JP5513096B2 - すべり軸受及び黄銅ポーラス体の製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、通常の金属製ブッシュは、潤滑油を長期間保持することができないので、使用時において、給油を行うことが必要となるが、この給油には手間がかかるので、金属製ブッシュをメンテナンスフリーにすることが望まれている。
例えば、特許文献1、2には、黒鉛や錫を含む銅合金を焼結した軸受材料が開示されている。
また、特許文献3には、鉄、銅、亜鉛及び錫の各単体金属粉末を混合した多孔質複合焼結合金からなるブッシュ、特許文献4には、銅粉と鉄粉とから形成された多孔質複合焼結合金からなるブッシュが開示されている。
ここで、金属混合粉末からなる成形体を大気雰囲気下で焼結することで製造コストを低減することができると考えられるが、金属粉末が酸化されて焼結がうまくなされず、焼結体をサイジング加工するときに破損が生じやすい。また、焼結体において金属本来の物性が得られ難くなる。
本発明は、上記課題に鑑み、黄銅製のポーラス軸受及び黄銅ポーラス体を低コストで提供することを目的とする。
また、黄銅ポーラス体を製造する製造方法において、黄銅粉末に対して、200MPa以上800MPa以下の圧力をかけてグリーン体を成形する成形工程と、成形したグリーン体を880〜940℃で加熱して焼結する焼結工程とを設けた。
黄銅粉末として、黄銅切粉を用いることが好ましい。
なお、黄銅切粉を用いる際には、できるだけ粉サイズを均一に揃えておくことが好ましい。
また、成形工程に先立って、黄銅粉末に、滑剤を混合する混合工程を行うことが好ましい。
それによって、切削工程においても、焼結体を破損することなく加工できる。また、黄銅としての優れた物性も保持できる。
また、黄銅粉末の中でも、特に黄銅切粉を主な原料として用いることは、ポーラスな焼結体を製造するのに適している。
さらに、黄銅切粉は廃材であり安価なので、これを主原料として用いることによって、より低コストで黄銅製のポーラスな軸受を製造することができ、且つ素材のリサイクルにも寄与する。
従って、その孔内に潤滑剤を充填することによって無給油軸受とすることができる。また、吸湿性や吸音性、防振性、放熱性に優れている。さらに、メッキとも相性が良いため、各種製品の機能部品としての応用が可能である。
また、黒鉛のような炭素粉末を用いる必要がないので、使用中に炭素粉塵やスラッジによる汚染もない。
また、本発明の黄銅ポ−ラス軸受によれば、孔径が1〜200μmの微細孔を有し、その気孔率が30〜50vol%であるので、孔内に潤滑油を長期間保持する機能を有する。従って、長期間無給油で使用できる。
黄銅は、銅Cuと亜鉛Znを主成分とする合金であって、当該合金中に占める亜鉛の割合は20%以上であり、一般に亜鉛の割合が増すと、硬度が増すが、脆さも増すので、実用上、亜鉛の割合の上限は45%である。
C2600:七三黄銅(銅が約70%、亜鉛が約30%)
C2901:六四黄銅(銅が約60%、亜鉛が約40%)
C3604:快削黄銅 被削性を高めるために鉛が添加されている。(銅が57〜61%、鉛が1.8〜3.7%、鉄が0.5%以下、鉄+錫が1%以下、亜鉛は残部)
C3771:鍛造用黄銅(銅が57〜61%、鉛が1〜2.5%、鉄+錫が1%以下、亜鉛は残部)
CAC201:黄銅鋳物1種
図1は、実施形態にかかる黄銅ポーラス軸受の製造方法を示す工程図である。
まず、黄銅切粉に滑剤を添加して、粉体用の混合器で混合する。
ここでは、黄銅粉末として、黄銅素材を切削加工するときに発生する黄銅切粉を用いることとする。使用する黄銅切粉の平均粒径は0.5〜2.0mmの範囲内にあることが好ましい。ここで上記「平均粒径」は、各黄銅切粉の最大長の平均を指すものとする。
ここでは、ステアリン酸亜鉛(Zn(OCOC17H35)2、融点115−125℃)を用い、黄銅切粉に対して少量混合する。
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス
ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ソルビタンエステルなどの高級脂肪酸エステル
エチレンビスアマイド等のビスアマイド系滑剤
ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸
加圧成形工程(S2):
黄銅切粉に滑剤を混合した上記混合物を、加圧成型機(プレス)で圧縮成形する。
図2に示すように、ダイ10の内部に下部パンチ12を挿入した状態で、上記混合物1を充填し、上部パンチ11を下降して、図2(b)に示すように混合物1に圧力をかける。
これによって、混合物1は、ダイ10の内部形状に合った円柱状に圧縮成型され、グリーン体2が作製される。
充填された混合物1には滑剤(ステアリン酸亜鉛)が混合されているので、上記のように上部パンチ11で加圧すると、黄銅切粉同士が互いに滑りながら圧縮され、全体に均一的に圧力がかかる。
この工程では、黄銅切粉同士を十分に圧着させるために、200MPa以上の圧力で加圧することが好ましい。これは、200MPa以上の圧力で加圧成形をすることによって、黄銅切粉が変形して、隣接する粉体同士が圧着され接触面積が大きくなるからである。一方、グリーン体2において、黄銅切粉同士の間に適度な空隙を確保するために、この工程における加圧力は800MPa以下に抑えることが好ましい。
焼結工程(S3):
円柱状に成形されたグリーン体2を、一般的なバッチ炉や連続開放炉(例えば、メッシュベルト式マッフル焼結炉)を用いて大気雰囲気下で焼結する。焼結温度は880〜940℃の範囲内に設定する。
製造される焼結体3では、切粉は完全には溶融しない。従って、黄銅切粉同士の隙間が微細な気孔として残る。その気孔サイズは、サブミリオーダーとなる。
図3は、焼結体3の穴あけ加工及び外周切削加工を説明する図である。
焼結体3を、旋盤のチャック21で把持する。旋盤のチャック21を回転させながら、ドリル22の先端を焼結体3の中心軸に沿って当てて穿孔する。なお、ドリルで穿孔した後に、バイトで内径加工を行ってもよい。
このような切削加工は、一般的に金属ブッシュを製造するときに用いる加工方法と同様であって、精度よく仕上げることができる。
なお、ここでは、円柱状のグリーン体2及び焼結体3を作製した後、これを切削加工することによって、円柱状の黄銅ポーラス軸受4を得ているが、グリーン体2及び焼結体3の形状は円柱状に限らない。例えば、ダイ10の形状を調整することによって、中空の円筒状のグリーン体2及び焼結体3を作製した後に、その内周及び外周を切削加工することによって、黄銅ポーラス軸受4を得ることもできる。
〈本実施形態による黄銅ポーラス軸受およびポーラス体の特性〉
上記製法によって得られる黄銅ポーラス軸受4は、気孔率が10〜50vol%である。
気孔率の大きいポーラス軸受は、それだけ軽量で空隙内に油を多く保持することができるので、この黄銅ポーラス軸受4を潤滑油に浸漬することによって、孔内に多くの潤滑油が含浸され、潤滑油が孔内に保持される。従って、長期間(例えば1000時間)無給油で使用できる軸受を実現することができる。
また、上記製法によって得られる黄銅ポーラス体は、吸湿性や吸音性、防振性、放熱性に優れている上、メッキとも相性が良い。従って、すべり軸受に限らず、各種製品の機能部品としての応用が可能である。
(1)本実施形態の製法によれば、黄銅切粉を主な原料としており、この黄銅切粉は、千円/kg程度以下と安価なので、黄銅製の含油軸受を低コストで製造できる。
(2)本実施形態の製法によれば、焼結工程の後に切削工程を設けている。
この切削工程において、一般的なブッシュ加工と同様に、穴あげ加工や外径加工などを施すことによって、精度よく黄銅ポーラス軸受をサイジングできる。
これに対して本実施形態では、加圧成形によって黄銅切粉同士を圧着して互いの接触面積を十分に確保した後に焼結しているので、大気雰囲気下で焼結を行っても、黄銅切粉は酸化され難く、黄銅切粉同士が強固に接合される。従って、焼結体3の強度を十分に確保することができる。
そして、気孔率が40vol%程度と高く且つ強度を有する黄銅ポーラス軸受も、比較的容易に得ることができる。
また、焼結工程を、一般の焼結炉を用いて大気雰囲気下で行うことによって、焼結炉の設備コスト及び運転コストを低減できる。従って、黄銅含油軸受を低コストで製造するのに寄与する。
[実施例]
主原料として用いた黄銅切粉の成分は、Cuが57〜61%,Pbが1.8〜3.7%,Feが0.5%,Fe+Snが1.2%,残りがZnである。
当図に示されるように、各切粉の形状は偏平な棒状であって、そのサイズは、平均長さが1.5mm、平均厚さは120μmである。
この黄銅切粉とステアリン酸亜鉛とを重量比180:1で混合して、最適と考えられる条件(加圧成型時の圧力400Mpa、焼結温度910℃、焼結時間10hr)で円柱形の焼結体サンプル(Φ20mm、長さ50mm)を作製した。
当図に示されるように、この焼結体においては、各切粉の形状は、棒状ではなく、隣接する切粉同士の接触面積が大きくなるように圧縮変形されている。そして、隣接する切粉同士は互いに焼結されている。
この焼結体サンプルついて、気孔サイズ(ポア径)を測定した結果、ポア径は5〜105μmの範囲で分布し、ポア径の平均値は25μmであった。
なお、ポア径及び気孔率は、加圧条件によって変動するが、上記実施形態の製法によって製造される黄銅ポーラス軸受は、ポア径が1〜200μmの範囲内にある。
〈焼結体の気孔率、強度試験〉
上記実施例に対する比較例として、上記黄銅切粉を用いて、加圧条件及び焼結温度を変えて、焼結体サンプルを作製した。
実施例の焼結体サンプルでは、気孔率が36%であった。
当図に示されるように、実施例の焼結体サンプルでは、公称ひずみが0.8近くに到達するまで、公称応力は単調増加して140MPa程度に到っている。このことは、この焼結体サンプルが、大変形を負荷されても壊れないこと、すなわち、焼結体サンプルが切削加工に耐える十分な強度、延性を有し、軸受材料としての強度、延性も有していることを示している。
なお、圧縮加圧時の圧力が200MPa〜800MPaの範囲にあり、且つ焼結温度が880℃〜940℃の範囲内にある焼結体サンプルは、実施例と同様に、気孔率が10〜50vol%の範囲内にあり、圧縮試験において破壊することなく大変形を示した。
焼結温度が880℃未満で焼結した比較例の焼結体サンプルも、強度試験において、公称ひずみが0.8に到達する前に脆性破壊が生じ、旋盤で切削加工すると破損が生じた。
また、主材料の黄銅粉として、偏平な棒形状を有する黄銅切粉を用いたことも、高気孔率で強度を有する黄銅ポーラス軸受を実現する上で、寄与したものと考えられる。
2 グリーン体
3 焼結体
4 黄銅ポーラス軸受
10 ダイ
11 上部パンチ
12 下部パンチ
21 チャック
22 ドリル
23 バイト
Claims (5)
- 黄銅からなる多孔質のすべり軸受を製造する製造方法であって、
黄銅粉末に対して、200MPa以上800MPa以下の圧力をかけてグリーン体を成形する成形工程と、
成形したグリーン体を大気雰囲気下において880〜940℃で加熱して焼成する焼成工程と、
焼成した成形体を切削加工する切削工程とを備えることを特徴とするすべり軸受の製造方法。 - 前記黄銅粉末は、
黄銅切粉であることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受の製造方法。 - 前記黄銅粉末の粒径が、
0.5mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のすべり軸受の製造方法。 - 前記成形工程に先立って、
黄銅粉末に、滑剤を混合する混合工程を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のすべり軸受の製造方法。 - 黄銅を主成分とする多孔質の黄銅ポーラス体を製造する製造方法であって、
黄銅粉末に対して、200MPa以上800MPa以下の圧力をかけてグリーン体を成形する成形工程と、
成形したグリーン体を大気雰囲気下において880〜940℃で加熱して焼結する焼結工程と、を備えることを特徴とする黄銅ポーラス体の製造方法。
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