JP5517238B2 - エマルション組成物 - Google Patents
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詳細には、本発明の各態様は以下の通りである。
また、例えば、非イオン型グループとしては、
ポリオキシエチレン高級脂肪酸(Cn)エステル/高級脂肪酸(Cn)・モノ、ジ、トリエタノールアミド/ポリオキシエチレン高級アルコール(Cn)エーテル/ポリオキシエチレン高級アミン(Cn)/ポリオキシエチレン脂肪酸(Cn)アミド/ポリオキシエチレン・ポリプロピレンオキシドプロック共重合物(プルロニック系)/アルキル鎖(Cn)脂肪酸・プルロニックエーテル及びエステル/ポリオキシエチレン高級脂肪酸・ショ糖エステル等が挙げられる。上述したものが代表的なもので、水中に油滴を乳化分散する所謂O/W型エマルションや油中に水滴を乳化分散する所謂W/O型エマルションヘの乳化剤であり、本発明では後述するダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を水中へ分散させる水分散用分散剤及び油中へ分散させる油分散用分散剤と干渉してダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子の分散を阻害して界面活性剤としての効果を阻害しないものであればこれに限定されない。本明細書においては、特に断りのない場合は、これらを全て包含するものとする。
又、各実施例に記載するダイヤモンド質超微粒子の上述した各種分散態様の組成物製造においては、ダイヤモンド質超微粒子X分散体を次のように区別して使用することとする。
「ダイヤモンド質超微粒子水分散原料体」:
本発明のエマルション組成物の製造工程上、微粒子表面が既に親水化した出発原料を単に水中に機械的に分散したもの。
「分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体(DW)」:
水分散用ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)で水中に分散処理した分散液。本分散体は水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を分散したエマルション組成物の製造に使用するため、上述したダイヤモンド質超微粒子のエマルション組成物中の分散態様と関連づけて、DWと記号化することもある。
「分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子油分散体(DO)」:
上記(DW)を脱水処理して得られる親水性のダイヤモンド質超微粒子を、基油(P−1)中に油分散用ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)を溶解させた中で疎水化処理と同時に基油(P−1)に分散した分散液。 上述したダイヤモンド質超微粒子のエマルション組成物中の分散態様と関連づけて、DOと記号化することもある。本分散体は、油相(O相)中にダイヤモンド質超微粒子を分散したエマルション組成物の基油成分そのもの或いは基油成分の一部となるため、エマルション組成物製造の説明では、後述するようにダイヤモンド質超微粒子油分散体:基油P−2と簡略して呼ぶこととする。
なお、上記「分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体」を脱水処理して得られるものを「水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤」(或いは、「水分散用ダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子」と呼ぶこともある)、それをn−ヘキサン等の分散媒中で油分散用分散剤(OS)で疎水化処理後、分散媒を蒸発したものを「油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤」(或いは、「油分散用ダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子」と呼ぶこともある)と以後明細書中で呼ぶことがある。
他方、多相エマルションは、複合エマルションとも言い、複数の相からなる、水中油中水型(W/O/W)、油中水中油型(O/W/O)のことをいう。本願において多重のエマルション構成は、転相乳化で得られるO/W型エマルションの形成後に、添加物質の持つ特性を強調する目的で添加して得られる他のO/W型エマルションとの2種、またはそれ以上のO/W型エマルションが共存する複数のO/W型エマルション構成である。また、油中水中油(O/W/O)、または水中油中水(W/O/W)などの多相エマルションとの共存も含まれる。
上記した平均粒子径は、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の水相(W相)中へ添加・分散する制約であるが、油相(O相)内に添加・分散する場合には、その平均粒子径については、油滴径に制約されることは明らかである。エマルション(乳濁色)タイプの場合は、その油滴径は、1から10ミクロンであり、マイクロエマルションタイプの場合は、0.1から1ミクロンである。従って、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を油相(O相)内に添加・分散する場合には、例えば、それぞれのエマルションタイプ油滴径の1/2から1/100以下の平均粒子径であることが好ましい。
これらの潤滑部材は、基本的には、本発明のエマルション組成物からなるコーティング剤を基材表面に供給し、慣らし運転やその他の手法でコーティング処理後、乾燥することにより表面が改質された潤滑部材を製造することができる。
W/O型エマルション組成物は、例えば転相温度の違い等を除けば、基本的にはO/W型の構成を逆転させたものであり、界面活性剤(分散剤等)や乳化剤の使用については大きな違いはない。本構成のポイントは、本願発明の基礎となる、ダイヤモンド質超微粒子を添加したO/W型エマルション組成物の場合と同様に本来研磨剤であるダイヤモンド質超微粒子の研磨作用を最小限に抑える微粒子粒子径の最適化(凝集徑も含め100nm以下)とダイヤモンド質超微粒子被覆層、濃縮層の主たる形成機能の発揚である水相/油相界面への界面活性剤の助けによるダイヤモンド質超微粒子の選択配列と水滴の摩擦面への吸着を実現することである。W/O型エマルション組成物の代表例の一つは、ドライクリーニング剤であり、O相中に可溶化したのするにある。
CBNとは、ダイヤモンドと同一の結晶構造を有することから、その硬さ特性は、ダイヤモンドに次ぐものであり、耐熱合金や鋼等の研削環境下でダイヤモンドと反応(ダイヤモンドの黒鉛化を通じて炭素質の被削材への溶解・吸収等)しやすい難削材の研削加工用砥粒として使用されているものである。従って、本願発明の基礎となる、ダイヤモンド質超微粒子の場合と同様に、潤滑作用へその使用仕様や機能を発揮するための作用構成を工夫することにより摩擦特性が大幅に向上することが期待できる。CBNの特徴は、前記したように摩擦環境下(研削環境に類似)で鋼を始めとする金属部材との摩擦反応性が極めて小さいことであり、黒鉛化(ダイヤモンド構造の立方晶から黒鉛構造の六方晶への構造相転移(温度)で、ダイヤモンド質超微粒子の場合は大気中で500℃〜700℃)に対応する構造相転移温度も1000℃と耐熱性が高い点にある。従って、潤滑剤やコーティング剤、潤滑作用や耐エロージョン作用等々を有する被覆層、濃縮層(コーティング層)や同層を有する部品への適用においては、摩擦特性の中でも特に耐荷重能(摩擦負荷)をダイヤモンド質超微粒子使用の場合に比べて大幅に向上できる可能性が高いことになる。 本被覆層、濃縮層の主たる形成機能は、エマルション組成物中に添加されたダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子が、界面活性剤(分散剤等)の助けで油滴或るいは水滴等の異相(水相と油相)界面へ選択配列する工夫と油滴、水滴の摩擦面への吸着、微粒子粒子径の最適化(凝集徑も含め100nm以下)で実現できるものである。微粒子の摩擦面への固定安定性には、その硬さ特性が不可欠であり、微粒子素材の摩擦係数、熱伝導特性も潤滑性能を左右するため、ダイヤモンド及びダイヤモンド構造のCBN超微粒子の選択は最適である。前記したようにCBN超微粒子はダイヤモンド質超微粒子と同様な結晶構造と化学結合やその特性を有することから、分散剤や乳化剤等の界面活性剤選択はダイヤモンド質超微粒子の結果を活用できる点も利点である。ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を選択配列する異相界面には、本発明では油滴、水滴等、環境に配慮したものをエマルション組成物という形態にて使用しているが、例えば、固体微粒子等の異相界面も使用可能である。
1.著しく低い摩擦係数、良好な耐摩耗特性を示すことから、摩擦・摩耗現象が関与する過酷な環境下の摩擦応用分野にその応用範囲を大幅に拡大できる。
2.分散剤や乳化剤との組み合わせ、ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子の分散形態を制御することができ、極微量添加でも摩擦特性に著しい効果が得られ、高価なナノ超微粒子を使用しても製品コストを著しく低減できる。
3.基本的に生分解性が極めて高く、PoHS(ノルウェー有害化学物質規制法)やPRTR(化学物質排出把握管理推進法)に該当しない組成から成り、枯渇資源に頼らない再生可能なエネルギー資源を利用し、安全性が高く水洗可能なことから、環境負荷と洗浄負担を同時に低減できる。
4.ダイヤモンド質超微粒子濃縮層の生成で、低い摩擦係数と安定した摩擦疲労特性が得られることから、信頼性の高い潤滑剤組成物が提供できる。
5.CBN超微粒子濃縮層の生成で、摩擦面の耐熱性がダイヤモンド質超微粒子の場合よりも向上し、摩擦特性としての耐荷重能(摩擦負荷)が大幅に向上する。
(ダイヤモンド質超微粒子)
ダイヤモンド質超微粒子には、爆合法で得られたものを使用した。Forth Moment法によるX線解析で評価したダイヤモンド超微粒子の一次粒子径は4〜6nmであり、純度は99wt%以上である。
該ダイヤモンド質超微粒子乾燥粉を湿式分散法で水分散処理して、平均粒子径が40nmで、固体濃度5wt%のダイヤモンド質超微粒子水分散原料体を作製した。該ダイヤモンド質超微粒子水分散原料体中のダイヤモンド質超微粒子のゼータ電位を計測したところ、―50mV付近であり、水分散安定性は一応達成できていること、本分散系でのゼータ電位の値は基本的に平均粒子径に依存しないこと(数nm〜100nmに渡り確認)を確認し、以後の基礎エマルション(A)にダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物製造の基本原料体とした。
該ダイヤモンド質超微粒子水分散原料体の摩擦特性を固体濃度を変えて評価した結果を表1に示す。すなわち、表1は、ダイヤモンド質超微粒子を含む水分散体の摩擦係数に及ぼす固体濃度依存性を示すものである。表1においては、「ND」はダイヤモンド質超微粒子を意味する。
ダイヤモンド質超微粒子の固体濃度を1.0wt%とし、分散剤添加濃度を0.5wt%と一定にした際の各種分散剤を添加した分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を作製した。分散剤が脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤である分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を「サンプルND」とする。同様に、分散剤がポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩から成る陰イオン型分散剤であるものを「サンプルAD」、アラニン型ポリオキシエチレン付加物から成る両性型分散剤であるものを「サンプルRD」、高級アミン・低級脂肪酸塩から成る陽イオン型分散剤であるものを「サンプルCD」、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物からなる非イオン型分散剤であるものを「サンプルBD」とする。
陰イオン型グループとしては、
高級脂肪酸/ポリオキシエチレン・アルキル鎖(Cn)・エーテルカルボン酸/ひまし油脂肪酸のヒドロキシル基部にアルキル鎖(Cn)脂肪酸が結合した2量体/α−オレフィン(Cn)・硫酸エステル/高級脂肪酸(Cn)メチルエステル・α−硫酸エステル/石油(分子量が400から1000)スルホネート、サルフェート/高級脂肪酸・硫酸エステル及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩、モノ、ジ、トリエタノールアミン塩等、
両性型グループとしては、
ヒドロキシアルキル−α又は、β位−アラニン型およびそのアルカリ金属塩、重金属塩、モノ、ジ、トリエタノールアミン塩、及びそれらのアルキル基にエチレンオキシド(EO)nの1mol以上が結合したもの/アルキルカルボキシベタイン型・四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム塩/レシチン等、
非イオン型グループとしては、
ポリオキシエチレン高級脂肪酸(Cn)エステル/高級脂肪酸(Cn)・モノ、ジ、トリエタノールアミド/ポリオキシエチレン高級アルコール(Cn)エーテル/ポリオキシエチレン高級アミン(Cn)エーテル/ポリオキシエチレン脂肪酸(Cn)アミド/ポリオキシエチレン・ポリプロピレンオキシドブロック共重合物(プルロニック系)/アルキル鎖(Cn)脂肪酸・プルロニックエーテル及びエステル/ポリオキシエチレン高級脂肪酸・ショ糖エステル等、
から選ばれる分散剤の使用が適する。これらは、後述する基礎エマルション(A)用の乳化剤(EM)と干渉してダイヤモンド質超微粒子の分散を阻害しないものであればこれに限定されないことは当然のことである。
本参考例のエマルション組成物の製造においては、油滴が乳化分散した基礎エマルション(A)の水相(W相)中に、前記した分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体(DW:本分散体は水で希釈されることになるが、エマルション組成物の水相(W相)構成要素として以下同様に記号化)を水中に添加する。従って、本実施例では、前記水分散用ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)と基礎エマルション(A)用乳化剤(EM)との界面活性剤のイオン関係において、分散安定性や摩擦特性に悪影響を及ぼさない、適合した組み合わせが好ましい。さらに好ましくは、本実施例では、生分解性に優れることと非環境ホルモン物質であることを前提として、前記ダイヤモンド質超微粒子の水分散処理で選択した分散剤との適合性を鋭意検討した。この乳化剤選択における最も重要な基準は、ダイヤモンド質超微粒子の安定分散、油滴の安定性、そして水相(W相)中に前記分散剤処理したダイヤモンド質超微粒子を含むエマルション組成物の摩擦特性である。
陰イオン型グループとしては、
高級脂肪酸(Cn)/ポリオキシエチレン(n=3以上のもの)・アルキル鎖(Cn)・エーテルカルボン酸/ひまし油脂肪酸のヒドロキシル基部にアルキル鎖(Cn)脂肪酸がエステル結合した2量体/α−オレフィン(Cn)・硫酸エステル/高級脂肪酸(Cn)メチルエステル・α−硫酸エステル/石油(分子量が400から1000)スルホネート、サルフェート/高級脂肪酸・硫酸エステル及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重金属塩、モノ、ジ、トリエタノールアミン塩等、
陽イオン型グループとしては、アルキル鎖(Cn)・第四級アンモニウム塩等、
両性型グループとしては、
ヒドロキシアルキル−α又は、β位−アラニン型およびそのアルカリ金属塩、重金属塩、及びモノ、ジ、トリエタノールアミン塩、及びそれらのアルキル鎖にエチレンオキシド(EO)nの1mo1以上が結合したもの//アルキルカルボキシベタイン型・四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム塩/レシチン等、
非イオン型グループとしては、
ポリオキシエチレン高級脂肪酸(Cn)エステル/高級脂肪酸(Cn)・モノ、ジ、トリエタノールアミド/ポリオキシエチレン高級アルコール(Cn)エーテル/ポリオキシエチレン高級アミン(Cn)/ポリオキシエチレン脂肪酸(Cn)アミド/ポリオキシエチレン・ポリプロピレンオキシドプロック共重合物(プルロニック系)/アルキル鎖(Cn)脂肪酸・プルロニックエーテル及びエステル/ポリオキシエチレン高級脂肪酸・ショ糖エステル等、から選ばれる一種類以上の乳化剤の使用が適するが、これに限定されるものではないことを明らかとした。
次に、上記乳化剤及び分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を用いたO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物である潤滑剤組成物の製造実施例をタイプ別に以下に示す。
{エマルション(乳濁色)タイプ}
オレイン酸主体の油脂(ナタネ油)6wt%とオレイン酸メチルエステル3wt%を混合し、それに、乳化剤として、ポリオキシエチレン(n=6mol)・オレイン酸エステル2wt%、オレイン酸カリウム塩4wt%を混合、攪拌してエマルション基油成分を製造した。それに水を6wt%加えて油相(O相)と水相(W相)の比率が7:3の粘度が最大となったところで良く練り、W/OからO/Wへの転相乳化を完結し、基礎エマルション(A)を製造した。本タイプの組成物の製造には、ニーダーを用いた。次に、分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体(固体濃度は2wt%に、分散剤のポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤を、それぞれ1wt%ずつ複合添加処理したダイヤモンド質超微粒子水分散体)を15wt%加えて攪拌し、最後に残部の調整水を64wt%加える。本タイプでは基油成分有効濃度15wt%で、ダイヤモンド質超微粒子含有量(固体濃度)は0.3wt%とした。最後に消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのエマルションを添加した。
例えば、本手法で製造した分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体から水分を除去して得られる親水性の表面を有するダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子、更には陰イオン型、両性型、非イオン型のうち少なくとも一種以上の水分散用分散剤を有するダイヤモンド質超微粒子を核とする固体潤滑剤微粒子、特に、陰イオン型の分散剤と非イオン型の分散剤の組み合わせからなる当該固体潤滑剤微粒子は、水や各種水溶性溶媒等への分散性は再現性を含めすこぶる良好であり、水分散用ダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子として有用である。また、陰イオン型の分散剤と非イオン型の分散剤の組み合わせからなる当該固体潤滑剤微粒子は、水系溶媒に分散して摩擦係数を下げる必要がある使用環境仕様には本実施例に示すごとく最適な固体潤滑剤微粒子である。これらの当該固体潤滑剤微粒子は、保管容積の減少や、分散体保管中の経時変化(分散粒子表面の変質等による凝集(含むブラウン運動凝集)の発生等々)を防止できることも利点である。更に本発明のダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物製造に適用し、摩擦特性を確認した参考例について記載する。
表面に水分散用分散剤を有する当該固体潤滑剤微粒子を前述の基礎エマルション(A)の水相(W相)中に0.15wt%(全配合組成として固体濃度にて)添加・攪拌し、参考例1に記載の基油成分有効濃度が15wt%とした(A−DW)組成物に類似の形態を作製した。振子式摩擦試験機で摩擦特性を調べた結果、摩擦係数が0.110と、良好な値を示した。従って、表面に水分散用分散剤を有する当該固体潤滑剤微粒子は、参考例1で使用する分散処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体と同等の水への容易分散性を示し、水に容易に再分散できることから、安全性に優れた従来にない固体潤滑剤として極めて利用価値が高いことを実証した。本参考例によれば、従来にない水分散安定性と安全性を併せ持つ水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を提供できる。
精製n−パラフィン(粘度:10cSt)2wt%とオレイン酸メチルエステル4wt%を基油として混合し、それに乳化剤として、ポリオキシエチレン(n=6mo1)・オレイン酸エステル2wt%、ポリオキシエチレン(n=9mo1)・オレイルアルコールエーテル3wt%、オレイン酸カリウム塩4wt%を混合、攪拌してマイクロエマルション基油成分を製造した。次に上述したエマルション(乳濁色)タイプの場合と同じ分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体15wt%を加え、調整水を70wt%加えて調整して自己乳化させ、「基油成分有効濃度」を15wt%とした。なお、ダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径、固体濃度、分散剤のポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤とその添加量はエマルション(乳濁色)タイプと同様である。最後に消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのエマルションを添加した。本タイプの組成物の製造には、攪拌機を用いた。
上記したO/W型エマルションタイプ、マイクロエマルション(可溶化型)タイプの油相(O相)と水相(W相)の比率を適時調整することで、粘度特性の異なるペースト状(グリース様)タイプ(ペースト状エマルションタイプ)(ここでは、上述したようにエマルション(乳濁色)タイプ、マイクロエマルション(可溶化型)タイプを総称してエマルションタイプとして説明する)の組成物を製造できる。本実施例では、マイクロエマルション(可溶化型)タイプのペースト状組成物の製造法の一例を説明する。
次に、本製造法にて得られたエマルション(乳濁色)タイプのダイヤモンド潤滑剤組成物の摩擦特性について説明する。
また、ダイヤモンド超微粒子の製造・精製過程で制御・残留する炭素質(黒鉛質も含む)や分散共存させる広義の分類の炭素質は、優れた潤滑性能に加え、前記したO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物中では、防腐剤無添加でも水相の高い防腐作用を発揮する利点がある。検証するために、20℃で2年間密封保管した前記した実施例1タイプのO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物を、寒天培地のバイオチェッカー(三愛石油製)でバクテリアの有無を調べたが、存在に基づく発色が全く無かったことから、長期に亘り腐敗しないことが確認できた。
(分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体)
本発明の実施例2の潤滑剤組成物は、実施例1にて詳述した分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を出発原料とする。
1.爆合法並びに従来の静的超高圧法で製造されるダイヤモンド質超微粒子は通常湿式で高純度化の酸処理を行うため微粒子表面は親水化している。
2.本親水化表面を有する微粒子にあらかじめ安定な親水化の分散剤処理を施すことにより微粒子表面を均一性の高い疎水化処理表面として表面処理修飾が可能である。
ダイヤモンド質超微粒子を油相(O相)に分散したエマルション組成物の製造では、ダイヤモンド質超微粒子の安定した油中分散体を得る必要がある。そのためには、分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体から水分を除去して、前記した親水性の表面を有する「水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤」と同様の組成物を作製する。水分の除去は、本参考例では、分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を100℃に温めて行ったが、分散剤の機能を損なわない程度の温度で行うことが好ましい。その他、真空蒸留やフリーズドドライなど加温以外の方法で水分を除去してもよい。
次に、親水性の「水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤」を油相(O相)に添加するために油分散体にする。油分散体にするには、油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)を溶解した基油成分中に分散させ、ダイヤモンド質超微粒子油分散体を得る。本実施例では、エマルション組成物の油相(O相)中にダイヤモンド質超微粒子を容易に分散させる目的で、基油に予め分散させた当該油分散体(後述する基油P−2)を作製する。
極性基グループとしては、
ポリオキシエチレン・アルキル鎖(Cn)・エーテルカルボン酸/高級(アルキル鎖R=8から24以下)脂肪酸/ひまし油脂肪酸/脂肪酸スルホネート及びサルフェート/石油(分子量が400から1000)スルホネート及びこれらカルシウム塩以外のアルカリ土類金属、重金属塩/ヒドロキシアルキル(アルキル鎖がC12からC18のもの)−α又は、β位−アラニン型/アルキルカルボキシベタイン型・四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム塩、アルカリ土類金属、重金属塩/高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル及びこれらのアルカリ金属塩、及びモノ、ジ、トリエタノールアミン塩/高級(Cn)アミンと高級(Cn)脂肪酸の塩、
非極性グループとしては、
ポリオキシエチレン(n=3以上のもの)・アルキル鎖(Cn)・エーテルカルボン酸カルシウム塩/高級(Cn)脂肪酸カルシウム塩/脂肪酸スルホネート及びサルフェートのカルシウム塩/石油(分子量が400から1000)スルホネートカルシウム塩及びこれらカルシウム塩以外のアルカリ土類金属、重金属塩/高級(Cn)脂肪酸アミド/ヒドロキシアルキル(アルキル鎖がC12から18のもの)α−又は、β位−アラニン型カルシウム塩/アルキルカルボキンベタイン型・アルカリ土類金属、重金属塩/レシチン/高級(Cn)脂肪酸・高級(Cn)アルコールアミド/高級(Cn)脂肪酸・高級(Cn)アルコールエステル/ソルビタン・脂肪酸(Cn)エステル/ペンタエリスリトール・脂肪酸(Cn)エステル/高級(Cn)脂肪酸の部分エステル又は、フルエステル及びエーテル等から少なくとも一種以上選択するもので、
その他、P−1:炭化水素油系、V:動植物油脂系、S:合成油系、WSの中で、界面活性を失わない範囲で、且つ親水性/疎水性のバランス(HLB)が水溶性のものより小さい界面活性剤等が代表的なものであり、上記する基礎エマルション(A)用乳化剤(EM)や本油分散用ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)間で適合してダイヤモンド質超微粒子の分散を阻害しないものであればこれに限定されない。また、水分散用ダイヤモンド質超微粒子分散剤の場合と同様に摩擦特性の阻害要因とならないよう十分検討して上記油溶性の分散剤から選ばれることが適切である。(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物において、油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)の使用が必要不可欠である。
(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物を作製するにあたり、後述する油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を油相(O相)の基油中に直接添加しても良いが、添加量が微量であるため、基油中に予め規定量のダイヤモンド質超微粒子を分散した分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子油分散体を製造し、基油成分の一部として配合することが好ましい。
油中に添加・分散するダイヤモンド質超微粒子(前記したDO形態に使用)は、基本的には、前記した水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤の表面を油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)で疎水化したものである。当該水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を目的とする組成物の粘度や潤滑性能に影響する基油成分(P−1)等中に油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)と共に所望量を添加・分散して油分散用ダイヤモンド質超微粒子を含有する基油P−2を製造する。ここで、水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤には、水分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)が同時に添加されていることになるが、本分散剤(WS)は、基油成分の一部とし、すなわち、本実施例ではn−パラフィンの配合組成の中に含めることとし、特にことわりのない限りにおいては、以後も同様に取り扱い、該油分散体の配合組成としては明記しない。本実施例では、ダイヤモンド質超微粒子との重量比で0.6の水分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)を使用している。(後述するようにダイヤモンド質超微粒子を固体濃度で10wt%基油(P−1)等中に添加すると、WS分散剤は結果的に6wt%添加されることになる。)
水分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)は、ポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤50wt%と、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤50wt%との複合の分散剤とし、本実施例ではこの複合分散剤で処理された水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を使用した。
作製は、先ず、油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)として6wt%の高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩を、20wt%のn−パラフィンで希釈し、良く溶解させた後、水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤をダイヤモンド質超微粒子固体濃度で10wt%添加し、残部のn−パラフィン64wt%で希釈して固体濃度が10wt%のダイヤモンド質超微粒子油分散体を製造する。これを基油P−2として以下の参考例に供する。
ダイヤモンド質超微粒子を核とし、表面に油分散用分散剤を有する油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤微粒子は、次のように製造できる。例えば、上記84wt%のn−パラフィンの代わりに、n−ヘキサンに6wt%の高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩を希釈溶解し、前記水を除去した水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を10wt%(固体濃度にて)添加して超音波で油(疎水)分散を確実に行った後に、n−ヘキサンを蒸発させればよい。n−ヘキサンに分散処理中の当該分散体の分散状態を粒度分布測定装置で確認することが更に好ましい。本手法で製造されたダイヤモンド質超微粒子を核とし、表面に油分散用分散剤を有する固体潤滑剤微粒子は、各種の油や疎水性溶媒等に再現よく再分散することが可能であり、油分散用ダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子として有用である。また、水分散用ダイヤモンド質超微粒子の固体潤滑剤微粒子と同様に保管容積の減少や、分散体保管中の経時変化(ブラウン凝集等による分散粒子径の増大)を最小化できることも利点である。本例は参考の態様の一例であり油分散用分散剤(OS)は本例に限定されるものでないことは明らかである。更に、本発明のダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物製造に適用し、摩擦特性を確認した参考例について記載する。
表面に油分散用分散剤を有する固体潤滑剤微粒子を前述の基礎エマルション(A)の油相(O相)の基油中に0.3wt%(全配合組成として固体濃度にて)添加し、基油成分有効濃度が15wt%とした(A−DO)類似の形態を作製し、振子式摩擦試験機で摩擦特性を調べた結果、摩擦係数が0.103と、極めて良好な値を示した。従って、表面に油分散用分散剤(OS)を有する固体潤滑剤微粒子は、参考例2で使用する油分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子を含有する基油(P−2)と同等の分散挙動を示し、非極性溶媒や油に容易に再分散することから、利用価値が高いこと、特に、安全性に優れた従来にない油溶性固体潤滑剤として極めて利用価値が高いことを実証した。本参考例によれば、従来にない油分散安定性と安全性を併せ持つ油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を提供できる。
次に、上記乳化剤及びダイヤモンド質超微粒子油分散体を用いた(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物である潤滑剤組成物の製造参考例をタイプ別に以下に示す。
本参考例で使用する乳化剤については、O/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション形態を形成させる乳化剤で詳述したように、乳化剤選択における最も重要な基準は、油滴の安定分散と油相(O相)中に前記油分散剤で処理したダイヤモンド質超微粒子を含むエマルション組成物の摩擦特性である。これらの基準で鋭意検討したところ、O/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション形態を形成させる乳化剤と同様なグループから選択できることが明らかとなった。本態様での具体的な製造例を以下に示す。なお、以下において、ダイヤモンド質超微粒子油分散体として基油に含有されるダイヤモンド質超微粒子を、特に区別したいときは、「油分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子」と呼ぶ場合もある。
更に、参考例1で記載したマイクロエマルション(可溶化型)タイプの組成物も製造した。即ち、基油としてn−パラフィン2wt%、オレイン酸メチルエステル2wt%、乳化剤として、ポリオキシエチレン(n=6mol)・オレイン酸エステル2wt%、ポリオキシエチレン(n=9mol)・オレイルアルコールエーテル3wt%、オレイン酸カリウム塩3wt%を混合、攪拌した中に、ダイヤモンド質超微粒子油分散体(基油P−2:ダイヤモンド質超微粒子固体濃度10wt%)を3wt%添加してマイクロエマルション基油成分を製造した。次に調整水85wt%を加え自己乳化させた。ダイヤモンド質超微粒子をマイクロエマルション基油成分内に分散内包する本潤滑剤組成物の基油成分有効濃度は15wt%であり、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度は0.3wt%である。最後に消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのエマルションを添加した。本タイプの組成物の製造には同様に攪拌機を用いた。
次に、本製造法にて得られたエマルション(乳濁色)タイプ及びマイクロエマルション(可溶化型)タイプのダイヤモンド潤滑剤組成物の摩擦特性について説明する。
次に、本参考例にて製造した2種(エマルションタイプ、マイクロエマルションタイプ)の(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の摩擦特性について記載する。
前記したように、曾田式振子試験では、テストピースを換えずに連続して測定することで潤滑効果の持続性を評価できることから、上記で作製した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の振子摩擦疲労試験を実施した。その結果を図1及び図2に示す。
(潤滑剤組成物の製造)
次に、上述した、ダイヤモンド質超微粒子の水分散用分散剤(WS)で、複合分散処理したダイヤモンド質超微粒子水分散体と参考例2(エマルションタイプ)で製造したもの双方を、混合・調整して得られた(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物の製造参考例を以下に示した。
先に、分類したように、本タイプ組成物には、油滴粒子径にて、エマルションタイプ(乳濁色)、マイクロエマルションタイプ(可溶化型)があり、更に稠度によりペースト状(グリース様)タイプがあるが、本参考例ではエマルションタイプの製造方法を記述する。
図3は、参考例発明の参考例1−3及び比較例1の潤滑剤組成物のエマルションタイプの摩擦疲労特性を示す図である。なお、図において、Aは、水相(W相)中、油相(O相)中のいずれにもダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)サンプル、すなわち、表7のサンプルA一DO−1500で、これを比較例1とする。
前記した参考例1−3の優れた摩擦疲労挙動を解明するために、Falex試験(ASTM D 2670)を実施し、潤滑剤組成物の違いによる摩擦面の特徴を観察した。試験条件は、20℃、290rpm、荷重1334N、45minである。
参考例1〜3の潤滑剤組成物の良好な潤滑性能が摩擦面へのダイヤモンド質超微粒子の濃縮層形成に起因することを前述のFalex試験から説明した。しかし、EPMA分析から得られる炭素濃縮の情報には、相摩擦する試験片中に含まれる炭素やエマルションを構成する有機質成分に起因する炭素の何らかのメカニズムによる濃縮も同時に起こりうる。そこで、後述するシェル式高速四球試験を用いてダイヤモンド質超微粒子以外の炭素濃縮の有無を検証した。検証の対象とする炭素濃縮の可能性は、1)摩擦試験ボール中の微量炭素由来、2)基油構成成分の有機質出来の2種である。
シェル式高速四球試験の試験条件は、後に詳述するが、0.5inch SUJ2ボール、荷重490N、回転数1000rpm、時間1800secである。検証手法には同様にEPMAを使用した。
図7は、本検証に使用した水中試験(Water)、ダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)試験、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)試験におけるボール(以下、ことわりの無い限り、ボールとは固定球側をいう。)摩擦面の炭素特性X線強度の分布結果を示すものである。
1)の検証では、有機質を含まない蒸留水で摩擦し表面層を強制的に剥ぎ取ったボールの摩擦面の炭素の濃縮について調べたが、炭素特性X線強度は摩擦面以外の摩擦試験ボールと同様にバックグラウンドレベルであり炭素の濃縮は確認できなかった。すなわち、ボールの微量炭素に由来する炭素濃縮はないことが解った(図中Waterに対応)。
2)の検証では、摩擦中に有機質がボールに練り込まれる場合と、有機質反応物質が摩擦熱により生成するフリクションポリマー(重合物・炭化物)由来の可能性がある。これを検証するため、ダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)(基油成分有効濃度:15wt% 表13参照)にて摩擦試験ボールの摩擦面の炭素の濃縮について調べたが、水中試験と同様にバックグラウンドレベル以外に如何なる炭素の濃縮も確認できなかった(図中A(基礎エマルション(A))に対応)。
ダイヤモンド質超微粒子を油相(O相)に含む(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)(基油成分有効濃度:15wt%、ND濃度:0.3wt% 表13参照)について行った試験では、前述のFalex試験と同様に炭素濃縮が明らかに存在することが確認された(図中A−DOに対応)。
更に、濃縮層炭素の由来を確認するために、マイクロラマン分光法でその炭素構造を同定した。1332cm-1近傍のダイヤモンド結合に起因するラマンシフトが得られ、濃縮炭素は確かに油相(O相)に添加・分散したダイヤモンド質超微粒子であることが確認できた。WaterとA(基礎エマルション(A))の結果中の白丸は摩耗痕の径を示すために囲んだものである。また、Waterの摩耗痕が、A、A−DOに比較し小さい理由は、試験条件を同一にした場合、直ちに焼き付いたため、摩擦試験条件は1/2(荷重:245N、回転数:600rpm)に軽減しているためである。
図8には、図7に示した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)のボール摩擦面の炭素濃縮部の高倍率(30,000倍)反射電子組成像を示した。100nm以下のダイヤモンド質超微粒子が点在していることが解る(図中矢印)。
本検証により、Falex試験(線接触)やシェル式高速四球試験(点接触)等の摩擦試験手法に依らず、基礎エマルション(A)に添加・分散したダイヤモンド質超微粒子が摩擦面に濃縮し、所謂、ダイヤモンド質超微粒子の被覆層(コーティング層)を形成することが解った。点接触、線接触の摩擦試験の進行に伴い、接触形態は面状接触に移行する(定常摩擦領域への移行)。設計上、面接触の試験環境においても、片あたり等の排除は事実上難しく、点接触から線接触の摩擦環境をへて、安定した面接触へと移行することが知られている。面状接触の摩擦環境にても同様な確認をおこなったが、この場合にもダイヤモンド質超微粒子の被覆濃縮層が形成できることが解った。後述するように、ダイヤモンド質超微粒子の被覆濃縮層は、比摩耗量の減少や摩擦係数の低下(静摩擦係数、動摩擦係数の双方)、摩擦トルクの低減に効果的に作用する。従って、ダイヤモンド質超微粒子を含む本エマルション組成物(A−DW、A−DO、A−DW−DO)は、ダイヤモンド質超微粒子のコーティング剤としても産業上極めて有用である。同時に、ダイヤモンド質超微粒子被覆濃縮層(ダイヤモンド質超微粒子コーティング層)やその形成方法、ダイヤモンド質超微粒子被覆濃縮層(同コーティング層)を有する各種摺動部材が、安価に且つ比較的容易に実現できることから、潤滑性能の高い被覆層並びにその形成技術等としても極めて有用であることが解った。
更に本検証では、ダイヤモンド質超微粒子濃縮層中にダイヤモンド質超微粒子以外の遊離炭素等の検出はできなかったが、本発明におけるダイヤモンド質超微粒子濃縮層の形成では、ダイヤモンド構造以外の炭素質(例えば、黒鉛、フラーレン等のsp、sp2結合、sp3結合とそれらの混成形態)との複合濃縮を排除するものではないことは明らかである。例えば、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物に油性向上剤やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を同時に添加・分散することで、潤滑性能向上に寄与できる黒鉛やフラーレンを始めとする各種炭素形態の複合濃縮も可能である。本件については、後述する。
潤滑剤組成物に求められる特性として、低い摩擦係数、長時間の安定した摩擦疲労特性、少ない摩擦摩耗量等、優れた潤滑性能があげられることは当然のことである。しかし、各種デバイス、機械やシステムの稼働中に摩擦・摺動部位から潤滑剤組成物の漏れ出しによる無潤滑状態(潤滑剤の枯渇)のトラブル発生時にも最悪の事態としての焼付き等の危険を著しく低減できることは、潤滑剤性能として信頼性が高いと言えることは間違いない。特に、本参考例発明の潤滑剤祖成物は、水相(W相)と油相(O相)から成るエマルション組成物であるため、最も過酷な摩擦条件として、振子摩擦疲労試験途中で摩擦・摺動部から潤滑剤組成物を水洗にて取り除いた際の摩擦疲労挙動を調べる、所謂、潤滑剤枯渇の想定試験を行った。試験条件は、前記した摩擦疲労試験と同様であるが、本発明の潤滑剤中で10回の繰り返し摩擦の後に、摩擦・摺動部の潤滑剤組成物を超音波により水洗浄除去、乾燥後、再度、同一条件で10回の振子摩擦疲労試験を行うものである。
参考例1〜3では、本潤滑剤組成物に分散添加するダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径は40nmを使用した。実施例4〜7では、摩擦特性に及ぼす平均粒子径の影響について記載する。平均粒子径以外の条件は、特に記載のない限り、参考例4、5は、参考例2と、参考例6、7は参考例3と同様な条件で作製した。
参考例1〜3では、添加するダイヤモンド質超微粒子濃度は、全配合組成濃度として最大1wt%程度について詳述した。特に水相(W相)中では、実施例1でゼータ電位に関して記載したように、粒子間の相互作用があり、所謂クラスター化(集合化)しやすい特性を持つ。この現象はダイヤモンド質超微粒子濃度を高めていくと顕著に現れるようになり、一次粒子或いは微小凝集粒子等の平均粒子径で超微粒子の仕様を決定しても、個々の超微粒子を電気的相互作用並びに分散剤等で安定して分散しておくことが難しくなる(例えばブラウン凝集)。すなわち、粒子間拘束の比較的小さな分散状態から凝集体へと変質していくこととなる。このような挙動が明らかに現れる濃度域は10wt%(全配合組成濃度でも同様)を超える濃度であり、この濃度領域で上述した参考例1〜3の潤滑剤につき摩擦特性を評価したところ、摩擦係数はかなり上昇した。
参考例1〜3では、エマルション、マイクロエマルションを構成する基油成分有効濃度を5wt%から25wt%の範囲にて、又ペースト状タイプについては50wt%にて説明した。基油成分有効濃度の上限については、90wt%を超えると、もはやO/W型エマルションとしてその形態を維持することは困難になり、下限として1wt%以下となると基油成分の効果が期待できなくなる。従って、油相(O相)を構成する基油成分有効濃度は1wt%以上、90wt%以下であることが適切である。
上述した参考例の潤滑剤組成物の生分解性を、簡便法として国連にて取り組んでいる「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」に関連して、経済協力開発機構(OECD)が定める測定方法を用いて評価した。本試験法は、化学構造が判っているものや他に分解性に関するデータが得られない場合にのみ、生物化学的酸素要求量(Biochemical oxygen demand):(BOD)を化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand):(COD)で除して得られる比率(BOD/COD)の値を「生分解度」として生分解性の難易度を評価できるものである。(参考文献:オレオサイエンス第5巻第10号 2005)
変形例2(参考例1の変形例)として、ダイヤモンド質超微粒子を含む従来型潤滑剤(ストレートタイプ)を作製した。基油には従来型ストレート油のマシン油#68を用い、表11に示す配合組成にて比較潤滑剤を製造した。この際、固体微粒子或いは極圧剤等の添加剤を添加する際には、ダイヤモンド質超微粒子油分散体の製造と同様に、基油としてn−パラフィン、分散剤としての高級アミド・アルキロール化スルホネート塩、ダイヤモンド質超微粒子等の各種添加剤を混合・攪拌して分散処理後、マシン油#68を混合して所望の固体粒子等濃度のストレートタイプ従来型潤滑剤を製造し、変形例2とした。固体微粒子としては、実施例1〜3で使用した平均粒子径40nmのダイヤモンド質超微粒子、平均粒子径が40nmの二酸化珪素(Si02)、500nmの二硫化モリブデン(MoS2)を、EP添加剤としては塩素化パラフィン(C1結合率:40%)を用いた。それらの添加濃度はそれぞれ1wt%とした。表11は、各種固体潤滑剤を添加した従来型潤滑油の配合組成を示すものである。以下の図表において、サンプル名がBOM、MOS2、MOSI、MOC1(MOCL)であるものは比較例として作製した。これらを総称して比較例2という。サンプル名がMOND(NDMO−1)であるものは変形例2である。
本参考例発明構成の一つであるO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルションにおける水相(W相)中へのダイヤモンド質超微粒子の分散特性とその摩擦疲労挙動に及ぼす分散剤の効果を、陽イオン型分散剤を各種添加して確認した。図12は、分散剤の有無・種類による潤滑剤組成物の摩擦疲労特性を示す図である。図12には、参考例1で水分散安定性評価を実施した、高級アミン・低級脂肪酸塩から成る陽イオン型分散剤(C2ND)と電解質を含む四級アミン塩・RN(CH2)3・X-(ハロゲン)同イオン型分散剤(C1ND)をそれぞれダイヤモンド質超微粒子水分散原料体に添加、分散剤処理した場合の摩擦疲労特性を示した。ダイヤモンド質超微粒子の濃度(固体濃度)は1.0wt%、分散剤濃度は同様に0.5wt%とした。
ダイヤモンド質超微粒子をO/W型エマルションの各相に分散形態を制御することにより、従来のダイヤモンド超微粒子添加ストレートタイプ潤滑剤やグリースで開示されている摩擦係数を大幅に凌ぐ潤滑特性の向上を確認した。摩擦係数に及ぼすダイヤモンド質超微粒子添加効果を有効に引き出すための分散剤による効果を初めて明らかとし、それらの複合添加効果が更に有効である結果を得た。本発明は、バイオハザード問題のないダイヤモンド質超微粒子を用い、使用する基油、乳化剤、分散剤等はPoHS(ノルウェー有害化学物質規制法)やPRTR(化学物質排出把握管理推進法)に該当しない組成で、生分解性に極めて優位な(O/W)型エマルションであることから、極めて優れた潤滑特性を持ち、環境負荷を極限まで低下した従来に無い環境配慮型の潤滑剤組成物が提供できることとなり、以下の著しい効果がえられる。
2.水洗可能で、生分解性を有することから、洗浄、廃棄等でCO2抑制効果を発揮する。
3.摩擦係数が大幅に低下し、摩擦疲労特性が向上する。
4.本参考例発明の潤滑剤組成物は微粒子の濃縮層を形成させることから、従来のCVDやセラミックス処理といった摩耗防止のための耐摩耗性被膜のコーティング作業が、所謂、慣らし運転で容易に出来るので、複雑かつ高価なコーティング処理が不要であり、トラブル発生時も焼付き等のリスクが小さく、高い潤滑信頼性が得られることでその経済効果はすこぶる高い。
以下に本発明の潤滑剤組成物、その製造方法並びに固体潤滑剤微粒子について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(潤滑剤組成物の製造)
(O+CBN超微粒子)/W型エマルション組成物の製造には、参考例1、2に記載した手法と分散剤等の界面活性剤や乳化剤がそのままで使用できるので、それらを活用して簡潔に説明する。
超微粒子化するCBNには、合成原料として六方晶窒化ホウ素、触媒として窒化リチウムを用いて超高圧合成し、精製処理後、分級した平均粒子径0−1ミクロンのサブミクロン砥粒を準備した。このサブミクロン砥粒を更にボールミルにて微細化し、湿式ビーズミルにて平均粒子径が10nmで、固体濃度5wt%のCBN超微粒子水分散原料体を作製した。
次に、参考例1と同様に、分散剤処理CBN超微粒子水分散体(固体濃度は2wt%に、分散剤のポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤を、それぞれ1.0wt%ずつ複合添加処理したCBN超微粒子水分散体)を作製する。 更に、参考例2のダイヤモンド質超微粒子油分散体の製造と同様な工程に従い、CBN超微粒子油分散体(P−2‘)を製造する。油分散CBN超微粒子分散剤(OS)として6wt%の高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩を、20wt%のn−パラフィンで希釈し、良く溶解させた後、水分散用CBN超微粒子固体潤滑剤(前記した分散剤処理CBN超微粒子水分散体から水を除去して得られる親水性の「水分散用CBN超微粒子固体潤滑剤」として添加)をCBN超微粒子固体濃度で10wt%添加し、残部のn−パラフィン64wt%で希釈して固体濃度が10wt%のCBN超微粒子油分散体を製造する。
本実施例におけるエマルション組成物の製造においては、エマルション(乳濁色)タイプの組成物を製造した。前述したCBN超微粒子油分散体:基油P−2‘を前記O/W型エマルションタイプの基礎エマルション(A)の製造法と同様に、他の基油と混合する。即ち、オレイン酸主体の油脂(ナタネ油)4wt%とオレイン酸メチルエステル4wt%、上記CBN超微粒子油分散体(基油P−2’:CBN超微粒子固体濃度10wt%)を3wt%、乳化剤として、アルキル脂肪酸カリウム塩2wt%、ポリオキシエチレン(n=9mol)・オレイン酸エステル2wt%を添加し、混合、攪拌してCBN超微粒子を分散したエマルション基油成分を製造した。次に調整水6wt%を加え、油相(O相)と水相(W相)の配合比率が7:3の粘度が最大となったところでW/O型からO/W型に転相乳化した。本タイプの潤滑剤組成物の製造には、ニーダーを用いた。更に、調整水を79wt%加え、CBN超微粒子をエマルション基油成分内に分散内包したエマルション組成物を得た。基油成分有効濃度は15wt%とした。最後に消泡剤として、ジメチルポリンロキサンのエマルションを添加した。この時のCBN超微粒子の固体濃度は0.3wt%である。
潤滑剤組成物に求められる特性として、低い摩擦係数、長時間の安定した摩擦疲労特性、少ない摩擦摩耗量等、優れた潤滑性能があげられることはダイヤモンド質超微粒子の参考例にて記載した。一方高負荷や高速摺動、高温下の摩擦環境は、単独で、或いはそれらの組み合わせにて特に過酷な潤滑環境といえる。本実施例では、これらの過酷な摩擦環境に対する摩擦特性として耐荷重能に着目し、後述するダイヤモンド質超微粒子を油相(O相)に添加した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の発展形として、更に、水相(W相)には、油性向上剤とダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを添加した潤滑剤組成物(A−DO−TY−TZ)との特性比較で焼付き発生までの負荷荷重(本発明ではこの荷重を耐荷重能と定義する)を調査した。
耐荷重能特性の評価にはシェル式高速四球試験を用いた。シェル式高速四球試験の試験条件は、0.5inch SUJ2ボールを用い、回転数1000rpm、自動昇圧法にて焼付きピークの発生荷重を計測した。
比較剤として試験した前記(O+ダイヤモンド質超微粒子)/Wエマルション組成物の発展形としての(A−DO−TY−TZ)タイプ潤滑剤組成物では、おおよそ3,500N付近で焼付き現象に対応するピークが観測されたが、本実施例の組成物では、試験機の限界負荷である4,500Nまで焼付き現象に対応するピーク発生の不安定さは観測されなかった。EPMA(ホウ素と窒素分布をマッピングした。)とマイクロラマン分光にて摩耗痕部を調査したところ、立方晶窒化ホウ素の被覆濃縮層の存在が確認され、摩擦試験中に摩擦部位にはCBN超微粒子がコーティングされていることが明らかとなった。
一方、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の発展形の(A−DO−TY−TZ)タイプ潤滑剤組成物では、摩耗痕部にダイヤモンド構造に対応する炭素質の濃縮がわずかに確認できる程度であった。この結果は、摩擦試験中にダイヤモンド質超微粒子が黒鉛化を起こし、ガス化やSUJ2ボールへの溶解・固溶で消失したことを示している。
本試験法では同時に摩耗痕径も観察した。(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の発展型の(A−DO−TY−TZ)タイプ潤滑剤組成物では、負荷荷重の増大とダイヤモンド質超微粒子濃縮層の消失に伴いその摩耗痕径は大幅に増加する傾向にあることが確認できた。
ちなみに、市販の極圧剤(塩素化パラフィン等)等を含む潤滑油についても同様な比較試験を行ったが、昇圧過程で焼付きに対応する小さなピークが多数観察された。摩耗痕径は圧倒的に本実施例の組成物の方が小さいことを明らかにした。
他方、本実施例の(O+CBN超微粒子)/W型エマルション組成物でははしされたものの
本実施例では油相(O相)に添加するCBN超微粒子に変えて、六方晶窒化ホウ素の同様な高圧相であるウルツ鉱型結晶(Wurtzite−type Boron Nitride、以後WBNとも呼ぶ。)超微粒子や衝撃波合成法やCVD法で合成される炭素原子がその一部を置き換えたBCN超微粒子を用いて本実施例と同様なO/Wエマルション組成物を作製し、耐荷重能の評価を行ったが、同様にダイヤモンド質超微粒子添加の場合よりも各段に高い耐荷重能である結果が得られた。
その他の摩擦特性として、摩擦係数を評価した。摩擦係数の測定には、曾田式振子試験機を使用した。測定条件は、参考例の場合と同様に、20℃、荷重2.94N(ヘルツ圧:1,090N/mm2)である。得られた摩擦係数は、0.099であり、参考例2に示す同様な配合の(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(基油成分有効濃度:15wt%、ダイヤモンド質超微粒子固体濃度:0.3wt%)の値に比べ少々高くなる傾向はあるが遜色ない優れた摩擦特性を有することが解った。参考例2と同様に、基油成分有効濃度は15wt%、CBN超微粒子固体濃度は0.3wt%にてマイクロエマルションタイプの(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物を製造し、評価した摩擦係数は、0.114であった。 特に摩擦係数特性に関しては、上述した結果を基に(O+CBN超微粒子)/W型エマルション組成物のCBN超微粒子の一部をダイヤモンド質超微粒子で置き換えることで本組成物の優れた耐荷重能特性を大幅に低下することなく(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の摩擦係数に近づけることができることも明らかとした。
なお、本実施例では、CBN超微粒子には平均粒子径が10nmのものを使用したが、100nmを超えると摩擦面上への立方晶窒化ホウ素被覆濃縮層の形成過程及び潤滑過程を通じて潤滑作用より研磨作用が支配的になるため、平均粒子径は100nm以下とすることが不可欠である。
更に、参考例2に示す処理を施すことで、ダイヤモンド質超微粒子の場合と同様な油分散性に優れたCBN超微粒子からなる固体潤滑剤微粒子を提供できる。
ダイヤモンド質超微粒子を実施例1に示したCBN超微粒子に変えた以外は参考例1、3に示す製造工程に従って、基油成分有効濃度は15wt%、CBN超微粒子固体濃度は0.3wt%にてそれぞれエマルション(乳濁色)タイプのO/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物、(O+CBN超微粒子)/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物を製造し、摩擦係数、参照例1−3の特性評価に示す摩擦疲労特性、潤滑信頼性(潤滑剤枯渇試験)を評価した。摩擦疲労特性、潤滑信頼性(潤滑剤枯渇試験)の評価では、実施例1に示す(O+CBN超微粒子)/W型エマルション組成物の特性も合わせて評価した。摩擦係数の測定には、前述した曾田式振子試験機を使用した。
O/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物の摩擦係数は、0.105、(O+CBN超微粒子)/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物では0.094の値が得られ、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の場合との比較にて遜色のない優れた摩擦特性を有することが解った。
本実施例の組成物と実施例1に示した(O+CBN超微粒子)/W型エマルション組成物につき参考例1−3の特性評価に示した潤滑信頼性の試験も実施した。本組成物である潤滑剤中で10回の繰り返し摩擦後に摩擦・摺動部に付着した本組成物をそのまま乾燥した以外は同様な条件にて試験を実施した。それぞれの組成物の枯渇試験結果は、上記条件の変更はあるもののダイヤモンド質超微粒子を各相に添加したO/W型エマルション組成物の結果よりも低い摩擦係数を維持し、枯渇状況下でも従来にない高い信頼性を有することを検証できた。中でも(O+CBN超微粒子)/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物では枯渇状況下でも最も摩擦係数(0.094)が低い
摩擦面潤滑挙動が維持されることが解った。この潤滑信頼性の特徴は、参考例1−3の潤滑信頼性において記述したように、枯渇試験の前に、潤滑剤組成物の存在の下、繰り返し摩擦という慣らし運転等で潤滑が必要な部位にあらかじめCBN超微粒子被覆濃縮層を形成することで潤滑剤組成物等の補給がなくても安定して潤滑機能を発揮することと言える。
更に、参考例1に示す処理を施すことで、ダイヤモンド質超微粒子の場合と同様に、水や水溶性溶媒への分散性に優れたCBN超微粒子からなる固体潤滑剤微粒子を提供できる。
実施例1−2では、CBN超微粒子を添加したO/W型エマルション組成物について説明した。本実施例では、O/W型エマルション組成物の代わりにW/O型エマルション組成物(広義の意味でのW/O型エマルションにおける「基礎エマルション(A)」)の水相(含む結晶水)にダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を添加した(W+ダイヤモンド質超微粒子或いはCBN超微粒子)/O型エマルション組成物について説明する。
W/O型エマルション(広義の意味でのW/O型エマルションにおける「基礎エマルション(A)」)は、ドライクリーニングの洗浄液から乳濁色状態の参考例1−3やO/W型エマルションの実施例1−2で記述したタイプで水滴径が0.1−10ミクロンものまで含まれると本発明では定義するが、O/W型エマルションと比較すると総じて水滴の分散安定性は乏しい組成物である。本実施例では、ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子に参考例1や実施例1に記載した分散剤処理(親水性処理)を施し、このダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子水分散体溶液を陰イオン型、非イオン型界面活性剤や乳化剤とともに油中に溶解するタイプ(ドライクリーニング洗浄液型)の水中にダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含むW/O型エマルション組成物について説明する。このタイプのW/O型エマルション組成物は、陰イオン型、非イオン型界面活性剤や乳化剤、所謂ソープがダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含む水粒子を芯に包み込み、包み込んだ内側に親水基が、外側に親油基が球形に取り囲む所謂ミセルが油に溶解した状態を作り出し、油中への水粒子の添加で粘度は初期の油の粘度とほとんど変わらない。内包されたダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を保持する水分子は、正負イオンが内側の親水基に対応して配列するので、この配列した水分子を結晶水と呼んで通常の水滴と差別化するのが特徴となる。この結晶水中にダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を抱き込み保持する構造が本実施例の特徴であり、ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を保持する水微粒子の分散安定性は極めて高い。
ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子には平均粒子径が5−10nmのものを用いた。
ソープには特に指定はないが、前記した陰イオン型、非イオン型界面活性剤や乳化剤が適時複合して使用できる。油相を構成する油溶剤には、基油として前記したα−オレフインオリゴマー(粘度:10cStのもの)を用いた。ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子水分散体溶液の当該固体濃度は0.1wt%−0.5wt%で調整した。
以下に製造工程について説明する。本タイプのW/O型エマルション組成物の配合は、上記ソープ量が油溶剤の0.3%、ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含む上記水成分がその1/10とした。水成分がこの量を超えると結晶水から乳濁色の通常のW/O型エマルション状態に遷移し、水相(水滴)の分散安定性も低下するためである。
本実施例の(W+ダイヤモンド質超微粒子)/O型エマルション組成物、(W+CBN超微粒子)/O型エマルション組成物の摩擦係数の測定には、曾田式振子試験機を使用した。ダイヤモンド質超微粒子を添加した場合は、0.090、CBN超微粒子の場合は、0.094と良好な摩擦特性が得られた。本実施例タイプのW/O型エマルション組成物は、マイクロマシン関連の微小な部品
やデバイスの比較的軽負荷下での摩擦摩耗の低減や摩擦抵抗の低減により効果を発揮することを確認した。
本実施例では、上記配合の結晶水タイプの(W+ダイヤモンド質超微粒子)/O型エマルション組成物、(W+CBN超微粒子)/O型エマルション組成物を製造し、摩擦特性を評価したが、参考例1−3と同様な製造工程の一部を活用してW/(O+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物、W/(O+CBN超微粒子)型エマルション組成物、(W+ダイヤモンド質超微粒子)/(O+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物、(W+CBN超微粒子)/(O+CBN超微粒子)型エマルション組成物を製造し、優れた摩擦特性を確認した。
更に、本実施例では、水微粒子の分散安定性は劣るが、ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含む分散剤処理した当該水分散体溶液を上記規定割合より増加した所謂乳濁色タイプのW/O型エマルション組成物も製造し、摩擦特性を検証した。本タイプの組成物でも優れた摩擦特性を確認できた。
上述の参考例1〜3においては、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物からなる潤滑剤組成物の摩擦特性を引き出す最良の分散剤並びに組成物を作製する乳化剤等の重要な構成要素を見出した。本発明者らは、さらに当該CBN超微粒子を含むO/W型エマルション潤滑剤組成物の発展型として、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の水相(W相)側に、油性向上剤あるいはCBN以外の固体潤滑剤や前記したダイヤモンド質超微粒子等を後添加して系内に形成される複成状態、複合状態、また、その両方の状態が、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の潤滑性能より優れることを見出し、本発明を完成するに至っている。以下、これらの形態の実施例について説明する。(ダイヤモンド質超微粒子を含む本発展型は国際出願PCT/JP2009/001721に記載)
上述したCBN超微粒子を油相(O相)に含むO/W型エマルションの水相(W相)中に「油性向上剤」(Y)を添加して複成状態となるものはダイヤモンド質超微粒子の場合の記号を流用して(A−DO−TY)、CBN超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加して複合状態となるものは(A−DO一TZ)、その両方が混成する状態に対しては(A−DO−TY−TZ)という記号を付与して説明を簡潔にする。
本発明者らは、前記した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(エマルション(乳濁色)タイプ)(A−DO)の水相(W相)中に、油性向上剤(Y)、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を後添加して分散させた状態において潤滑性能が著しく向上することを見出した。以下には、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の発展型として(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物の水相(W相)中に、油性向上剤(Y)、当該ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加分散した複成分散組成物(TY)、複合分散組成物(TZ)、更には複成・複合分散組成物(TY−TZ)に関する潤滑特性の向上並びにその製造方法について検討を行った。
摩擦特性を評価する場合には、摩擦状態や潤滑剤組成物の外観等の違いにより摩擦試験機が異なる。低粘度の油性剤の評価には曾田式振子摩擦試験機、極圧(EP)剤を含む比較的低粘度の潤滑剤の評価には高速四球試験機が用いられ、この種はいずれも点接触系の試験機である。一方、Falex試験機は、線接触系の試験機であるため、極圧剤(EP剤)を含む潤滑剤及び高粘度グリースの評価に適する等、最も評価に適する摩擦試験機の選択が重要である。摩擦する接触面が異なる摩擦試験機の結果を組み合わせて得られる情報は、より広範囲な摩擦挙動を予想することが出来、実際に使用する実機に対応する。表12には、各参考例、比較例で評価する摩擦特性と試験機の種類、実施条件を示した。
本組成物の作製は、大別して2つの工程からなる。第1工程とは、基油、乳化剤、界面活性剤(油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS))、油相(O相)中へ添加分散するダイヤモンド質超微粒子等の基油成分の混合工程、転相乳化工程、水を徐々に添加し所望の基油成分有効濃度とするエマルションを作製する一連の工程とし、第2工程とは、第1の工程で得られる組成物に、例えば、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)に油性向上剤(Y)或いはダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)またはその両方、さらには、参考例1に記載のO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)作製に使用する、分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体や参考例2に記載の(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)に使用する基油P−2をも含み、それらを後添加分散する工程として分けることとし、この第2の工程を「後添加法」と呼ぶこととする。第1の工程では、参考例2のエマルション(乳濁色)タイプの製造例に示すように、その配合成分及びその組成、転相乳化工程までは同様である。また、この第2工程では、第1の工程で得られる(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)を作製する過程で油と水との比率が7:3で転相乳化が完了した高粘度の段階で、油性向上剤(Y)や、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加して、最後に水を加えて所望の基油成分有効濃度とする方法と、後添加する所望の油性向上剤(Y)やダイヤ質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を差引いた残部の水を添加攪拌して得られる(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の中に、低速回転で徐々に油性向上剤(Y)やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を後添加して、「複成分散組成物」:(TY)や「複合分散組成物」:(TZ)の状態とする2通りの後添加法があるが、特に断りのない場合は、これら2種を適時選択できる。
本参考例の具体的な(A−DO−TY)の作製は、以下の通りである。
(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)に基油や油性向上剤を添加して得られる「プレートアウト特性」を確認する方法は、上述した非特許文献3に記載された試験方法と類似する方法で行った。具体的には、50mm2の白金坂を垂直に立てて比較対象の潤滑剤組成物を塗布し、乾燥後の油膜付着量を測定したところ、無添加の(A−DO)は0.24g/m2、後添加した本複成分散組成物(A−DO−TY)は1.72g/m2と、塗布した後の油膜付着量は約7.2倍も増加したことから、「プレートアウト特性」を得るには(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の水相(W相)中に油性向上剤を後添加することが好ましく、潤滑性能が向上することが示唆された。
前述したように、摩擦特性評価試験方法として、摩擦係数評価には曾田式振子試験機を、摩耗痕挙動や摩耗量評価にはFalex試験機を使用した。しかし、曾田式振子試験機では、摩擦係数が0.1以下になるとその絶対値の信頼性は低下すること、更に、粘性の高い潤滑剤は評価が出来ない欠点もある。一方、Falex試験機においても負荷荷重や速度の試験条件に限界がある。特に油性向上剤やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤、さらにはその両方を添加した複成・複合分散組成物はその摩擦特性が一段と優れていることから、これらの手法でその特性を評価することは困難であることが解った。
硬球径:0.5inch
材質:SUJ2
硬度:62−63HRC
表面粗度:0.02−0.04μm Rmax
荷重:490N(一定)
回転数:1000rpm(一定)
時間:1800秒(一定)
表13で説明した様に、摩擦試験に供した本分散組成物の基油成分有効濃度は15wt%であり、上記本分散組成物の製造にて作製した基油成分有効濃度50wt%物を蒸留水にて希釈して潤滑性能を評価した。表14には、シェル式高速四球試験機による潤滑性能評価を(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)と比較して示した。(A−DO)の水相(W相)中に油性向上剤を添加することにより、比摩耗量は大幅に低下する。本表には示していないが、油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)の添加でも同様な比摩耗量の低下が確認できた。後添加する油性向上剤(Y)には油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)と基油の同時添加も可能である。
さらに、HLB値が8以下の組成物から選ばれることが好ましいが、油性向上剤(Y)はこれらに限定されない。また、油性向上剤(Y)の添加重量濃度は、O/W型エマルション中に含まれる基油成分:P−1、P−2、油分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(OS)、基礎エマルション(A)用乳化剤(EM)等(水分散ダイヤモンド質超微粒子分散剤(WS)は参考例2のダイヤモンド質超微粒子油分散体:基油P−2の製造で説明したように配合する基油成分の中に含める)と新たに後添加する油性向上剤(Y)との重量濃度の総和が75wt%を超えると、所謂、(O/W/O)形態となり水溶性組成物にならない。従って、油性向上剤(Y)の重量濃度とO/W型エマルション組成物中に含まれる基油成分有効濃度との総和が75wt%以下であることが好ましい。但し、水への分散が不十分であっても使用する用途、例えば、潤滑性能及び二次特性を極端に向上させる目的等においては、75wt%以上であっても構わない。
(複合分散組成物(A−DO−TZ)の製造)
次に、複合分散組成物(A−DO−TZ)の製造であるが、前述の複成分散組成物の製造の場合と同様に転相乳化した後に水を徐々に添加し所望の基油成分有効濃度とする。所望の基油成分有効濃度にする水量は、後添加する固体潤滑剤(Z)の重量%を差引いたものとする。
[油相(O相)中のダイヤモンド質超微粒子と水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤とを複合させた場合の摩擦特性]
表16には、複成分散組成物の場合と同様にシェル式高速四球試験機による潤滑性能評価を(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)と比較して示した。(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を添加することにより、比摩耗量は大幅に低下する。一種類の固体潤滑剤(Z)添加の場合、ポリテトラフルオロエチレンでは(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の比摩耗量の1/2以下となる結果が得られた。表16は、複合分散組成物(A−DO−TZ)の比摩耗量を(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)との比較で示すものである。
外観や色は清潔感や安全性等の好感度に繋がるもので、特に外観が白色で潤滑性能を同時に付与できることが更に望ましい潤滑剤であると評価される。当該潤滑剤組成物の外観は白色の液状エマルションであり問題ない。しかし、所謂、外観がペースト状等の場合は軽荷重動作領域やトルク安定性が要求される軸受等での潤滑系には障害となる。そこで、使用可能な粘度の上限に関する潤滑挙動について調べた。
一例として、O/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)と(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の双方の複合分散組成物形態において、ダイヤモンド質超微粒子とダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤との総和において極限添加した配合量で作製した。ちなみに、本実施例における各添加物の濃度は表13には記載していない。
参考例1のO/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)と同様な配合比率で、基油成分有効濃度が50wt%の基礎エマルション(A)を製造し、当該基礎エマルション(A):50wt%の水相(W相)中に、水分散用ダイヤモンド質超微粒子用固体潤滑剤の形態にてダイヤモンド質超微粒子を固体濃度で10wt%を徐々に添加し良く練る。次に、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(ポリテトラフルオロエチレン:Z2)を固体濃度で40wt%、同様に水相(W相)中に徐々に添加し良く練り、水相(W相)中に添加される2種の全固体濃度が50wt%で、水以外の全成分の総和が75wt%のペースト状の複合分散組成物(C−DW−TZ(50))が得られる。
外観は白色に近い淡い灰色で、稠度は4号以上(JIS規格に準拠)である。
本参考例では、参考例2の基油P−2の代わりに、油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤を用いる以外は実施例2の(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)エマルション(乳濁色)タイプ基油成分の成分構成とその製造は同様である。当該態様組成物を製造後、後添加法でその水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を添加・分散する。製造工程の詳細は下記の通りである。
第1工程/ダイヤモンド質超微粒子の固体濃度が10wt%となるよう上記基油成分(乳化剤の基油成分に対する比率は2倍以上であることが望ましい)の配合を調整し、油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤の形態にてダイヤモンド質超微粒子を分散したエマルション基油成分を製造する。次に、このダイヤモンド質超微粒子を含むエマルション基油成分:50wt%に、調整水21wt%を添加してO/W型に転相乳化する。最後に29wt%の調整水を徐々に添加して(A−DO)態様の組成物を得る。この時の基油成分有効濃度は50wt%である。
第2工程/第1工程で得られた(A−DO)態様組成物:50wt%中に、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(ポリテトラフルオロエチレン:Z2):47.5wt%を徐々に添加して、最後に2.5wt%の蒸留水を徐々に添加攪拌して、水以外の全成分総和が72.5wt%で、2種の全固体濃度の総和が50wt%の複合分散組成物(A−DO−TZ(50))が得られる。外観は稠度が4号以上のペースト状であり、摩擦面に容易には拡がらず使用上の制限を受けるが、その色調は白色に近い淡い灰色で、好感度は高いことを確認した。
図15は、本発明の参考例9及び比較例3、4の潤滑剤組成物の潤滑安定性の特性を示す図である。図15は、前述のFalex試験機で、市販のLiグリース(比較例3)、
Liグリース中にダイヤモンド超微粒子を分散した市販品(比較例4)と、一例としてダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤として二硫化タングステンを水相(W相)中に添加(本参考例では後添加)する当該複合分散組成物(A−DO−TZ)(参考例9)の基本となるA-DOの摩擦トルクより潤滑安定性について試験した結果を示す。
(複成・複合分散祖成物(A−DO−TY−TZ)の作製概要)
本組成物の製造工程は、まず、前述の実施例2と同様に(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)を作製し、次に前記実施例9の複合分散組成物(A−DO−TZ)を作製した後に油性向上剤(Y)を添加して完成するものである。具体的には下記の通りである。
1.残部の水:32.5wt%を添加した後に、メラミンシアヌレート(Z1):0.5wt%を徐々に添加し、混合・攪拌して実施例9と同様のペースト状の(A−DO−TZ)中間組成物が得られる。
2.さらに、上記(A−DO−TZ)中間組成物に、油性向上剤(Y1):高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩:10.0wt%を添加、攪拌して複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)の製造を完了する。また、最後に消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのエマルションを0.01wt%添加した。基油成分有効濃度は50wt%である。
複成分散組成物(A−DO−TY)と複合分散組成物(A−DO−TZ)とが混成する複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)の潤滑効果を見るために、油性向上剤(Y)には高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩を代表例とし、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)にはメラミンシアヌレートとポリテトラフルオロエチレンの2種についての比較試験を行った。その結果を表17に示す。油性向上剤(Y1)には高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩、同固体潤滑剤(Z2)にはポリテトラフルオロエチレンを使用した複成・複合分散組成物(A−DO−TY1−TZ2)では、比摩耗量は0.42×10-9(mm2/N)であり、前述の複成分散組成物、複合分散組成物それぞれの比摩耗量の約1/3以下まで低下し、更に優れた特性を示した。
図16は、基礎エマルション(A)の水相(W相)中への油性向上剤(Y)、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)の添加の各態様(比較例5)によるシェル式高速四球摩擦試験の摩耗痕及び比摩耗量の比較を示す図である。基礎エマルション(A)の水相(W相)中への油性向上剤、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤の添加の各態様によるシェル式高速四球摩擦試験の摩耗痕と比摩耗量の比較を示す。比較例5は、油相(O相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)を用いる点以外は、それぞれ上述した参考例8、参考例9と同様である。油性向上剤(Y1)は高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z2)は平均粒子径0.5ミクロンのポリテトラフルオロエチレンである。実施例8及び実施例9との比較のために、油相(O相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)の比摩耗量に及ぼす油性向上剤やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)の水相(W相)中への添加効果として示した。
参考例8−9の優れた潤滑性能を解明するために、前記したFalex試験と同様に、シェル式高速四球試験における摩擦面の観察から潤滑機構を調査した。
図19は、本参考発明の参考例8の複成分散組成物(A−DO−TY2)のシェル式高速四球摩擦試験ボール摩擦面のEPMA分析結果である。a)はボール摩擦面の反射電子組成像であり、ボール同志の接触面には、原子番号の小さい元素の濃縮がみられる(黒色部)。b)からe)はボール材質(SUJ2)並びに本複成分散組成物の構成元素について摩耗痕部の濃縮元素を判別するため、鉄(b)に対応)、炭素(c)に対応)、モリブデン(d)に対応)、硫黄(e)に対応)についての特性X線強度の分布を調べた結果である。c)の結果は摩耗痕部に明らかに炭素が濃縮していること、またモリブデン(d))や硫黄(e))も炭素より均一さには欠けるが摩耗痕部に濃縮していることが解った。検出されたモリブデンや硫黄は、複成分散組成物中の油性向上剤(Y2)であるジチオカルバミン酸モリブデン(有機モリブデン)に由来するものである。
図20は、同様に本参考発明の参考例9の複合分散組成物(A−DO−TZ2)のシェル式高速四球摩擦試験ボール摩擦面のEPMA分析結果である。図19の複成分散組成物と同様、摩擦面への炭素の濃縮が確認できた(反射電子組成像a)と炭素特性X線像c)が良く対応)。炭素濃縮部(ボール同志の接触面)には更に、微量だがポリテトラフルオロエチレンのフッ素(d)に対応)の濃縮が検出された。
定性的ではあるが、炭素濃縮の度合いを特性X線像で比較すると、当該複成分散組成物(図19のc))、複合分散組成物(図20のc))それぞれの油相(O相)中へのダイヤモンド質超微粒子の添加・分散量によく一致する(表13参照)。興味深い点は、摩擦試験ボールの主元素である鉄の特性X線強度(図19、図20のb)に対応)の相対比較である。すなわち、実施例8の複成分散組成物の炭素濃縮層(被覆層)は、ダイヤモンド質超微粒子/鉄/微量のMo/微量のSから構成されるのに対し、実施例9の炭素濃縮層は、ダイヤモンド質超微粒子/ポリテトラフルオロエチレン由来の構成物、から主に構成されていることが解る。これらの結果から、本参考発明の潤滑剤組成物の態様や配合組成を各種変化させることで、炭素濃縮層(被覆層)の構成を自在に変化できることが明確となった。これらの検証結果は、炭素濃縮層(被覆層)の構成を潤滑剤組成物の各種態様や配合組成で設計することで、本発明の潤滑剤組成物の潤滑特性(例えば、比摩耗量)は、自在かつ容易に制御できることを明らかに示している。従って、トライボロジーの対象となるあらゆる分野で有効に活用できる指針を提供するものである。
図21には、参考例9の複合分散組成物(A−DO−TZ2)の上述した炭素濃縮層(被覆層)部の二次電子像を示した。シェル式高速四球試験の低い比摩耗量1.40×10-9を良く説明する極めて滑らかな表面性状を有することが解る。この特徴は、図24に比較例として後述するアブレッシブ(比摩耗量が1×10-7以上)な摩擦面の従来の潤滑剤組成物とは全く異なるものであり、比摩耗量と摩擦部位の表面性状(滑らかさ)は相関することも明確となった。
(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)でのFalex試験で形成された炭素濃縮層の炭素構造の検証と同様に、マイクロラマン分光法で濃縮炭素層の構造を同定した。1332cm-1近傍のダイヤモンド結合に起因するラマンシフトが観察された。
以上の結果から複成分散組成物、複合分散組成物における潤滑性能(比摩耗量の低下)の向上は、油相(O相)中に添加したダイヤモンド質超微粒子と水相(W相)中に添加した油性向上剤やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤の摩耗痕部での複合濃縮に起因することがわかった。
図6では、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物のFalex試験において、ブロック摩擦面にダイヤモンド質超微粒子が濃縮層を形成すること(ピン側にも同様な効果が現れる)、更に、上記図19(複成分散組成物)、図20(複合分散組成物)では、ダイヤモンド質超微粒子に加えて、水相(W相)中に同時に添加・分散した油性向上剤からの生成物やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤が同様に摩擦部位に複合的に濃縮し、慣らし運転等を含む摩擦条件や摩擦時間の経過と共に、所謂、複合コーティング層を形成して、潤滑性能の向上に寄与することを解明した。これらの濃縮層は、洗浄処理やEPMA分析の前処理としての強力な超音波照射でも脱落することもなく、強固な被覆層として摩擦部位に存在する。ダイヤモンド質超微粒子は、前述したように平均粒子径が100nm以下で、分散剤処理にて摩擦特性を向上したナノ微粒子である。従って、たとえ摩擦・摺動中に摩擦部位から脱落しても新たな摩擦部位に損傷を与えず、むしろ新たな被覆濃縮層を形成する。この特徴は、自己修復機能と呼べるものであり、CVD、PVD、メッキ、その他のコーティング技術に代表される従来の表面処理技術(例えば、硬質被覆層の一部に割れや微小破壊が発生すると、その破片は摩擦面に致命的な破壊を引き起こす)で形成される被覆(コーティング)層とは全くその性質(新しい概念としての潤滑皮膜構築手法)を異にするものである。結果として、従来の硬質被覆層で密着性の低下や破壊感受性の増加(引張り歪に起因する微小割れ)等のトラブルの一因となる基材(被コーティング摩擦面材料)選択性(通常は中間層等の挿入で対処)の問題は、一切なく、金属、セラミックス、ガラス、ポリマー、ゴム等ほとんどの基材に対応可能であり、複雑形状の摩擦部位へのコーティング層形成も極めて容易で、安価である。
従って、本参考発明の潤滑剤組成物は、耐摩耗性や潤滑性能、冷却特性や潤滑成分の化学的安定性等が要求される各種用途分野、例えば、切削工具等(切削油剤として使用することで、すくい面と切屑間で発生する摩擦熱を低減し、クレータ摩耗を抑制して工具寿命を向上させる。また、加工変質層の残留歪を低減する。低速切削では、構成刃先の形成を抑制し、被削材切削面の寸法精度を向上する。また、工具の破壊防止に効果を発揮する。)の被覆(コーティング)層の形成に極めて有効であることがわかった。本解析では、複成分散組成物、複合分散組成物での複合被覆(コーティング)層形成について記載したが、本実施例は一例であり、本参考発明のその他の各態様の潤滑剤組成物について同様な被覆(コーティング)層形成効果が存在し、本参考例に限定されるものでないことは明らかである。
参考例8〜10の潤滑剤組成物の態様は、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の水相(W相)中に油性向上剤(Y)、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を後添加して得られる複成分散組成物(TY)、複合分散組成物(TZ)、またその両方が混成する複成・複合分散組成物(TY−TZ)であり、潤滑性能が、従来、水溶性潤滑剤では不可能とされていた回転トルク変動の安定化や加工公差の最小化、さらには高負荷条件での摩擦環境下においても優れた耐摩耗特性を有する潤滑剤組成物を提供することができる。
参考例3の(O+ダイヤモンド質越微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)の摩擦挙動については、表10に参考例1−3の各態様のFalex試験のピン摩耗量で比較評価した。ダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径を40nmとした場合、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)は、O/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)に比べてピン摩耗量が大きい問題があった。しかし、振子試験による摩擦疲労挙動の評価においては疲労の進行とともに摩擦係数が最も低下し、枯渇試験による摩擦疲労試験(A−DW−DO−Dry)においてもその摩擦係数は最も低く信頼性の高い潤滑剤であることを記述した。この摩擦特性が相拮抗したり逆相関となる原因が、平均粒子径に由来するものとすれば、ダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径を40nm以下に微小化することで摩耗量が低下することは明らかであるが、この微小化分散は、当該潤滑剤組成物の価格上昇につながることとなる。そこで、現状のダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径が40nmであっても微小化したダイヤモンド質超微粒子の場合と同等の摩擦性能が得られる可能性を明らかとするため本後添加の多種の形態や後添加成分との組み合わせによる相乗効果を検討した。平均粒子径40nmのダイヤモンド質超微粒子を油相(O相)中並びに水相(W相)中に分散した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)の水相(W相)中に、更に、油性向上剤やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を添加して複成・複合分散組成物(A−DW−DO−TY−TZ:ペースト状タイプ)を作製し、Falex試験におけるピン摩耗量の低減効果について検討した。
1.次に上記した(A−DO)組成物にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン(Z2):0.15wt%を徐々に添加・攪拌して複合分散組成物(A−DO−TZ)を得る。
2.更に、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)を作製するために、上記複合分散組成物(A−DO−TZ)に油性向上剤として高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩(Y1):3.0wt%を徐々に後添加し攪拌し、複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)を得る。
3.次に、参考例1と同様な手法であるが、構成濃度が2.5倍のダイヤモンド質超微粒子:5wt%、ポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤:2.5wt%、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤:2.5wt%、水90wt%からなる分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を作製する。(ダイヤモンド質超微粒子固体濃度:5wt%)
4.前記(第2工程の2)の水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)に固体濃度5wt%の分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体(第2工程の3)を1.5wt%添加し、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子とポリテトラフルオロエチレンを含む複成・複合分散組成物(A−DW−DO−TY−TZ)を得る。
5.最後に、前記(第2工程の4)で製造した複成・複合分散組成物(A−DW−DO−TY−TZ)に水を28.35wt%加えて攪拌し基油成分有効濃度50wt%の別様の複成・複合分散組成物(A−DW−DO−TY−TZ)を得た。消泡剤は、同様にジメチルポリシロキサンのエマルションを添加した。
参考例11と同様に、本参考例では、Falex試験におけるピン摩耗量の低減効果を確認するため、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を分散した○/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)の水相(W相)中に、更に、油性向上剤を添加して別様の複成分散組成物(A−DW−TY)を作製した。Falex試験での枯渇試験のために、参考例11と同様に基油成分有効濃度は50wt%とした。
1.次に前記した基礎エマルション(A)に油性向上剤として高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩(Y1):3.0wt%を徐々に後添加し攪拌し、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない基礎エマルション(A)対応の複成分散組成物(A−TY)を得る。
2.さらに、参考例11と同様な手法でダイヤモンド質超微粒子:5wt%、ポリオキシエチレン・アルキルエーテルカルボン酸塩の陰イオン型分散剤:2.5wt%、脂肪酸エステル型の非イオン型分散剤:2.5wt%、水90wt%からなる分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を作製する。(ダイヤモンド質超微粒子固体濃度:5wt%)
3.次に、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子を含まない前記基礎エマルション(A)対応の複成分散組成物(A−TY)に固体濃度5wt%の分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体を6.0wt%添加し、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子と油性向上剤を含む複成分散組成物(A−DW−TY)を得る。
4.最後に、上記した水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子及び油性向上剤を含む複成分散組成物(A−DW−TY)に水を24.0wt%加えて攪拌し、基油成分有効濃度50wt%の別様の複成分散組成物(A−DW−TY)を得た。消泡剤は、同様にジメチルポリシロキサンのエマルションを添加した。このときの摩擦試験に使用する基油成分有効濃度50wt%中の各添加物の添加量は表13の通りである。
参考例1から3、8から12、更に、後述する15、16に記載の転相水や所望の基油成分有効濃度にするために最後に加えて調製する水は、各態様のエマルション組成物を構成する構成成分の一つであった。一方、別様の態様として、上記ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物中の水成分を含まない成分構成からなる、無水型潤滑剤組成物がある。本無水型潤滑剤組成物は、用途に応じて無水の状態、もしくは、任意の水を加えて、所謂、所望の基油成分有効濃度としてO/W型エマルション状態で使用することが出来る。本無水型潤滑剤組成物の成分構成は、前述した基礎エマルション(A)の基油成分、乳化剤、水および油分散剤処理したダイヤモンド質超微粒子、油性向上剤(Y)、油相(O相)側及び/又は水相(W相)側に添加分散するダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)、水分散用分散剤、二次特性向上剤等からなる。本無水型潤滑剤組成物からは、本発明の全てのダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物が製造可能であり、特に断りのない場合はこれら態様の全てに適用できるものである。
また、本無水型潤滑剤組成物の構成は、本実施例でも充分な安全性を有するが、所謂、食品添加物指定物質(食添グレード)成分構成とすることで、食品分野で使用される機械・装置等にも対応できる。
高級アミド・アルキロール化スルホネート・カルシウム塩(Y1):3.0wt%、参考例2に記載のダイヤモンド質超微粒子油分散体(基抽P−2:ダイヤモンド質超微粒子固体濃度10wt%):10.0wt%、メラミンシアヌレート(Z1):1.0wt%に、ポリオキシエチレン(n=9mol)・オレイン酸エステル86.0wt%を混合、攪拌して、全成分濃度で100wt%の、水成分を含まない無水型潤滑剤組成物を得た。
従って、構成される基礎エマルション(A)用乳化剤(EM)の量は基油P−2と油性向上剤の総和の約7倍以上としている。この組成物は全ての成分構成と多種の形態要素を併せ持つことから、実施例1〜3および、参考例8〜12の形態以外に、参考例15〜16にて後述する油相(O相)内で油性向上剤(Y)、ダイヤモンド質超微粒子(或いは油分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤)、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)とが複成・複合したり(例えば、BY−(D,Z)O)、また、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)やダイヤモンド質超微粒子(或いは水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤)が分散しているケース(同様に、例えば、B−DW−DO−TZ)もある。水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)やダイヤモンド質超微粒子(或いは水分散用ダイヤモンド質超微粒子固体潤滑剤)が分散するマイクロエマルションタイプ(B)を製造するには、参考例1の分散剤処理ダイヤモンド質超微粒子水分散体(DW)やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を分散処理した水分散体で自己乳化し、更に水を加えて所望の基油成分有効濃度とするか、前述したような前記固体潤滑剤の後添加法を用いることができる。更に、基油成分,油性向上剤(Y)の添加、あるいは、その構成比率を変えることで更なる潤滑性能の向上が期待される。
無水型潤滑剤組成物の摩擦特性を高速四球式摩擦試験機で調べるにあたり、全成分濃度が100wt%の無水型潤滑剤組成物と、無水型潤滑剤組成物に水を加えて作製したダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の場合との両組成物を作製した。水を加えて作製した後者組成物の形態は、参考例16で後述するダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の油相(O相)側に油性向上剤、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を添加した(AY−(D,Z)O)類似のダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物(BY−(D,Z)O)である。後者の作製には、上述した無水型潤滑剤組成物15wt%に水成分85wt%を徐々に加えて均一になるまで良く攪拌した。このときのダイヤモンド質超微粒子の濃度は0.15wt%、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z1)も同様に0.15wt%で、全固体潤滑剤微粒子濃度は0.3wt%で、油性向上剤(Y1)は、0.45wt%である。
なお、本実施例で濃度調整する希釈成分を水としているが、水相(W相)の一部が、親水性溶媒であってもよい。親水性溶媒としては、市販の不凍液、グリセリン、少糖類・多糖類等が挙げられる。このようにO/W型エマルション組成物の水相(W相)は、水だけに限定されるものではない。また、上述した各参考例における所望濃度に希釈する水についても、同様に他の親水性溶媒を使用できることはいうまでもない。
前述したように、本潤滑剤組成物による従来潤滑剤の代替えが最良の方法であるが、本参考発明の潤滑剤組成物がダイヤモンド質超微粒子やダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤等々を摺動する摩擦面に被覆層としてコーティングする機能は、環境保全に抵触しても潤滑性能向上を重視する分野や、潤滑不足が理由で従来その普及が進んでいない生分解性潤滑剤等で前処理剤(例えば慣らし運転にて)として潤滑効果を発揮できる。適用の例として、比較例2(図11)に示す鉱油系の従来型ストレート油や比較例3(図15)に示すグリースに代表され、所謂、潤滑剤カテゴリに分類される車両用潤滑油、船舶用エンジン油、工業用各種潤滑油、固体潤滑剤、合成潤滑油、グリース、工作油剤、さび止め油剤、熱媒体油やゴム加工油等の広範な潤滑剤で実現可能である。
コーティング処理方法は、例えば、本発明の潤滑剤組成物で慣らし運転を適時行い、その後、本潤滑剤組成物を水洗除去、乾燥(水洗を行わず、そのまま乾燥も可)するだけで、生分解性を有する潤滑被覆層が生成し、給油も従来型ストレート油と同様で済むことから、極めて簡易で優れた潤滑性能が得られる。
図22は、上述した本参考発明の潤滑剤組成物の潤滑性能向上処理剤やコーティング剤としての効果を参考例1−3に示した曾田式振子試験による摩擦疲労特性として示したものである。曾田式振子試験でのコーティング処理は、本参考発明の潤滑剤組成物にて試験片のピン側に施し、比較のために、Siをドーブしたダイヤモンド状炭素膜(Diamond Like Carbon膜(DLC膜))についても同様にピン側に成膜処理を施して摩擦疲労試験を行った。潤滑性能向上処理剤やコーティング剤としての本発明潤滑剤組成物には、参考例3で詳述した(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)を用いた。基油成分有効濃度は15wt%、水相(W相)と油相(O相)に添加・分散したダイヤモンド質超微粒子の平均粒子径は40nm、添加濃度は総和で1wt%である。潤滑性能向上処理或いはコーティング処理は以下の手順で実施し、摩擦疲労特性を測定した。図22中の従来型ストレート油(Oi1に対応)の試験は、DLC膜が油中で潤滑性能が良好であるとのことから、リファレンスとして無処理のピン(通常仕様)を使用し、試供油はイソパラフィン(粘度2、4cSt、40℃にて)とした。
(本潤滑剤組成物でのコーティング処理工程)
第1工程(コーティング処理)/まず、試験片ピンにコーティング処理を施すため、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)をカップに充填し、10回の繰り返し摩擦試験を行う。この時の測定は、試験片を換えずに続けて行う。
第2工程(コーティング処理試験片ピンの乾燥)/次に、上記10回の摩擦試験後のピンを取り出し、ピン上に本潤滑剤組成物をコーティング被覆層として定着させる工程であるが、水で洗浄した後、ドライヤーで乾燥させる方法と、摩擦後のピンを本潤滑剤組成物が付着したまま乾燥させる方法がある。本参考例では、後者の方法で水分のみを除去して、コーティング被覆処理ピンとして完結する。コーティング処理ピンは、以下の(1)無潤滑(−Dry)試験、(2)油中(−Oil)試験、(3)水中(−Water)試験に供する。
(摩擦試験方法)
(1)無潤滑状態(−Dry)試験方法/実施例1−3における潤滑信頼性としての潤滑剤枯渇試験(カップは空の状態)に対応する摩擦試験の更なる過酷な条件下での方法であり、コーティング処理被覆膜の寿命を調べるためのものである。振子摩擦疲労試験は、コーティング処理ピンをセットし、ボールを新品に換えて5回目ごとに測定し、30回を最終測定回数とした。(コーティング処理のケース)
(2)油中(−Oi1)試験方法/従来型ストレート油中での摩擦試験は、上記と同様にコーティング処理ピンをセットしボールを新品に換え、カップにはイソパラフィンを充填し、油中で振子摩擦疲労試験を継続する。(潤滑性能向上処理のケース)。
潤滑性能向上処理或いはコーティング処理後の振子摩擦疲労試験の測定条件は、上記と同様である。
(3)水中(−Water)試験方法/潤滑環境が無潤滑状態と水中摩擦の繰り返しとなるような後述する使用環境下、すなわち、コーティング処理後の本潤滑剤組成物が水への溶解に伴う潤滑性能の低下が懸念されたため、その潤滑寿命と信頼性を検証する目的で、カップに水を充填し、水中での振子摩擦疲労試験も実施した。測定条件は、上記と同様である。
図中、潤滑性能向上処理或いはコーティング処理後の異なった摩擦環境における振子摩擦疲労試験サンプルは、コーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)、潤滑性能向上処理後の油中摩擦(A−DW−DO−Oil)、コーティング処理後の水中摩擦(A−DW−DO一Water)で区別した。
コーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)の摩擦疲労特性は、参考例3の潤滑剤枯渇試験における結果と良く一致し、コーティング層形成の再現性、結果として、摩擦疲労特性の再現性が極めて高いことが解った。潤滑性能向上処理後の油中摩擦(A−DW−DO−Oi1)の結果は、たとえ潤滑性能の乏しい油(イソパラフィン:比較例6)を使用してもコーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)の摩擦疲労特性とほぼ同等の大幅な摩擦係数の低下が可能であることを示している(図中OilとA−DW−DO−Oilを比較参照)。この結果は、従来型ストレート油や参考例9:(Falex試験機による複合分散組成物(A−DO−TZ)の潤滑性能)に示すグリ−ス(比較例3)を始めとする上記した従来のあらゆる潤滑剤に対して、同様な前処理剤としての潤滑性能向上効果を発揮することを示すものである。上記市販の潤滑油剤について同様な手法で検証したところ優れた潤滑性能向上効果が確認できた。以上の結果は、潤滑性能向上処理後の油中摩擦(A−DW−DO−Oi1)とコーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)の摩擦疲労特性結果を組み合わせることで、潤滑油剤の境界潤滑状態が断続的に発生する不安定な油中の摩擦環境下でも、焼付き等のトラブル発生を防止するもので、機械システム等の稼働安定性を大幅に向上できることを示すものである。また、本実施例の曾田式振子試験の試験片ピンやボールは、硬質の耐摩耗材料として一般的な安価なクロム鋼を使用した。このことは、従来、軸受け等で使用されてきた高価な砲金や焼結合金、超硬等の代替が可能であり、経済効果は極めて高い。
図中に比較例7として記載したピンにDLC膜を成膜後、無潤滑状態(DLC(Dry))の摩擦疲労特性、同様に成膜後、イソパラフィン油中摩擦(DLC(Oil))の摩擦疲労特性(比較例8)は、双方とも本発明の結果を凌駕できるものではなかった。ちなみに、本摩擦疲労試験後のDLC膜にはかなりの損傷と部分剥離が観察された。
前述した無潤滑状態と水中摩擦の繰り返し環境の一例として、先行待機ポンプの軸受け環境がある。当該稼働環境は、水質汚染の防止を前提として、空運転の無潤滑状態と高負荷条件が避けられないことから、DLC膜を始めとする前記した従来の表面処理技術でも対処が難しいと考えられてきた。しかし、本発明の結果によれば、コーティング処理後の水中摩擦(A−DW−DO−Water)とコーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)の結果とを組み合わせることで、先行待機ポンプの軸受け稼働環境を再現できることになり、高価な材料を使用することなく、優れた潤滑性能が実現できる。
本潤滑剤組成物を定期的に充填し、空運転することで、コーティング層の補修も容易であり、水洗での水質汚染もないことから、メンテナンスを含めた経済効果は著しく高い。水中摩擦(A−DW−DO−Water)は、コーティング処理後に無潤滑状態(A−DW−DO−Dry)の結果と比較すると、その摩擦疲労特性は更に向上することが明確となった。従って、無潤滑状態と水中摩擦の繰り返しの過酷な摩擦環境下でも本潤滑剤組成物をコーティング剤として使用することで、軸受け部の高い潤滑性能が確保でき、システム稼働の信頼性を著しく高められることを実証できた。
当該コーティング剤、コーティング方法、コーティング層、コーティング層を有する部材やデバイス、それらを用いたシステムへの適用分野は幅広く、油汚染をきらう各種OA機器、ハードディスクの位置決めデバイス、高速ジャーナル軸受、精密位置決めや工作機械のボールねじ、生体適合性が求められる人工関節、ボールペンのボールやファスナー、自転車のチェーンやギヤ変換機構とライト、コンピュータのマウス、車のワイパーやタイヤ等へのコーティング等々、様々な産業、民生分野で使用できる。また、歯車やギヤのスポーリング、チッピング対策として、鉄道レールのシェリング対策、転がり軸受に生じる微小焼付きの集合であるスミアリング対策、船舶スクリューのキャビテーション対策、固体粒子によるエロージョン摩耗対策、フレッチング摩耗対策としてもその使用が可能である。また、せん断強度の低い固体(MoS2、黒鉛、PTFE、ポリイミド、銀、鉛、CaF2等)による従来の固体潤滑の形態を大幅に変革するものであり、潤滑油の温度特性である粘度指数や圧力による粘度変化の考慮も不要となる。更に、軸受けへの適用の場合、攪拌抵抗や転がり粘性抵抗等を低減するために潤滑油の量と流れを最適にする設計技術の負担も軽減される。本参考例は一例であり、本参考発明のその他の各態様の潤滑剤組成物を用いた潤滑性能向上処理或いはコーティング処理でも同様な効果が存在し、本参考例に限定されるものでないことは明らかである。
上述した発展型参考例に従い、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物、ダイヤモンド質超微粒子或いはCBN超微粒子を含むW/O型エマルション組成物を製造し、潤滑性能を評価したが、それぞれのタイプについて同様に優れた特性を有することを確認した。
更に、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物からなる潤滑剤組成物の別様の発展型として、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の油相(O相)側に、油性向上剤あるいはダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤等を添加して油相(O相)内を更に制御した形態が、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物(A−DO、A−DW、A−DW−DO)の潤滑性能より優れることを見出し、別様の本発明を完成するに至った。
上述した別様の発展型の一例として、ダイヤモンド質超微粒子を油相(O相)に含むO/W型エマルション(A−DO)の油相(O相)内に「油性向上剤」(Y)を添加した形態のものは(AY−DO):基油内(油性)/油分散組成物、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加したものは(A−(D,Z)O):基油内(固体)/油分散組成物、その両方を添加したものは(AY−(D,Z)O):基油内(油性・固体)/油分散組成物という記号を付与して前記水相(W相)中に添加した形態と同様に説明を簡潔にする。名称である油分散組成物の油は、ダイヤモンド質超微粒子の添加・分散している相が油相(O相)側であることを示すものであり、水相(W相)側である場合には、例えば、(AY−DW):基油内(油性)/水分散組成物と呼ぶこととし、適時注釈する(油相(O相)、水相(W相)双方にダイヤモンド質超微粒子を添加・分散している場合には、例えば、単に、・・・/分散組成物と呼ぶ。後述する実施例15に対応)。更に、本発展型組成物例の水相(W相)中に(Z)を添加したものは、それぞれ(AY−DO−TZ):基油内(油性)/複合油分散組成物、(A−(D,Z)O−TZ):基油内(固体)/複合油分散組成物、(AY−(D,Z)O−TZ):基油内(油性・固体)/複合油分散組成物という記号が付与される。(A−DO)及び(A−DW)の両相の形態(A−DW−DO)の油相(O相)内に(Y)を添加した他の発展型は、(AY−DW−DO):基油内(油性)/分散組成物、(Z)を添加したものは、(A−DW−(D,Z)O):基油内(固体)/分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−(D,Z)O):基油内(油性・固体)/分散組成物という記号を付与することとなる。
一方、当該ダイヤモンド質超微粒子を水相(W相)中に含むO/W型エマルション(A−DW)の油相(O相)内に(Y)添加したものは、上述したように(AY−DW):基油内(油性)/水分散組成物、(Z)を添加したものは、(A−DW−ZO):基油内(固体)/水分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−ZO):基油内(油性・固体)/水分散組成物という記号となる。同様に、例えば、本発展型組成物(AY−DW)例の水相(W相)中に更に(Y)、(Z)を添加したものは、それぞれ(AY−DW−TY):基油内(油性)/複成水分散組成物、(AY−DW−TZ):基油内(油性)/複合水分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−TY−TZ):基油内(油性)/複成・複合水分散組成物という記号を付与し、これ以外の組み合わせについても、上述のように同様に記号化して呼ぶことがある。
上記したように、ダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物からなる潤滑剤組成物の別様の発展型として、当該O/W型エマルション組成物の油相(O相)側に添加・分散するダイヤモンド質超微粒子の一部を、同炭素安定同素体のフラーレンで置き換えた油相(O相)内のダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤と同相内のダイヤモンド質超微粒子並びに水相(W相)中のダイヤモンド質超微粒子が複合する(O+ダイヤモンド質超微粒子+ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−(D,Z)O)について試作し、摩擦試験を行った。フラーレンの平均粒子径は40nmとしたが、一次粒子径は数nmの凝集径である。基油成分有効濃度は参考例14と同様に15wt%とした。又、水相(W相)と油相(O相)に添加・分散する固体濃度は同様に総量で1wt%であり、油相(O相)内のダイヤモンド質超微粒子/フラーレンの重量配合比率は3/1である。測定した摩擦疲労特性は同様に優れたものであり、低い摩擦係数が得られることが解った。油相(O相)内にダイヤモンド質超微粒子と共に添加されるダイヤモンド質超微粒子以外の固潤滑剤は、複合被覆層を形成して、過酷な摩擦環境下でのダイヤモンド質超微粒子(又、ダイヤモンド質超微粒子被覆層微粒子)への摩擦荷重の集中を抑制し、摩擦荷重を分散することで被覆層の長期安定化(炭素質や黒鉛等への逆変態の抑制と摩擦材への固溶・吸収の防止)を促進する。前述した本組成物の更に発展した形態として、(O+ダイヤモンド質超微粒子+ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物の水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加・分散した(A−DW−(D,Z)O−TZ):基油内(固体)/複合分散組成物、また、油性向上剤(Y)を添加した(A−DW−(D,Z)O−TY):基油内(固体)/複成分散組成物、更に、その両方を添加・分散した(A−DW−(D,Z)O−TY−TZ):基油内(固体)/複成・複合分散組成物、また、(O+ダイヤモンド質超微粒子+ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤)/W型エマルション組成物の水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)や油性向上剤(Y)を添加・分散した(A−(D,Z)O−TZ):基油内(固体)/複合油分散組成物、(A−(D,Z)O−TY):基油内(固体)/複成油分散組成物、更に、その両方を添加・分散した(A−(D,Z)O−TY−TZ):基油内(固体)/複成・複合油分散組成物でも良い。上記した油相(O相)内にダイヤモンド質超微粒子とフラーレンが複合した場合の効果を、シェル式高速四球摩擦試験にて評価した。ダイヤモンド質超微粒子を含む油相(O相)内へフラーレンを複合添加・分散することで、ダイヤモンド質超微粒子の単独添加・分散の場合(A−DOやA−DW−DO)と比較して、摩擦特性の長期安定化がはかれることが解った。本組成物の潤滑性能を検証するため、参考例8、9と同様に摩擦面の解析を行い、摩擦面にダイヤモンド質超微粒子、フラーレンからなる複合濃縮層(コーティング層)の存在を確認した。従って、油相(O相)内にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を複合しても、同様に優れたコーティング層形成作用や潤滑性能の優れたコーティング層が得られることが解った。油相(O相)や水相(W相)内のダイヤモンド質超微粒子を完全にフラーレンで置き換えて、油相(O相)内にフラーレンが分散する(O+フラーレン超微粒子)/W型エマルション組成物(A−ZO)や(O+フラーレン超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−ZO)、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+フラーレン超微粒子)型エマルション組成物(A−ZW−DO)でも従来型潤滑剤を凌駕する潤滑性能が得られることも解った。上記した態様のエマルション組成物の油相(O相)内に更に油性向上剤を添加した場合(例えば、AY−DW−ZOやAY−ZO等)も、潤滑性能の一段の向上が図れることが解った。本実施例に具体的に示したダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物に添加・分散するダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤の選択は、ダイヤモンド潤滑剤組成物を構成する一例であり、本参考例に限定されるものではないことは明らかである。
また、本ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を油相(O相)内に添加・分散する場合には、その平均粒子径については、油滴径に制約されることは明らかである。本エマルション(乳濁色)タイプの場合には、エマルションタイプ油滴径の1/10から1/100以下の平均粒子径であることが好ましい。
上記の優れた潤滑性能を得るその他の構成として、A−DW−ZO−TY、A−DW−ZO−TZ、A−DW−ZO−TY−TZの群から選ばれるものでも良い。
参考例8〜12までは、O/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW)と(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の形態、更には(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)の形態において、水相(W相)中に油性向上剤(Y)又はダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)、更には、その両方を添加した組成物を作製し、その潤滑性能を評価した。また、参考例13では、無水型潤滑組成物(Y,D,Z)O)の潤滑性能を検討した(水を加えて自己乳化したダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の形態は、マイクロエマルションタイプの(BY−(D,Z)O)であった。)。
一方、参考例15には、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/(W+ダイヤモンド質超微粒子)型エマルション組成物(A−DW−DO)の油相(O相)内にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加し、固体微粒子が複合した態様(A−DW−(D,Z)O)(図13の模式図には表示せず)について記載したが、本参考例では、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の油相(O相)内に油性向上剤(Y)を添加してダイヤモンド質超微粒子と油性向上剤(Y)とが油相(O相)内で共存し、かつ、水相(W相)中にはダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加し複合状態となる態様(AY−DO−TZ)(同様に図13の模式図には表示せず)について記載する。
第1工程/オレイン酸主体の油脂:12.0wt%、オレイン酸メチルエステル:16.0wt%、実施例2に記載のダイヤモンド質超微粒子油分散体(基油P−2:ダイヤモンド質超微粒子固体濃度10wt%):2.5wt%、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP):10.0wt%、ポリオキシエチレン(n=6mol)・オレイン酸エステル3.5wt%、オレイン酸カリウム塩:6.0wt%を混合・攪拌して乳化組成物とし、転相水:21.0wt%を添加し転相乳化を完了させる。
第2工程/残部の水:28.75wt%の中にポリテトラフルオロエチレン:0.25wt%を徐々に添加し、攪拌して基油成分有効濃度50wt%のペースト状の基油内(油性)/複合油分散組成物(CY−DO−TZ)を得た。消泡剤は同様にジメチルポリシロキサンのエマルションを0.01wt%添加した。
シェル式高速四球摩擦試験に使用する基油内(油性)/複合油分散組成物(AY−DO−TZ)の基油成分有効濃度は15wt%であり、ダイヤモンド質超微粒子濃度は0.075wt%、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)の濃度も0.075wt%で、油相(O相)、水相(W相)の固体濃度の合計は0.15wt%とした。又、油性向上剤の濃度は、3.0wt%である。
摩擦試験に供した本組成物の基油成分有効濃度は15wt%であり、上記本組成物の製造にて作製した基油成分有効濃度50wt%品を蒸留水にて希釈して潤滑性能を評価した。(A−DO)の油相(O相)内に更に油性向上剤を、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤を添加することにより、比摩耗量は実施例10に記載した複成・複合分散組成物(A−DO−TY−TZ)より更に低下する。(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(A−DO)の油相(O相)内に油性向上剤(Y)として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を、水相(W相)中にポリテトラフルオロエチレンを添加した場合、その比摩耗量は、0.38×10-9であった。
本参考例の更に優れた潤滑性能を解明するために、実施例8−9と同様にシェル式高速四球試験における摩擦面の観察から潤滑機構を調査した。
図23は本参考例の基油内(油性)/複合油分散組成物(AY−DO−TZ)のシェル式高速四球摩擦試験ボール摩擦面のEPMA分析結果である。
a)はボール摩擦面の反射電子組成像であり、実施例8、9と同様に原子番号の小さい元素の濃縮がみられる(黒色部)。b)は炭素の特性X線強度分布を、c)は硫黄、d)は亜鉛、e)はフッ素の同様な特性X線強度分布を示した結果である。マイクロラマン分光法の濃縮炭素層の同定結果と合わせると、摩擦面には、油相(O相)内に添加したダイヤモンド質超微粒子、油性向上剤(Y)としてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)由来の硫黄、水相(W相)中に添加したポリテトラフルオロエチレン由来のフッ素の複合濃縮層が形成していることが確認された。
従って、本基油内(油性)/複合油分散組成物の潤滑性能の向上は、油相(O相)内に添加したダイヤモンド質超微粒子と油性向上剤(Y)との混成効果、並びに同ダイヤモンド質超微粒子と水相(W相)に添加・分散したダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)との複合効果によるものであることが明確となった。本基油内(油性)/複合油分散組成物(AY−DO−TZ)の潤滑性能の向上において、特筆すべきはその耐荷重能の向上である。これは、従来、水溶性潤滑剤では不可能とされていた耐荷重性能を向上し、耐摩耗性と低い摩擦係数特性を同時に達成できる潤滑剤組成物を提供できるものである。従って、地球温暖化対策、環境保全を考えると画期的成果である。
本参考例では、(A−DO)の油相(O相)内に油性向上剤(Y)を、水相(W相)中にダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加・分散する(AY−DO−TZ)の構成について詳述したが、上記の優れた潤滑性能を得るその他の構成として、
基油内(油性)/油分散組成物:(AY−DO)、基油内(油性)/複成油分散組成物:(AY−DO−TY)、基油内(油性)/複成・複合油分散組成物:(AY−DO−TY−TZ)群、基油内(油性・固体)/油分散組成物:(AY−(D,Z)O)、基油内(油性・固体)/複合油分散組成物:(AY−(D,Z)O−TZ)、基油内(油性・固体)/複成油分散組成物:(AY−(D,Z)O−TY)、基油内(油性・固体)/複成・複合油分散組成物:(AY−(D,Z)O−TY−TZ)群、O相並びにW相内にダイヤモンド質超微粒子を含む基油内(油性)/分散組成物:(AY−DW−DO)、同基油内(油性)/複合分散組成物:(AY−DW−DO−TZ)、同基油内(油性)/複成分散組成物:(AY−DW−DO−TY)、同基油内(油性)/複成・複合分散組成物:(AY−DW−DO−TY−TZ)群、同基油内(油性・固体)/分散組成物:(AY−DW−(D,Z)O)、同基油内(油性・固体)/複合分散組成物:(AY−DW−(D,Z)O−TZ)、同基油内(油性・固体)/複成分散組成物:(AY−DW−(D,Z)O−TY)、同基油内(油性・固体)/複成・複合分散組成物:(AY−DW−(D,Z)O−TY−TZ)群から選ばれるものでも良い。
更には、基油内(油性)/水分散組成物:(AY−DW)、基油内(油性)/複成水分散組成物:(AY−DW−TY)、基油内(油性)/複合水分散組成物:(AY−DW−TZ)、基油内(油性)/複成・複合水分散組成物:(AY−DW−TY−TZ)群、基油内(油性・固体)/水分散組成物:(AY−DW−ZO)、基油内(油性・固体)/複成水分散組成物:(AY−DW−ZO−TY)、基油内(油性・固体)/複合水分散組成物:(AY−DW−ZO−TZ)、基油内(油性・固体)/複成・複合水分散組成物:(AY−DW−ZO−TY−TZ)群から選ばれるものでも良い。
前述した実施例との比較のために、市販の鉱物油(マシン油#68(68cSt))に油性向上剤としてジチオカルバミン酸モリブデンを添加したもの(MO−Y2)及び塩素化パラフィンを添加したもの(MOCl)、ダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを添加したもの(MO−Z2)、塩素化パラフィン(Cl結合率:40%)単独(Y3)、Liグリース中にダイヤモンド超微粒子を分散した市販品(NDMO−2)を比較サンプル(比較例9)として実施例と同様な条件でシェル式高速四球摩擦試験を行った。
上述した別様の発展型の一例として、CBN超微粒子を油相(O相)に含むO/W型エマルションの油相(O相)内に「油性向上剤」(Y)を添加した形態のものは同様にダイヤモンド質超微粒子の参考例の記号を流用して(AY−DO):基油内(油性)/油分散組成物、CBN超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)を添加したものは(A−(D,Z)O):基油内(固体)/油分散組成物、その両方を添加したものは(AY−(D,Z)O):基油内(油性・固体)/油分散組成物という記号を付与して前記水相(W相)中に添加した形態と同様に説明を簡潔にする。名称である油分散組成物の油は、CBN超微粒子の添加・分散している相が油相(O相)側であることを示すものであり、水相(W相)側である場合には、例えば、(AY−DW):基油内(油性)/水分散組成物と呼ぶこととし、適時注釈する(油相(O相)、水相(W相)双方にCBN超微粒子を添加・分散している場合には、例えば、単に、・・・/分散組成物と呼ぶ。後述する実施例15に対応)。更に、本発展型組成物例の水相(W相)中に(Z)を添加したものは、それぞれ(AY−DO−TZ):基油内(油性)/複合油分散組成物、(A−(D,Z)O−TZ):基油内(固体)/複合油分散組成物、(AY−(D,Z)O−TZ):基油内(油性・固体)/複合油分散組成物という記号が付与される。(A−DO)及び(A−DW)の両相の形態(A−DW−DO)の油相(O相)内に(Y)を添加した他の発展型は、(AY−DW−DO):基油内(油性)/分散組成物、(Z)を添加したものは、(A−DW−(D,Z)O):基油内(固体)/分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−(D,Z)O):基油内(油性・固体)/分散組成物という記号を付与することとなる。
一方、当該CBN超微粒子を水相(W相)中に含むO/W型エマルションの油相(O相)内に(Y)添加したものは、上述したように(AY−DW):基油内(油性)/水分散組成物、(Z)を添加したものは、(A−DW−ZO):基油内(固体)/水分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−ZO):基油内(油性・固体)/水分散組成物という記号となる。同様に、例えば、本発展型組成物(AY−DW)例の水相(W相)中に更に(Y)、(Z)を添加したものは、それぞれ(AY−DW−TY):基油内(油性)/複成水分散組成物、(AY−DW−TZ):基油内(油性)/複合水分散組成物、その両方を添加したものは、(AY−DW−TY−TZ):基油内(油性)/複成・複合水分散組成物という記号を付与し、これ以外の組み合わせについても、上述のように同様に記号化して呼ぶことがある。
以上、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物の発展形の効果は、参考例に示す図面及び図面の簡単な説明で示したものとほぼ同程度の特性が得られた。ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含むW/O型エマルションでも同様に本発展型組成物を製造し、優れた潤滑性能を確認した。
本実施例では、CBN超微粒子を含むO/W型エマルション組成物をコーテイング剤として使用し、各種部材にコーティング層を形成し、摩擦特性への効果を検証した。
ボールねじは、日本精工(株)社製のクロム鋼からなるねじ径φ20mm、リード10mm、ストローク600mm、ナット部はアンギュラタイプの玉軸受け機構である。(精密級ボールねじ)。ベアリング(クロム鋼球)径は約φ15mmである。リニアガイドには高荷重型精密タイプを選定した。転がり疲労評価における位置決めテーブル(重量:19kg)への搭載荷重は30kgとし、ブランケットとカップリングを介してACサーボモータに直結し、コントローラ或いはコントローラを介してパソコンで制御する。
ボールねじやベアリング、レール等へのコーティング処理は、慣らし運転を行い完了させる。ボールねじナット部等のグリースニップルに本コーティング剤を充填し(或いは専用の給脂用カートリッジを装着)、定格荷重の搭載負荷で動作さた。本装置の位置決めステージに搭載する負荷荷重は、リニアガイドが受け持つため、ボールねじへの効果的なコーティング処理は加減速を伴う往複運動条件が好ましい。また、短時間でコーテイングを効果的に行う手法として、バックラッシュを減らすアンギュラ軸受け部(ボールねじ)、リニアガイドのベアリング部等に弾性変形域の予圧を与えることも良い。本実施例での慣らし運転条件は、位置決めステージへの搭載荷重:20kg、水平往復運動で、加速時間:0.1sec、減速時間:0.1sec、移動速度:1.0m/secにて20minとした。
慣らし運転後、負荷を除いた状態で動摩擦トルクを比較したところ、従来潤滑剤では、6.0N・cmに対し、4.3N・cmの結果が得られた。また、起動時の静摩擦トルク(代用特性としてモータ起動トルクから評価)を比較したところ、コーティング処理を施した場合、モータ起動トルクが25%程度低下した。
転がり疲労試験後に、位置決め装置から取り外し、洗浄したボールねじナット部のベアリングやねじ溝表面を調べたところ、従来潤滑剤使用の場合には、うろこ状の微小剥離の発生や位置決め精度低下につながる摩耗痕跡が確認された。本コーティング処理の場合には、摩擦痕跡はほとんどなく、EPMA分析からダイヤモンド質超微粒子由来の炭素が濃縮したコーティング層が形成されていることが確認された。潤滑コーティング部材上のコーティング層は、極めて低い摩擦係数に加え、放熱特性が良好なことから、高速走行時の熱変位(摩擦発熱による)を抑え、位置決め精度低下を防止できることを確認した。従って、ボールねじの強制冷却や、リードの変更、高速ウォーミングアップによる温度安定化等々、熱変位発生に係る位置決め精度維持の諸対策は、大幅に軽減される。
以上、動力伝達機構の代表例として送りねじ機構並びに案内要素としてのころがり案内や回転案内としての転がり軸受について、慣らし運転により形成した当該コーティング層を有する潤滑コーティング部材の優れた摩擦特性について説明したが、その他の動力伝達機構として、リンク機構、カム機構、歯車機構、摩擦伝動(ベルト伝動、巻き上げ機、トラクションドライブ等)、案内要素としての滑り案内、流体静圧案内、回転案内としてのジャーナル軸受等、トライボロジーが係るあらゆる部材にて同様の摩擦特性を発揮でき、ダイヤモンド質超微粒子を含むコーテイング層を有する潤滑コーティング部材の提供は、本実施例に限定されるものではないことは明らかである。
本実施例では、実施例4に記載した基本的な慣らし運転可能な各種動力伝達機構には分類されない部材に対してコーティング層を形成し、同様に摩擦特性への効果を検証した。
本例は、平面上を移動する立方形の移動体の摩擦面と相対抗する平面間に発生する摩擦力に着目し、移動体が静止状態から動き出すときの最大静止摩擦力の摩擦係数から当該コーティング層形成による潤滑性能向上効果を検証した。 静止摩擦力の測定は、最も単純な方法として、傾斜角を自在に調整できる傾斜面(100mm×100mm×10mm平面)に上記立方形の移動体を載せて動き出す傾斜角から算出した。
コーティング層を形成する手法としては、摩擦面に摩擦力を負荷できる手段であれば特定の手段に限定されるものではなく、コーティング層を形成する摩擦面の形状等で適時選択できる。ここでは、クロム鋼とダイヤモンド粒子やCBN、或いはWBNと金属との焼結体、同微粒子とセラミックスの焼結体(本実施例では平均粒子径が25ミクロンのダイヤモンド微粒子30体積%を含むSUS316ステンレス焼結体を使用)とからなる上記傾斜面(平面)にコーティングした例について記載する。
CNCマシニングセンターの主軸に直径10mmのポリウレタン製円柱摩擦工具を取り付け、XYテーブル上には摩擦工具軸と平行に固定したクロム鋼平板や立方形の移動体(材質:同様にクロム鋼)を対向設置する。摩擦工具の回転数は300rpm、被コーティング材への切り込み深さ(X軸)は1―5ミクロンとし、Y軸方向の送り速度は150mm/minとした。(O+CBN超微粒子)/(W+CBN超微粒子)型エマルション組成物コーティング剤の基油成分有効濃度:20wt%、CBN超微粒子固体濃度:1wt%)をミスト状に供給しながら複数回、クロム鋼表面を摩擦工具にて摩擦し、コーティング層を形成した。当該コーティング層形成のための摩擦条件や、摩擦工具の形状、材質は一例であり、本実施例に限定されるものではなく適時選択できる。ダイヤモンド微粒子30体積%を含むSUS316ステンレス焼結体の場合には、予めダイヤモンド砥石等で摩擦面を研磨しておくことが望ましい。
慣らし運転等でコーティング層を施した本潤滑コーティング部材は、潤滑剤枯渇試験等で記載したように、無潤滑下でも極めて優れた潤滑特性を示すものであり、潤滑剤(油やグリース等)の使用が制限される用途には最適である。
本参考例では、無水型潤滑剤組成物実施例にて記載したように、寒冷地での使用を念頭に、濃度調整する希釈成分を毒性のないグリセリンや少・多糖類等からなる不凍液とした場合の低温で使用可能な潤滑剤組成物や更に不凍液へこれらを添加した構成の潤滑性能について検討する。
本潤滑剤組成物の潤滑性能を評価する摩擦試験機の選定であるが、前述のシェル式高速四球試験機或いはFalex試験機では、摩擦条件が過酷で、摩擦面が高温となるため、潤滑剤温度を低温に維持してその摩擦特性を評価することが困難である。そこで、摩擦熱が発生しにくい曾田式振子試験機で、低温下の摩擦特性を評価することとした。また、摩擦試験環境を−20℃に保つために、曾田式振子試験機の試料カップの下に、ペルチェ素子を装着して温度が−20℃に達した時点で測定を開始した。摩擦係数の測定方法は標準法(3回測定の平均値)にて行った。
曾田式振子試験機の摩擦係数測定では、前の参考例でも説明したが、粘度が大きく影響する。そこで、冷凍庫に入れて冷却したときの試料の外観をまず調査した。評価する潤滑剤試料の態様は、リファレンスとしての前述したマイクロエマルション(可溶化型)タイプの基礎エマルション組成物(B)、(O+ダイヤモンド質超微粒子)/W型エマルション組成物(B−DO)、複成分散組成物(B−DO−TY)及び複合分散組成物(B−DO−TZ)とし、その基油成分有効濃度は50wt%(ペースト状(グリース様)タイプ(C))とした。冷凍庫(−20℃)で各試料を24hr放置して外観を確認したところ、氷結するサンプルはなかったが、グリース状であり、本組成物は曾田式振子試験には向かない。
そこで、上記試料にグリセリンを添加して行き、グリース状から流動液体になるまでのグリセリンの濃度を変えて同様に冷凍庫に入れ外観を調べたところ、グリセリン:60wt%、上記マイクロエマルションタイプ組成物試料(基油成分有効濃度が20wt%の場合):40wt%の比率で流動性を示すことが解った。従って、上記基油成分有効濃度50wt%組成物にグリセリンを添加して、流動化させ、曾田式振子試験機評価或いは実用上機能するグリセリン添加の配合限界比率は60wt%以上である。
次に、曾田式振子試験機により摩擦特性を評価するために、前述と同様に、上記基油成分有効濃度50wt%の各ペースト状(グリース様)タイプ組成物に水の代わりにグリセリンで稀釈して、基油成分有効濃度:15wt%の各組成物を作製した。主な構成成分濃度は、グリセリン:70wt%、基油成分有効濃度(AI):15wt%、水成分:15wt%であり、このときのダイヤモンド質超微粒子の固体濃度は0.3wt%で、(B−DO−TY)の油性向上剤(Y)にはジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を、(B−DO−TZ)のダイヤモンド質超微粒子以外の固体潤滑剤(Z)にはポリテトラフロオロエチレン(PTFE)を用い、何れも表13に準じた添加量に設定した。表19には、比較として基礎エマルション組成物(B)のマイクロエマルション(可溶化型)タイプの場合も含め各エマルション組成物の配合組成や測定環境温度と同時にそれぞれの摩擦係数結果を示した。
なお、本低温条件下で摩擦特性が最も優れていた試料(B−DO−TZ)の室温(20℃)での摩擦係数は、0.093と最も低い値を示し、通常の使用温度から低温(−20℃)に渡って安定した潤滑性能を発揮できる潤滑剤組成物であることが検証できた。本参考例は、低温下でも優れた潤滑機能を維持するダイヤモンド質超微粒子を含むO/W型エマルション潤滑剤組成物を構成する一例であり、その他の実施例に記載の各態様や配合構成でも優れた潤滑機能を発揮させることが可能であり、本参考例に限定されるものではないことは明らかである。
以上、CBN超微粒子を含む本O/W型エマルション組成物の効果は、参考例19に示す結果とほぼ同程度の特性が得られた。ダイヤモンド質超微粒子やCBN超微粒子を含むW/O型エマルションでも同様に優れた潤滑性能を確認した。
Claims (6)
- 油中水(W/O)型エマルション組成物であって、
平均粒子径が100nm以下の、以下(a)〜(d)のいずれか1以上の超微粒子を10wt%以下含有し、
(a)ダイヤモンド質超微粒子
(b)六方晶窒化ホウ素の高圧相である立方晶窒化ホウ素(CBN)超微粒子
(c)六方晶窒化ホウ素の高圧相であるウルツ鉱型結晶窒化ホウ素(WBN)超微粒子
(d)立方晶窒化ホウ素の一部を炭素で置換した高圧相(BCN)超微粒子
かつ、これらの超微粒子が以下の(A)又は(B)の態様で水相(W相)中及び/又は油相(O相)中に添加されていることを特徴とする前記W/O型エマルション組成物。
(A)前記超微粒子が、陰イオン型、両性型、または非イオン型の水分散用分散剤で処理した分散剤処理超微粒子水分散体として水相(W相)中に添加されている
(B)前記超微粒子が、極性基グループ及び/又は非極性グループの界面活性剤である油分散用分散剤で処理した分散剤処理超微粒子油分散体として油相(O相)中に添加されている - 水中油(O/W)型エマルション組成物であって、
平均粒子径が100nm以下の、以下(b)〜(d)のいずれか1以上の超微粒子を10wt%以下含有し、
(b)六方晶窒化ホウ素の高圧相である立方晶窒化ホウ素(CBN)超微粒子
(c)六方晶窒化ホウ素の高圧相であるウルツ鉱型結晶窒化ホウ素(WBN)超微粒子
(d)立方晶窒化ホウ素の一部を炭素で置換した高圧相(BCN)超微粒子
かつ、これらの超微粒子が、以下の(A)又は(B)の態様で水相(W相)中及び/又は油相(O相)中に添加されていることを特徴とするO/Wエマルション組成物。
(A)前記超微粒子が、水分散用分散剤で処理した分散剤処理超微粒子水分散体として水相(W相)中に添加されている
(B)前記超微粒子が、油分散用分散剤で処理した分散剤処理超微粒子油分散体として油相(O相)中に添加されている - 請求項1または2に記載のエマルション組成物を含む潤滑剤。
- 請求項1または2に記載のエマルション組成物を含むコーティング剤。
- 請求項1または2に記載のエマルション組成物で被覆処理後、乾燥して得られる、部材の表面が改質されたコーティング部材。
- 請求項4に記載のコーティング剤を用い、部材への被覆処理を慣らし運転により行うことを特徴とするコーティング剤の部材への被覆方法。
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