設定されている。また、第一の度数領域20の外径寸法φR1は、2δ≧R1とされており、特に本実施形態では、2δ>R1とされている。
さらに、各第一の度数領域20の外周側には、移行領域としての移行部28が設けられている。この移行部28には、第一の度数領域20のレンズ度数と第二の度数領域22のレンズ度数との中間のレンズ度数が設定されている。
そして、光学領域14において、これら一対の第一の度数領域20,20とそれぞれの移行部28,28とを囲むようにして広がる外周領域が、全体に亘って第二の度数領域22とされている。
特に、本実施形態では、一対の第一の度数領域20,20の外形中心26,26が、レンズ幾何中心12を通って且つ対称径線24に直交する直交径線30上に設定されている。これにより、光学領域14に設定された光学特性が、対称径線24に関して線対称とされていると共に、直交径線30に関しても線対称とされている。
また、本実施形態では、移行部28が、第一の度数領域20の外周を全周に亘って一定の径方向幅寸法B1で延びる円環形状とされている。更にまた、本実施形態では、直交径線30方向において、対称径線24を挟んで位置する一対の第一の度数領域20,20は相互に離隔して設けられており、かかる離隔距離L1が、L1>(2×B1)とされている。これにより、一対の第一の度数領域20,20の間にはそれぞれの外周に設けられた移行部28,28が位置しており、かかる移行部28,28の間に位置して第二の度数領域22が設けられている。要するに、各第一の度数領域20,20の外周には、各移行部28,28と第二の度数領域22が何れも全周に亘って取り囲むようにして設けられており、各移行部28,28と第二の度数領域22を介してそれぞれの第一の度数領域20,20が接続状態で位置している。
ここにおいて、第一の度数領域20の外径寸法φR1や対称径線24に対する外形中心26の偏倚量δ、移行部28の径方向幅寸法B1等は、コンタクトレンズ10の装用状態を考慮して設定される。即ち、装用状態下では、角膜等の表面形状などに応じてコンタクトレンズ10が角膜上で耳側に偏倚して安定位置することや、眼光学系の光学中心軸上に位置する瞳孔中心が角膜中心に対して鼻側に偏倚していることなどにより、コンタクトレンズ10のレンズ幾何中心12に対して瞳孔中心32が偏倚して位置する。
具体的には、図1を装用状態におけるレンズ前面側からの正面視として、右側が鼻側で左側が耳側とすると、レンズ幾何中心12に対して瞳孔34の中心32が右側にずれて位置することとなる。そして、本実施形態のコンタクトレンズ10では、この装用状態でのレンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の右側へのずれ量に対応する距離が、レンズ幾何中心12に対する第一の度数領域20の偏倚量δに設定されている。従って、一対の第一の度数領域20,20は、かかる偏倚量δをもって、対称径線24に対して相互に反対側に偏倚されている。
要するに、図1が装用状態の正面視として、左右方向となる直交径線30方向において、瞳孔中心32と第一の度数領域20の外形中心26との偏倚量Xが略0となるように設定される。なお、後述する第二の実施形態以降では、瞳孔34および瞳孔中心32、偏倚量Xの図示を省略する。ここで、装用状態における瞳孔中心32のレンズ幾何中心12からの直交径線30方向での偏倚量は、僅かな個人差はあるものの例えば統計的に求めることが可能である。コンタクトレンズ10の後面形状によっても少しの相違はあるが、一般にレンズ幾何中心12に対する第一の度数領域20の偏倚量δは、1mm〜1.5mm程度とされる。従って、本実施形態において、好適にはδの値が、0.3mm≦δ≦4.0mmの範囲内に設定されて、更に好適には0.8mm≦δ≦2.0mmの範囲内に設定される。
また、想定されるコンタクトレンズ10の用途範囲において、瞳孔34の径寸法(瞳孔径)φAが小さくなる明所視では、瞳孔34内の多くの領域が一方の第一の度数領域20で占められることが望ましい。かかる第一の度数領域20に明所視用の矯正レンズ度数が設定されることにより、明所視において第一の度数領域20の光学特性による視力矯正効果を安定して享受できる。好適には明所視の瞳孔34内の50%以上が第一の度数領域20で占められることとなり、一層好適には瞳孔34内の70%以上が第一の度数領域20で占められることとなる。
また一方、想定されるコンタクトレンズ10の用途範囲において、瞳孔径φAが大きくなる暗所視では、一方の第一の度数領域20の略全体が瞳孔34内に含まれると共に、移行部28および第二の度数領域22も、瞳孔34内の所定領域を占めるようにされる。かかる第二の度数領域22に暗所視用の矯正レンズ度数が設定されることにより、暗所視において第二の度数領域22の光学特性による視力矯正効果を安定して享受できる。好適には暗所視の瞳孔34内の40%以上が第二の度数領域22で示されることとなり、一層好適には瞳孔34内の60%以上が第二の度数領域22で占められることとなる。
また、瞳孔径φAが大きくなる暗所視でも、他方の第一の度数領域20は一方の第一の度数領域20に実質的に影響を与えないことが望ましい。具体的には、暗所視の環境下でも、瞳孔34内に含まれる他方の第一の度数領域20の大きさが、瞳孔34の20%以下とされることが望ましく、より好適には瞳孔34の10%以下に抑えられる。
上述の如き明所視および暗所視の光学特性を効果的に得るために、一般的な使用環境下では瞳孔径φAの統計情報により、第一の度数領域20の外径寸法φR1は、1.0mm≦R1≦2.5mmの範囲内に決定されることが望ましく、より好ましくは1.2mm≦R1≦2.0mmの範囲内に決定される。また、直交径線30方向における一対の第一の度数領域20,20の離隔距離L(図1中ではL1)は、好適には0.10mm以上とされて、更に好適には0.30mm以上とされる。これにより、一方の第一の度数領域20が瞳孔34上に位置せしめられ得ると共に、他方の第一の度数領域20による見え方の質(QOV)への影響が実質的に回避され得る。なお、かかる離隔距離L1は、装用状態でのレンズ安定位置におけるレンズ幾何中心12に対する第一の度数領域20の偏倚量δに応じて設定されることが望ましい。具体的には、暗所視においても他方の第一の度数領域20が瞳孔34内に含まれない場合は、瞳孔径の最大値をφA’とすると、L1+2δ≧φA’となるように設定される。
さらに、本実施形態のコンタクトレンズ10では、第一の度数領域20と第二の度数領域22との間に設けられた移行部28において、中間レンズ度数が設定されている。例えば図3に示されているように、第一の度数領域20に近方視用の視力矯正度数である近用レンズ度数α(ディオプター)が設定されており、第二の度数領域22に遠方視用の視力矯正度数である遠用レンズ度数β(ディオプター)が設定されているとすると、移行部28の中間レンズ度数γ(ディオプター)は、β<γ<αとされる。具体的には、中間レンズ度数γは、近用レンズ度数αから遠用レンズ度数βまで直線的に無段階に変化している。
尤も、移行部28におけるレンズ度数の設定態様は限定されるものでない。例えば上述のように移行部28の全体が第一の度数領域20と第二の度数領域22の間を連続的に接続して、実質的に第一及び第二の度数領域20,22からなる、移行部28を有するバイフォーカル構造のコンタクトレンズ10とする他、図4又は図5に示されている如きレンズ度数の設定も可能である。
すなわち、図4(a)に示されたレンズ度数の設定態様では、移行部28の全体に一定の中間レンズ度数γを設定している。これにより、コンタクトレンズ10における第一の度数領域20、移行部28、第二の度数領域22には、それぞれの領域において一定とされるレンズ度数α、γ、βが設定される。具体的には、第一の度数領域20のレンズ度数αを+1.0D、第二の度数領域22のレンズ度数βを−3.0Dとすると、移行部28のレンズ度数γは、−3.0D≦γ≦+1.0Dの範囲内で、例えばレンズ度数γは−1.5Dに設定される。このように、かかるコンタクトレンズ10は、レンズ度数が一定とされる移行部28を備えたマルチフォーカル構造のコンタクトレンズとされる。
また、図4(b)に示されたレンズ度数の設定態様は、第一の度数領域20のレンズ度数αから第二の度数領域22のレンズ度数βに至るレンズ度数範囲で、移行部28のレンズ度数γを、第一の度数領域20から第二の度数領域22に向かって次第に段階的に変化するように設定したものである。要するに、移行部28の中間レンズ度数γは、第一の度数領域20から第二の度数領域22に向かってγ1、γ2・・・と所定幅で異なっており、β<γ1<γ2<・・・<αとされる。これにより、第一の度数領域20に設けられる近用レンズ度数αから第二の度数領域22に設けられる遠用レンズ度数βに至るまで複数段階的にレンズ度数の異ならされた移行部28を備えたマルチフォーカル構造のコンタクトレンズ10が実現される。
さらに、図5(a)に示されたレンズ度数の設定態様では、第一の度数領域20のレンズ度数αから第二の度数領域22のレンズ度数βに至るレンズ度数範囲で、移行部28のレンズ度数γを、第一の度数領域20から第二の度数領域22に向かって漸次に無段階に変化するように設定したものである。要するに、移行部28の中間レンズ度数γは、第一の度数領域20から第二の度数領域22に向かって連続的に変化している。これにより、第一の度数領域20に設けられる近用レンズ度数αから第二の度数領域22に設けられる遠用レンズ度数βに至るまで漸次に無段階にレンズ度数が変化せしめられており、プログレッシブ構造の移行部28を備えたコンタクトレンズ10が実現される。
更にまた、かかるプログレッシブ構造の移行部28を備えたコンタクトレンズ10においては、第一の度数領域20と第二の度数領域22の少なくとも一方に設定されるレンズ度数が、かかるレンズ度数の球面収差を考慮して設けられていても良い。即ち、図5(b)に示されるように、第一の度数領域20に設けられるレンズ度数がα’からαまで漸次に無段階に変化するように設定されている一方、第二の度数領域22に設けられるレンズ度数がβからβ’まで漸次に無段階に変化するようにされていても良い。更に、移行部28においても、中間レンズ度数γが、レンズ度数αからβまで漸次に無段階に変化するようにされている。このことから、図5(b)のコンタクトレンズ10は、光学領域14においてレンズ度数α’からβ’まで漸次に無段階に変化するようにされたプログレッシブ構造のコンタクトレンズとされている。なお、レンズ度数α’はαより所定量大きい数値とされていると共に、レンズ度数β’はβより所定量小さい数値とされている。
即ち、第一の度数領域20に設定されるレンズ度数αおよび第二の度数領域に設けられるレンズ度数βは、それぞれかかる領域において一定とされる必要はない。要するに、図5(c)に示されているように、光学領域14の全体において、レンズ度数が第一の度数領域20に設定されるレンズ度数αから第二の度数領域22に設定されるレンズ度数βまで、一定とされる領域を持たずに漸次に無段階に変化していても良い。このように、コンタクトレンズ10は第一の度数領域20と第二の度数領域22に設定されるレンズ度数の少なくとも一方を漸次に無段階に変化させても良く、移行部28がプログレッシブ構造とされるだけでなく、光学領域14がプログレッシブ構造とされても良い。なお、図5(b),(c)のように、光学領域14がプログレッシブ構造とされる場合、レンズ度数が滑らかに連続して変化するため、移行部28の境界は明確には形成されない。
なお、第一の度数領域20のレンズ度数αと第二の度数領域22のレンズ度数βとの差、即ち、第一の度数領域20に設けられる第二の度数領域22に対する付加度数は、好適には+0.25〜+4.0ディオプターの範囲に設定されて、更に好適には+1.0〜+2.5ディオプターの範囲に設定される。蓋し、+0.25ディオプターより小さいと、第一の度数領域20と第二の度数領域22における見え方の差が過剰に小さくなってしまい、例えば、本発明のコンタクトレンズ10を老視矯正用のコンタクトレンズとして使用する場合、近方視または遠方視、或いはその両方の矯正効果が十分に得られないおそれがある。また、+4.0ディオプターより大きいと、第一の度数領域20と第二の度数領域22の見え方の差が過剰に大きくなってしまい、例えば、近方視から遠方視に移行する場合、使用者が違和感を感じるおそれがあるからである。
さらに、上述の如きコンタクトレンズ10では、装用状態下において対称径線24が略鉛直上下方向となるように周方向に位置決めするための周方向位置決め手段36が採用されている。
周方向位置決め手段36として、本発明のコンタクトレンズにおいて好適には従来から公知のものが採用される。具体的に例示すると、実開昭48−13048号公報等に記載の「トランケーション法」や、特開平11−258553号公報等に開示の「プリズムバラスト法」、特開平8−304745号公報等に開示の「スラブオフ法(ダブルシン法)」、米国特許第5100225号明細書等に開示の「ペリバラスト法」などが挙げられる。
すなわち、「トランケーション法」は、レンズ下端外周を弦方向に直線又は小さな曲率の湾曲形状でのびる当接端縁として、かかる当接端縁を下眼瞼で支持させることでコンタクトレンズを周方向に位置決めするものである。なお、トランケーション法において、レンズ上下両端外周を何れも当接端縁とすることにより、上下反転位置となる周上の2方向においてレンズ周方向の安定位置をそれぞれ与えることもできる。
「プリズムバラスト法」は、レンズ全体にプリズムを設定して上端から下方に向かって次第に厚肉とさせることで重力作用を利用してコンタクトレンズを周方向に位置決めするものである。
「スラブオフ法」は、レンズの光学領域の外周側に位置する周辺部において、上下方向の中間部分から上下両側に向けて次第に薄肉とされた薄肉部を設けて、レンズ上下部分への眼瞼による食わえ込み作用やレンズ上下部の傾斜面への眼瞼圧作用を利用してコンタクトレンズを周方向に位置決めするものである。
「ペリバラスト法」は、レンズ周辺部の左右両側においてそれぞれ僅かに下方に偏倚した重心位置をもって、一対の厚肉部を形成して、これら一対の厚肉部による重量バランスを利用してコンタクトレンズを周方向に位置決めするものである。
そして、このような周方向位置決め手段36のうち、本実施形態のコンタクトレンズ10では、図1,2に示されているように、周辺部16において、装用状態で上下方向に位置する領域に一対の薄肉部38,38を設けた「スラブオフ法」が採用されている。各薄肉部38,38は、対称径線24方向となる上下方向の両側外方に向かって次第にレンズ厚さを薄肉にする形状を周辺部16に与えている。本実施形態では、各薄肉部38,38は対称径線24および直交径線30に関して線対称形状とされており、即ち、周辺部16が対称径線24および直交径線30に関して線対称形状とされている。従って、本実施形態では、コンタクトレンズ10全体が対称径線24および直交径線30に関して線対称形状とされている。
本実施形態では、かかる一対の薄肉部38,38が設けられることにより、コンタクトレンズ10は周方向で安定して位置決めされ得る。即ち、コンタクトレンズ10の周方向での重量分布による釣合作用に加えて、眼瞼の銜え込み作用や眼瞼圧による押し出し作用等により、コンタクトレンズ10は、装用状態下において、対称径線24が上下方向に延びる状態、要するに図1に示された状態で周方向位置決めされる。特に、本実施形態の周方向位置決め手段36である一対の薄肉部38,38は、直交径線30に関して線対称、要するに上下線対称であり、装用状態下において、コンタクトレンズ10の対称径線24方向の両端の何れが上方に位置するかは区別されない。そして、かかる一対の薄肉部38,38により、上下反転位置となる周上の2方向において、レンズ周方向の安定位置がコンタクトレンズ10に与えられる。このような周方向位置決め手段36で装用時に図1に示された周方向位置で安定するように位置決めされることにより、一対の第一の度数領域20,20の何れか一方がコンタクトレンズ10が装用される装用眼の瞳孔中心32に対して位置合わせされる。
かかる構造とされた本発明のコンタクトレンズ10は、以下の効果を発揮し得る。即ち、一対の第一の度数領域20,20と第二の度数領域22と移行部28から構成される光学領域14が全体として対称径線24に関して線対称形状とされていることから、コンタクトレンズ10は左右を区別する必要がなく、使用者の左右眼の何れにも装用され得る。これにより、コンタクトレンズ10の規格数の増加を抑えることが出来て、メーカーによる製造や販売者による管理の手間やコストが大幅に削減され得る。また、使用者によるコンタクトレンズ10の管理も容易となり、コンタクトレンズ10の保管スペースも減少させることが出来る。
さらに、角膜中心から偏倚している瞳孔中心32の偏倚量等に応じて、一対の第一の度数領域20,20の各外形中心26,26もレンズ幾何中心12から偏倚している。これにより、装用状態下においては、一方の第一の度数領域20の外形中心26が瞳孔中心32と略一致するようにされており、良好な見え方の質(QOV)が効果的に確保され得る。
また、コンタクトレンズ10には周方向位置決め手段36が設けられており、装用状態下において、例えば、コンタクトレンズ10が回転すること等が抑止され得る。これにより、第一の度数領域20の外形中心26が瞳孔中心32からずれることが防止され得て、QOVの低下が抑えられ得ると共に、良好なQOVが維持され得る。
特に、本実施形態のコンタクトレンズ10は以下の効果を発揮し得る。即ち、本実施形態では、周方向位置決め手段36としてスラブオフ法が採用されている。そして、本実施形態のコンタクトレンズ10は、レンズ全体が対称径線24および直交径線30に関して線対称形状とされていることから、コンタクトレンズ10は左右だけでなく上下も区別される必要がなく、更に効果的に規格数の増加を抑えることが出来る。また、使用者がコンタクトレンズの周方向を判別するための印刷や刻印されるマーク等を付する必要もなく、コンタクトレンズ10の製造が容易に実施され得る。
さらに、本実施形態のコンタクトレンズ10では、第一の度数領域20が円形状とされており、略円形状である瞳孔34の形状と対応している。これにより、例えば、明所視の際に、瞳孔径φAが小さくなった場合でも、第一の度数領域20と瞳孔34とが重なる領域を効果的に確保することが出来て、第一の度数領域20による視力矯正効果が十分に発揮され得る。
また、本実施形態では、一対の移行部28,28が設けられていることから、レンズ度数の急激な変化が抑制されて、良好なQOVを得ることが出来る。特に、本実施形態では、各移行部28,28はそれぞれ第一の度数領域20の外周において、全周に亘って形成されている。そして、かかる一対の移行部28,28は離隔して配置されており、これら一対の移行部28,28間においても第二の度数領域22が設けられている。そのため、移行部28においても瞳孔34と重なる領域を十分に確保することが出来てQOVの向上が図られ得ると共に、第一の度数領域20と第二の度数領域22との間の移行の際の違和感が効果的に軽減され得る。
次に、図6には、本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ40が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ40では、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と比べて、一対の移行部28,28が設けられていない形状とされている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部位については、前記第一の実施形態と同じ符号を図中に付すことにより、詳細な説明は省略する。
かかるコンタクトレンズ40は、移行部28を設けないことによって、一対の第一の度数領域42,42の外周と第二の度数領域22が直接接続された形状とされている。従って、本実施形態の第一の度数領域42の径寸法は、例えば、前記第一の実施形態の移行部28の外径寸法、即ち、φ(R1+2×B1)とすることができ、本実施形態では前記第一の実施形態よりも大きな第一の度数領域を確保することが出来る。または、第一の度数領域42の径寸法を前記第一の実施形態における第一の度数領域20と同程度の径寸法に保ちつつ、第二の度数領域22の面積を大きく設定することが出来る。
本実施形態のコンタクトレンズ40では、移行部を備えていないことから、例えば図7(a),(b)に示されるようなレンズ度数を示す。即ち、図7(a)では、第一の度数領域42にレンズ度数α”が設定されると共に、第二の度数領域22にレンズ度数β”が設定される一方、これらのレンズ度数α”、β”の中間のレンズ度数は設定されていない。これにより、本実施形態のコンタクトレンズ40は移行部を備えないバイフォーカル構造のコンタクトレンズとされ得る。なお、かかる移行部を備えないバイフォーカル構造のコンタクトレンズとされる場合のレンズ度数変化は、図4(a)に示される移行部28に設定される中間レンズ度数が、第一の度数領域のレンズ度数または第二の度数領域のレンズ度数と等しくされる場合と実質的に略同一とされる。或いは、図7(b)では、第一の度数領域42にレンズ度数α”が設定されると共に、第二の度数領域22にレンズ度数β”が設定されており、第一の度数領域42から第二の度数領域22に亘って、即ち光学領域14においてレンズ度数がα”からβ”まで漸次に無段階に設定されている。これにより、本実施形態のコンタクトレンズ40は移行部を備えないプログレッシブ構造のコンタクトレンズとされ得る。なお、かかる移行部を備えないプログレッシブ構造のコンタクトレンズとされる場合のレンズ度数変化は、図5(c)に示される移行部を備えるプログレッシブ構造のコンタクトレンズにおけるレンズ度数変化と実質的に略同一とされる。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ40は、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様な効果が発揮され得て、更に以下の効果が発揮され得る。即ち、前記第一の実施形態に比べて第一の度数領域または第二の度数領域、或いは両度数領域をより大きな範囲で確保し得ることから、第一の度数領域42または第二の度数領域22、或いは両度数領域42,22による視力矯正効果を更に効率的に得ることが出来る。
次に、図8には、本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズ44が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ44では、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と比べて、一対の第一の度数領域20,20間および一対の移行部28,28間において第二の度数領域22が設けられておらず、更に、一対の移行部28,28が外周上の一点で略接している。特に本実施形態では、対称径線24と直交径線30が交わるレンズ幾何中心12上で、それぞれ略円形とされた一対の移行部28,28が相互に外周縁部で略接している形状とされている。
すなわち、本実施形態では、直交径線30上において一対の第一の度数領域20,20間には、かかる第一の度数領域20,20のそれぞれの外周に設けられた移行部28,28のみが設けられている。従って、直交径線30上の一対の第一の度数領域20,20間の離隔距離をL2、移行部28の径方向幅寸法をB2とすると、L2≒(2×B2)とされている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ44においても、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様な効果が発揮され得る。即ち、本発明では、直交径線30上において、必ずしも一対の第一の移行部間、要するに一対の第一の度数領域間に第二の度数領域22が設けられる必要はない。また、一対の移行部は必ずしも前記第一の実施形態のように離隔して設けられる必要はなく、例えば相互に外周縁部で接していても良い。
次に、図9には、本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ46が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ46では、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と比べて、一対の第一の度数領域20,20間、即ち一対の移行部間において第二の度数領域22が設けられておらず、一対の移行部48,48だけが設けられている。また、対称径線24上で一対の移行部48,48の接続部分は所定長さを有している。
具体的には、本実施形態の各移行部48の外周形状は、対称径線24を弦とする弓形に切除された略切欠円形状とされている。そして、かかる弦同士が対称径線24上で接して、一対の移行部48,48が連続することで略瓢箪形に連なり、対称径線24に関して線対称形状の外周形状を有する一体形状とされている。即ち、本実施形態では、直交径線30上の一対の第一の度数領域20,20間の離隔距離をL3、移行部48の円環形状とされた部分の径方向幅寸法をB3とすると、L3<(2×B3)とされている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ46においても、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様な効果が発揮され得る。即ち、本発明では、円環形状とされた一対の移行部は必ずしも離隔或いは一点で接している必要はなく、一対の移行部が所定幅で連続した連設構造を有する一体の移行部とされていてもよい。
次に、図10には、本発明の第五の実施形態としてのコンタクトレンズ50が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ50は、前記第二の実施形態のコンタクトレンズ40と比べて、一対の第一の度数領域42,42間において第二の度数領域22が設けられていない形状とされている。また、換言すれば、本実施形態のコンタクトレンズ50は、前記第三の実施形態のコンタクトレンズ44と比べて、一対の移行部28,28が設けられていない形状とされている。
具体的には、本実施形態では、直交径線30上における一対の第一の度数領域42,42間には移行部28および第二の度数領域22が設けられていない。即ち、一対の第一の度数領域42,42は、何れも略円形状とされていると共に、各外周上の一点で略接している。特に本実施形態では、対称径線24と直交径線30が交わるレンズ幾何中心12上で、それぞれ略円形とされた一対の第一の度数領域42,42が相互に略接している形状とされている。即ち、本実施形態では、一対の第一の度数領域42,42の離隔距離Lが略0とされている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ50においては、前記第二の実施形態のコンタクトレンズ40および前記第三の実施形態のコンタクトレンズ44と同様な効果が発揮され得る。即ち、本発明では、一対の第一の度数領域は必ずしも離隔して設けられる必要はなく、対称径線24上において、一対の第一の度数領域の外周が相互に直接に略接していても良い。
前記第一〜第五の実施形態から明らかなように、直交径線30上での一対の第一の度数領域間における離隔距離Lは何等限定されるものではなく、例えば、使用者毎の角膜中心に対する瞳孔中心の偏倚量に応じて離隔距離Lの設定が可能である。即ち、本発明のコンタクトレンズは、使用者毎の角膜形状や眼瞼圧等の特性に応じて離隔距離Lを設定や選択することが可能であり、これにより更なる見え方の質(QOV)の向上が図られ得る。
次に、図11には、本発明の第六の実施形態としてのコンタクトレンズ52が示されている。かかるコンタクトレンズ52では、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10に比べて、一対の第一の度数領域54,54、および第一の度数領域54,54のそれぞれの外周に設けられる移行部56の外形が円形でない異形状とされており、特に本実施形態では楕円形とされている。
具体的には、本実施形態では、一対の第一の度数領域54,54の長軸が直交径線30上に位置している一方、短軸が対称径線24方向に延びている。また、各移行部56,56は、第一の度数領域54,54に対応する形状とされており、従って、各移行部56,56の長軸が直交径線30上に位置している一方、短軸が対称径線24方向に延びている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ52では、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10と同様の効果に加えて以下の効果を発揮し得る。即ち、例えば、レンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の偏倚量δが使用者毎に又は使用環境の変化等により異なったり変化したりする場合に特に有利に用いられる。例えば、かかる偏倚量δが異なる使用者に提供する場合には、上述のように一対の第一の度数領域間の離隔距離Lを調節するによる他、本実施形態の如き直交径線30方向の寸法を大きくした第一の度数領域54を採用することで偏倚量δの相違に際して広く対応することが可能になる。そして、第一の度数領域54や移行部56が効率的に瞳孔34を覆い得ることから、良好な見え方の質(QOV)も維持され得る。
特に、レンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の偏倚方向が直交径線30方向である場合には、本実施形態の各第一の度数領域54,54のように、直交径線30方向の寸法を大きくすることが好ましい。
次に、図12には、本発明の第七の実施形態としてのコンタクトレンズ58が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ58では、前記第六の実施形態のコンタクトレンズ52に比べて、一対の第一の度数領域54,54および一対の移行部56,56の短軸がそれぞれ直交径線30上に位置している一方、長軸が対称径線24方向に延びている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ58では、前記第六の実施形態のコンタクトレンズ52と同様の効果を発揮し得る。特に、例えば、一対の第一の度数領域54,54間に移行部や第二の度数領域22を設ける場合等、十分量の離隔距離Lが必要とされる場合にも、第一の度数領域の形状として本実施形態の縦長の楕円形のように、直交径線30方向の寸法を小さくした異形状の第一の度数領域54を採用することにより、十分量の離隔距離Lが確保され得る。また、レンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の偏倚方向が対称径線24方向においても考慮すべき場合には、縦長の楕円形状とされた第一の度数領域54,54のように、対称径線24方向の寸法を大きくした異形状の第一の度数領域54,54を採用することが望ましい。
次に、図13には、本発明の第八の実施形態としてのコンタクトレンズ60が示されている。本実施形態のコンタクトレンズ60は、前記第六の実施形態のコンタクトレンズ52に比べて、一対の第一の度数領域54,54と一対の移行部56,56の長軸および短軸が、それぞれ対称径線24および直交径線30に対して傾斜している形状とされている。なお、図13中では、鼻側(図中右側)の第一の度数領域54と移行部56の長軸が直交径線30と略45度の傾斜角度をもって設けられている。
従って、本実施形態のコンタクトレンズ60の光学領域14は、直交径線30に関して線対称形状とされていない。このため、本実施形態のコンタクトレンズ60では、上下反転を防止するような周方向位置決め手段36が設けられる。即ち、周方向位置決め手段36により、対称径線24方向における何れか一方の端部が、装用状態で、コンタクトレンズ60の上方に位置するようにされる。本実施形態のコンタクトレンズ60ではかかる周方向位置決め手段36として、前記実施形態と同様にスラブオフ法が採用されているが、装用状態下方の薄肉部38’の領域を装用状態上方の薄肉部38に比べて小さくしている。かかる薄肉部38,38’の重量分布の差等の作用により、周上の1方向においてレンズ周方向の安定位置がコンタクトレンズ60に与えられて、本実施形態のコンタクトレンズ60は、図13に示される状態で周方向位置決めされ得る。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ60では、前記第六の実施形態のコンタクトレンズ52と同様の効果を発揮し得る。特に、レンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の偏倚方向が対称径線24および直交径線30に対して傾斜している場合には、かかる偏倚方向と第一の度数領域54の長軸の方向が略同方向とされることが好ましい。
次に、図14,15には、本発明の第九の実施形態としてのコンタクトレンズ62が示されており、図16には、本発明の第十の実施形態としてのコンタクトレンズ63が示されている。両実施形態のコンタクトレンズ62,63は、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10に比べて、一対の第一の度数領域20,20および一対の移行部28,28が直交径線30に対して対称径線24方向に偏倚している形状とされている。なお、第十の実施形態としてのコンタクトレンズ63は第九の実施形態としてのコンタクトレンズ62における光学領域14を上下反転させたものであり、コンタクトレンズ62では、かかる偏倚方向が装用状態下方とされている一方、コンタクトレンズ63では偏倚方向が装用状態上方とされている。また、図14および図16中では、直交径線30方向における一対の第一の度数領域20,20間の離隔距離L4が図1より小さくされている。
具体的には、コンタクトレンズの装用状態下において、角膜等の表面形状などにより、瞳孔中心32がコンタクトレンズ幾何中心12に対して直交径線30方向だけでなく、対称径線24方向にも偏倚することがある。一般に、瞳孔中心32は、レンズ幾何中心12に対して、鼻側の斜め下方(図14中、右下方向)に偏倚して安定位置をとることが多い。このことから、第九の実施形態では、対称径線24方向におけるレンズ幾何中心12に対する瞳孔中心32の偏倚量εに応じて、一対の第一の度数領域20,20を直交径線30に対して装用状態下方に偏倚させている。一方、角膜等の表面形状は個人差が大きく、コンタクトレンズの安定位置が角膜上の上方である使用者やコンタクトレンズが周方向で少し耳側に回転した状態で安定する使用者も少なくない。このようなコンタクトレンズ使用者には第十の実施形態としてのコンタクトレンズ63が好適に採用される。
従って、第九の実施形態のコンタクトレンズ62および第十の実施形態のコンタクトレンズ63の光学領域14は、直交径線30に関して線対称形状とされていない。このため、両実施形態のコンタクトレンズ62,63では、上下反転を防止するような周方向位置決め手段36が設けられる。即ち、周方向位置決め手段36により、対称径線24方向における何れか一方の端部が、装用状態で、コンタクトレンズ62,63の上方に位置するようにされる。両実施形態のコンタクトレンズ62,63ではかかる周方向位置決め手段36として、プリズムバラスト法が採用されている。要するに、第九の実施形態のコンタクトレンズ62では、図15に示されるように、コンタクトレンズ62の装用状態上方から下方に向かって次第に厚肉となるようにされている。そして、かかる厚肉の領域の下端において、下眼瞼によるコンタクトレンズ62の銜え込み作用が発揮されるように、厚肉領域において相対的に薄肉とされた位置決め部64が設けられている。このようなコンタクトレンズ62の重量分布の差や位置決め部64における下眼瞼の銜え込み等の作用により、周上の1方向においてレンズ周方向の安定位置がコンタクトレンズ62に与えられて、本実施形態のコンタクトレンズ62は、図14に示される状態で周方向位置決めされ得る。なお、第十の実施形態のコンタクトレンズ63における周辺部16の形状は第九の実施形態のコンタクトレンズ62と同一であることから、断面図の図示を省略する。即ち、第十の実施形態のコンタクトレンズ63では、第九の実施形態のコンタクトレンズ62と同様に周辺部16の形状としてプリズムバラスト法が採用されており、厚肉領域の下端に位置決め部64が設けられている。
これにより、コンタクトレンズ62またはコンタクトレンズ63の装用状態下で、第一の度数領域20の外形中心26を瞳孔中心32に対して一層正確に一致させることが可能になる。その結果、第一の度数領域20による光学特性および第二の度数領域22による光学特性を一層効果的に安定して享受することが可能になる。
なお、装用状態における上下偏倚量εは、使用者の個人的な測定情報によって設定することも可能であり、好適には装用者の瞳孔中心32が第一の度数領域20の中心に対して、直交径線30方向と同様に対称径線24方向でも略一致するように設定される。好適には、瞳孔中心32と第一の度数領域20の外形中心26との偏倚量が、直交径線30方向および対称径線24方向においても1mm以下となるように設定され、より好適には0.5mm以下となるように設定される。
ここで、装用状態における瞳孔中心32のレンズ幾何中心12からの対称径線24方向での偏倚量は、僅かな個人差はあるものの例えば統計的に求めることが可能である。コンタクトレンズ10の後面形状によっても少しの相違はあるが、一般にレンズ幾何中心12に対する第一の度数領域20の偏倚量εは、0.2mm〜2mmに設定されることが望ましい。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、コンタクトレンズ使用者の生活状況などを考慮して、光学領域14のレンズ度数は設定可能である。即ち、例えば、第一の度数領域20,42,54に遠方視力矯正用のレンズ度数βを設定すると共に、第二の度数領域22に近方視力矯正用のレンズ度数αを設定することも可能である。かかる場合には、レンズ度数αは、レンズ度数βに対して+0.25〜+4.0ディオプターの範囲の付加度数が設定されることが好ましく、更に好適には、かかる付加度数が+1.0〜+2.5ディオプターの範囲に設定される。
また、移行部28,48,56において、第一の度数領域20,42,54のレンズ度数αと第二の度数領域22のレンズ度数βとを径方向で交互に各環状に設けることも可能である。更にまた、移行部28,48,56において、第一の度数領域20,42,54のレンズ度数αと第二の度数領域22のレンズ度数βの少なくとも何れか一方とそれらの中間のレンズ度数γとを径方向で交互に各環状に設けることも可能である。このように移行部28,48,56のレンズ度数を適宜にチューニングすることにより、見え方を調節して設定することも可能である。
さらに、前記第四の実施形態においては、移行部48,48は、部分的に円環形状とされた一対の移行部の外周が対称径線24上で所定長さをもって連続した一体形状とされていたが、かかる移行部48,48を対称径線24上で分断するように所定幅で上下に延びる第二の度数領域22を形成しても良い。このように一対の移行部が離隔或いは接している場合においても、一対の移行部におけるそれぞれの外形は、前記実施形態のような円形状や楕円形状に限定されない。
更にまた、一対の第一の度数領域も、前記実施形態のような円形状や楕円形状に限定されない。これら一対の第一の度数領域および一対の移行部の外形の形状は、例えば多角形状等であってもよい。更に、第一の度数領域の周囲に形成される移行部の幅寸法を周方向で異ならせても良く、例えば第一の度数領域と移行部との一方の外形を円形にすると共に他方の外形を楕円等の異形状とすることも可能である。
また、前記実施形態のコンタクトレンズは、例えば老視矯正用コンタクトレンズとして採用され得るが、光学領域14に乱視矯正用のレンズ度数を設けても良い。即ち、本発明のコンタクトレンズは老視矯正に加えて乱視矯正も可能な老視用トーリックレンズとしても採用され得る。
なお、光学領域14において、所望の光学特性をコンタクトレンズに付与する曲率半径は、レンズ前面またはレンズ後面、或いはレンズ前後面の両方に設定されても良い。例えば、レンズ後面を所定の曲率半径が設定された球冠形状のベースカーブとする一方、レンズ前面に対して、第一の度数領域および第二の度数領域においてそれぞれ要求レンズ度数を実現する曲率半径を設定することができる。また、光学領域14の全体において第二の度数領域の要求レンズ度数を実現するレンズ前後面を設定したうえで、第一の度数領域においては、レンズ前面とレンズ後面の何れか一方の面形状を異ならせて該第一の度数領域における要求レンズ度数を実現すること等も可能である。更にまた、円柱レンズ度数は、第一の度数領域および第二の度数領域においてそれぞれ要求レンズ度数を実現するレンズ前後面形状が設定された光学領域14において、レンズ前面とレンズ後面の何れの面に設定することも可能である。