JP5511276B2 - アークスタート制御方法 - Google Patents
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Description
時刻t1以前の期間中は、同図(A)に示すように、溶接開始信号StはLowレベル(溶接停止)であるために、同図(B)に示すように、動作制御信号McはLowレベルでありロボットは待機位置で停止したままである。同図(C)に示すように、トーチ高さLtは、ロボットが待機位置にあるので大きな値となっている。同図(D)に示すように、送給制御信号Fcは0のままであり、同図(E)に示すように、送給速度Fwも0となっている。すなわち、溶接ワイヤの送給は停止状態にある。この期間中は溶接電源はまだ起動されていないので、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwは印加されずに0Vのままであり、同図(G)に示すように、溶接電流Iwは通電していないので0Aのままである。また、同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは、ロボットが待機位置にあるために大きな値となっている。
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始信号StがHighレベル(溶接開始)に変化すると、ロボット制御装置RCによってロボットRMは待機位置から予め教示された溶接開始位置に移動する。このために、同図(B)に示すように、動作制御信号Mcは、時刻t1において移動状態を示すHighレベルになり、時刻t2において停止状態を示すLowレベルになる。同図(C)に示すように、トーチ高さLtは、次第に小さくなり、時刻t2において予め教示された教示トーチ高さLsになる。この期間中はまだ溶接電源は起動されていないために、同図(D)に示すように、送給制御信号Fc=0であり、同図(E)に示すように、送給速度Fw=0のままである。すなわち、溶接ワイヤの送給はまだ開始されていない。同様に、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwはまだ印加されておらず0Vのままであり、同図(G)に示すように、溶接電流Iwはまだ通電しておらず0Aのままである。同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは、次第に小さくなる。
時刻t2においてロボットRMが溶接開始位置に到達して停止すると、図示は省略しているが、ロボット制御装置RCから溶接電源PSに起動信号Onが出力される。これに応動して、同図(D)に示すように、送給制御信号Fcは小さな正の値の予め定めたスローダウン送給速度設定値に変化する。このために、同図(E)に示すように、送給速度Fwは小さな正の値のスローダウン送給速度に変化する。したがって、この期間中は、溶接ワイヤは非常に低速なスローダウン送給速度で母材に向かって前進送給される。時刻t2において上記の起動信号Onによって溶接電源PSは起動されるために、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwの出力が開始される。しかし、この期間中は溶接ワイヤの先端は母材にまだ到達していないので無負荷状態になるので、溶接電圧Vwは最大値の無負荷電圧値になる。同図(G)に示すように、溶接電流Iwはまだ通電していないので0Aになる。また、同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは、前進送給によって次第に短くなる。
時刻t3において溶接ワイヤが母材と接触すると、同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは0mmとなる。同時に、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwは無負荷電圧値から数V程度の小さな値の短絡電圧値に変化する。また、同図(G)に示すように、溶接電流Iwが通電し、その値は数十A程度の初期電流値となる。溶接電圧の低下によって短絡状態を判別すると、同図(D)に示すように、送給制御信号Fcは負の値の予め定めた後退送給速度設定値に変化する。しかし、ワイヤ送給モータが回転方向を切り換えるのに必要なモータ反転遅れ時間及び溶接トーチのコイルライナ内を蛇行しながら送給されている溶接ワイヤの遊び分を反転させるのにひつような遊び分送給遅れ時間のために、時刻t4まではワイヤ先端は移動しない。このために、同図(E)に示すように、この期間中の送給速度Fwは0のままである。時刻t3〜t4の期間を前進送給から後退送給への反転遅れ期間Taと呼ぶことにする。
時刻t4において反転遅れ期間Taが終了すると、同図(E)に示すように、送給速度Fwは0からスロープ状に立ち上がって負の値の後退送給速度に変化する。これによって、ワイヤ先端が後退移動して母材から離れるので、初期アークが発生する。初期アークが発生すると、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwは短絡電圧値から数十V程度のアーク電圧値に急上昇する。溶接電圧Vwが急上昇したことによって初期アークの発生を判別してから予め定めたアーク長引き上げ期間Tuが経過するまでの期間中は、同図(D)に示すように、送給制御信号Fcは後退送給速度設定値のままであるので、同図(E)に示すように、送給速度Fwは後退送給速度のままである。このために、後退送給が継続されることになり、初期アークの長さが次第に長くなる。この結果、同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは0mmからスロープ状に大きくなる。そして、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwも、アーク長に比例してスロープ状に大きくなる。同図(G)に示すように、溶接電流Iwは初期電流値のままである。
時刻t5において設定されたアーク長引き上げ期間Tuが終了すると、同図(D)に示すように、送給制御信号Fcは正の値の定常送給速度設定値に変化する。この定常送給速度設定値は、ロボット制御装置RCから送受信信号Ifとして溶接電源PSに送信される定常送給速度設定信号Fcrによって設定される。しかし、上述したように、ワイヤ送給モータWMの反転遅れ時間及び遊び分送給遅れ時間の間(時刻t5〜t6)は、同図(E)に示すように、送給速度Fwは、慣性によって負の値の後退送給速度から曲線状に低下して、時刻t6において0となる。そして、時刻t6〜t7の期間中は、同図(E)に示すように、送給速度Fwは0から曲線状に大きくなり、時刻t7において定常送給速度Fcwに収束する。この時刻t6〜t7の期間は、送給速度Fwが0から定常送給速度Fcwに収束するまでの送給立上り期間となる。上記の時刻t5〜t7の期間が、再前進送給に設定を切り換えてから定常送給速度Fcwに収束するまでの再前進送給過渡期間Tbとなる。時刻t5において、溶接電源PSの外部特性が定電流特性から定電圧特性に切り換えられる。この結果、同図(I)に示すように、ワイヤ先端・母材間距離Lwは、この再前進送給過渡期間Tbの間に大きくオーバーシュートして、時刻t7において定常アーク長に収束する。オーバーシュートする理由は、定電圧特性とアーク負荷状態によって定まる溶接電流値が送給速度Fwに対して大きいために、溶融速度が送給速度よりも大きくなり、ワイヤ先端は燃え上がることになるからである。換言すれば、送給速度Fwが定常送給速度Fcwに収束していない過渡状態にあるためにその送給速度が遅いためである。アーク長がオーバーシュートするために、同図(F)に示すように、溶接電圧Vwも、この再前進送給過渡期間の間はオーバーシュートして、時刻t7において定常値に収束する。この定常値は、送受信信号Ifの電圧設定信号Vrによって設定される。また、同図(G)に示すように、溶接電流Iwは、時刻t5において初期電流値よりも大きな値に一旦上昇する。そして、上記の再前進送給過渡期間Tbの間は、一度小さくなった後に大きくなり、時刻t7において定常値に収束する。すなわち、この期間中の溶接電流Iwは凸状に変化する。溶接電流Iwの定常値は、定常送給速度Fcwによって定まる値である。時刻t5において、同図(H)に示すように、スタート完了信号WcrがHighレベルになり、溶接電源PSからロボット制御装置RCに送受信信号Ifとして送信される。これを受信したロボット制御装置RCは、ロボットRMを教示された動作軌跡に沿って移動させるので、同図(B)に示すように、動作制御信号Mcは移動を示すHighレベルに変化する。同図(C)に示すように、トーチ高さLtは、時刻t2以降は、教示トーチ高さLsのままである。これは、通常の溶接においては、トーチ高さは一定値のままで溶接されるためである。上記においては、同図(H)に示すスタート完了信号Wcrが再前進送給に指令が切り換わる時刻t5においてHighレベルに変化する場合を例示している。これ以外にも、初期電流が流れる時刻t3においてスタート完了信号WcrがHighレベルに変化するように設定される場合と、初期アークが発生する時刻t4においてスタート完了信号WcrがHighレベルに変化するように設定される場合がある。
前記再前進送給の開始時点から前記溶接トーチの高さを一旦スロープ状に低くした後にスロープ状に高くして元の高さに戻すトーチ高さ制御を行う、
ことを特徴とするアークスタート制御方法である。
ことを特徴とする第1の発明記載のアークスタート制御方法である。
ことを特徴とする第2の発明記載のアークスタート制御方法である。
時刻t5において設定されたアーク長引き上げ期間Tuが終了すると、同図(H)に示すように、スタート完了信号WcrがHighレベルに変化し、この信号が溶接電源PSからロボット制御装置RCに送受信信号Ifとして送信される。これを受信すると、ロボットRMは、溶接方向への移動を開始すると共に、時刻t5〜t6の予め定めた第1期間T1の間は予め定めた移動距離ΔLtだけトーチ高さLtが低くなるように移動する。したがって、同図(B)に示すように、動作制御信号Mcは、時刻t5以降の期間Highレベル(移動状態)になる。また、同図(C)に示すように、トーチ高さLtは、時刻t5までは教示トーチ高さLsとなり、時刻t5以降はスロープ状に短くなり、時刻t6においてLs−ΔLtとなる。ロボットRMは、時刻t6〜t7の予め定めた第2期間T2の間は上記の移動距離ΔLtだけトーチ高さが高くなるように移動し、時刻t7において教示トーチ高さLsに戻る。したがって、同図(C)に示すように、トーチ高さLtは、時刻t6からスロープ状に高くなり、時刻t7において教示トーチ高さLsに戻る。上記の第1期間T1と第2期間T2との合算値を、図4の再前進送給過渡期間Tbと略同じ長さに設定する。そして、T1=T2として設定すれば良い。また、移動距離ΔLtは、図4(I)に示すアーク長のオーバーシュート量に略等しくなるように設定する。すなわち、図4(I)に示すアーク長のオーバーシュートを相殺するように、トーチ高さLtを変化させれば良い。このようにすれば、アーク長はオーバーシュートすることなく、時刻t5から定常値に速やかに収束することになる。
以下に整理して説明する。
[第1のトーチ高さ制御方法]
(1a)ロボット制御装置RCはスタート完了信号Wcrを受信すると、ロボットRMを移動させて溶接トーチの高さを一旦低くした後に元の高さに戻すトーチ高さ制御を行う。
第1のトーチ高さ制御によれば、アーク長のオーバーシュートを相殺することができるために、ワイヤ送給モータWMに直流モータを使用し、かつ、溶接トーチの長さが1.5m程度の標準長さであり、かつ、定常送給速度が高速であるときでも、再前進送給時のアーク長のオーバーシュートを抑制することができ、良好な溶接品質を得ることができる。
第2のトーチ高さ制御は、以下のようになる。
(2a)ロボット制御装置RCはスタート完了信号Wcrを受信すると、ロボットRMを移動させてトーチ高さを第1期間T1の間に移動距離ΔLtだけ低くし、第2期間T2の間に元の教示トーチ高さLsに戻す。
第2のトーチ高さ制御によれば、第1期間T1、第2期間T2及び移動距離ΔLtをアーク長のオーバーシュートに応じて最適化することによって、アーク長のオーバーシュートを最大限に抑制することができる。
さらに、第3のトーチ高さ制御は以下のようになる。
(3a)溶接電源PSは、図1における、時刻t3〜t4の前進送給から後退送給への反転遅れ期間Taを検出し、この反転遅れ期間Taを送受信信号Ifとしてロボット制御装置RCに送信する。
(3b)ロボット制御装置RCは、反転遅れ期間Taを受信して、この値に基づいて第1期間T1、第2期間T2及び移動距離ΔLtを設定する。
(3c)ロボット制御装置RCはスタート完了信号Wcrを受信すると、ロボットRMを移動させてトーチ高さを第1期間T1の間に移動距離ΔLtだけ低くし、第2期間T2の間に元の教示トーチ高さLsに戻す。
第1期間T1と第2期間T2との合算値は、再前進送給過渡期間Tbと略等しくなるように設定されることが望ましい。再前進送給過渡期間Tbも反転遅れ期間の一つであるために、反転遅れ期間Taから最前進送給過渡期間Tbを推定することができる。この再前進送給過渡期間Tbが推定できれば、移動距離ΔLtも推定することができる。したがって、反転遅れ期間Taから第1期間T1、第2期間T2及び移動距離ΔLtの適正値を推定することができる。このために、第3のトーチ高さ制御によれば、上述した効果に加えて、第1期間T1、第2期間T2及び移動距離ΔLtの設定を自動的に行うことができ、作業効率が向上する。
さらに、第4のトーチ高さ制御は以下のようになる。
(4a)ロボット制御装置RCは、溶接電圧Vwを検出する。
(4b)ロボット制御装置RCはスタート完了信号Wcrを受信すると、溶接電圧検出信号の値と電圧設定信号Vrの値とが等しくなるようにフィードバック制御によってロボットRMを移動させてトーチ高さ制御を行う。
アーク長と溶接電圧Vwとは比例関係にあるために、溶接電圧Vwの検出値が定常値(電圧設定信号Vrの値)と等しくなるようにトーチ高さを制御すれば、アーク長のオーバーシュートを補償して定常値に維持することができる。第4のトーチ高さ制御によれば、上述した効果に加えて、トーチ高さ制御を自動制御化することができるので、第1期間T1、第2期間T2及び移動距離ΔLtの設定が不要となり作業効率が向上する。
さらに、第5のトーチ高さ制御は、パルスアーク溶接において上述した第4のトーチ高さ制御を適用する場合であり、以下のようになる。
(5a)ロボット制御装置RCは、図2で後述するピーク電流Ipの通電期間(ピーク期間Tp)中の溶接電圧Vw(ピーク電圧Vp)を検出する。
(5b)ロボット制御装置RCはスタート完了信号Wcrを受信すると、溶接電圧検出信号の値(ピーク電圧Vp)と予め定めた電圧設定信号の値とが等しくなるようにフィードバック制御によってロボットRMを移動させてトーチ高さ制御を行う。
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
4a コイルライナ
Fc 送給制御信号
Fcr 定常送給速度設定信号
Fcw 定常送給速度
Fw 送給速度
Iav 溶接電流平均値
Ib ベース電流
If 送受信信号
Ip ピーク電流
Iw 溶接電流
Ls 教示トーチ高さ
Lt トーチ高さ
Lw ワイヤ先端・母材間距離
Mc 動作制御信号
On 起動信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
RM ロボット
ST 溶接開始回路
St 溶接開始信号
T1 第1期間
T2 第2期間
Ta 前進送給から後退送給への反転遅れ期間
Tb 再前進送給過渡期間
Tg ベース期間
Tp ピーク期間
Tpb パルス周期
Tu アーク長引き上げ期間
Vav 溶接電圧平均値
Vb ベース電圧
Vp ピーク電圧
Vr 電圧設定信号
Vw 溶接電圧
Wcr スタート完了信号
WM ワイヤ送給モータ
ΔLt 移動距離
Claims (3)
- 溶接トーチから溶接ワイヤを母材へ前進送給し、溶接ワイヤが母材に接触すると溶接ワイヤを母材から後退送給すると共に溶接電流を通電し、この後退送給によって溶接ワイヤが母材から離れて初期アークが発生した後に溶接ワイヤを再前進送給して前記初期アーク発生状態から定常のアーク発生状態へと移行させるアークスタート制御方法において、
前記再前進送給の開始時点から前記溶接トーチの高さを一旦スロープ状に低くした後にスロープ状に高くして元の高さに戻すトーチ高さ制御を行う、
ことを特徴とするアークスタート制御方法。 - 前記トーチ高さ制御は、予め定めた第1期間の間に予め定めた移動距離だけスロープ状に低くし、予め定めた第2期間の間にスロープ状に高くして元の高さに戻す制御である、
ことを特徴とする請求項1記載のアークスタート制御方法。 - 前記前進送給から前記後退送給への切換時の反転遅れ期間を検出し、この反転遅れ期間に基づいて前記第1期間、前記第2期間及び前記移動距離を設定する、
ことを特徴とする請求項2記載のアークスタート制御方法。
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