本発明は、基板を露光する露光装置、露光方法、クリーニング装置、及びデバイス製造方法に関する。
本願は、2007年12月28日に出願された特願2007−340876、及び2007年12月28日に出願された特願2007−340877号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
フォトリソグラフィ工程で用いられる露光装置において、特許文献1に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置が知られている。液浸露光装置においては、露光光の光路の少なくとも一部が液体で満たされるように液浸空間が形成される。特許文献1に開示されている露光装置は、投影光学系との間に液体を保持する空間を形成するシャッタ部材を備えている。シャッタ部材は、基板を保持する基板テーブルにリリース可能に保持され、シール部材に保持されることによって、投影光学系との間に液体を保持する空間を形成する。
米国特許出願公開第2004/0211920号明細書
従来の技術は、基板テーブルとシール部材との間でのシャッタ部材の受け渡し動作を繰り返す。シャッタ部材の受け渡し動作に時間を要する場合、スループットが低下する可能性がある。
また、液浸露光装置において、液浸空間の液体と接触する物体の表面が汚染する可能性がある。例えば、基板の周辺に配置された部材の表面が汚染している状態を放置しておくと、基板の表面が汚染され、その結果、露光不良が発生し、不良デバイスが発生する可能性がある。そのため、その物体の表面をクリーニングすることが有効である。一方、クリーニング動作が時間を要する場合、露光装置の稼動率が低下したり、スループットが低下したりする可能性がある。
本発明の態様は、スループットの低下又は露光不良の発生を抑制できる露光装置及び露光方法を提供することを目的とする。別の目的は、稼動率の低下、スループットの低下を抑制しつつクリーニング動作を実行でき、露光不良の発生を抑制できるクリーニング装置を提供することである。また別の目的は、生産性の低下を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、前記液体と接触する表面を有し、所定面内を移動可能な物体と、前記物体が対向して配置され、前記物体の表面との間で液体が保持される第1部材と、前記第1部材と前記物体との間で移動可能かつ前記第1部材との間で液体を保持する空間を形成可能な第2部材と、を備え、前記第1部材との間での液体の保持を、前記物体及び前記第2部材の一方から他方に切り替えるために、前記物体と前記第2部材とが実質的に前記所定面と平行な方向に移動される露光装置が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光光を射出する射出面を有する光学部材と、射出面と対向する位置を含む所定面内を移動可能な移動体と、光学部材と移動体との間において移動可能で、光学部材との間で液体を保持する空間を形成可能な所定部材と、を備えた露光装置が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光光を射出する射出面を有する光学部材と、射出面と対向する位置を含む所定面内を移動可能な移動体と、光学部材との間で液体を保持する空間を形成可能な所定部材と、光学部材と移動体との間へ所定部材を挿入するとともに、光学部材と移動体との間から所定部材を抜き出す駆動システムと、を備えた露光装置が提供される。
本発明の第4の態様に従えば、第1、第2、及び第3の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の第5の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、所定面内を移動可能な物体を第1部材と対向して配置することと、前記第1部材と前記物体との間で液体を保持することと、少なくとも前記第1部材と前記物体との間の空間で移動可能かつ前記第1部材との間で液体を保持する空間を形成可能な第2部材を用意することと、前記物体と前記第2部材とが前記所定面と実質的に平行な方向に移動することを含み、前記第1部材との間での液体の保持を、前記物体及び前記第2部材の一方から他方に切り替えることと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第6の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、露光光を射出する光学部材の射出面と対向する位置に、基板を保持して所定面内を移動可能な移動体を配置することと、光学部材と移動体との間に液体を保持することと、光学部材と移動体との間に、所定面とほぼ平行な方向に移動可能な所定部材を配置することと、光学部材と所定部材との間に液体を保持することと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第7の態様に従えば,液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、露光光を射出する光学部材の射出面と対向する位置に、基板を保持して所定面内を移動可能を移動体を配置することと、光学部材と移動体との間に液体を保持することと、移動体の移動と同期して、光学部材との間で液体を保持する空間を形成可能な所定部材を移動して、光学部材と移動体との間へ所定部材を挿入するとともに、光学部材と移動体との間から所定部材を抜き出すことと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第8の態様に従えば,第5、第6、及び第7の態様の露光方法を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の第9の態様に従えば、液浸露光で用いられる露光用液体と接触する物体の表面をクリーニングするクリーニング装置であって、物体の表面との間でクリーニング用液体を保持する第1面と、第1面の周囲の少なくとも一部に配置され、物体の表面に対して第1面より離れた第2面と、を備えたクリーニング装置が提供される。
本発明の第10の態様に従えば、露光用液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光用液体と接触する物体の表面をクリーニングするクリーニング部材を備え、クリーニング部材は、物体の表面との間でクリーニング用液体を保持する第1面と、第1面の周囲の少なくとも一部に配置され、物体の表面に対して第1面より離れた第2面と、を有する露光装置が提供される。
本発明の第11の態様に従えば、露光用液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光用液体と接触する物体の表面との間でクリーニング用液体を保持可能な第1面を有するクリーニング部材と、クリーニング部材との間でクリーニング用液体を保持する空間を形成可能な所定部材と、クリーニング部材と物体との間へ所定部材を挿入するとともに、クリーニング部材と物体との間から所定部材を抜き出す駆動システムと、を備えた露光装置が提供される。
本発明の第12の態様に従えば、第10、第11の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の第13の態様に従えば、露光用液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、露光用液体と接触する表面を有する物体を、物体の表面との間でクリーニング用液体を保持可能な第1面及び第1面の周囲の少なくとも一部に配置された第2面を有するクリーニングステーションに移動することと、第1面と物体の表面との間にクリーニング用液体を保持した状態で、第1面と物体の表面とを相対移動することと、を含み、第2面を、第1面の中心から離れる方向において、物体の表面との間隔が徐々に大きくなるように傾斜させる露光方法が提供される。
本発明の第14の態様に従えば、露光用液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、露光用液体と接触する表面を有する物体を、クリーニング部材が配置されたクリーニングステーションに移動することと、クリーニング部材の第1面と対向する位置に、物体を配置することと、クリーニング部材の第1面と物体の表面との間にクリーニング用液体を保持することと、クリーニング部材と物体との間に、物体の表面とほぼ平行に移動可能な所定部材を配置することと、クリーニング部材と所定部材との間にクリーニング用液体を保持することと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第15の態様に従えば、露光用液体を介して露光光で基板を露光する露光方法であって、露光用液体と接触する表面を有する物体を、クリーニング部材が配置されたクリーニングステーションに移動することと、クリーニング部材の第1面と対向する位置に、物体を配置することと、クリーニング部材の第1面と物体の表面との間にクリーニング用液体を保持することと、物体の移動と同期して、クリーニング部材との間でクリーニング用液体を保持する空間を形成可能な所定部材を移動して、クリーニング部材と物体との間へ所定部材を挿入するとともに、クリーニング部材と物体との間から所定部材を抜き出すことと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第16の態様に従えば、第13、第14、及び第15の態様の露光方法を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の態様によれば、露光処理におけるスループットの低下を抑制でき、デバイスの生産性の低下を抑制できる。
また、本発明の態様によれば、稼動率の低下を抑制しつつクリーニング動作を実行できる。
一実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
終端光学素子、液浸部材、及び第1位置に配置された基板ステージを示す側断面図である。
終端光学素子、液浸部材、及び第1位置に配置されたカバー部材を示す側断面図である。
カバー部材、及びカバー部材を移動する第3駆動システムを示す平面図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
別の実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
終端光学素子、第1液浸部材、及び基板ステージを示す側断面図である。
終端光学素子、第2液浸部材、及び第1位置に配置されたカバー部材を示す側断面図である。
カバー部材、及びカバー部材を移動する第3駆動システムを示す平面図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
露光装置の動作の一例を説明するための模式図である。
マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
2…基板ステージ、4…第2駆動システム、10…終端光学素子、11…射出面、13…カバー部材、23…第3駆動システム、40…クリーニング装置、41…第2液浸部材、42…下面、43…第1下面、44…第2下面、47…多孔部材、48B…平坦面、A1…第1位置、A2…第2位置、EL…露光光、EX…露光装置、LC…第2液体、LQ…液体(第1液体)、LS…液浸空間、LS1…第1液浸空間、LS2…第2液浸空間、P…基板、ST…クリーニングステーション
発明を実施するための形態
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY及びθZ方向とする。
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1を移動する第1駆動システム3と、基板ステージ2を移動する第2駆動システム4と、基板ステージ2を移動可能に支持するガイド面5を有するベース部材(定盤)6と、マスクステージ1及び基板ステージ2それぞれの位置情報を計測可能な計測システム(本例では干渉計システム)7と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置8とを備えている。
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。マスクMは、例えばガラス板等の透明板上にクロム等の遮光膜を用いて所定のパターンが形成された透過型マスクを含む。なお、マスクMとして、反射型マスクを用いることもできる。基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えばシリコンウエハのような半導体ウエハ等の基材に感光膜が形成されたものを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。また、基板Pが、感光膜と別の膜を含んでもよい。例えば、基板Pが、反射防止膜を含んでもよいし、感光膜を保護する保護膜(トップコート膜)を含んでもよい。
本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。露光装置EXは、露光光ELの光路Kの少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能な液浸部材9を備えている。液浸空間LSは、液体LQで満たされた空間である。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。
本実施形態において、液浸空間LSは、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子10から射出される露光光ELの光路Kが液体LQで満たされるように形成される。終端光学素子10は、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面11を有する。液浸空間LSは、終端光学素子10とその終端光学素子10の射出面11と対向する位置A1に配置された物体との間の光路Kが液体LQで満たされるように形成される。射出面11と対向する位置A1は、射出面11から射出される露光光ELの照射位置を含む。以下の説明において、終端光学素子10の射出面11と対向する位置A1を適宜、第1位置A1、と称する。
液浸部材9は、終端光学素子10の近傍に配置されている。液浸部材9は、下面12を有する。本実施形態において、射出面11と対向可能な物体は、下面12と対向可能である。物体の表面が第1位置A1に配置されたとき、下面12の少なくとも一部と物体の表面とが対向する。射出面11と物体の表面とが対向しているとき、終端光学素子10は、射出面11と物体の表面との間に液体LQを保持できる。また、下面12と物体の表面とが対向しているとき、液浸部材9は、下面12と物体の表面との間に液体LQを保持できる。射出面11及び下面12と物体の表面との間に保持される液体LQによって、液浸空間LSが形成される。
本実施形態において、射出面11及び下面12と対向可能な物体は、第1位置A1を含む所定面内を移動可能な物体を含む。本実施形態において、その物体は、基板ステージ2、及びその基板ステージ2に保持された基板Pの少なくとも一方を含む。本実施形態において、基板ステージ2は、ベース部材6のガイド面5上を移動可能である。本実施形態においては、ガイド面5は、XY平面とほぼ平行である。基板ステージ2は、基板Pを保持して、ガイド面5に沿って、第1位置A1を含むXY平面内を移動可能である。
また、本実施形態の露光装置EXは、第1位置A1に移動可能なカバー部材13を備えている。カバー部材13は、終端光学素子10と基板ステージ2との間において移動可能で、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持する空間を形成可能である。カバー部材13は、射出面11及び下面12と対向可能である。本実施形態において、カバー部材13は、ガイド面5とほぼ平行な方向(XY方向)に移動する。また、カバー部材13は、第1位置A1と異なる第2位置A2に移動可能である。第2位置A2は、射出面11及び下面12と対向しない位置を含む。すなわち、本実施形態において、カバー部材13は、第1位置A1及び第2位置A2を含むXY平面内を移動可能である。
液浸部材9は、第1位置A1に配置された基板ステージ2(基板P)との間を液体LQで満たして液浸空間LSを形成可能である。また、液浸部材9は、第1位置A1に配置されたカバー部材13との間を液体LQで満たして液浸空間LSを形成可能である。
本実施形態においては、射出面11及び下面12と対向する位置に配置された基板Pの表面の一部の領域(局所的な領域)が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成され、その基板Pの表面と下面12との間に液体LQの界面(メニスカス、エッジ)が形成される。すなわち、本実施形態においては、露光装置EXは、基板Pの露光時に、投影光学系PLの投影領域PRを含む基板P上の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSを形成する局所液浸方式を採用する。
照明系ILは、所定の照明領域IRを均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
マスクステージ1は、投影光学系PLの第1面(物体面)にパターン形成面(下面)が配置されるマスクMを保持するマスク保持部14を有する。マスク保持部14は、マスクMを着脱可能である。本実施形態において、マスク保持部14は、マスクMのパターン形成面(下面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。第1駆動システム3は、リニアモータ等のアクチュエータを含む。マスクステージ1は、第1駆動システム3の作動により、マスクMを保持してXY平面内を移動可能である。本実施形態においては、マスクステージ1は、マスク保持部14でマスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。投影光学系PLの複数の光学素子は、鏡筒PKで保持される。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5又は1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸AXは、Z軸とほぼ平行である。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
基板ステージ2は、投影光学系PLの第2面(像面)に露光面(表面)が配置される基板Pを保持する基板保持部15を有する。基板保持部15は、基板Pを着脱可能である。本実施形態において、基板保持部15は、基板Pの露光面(表面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。第2駆動システム4は、例えばリニアモータ等のアクチュエータを含む。基板ステージ2は、第2駆動システム4の作動により、基板Pを保持してXY平面内を移動可能である。本実施形態においては、基板ステージ2は、基板保持部15で基板Pを保持した状態で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
干渉計システム7は、XY平面内におけるマスクステージ1及び基板ステージ2のそれぞれの位置情報を計測する。干渉計システム7は、XY平面内におけるマスクステージ1の位置情報を計測するレーザ干渉計7Aと、XY平面内における基板ステージ2の位置情報を計測するレーザ干渉計7Bとを備えている。レーザ干渉計7Aは、マスクステージ1に配置された反射面1Rに計測光を照射し、その反射面1Rを介した計測光を用いて、X軸、Y軸、及びθZ方向に関するマスクステージ1(マスクM)の位置情報を計測する。レーザ干渉計7Bは、基板ステージ2に配置された反射面2Rに計測光を照射し、その反射面2Rを介した計測光を用いて、X軸、Y軸、及びθZ方向に関する基板ステージ2(基板P)の位置情報を計測する。
また、本実施形態においては、基板ステージ2に保持された基板Pの表面の位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出システム(不図示)が配置されている。フォーカス・レベリング検出システムは、Z軸、θX、及びθY方向に関する基板Pの表面の位置情報を検出する。
基板Pの露光時、マスクステージ1の位置情報がレーザ干渉計7Aで計測され、基板ステージ2の位置情報がレーザ干渉計7Bで計測され、基板Pの表面の位置情報がフォーカス・レベリング検出システムで検出される。制御装置8は、レーザ干渉計7Aの計測結果に基づいて、第1駆動システム3を作動し、マスクステージ1に保持されているマスクMの位置制御を実行する。また、制御装置8は、レーザ干渉計7Bの計測結果及びフォーカス・レベリング検出システムの検出結果に基づいて、第2駆動システム4を作動し、基板ステージ2に保持されている基板Pの位置制御を実行する。
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。基板Pの露光時、制御装置8は、マスクステージ1及び基板ステージ2を制御して、マスクM及び基板Pを、露光光ELの光路(光軸AX)と交差するXY平面内の所定の走査方向に移動する。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。制御装置8は、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液浸空間LSの液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。これにより、基板Pは露光光ELで露光され、マスクMのパターンの像が基板Pに投影される。
図2は、終端光学素子10、液浸部材9、及び第1位置A1に配置された基板ステージ2の近傍を示す側断面図である。液浸部材9は、環状の部材である。液浸部材9は、終端光学素子10の周囲に配置されている。液浸部材9は、射出面11と対向する位置に開口9Kを有する。液浸部材9は、液体LQを供給可能な供給口16と、液体LQを回収可能な回収口17とを備えている。
供給口16は、液浸空間LSを形成するために、露光光ELの光路Kに液体LQを供給可能である。供給口16は、光路Kの近傍において、その光路Kと対向する液浸部材9の所定位置に配置されている。また、露光装置EXは、液体供給装置18を備えている。液体供給装置18は、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。供給口16と液体供給装置18とは、流路19を介して接続されている。流路19は、液浸部材9の内部に形成された供給流路、及びその供給流路と液体供給装置18とを接続する供給管で形成される流路を含む。液体供給装置18から送出された液体LQは、流路19を介して供給口16に供給される。供給口16は、液体供給装置18からの液体LQを露光光ELの光路Kに供給する。
回収口17は、液浸部材9の下面12と対向する物体上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。本実施形態においては、回収口17は、露光光ELの光路Kの周囲に配置されている。回収口17は、物体の表面と対向する液浸部材9の所定位置に配置されている。回収口17には、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の多孔部材20が配置されている。なお、回収口17に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材、例えばメッシュフィルタなどが配置されてもよい。本実施形態において、液浸部材9の下面12の少なくとも一部が、多孔部材20の下面で構成される。また、露光装置EXは、液体LQを回収可能な液体回収装置21を備えている。液体回収装置21は、真空システムを含み、液体LQを吸引して回収可能である。回収口17と液体回収装置21とは、流路22を介して接続されている。流路22は、液浸部材9の内部に形成された回収流路、及びその回収流路と液体回収装置21とを接続する回収管で形成される流路を含む。回収口17から回収された液体LQは、流路22を介して、液体回収装置21に回収される。
本実施形態においては、制御装置8は、供給口16を用いる液体供給動作と並行して、回収口17を用いる液体回収動作を実行することによって、終端光学素子10及び液浸部材9と、終端光学素子10及び液浸部材9と対向する物体との間に液体LQで液浸空間LSを形成可能である。
基板ステージ2は、基板Pを着脱可能な基板保持部15を備えている。本実施形態において、基板保持部15は、所謂、ピンチャック機構を含む。基板保持部15は、基板Pの裏面と対向し、基板Pの裏面を保持する。基板ステージ2の上面23は、基板保持部15の周囲に配置されている。上面23は、射出面11及び下面12と対向可能である。本実施形態において、上面23は、XY平面とほぼ平行である。基板保持部15は、基板Pの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。本実施形態においては、基板保持部15に保持された基板Pの表面と基板ステージ2の上面23とは、ほぼ平行である。また、本実施形態においては、基板保持部15に保持された基板Pの表面と基板ステージ2の上面23とは、ほぼ同一平面内に配置されている(ほぼ面一である)。すなわち、本実施形態においては、基板ステージ2は、基板Pの表面と、基板Pの周囲に配置される上面23とがほぼ同一平面内に配置されるように、基板保持部15で基板Pを保持する。
本実施形態においては、基板ステージ2は、基板保持部15に保持された基板Pの周囲に配置されるプレート部材Tを有する。本実施形態において、基板ステージ2は、プレート部材Tを着脱可能である。本実施形態において、基板ステージ2は、プレート部材Tを着脱可能なプレート部材保持部24を備えている。本実施形態において、プレート部材保持部24は、所謂、ピンチャック機構を含む。プレート部材保持部24は、基板保持部15の周囲に配置されている。プレート部材保持部24は、プレート部材Tの下面と対向し、プレート部材Tの下面を保持する。
プレート部材Tは、基板Pを配置可能な開口THを有する。プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tは、基板保持部15に保持された基板Pの周囲に配置される。本実施形態において、プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tの開口THの内面と、基板保持部15に保持された基板Pの外面とは、所定のギャップを介して対向するように配置される。プレート部材保持部24は、プレート部材Tの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、プレート部材Tを保持する。本実施形態においては、基板保持部15に保持された基板Pの表面と、プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tの上面とは、ほぼ平行である。また、本実施形態においては、基板保持部15に保持された基板Pの表面と、プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tの上面とは、ほぼ同一平面内に配置されている(ほぼ面一である)。
すなわち、本実施形態においては、基板ステージ2の上面23は、プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tの上面を含む。
本実施形態において、基板ステージ2の上面23は、液体LQに対して撥液性である。本実施形態において、上面23は、例えばPFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、テフロン(登録商標)等、撥液性材料で形成されている。本実施形態において、液体LQに対する上面23の接触角は、例えば90度以上である。
図3は、終端光学素子10、液浸部材9、及び第1位置A1に配置されたカバー部材13の近傍を示す側断面図、図4は、カバー部材13、及びカバー部材13を移動可能に支持する第3駆動システム25を説明するための平面図である。
図3及び図4に示すように、カバー部材13は、プレート状の部材であり、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持して液浸空間LSを形成可能である。カバー部材13は、終端光学素子10の射出面11と基板ステージ2の上面23(基板Pの表面)との間においてXY方向に移動可能である。カバー部材13は、射出面11と対向可能な上面26と、基板ステージ2の上面23(基板Pの表面)と対向可能な下面27とを有する。上面26は、平坦領域26Aと傾斜領域26Bとを含む。平坦領域26Aは、上面26の中心を含む大部分の領域であり、XY平面とほぼ平行である。傾斜領域26Bは、上面26のエッジ領域であり、上面26の中心に対する放射方向において、下面27に徐々に近付くように傾斜している。下面27は、平坦領域27Aと傾斜領域27Bとを含む。平坦領域27Aは、下面27の中心を含む大部分の領域であり、XY平面とほぼ平行である。傾斜領域27Bは、下面27のエッジ領域であり、下面27の中心に対する放射方向において、上面26に徐々に近付くように傾斜している。上面26の傾斜領域26Bと下面27の傾斜領域27Bとがなす角度は鋭角である。すなわち、本実施形態において、カバー部材13のエッジは、鋭角である。
本実施形態において、カバー部材13の上面26及び下面27は、液体LQに対して撥液性である。本実施形態において、カバー部材13は、例えばステンレス等の金属製の基材と、その基材の表面に形成された撥液性材料の膜とを含む。撥液性材料は、例えばPFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、テフロン(登録商標)等を含む。なお、膜を形成する材料が、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂でもよい。また、カバー部材13全体が、PFA、PTFE、テフロン(登録商標)、アクリル系樹脂、及びシリコン系樹脂の少なくとも一つで形成されてもよい。本実施形態において、液体LQに対するカバー部材13の上面26及び下面27の接触角は、例えば90度以上である。
第3駆動システム25は、カバー部材13を、XY方向に移動可能に支持する。図4に示すように、本実施形態において、第3駆動システム25は、カバー部材13をY軸方向に所定のストロークで移動可能な第1駆動装置28と、カバー部材13をX軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能な第2駆動装置29とを含む。第1駆動装置28は、Y軸方向に長いガイド部材30と、カバー部材13を支持する支持機構31をガイド部材30に沿ってY軸方向に移動するリニアモータ32とを含む。リニアモータ32は、ガイド部材30に配置された、例えばコイルを含む固定子32Aと、支持機構31に配置された、例えば磁石を含む可動子32Bとを含む。第2駆動装置29は、支持機構31に配置された、例えばリニアモータ又はボイスコイルモータ等を含み、カバー部材13をX軸、Y軸、及びθZ方向に移動可能である。
第3駆動システム25は、基板ステージ2と別設されている。また、第2駆動システム4と第3駆動システム25とは別設されている。制御装置8は、第2駆動システム4と独立に、第3駆動システム25を制御可能である。
本実施形態において、基板ステージ2が終端光学素子10から離れているとき、カバー部材13が第1位置A1に配置される。例えば、基板ステージ2が基板交換位置に移動するとき、カバー部材13が第1位置A1に配置され、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持して液浸空間LSを形成する。なお、基板交換位置は、終端光学素子10及び液浸部材9と離れた位置、すなわち射出面11及び下面12と対向しない位置であって、基板ステージ2に露光前の基板Pを搬入する動作が実行されるローディングポジション、及び露光後の基板Pを基板ステージ2から搬出する動作が実行されるアンローディングポジションを含む。なお、ローディングポジションとアンローディングポジションとは同一位置としても良いし、あるいは異なる位置としても良い。
また、基板ステージ2が第1位置A1に配置されているとき、カバー部材13は、射出面11及び下面12と対向しない第2位置A2に移動可能である。例えば、基板ステージ2に保持されている基板Pを露光するとき、制御装置8は、カバー部材13を射出面11及び下面12と対向しない第2位置A2に配置した状態で、基板ステージ2に保持されている基板Pを露光する。
図2に示したように、本実施形態においては、基板ステージ2は、射出面11及び下面12と対向して、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持する空間を形成可能であり、液浸空間LSを形成可能である。また、図3に示したように、カバー部材13は、射出面11及び下面12と対向して、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持する空間を形成可能であり、液浸空間LSを形成可能である。本実施形態において、制御装置8は、カバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方を第1位置A1に配置して、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方との間に、液体LQを保持する空間を形成し続ける。
すなわち、本実施形態において、制御装置8は、カバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方を第1位置A1に配置して、液浸空間LSを形成し続けることができる。制御装置8は、第2駆動システム4及び第3駆動システム25を制御して、XY方向に関するカバー部材13と基板ステージ2との相対移動によって、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に切り替えることができる。これにより、例えば基板交換位置等、第1位置A1から離れた位置に基板ステージ2が移動した場合でも、液浸空間LSが形成され続け、終端光学素子10と液体LQとが接触し続ける。
また、本実施形態においては、制御装置8は、第3駆動システム25を制御して、終端光学素子10と第1位置A1に配置されている基板ステージ2との間へカバー部材13を挿入可能であり、終端光学素子10と第1位置A1に配置されている基板ステージ2との間からカバー部材13を抜き出し可能である。制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に切り替えるために、カバー部材13の挿入動作及び抜き出し動作の少なくとも一方を実行する。
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。制御装置8は、基板ステージ2に保持されている基板Pを液浸露光するために、終端光学素子10及び液浸部材9と第1位置A1に配置された基板ステージ2との間に液浸空間LSを形成する。制御装置8は、基板Pを露光するために、照明系ILより露光光ELを射出する。照明系ILより射出された露光光ELは、マスクMを照明する。マスクMを介した露光光ELは、投影光学系PL及び液浸空間LSの液体LQを介して、基板Pに照射される。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pに投影され、基板Pは露光光ELで露光される。
基板Pの露光中においては、カバー部材13は、射出面11及び下面12と対向しない第2位置A2に配置されている。
基板Pの露光が終了した後、制御装置8は、供給口16を用いる液体供給動作及び回収口17を用いる液体回収動作を継続しつつ、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替える動作を開始する。制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるために、液浸空間LSを形成した状態で、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間へのカバー部材13の挿入動作を開始する。
以下、図5〜図7の模式図を参照しながら、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替える動作の一例について説明する。
本実施形態において、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを実質的に同一方向に移動する。本実施形態においては、一例として、カバー部材13及び基板ステージ2のそれぞれが−Y方向に移動する場合について説明する。なお、その移動中に液浸空間の液体LQが漏出しない範囲でカバー部材13と基板ステージ2の移動方向を異ならせても良い。
また、本実施形態においては、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを独立に異なる速度で移動する。制御装置8は、カバー部材13を速度Vbで−Y方向に移動し、基板ステージ2を速度Vsで−Y方向に移動する。本実施形態においては、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるとき、基板ステージ2をカバー部材13よりも速い速度で移動する。
図5に示すように、制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間に液体LQを保持した状態で、第2位置A2に配置されているカバー部材13を、第1位置A1に移動するように、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間に挿入する。本実施形態において、第2位置A2は、第1位置A1に対して+Y側の位置である。制御装置8は、−Y方向への基板ステージ2の移動と同期して、カバー部材13を−Y方向へ移動して、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間へ挿入する。カバー部材13の挿入時においては、制御装置8は、基板ステージ2の速度Vsより遅い速度Vbでカバー部材13を移動する。基板ステージ2の−Y方向への移動及びカバー部材13の−Y方向への移動が実行されることにより、液体LQは、図5に示す状態から図6に示す状態を経て図7に示す状態に変化する。
図5〜図7に示すように、制御装置8は、終端光学素子10、液浸部材9、及び基板ステージ2と、カバー部材13とが接触しないように、カバー部材13を挿入する。すなわち、カバー部材13は、終端光学素子10、液浸部材9、及び基板ステージ2のそれぞれと離れて移動する。本実施形態においては、図7に示すように、液浸部材9の下面12とカバー部材13の上面26との距離G1は、基板ステージ2の上面23とカバー部材13の下面27との距離G2より大きい。
カバー部材13が第1位置A1に配置され、カバー部材13の挿入動作が終了した後、終端光学素子10及び液浸部材9と、第1位置A1に配置されたカバー部材13との間に液体LQが保持され、液浸空間LSが形成される。また、カバー部材13の挿入動作が終了した後の状態において、カバー部材13と基板ステージ2との間から液体LQが排除される。
本実施形態においては、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるとき、すなわち、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間へカバー部材13を挿入するとき、基板ステージ2の速度Vsを、カバー部材13の速度Vbより速くしている。こうすることにより、カバー部材13の挿入動作後(カバー部材13を第1位置A1に配置後)、カバー部材13と基板ステージ2との間への液体LQの浸入が抑制され、図7等に示すように、カバー部材13と基板ステージ2との間から液体LQが排除される。例えば、液体LQの表面張力により、カバー部材13と基板ステージ2との間への液体LQの浸入が抑制される。したがって、基板ステージ2の上面23及び基板Pの表面に液体LQが残留することが抑制される。また、カバー部材13の下面27に液体LQが付着したり残留したりすることが抑制される。これにより、カバー部材13から残留液体が落下して基板ステージ2などに付着することを抑制できる。
また、本実施形態においては、カバー部材13のエッジが鋭角(鋭利)なので、カバー部材13の挿入動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に液体LQが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に液体LQが付着することがより効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13の上面26及び下面27は液体LQに対して撥液性であり、基板ステージ2の上面23も液体LQに対して撥液性である。したがって、カバー部材13の挿入動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に液体LQが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に液体LQが付着することがより効果的に抑制される。
そして、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13との間に液体LQが保持された後、基板ステージ2が終端光学素子10及び液浸部材9から離れ、基板交換位置へ移動する。これにより、図3に示したように、基板ステージ2が終端光学素子10及び液浸部材9から離れた状態において、第1位置A1に配置されたカバー部材13が、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持する。
制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13との間に液体LQを保持した状態で、基板ステージ2を終端光学素子10及び液浸部材9から離し、基板交換位置へ移動して、基板ステージ2に対する基板Pの交換を行う。すなわち、基板交換位置において、露光後の基板Pが基板ステージ2から搬出され、露光前の基板Pが基板ステージ2に搬入される。
基板ステージ2に対する基板Pの交換が終了した後、制御装置8は、供給口16を用いる液体供給動作及び回収口17を用いる液体回収動作を継続しつつ、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替える動作を開始する。制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるために、液浸空間LSを形成した状態で、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間からのカバー部材13の抜き出し動作を開始する。
以下、図8及び図9の模式図を参照しながら、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替える動作の一例について説明する。
本実施形態において、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを実質的に同一方向に移動する。本実施形態においては、一例として、カバー部材13及び基板ステージ2のそれぞれが+Y方向に移動する場合について説明する。なお、その移動中に液浸空間の液体LQが漏出しない範囲でカバー部材13と基板ステージ2の移動方向を異ならせても良い。
また、本実施形態においては、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを独立に異なる速度で移動する。制御装置8は、カバー部材13を速度Vbで+Y方向に移動し、基板ステージ2を速度Vsで+Y方向に移動する。本実施形態においては、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるとき、カバー部材13を基板ステージ2よりも速い速度で移動する。
図8に示すように、制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13との間に液体LQを保持した状態で、第1位置A1に基板ステージ2を移動する。すなわち、制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9との間で液体LQを保持しているカバー部材13の下面27の少なくとも一部と対向する位置に、基板ステージ2を移動する。これにより、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間にカバー部材13が配置された状態となる。
制御装置8は、第1位置A1に配置されているカバー部材13を、第2位置A2に移動するように、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間から抜き出す。本実施形態において、第2位置A2は、第1位置A1に対して+Y側の位置である。制御装置8は、+Y方向への基板ステージ2の移動と同期して、カバー部材13を+Y方向へ移動して、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間から抜き出す。制御装置8は、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13との間に液体LQが保持された状態で、カバー部材13を抜き出す。
カバー部材13の抜き出し時においては、制御装置8は、基板ステージ2の速度Vsより速い速度Vbでカバー部材13を移動する。基板ステージ2の+Y方向への移動及びカバー部材13の+Y方向への移動が実行されることにより、液体LQは、図8に示す状態から図9に示す状態に変化する。
カバー部材13が第2位置A2へ移動し、カバー部材13の抜き出し動作が終了した後、終端光学素子10及び液浸部材9と、第1位置A1に配置された基板ステージ2との間に液体LQが保持され、液浸空間LSが形成される。これにより、図2に示したように、基板Pの液浸露光が実行可能な状態となる。
本実施形態においては、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるとき、すなわち、終端光学素子10及び液浸部材9と基板ステージ2との間からカバー部材13を抜き出すとき、カバー部材13の速度Vbを、基板ステージ2の速度Vsより速くしている。こうすることにより、カバー部材13の抜き出し動作時において、カバー部材13と基板ステージ2との間への液体LQの浸入が抑制される。例えば、液体LQの表面張力により、カバー部材13と基板ステージ2との間への液体LQの浸入が抑制される。したがって、カバー部材13の下面27に液体LQが付着したり残留したりすることが抑制される。これにより、カバー部材13から残留液体が落下して基板ステージ2などに付着することを抑制できる。
また、本実施形態においては、カバー部材13のエッジが鋭角(鋭利)なので、カバー部材13の抜き出し動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に液体LQが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に液体LQが付着することがより効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13の上面26及び下面27は液体LQに対して撥液性であり、基板ステージ2の上面23も液体LQに対して撥液性である。したがって、カバー部材13の抜き出し動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に液体LQが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に液体LQが付着することがより効果的に抑制される。
以上説明したように、本実施形態によれば、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に素早く切り替えることができる。すなわち、第1部材(終端光学素子10及び液浸部材9の少なくとも一方を含む)との間での液体LQの保持を、基板ステージ2(物体、移動体、あるいは可動体などとも呼ばれる)とカバー部材13(第2部材)とで切り替えるために、基板ステージ2とカバー部材13とがXY平面と平行な方向(Y方向)に移動される。これにより、第1部材との間での液体LQの保持を、基板ステージ2及びカバー部材13の一方から他方に切り替える時間を短縮できる。したがって、露光装置EXの稼働率の低下を抑制でき、スループットの向上を図ることができる。さらに、基板ステージ2及びカバー部材13の一方から他方への切替時、基板ステージ2とカバー部材13との相対速度を零以外としている。これにより、その切替時にカバー部材13と基板ステージ2との間に液体LQが進入するのを抑制(阻止)でき、カバー部材13から残留液体が落下して基板ステージ2などに付着することを抑制(阻止)できる。また、終端光学素子10及び液浸部材9とカバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方との間に、液体LQを保持する空間を形成し続けることができるので、供給口16を用いる液体供給動作、及び回収口17を用いる液体回収動作を継続することができ、液浸空間LSを形成し続けることができる。供給口16を用いる液体供給動作、及び回収口17を用いる液体回収動作が停止された場合、液浸空間LSを再度形成する動作に時間を要する可能性があり、その場合、スループットの低下を招く可能性がある。本実施形態によれば、基板ステージ2が第1位置A1から離れた場合でも、液浸空間LSを形成し続けることができるので、スループットの低下を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、カバー部材13は、終端光学素子10、液浸部材9、及び基板ステージ2のいずれにも接触することなく、第1位置A1と第2位置A2とを移動可能である。したがって、例えば、部材同士が接触することに起因する異物の発生等を抑制することができる。
なお、本実施形態では、基板交換のために、基板ステージ2からカバー部材13への第1切替動作(すなわち、カバー部材13の挿入動作)、及びカバー部材13から基板ステージ2への第2切替動作(すなわち、カバー部材13の引出動作)を行うものとしたが、これに限らず、基板交換以外の動作、例えば第1部材の少なくとも一部(例えば、液浸部材9及び/又は終端光学素子10)の洗浄などのために第1、第2切替動作を行っても良い。この場合、前述のように液体供給と液体回収とが並行して行われているので、第1部材とカバー部材13との間に液体LQを保持するだけでも良いし、液体LQ(第1液体)と異なるクリーニング用の第2液体(例えば、ガスを水に溶解させた溶解ガス制御水、あるいはアルカリ洗浄液など)を供給しても良い。後者では、洗浄動作終了後、露光動作の開始に備えて、第1部材とカバー部材13との間を液体LQで満たして液浸空間を形成しておくことが好ましい。
以下、本発明の別の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、これらの図において、図1から図9に示した上記実施形態の構成要素と同様の要素については同一符号を付し、その説明を簡略化又は省略する。
図10は、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。
本実施形態において、露光装置EXは、露光用液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。露光装置EXは、露光用液体LQを用いて、基板Pを液浸露光する。露光装置EXは、露光光ELの光路Kの少なくとも一部が露光用液体LQで満たされるように露光用液体LQで液浸空間LS1を形成可能な液浸部材9を備えている。液浸空間は、液体で満たされた空間である。
また、本実施形態の露光装置EXは、露光用液体LQと接触する物体の表面をクリーニングするクリーニング装置40を備えている。クリーニング装置40は、露光装置EX内のクリーニングステーションSTに配置されている。本実施形態において、クリーニング装置40は、クリーニング用液体LCを用いて、露光用液体LQと接触する物体の表面をクリーニングする。クリーニング装置40は、物体の表面との間にクリーニング用液体LCで液浸空間LS2を形成可能な液浸部材41を備えている。
以下の説明において、露光用液体LQを適宜、第1液体LQ、と称し、クリーニング用液体LCを適宜、第2液体LC、と称する。また、露光用液体LQで形成される液浸空間LS1を適宜、第1液浸空間LS1、と称し、クリーニング用液体LCで形成される液浸空間LS2を適宜、第2液浸空間LS2、と称する。また、液浸部材9を適宜、第1液浸部材9、と称し、液浸部材41を適宜、第2液浸部材41、と称する。
本実施形態においては、第1液体LQとして、水(純水)を用い、第2液体LCとして、第1液体LQと異なるものを用いる。本実施形態においては、第2液体LCとして、アルカリ洗浄液を用いる。なお、第2液体LCとして、所定のガスを水に溶解させた溶解ガス制御水を用いてもよい。溶解ガス制御水は、例えば、水素ガスを水に溶解させた水素水(水素溶解水)、オゾンガスを水に溶解させたオゾン水(オゾン溶解水)、窒素ガスを水に溶解させた窒素水(窒素溶解水)、アルゴンガスを水に溶解させたアルゴン水(アルゴン溶解水)、及び二酸化炭素ガスを水に溶解させた二酸化炭素水(二酸化炭素溶解水)等を含む。また、第2液体LCとして、過酸化水素を水に添加した過酸化水素水、塩酸(次亜塩素酸)を水に添加した塩素添加水、アンモニアを水に添加したアンモニア水、及び硫酸を水に添加した硫酸添加水等、所定の薬液を水に添加した薬液添加水を用いてもよい。
また、第2液体LCとして、エタノール、及びメタノール等のアルコール類、エーテル類、ガンマブチロラクトン、シンナー類、界面活性剤、HFE等のフッ素系溶剤を用いてもよい。
本実施形態において、第1液浸空間LS1は、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子10から射出される露光光ELの光路Kが第1液体LQで満たされるように形成される。終端光学素子10は、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面11を有する。第1液浸空間LS1は、終端光学素子10とその終端光学素子10の射出面11と対向する位置に配置された物体との間の光路Kが第1液体LQで満たされるように形成される。射出面11と対向する位置は、射出面11から射出される露光光ELの照射位置を含む。
第1液浸部材9は、終端光学素子10の近傍に配置されている。第1液浸部材9は、下面12を有する。本実施形態において、射出面11と対向可能な物体は、下面12と対向可能である。物体の表面が射出面11と対向する位置に配置されたとき、下面12の少なくとも一部と物体の表面とが対向する。射出面11と物体の表面とが対向しているとき、終端光学素子10は、射出面11と物体の表面との間に第1液体LQを保持できる。また、下面12と物体の表面とが対向しているとき、第1液浸部材9は、下面12と物体の表面との間に第1液体LQを保持できる。射出面11及び下面12と物体の表面との間に保持される第1液体LQによって、第1液浸空間LS1が形成される。
本実施形態において、射出面11及び下面12と対向可能な物体は、射出面11から射出される露光光ELの照射位置を含む所定面内を移動可能な物体を含む。本実施形態において、その物体は、基板ステージ2、及びその基板ステージ2に保持された基板Pの少なくとも一方を含む。本実施形態において、基板ステージ2は、ベース部材6のガイド面5上を移動可能である。本実施形態においては、ガイド面5は、XY平面とほぼ平行である。基板ステージ2は、基板Pを保持して、ガイド面5に沿って、射出面11から射出される露光光ELの照射位置を含むXY平面内を移動可能である。
本実施形態においては、射出面11及び下面12と対向する位置に配置された基板Pの表面の一部の領域(局所的な領域)が第1液体LQで覆われるように第1液浸空間LS1が形成され、その基板Pの表面と下面12との間に液体LQの界面(メニスカス、エッジ)が形成される。すなわち、本実施形態においては、露光装置EXは、基板Pの露光時に、投影光学系PLの投影領域PRを含む基板P上の一部の局所的な領域が第1液体LQで覆われるように第1液浸空間LS1を形成する局所液浸方式を採用する。
第2液浸部材41は、対向する物体の表面との間で第2液体LCを保持可能な下面42を有し、その下面42と対向する物体との間に第2液浸空間LS2を形成可能である。第2液浸空間LS2は、物体の表面の一部の局所的な領域が第2液体LCで覆われるように形成される。本実施形態において、下面42は、第1下面43と、第1下面43の周囲に配置された第2下面44とを含む。
第2液浸部材41は、第1液浸部材9と異なる位置で、第2液浸空間LS2を形成する。本実施形態において、第2液浸部材41の下面42と対向する位置A1に移動可能な物体は、射出面11から射出される露光光ELの照射位置を含む所定面内を移動な物体を含む。すなわち、その物体は、第1液浸部材9との間で第1液浸空間LS1を形成可能な、第1液体LQと接触する物体である。第2液浸部材41の下面42と、その下面42と対向する位置A1に配置された物体との間に第2液体LCが保持されることによって、第2液体LCで第2液浸空間LS2が形成される。本実施形態において、下面42と対向する位置A1に移動可能な物体は、第1液体LQと接触する基板ステージ2を含む。
以下の説明において、第2液浸部材41の下面42と対向する位置A1を適宜、第1位置A1、と称する。本実施形態において、基板ステージ2は、射出面11から射出される露光光ELの照射位置、及び下面42と対向する第1位置A1を含むXY平面内を、ガイド面5に沿って移動可能である。
また、本実施形態の露光装置EXは、第1位置A1に移動可能なカバー部材13を備えている。カバー部材13は、第2液浸部材41と基板ステージ2との間において移動可能で、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持する空間を形成可能である。カバー部材13は、下面42と対向可能である。本実施形態において、カバー部材13は、ガイド面5とほぼ平行な方向(XY方向)に移動する。また、カバー部材13は、第1位置A1と異なる第2位置A2に移動可能である。第2位置A2は、下面42と対向しない位置を含む。すなわち、本実施形態において、カバー部材13は、第1位置A1及び第2位置A2を含むXY平面内を移動可能である。
第2液浸部材41は、第1位置A1に配置された基板ステージ2との間で第2液体LCを保持して第2液浸空間LS2を形成可能であり、第1位置A1に配置されたカバー部材13との間で第2液体LCを保持して第2液浸空間LS2を形成可能である。
本実施形態において、露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。基板Pの露光時、制御装置8は、マスクステージ1及び基板ステージ2を制御して、マスクM及び基板Pを、露光光ELの光路(光軸AX)と交差するXY平面内の所定の走査方向に移動する。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。制御装置8は、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の第1液浸空間LS1の第1液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。これにより、基板Pは露光光ELで露光され、マスクMのパターンの像が基板Pに投影される。
図11は、終端光学素子10、第1液浸部材9、及び第1位置A1に配置された基板ステージ2の近傍を示す側断面図である。第1液浸部材9は、環状の部材である。第1液浸部材9は、終端光学素子10の周囲に配置されている。第1液浸部材9は、射出面11と対向する位置に開口9Kを有する。第1液浸部材9は、第1液体LQを供給可能な供給口16と、第1液体LQを回収可能な回収口17とを備えている。
供給口16は、第1液浸空間LS1を形成するために、露光光ELの光路Kに第1液体LQを供給可能である。供給口16は、光路Kの近傍において、その光路Kと対向する第1液浸部材9の所定位置に配置されている。また、露光装置EXは、第1液体供給装置18を備えている。第1液体供給装置18は、清浄で温度調整された第1液体LQを送出可能である。供給口16と第1液体供給装置18とは、流路19を介して接続されている。流路19は、第1液浸部材9の内部に形成された供給流路、及びその供給流路と第1液体供給装置18とを接続する供給管で形成される流路を含む。第1液体供給装置18から送出された第1液体LQは、流路19を介して供給口16に供給される。供給口16は、第1液体供給装置18からの液体LQを露光光ELの光路Kに供給する。
回収口17は、第1液浸部材9の下面12と対向する物体上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。本実施形態においては、回収口17は、露光光ELの光路Kの周囲に配置されている。回収口17は、物体の表面と対向する第1液浸部材9の所定位置に配置されている。回収口17には、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の多孔部材20が配置されている。なお、回収口17に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。本実施形態において、第1液浸部材9の下面12の少なくとも一部が、多孔部材20の下面で構成される。また、露光装置EXは、第1液体LQを回収可能な第1液体回収装置21を備えている。第1液体回収装置21は、真空システムを含み、第1液体LQを吸引して回収可能である。回収口17と第1液体回収装置21とは、流路22を介して接続されている。流路22は、第1液浸部材9の内部に形成された回収流路、及びその回収流路と第1液体回収装置21とを接続する回収管で形成される流路を含む。回収口17から回収された第1液体LQは、流路22を介して、第1液体回収装置21に回収される。
本実施形態においては、制御装置8は、供給口16を用いる液体供給動作と並行して、回収口17を用いる液体回収動作を実行することによって、終端光学素子10及び第1液浸部材9と、終端光学素子10及び第1液浸部材9と対向する物体との間に第1液体LQで第1液浸空間LS1を形成可能である。
本実施形態においても、基板ステージ2の上面23は、プレート部材保持部24に保持されたプレート部材Tの上面を含む。
本実施形態において、基板ステージ2の上面23は、第1液体LQに対して撥液性である。また、本実施形態においては、基板ステージ2の上面23は、第2液体LCに対して撥液性である。本実施形態において、上面23は、例えばPFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、テフロン(登録商標)等、撥液性材料で形成されている。本実施形態において、第1、第2液体LQ、LCに対する上面23の接触角は、例えば90度以上である。
図12は、第2液浸部材41、及び第1位置A1に配置されたカバー部材13の近傍を示す側断面図、図13は、カバー部材13、及びカバー部材13を移動可能に支持する第3駆動システム25を説明するための平面図である。図12及び図13を用いた以下の説明においては、第2液浸部材41とカバー部材13との間に第2液体LCが保持される場合について主に説明するが、上述のように、第2液浸部材41は、基板ステージ2との間で第2液体LCを保持することができる。
図12及び図13に示すように、カバー部材13は、プレート状の部材であり、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持して第2液浸空間LS2を形成可能である。カバー部材13は、第2液浸部材41の下面42と第1位置A1に配置される基板ステージ2の上面23との間においてXY方向に移動可能である。カバー部材13は、下面42と対向可能な上面26と、基板ステージ2の上面23と対向可能な下面27とを有する。上面26は、平坦領域26Aと傾斜領域26Bとを含む。平坦領域26Aは、上面26の中心を含む大部分の領域であり、XY平面とほぼ平行である。傾斜領域26Bは、上面26のエッジ領域であり、上面26の中心に対する放射方向において、下面27に徐々に近付くように傾斜している。下面27は、平坦領域27Aと傾斜領域27Bとを含む。平坦領域27Aは、下面27の中心を含む大部分の領域であり、XY平面とほぼ平行である。傾斜領域27Bは、下面27のエッジ領域であり、下面27の中心に対する放射方向において、上面26に徐々に近付くように傾斜している。上面26の傾斜領域26Bと下面27の傾斜領域27Bとがなす角度は鋭角である。すなわち、本実施形態において、カバー部材13のエッジは、鋭角である。
本実施形態において、カバー部材13の上面26及び下面27は、第2液体LCに対して撥液性である。本実施形態において、カバー部材13は、例えばステンレス等の金属製の基材と、その基材の表面に形成された撥液性材料の膜とを含む。撥液性材料は、例えばPFA、PTFE、テフロン(登録商標)等を含む。なお、膜を形成する材料が、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂でもよい。また、カバー部材13全体が、PFA、PTFE、テフロン(登録商標)、アクリル系樹脂、及びシリコン系樹脂の少なくとも一つで形成されてもよい。本実施形態において、第2液体LCに対するカバー部材13の上面26及び下面27の接触角は、例えば90度以上である。
図12に示すように、第2液浸部材41は、開口45が形成された第1部品46と、開口45に配置された多孔部材47と、第1部品46の周囲に配置された第2部品48とを含む。開口45は、カバー部材13の上面26と対向する第1部品46の所定位置に配置されている。第1部品46及び第2部品48は、例えばステンレス、チタン等の金属製である。
多孔部材47は、開口45を覆うように配置されている。多孔部材47は、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の部材である。なお、開口45に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。本実施形態において、カバー部材13の上面26と対向可能な多孔部材47の下面は、XY平面とほぼ平行である。
第2部品48は、XY平面とほぼ平行な平坦面48Aと、平坦面48Aに対して傾斜する斜面48Bとを含む。平坦面48A及び斜面48Bは、カバー部材13の上面26と対向可能である。斜面48Bは、上面26に対して平坦面48Aより離れている。平坦面48Aは、多孔部材47の下面の周囲に配置されている。多孔部材47の下面と平坦面48Aとは、ほぼ同一平面内(XY平面内)に配置されている。すなわち、多孔部材47の下面と平坦面48Aとは、ほぼ面一である。斜面48Bは、平坦面48Aの周囲に配置されている。
第2液浸部材41の下面42は、カバー部材13の上面26との間で第2液体LCを保持可能である。本実施形態において、第2液浸部材41の下面42は、多孔部材47の下面、第2部品48の平坦面48A、及び斜面48Bで構成される。
下面42は、上面26との間で第2液体LCを保持可能な第1下面43と、第1下面43の周囲に配置され、カバー部材13の上面26に対して第1下面43より離れた第2下面44とを含む。第1下面43は、カバー部材13の上面26とほぼ平行である。すなわち、第1下面43は、XY平面とほぼ平行である。
本実施形態において、第1下面43は、多孔部材47の下面と、多孔部材47の下面の周囲に配置された第2部品48の平坦面48Aとを含む。第2下面44は、第2部品48の斜面48Bを含む。第2下面44は、第1下面43の中心から離れる方向において、カバー部材13の上面26との間隔が徐々に大きくなるように傾斜している。
本実施形態において、第2下面44は、第2液体LCに対して撥液性である。本実施形態においては、第2下面44は、第2液体LCに対して撥液性の材料(撥液性材料)で形成されている。撥液性材料は、例えばPFA、PTFE、テフロン(登録商標)等を含む。本実施形態において、第2液体LCに対する第2下面44の接触角は、例えば90度以上である。
第2液浸部材41は、開口45に通ずる内部流路49Aを有する。内部流路49Aは、管で形成される流路49Bを介して、第2液体処理装置50と接続されている。第2液体処理装置50は、第2液体LCを送出可能である。また、第2液体処理装置50は、第2液体LCを吸引して回収可能である。すなわち、本実施形態において、第2液体処理装置50は、第2液体LCを供給する機能、及び第2液体LCを回収する機能を有する。
開口45と第2液体処理装置50とは、内部流路49A及び流路49Bを含む流路49を介して接続されている。第2液体処理装置50から送出された第2液体LCは、流路49を介して開口45に供給される。開口45に供給された第2液体LCは、多孔部材47(多孔部材47の孔)を介して、第1下面43とカバー部材13の上面26との間に供給される。これにより、第1下面43と上面26との間に第2液体LCで第2液浸空間LS2が形成される。また、本実施形態においては、第2液浸空間LS2の第2液体LCの一部が、第2下面44と上面26との間に保持される。
また、第2液体処理装置50が回収動作を実行することによって、第1下面43とカバー部材13の上面26との間の第2液体LCが、多孔部材47(多孔部材47の孔)を介して回収される。多孔部材47を介して内部流路49Aに流入した第2液体LCは、流路49Bを介して、第2液体処理装置50に回収される。
本実施形態において、基板ステージ2が第2液浸部材41から離れているとき、カバー部材13が第1位置A1に配置される。例えば、基板ステージ2が終端光学素子10の射出面11と対向する位置に移動するとき、あるいは基板交換位置に移動するとき、カバー部材13が第1位置A1に配置され、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持して第2液浸空間LS2を形成可能である。なお、基板交換位置は、終端光学素子10、第1液浸部材9、及び第2液浸部材41と離れた位置、すなわち射出面11、下面12、及び下面42と対向しない位置であって、基板ステージ2に露光前の基板Pを搬入する動作が実行されるローディングポジション、及び露光後の基板Pを基板ステージ2から搬出する動作が実行されるアンローディングポジションを含む。
また、基板ステージ2が第1位置A1に配置されているとき、カバー部材13は、下面42と対向しない第2位置A2に移動可能である。例えば、基板ステージ2をクリーニングするとき、制御装置8は、カバー部材13を下面42と対向しない第2位置A2に配置した状態で、基板ステージ2をクリーニングする。
図11に示したように、本実施形態においては、基板ステージ2は、射出面11及び下面12と対向して、終端光学素子10及び第1液浸部材9との間で第1液体LQを保持する空間を形成可能であり、第1液浸空間LS1を形成可能である。また、基板ステージ2は、下面42と対向して、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持する空間を形成可能であり、第2液浸空間LS2を形成可能である。また、図12に示したように、カバー部材13は、下面42と対向して、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持する空間を形成可能であり、第2液浸空間LS2を形成可能である。本実施形態において、制御装置8は、カバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方を第1位置A1に配置して、第2液浸部材41とカバー部材13及び基板ステージ2の少なくとも一方との間に、第2液体LCを保持する空間を形成し続けることができる。制御装置8は、第2駆動システム4及び第3駆動システム25を制御して、XY方向に関するカバー部材13と基板ステージ2との相対移動によって、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に切り替えることができる。
また、本実施形態においては、制御装置8は、第3駆動システム25を制御して、第2液浸部材41と第1位置A1に配置されている基板ステージ2との間へカバー部材13を挿入可能であり、第2液浸部材41と第1位置A1に配置されている基板ステージ2との間からカバー部材13を抜き出し可能である。制御装置8は、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に切り替えるために、カバー部材13の挿入動作及び抜き出し動作の少なくとも一方を実行する。
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。制御装置8は、基板ステージ2に保持されている基板Pを液浸露光するために、終端光学素子10及び第1液浸部材9と露光光ELの照射位置に配置された基板ステージ2との間に第1液浸空間LS1を形成する。制御装置8は、基板Pを露光するために、照明系ILより露光光ELを射出する。照明系ILより射出された露光光ELは、マスクMを照明する。マスクMを介した露光光ELは、投影光学系PL及び第1液浸空間LS1の第1液体LQを介して、基板Pに照射される。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pに投影され、基板Pは露光光ELで露光される。基板Pの露光中、第1液浸空間LS1の第1液体LQと基板ステージ2の上面23とが接触する。
所定のタイミングで、制御装置8は、基板ステージ2の上面23をクリーニングする動作を実行する。制御装置8は、基板ステージ2の上面23をクリーニングするために、基板ステージ2をクリーニングステーションSTに移動する。
なお、基板ステージ2の上面23をクリーニングするとき、基板保持部15でダミー基板を保持することができる。ダミー基板は、露光用の基板Pとは別の、異物を放出しにくい高い清浄度を有する(クリーンな)部材である。ダミー基板は、基板Pとほぼ同じ外形であり、基板保持部15は、ダミー基板を保持可能である。なお、ダミー基板は、基板保持部15への液体の進入防止などを図るものであるから、カバー部材、蓋部材、あるいは保護部材などとも呼ぶことができる。
制御装置8は、基板ステージ2の上面23をクリーニングするために、まず、第1位置A1にカバー部材13を配置する。そして、制御装置8は、第2液体処理装置50を作動して、第2液体LCを供給する。第2液体LCは、多孔部材47を介して、第2液浸部材41の第1下面43とカバー部材13の上面26との間に供給される。第2液体LCは、第1下面43より供給される。第2液体LCが所定量供給され、第2液浸空間LS2が形成された後、制御装置8は、第2液体LCの供給動作を停止する。
次に、制御装置8は、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替える動作を開始する。
制御装置8は、第2液浸部材41とカバー部材13との間に第2液体LCを保持した状態で、第1位置A1に基板ステージ2を移動する。すなわち、制御装置8は、第2液浸部材41との間で第2液体LCを保持しているカバー部材13の下面27の少なくとも一部と対向する位置に、基板ステージ2を移動する。これにより、第2液浸部材41と基板ステージ2との間にカバー部材13が配置された状態となる。
制御装置8は、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるために、第2液浸空間LS2を形成した状態で、第2液浸部材41と基板ステージ2との間からのカバー部材13の抜き出し動作を開始する。
以下、図14及び図15の模式図を参照しながら、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替える動作の一例について説明する。
本実施形態において、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを実質的に同一方向に移動する。本実施形態においては、一例として、カバー部材13及び基板ステージ2のそれぞれが+Y方向に移動する場合について説明する。
また、本実施形態においては、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを独立に異なる速度で移動する。制御装置8は、カバー部材13を速度Vbで+Y方向に移動し、基板ステージ2を速度Vsで+Y方向に移動する。本実施形態においては、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるとき、カバー部材13を基板ステージ2よりも速い速度で移動する。
制御装置8は、第1位置A1に配置されているカバー部材13を、第2位置A2に移動するように、第2液浸部材41と基板ステージ2との間から抜き出す。本実施形態において、第2位置A2は、第1位置A1に対して+Y側の位置である。制御装置8は、+Y方向への基板ステージ2の移動と同期して、カバー部材13を+Y方向へ移動して、第2液浸部材41と基板ステージ2との間から抜き出す。制御装置8は、第2液浸部材41とカバー部材13との間に第2液体LCが保持された状態で、カバー部材13を抜き出す。
カバー部材13の抜き出し時においては、制御装置8は、基板ステージ2の速度Vsより速い速度Vbでカバー部材13を移動する。基板ステージ2の+Y方向への移動及びカバー部材13の+Y方向への移動が実行されることにより、第2液体LCは、図14に示す状態から図15に示す状態に変化する。
カバー部材13が第2位置A2へ移動し、カバー部材13の抜き出し動作が終了した後、第2液浸部材41と、第1位置A1に配置された基板ステージ2との間に第2液体LCが保持され、第2液浸空間LS2が形成される。これにより、基板ステージ2の上面23のクリーニングが実行可能な状態となる。
本実施形態においては、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持をカバー部材13から基板ステージ2に切り替えるとき、すなわち、第2液浸部材41と基板ステージ2との間からカバー部材13を抜き出すとき、カバー部材13の速度Vbを、基板ステージ2の速度Vsより速くしている。こうすることにより、カバー部材13の抜き出し動作時において、カバー部材13と基板ステージ2との間への第2液体LCの浸入が抑制される。例えば、第2液体LCの表面張力により、カバー部材13と基板ステージ2との間への第2液体LCの浸入が抑制される。したがって、カバー部材13の下面27に第2液体LCが付着したり残留したりすることが抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13のエッジが鋭角(鋭利)なので、カバー部材13の抜き出し動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に第2液体LCが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に第2液体LCが付着することがより効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13の上面26及び下面27は第2液体LCに対して撥液性であり、基板ステージ2の上面23も第2液体LCに対して撥液性である。したがって、カバー部材13の抜き出し動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に第2液体LCが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に第2液体LCが付着することがより効果的に抑制される。
図16は、第2液体LCを用いて基板ステージ2の上面23をクリーニングしている状態を示す図である。第2液浸部材41と基板ステージ2との間に第2液浸空間LS2が形成された後、制御装置8は、基板ステージ2の上面23をクリーニングするために、第2液浸部材41の第1下面43と基板ステージ2の上面23との間に第2液体LCを保持した状態で、第1下面43と上面23とを相対移動する。図16に示すように、本実施形態においては、制御装置8は、第2駆動システム4を制御して、基板ステージ2の上面23を、第1下面43に対してXY方向に移動する。これにより、上面23が良好にクリーニングされる。
本実施形態においては、第2液浸部材41が第2下面44を有しているので、第2液浸空間LS2を形成した状態で基板ステージ2をXY方向に移動しても、XY平面内における第2液浸空間LS2の大きさが拡大したり、下面42と上面23との間から第2液体LCが流出したりすることが抑制される。
基板ステージ2のクリーニング中においては、カバー部材13は、下面42と対向しない第2位置A2に配置されている。
基板ステージ2のクリーニングが終了した後、制御装置8は、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替える動作を開始する。制御装置8は、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるために、第2液浸空間LS2を形成した状態で、第2液浸部材41と基板ステージ2との間へのカバー部材13の挿入動作を開始する。
以下、図17及び図18の模式図を参照しながら、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替える動作の一例について説明する。
本実施形態において、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを実質的に同一方向に移動する。本実施形態においては、一例として、カバー部材13及び基板ステージ2のそれぞれが−Y方向に移動する場合について説明する。
また、本実施形態においては、制御装置8は、切り替え時、カバー部材13と基板ステージ2とを独立に異なる速度で移動する。制御装置8は、カバー部材13を速度Vbで−Y方向に移動し、基板ステージ2を速度Vsで−Y方向に移動する。本実施形態においては、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるとき、基板ステージ2をカバー部材13よりも速い速度で移動する。
図17に示すように、制御装置8は、第2液浸部材41と基板ステージ2との間に第2液体LCを保持した状態で、第2位置A2に配置されているカバー部材13を、第1位置A1に移動するように、第2液浸部材41と基板ステージ2との間に挿入する。本実施形態において、第2位置A2は、第1位置A1に対して+Y側の位置である。制御装置8は、−Y方向への基板ステージ2の移動と同期して、カバー部材13を−Y方向へ移動して、第2液浸部材41と基板ステージ2との間へ挿入する。カバー部材13の挿入時においては、制御装置8は、基板ステージ2の速度Vsより遅い速度Vbでカバー部材13を移動する。基板ステージ2の−Y方向への移動及びカバー部材13の−Y方向への移動が実行されることにより、第2液体LCは、図17に示す状態に変化する。
カバー部材13が第1位置A1に配置され、カバー部材13の挿入動作が終了した後、第2液浸部材41と、第1位置A1に配置されたカバー部材13との間に第2液体LCが保持され、第2液浸空間LS2が形成される。また、カバー部材13の挿入動作が終了した後の状態において、カバー部材13と基板ステージ2との間から第2液体LCが排除される。また、第2液浸部材41とカバー部材13との間に第2液体LCが保持された後、基板ステージ2が第2液浸部材41から離れる。これにより、図18に示す状態となる。
本実施形態においては、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を基板ステージ2からカバー部材13に切り替えるとき、すなわち、第2液浸部材41と基板ステージ2との間へカバー部材13を挿入するとき、基板ステージ2の速度Vsを、カバー部材13の速度Vbより速くしている。こうすることにより、カバー部材13の挿入動作後(カバー部材13を第1位置A1に配置後)、カバー部材13と基板ステージ2との間への第2液体LCの浸入が抑制され、カバー部材13と基板ステージ2との間から第2液体LCが排除される。例えば、第2液体LCの表面張力により、カバー部材13と基板ステージ2との間への第2液体LCの浸入が抑制される。したがって、基板ステージ2の上面23に第2液体LCが残留することが抑制される。また、カバー部材13の下面27に第2液体LCが付着したり残留したりすることが抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13のエッジが鋭角(鋭利)なので、カバー部材13の挿入動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に第2液体LCが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に第2液体LCが付着することがより効果的に抑制される。
また、本実施形態においては、カバー部材13の上面26及び下面27は第2液体LCに対して撥液性であり、基板ステージ2の上面23も第2液体LCに対して撥液性である。したがって、カバー部材13の挿入動作において、カバー部材13と基板ステージ2との間に第2液体LCが浸入すること、及びカバー部材13の下面27に第2液体LCが付着することがより効果的に抑制される。
そして、第2液浸部材41とカバー部材13との間に第2液体LCが保持された後、制御装置8は、第2液体処理装置50を作動して、第2液浸部材41とカバー部材13との間の第2液体LCの回収動作を実行する。第2液浸部材41とカバー部材13との間に保持された第2液体LCは、多孔部材47の第1下面43を介して回収される。これにより、図19に示す状態となる。
図19に示すように、第2液体LCの回収動作を実行した後においても、カバー部材13が第1位置A1に配置されることによって、仮に、下面42等に第2液体LCが残留していても、その第2液体LCが、例えばベース部材6等、周辺部材に落下することを抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、基板ステージ2の上面23を良好にクリーニングできる。また、本実施形態によれば、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を、カバー部材13及び基板ステージ2の一方から他方に素早く切り替えることができる。すなわち、第1部材(クリーニング装置40の少なくとも一部、例えば少なくとも第2液浸部材41、あるいは多孔部材47を含む)との間での第2液体LCの保持を、基板ステージ2(物体)とカバー部材13(第2部材)とで切り替えるために、基板ステージ2とカバー部材13とがXY平面と平行な方向(Y方向)に移動される。これにより、第1部材との間での第2液体LCの保持を、基板ステージ2及びカバー部材13の一方から他方に切り替える時間を短縮できる。したがって、露光装置EXの稼動率の低下を抑制でき、スループットの向上を図ることができる。また、カバー部材13により、クリーニング動作を行っていないときにおいても、周辺部材に第2液体LCが飛散することを抑制できる。さらに、基板ステージ2及びカバー部材13の一方から他方への切替時、基板ステージ2とカバー部材13との相対速度を零以外としている。これにより、その切替時にカバー部材13と基板ステージ2との間に第2液体LCが進入するのを抑制(阻止)でき、カバー部材13から残留液体が落下して基板ステージ2などに付着することを抑制(阻止)できる。
なお、本実施形態においては、基板保持部15にダミー基板を保持した状態で、基板ステージ2の上面23をクリーニングする場合を例にして説明したが、例えば、基板保持部15が何も保持しない状態で(基板保持部15を露出させた状態で)、クリーニング動作を実行してもよい。これにより、基板保持部15もクリーニングできる。また、プレート部材保持部24からプレート部材Tを外して、プレート部材保持部24をクリーニングしてもよい。
また、本実施形態では、第2液浸部材41と基板ステージ2との間で移動可能にカバー部材13を設けるものとしたが、これに限らず、第1液浸部材9と基板ステージ2との間で移動可能にカバー部材13を設けても良い。この場合、第1、第2液浸部材9、41にそれぞれカバー部材13を設けても良いが、第1液浸部材9と第2液浸部材41とでカバー部材13を兼用しても良い。例えば、図13に示される第3駆動システム25によって、第1、第2液浸部材9、41にそれぞれカバー部材13を移動させても良い。
なお、上述の各実施形態では、基板ステージ2からカバー部材13への第1切替動作(すなわち、カバー部材13の挿入動作)、及びカバー部材13から基板ステージ2への第2切替動作(すなわち、カバー部材13の引出動作)の両方で、基板ステージ2とカバー部材13との相対速度を零以外としているが、これに限らず、第1、第2切替動作の少なくとも一方で相対速度を零としても良い。また、第1切替動作と第2切替動作とで、相対速度を同一としても良いし、あるいは、異ならせても良い。さらに、第1切替動作と第2切替動作とで、基板ステージ2及びカバー部材13の移動方向を異ならせるものとしたが、これに限らず、移動方向を同一(同じ向き)としても良い。
なお、上述の各実施形態において、投影光学系PLは、終端光学素子10の射出側(像面側)の光路Kを液体LQ(第1液体LQ)で満たしているが、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、終端光学素子10の入射側(物体面側)の光路も液体LQで満たす投影光学系を採用することもできる。
なお、上述の各実施形態において、液体LQ(第1液体LQ)は水であるが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系、あるいは基板の表面を形成する感光材(フォトレジスト)の膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル、セダー油等を用いることも可能である。また、液体LQとして、屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用してもよい。更に、石英及び蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で、液体LQと接触する投影光学系PLの光学素子(終端光学素子など)を形成してもよい。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
また、例えば露光光ELがF2レーザ光である場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能なもの、例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フッ素系オイル等のフッ素系流体を用いることができる。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、例えば対応米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6400441号明細書、米国特許第6549269号明細書、米国特許第6590634号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。例えば、ツインステージ型の露光装置に、図1等に示した実施形態のカバー部材13を適用することによって、スループットの低下を抑制することができる。あるいは、ツインステージ型の露光装置に、図10等に示した実施形態のクリーニング装置40及びカバー部材13を適用することによって、スループットの低下を抑制しつつ、基板ステージを良好にクリーニングできる。
更に、例えば対応米国特許第6897963号明細書等に開示されているように、基板を保持する基板ステージと、計測部材(基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサなどを含む)を搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。計測ステージを備える露光装置では、例えば、終端光学素子10及び液浸部材9との間での液体LQの保持を、図1等に示した実施形態のカバー部材13及び第1位置A1に移動可能な計測ステージの一方から他方に切り替えることができる。あるいは、第2液浸部材41との間での第2液体LCの保持を、図10等に示した実施形態のカバー部材13及び第1位置A1に移動可能な計測ステージの一方から他方に切り替えることができる。これにより、計測ステージを良好にクリーニングできる。このため、前述の物体は、基板ステージ2とは別の移動体、例えば計測ステージなども含む。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計7A、7Bを含む干渉計システム7を用いてマスクステージ1及び基板ステージ2の各位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書、米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されるエンコーダシステムを用いてもよい。この場合、干渉計システムとエンコーダシステムとの両方を備えるハイブリッドシステムとしてもよい。また、マスクステージ1の位置情報は干渉計システムで、基板ステージ2の位置情報はエンコーダシステムで計測しても良い。
また、上述の各実施形態では、露光光ELとしてArFエキシマレーザ光を発生する光源装置として、ArFエキシマレーザを用いてもよいが、例えば、米国特許第7023610号明細書に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、前述の各照明領域と、投影領域がそれぞれ矩形状であるものとしたが、他の形状、例えば円弧状などでもよい。
なお、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。可変成形マスクは、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)等を含む。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。自発光型画像表示素子としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)、LEDディスプレイ、LDディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)等が挙げられる。
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。このように投影光学系PLを用いない場合であっても、露光光はレンズ等の光学部材を介して基板に照射され、そのような光学部材と基板との間の所定空間に液浸空間が形成される。
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
以上のように、露光装置EXは、各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図20に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての文献及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。