以下、図面を参照して、本発明に係る曝露量推定システム及び曝露量推定方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に、本実施形態の曝露量推定システム1を示す。曝露量推定システム1は、ユーザの曝露量を推定するシステムである。図1に示すように曝露量推定システム1は、曝露量推定装置2を含んで構成されている。曝露量推定装置2は、ユーザに関する情報等に基づいて、ユーザの曝露量を推定する装置である。曝露量推定装置2は、例えばサーバ等である。
曝露量推定システム1は、さらに曝露量推定装置2とネットワークNを介して通信可能な環境情報収集装置3と、曝露量推定装置2とネットワークNを介して通信可能なユーザ情報収集装置4とを含んで構成されてもよい。環境情報収集装置3は、ユーザの行動範囲内の複数の位置における環境情報を収集し、ネットワークNを介して曝露量推定装置2に送信する装置である。環境情報収集装置3は、例えば、花粉飛散量、紫外線量、エアロゾル量等の曝露対象の存在する量である環境情報を測定するセンサを備える装置である。ユーザ情報収集装置4は、ユーザの位置を示す位置情報、ユーザの歩数を示す歩数情報、ユーザの曝露対策を示す曝露対策情報等を収集し、ネットワークNを介して曝露量推定装置2に送信する装置である。また、ユーザ情報収集装置4は、曝露量推定装置2からネットワークNを介して推定された曝露量を受信し、表示する装置でもある。ユーザ情報収集装置4は、例えば、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、ノートPC等のユーザが常時携行する小型端末である。ネットワークNは、有線・無線のいずれでもよく、例えば、移動体通信網、インターネット、有線LAN、無線LAN等である。
図2に曝露量推定装置2のハードウェア構成を示す。図2に示すように、曝露量推定装置2は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)201、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)202及びROM(Read Only Memory)203、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール204、ハードディスク等の補助記憶装置205等のハードウェアにより構成されている。後述する曝露量推定装置2の各機能は、図2に示すCPU201、RAM202等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU201の制御のもとで通信モジュール204等を動作させるとともに、RAM202や補助記憶装置205におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
引き続いて、第1実施形態に係る曝露量推定装置2の機能について説明する。図1に示すように、曝露量推定装置2は、エリア属性格納部(エリア属性格納手段)21と、ユーザ情報取得部(ユーザ情報取得手段)22と、環境情報格納部(環境情報格納手段)23と、曝露率格納部(曝露率格納手段)24と、曝露量推定部(曝露量推定手段)25と、曝露量出力部(曝露量出力手段)26とを備えて構成される。
エリア属性格納部21は、位置情報と当該位置情報が示す位置を含む領域の属性を示すエリア属性情報とを対応付けて格納するエリア属性格納手段として機能するものである。エリア属性格納部21に記憶されるデータは、曝露量推定装置2の管理者が予めエリア属性格納部21に設定することにより格納される。
図3に示すように、エリア属性格納部21は、「エリアの空間的範囲」と、「エリア属性」とを対応付けて記憶している。「エリアの空間的範囲」に記憶されるデータは、1つの地点を表すデータ、2つの地点を表すデータ(緯度・経度)、3つ以上の地点を表すデータ、無線LANアクセスポイントのMACアドレス等の相対的な位置ラベル、メッシュID等の空間的範囲を定めることができる情報であればよい。1つの緯度・経度により表される1地点が記憶されている場合には、空間的範囲は、当該1地点を中心とする1辺が予め定められた長さの正方形、例えば、当該1地点を中心とし、一辺が測位誤差の2倍であるような正方形によって定められる。また、2つの緯度・経度により表される2地点が記憶されている場合には、空間的範囲は、当該2地点を対角線とする矩形によって定められる。図4に示すように、3つ以上の位置(p1、p2、p3)が記憶されている場合には、空間的範囲は、隣接する2地点を包含する矩形(p1とp2を包含する矩形、p2とp3を包含する矩形)の集合として定められる。
「エリア属性」に格納されるデータは、空間的範囲により表されたエリアの属性を示す情報である。エリアの属性とは、例えば、「海岸」、「スキー場」、「屋内」といった空間的範囲により表されたエリアに存在する施設や状態等である。
ユーザ情報取得部22は、曝露量の推定対象のユーザの位置情報及び当該ユーザの行動情報を取得するユーザ情報取得手段として機能するものである。ユーザ情報取得部22は、ユーザ情報収集装置4から曝露量推定対象のユーザの位置を示す位置情報、ユーザの歩数を示す歩数情報を、ユーザ情報収集装置4が各情報を取得した時刻を示す時刻情報と共に所定の周期毎に取得する。ユーザの位置情報に、その測位誤差を示す情報が含まれていてもよい。ユーザ情報取得部22は、ユーザ情報収集装置4から取得した曝露量推定対象のユーザの位置情報、ユーザの歩数を表す歩数情報に基づいて、後述する方法でユーザの移動手段を推定する。また、ユーザ情報取得部22は、ユーザ情報収集装置4から取得した曝露量推定対象のユーザの位置情報に基づいて、ユーザの存在するエリアを推定し、推定したエリアに対応するエリア属性情報をエリア属性格納部21から取得する。ユーザが存在するエリアは、例えば、ユーザの位置情報を中心とし、一辺が測位誤差の2倍であるような正方形で表現される。ユーザの位置情報は、ユーザ情報収集装置4が有するGPSセンサにより取得される位置情報、ユーザ情報収集装置4が現在在圏している基地局の設置位置を示す位置情報、ユーザ情報収集装置4が現在直接通信を行っている無線LANのアクセスポイントの設置位置を示す位置情報、またはこれらの組み合わせ等を用いることができる。なお、ユーザの移動手段情報、エリア属性情報は、ユーザ情報収集装置4から取得されるようにしてもよい。
さらに、ユーザ情報取得部22は、ユーザ情報収集装置4から取得した曝露量推定対象のユーザの位置情報に基づいて、当該ユーザの移動経路を推定するようにしてもよい。ユーザの移動経路を推定するに当たり、ユーザ情報取得部22は、まずユーザが移動中であるか滞在中であるかを判定する。ユーザ情報取得部22は、順次取得したユーザの位置情報に基づいて、それぞれユーザの存在するエリアを推定し、連続して推定された第1のエリア及び第2のエリアが重なっており、第1のエリア及び第2のエリアによって共有される共通領域があり、以降、順次推定された第1・・・第nのエリア(nは、曝露量推定装置2の管理者によって予めユーザ情報取得部22に設定された自然数)に対し、上記のように共通領域がある場合に、ユーザが滞在中であると判定し、そうでない場合に、ユーザが移動中であると判定する。
次に、ユーザ情報取得部22は、推定したエリア(ユーザが存在するエリア)に基づいて、ユーザが移動している移動経路を推定する。例えば、連続して推定された2つのエリアを包含する最小矩形MBR(以下、連続して推定された複数のエリアを含む最小の矩形領域を「MBR」と呼ぶこととする。)で移動経路を推定する。図5を参照して具体的に説明すると、位置情報(p1、t1)、(p2、t2)、(p3、t3)を順次検出し(ここで、pnは、緯度、経度、測位誤差を含む情報で、tnは、測定時刻を示す情報である。)、各位置情報に基づいてエリアE1、E2、E3を推定した場合、エリアE1とエリアE2を包含する最小矩形MBR1−2と、エリアE2とエリアE3を包含する最小矩形MBR2−3とを合成したものを、移動経路r1として推定する。
ユーザ情報取得部22は、推定した移動経路に基づいて、ユーザの位置情報を補完するようにしてもよい。例えば、ユーザの位置情報の取得間隔が長い場合に、連続して取得したユーザの位置情報の間の位置情報を、推定した移動経路に含まれる位置情報としてもよい。
続いて、図6を参照して、ユーザ情報取得部22が、ユーザの位置情報、ユーザの歩数情報に基づいて、ユーザの移動手段を推定する方法を説明する。ここで、移動手段とは、ユーザが移動する際に使用する交通手段であって、例えば、「電車」、「車」、「自転車」、「歩行(徒歩)」等である。
ユーザ情報取得部22は、まずユーザの移動手段の初期状態を「歩行中」とする。そしてユーザ情報取得部22は、前回滞在と判定されたエリアのうち最も測位誤差が小さい位置情報に基づいて推定されたエリアと、ユーザが現在存在すると推定されたエリアとの距離がDthメートル以上離れているか否か判断する(S101)。ここで、Dthメートルは、ユーザが移動したと判断することができる最短の距離であって、その値は、曝露量推定装置2の管理者によってユーザ情報取得部22に予め設定されている。前回滞在と判定されたエリアのうち最も測位誤差が小さい位置情報に基づいて推定されたエリアと、ユーザが現在存在すると推定されたエリアとの距離が、Dthメートルより小さいと判断した場合、ユーザ情報取得部22は「滞在中」と推定する(S102)。
前回滞在と判定されたエリアのうち最も測位誤差が小さい位置情報に基づいて推定されたエリアと、ユーザが現在存在すると推定されたエリアとの距離がDthメートル以上と判断した場合、ユーザ情報取得部22は、Tth1分以上の間、ユーザの移動速度がVthkm/h以上であるか否か判断する(S103)。ここで、Vthkm/hは、一般的な歩行速度(例えば、3〜4km/h)よりも速く、一般的な自転車の速度(15〜20km/h)程度の速度であることが好ましい。Tth1分は、ユーザが移動手段を使用していると判断できる程度の時間であればよく、ユーザ情報収集装置4がユーザの位置情報を取得する間隔2〜3回分程度の時間でよい。Tth1、Vthは、いずれも曝露量推定装置2の管理者によってユーザ情報取得部22に予め設定されている。また、ユーザの移動速度は、連続的に取得されたユーザの位置情報から算出することができる。例えば、時刻t1に取得したユーザの位置情報p1と、時刻t2に取得したユーザの位置情報p2とを用いて、p1とp2との間の距離を(t2−t1)で割ることによりユーザの移動速度を算出する。
S103の判断において、Tth1分以上の間、ユーザの移動速度がVthkm/h以上であると判断した場合、ユーザ情報取得部22は、歩数情報が表す歩数が所定の値Cth以上であるか否か判断する(S104)。ここで、Cthは、ユーザが電車や車を利用した場合に想定される歩数よりも大きな値(例えば、50歩程度)であればよく、曝露量推定装置2の管理者によってユーザ情報取得部22に予め設定されている。歩数がCth以上であると判断した場合、ユーザ情報取得部22は、「自転車移動中」と推定する(S105)。歩数がCthより小さいと判断した場合、ユーザ情報取得部22は、ユーザが現在存在すると推定されたエリアと線路を示す経路との距離がDth2メートル以下であるか否かを判断する(S106)。ここで、Dth2メートルは、ユーザが線路を示す経路上を移動していることが推定可能な距離であればよく、曝露量推定装置2の管理者によってユーザ情報取得部22に予め設定されている。線路を示す経路との距離がDth2メートル以下と判断した場合、ユーザ情報取得部22は、「電車移動中」と推定する(S107)。一方、線路を示す経路との距離がDth2メートルより大きいと判定した場合、ユーザ情報取得部22は、「車移動中」と推定する(S108)。
また、S103の判断において、Tth1分以上の間、ユーザの移動速度がVthkm/h以上でないと判断された場合には、歩数情報が表す歩数が所定の値Cth以上であるか否か判断する(S109)。歩数がCth以上であると判断した場合、ユーザ情報取得部22は、Tth2分以上の間、ユーザの移動速度がVth2km/h以下であるか否か判断する(S110)。Vth2km/hは、Vthkm/hより遅く、一般的な歩行速度(例えば、3〜4km/h)と、一般的な自転車の速度(15〜20km/h)との間の速度であることが好ましい。Tth2分は、Tth1分と同様にユーザが移動手段を使用していると判断できる程度の時間であればよく、1〜2分程度でよい。Tth2、Vth2は、いずれも曝露量推定装置2の管理者によってユーザ情報取得部22に予め設定されている。Tth2分以上の間、ユーザの移動速度がVth2km/h以下であると判断した場合、ユーザ情報取得部22は、「歩行中」と推定する(S111)。一方、Tth2分以上の間、ユーザの移動速度がVth2km/h以下でないと判断した場合、ユーザ情報取得部22は、「自転車移動中」と推定する(S112)。また、S109の判断において、歩数が所定の値Cthより小さいと判断した場合、いずれの移動手段にも該当しないことになり、ユーザの移動手段の推定を行うことができないことから、前回推定した移動手段を、ユーザの移動手段として推定する(S113)。以上が、第1実施形態に係る曝露量推定装置2のユーザ情報取得部22により実行されるユーザの移動手段推定処理である。
環境情報格納部23は、位置を示す位置情報と当該位置に存在する曝露対象の量を示す環境情報とを対応付けて格納する環境情報格納手段として機能するものである。環境情報格納部23は、例えば、図7に示すテーブルに情報を格納することによって、複数の位置における環境情報を記憶する。図7に示すように、環境情報格納部23は、「測定日時」と、「測定場所(測定位置)」と、「曝露対象種別」と、「測定値」とを対応付けて記憶する。「測定日時」に記憶されるデータは、環境情報の測定を行った日時を特定する情報である。「測定場所(測定位置)」に記憶されるデータは、環境情報の測定を行った場所、位置を特定する情報であって、例えば、緯度・経度等の情報である。「曝露対象種別」は、測定対象となる化学物質や物理的刺激の種別を特定する情報であって、例えば、「紫外線」、「花粉」等である。「測定値」に記憶されるデータは、測定された曝露対象種別の量を示す情報である。なお、環境情報格納部23は、環境情報収集装置3から上記各情報を所定の周期毎に取得する。
曝露率格納部24は、移動手段を示す移動手段情報、領域の属性を示すエリア属性情報の少なくとも1つを含む行動情報と曝露率とを対応付けて格納する曝露率格納手段として機能するものである。曝露率格納部24に記憶されるデータは、曝露量推定装置2の管理者が予め曝露率格納部24に設定することにより格納される。ここで、曝露率とは、曝露対象が存在する量(環境情報)のうちユーザが曝露対象にさらされる割合を示すものである。屋外での曝露率は1であるから、曝露率は、屋外における曝露量に対する実際の曝露量の割合を示すものともいえる。図8(a)に示すように、曝露率格納部24は、「移動手段」と、「曝露対象種別」と、「曝露率」とを対応付けて記憶する。「移動手段」に記憶されるデータは、「電車」、「車」、「自転車」等の移動手段の他、「歩行」、「屋内」を含む情報である。「曝露対象種別」に記憶されるデータは、観測対象となる化学物質や物理的刺激の種別を特定する情報である。「曝露率」に記憶されるデータは、屋外での曝露量に対して、曝露対象にさらされる割合を示す情報である。
また、図8(b)に示すように、曝露率格納部24は、「エリア属性」と、「曝露対象種別」と、「反射率」とを対応付けて記憶するようにしてもよい。「反射率」に記憶されるデータは、屋外における曝露量に対して曝露対象に二次的に曝露する割合を示す情報である。したがって、反射率は一種の曝露率ということができる。例えば、紫外線がビルや雪山で反射した結果、ユーザが曝露する割合である。紫外線であれば雪山等では高い反射率となるが、花粉であれば反射率は低くなる。
また、図8(c)に示すように、曝露率格納部24は、「曝露対策」と、「曝露対象種別」と、「低減率」とを対応付けて記憶するようにしてもよい。「曝露対策」に記憶されるデータは、曝露に対する予防行為を特定する情報であって、例えば、通常のマスクを着用していることを示す「通常マスク」、高性能のマスクを着用していることを示す「高性能マスク」、花粉対策薬を服用していることを示す「花粉薬」、SPF(Sun Protection Factor)50の日焼け止めクリーム等のUVケア製品を使用していることを示す「SPF50」、UPF(Ultraviolet Protection Factor)30のUVケア製品を使用していることを示す「UPF30」等である。「低減率」に記憶されるデータは、曝露対策を行っていない場合の曝露率に対して、曝露対策により曝露率を低下させる割合を示す情報である。したがって、低減率は一種の曝露率ということができる。
曝露率格納部24に記憶される「曝露率」、「反射率」については、季節や時間帯によって可変となるように、季節や時間帯に対応付けてそれぞれ記憶するようにしてもよい。また、「低減率」については、花粉薬やUVケア製品等のように曝露対策によっては、使用開始からの経過時間によってその曝露予防の効果が減少するものもあることから、曝露対策を開始した時からの経過時間と対応付けて記憶するようにしてもよい。
曝露量推定部25は、環境情報格納部23を参照して、ユーザ情報取得部22により取得されたユーザの位置情報に応じた環境情報を取得し、曝露率格納部24を参照してユーザ情報取得部22により取得されたユーザの行動情報に対応する曝露率を取得し、取得した環境情報と曝露率とに基づいて曝露対象の曝露量を算出する曝露量推定手段として機能するものである。ここで、ユーザの行動情報には、ユーザの移動手段情報、ユーザのエリア属性情報の少なくともいずれかが含まれる。ユーザの行動情報に、ユーザの曝露対策情報をさらに含めてもよい。
曝露量推定部25における曝露量の推定方法について具体的に説明する。ここでは、曝露率格納部24に、エリア属性情報に対して反射率が対応付けられて格納されており、曝露対策情報に対して低減率が対応付けられて格納されている場合について説明を行う。まず、曝露量推定部25は、ユーザ情報取得部22により取得または推定されたユーザの位置情報に応じた環境情報を、環境情報格納部23を参照して取得する。ユーザの位置情報に応じた環境情報が、環境情報格納部23に格納されていない場合には、ユーザの位置情報pが示す位置から近い順N個の測定場所について、曝露量の推定対象時刻tに最も近い測定時刻における測定値を環境情報格納部23から取得する。ここで、曝露対象種別を示す値bは、曝露対象ごとに異なる値が、曝露量推定装置2の管理者によって予め曝露量推定部25に設定されている。また、ユーザの位置情報pが示す位置の近傍N個(pが示す位置から近い順にN個)の測定場所を識別する測定場所識別情報nが、ユーザの位置情報pが示す位置から近い順に各測定場所に対して1からNまで付与され、測定場所識別情報nが示す測定場所における曝露対象種別bの曝露量の推定対象時刻tに最も近い測定時刻での測定値が、s(t、n、b)(1≦n≦N)で表されるものとする。そして下記の式(1)に示すように、ユーザの位置情報pが示す位置の近傍N個の測定場所の測定値s(t、n、b)に対して、ユーザの位置情報pが示す位置と測定場所識別情報nが示す測定場所との間の距離d(p、n)の逆数による加重平均を行うことにより、曝露量の推定対象時刻tにおけるユーザの位置情報pが示す位置での曝露対象種別bの環境情報S(t、p、b)を算出する。
次に、曝露量推定部25は、ユーザ情報取得部22により取得されたユーザの移動手段に対応する曝露対象種別bの曝露率α(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。また、ユーザ情報取得部22によりユーザのエリア属性情報が取得された場合は、曝露量推定部25は、そのエリア属性情報に対応する曝露対象種別bの反射率β(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。さらに、ユーザ情報取得部22によりユーザの曝露対策情報が取得された場合は、曝露量推定部25は、その曝露対策情報に対応する曝露対象種別bの低減率γ(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。そして、環境情報格納部23から取得した、あるいは、式(1)により算出した曝露量の推定対象時刻tにおけるユーザの位置情報pが示す位置での曝露対象種別bの環境情報S(t、p、b)と、曝露率α(b)、反射率β(b)、低減率γ(b)とに基づいて、下記の式(2)によりユーザの曝露量の推定対象時刻tにおける曝露対象種別bの曝露量e(t、b)を算出する。
ユーザの曝露量e(t,b)=S(t,p,b)*{α(b)+β(b)}*γ(b)…(2)
なお、ユーザの移動手段情報が取得されなかった場合は、α(b)=1、ユーザのエリア属性情報が取得されなかった場合は、β(b)=0、ユーザの曝露対策情報が取得されなかった場合は、γ(b)=1として式(2)の計算を行う。
曝露量出力部26は、曝露量推定部25により算出された曝露量を出力する曝露量出力手段として機能するものである。曝露量出力部26は、曝露量をユーザ情報収集装置4や曝露量推定装置2の補助記憶装置205に出力し、ユーザ情報収集装置4の表示部406に表示させ、あるいは補助記憶装置205に記録する。また曝露量出力部26は、曝露量を一般的に使用されている指標に変換して出力するようにしてもよい。一般的に使用されている指標としては、紫外線量を示すUVインデックス等が知られている。一般的に使用されている指標を用いることで、曝露対象の曝露量を直感的に分かりやすい指標でユーザが把握できる。
例えば、紫外線の曝露量をUVインデックスに変換する方法について具体的に説明する。UVインデックスは、推定した紫外線の曝露量をe(mW/m2)とすると、以下の式によって算出される。
UVインデックス=e/25…(3)
曝露量出力部26は、式(3)によりUVインデックスを算出し、その値をユーザ情報収集装置4や曝露量推定装置2の補助記憶装置205に出力し、ユーザ情報収集装置4の表示部406に表示させ、あるいは補助記憶装置205に記録するようにしてもよい。
さらに、曝露量出力部26は、UVインデックスの値に応じて分類し、その分類の名称を示す情報を出力するようにしてもよい。例えば、UVインデックスが1〜2であれば「弱い」、3〜5であれば「中程度」、6〜7であれば「強い」、8〜10であれば「非常に強い」、11以上であれば「極端に強い」という5段階に分類し、曝露量出力部26は、式(3)によりUVインデックスを算出し、その値が属する分類の名称を示す情報を出力する。UVインデックスが9であれば、曝露量出力部26は、「非常に強い」を示す情報をユーザ情報収集装置4に出力し、ユーザ情報収集装置4の表示部406に表示させる。このように、UVインデックス等の一般的に使用されている指標を用いることで、曝露対象の曝露量をユーザが直感的に把握することができる。
続いて、第1実施形態に係る環境情報収集装置3について説明する。図9に環境情報収集装置3のハードウェア構成を示す。図9に示すように、環境情報収集装置3は、物理的には、CPU301、RAM302、ROM303、通信モジュール304、周囲に存在する花粉、紫外線等の化学物質や物理的刺激の量を測定するセンサ等の測定部305等のハードウェアにより構成されている。
引き続いて、第1実施形態に係る環境情報収集装置3の機能について説明する。図1に示すように、環境情報収集装置3は、環境情報収集部31、環境情報送信部32を備えて構成される。
環境情報収集部31は、所定の位置における環境情報を取得する環境情報収集手段として機能するものである。環境情報収集部31は、花粉飛散量、紫外線量、エアロゾル量といった曝露対象の存在する量である環境情報を測定するセンサを有し、測定した環境情報は、測定に使用したセンサを特定するセンサIDと、測定日時と、測定値とを組にして、環境情報送信部32に送信する。なお、環境情報収集部31は、測定に使用したセンサに応じて定まる測定値の信頼性等を示す値をさらに付加して、環境情報送信部32に送信するようにしてもよい。環境情報収集部31は、リアルタイムに環境情報を環境情報送信部32に送信するようにしてもよいし、予め設定された時間毎(例えば、10分毎)に環境情報送信部32に送信するようにしてもよい。ユーザが移動する可能性のある位置における環境情報を取得する必要があるため、環境情報収集部31は、想定されるユーザの行動範囲における複数の位置に設けることが好ましい。あるいは、環境情報収集装置3自体を、複数の位置に設けるようにしてもよい。
環境情報送信部32は、環境情報収集部31で取得した環境情報を、ネットワークNを介して曝露量推定装置2に送信する環境情報送信手段として機能するものである。
続いて、第1実施形態に係るユーザ情報収集装置4について説明する。図10にユーザ情報収集装置4のハードウェア構成を示す。図10に示すように、ユーザ情報収集装置4は、物理的には、CPU401、RAM402、ROM403、通信モジュール404、ユーザの位置を測定するセンサや歩数計等を含む測定部405、ディスプレイ等の表示部406、操作部407等のハードウェアにより構成されている。
引き続いて、第1実施形態に係るユーザ情報収集装置4の機能について説明する。図1に示すように、ユーザ情報収集装置4は、ユーザ情報収集部41、表示部42、送受信部43を備えて構成される。
ユーザ情報収集部41は、ユーザの存在する位置を示す位置情報、ユーザの歩数を示す歩数情報、曝露に対する予防行為を示す曝露対策情報等のユーザ情報を収集するユーザ情報収集手段として機能するものである。具体的には、ユーザ情報収集部41は、GPSセンサ等の位置を測定するセンサを用いてユーザの位置情報を取得し、歩数計センサを用いてユーザの歩数情報を取得する。ユーザ情報収集部41は、取得したユーザ情報を、予め設定された周期毎(例えば、1分毎)に送受信部43に送信する。この送信タイミングは、ユーザによって設定できるように構成されていてもよい。さらに、ユーザ情報収集部41は、ユーザにより入力された曝露対策情報を取得する。曝露対策情報の入力方法は、曝露対策のリストから選択する形式で行ってもよいし、フリー入力で行ってもよい。フリー入力で入力された文字列を文字列マッチングにより曝露対策情報を認識するようにしてもよい。ユーザ情報収集部41は、曝露対策情報を取得した場合には、取得したユーザ情報を、直ちに送受信部43に送信するようにしてもよい。ユーザ情報収集部41は、ユーザの位置情報に、その測位誤差を示す情報を含めて送信するようにしてもよい。なお、測位誤差は、GPSセンサ等のセンサ内で算出される。
表示部42は、曝露量推定装置2から受信した曝露量を表示する表示手段として機能するものである。表示部42は、予め曝露量推定装置2において曝露量が一般的に使用されている指標に変換された曝露量を受信した場合には、その指標に基づいて曝露量の表示を行い、予め曝露量推定装置2において曝露量が一般的に使用されている指標に変換されていない場合には、受信した曝露量を一般的に使用されている指標に変換して出力するようにしてもよい。
送受信部43は、ユーザ情報収集部41で取得したユーザ情報を、ネットワークNを介して曝露量推定装置2に送信し、曝露量推定装置2により送信された曝露量を受信して表示部42に送信する送受信手段として機能するものである。
続いて、図11のフローチャートを用いて、第1実施形態に係る曝露量推定システム1の動作について説明する。
ユーザ情報取得部22によって、ユーザ情報収集装置4から一定の周期毎に送信されるユーザの位置情報及び歩数情報が取得される(S201、ユーザ情報取得ステップ)。ここで、ユーザ情報取得部22によって曝露対策情報がさらに取得されるようにしてもよい。次に、ユーザ情報取得部22によって、取得した位置情報、歩数情報に基づいて、ユーザの移動経路及び移動手段が推定される(S202、ユーザ情報取得ステップ)。ここで、ユーザ情報取得部22は、ユーザの位置情報及び歩数情報が取得される度に、あるいは、一定量の位置情報及び歩数情報が蓄積される毎にユーザの移動経路及び移動手段の推定を行う。また、ユーザ情報取得部22は、連続して取得した2つのユーザの位置情報の間の位置情報を、推定した移動経路に含まれる位置を示す位置情報として推定してもよい。ユーザ情報取得部22によって、取得または推定した位置情報に基づいて、エリア属性格納部21からエリア属性情報が取得されるようにしてもよい。
次に、曝露量推定部25によって、ユーザの位置情報に対応する環境情報が環境情報格納部23から取得される(S203、曝露量推定ステップ)。ここで、ユーザの位置情報に対応する環境情報が環境情報格納部23に格納されていない場合には、上述の式(1)に基づいて環境情報を算出する。次に、曝露量推定部25によって、ユーザ情報取得部22において推定されたユーザの移動手段、ユーザ情報取得部22において取得された曝露対策情報、ユーザ情報取得部22において取得されたエリア属性に対応する曝露率(反射率、低減率)が曝露率格納部24から取得され、環境情報と曝露率(反射率、低減率)とに基づいて、ユーザの曝露量が推定される(S204、曝露量推定ステップ)。最後に、曝露量出力部26によって、曝露量推定部25において推定された曝露量がユーザ情報収集装置4に出力され、ユーザ情報収集装置4の表示部に表示される(S208、曝露量出力ステップ)。上記S203、S204、S208は、ユーザ情報収集装置4から曝露量推定の指示を受信した場合や、曝露対策情報を受信した場合等に実施されることが好ましい。また、複数の時刻にそれぞれ対応するユーザの位置情報、移動手段情報等に基づいて、各時刻における曝露量を推定してもよい。また、各時刻における曝露量を一定の範囲(例えば、1日単位、移動経路単位)で積算(累積)し、曝露量の積算値を求めるようにしてもよい。
上記第1実施形態によれば、曝露量推定システム1は、ユーザの移動手段を示す移動手段情報、ユーザが存在する領域の属性を示すエリア属性情報の少なくとも1つを含むユーザの行動情報に対応する環境情報の曝露率を考慮することで、ユーザの実際の状態に応じた曝露率を推定することができ、曝露量推定の精度を向上することが可能となる。例えば、ユーザが電車によって移動している場合には、屋外に対する電車内の曝露率を考慮して、ユーザの曝露量を推定することで、曝露量推定の精度を向上することができる。
上記第1実施形態によれば、ユーザの行動情報を直接取得できなかった場合でも、ユーザの位置情報や歩数情報等に基づいてユーザの行動情報を推定することができ、曝露量推定をより確実に実施することができる。例えば、ユーザの移動速度が所定の値より速く、歩数が所定の値より少なく、ユーザの位置と線路を示す経路との距離が所定の値以下であれば、ユーザは電車で移動していると推定することができ、推定された移動手段に応じた曝露率を考慮することで、曝露量推定をより確実に実施することができる。
上記第1実施形態によれば、ユーザの曝露対策の状況に応じて曝露率を推定することができ、環境情報の曝露量をより正確に推定することができる。例えば、ユーザが花粉対策として高性能のマスクを使用している場合には、そのマスクの使用によりユーザが花粉に曝露する量が減少すると考えられることから、曝露率を補正して曝露量の推定を行うため、ユーザの曝露量をより正確に推定することができる。
上記第1実施形態によれば、ユーザの現在位置における環境情報が得られなくても、近傍の環境情報から現在位置の環境情報を推定でき、曝露量推定をより確実に実施することができる。ユーザの現在位置の近傍N個の測定場所の測定値に対して、ユーザの現在位置と各測定場所との間の距離の逆数による加重平均を行うことにより、ユーザの現在位置での環境情報を推定することができ、曝露量推定をより確実に実施することができる。
(第2実施形態)
図12に示すように、第2実施形態に係る曝露量推定装置2aは、第1実施形態の曝露量推定装置2が有する各機能部21、22、24に加えて、環境情報格納部(環境情報格納手段)23a、曝露量推定部(曝露量推定手段)25a、ユーザ行動履歴格納部(ユーザ行動履歴格納手段)27と、ユーザ情報予測部(ユーザ情報予測手段)28とを備えて構成される。
環境情報格納部23aは、第1実施形態の環境情報格納部23の機能に加えて、図示しない外部サーバから複数の位置における環境情報の予報値を取得し、格納する環境情報格納手段として機能するものである。ここで、外部サーバとは、複数の位置における花粉飛散量や紫外線量等といった環境情報の予報値を提供するサーバである。環境情報の予報値とは、花粉飛散量や紫外線量といった曝露対象が今後存在すると予測される量である。外部サーバから取得した複数の位置における環境情報の予報値は、図7と同様の形式で環境情報格納部23aに格納される。
ユーザ行動履歴格納部27は、ユーザ情報取得部22により取得されたユーザの位置情報及びユーザの行動情報を時刻情報とともに格納するユーザ行動履歴格納手段として機能するものである。ユーザ行動履歴格納部27に記憶される各情報は、ユーザ情報取得部22により取得または推定されるごとにユーザ行動履歴格納部27に格納される。具体的には、図13に示すように、ユーザ行動履歴格納部27は、「日時」と、「位置」と、「エリア属性」と、「移動手段」と、「移動経路ID」とを対応付けて記憶する。
「日時」に記憶されるデータは、日時を特定する情報である。「位置」に記憶されるデータは、ユーザ情報取得部22により取得あるいは推定されたユーザの位置情報である。「エリア属性」に記憶されるデータは、ユーザ情報取得部22により取得されたエリア属性情報である。「移動手段」に記憶されるデータは、ユーザ情報取得部22により推定されたユーザの移動手段情報である。「移動経路ID」に記憶されるデータは、ユーザ情報取得部により推定された移動経路を識別する情報である。
また、図14に示すように、ユーザ行動履歴格納部27は、「移動経路ID」と、「出発エリア」と、「到着エリア」と、「通過エリア」と、「通過回数」とを対応付けて記憶する。「移動経路ID」に記憶されるデータは、ユーザ情報取得部22により推定された移動経路を識別する情報である。
「出発エリア」に記憶されるデータは、移動経路IDにより識別される移動経路の出発エリア(移動経路の始端(出発地点)を含むエリア)の空間的範囲を定めることができる情報である。なお、ユーザ情報取得部22によってユーザが滞在中から移動中になったと判定された場合に、滞在中と判定されたエリアが出発エリアとされる。「到着エリア」に記憶されるデータは、移動経路IDにより識別される移動経路の到着エリア(移動経路の終端(到着地点)を含むエリア)の空間的範囲を定めることができる情報である。ユーザ情報取得部22によってユーザが移動中から滞在中になったと判定された場合に、滞在中と判定されたエリアが到着エリアとされる。「通過エリア」に記憶されるデータは、移動経路IDにより識別される移動経路を移動する間にユーザが通過したエリア(出発エリア及び到着エリアを除く)の空間的範囲を定めることができる情報である。ユーザ情報取得部22によってユーザが移動中と判定された場合に、その判定に用いられたユーザが存在すると推定されたエリアが通過エリアとされる。「通過回数」に記憶されるデータは、移動経路IDにより識別される移動経路をユーザが移動した回数を示す情報である。後述するように、ユーザ情報取得部22によって推定された移動経路が移動経路IDにより識別される移動経路と対応していると判定されるごとに、通過回数を1だけ増加して更新する。なお、出発エリア、到着エリア、通過エリアの各エリア情報に、そのエリアを通過した時刻を含めてもよい。
ユーザ情報予測部28は、ユーザ行動履歴格納部27に格納された情報に基づいて、ユーザの今後の位置情報及びユーザの今後の行動情報を予測するユーザ情報予測手段として機能するものである。ユーザ情報予測部28における位置情報、行動情報の予測方法について具体的に説明する。ユーザ情報予測部28は、ユーザ情報取得部22から、ユーザの現在の位置情報、移動手段情報、移動経路情報を受信すると、ユーザ行動履歴格納部27を参照して、ユーザの現在の移動経路情報が示す移動経路に含まれるエリアが、ユーザの過去の移動経路と共通領域を有するか判定する。ユーザの現在の移動経路情報が示す移動経路に含まれるエリアが、ユーザの過去の移動経路と予め設定された割合以上の共通領域を有する場合には、ユーザ情報予測部28は、ユーザの現在の移動経路が、過去の移動経路に対応していると判定する。さらに、ユーザ情報予測部28は、対応すると判定された過去の移動経路に含まれるエリアのうち、現在の移動経路と共通領域を有しない「通過エリア」、「到着エリア」をユーザ行動履歴格納部27から取得し、それらのエリアを含む経路を現在の移動経路の現在地以降の移動経路とする。そして、現在地以降の移動経路に含まれる位置をユーザの今後の位置として予測する。
なお、ユーザ情報予測部28は、ユーザの現在の位置情報が示す位置(あるいは、ユーザが現在存在するエリア)と過去の移動経路との距離が、Dth3メートル以下である場合に、ユーザが当該過去の移動経路を移動しているものと判定するようにしてもよい。Dth3は、ユーザ情報取得部22に設定されているDth2と同等の値であって、曝露量推定装置2aの管理者によってユーザ情報予測部28に予め設定されている。
また、ユーザ情報予測部28は、ユーザ行動履歴格納部27を参照し、対応すると判定された過去の移動経路に対応付けられた移動手段情報、エリア属性情報を取得して、現在地以降のユーザの移動手段情報、エリア属性情報とするようにしてもよい。その際、空間的に重複する移動経路が複数存在する場合には、今回と同じ移動時間帯に通過した回数が最も多い経路のみを絞り込んでもよいし、移動手段が同一である移動経路のみを絞り込んでもよい。あるいは、複数の移動経路を予測結果としてもよい。さらに、ユーザ情報予測部28は、ユーザ情報取得部22により取得された曝露対策情報が示す曝露対策を、今後も継続して行うものとして、当該曝露対策情報をユーザの今後の曝露対策情報とするようにしてもよい。
曝露量推定部25aは、第1実施形態の曝露量推定部25の機能に加えて、さらにユーザ情報予測部28により予測されたユーザの位置情報に応じた環境情報と、ユーザ情報予測部28により予測されたユーザの行動情報に対応する曝露率と、に基づいて、曝露対象の曝露量を予測する曝露量推定手段として機能するものである。ここで、予測されたユーザの行動情報には、ユーザの移動手段情報、ユーザのエリア属性情報の少なくともいずれかが含まれる。予測されたユーザの行動情報に、ユーザの曝露対策情報をさらに含めてもよい。
曝露量推定部25aにおける曝露量の予測方法について具体的に説明する。ここでは、曝露率格納部24に、エリア属性情報に対して反射率が対応付けられて格納されており、曝露対策情報に対して低減率が対応付けられて格納されている場合について説明を行う。まず、曝露量推定部25aは、ユーザ情報予測部28により予測されたユーザの位置情報に応じた環境情報を、環境情報格納部23を参照して取得する。ユーザの位置情報に応じた環境情報が、環境情報格納部23に格納されていない場合には、第1実施形態と同様に式(1)により算出する。なお、ユーザの曝露量を予測する場合には、測定場所識別情報nが示す測定場所における曝露対象種別bの時刻tに最も近い測定時刻での環境情報s(t、n、b)は、環境情報収集装置3から取得した実測値でなく、外部サーバから取得した予報値を用いるものとする。ここで、時刻tは、予測された位置にユーザが到着すると予測される時刻であって、この時刻tは、予測された移動手段に基づいて予測することができる。例えば、予測された移動手段が自転車であれば、ユーザは15km/hの移動速度で移動するものとして、予測された位置にユーザが到着する時刻を予測することができる。
次に、曝露量推定部25aは、ユーザ情報予測部28により予測されたユーザの移動手段に対応する曝露対象種別bの曝露率α(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。また、ユーザ情報予測部28によりユーザのエリア属性情報が予測された場合は、曝露量推定部25aは、そのエリア属性情報に対応する曝露対象種別bの反射率β(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。さらに、ユーザ情報予測部28によりユーザの曝露対策情報が予測された場合は、曝露量推定部25aは、その曝露対策情報に対応する曝露対象種別bの低減率γ(b)を、曝露率格納部24を参照して取得する。そして、環境情報格納部23から取得した、あるいは、式(1)により算出した時刻tにおける位置情報pが示す位置での曝露対象種別bの環境情報S(t、p、b)と、曝露率α(b)、反射率β(b)、低減率γ(b)とに基づいて、ユーザの時刻tにおける曝露対象種別bの曝露量e(t、b)を、第1実施形態と同様に式(2)により算出する。なお、ユーザの移動手段情報が予測されなかった場合は、α(b)=1、ユーザのエリア属性情報が予測されなかった場合は、β(b)=0、ユーザの曝露対策情報が予測されなかった場合は、γ(b)=1として式(2)の計算を行う。
続いて、図15のフローチャートを用いて、第2実施形態に係る曝露量推定システム1aの動作について説明する。
S301〜S304は、第1実施形態に係る曝露量システム1の動作S201〜S204と同様であるので、その説明を省略するが、S301において取得された位置情報、S302において推定されたユーザの移動経路情報、移動手段情報、エリア属性情報は、ユーザ行動履歴格納部27に格納される。次に、ユーザ情報予測部28によって、ユーザ行動履歴格納部27が参照され、ユーザ情報取得部22において推定された移動経路に対応付けられた情報に基づいて、ユーザの移動経路及び移動手段が予測され、予測された移動経路に基づいて、位置情報が予測される(S305)。次に、曝露量推定部25aによって、ユーザ情報予測部28において予測されたユーザの位置情報に対応する環境情報が環境情報格納部23aから取得される(S306)。ここで、ユーザの位置情報に対応する環境情報が環境情報格納部23aに格納されていない場合には、その環境情報は上述の式(1)に基づいて算出される。次に、曝露量推定部25aによって、ユーザ情報予測部28において予測されたユーザの移動手段、エリア属性、曝露対策情報に対応する曝露率(反射率、低減率)が曝露率格納部24から取得され、環境情報と曝露率(反射率、低減率)とに基づいて、ユーザの曝露量が予測される(S307)。最後に、曝露量出力部26によって、曝露量推定部25aにおいて推定された曝露量及び予測された曝露量がユーザ情報収集装置4に出力され、ユーザ情報収集装置4の表示部に表示される(S308、曝露量出力ステップ)。上記S305〜S308は、ユーザ情報収集装置4から曝露量予測の指示を受信した場合等に実施されることが好ましい。
従来は、ユーザの行動履歴について、ユーザに対して登録されたスケジュールに基づいて把握していたが、スケジューラを使用する方法では、予定の未登録や変更により、実際の行動と異なる場合がある。しかしながら、上記第2実施形態の曝露量推定システム1aによれば、ユーザの移動経路、移動手段を予測することで、上記課題を解決することを可能とし、予測した移動経路、移動手段に基づいて今後の曝露対象の曝露量を予測することができ、ユーザが曝露の防止・予防対策を立てることを可能とする。例えば、ユーザが電車によって移動していると予測された場合には、屋外に対する電車内の曝露率を考慮して、ユーザの曝露量を予測することで、曝露量予測の精度を向上することができる。
上記第2実施形態によれば、ユーザの曝露対策の状況を予測し、予測された曝露対策に応じて曝露率を推定することができ、環境情報の曝露量をより正確に予測することができる。例えば、ユーザが花粉対策として高性能のマスクを使用すると予測された場合には、そのマスクの使用によりユーザが花粉に曝露する量が減少すると考えられることから、曝露率を補正して曝露量の予測を行うため、ユーザの曝露量をより正確に予測することができる。
上記第2実施形態によれば、ユーザが今後存在すると予測される位置における環境情報が得られなくても、近傍の環境情報の予報値から当該位置の環境情報を予測でき、曝露量の予測をより確実に実施することができる。ユーザが今後存在すると予測される位置の近傍N個の場所の予報値に対して、ユーザが今後存在すると予測される位置と各場所との間の距離の逆数による加重平均を行うことにより、ユーザが今後存在すると予測される位置での環境情報を予測することができ、曝露量予測をより確実に実施することができる。