<透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法>
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明の透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法においては、透明基材上に、特定の空間周波数分布を持つ微細な凹凸形状を形成するために、たとえばドットを多数ランダムに配置したパターンや明度分布を配置したパターンなどからなる第1のパターンを作成した後、第1のパターンに、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から空間周波数が特定値未満である低空間周波数成分を少なくとも除去または低減する、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ等のフィルタを適用して第2のパターンを作成し、得られた第2のパターンを用いて、透明基材上に凹凸形状を加工することを特徴とする。また、後述するように、得られた第2のパターンをディザリング法によって離散化された情報に変換した第3のパターン、もしくは、二値化された第3のパターンに含まれる孤立ドットをモンテカルロ法によって処理した第4のパターンを用いて、透明基材上に凹凸形状を加工することも好ましい。このように、本発明では、第2のパターン、第3のパターンまたは第4のパターンを用いて、透明基材上に微細凹凸形状を付与する。
透明基材に防眩性を付与するための手段または防眩フィルムを作製するための手段としては、透明基材中に粒子を分散させる方法が従来知られているが、ハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタ等の適用により、低空間周波数成分が除去または低減されたパターンを用いた本発明の方法によれば、このような従来の方法では実現することが不可能な低空間周波数成分が抑制された独特の表面形状を与える防眩処理を実現できる。本発明の透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法によれば、加工再現性良く透明基材上に凹凸形状を付与することができるとともに、十分な防眩効果を発現し、かつ白ちゃけおよびギラツキの発生ならびにコントラストの低下が十分に抑制された画像表示装置を得ることができる。また、バンドパスフィルタを適用した場合、凹凸加工が困難な高空間周波数成分が抑制されるため、透明基材表面の加工における凹凸の再現性をより向上させることができる。
ここで、「第1〜第4のパターン」における「パターン」とは、画像、画像データ、離散化された情報の二次元配列、またはプレートに配置された開口の配列を意味する。
上記画像データは、ラスタ形式の画像データ(ラスタイメージ)であってもよいし、ベクトル形式の画像データ(ベクタイメージ)であってもよい。ラスタイメージとは、画像を色のついたドット(点)の羅列として表現したデータである。ラスタイメージでは、各ドットの色の情報は数値で保存されている。このようなラスタイメージを保存するフォーマットとしては各種存在するが、特に一般的なものとして、たとえばビットマップが挙げられる。ビットマップとしては、赤、緑、青の強さをそれぞれ8ビット深度で表した24ビットカラービットマップ、明度を8ビット深度256段階で表した8ビットグレースケールビットマップが特に広く用いられている。
ラスタイメージを保存するフォーマットとしては、ビットマップの他、圧縮アルゴリズム等が適用された画像データであるPNG(Portable Network Graphics)、TIFF(Tagged Image File Format)、JPEG、GIF(Graphics Interchange Format)など各種フォーマットを挙げることができる。
ベクタイメージにおいては、線の起終点の座標(位置)、曲線であればその曲がり方、太さ、色、それら線に囲まれた面の色などの情報が数値で保存される。これらの数値データの集合、あるいは、円の半径や中心座標、多角形の各頂点座標などを記録したものもベクタイメージに含まれる。
ベクタイメージを保存するフォーマットとしては、特に一般的なものとして、DXF(Drawing Interchange File)、SVG(Scalable Vector Graphics)が例示される。ただし、本発明においてベクタイメージは、上記定義に属するものであればよく、これらの例示された形式に限定されるものではない。また、ベクタイメージは二次元に限るものではなく、三次元の情報を有するものであってもよい。
また、ベクタイメージのうち、閉じた円や多角形の配列を有するものは、上記の「プレートに配置された開口の配列」に、容易に置き換えることが可能である。
本発明におけるパターンは、上記のように画像または画像データとして取り扱われるものに限らず、離散化された情報の二次元配列として与えられるものであってもよい。離散化された情報を保存する方法としては、浮動小数点(たとえば、64ビット浮動小数点)、整数(たとえば、符号付32ビット整数、符号なし16ビット整数)などの各種形式を挙げることができる。
(第1のパターンの作成)
第1のパターンとしては、上記で定義したパターンの中から任意のものを用いることができ、濃淡あるいは数値の変化を有する任意のパターンであってよい。より具体的には、たとえば、画像の全範囲にわたって複数のドットを配置した画像データ(黒地に白のドットを複数配置した、あるいは白地に黒のドットを複数配置した画像データなど);濃淡の変化を有するパターンなどの明度分布を有するパターン;離散化された情報の二次元配列などを挙げることができ、また、第1のパターンに対してハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ等のフィルタを適用する際(この点については後述する)、光学的な手法でフーリエ変換を行なう場合には、開口が配置されたプレートであってもよい。さらに、パターンが形成された写真乾板(乾板)や透明基材に部分的にトナーを付着させたものも、第1のパターンとして用い得る。画像データにおけるドットの配置、明度分布およびプレートにおける開口の配置等は、規則的であってもランダム(不規則)であってもよいが、空間周波数領域において、広い範囲に振幅を有するとともに、規則性が低い凹凸形状加工用パターンが得られることから、ランダムな配置とすることが好ましい。
第1のパターンを、作成する画像の全範囲にわたって多数のドットをランダムに描画することにより作成する場合、多数のドットをランダムに描画する手段としては、たとえば、幅WX、高さWYの画像に対し、0から1の値をとる擬似乱数列R[n]を生成させることにより、たとえばドット中心のx座標がWX×R[2×m−1]、y座標がWY×R[2×m]である多数のドットを生成する手法が挙げられる。ここで、n、mはともに自然数である。擬似乱数列を生成する方法としては、線形合同法、Knuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズム、Xorshiftあるいはメルセンヌツイスタなど、分布させるドット数に対応できる十分な周期長を有するものである限り、任意の擬似乱数生成法を用いることができる。あるいは、擬似乱数に限らず、熱雑音などにより乱数を生成するハードウェアにより、ランダムにドットが配列された第1のパターンを作成してもよい。
ドットの形状は、円形、楕円形などの丸状や多角形などであってよく、同一の形状を有する多数のドットを配置してもよいし、異なる2種以上の形状のドットを多数配置してもよい。また、ドットの大きさは、すべてのドットについて同じであってもよいし、異なっていてもよい。したがって、ドットが丸状である場合、1種類のドット径(ドットの直径)を持つ多数のドットをランダムに配置させることによって第1のパターンを作成してもよいし、複数種類のドット径を持つ多数のドットをランダムに配置させてもよい。
第1のパターンを構成するドットの平均ドット径(パターン中の全ドットのドット径の平均値)は特に限定されないが、バンドパスフィルタを用いる場合、通過帯域の範囲にドット径のピークを有し、当該通過帯域の範囲を下回る低空間周波数領域にピークを有さないように設定することが好ましいことから、通常4〜50μmであり、好ましくは16〜32μmである。平均ドット径が50μmを超える場合には、ギラツキに影響を与える低空間周波数成分が多く含まれ、作成される第2のパターンに濃淡ムラが生じやすくなる。一方、第1のパターンを構成するドットの平均ドット径が小さすぎて、バンドパスフィルタを適用したときに、抽出される空間周波数成分の振幅が小さい場合、第1のパターンが有するランダム性が損なわれやすく、好ましい第2のパターンを得ることができない。平均ドット径は、バンドパスフィルタに与える空間周波数範囲上限値Tを用いて、0.5×(1/(2×T))よりも大きいことが好ましい。これにより、ドットの充填率が後述する好ましい範囲にある場合において、バンドパスフィルタによって抽出される空間周波数成分を十分に含み、かつ濃淡ムラが生じにくい第2のパターンが作成されやすい。
ハイパスフィルタを用いる場合も同様に、通過帯域の範囲にドット径のピークを有し、当該通過帯域の範囲を下回る低空間周波数領域にピークを有さないように設定することが好ましいことから、第1のパターンを構成するドットの平均ドット径は、通常4〜50μmであり、好ましくは6μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、好ましくは32μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは12μm以下である。平均ドット径が50μmを超える場合には、ギラツキに影響を与える低空間周波数成分が多く含まれ、作成される第2のパターンに濃淡ムラが生じやすくなる。
多数のドットを配置することにより第1のパターンを作成する場合におけるドットの充填率(画像全面積中のドットの占有面積)は、20〜80%であることが好ましく、20〜70%であることがより好ましく、30〜70%であることがさらに好ましく、30〜60%であることがよりさらに好ましく、40〜60%(たとえば、50%前後であってもよい)であることが特に好ましい。ドット数が極めて少なく、第1のパターンにおけるドットの充填率が20%に満たない場合、生成される第2のパターンに同心円状の特徴的なパターンからなるムラが生じ、好ましいランダムなパターンを得ることができない傾向にある。また、ドットの充填率が80%を超える場合においても同様に、閉じた円形のパターンからなるムラが多く見られるようになる傾向があり、ランダム性が損なわれる。
第1のパターンは、ベクトル形式の画像データとして作成してもよいし、ラスタ形式の画像データとして作成してもよい。ラスタ形式の場合、1ビット、2ビット、8ビットなど、任意のビット深さの画像形式で第1のパターンを作成することができる。ラスタ形式の画像データとして第1のパターンを作成する際には、パターンの詳細を描画できるように高い解像度で作成することが好ましい。防眩処理のために好ましい解像度は6400dpi以上、より好ましくは12800dpi以上である。
図1は、本発明の透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法に用いられ得る、ドットを多数ランダムに配置して作成した第1のパターンの好ましい一例を示す拡大図である。図1に示される第1のパターンは、8ビット階調のグレイスケール画像であり、黒色円形の領域がドット1である。本発明では、ドットの直径を「ドット径」、パターン中の全ドットのドット径の平均値を「平均ドット径」とする。図1に示される第1のパターンの平均ドット径は16μmである。また、画像解像度は12800dpiである。すなわち、1ピクセルのサイズは、縦横2μmに相当する。図1に示される第1のパターンにおいて、画像のサイズは、WX=0.512mm、WY=0.512mmであり、ドットの充填率は約50%である。また、ドットの中心座標を決定する擬似乱数は、広島大学のグループにより実装されたSIMD oriented Fast Mersenne Twisterプログラム、SFMT ver1.3.3に対し、主として数値607を与えることによって生成した。
また、第1のパターンとして、明度分布が配置されたパターン、たとえば、乱数により濃淡を決定したラスタイメージを用いることも好ましい。ラスタイメージの各ピクセル(画素)の濃度を乱数、あるいは計算機によって生成された擬似乱数によって決定することで、規則性が小さなパターンを得ることができる。
画素の濃度の決定方法について、0〜1の範囲の実数を出力する擬似乱数を用いる場合を例に挙げて説明する。画素の階調数は任意でよいが、取扱が容易な階調深度は、1ビット、8ビット、16ビット、24ビットなどであり、好ましくは8ビット(256階調:インデックス0〜255)である。たとえば8ビット階調の場合、8ビットの深度を有するPIXCEL[x,y]に対し、PIXCEL[x,y]=R[x+y×ImageWidth]×255を代入することによって画像を生成することができる。ここで、x、yは画像におけるピクセルの座標であり、ImageWidthはx座標の画像幅である。この例では、平均インデックスが127〜128のイメージが生成されるが、オフセットを付加することにより、平均値が異なるイメージを生成してもよい。
図2は、乱数により濃淡を決定したラスタイメージからなる第1のパターンの一例を示す図であり、図3は、その一部を拡大して示す図である。図2に示されるラスタイメージは、1画素1画素の明度を擬似乱数により決定することにより作成した8ビット階調の画像であり、具体的には、8ビットの深度を有する2次元配列PIXCEL[x,y]に対し、PIXCEL[x,y]=R[x+y×ImageWidth]×255を代入することによって作成した。ここで、x、yは画像におけるピクセルの座標であり、ImageWidthはx座標の画素幅である。配列R[]として、Microsoft Corporationによって開発された「.NET Framework2.0クラス ライブラリ」に含まれるRandomクラスNextDoubleメソッドにより生成される0.0と1.0の間の値をとるKnuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズムによる擬似乱数列を用いた。
また、第1のパターンは、上記のラスタイメージと同様にして生成された、離散化された情報の二次元配列であってもよい。この場合、配列の各要素の値を決定するために擬似乱数を用いる。
第1のパターンの形態は、たとえばハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用するための手法や透明基材上に凹凸形状を加工するために用いられる加工装置が求める入力の形式などにより適宜選定することができるが、なかでも、乱数により濃淡を決定したラスタイメージは、幅広い空間周波数範囲に振幅を有することから好ましく用いることができる。これは、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ等のフィルタによって抽出される空間周波数範囲に関わらず、第1のパターンのランダム性を維持しやすいためである。
図4は、ドットを多数ランダムに配置して作成した第1のパターン(ランダムドットパターン)より得られる二次元配列をFFTにより空間周波数領域に変換して得られる空間周波数分布の一例と、乱数により濃淡を決定したラスタイメージ(乱数ラスタイメージ)からなる第1のパターンより得られる二次元配列をFFTにより空間周波数領域に変換して得られる空間周波数分布の一例とを比較する図であり、空間周波数0から0.30μm-1の領域における振幅の強度を示すものである。図4に示されるように、ランダムドットパターンは、乱数ラスタイメージと比較して、特に空間周波数0.00〜0.10μm-1の領域において、高い振幅強度を有している。なお、図4については、後で詳述する。
(第2のパターンの作成)
本発明の透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法において、第2のパターンは、第1のパターンに対し、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から、空間周波数が特定値未満である低空間周波数成分を少なくとも除去または低減するフィルタを適用することにより作成される。本発明においては、当該フィルタとして、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から、空間周波数が特定値未満である低空間周波数成分のみを除去または低減するハイパスフィルタ、または、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から、空間周波数が特定値未満である低空間周波数成分を除去または低減するとともに、空間周波数が特定値を超える高空間周波数成分を除去または低減することにより、特定範囲の空間周波数成分を抽出するバンドパスフィルタを好ましく用いることができる。一般に、パターンは、その変化に応じた空間周波数成分を含んでいる。変化が激しい、もしくは配置が密にされているパターンは、空間周波数が高い成分を多く含んでおり、変化が緩やか、もしくは配置が疎なパターンは、空間周波数が高い成分は少ない。ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から特定範囲の空間周波数成分、すなわち、ギラツキ等を生じさせる長周期成分である低空間周波数成分を除去または低減することができる。ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により、透明基材上に凹凸形状を付与するための第2のパターン、第3のパターンまたは第4のパターンにおける低空間周波数成分を低減させることができる。第1のパターンへのハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用による第2のパターンの作成は、具体的には、以下の(1)〜(3)の一連の操作によって実施することができる。
(1)空間周波数領域への変換
まず、第1のパターンに含まれる空間周波数成分から特定の空間周波数成分を抽出(すなわち、特定の空間周波数成分を除去または低減)できるようにするために、第1のパターンがラスタイメージであるときには、第1のパターンを、必要に応じて、各ピクセルの明度に応じた値が代入された浮動小数点型の二次元配列g[x,y]に変換する。ここで、x、yはラスタイメージ内の直交座標上の位置を示す。このようにして得られた二次元配列g[x,y]に対し、第1のパターンにおける様々な空間周波数成分の大きさを得るための手段を適用することにより、第1のパターンに含まれる空間周波数成分と各空間周波数における振幅とを示す空間周波数分布が得られる。空間周波数成分の大きさを得るための手段としては、光学的な手法、数学的な手法などがあり、特に計算機を用いて数学的に求める方法が広く一般的に用いられている。空間周波数成分の大きさを得る数学的な方法を、一般にフーリエ変換と呼ぶ。フーリエ変換は、計算機を用いた離散フーリエ変換(以下、DFT)によって行なうことができる。したがって、空間周波数領域への変換は、第1のパターンから得られる二次元配列に対し、たとえば、計算機を用い、二次元のDFTを適用することによって行なうことができる。
DFTアルゴリズムとしては、一般的に知られているアルゴリズムを使用することができるが、特にCooley−Tukey型アルゴリズムは計算速度に優れることから好適に用いることができる。Cooley−Tukey型アルゴリズムによるDFTは、高速フーリエ変換(以下、FFT)とも呼称される。
第1のパターンがラスタ形式で作成されている場合、当該ラスタ形式の画像データは、上記DFTアルゴリズムを用いることにより、容易に計算機上で空間周波数領域に変換することができる。第1のパターンがベクトル形式で作成されており、かつ上記DFTアルゴリズムを用いて空間周波数領域に変換する場合には、ベクトル形式の画像データをラスタ形式に変換し、ラスタ形式に変換された画像データを計算機上で二次元配列g[x,y]に変換する。ここで、x、yはラスタイメージ内の直交座標上の位置を示す。一般的な、たとえば8ビット階調をもつグレイスケール画像として第1のパターンを作成した場合、白の領域には255が、黒の領域には0が割り当てられる。これらの値を用いてDFTにより、画像データを計算機上で空間周波数領域の二次元配列G[fx,fy]に変換する。ここで、fx、fyはそれぞれ、x方向の空間周波数、y方向の空間周波数を示す。なお、第1のパターンが離散化された情報の二次元配列として与えられる場合、これにDFTを適用することによって計算機上で空間周波数領域の二次元配列G[fx,fy]に変換することが可能であることは言うまでもない。
DFTを用いる場合、離散化された情報の二次元配列である第1のパターン、もしくは二次元配列に変換された第1のパターンの各配列要素から二次元配列の全要素平均値PAを減じる処理を行なってもよい。たとえば0から255の値を持つ8ビット階調のグレイスケール画像として作成された第1のパターンを二次元配列に変換した後、各配列要素から二次元配列の全要素平均値PAを減じる処理を行なうことができる。0から255の値を持つ8ビット階調のグレイスケール画像を二次元配列に変換すると、空間周波数0において振幅を有する空間周波数スペクトルが得られることがある。これは、二次元配列を構成する全ての要素が正に偏っていることに起因する。透明基材に施す防眩処理および防眩フィルムの製造においては、透明基材に付与される表面凹凸形状の特性を把握できることが重要であるが、上記空間周波数0における振幅は、最終的に形成される凹凸形状の特性を知る上では有意な情報ではない。空間周波数0において振幅が0となるよう、各配列要素から二次元配列の全要素平均値PAを減じる処理を行なうことにより、最終的に形成される凹凸形状の特性を容易に把握できるようになる。
図5は、図1に示される第1のパターンより得られる二次元配列をFFTにより空間周波数領域に変換して得られた二次元的な空間周波数分布を示す図である。図5において、横軸および縦軸はともに、空間周波数を示している。両軸が交差する点は、空間周波数0の点であり、当該交差点(ゼロ点)から離れるに従い、空間周波数は大きくなる。また、各空間周波数における振幅の強度を色の濃さで示しており、色が濃いほど振幅が大きいことを意味する。
二次元データである画像をFFTにより空間周波数領域に変換して得られるのは、上述のように、図5のような2次元の情報である。ただし、2次元の表示は見通しが良好でないことから、以下、空間周波数分布を示す場合には、空間周波数を横軸とし、各空間周波数における振幅強度の平均値を縦軸とした一次元の空間周波数分布を示すこととする。図5に示される2次元の空間周波数分布を一次元の空間周波数分布で示したものが、上述した図4における点線のグラフである。すなわち、図4における点線のグラフは、図1に示される第1のパターンより得られる二次元配列をFFTにより空間周波数領域に変換して得られる(FFTにより空間周波数に分解した結果得られる)、一次元の空間周波数分布を示す図である。図4において、横軸は空間周波数を示し、縦軸は各空間周波数に属する要素の振幅強度の平均値を示している。ここで、振幅強度とは、二次元配列の各要素の絶対値|G[fx,fy]|を意味する。また、平均値は、FFTにより得られる最高空間周波数をfmaxとすると、空間周波数0〜fmaxの範囲を128分割し、それぞれの分割された空間周波数範囲に属する二次元配列の要素を平均することにより求められる。要素が属する空間周波数範囲は、fxおよびfyから計算される値faにより判定することができる。fmaxおよびfaの計算式である式(A)および式(B)を下記に示す。
fmax = (fxmax2+fymax2)1/2 (A)
fa = (fx 2+fy 2)1/2 (B)
なお、fxmaxはfxの最大値、fymaxはfyの最大値を意味する。
図4の点線で示されるグラフのように、十分にランダムな擬似乱数によって第1のパターンを作成した場合であっても、第1のパターンは、特定の空間周波数に振幅のピークを有することがある。このような振幅ピークが存在する場合、後述するハイパスフィルタに指定する空間周波数下限値またはバンドパスフィルタに指定する空間周波数範囲上限値や下限値によっては、望ましい空間周波数特性を有する第2のパターンを得ることができない可能性があることから、特定の空間周波数範囲において各空間周波数における振幅が等しくまたは略等しくなるよう、各要素の振幅を補正することが好ましい。
図6は、図4の点線で示される空間周波数分布に対し、振幅の補正を行なった結果の一例を示す図である。振幅補正前の空間周波数分布(図4の点線のものと同一)を点線で、振幅補正後の空間周波数分布を実線で示している。図6に示される空間周波数分布においては、補正により、空間周波数0から約0.30μm-1の領域において、各要素の振幅がおよそ一定になっている。このように、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタによって抽出され得る空間周波数領域において振幅を一定にしておくことにより、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により作成された第2のパターンは、一定の振幅を有する特定範囲の空間周波数成分を有することとなる。このことは、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により生成されるパターン特性を制御する上で有利である。なお、上記振幅の補正は、具体的には、補正後の複素振幅絶対値Cを用いて下記式:
α=C/|Aorg|
によって与えられる実数αを複素振幅Aorgに乗算することによって行なわれる。ただし、|Aorg|はゼロ値であってはならない。したがって、上記補正は|Aorg|が非ゼロ値である範囲において可能である。
(2)ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用
次に、DFTによって得られた空間周波数領域における二次元配列に対して、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタに対応する操作を施す。この操作により、第1のパターンに含まれる低空間周波数成分を除去または低減させる。
ハイパスフィルタは、高域通過濾波器、Low−Cut Filterとも呼称され、信号処理の分野において、指定された周波数未満の成分を除去または低減する働きを有する。ハイパスフィルタに対応する操作とは、第1のパターンに含まれる空間周波数成分のうち、空間周波数範囲下限値B’より低い空間周波数からなる低空間周波数成分を除去または低減し、該下限値B’以上の空間周波数からなる空間周波数成分を抽出する操作である。DFTを用いる場合について、より具体的に述べると、空間周波数領域に変換された配列に対し、空間周波数範囲下限値B’によって指定される範囲より低い空間周波数成分の配列要素(複素振幅の実部、虚部のそれぞれ)に対し0を代入する(振幅を0とする)、もしくは、絶対値が1よりも十分に小さな値を乗ずる操作である。絶対値が1よりも十分に小さな値として、一般にハイパスフィルタと呼ばれるフィルタの性能から例示すると、たとえば絶対値が0.5よりゼロに近い数値、絶対値が0.3よりゼロに近い数値、絶対値が0.1よりゼロに近い数値、あるいは絶対値が0.01よりゼロに近い数値などが挙げられる。一般に乗ずる値の絶対値がゼロに近いほど(ゼロを含む)、理想的なハイパスフィルタとなる。
空間周波数範囲下限値B’の値は、ハイパスフィルタに対応する透過割合の空間周波数依存が、たとえば図7に示されるように、ある空間周波数を境に急激に立ち上がる場合には、その立ち上がりの始点とみなすことができる。一方、透過割合がなだらかに立ち上がる場合、空間周波数範囲下限値B’の値は、透過帯域のピーク強度の1/2の強度を示す空間周波数とされる。バンドパスフィルタの空間周波数範囲上限値Tおよび空間周波数範囲下限値Bについても同様である。図7および後述する図8〜14で示した透過割合は、前述の各要素に乗ずる値の絶対値を示す。なお、以下で示す例では、いずれも実数を乗じてバンドパスフィルタ、およびハイパスフィルタに対応する操作を行なった。
ハイパスフィルタの適用によって抽出される空間周波数帯域(透過帯域)において、各空間周波数成分の透過割合(ハイパスフィルタ適用前における振幅強度に対するハイパスフィルタ適用後における振幅強度の割合)は、図7に示す例のように、透過帯域全体にわたって一定であってもよいし、図8に示す例のように、値が変化していてもよい。また、図9に示す例のように、透過帯域は、複数のピークを有していてもよい。
バンドパスフィルタは、帯域フィルタとも呼称され、信号処理の分野において、意図する範囲の周波数を通過させ、それ以外の周波数を除去または低減する働きを有する。バンドパスフィルタに対応する操作とは、上記で得られた第1のパターンの空間周波数分布において、第1のパターンに含まれる空間周波数成分のうち、空間周波数範囲下限値Bより低い空間周波数からなる低空間周波数成分および空間周波数範囲上限値Tを超える空間周波数からなる高空間周波数成分を除去または低減し、該下限値Bから該上限値Tに至る特定の範囲の空間周波数からなる空間周波数成分を抽出する操作であり、DFTを用いる場合について、より具体的に述べると、通過する空間周波数範囲上限値Tおよび空間周波数範囲下限値Bによって指定される範囲に含まれない配列要素に対し0を代入する(振幅を0とする)もしくは、1よりも十分に小さな値を乗ずる操作である。1よりも十分に小さな値については、上述のとおりである。
バンドパスフィルタの適用によって抽出される空間周波数帯域(透過帯域)において、各空間周波数成分の透過割合(バンドパスフィルタ適用前における振幅強度に対するバンドパスフィルタ適用後における振幅強度の割合)は、図10に示す例(透過帯域ピークの形状が矩形を有する)のように、透過帯域全体にわたって一定であってもよいし、図11に示す例(透過帯域ピークの形状がガウス型である)のように、値が変化していてもよい。また、透過帯域のピーク形状は、空間周波数軸に対して左右対称であってもよいし、図12に示す例(透過帯域ピークの形状が、ピークの右側と左側とで傾きが異なる変形ガウス型である)のように、非対称であってもよい。また、透過帯域ピークは、図13および14に示す例(透過帯域ピークが2つのピークからなる)のように、複数のピークからなっていてもよい。
図15は、図5に示される空間周波数分布を有する第1のパターンに対して、バンドパスフィルタを適用した後の二次元的な空間周波数分布の一例を示す図である。図15において、横軸、縦軸および色の濃さは図5と同じ意味を表わす。図15に示されるように、上記バンドパスフィルタに対応する操作により、空間周波数範囲上限値Tおよび空間周波数範囲下限値Bによって指定される特定の範囲の空間周波数成分が除去またはその振幅強度が低減される。
次に、ハイパスフィルタに与える空間周波数範囲下限値B’、ならびにバンドパスフィルタに与える空間周波数範囲上限値Tおよび空間周波数範囲下限値Bの好ましい範囲について説明する。ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタによって除去または低減される低空間周波数成分は、本発明によって得られる防眩処理がなされた透明基材(防眩フィルムなど)を適用する画像表示装置の平均的な一辺の画素サイズ〔たとえば、RGBの3色が横に並んでいる場合、RGBそれぞれの平均的な一辺の画素サイズとは、長辺と短辺の平均値である〕に対して、約10分の1以下の周期に対応する空間周波数以下の低空間周波数成分であることが好ましい。これにより、画像表示装置におけるギラツキを効果的に抑制することができる。
市販されている画像表示装置を例に挙げて具体的に述べると、たとえば対角が約103インチのフルハイビジョン(解像度水平1920×垂直1080ドット等)に相当する画像表示装置に適用する場合、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタにより除去または低減される低空間周波数成分の空間周波数の最大値、すなわち、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.01μm-1以上であることが好ましい。また、対角が約50インチのハイビジョン(解像度水平1366×垂直768ドット等)に相当する画像表示装置に適用する場合、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.02μm-1以上であることが好ましい。同様の考察から、対角約32インチのハイビジョンに相当する画像表示装置に適用する場合、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.03μm-1以上であることが好ましい。対角約37インチのフルハイビジョンに相当する画像表示装置に適用する場合、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.04μm-1以上であることが好ましい。対角約20インチのハイビジョンに相当する画像表示装置に適用する場合、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.05μm-1以上であることが好ましい。対角約22インチのフルハイビジョン相当する画像表示装置に適用する場合、空間周波数範囲下限値B’または空間周波数範囲下限値Bは、0.07μm-1以上であることが好ましい。このように、適用する画像表示装置の解像度およびサイズに応じて、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタに与える空間周波数範囲下限値を適切に調整することにより、画像表示装置に対し適切な範囲の低空間周波数成分が除去または低減された第2、第3または第4のパターンを作成することができ、これを用いて凹凸形状を加工することにより、ギラツキが抑制された好ましい防眩処理を実現することができる。
また、バンドパスフィルタにおいては、加工適性の観点から、空間周波数範囲上限値Tは、1/(D×2)μm-1以下であることが好ましい。ここで、D(μm)は、透明基材上に凹凸形状を加工する際に用いられる加工装置の分解能である。空間周波数範囲上限値Tが1/(D×2)μm-1を超える場合、加工再現性良く透明基材上に凹凸形状を付与することが困難となる場合がある。加工再現性が、空間周波数範囲上限値Tが小さいほど良好となることから、空間周波数範囲上限値Tは、より好ましくは1/(D×4)μm-1以下であり、さらに好ましくは1/(D×6)μm-1以下である。空間周波数範囲上限値Tが1/(D×6)μm-1以下である場合、生産性が高いレーザー描画装置を用いて良好な加工再現性で透明基材上に凹凸形状を形成できるため特に好ましい。一方、空間周波数範囲上限値Tが大きくなるほど、周期のより細かい構造を有する第2のパターンが形成されるため、加工再現が困難となりやすい。
透明基材上に凹凸形状を加工する際に用いる加工装置は、従来公知の装置であってよく、たとえば、レーザー描画装置、精密旋盤などを用いることができる。レーザー描画装置を用いてレジストを露光し、凹凸形状を形成する場合、レーザーのスポット直径が分解能D(μm)に相当する。また、先端が半球状のボールエンドミルを備える精密旋盤を用いて凹凸形状を形成する場合であって、先端半径がr(μm)であるボールエンドミルを用いて、加工後の凹凸面における平坦面と各位置における面とのなす角度がθ度(θはたとえば10度である)以内となるようにして凹凸形状を加工する場合においては、2×r÷(sin(θ÷180×π))が分解能D(μm)に相当する。なお、第2のパターンを用いて、凹凸面を有する金型を作製し、金型の凹凸面を透明基材上に転写することにより、凹凸形状を加工する場合、透明基材上に凹凸形状を加工する際に用いる加工装置とは、凹凸面を有する金型を作製する際に用いる加工装置を意味する。
また、バンドパスフィルタにおいては、透明基材に適切な微細凹凸表面形状を付与するために、空間周波数範囲下限値Bの逆数である最長周期長1/Bと空間周波数範囲上限値Tの逆数である最短周期長1/Tとの中間である中間周期長MainPeriod=(1/B+1/T)/2は、6μm以上33μm以下の範囲内であることが好ましい。MainPeriodは、バンドパスフィルタに与える空間周波数範囲上限値Tに対応する周期長(1÷T)μmと空間周波数範囲下限値Bに対応する周期長(1÷B)μmとの平均値に相当する。MainPeriodが33μmを上回る場合には、透明基材上への凹凸形状の加工において、空間周波数が0.10μm-1より低い微細凹凸表面形状が形成されにくく、防眩性を効果的に発現できない。また、MainPeriodが6μmを下回る場合には、透明基材上への凹凸形状の加工において、空間周波数が0.01μm-1を下回る微細凹凸表面形状が形成される可能性があり、その結果、高精細の画像表示装置に適用したとき(たとえば、得られた防眩フィルムを高精細の画像表示装置の表面に配置したとき)にギラツキが発生する可能性がある。
上述のように、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタ等のフィルタを適用する主な目的は、最終的に凹凸形状を加工するために用いられるパターン(たとえば後述する第2、第3または第4のパターン)において、空間周波数範囲下限値B’またはBより低い空間周波数からなる低空間周波数成分を除去または低減することにある。
(3)第2のパターンの生成
次に、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタに対応する操作を施すことによって得られた空間周波数の情報を、逆離散フーリエ変換(IDFT)により二次元配列に変換し、この二次元配列に基づき、第2のパターンを生成する。IDFTアルゴリズムとしては、上記DFTと同様、一般的に知られているアルゴリズムを使用することができる。第2のパターンは、8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなど、各種のビット深度を持つことができる。
図16は、図1に示される第1のパターンにバンドパスフィルタを適用して作成された第2のパターンの一例を示す拡大図である。図16も図1同様、12800dpiの画像データである。バンドパスフィルタに与えた空間周波数範囲下限値Bおよび空間周波数範囲上限値Tはそれぞれ、0.043μm-1、0.059μm-1である。また、2×(T−B)/(T+B)は0.30である。
なお、第2のパターンを生成する際には、IDFTによって得られた二次元配列の最大値と最小値が、生成する第2のパターンのビット深度によって規定される最大値・最小値にそれぞれに対応するように換算して代入してもよい。すなわち、IDFTにより計算された二次元配列要素の最大値をImax、最小値をIminとすると、要素の値Ixを8ビット(0−255)のパターンに変換する場合、パターンの各画素に代入される値は、255×(Ix−Imin)÷(Imax−Imin)で計算される。上記図16の画像データは、このような換算を行なって得られたものである。
以上、DFTを用いたハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により第2のパターンを作成する方法の例を述べたが、これ以外の方法によっても第2のパターンを作成することが可能である。たとえば、第1のパターンとして開口が配置されたプレートを用い、これに光学的な手法でフーリエ変換を行なうことによっても第2のパターンを得ることができる。具体的に説明すると、焦点を一致させた2枚のレンズからなる空間周波数フィルタリング光学系を用意し、第1のパターンを1枚目のレンズの焦点面に配置する。このとき、2枚のレンズの焦点が一致する面(フーリエ面)に、画像の空間周波数分布が得られる。このフーリエ面において、光の透過率を空間的に変化させることにより、所望する範囲の空間周波数を透過させることができる。
フィルタリングされた出力画像は、2枚目のレンズのフーリエ面の反対側の焦点面に得られる。たとえば、開口の中心部のみがフーリエ面に透過するようにプレートを配置すると、上記画像の低空間周波数成分のみが出力画像として得られる。逆に、開口の中心部を遮光すると、高空間周波数成分のみが出力画像として得られる。したがって、フーリエ面において中心部分とその周辺部分を遮光することにより、2枚目のレンズの反対側の焦点面に、目的とする空間周波数分布を有する第2のパターンを得ることができる。
(離散化された情報への変換および第3のパターンの作成)
本発明では、上記のようにして得られた第2のパターンから、離散化された情報に変換されたパターンを作成することが好ましい。離散化された情報に変換されたパターンとすることにより、凹凸形状を加工するために用いられる加工装置に好ましく適用されるパターンとすることができる。たとえば、後述する透明基材上に凹凸形状を加工する工程がレーザー描画装置等を用いたレジストワークやNC加工(Numerical Control Machining)を含む場合、これらに用いられるパターンは、二値化など多値化されていることが好ましい。特に、後述する透明基材上に凹凸形状を加工する工程がレーザー描画装置等を用いたレジストワークを含む場合、第2のパターンは、2段階に離散化された情報に変換する、すなわち、二値化されたパターンに変換することが好ましい。これは、レーザーが照射されるか否かの二値によって、レジストパターンが生成されるためである。第2のパターンを二値化することにより、レーザー描画装置等に適用可能な画像を生成することができる。
「離散化された情報」とは、一般にはデジタルデータとも呼称され、コンピュータ上で扱われる情報は、ほとんどの場合、離散化された情報である。離散化された情報の例としては、ビットマップデータ等のコンピュータ上で取り扱うことのできる画像データ;および、128ビット、64ビット、32ビット、16ビット等の各種ビット深度を有する浮動小数点数、または符号あり、もしくは符号なし整数などが挙げられる。
「離散化された情報への変換」とは、連続関数を離散表現に変換すること、アナログデータをデジタルデータに変換すること、または、より多くの段階数で表現されている離散化されている情報を、より少ない段階数で表現された情報に変換することを意味し、デジタル信号をより少ないビット深度で表現されるデジタル信号に変換することを含む。離散化された情報への変換の例としては、たとえば、連続関数である余弦関数を離散的に表現すること、および、より段階数の多い32ビット浮動小数点で表現された情報を、より段階数の少ない8ビット整数に変換することなどが挙げられる。
本発明においては、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用によって得られる第2のパターンは連続性が高いことから、多値化されたパターン、とりわけ二値化されたパターンを得る際においては、特定の条件でハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用し、得られた第2のパターンを多値化するか、もしくは、特定の方法で第2のパターンを多値化することが好ましい。以下、本発明において好ましく用いられる多値化方法を、例を示して説明する。
(1)閾値法による二値化
バンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンを二値化する方法としては、閾値法を好ましく用いることができる。閾値法とは、グレイスケールインデックス(明度値)に特定の閾値を設定し、閾値を超えるピクセル(画素)については白(または黒)を与え、閾値以下のピクセルについては黒(または白)を与えることにより、二値化を行なう手法である。
バンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンの閾値法による二値化にあたっては、バンドパスフィルタに与える空間周波数範囲下限値Bおよび空間周波数範囲上限値Tは、下記式(1):
0.20 < 2×(T−B)/(T+B) < 0.80 (1)
を満たすことが好ましく、下記式(2):
0.30 ≦ 2×(T−B)/(T+B) ≦ 0.70 (2)
を満たすことがより好ましい。上記式(1)および(2)における2×(T−B)/(T+B)は、上記バンドパスフィルタによって抽出された、第2のパターンが有する空間周波数の範囲の指標となる数値である。すなわち、2×(T−B)/(T+B)が大きいほど、第2のパターンが有する空間周波数範囲は広く、小さいほど、第2のパターンが有する空間周波数範囲は狭い。
図17は、2×(T−B)/(T+B)の値と、バンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンを閾値法によって二値化して得られるパターンの自己相関係数最大値との関係を示す図である。自己相関係数最大値とは、自己相関係数の最大値を意味する。自己相関係数は、ウィーナー・ヒンチンの定理に基づき、第2のパターンを二次元フーリエ変換により空間周波数領域における二次元配列に変換した後、各要素の係数を二乗し、さらにこれに逆フーリエ変換を施すことにより得られる。自己相関係数最大値は、自身の平行移動に関する自己相関の強さを示す指標となる数値である。したがって、自己相関係数最大値が高いほど、透明基材上に加工される凹凸形状において、似たような凹凸形状が連続しやすくなり、凹凸形状の周期長が短いにも関わらず、目視において特異な周期性が感じられやすいものとなる。なお、図17に示される自己相関係数最大値は、移動距離が20μm以上の範囲における自己相関係数最大値である。
図17に示されるように、自己相関係数最大値は、2×(T−B)/(T+B)が0.20以下のときに極端に増加する一方、2×(T−B)/(T+B)が0.30以上である場合においては、比較的低い値を維持することがわかる。したがって、透明基材上に特異な周期性が感じられない凹凸形状を形成するためには、2×(T−B)/(T+B)の値は、0.20より大きいこと好ましく、0.30以上であることがより好ましい。
一方、第2のパターンが有する空間周波数範囲が広くなるほど、周期長の異なる多数の成分が足し合わされることによって、第2のパターンに対して閾値法による二値化処理を行なったときに孤立した小ドットが生成されやすくなるという傾向が、検討の結果明らかとなった。図18は、2×(T−B)/(T+B)の値と、バンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンを閾値法によって二値化して得られるパターンの孤立小ドットの発生個数との関係を示す図である。図18において、「発生個数」とは、第2のパターンに対して閾値法による二値化処理を施すことによって得られる画像において、中心空間周波数を0.05μm-1、透明基材上に凹凸形状を加工する際に使用する加工装置(レーザー描画装置等)の分解能Dを2μmとしたとき、連続する露光範囲の一辺の長さが分解能2×Dμm以下となる孤立した小ドットの発生個数を意味している。これらの連続する要素数が少ない孤立した小ドットの存在は、十分な加工再現性を妨げ得る。なお、中心空間周波数とは、上記したMainPeriodの逆数である。
図18に示されるように、孤立した小ドットの発生個数は、2×(T−B)/(T+B)が0.80以上の範囲である場合において、その値が大きくなるほど、急激に増加する傾向が見られる一方、2×(T−B)/(T+B)が0.70以下である場合においては、比較的低い値を維持することがわかる。したがって、凹凸形状の加工再現性を良好なものとするためには、2×(T−B)/(T+B)の値は、0.80未満であるがこと好ましく、0.70以下であることがより好ましい。
以上より、加工再現性が良好で、かつ特異な周期性が感じられない凹凸形状を形成するためには、空間周波数範囲下限値Bおよび空間周波数範囲上限値Tは、上記式(1)を満たすことが好ましく、上記式(2)を満たすことがより好ましい。上記式(1)を満たす、好ましくは上記式(2)を満たすバンドパスフィルタの適用により、後述するモンテカルロ法を用いた孤立ドットの低減処理を必ずしも行なうことなく、閾値法による二値化によって、加工再現性が良好なパターンを得ることが可能となる。
なお、バンドパスフィルタを適用した後の、空間周波数範囲下限値Bから空間周波数範囲上限値Tの範囲の空間周波数分布に対し、第1のパターンの空間周波数分布の場合と同様に、振幅強度が好ましくは一定となるよう、振幅強度を増減させる処理を施してもよい。滑らかに空間周波数成分の振幅強度を変化させることにより、より滑らかな凹凸形状を得ることができるようになる。
ここで、レジストワークにおいては、露光領域の比率が30%〜70%の範囲にあるとき、エッチングや現像への適性が良好となる。さらに好ましくは40%〜60%の範囲である。第2のパターンを閾値法により二値化したパターンがこの条件を満たすためには、閾値を適切に設定する必要がある。これは、得られた第2のパターンの各画素について頻度分布を解析し、累積度数が目標の比率となる値を閾値として二値化することで達成できる。具体的には、たとえば次のとおりである。
図19は、図16に示される画像データについてグレイスケールインデックスのヒストグラムを解析することにより得られたグレイスケールインデックスの累積率の分布を示す図である。図19に示される累積率分布によると、グレイスケールインデックス125以下の画素数が40%であることがわかる。図20は、この累積率分布の解析結果を考慮し、グレイスケールインデックス125を閾値として、図16に示される画像データを閾値法により二値化することにより得られたパターンの拡大図である。図20に示される二値化された第2のパターンにおいて、黒で表示した部分(露光領域に相当する)の充填率は、グレイスケールインデックス125を閾値としたことにより、40%となっている。図21に、図20に示される二値化された第2のパターンより得られる二次元配列を高速フーリエ変換(FFT)により空間周波数領域に変換して得られる空間周波数分布を示す。図21に示されるように、図20に示される二値化された第2のパターンは、ギラツキの発生に関与する低空間周波数成分が低減され、かつ、加工再現性を低下させる高空間周波数成分も低減された空間周波数分布を有していることから、図20に示される二値化された第2のパターンを用いて透明基材上に凹凸形状を加工することにより、優れた防眩性能、ギラツキ低減および加工適性が期待される。
(2)ディザリング法による多値化
ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンを二値化など多値化する方法としては、ディザリング法を好ましく用いることができる。この場合、第2のパターンにディザリング法を適用して得られる第3のパターンを用いて、透明基材上に凹凸形状を加工する。ディザリング法は、アナログデータのデジタルデータへの変換、あるいはデジタルデータのビットレートやビット深度を変換するための手法の一つであり、デジタル信号処理の一手法として位置づけることができる。方形確率密度関数や三角形確率密度関数などのランダムな信号を付与することで、信号を離散化する際の誤差の偏りを低減させる手法、あるいは、パターンディザ法、誤差拡散法など各種の手法が知られている。
上記のなかでも、本発明においては、モアレや干渉による着色の原因となる繰り返し模様が発生しにくく、また、局所的な平均明度の変動を抑制する効果が期待でき、さらに、マトリクスの最適化により、加工が困難な細かい模様の発生を抑制できる可能性があることから、ディザリング法として誤差拡散法を用いることが好ましい。誤差拡散法は、離散化する際に生じる誤差を周辺に拡散させることを特徴とする。
誤差拡散法のアルゴリズムの概要を、8ビット256階調のグレースケールビットマップを1ビット2階調の白黒ビットマップに変換する場合を例に挙げて説明する。今、変換対象のピクセル(画素)が有する明度値が64であったとする。この画素を1ビット2階調の白黒ビットマップに変換する場合、8ビットでは明度値255と表現される白、もしくは明度値0で表現される黒に変換する必要がある。通常はより近い値に変換することになる。したがって、明度値が64である画素は、255よりも0に近いため、0に対応する値(すなわち黒)に変換される。この際、変換によって、8ビット階調の画像と比較すると、変換された後の画像では−64の明度値誤差が生じる。これは、画像の明度の総和が64だけ減少したことを意味する。誤差拡散法では、生じた−64の明度値誤差を相殺するように、事前に決定された重みに従って、周囲の画素の明度値を変更する。このような操作をすべての画素について繰り返すことにより二値化が行なわれる。
重みの付け方については、画像処理の分野においていくつか好ましいとされるマトリクスが知られている。たとえば、Floyd & Steinberg;Jarvis,Judis and Nink;Stucki;Burks;Stevenson & Arche;Sierra 3 Line;Sierra 2 Line;Sierra Filter Liteなどが好ましい重み付けを有するマトリクスとして知られている。
図22は、上記例示されたマトリクスにおける変換誤差の拡散の重み付けを説明するための図である。マトリクスの一例として、Floyd & Steinbergを例に挙げて説明すると、ピクセルAは、変換対象のピクセルである。上記の例のように、ピクセルAの変換(明度値64から0への変換)により、変換された後の画像に−64の明度値誤差が生じた場合、この明度値誤差を相殺するように、隣接する4つのピクセルの明度値を、7:1:5:3の重み付けで変更する。すなわち、隣接する4つのピクセルの明度値をそれぞれ、(7/16)×64、(1/16)×64、(5/16)×64、(3/16)×64だけ増加させる。なお、斜線のハッチングが付されたピクセルBは、二値化処理が完了したピクセルを示している。また、「0」と記載されたピクセルは、誤差を拡散させない重みがゼロのピクセルである。
バンドパスフィルタの適用により得られた第2のパターンに対して、図22に示されるマトリクスに従う誤差拡散法を適用して得られた第3のパターンの例を図23〜30に示す。図23〜30に示される第3のパターンはいずれも、8ビットグレースケールイメージとして得られた図31に示される第2のパターンから作成したものであり、1ビットの白黒画像データからなる。より具体的に説明すると、図23〜30に示される第3のパターンは、12800dpiの解像度で1.024mm四方の8ビットのビットマップイメージをKnuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズムにより生成された0から1の値を有する擬似乱数列を用いて作成した第1のパターンに対し、空間周波数範囲下限値Bおよび空間周波数範囲上限値Tが下記式(I)および(II):
B=1/(MainPeriod*(1+BandWidth/100)) (I)
T=1/(MainPeriod*(1−BandWidth/100)) (II)
であり、透過帯域ピークの形状が矩形型であるバンドパスフィルタを適用することによって得られた図31に示される第2のパターンを、各種マトリクスを用いた誤差拡散法によって二値化したものである。MainPeriod=12(μm)、BandWidth=20(%)とした。なお、図23〜30は、画像の特徴を把握しやすくするため、生成された第3のパターンから一部を拡大して示したものである。
図32は、図23〜30に示される、各種マトリクスに従う誤差拡散法により二値化された第3のパターンの空間周波数分布と、閾値法により二値化されたパターンの空間周波数分布とを比較する図である。図32に示されるように、閾値法により二値化を行なう場合、得られるパターンは、低空間周波数領域において比較的高い振幅強度を示す。一方、誤差拡散法を適用した場合、いずれのマトリクスを採用した場合においても、低空間周波数成分をより低減させることができる。したがって、誤差拡散法の適用により、ギラツキがより効果的に抑制された防眩処理および防眩フィルムを実現することが可能となる。なお、図32における閾値法により二値化されたパターンは、図31に示される第2のパターンに対し、中間値127を閾値として、これよりも大きい値を白、これ以下の値を黒とする二値化により作成したものである。
このように、図22に示されるような一般に知られている誤差拡散マトリクスに従う誤差拡散法の適用により、良好な空間周波数特性を有する第3のパターンを得ることができる。しかし、これらの誤差拡散マトリクスに従って二値化された第3のパターンを作成する方法は、同色のピクセルが一定数以上の集団として存在していない孤立したピクセル(以下、「孤立ドット」という。この孤立ドットは、上記した「孤立した小ドット」と概念的に類似するが、後述するようにその定義が異なる。)を多く発生させる傾向にある。ここで、「孤立ドット」とは、二値化されたパターンに存在する、16個以下の連続した同色のピクセル(画素)からなる塊(島)をいう。第3のパターンが多くの孤立ドットを有する場合、1辺が4ピクセル以下の塊(島)が存在し得ることとなり、たとえばCTP法やウェットエッチングを含むプロセスまたは旋盤加工等の当該パターンを用いた凹凸加工に極めて高い精度が要求され、加工再現性が妨げられる場合がある。
図33は、一般に知られている誤差拡散マトリクスに従う誤差拡散法の適用により第3のパターンを作成したときに発生する孤立ドットの発生個数を、閾値法により作成した場合と比較する図である。図示された数値は、閾値法により二値化されたパターンを作成したときに発生する孤立ドットの発生個数に対する比を示している。図33に示されるように、孤立ドットの発生頻度が最も少ないStevenson & Archeのマトリクスでも、発生個数は閾値法の27倍であり、Floyd & Steinbergのマトリクスを用いた場合には155倍にも達する。
本発明者らは鋭意検討した結果、孤立ドットの発生個数を抑制するためには、誤差拡散マトリクスとして、短距離の誤差拡散を含まないマトリクスを用いることが好ましいことを見出した。
図34〜42は、それぞれ拡散距離が1、2、3、4、5、6、3+4、4+5および3+4+5である誤差拡散マトリクスの例を示す図である。これらの図は、図22と同様、変換誤差の拡散の重み付けを示したものである。拡散距離とは、変換対象のピクセル(ピクセルA)の白または黒への変換によって生じた明度値誤差を相殺するために、明度値を変更するピクセルと変換対象のピクセルとの距離をいい、「拡散距離1」とは、明度値を変更するピクセルと変換対象のピクセルとが隣接していることを意味する(図34参照)。「拡散距離2」とは、変換対象のピクセルから数えて2つ目のピクセルを、明度値を変更するピクセルとする(明度値を変更するピクセルと変換対象のピクセルとの間に1つのピクセルが介在する)ことを意味する(図35参照)。3以上の拡散距離についても同様である。また、図40の「拡散距離3+4のマトリクス」とは、図36に示される「拡散距離3のマトリクス」と図37に示される「拡散距離4のマトリクス」の合成である。図41および42についても同様である。
また、図34〜42に示されるマトリクスに従う誤差拡散法の適用により得られる第3のパターンの例をそれぞれ図43〜51に示す。用いた第2のパターンは図31に示されるパターンである。なお、図43〜51は、画像の特徴を把握しやすくするため、生成された第3のパターンから一部を拡大して示したものである。さらに、図52は、図34〜42に示される誤差拡散マトリクスに従う誤差拡散法の適用により第3のパターンを作成したときに発生する孤立ドットの発生個数を、閾値法により作成した場合と比較する図である。図示された数値は、閾値法により二値化されたパターンを作成したときに発生する孤立ドットの発生個数に対する比を示している。
図52に示されるように、誤差拡散距離が1の場合には、閾値法と比較して247倍に達する個数の孤立ドットが発生するが、誤差拡散距離を大きく設定するに従い、発生個数が減少することが分かる。特に誤差拡散距離が1を超える場合、急激に孤立ドットの数が減少することがわかる。図52に示される結果から、孤立ドットの発生をより効果的に抑制するためには、誤差拡散距離は、1を超える(すなわち、1ピクセルを超える範囲に変換誤差を拡散させる、以下同様)ことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また、誤差拡散距離の上限は特に制限されないが、たとえば6以下である。なかでも、3以上の誤差拡散距離を持つマトリクスを用いて作成したパターンは、加工範囲の幅が広く、良好な加工適性が期待される。
図53は、図34〜42に示される誤差拡散マトリクスに従う誤差拡散法により二値化された図43〜51の第3のパターンの空間周波数分布と、閾値法により二値化されたパターンの空間周波数分布とを比較する図である。この閾値法により二値化されたパターンは、図32のものと同じである。図53から、いずれの誤差拡散マトリクスを用いた場合でも、閾値法と比べ、低空間周波数成分の振幅を低減できることがわかる。
(第4のパターンの作成)
閾値法もしくはディザリング法によって2段階に離散化された情報に変換された(二値化された)パターンは、孤立ドットを多く含む場合がある。このような場合、第3のパターン等の二値化されたパターンに対して、孤立ドットを減少させる操作をさらに施し、第4のパターンを作成してもよい。この場合、得られる第4のパターンを用いて、透明基材上に凹凸形状を加工する。孤立ドットを減少させる操作を施すことにより、より加工再現性良く透明基材上に凹凸形状を付与することができる。第4のパターンの作成に用いる二値化されたパターンは、閾値法によって二値化されたものであってもよいし、誤差拡散法等のディザリング法によって二値化されたものであってもよい。ただし、上述のように、上記式(1)を満たす、好ましくは上記式(2)を満たすバンドパスフィルタの適用により第2のパターンを作成する場合には、このような孤立ドットの低減処理は必ずしも必要ではない。
上記孤立ドットを減少させる操作としては、モンテカルロ法により、第3のパターン等の二値化されたパターンに存在する孤立ドットである黒または白のピクセルを同色の塊(島)まで移動させる手法を好ましく用いることができる。モンテカルロ法は、乱数に基づいてシミュレーションを行なう手法の総称である。孤立ドットの処理方法としては、単純に孤立しているドットを削除する方法が最も単純である。しかし、画像処理においてこのような単純な方法を用いると局所的に平均的な明度の値が変化する場合があり、これは、低空間周波数成分の増大に繋がる。モンテカルロ法は、局所的にも平均的な明度に影響を与えることなく、孤立ドットを処理する有効な手法である。以下、モンテカルロ法による孤立ドットの処理方法の具体例を、図54を参照して説明する。
まず、対象画素(ピクセル)が「孤立ドット」であるか否かを判定する。ここで説明する具体例における「孤立ドット」とは、上記した定義と異なり、周囲の最近接8画素のうち、対象画素と同じ段階にある(同色の)画素の個数が2個以下のものと定義される。たとえば、対象画素が黒である場合、最近接8画素のうち、黒画素の個数が2個以下であれば、孤立ドットと判定される。白画素についても同様である。次に、孤立ドットと判定された画素を、空いている最近接画素のうち、乱数で選択された画素に移動させる。
たとえば、図54(a)においては、対象画素が黒である場合、最近接8画素のうち1画素のみが黒であるため孤立ドットと判定され、対象画素は、空いている最近接7画素のうち、乱数で選択された画素に移動される。また、図54(b)においては、対象画素が黒である場合、最近接8画素のうち2画素が黒であるため孤立ドットと判定され、対象画素は、空いている最近接6画素のうち、乱数で選択された画素に移動される。図54(c)においては、対象画素が黒である場合、最近接8画素のうち3画素が黒であるため、孤立ドットと判定されず、移動させない。
以上のようなモンテカルロ法による操作を繰り返し行なうことにより、孤立ドットを効果的に減少させることができる。モンテカルロ法による操作を、たとえば10〜60回程度繰り返すと、バンドパスフィルタを透過した空間周波数成分の空間周波数の値が、周期長に換算して3ピクセルから6ピクセルの間の時、孤立ドットがほとんど検出されない、良好な加工適性が期待されるパターンを得ることができる。
図55(a)〜(f)は、モンテカルロ法適用回数による第4のパターンの変化を示す図である。図55(a)〜(f)に示されるパターンは、図47に示される第3のパターン(拡散距離5)に対して、モンテカルロ法をそれぞれ、0、4、8、20、40および60回適用して孤立ドットを処理して得られたものである。また、図56は、モンテカルロ法適用回数と孤立ドットの発生個数との関係を示す図である。図56における孤立ドット発生個数比は、図33および図52と同様、図31に示される第2のパターンから閾値法により二値化されたパターンを作成したときに発生する孤立ドットの発生個数に対する比である。このように、繰り返しモンテカルロ法を適用することにより、孤立ドットの低減が可能であり、より優れた加工適性が期待される第4のパターンを作成することができる。
上記した第4のパターンの作成例は、第2のパターンとして、第1のパターンに対しバンドパスフィルタを適用して作成したものを用いたものであるが、ハイパスフィルタを適用して作成した第2のパターンを用いる場合であっても、バンドパスフィルタの場合と同様に、二値化および孤立ドットの低減処理により、低空間周波数成分が低減され、加工適性に優れる第4のパターンを得ることができる。
以上に示される透明基材上に凹凸形状を加工するために用いられるパターンの作成方法のうち、第2のパターンに対してディザリング法(なかでも誤差拡散法)を適用して第3のパターンを作成し、これにモンテカルロ法を適用して第4のパターンを作成する方法は、第2のパターンを作成する際、上記式(1)を満たすバンドパスフィルタを適用しない場合においても、低空間周波数成分および孤立ドットが低減されたパターンを得ることが可能であることから、好ましい実施形態の1つである。
(パターンを用いた凹凸形状の加工)
本工程では、上記のようにして得られたパターンのいずれか(第2のパターンあるいはこれを閾値法により2段階に離散化された情報に変換された(二値化された)パターン、第3のパターンまたは第4のパターン)を用いて、透明基材上に凹凸形状を加工し、透明基材に防眩性を付与する。透明基材上に凹凸形状を加工する際に用いる加工装置は、従来公知の装置であってよく、たとえば、レーザー描画装置、レーザー加工装置、精密旋盤などを用いることができる。レーザー加工装置としては、たとえば、レーザーマーカ、レーザー彫刻機、レーザー加工機などとして販売されている各種加工装置を用いることができる。
透明基材上への凹凸形状の加工は、上記したパターンが有する離散化された情報に基づいて加工を行なう加工装置を用いて行なわれることが好ましい。離散化された情報に基づいて加工を行なう加工装置としては、具体的には、精密旋盤、自動彫刻装置、レーザー加工装置、レーザー描画装置などの各種NC加工装置を挙げることができる。加工装置として、たとえばレーザー描画装置等を用いる場合、離散化された情報は、好ましくは2段階に離散化された情報である。
また、凹凸加工に用いるパターンが、離散化された情報の二次元配列からなる場合、当該二次元配列に格納される値に基づいて行なう凹凸の加工においては、加工装置の特性に応じてこれらの値を変換し、加工に用いることができる。たとえば、レーザー加工機やレーザー彫刻機の場合には、レーザー照射回数に読み替えてもよい。精密旋盤のようなバイトの深さを制御する加工装置の場合には、バイト押し込み量に対応する量に変換してもよい。
透明基材としては、光学的に透明な材料からなる部材である限り特に制限されず、たとえば、紫外線硬化型樹脂等の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂材料からなる部材のほか、ガラス基板などであってもよい。たとえば、画像表示装置の最表面に備えられたガラス基板等の透明基材の表面に直接、本発明の防眩処理を施すことにより、画像表示装置に防眩処理を施すことが可能であり、これにより、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけおよびギラツキが効果的に抑制された画像表示装置を得ることができる。また、透明基材として樹脂フィルムを用い、本発明の方法により、該樹脂フィルム上に凹凸形状を加工することにより防眩フィルムを得ることができる。本発明の方法により得られる防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置することにより、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけおよびギラツキが効果的に抑制された画像表示装置を得ることができる。
本発明の透明基材の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法においては、透明基材上に微細凹凸表面形状をより精度良く、かつより加工再現性よく製造することができ、生産性にも優れることから、上記パターンのいずれか(第2のパターンあるいはこれを閾値法により2段階に離散化された情報に変換された(二値化された)パターン、第3のパターンまたは第4のパターン)を用いて、凹凸面(微細凹凸表面形状)を有する金型を作製し、製造された金型の凹凸面を透明基材上に転写する工程を含むことが好ましい。凹凸面が転写された透明基材を金型から剥がすことにより、微細凹凸表面形状が形成された透明基材(防眩フィルムを含む)を得ることができる。
金型形状の透明基材への転写は、エンボス法により行なうことが好ましい。エンボス法としては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
UVエンボス法は、透明基材の表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明基材上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明基材側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明基材を剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
UVエンボス法を用いる場合、透明基材としては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
またUVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されず、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂からなる透明基材を加熱状態で金型に押し付け、金型の表面凹凸形状を透明支持体に転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明基材としては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための透明基材としても好適に用いることができるものである。
<金型の製造方法>
以下では、本発明の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法に好適に用いることができる金型の製造方法について説明する。図57は、本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図57には、各工程での金型の断面を模式的に示している。本発明の金型の製造方法は、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程を基本的に含む。以下、図57を参照しながら、本発明の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
〔1〕第1めっき工程
本発明の金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。すなわち、背景技術として上述したように、鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、あるいはクロムめっき表面にサンドブラスト法やビーズショット法などで凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合には、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、金型の表面の凹凸形状が制御しにくくなる。これに対して、まず、基材表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施しておくことにより、このような不都合をなくすことができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、めっき層厚みの上限は500μm程度までとすることが好ましい。
本発明の金型の製造方法において、金型用基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムを用いることがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
また、金型用基材の形状は、当該分野において従来採用されている適宜の形状であってよく、たとえば、平板状のほか、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩処理を連続的に行なうことができ、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩処理を施したり、防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図57(a)には、平板状の金型用基材7が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面8を有するようにされた状態を模式的に示している。
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性がある。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した金型用基材7の研磨された表面8に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図57(b)には、金型用基材7の研磨された表面8に感光性樹脂膜9が形成された状態を模式的に示している。
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
これらの感光性樹脂を金型用基材7の研磨された表面8に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
〔4〕露光工程
続く露光工程では、上述した第1のパターンに、ハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタを適用して作成された第2のパターンあるいはこれを閾値法により2段階に離散化された情報に変換された(二値化された)パターン、第3のパターンまたは第4のパターンを上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜9上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザー(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザー(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザー(波長:193nm)、F2エキシマーレーザー(波長:157nm)等を用いることができる。
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上記パターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、上記パターンを感光性樹脂膜上に精度良く露光するために、コンピュータ上で作成したパターンである画像データまたは離散化された情報の二次元配列に基づいて、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザー光によって、感光性樹脂膜上にパターンを描画することが好ましい。このようなレーザー描画を行なうに際しては印刷版作成用のレーザー描画装置を使用することができる。このようなレーザー描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
図57(c)には、感光性樹脂膜9にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスクとなる。
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域11は現像液によって溶解され、露光された領域10のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域10のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域11が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液;および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
図57(d)には、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図57(c)において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスク12となる。図57(e)には、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図57(c)において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスク12となる。
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図58は、本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図58(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所13の金型用基材7がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク12の下部の金型用基材7は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所13からのエッチングが進行する。よって、マスク12とマスクの無い箇所13との境界付近では、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされる。このようなマスク12とマスクの無い箇所13との境界付近において、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされることを、以下ではサイドエッチングと呼ぶ。図59に、サイドエッチングの進行を模式的に示した。図59の点線14は、エッチングの進行とともに変化する金型用基材の表面を段階に示している。
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞がある。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができて、pH、温度、濃度および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
図58(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク12として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク12を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状15が金型用基材表面に形成されている。
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面(第1の表面凹凸形状15)にクロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状を鈍らせる。図58(c)には、上述したように第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15にクロムめっき層16を形成することにより、第1の表面凹凸形状15よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面17)が形成されている状態が示されている。
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行なわれ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
上述した特開2002−189106号公報、特開2004−45472号公報、特開2004−90187号公報などには、クロムめっきを採用することが開示されているが、金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生することが多く、その結果、当該金型を用いて得られる、表面凹凸形状を有する透明基材(防眩フィルムを含む)の光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態の金型は、透明基材の防眩処理および防眩フィルムの製造に適していない。何故ならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行なわれているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じ易いこのような不都合を解消している。
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型を用いた防眩処理および該金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、透明樹脂フィルム等の透明基材上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
また、上述した特開2004−90187号公報などに開示されているようなめっき後の表面研磨も、やはり本発明では好ましくない。すなわち、第2のめっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま透明基材上に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
このように本発明の金型の製造方法では、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材上に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
また、本発明の金型の製造方法においては、上述した〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と〔8〕第2めっき工程との間に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面をエッチング処理によって鈍らせる第2エッチング工程を含むことが好ましい。第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状15を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルム等の防眩処理が施された透明基材の光学特性が好ましい方向へと変化する。図60には、第2エッチング処理によって、金型用基材7の第1の表面凹凸形状15が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状18が形成された状態が示されている。
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルム等の透明基材上に転写して得られる防眩処理が施された透明基材(防眩フィルムなど)の光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内であることが好ましく、4〜20μmの範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
本発明の防眩処理方法および防眩フィルムの製造方法により得られる防眩フィルム等の防眩処理が施された透明基材は、その微細凹凸表面形状が精度よく制御されて形成されるため、十分な防眩性を発現し、かつ、白ちゃけが発生せず、画像表示装置の表面に配置した際にもギラツキが発生せず、高いコントラストを示すものとなる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜3および比較例1〜2>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面にポジ型の感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
ついで、以下に示す5種類のパターンI〜Vを同時に上記感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した。レーザー光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なった。
(1)パターンI(実施例1):図61に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンである。当該単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図61はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。図61に示される単位パターンは、平均ドット径が16μmであるドットを2000個/mm2の密度でランダムに分布させた、図62に一部を示す第1のパターンに対し、空間周波数範囲下限値Bが0.040μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tが0.070μm-1であって〔したがって、2×(T−B)/(T+B)=0.55である〕、透過帯域ピークが、低空間周波数側の傾斜がより急峻である非対称形状を有するバンドパスフィルタを1回適用し、ついで、得られた第2のパターンを閾値法により二値化することによって得られたものである。得られた単位パターンの空間周波数範囲下限値Bは0.047μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tは0.067μm-1であった。
(2)パターンII(実施例2):図63に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンである。当該単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図63はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。図63に示される単位パターンは、図62に一部を示す第1のパターンに対し、上記パターンIで用いたのと同じバンドパスフィルタを1回適用し、ついで、得られた第2のパターンを閾値法により二値化した後、さらに同じバンドパスフィルタを9回繰り返し適用することによって得られたものである。得られた単位パターンの空間周波数範囲下限値Bは0.047μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tは0.067μm-1であった。
(3)パターンIII(実施例3):図64に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンである。当該単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図64はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。図64に示される単位パターンは、図62に一部を示す第1のパターンに対し、上記パターンIで用いたのと同じバンドパスフィルタを1回適用し、ついで、得られた第2のパターンを閾値法により二値化した後、さらに同じバンドパスフィルタを19回繰り返し適用することによって得られたものである。得られた単位パターンの空間周波数範囲下限値Bは0.047μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tは0.067μm-1であった。
(4)パターンIV(比較例1):図65に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンである。当該単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された20.944mm四方のパターンであり、図65はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。図65に示される単位パターンは、平均ドット径が16μmであるドットを1419個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した。
(5)パターンV(比較例2):図66に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンである。当該単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された20.944mm四方のパターンであり、図66はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。図66に示される単位パターンは、平均ドット径が16μmであるドットを1419個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した。
以上のような5種類のパターンI〜Vを同時に上記感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は3μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなり、パターンI〜Vに対応した5種類の凹凸表面形状を有する透明な防眩フィルムを作製した。
<実施例4>
図67に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンを、ロール1周にわたって感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像すること以外は、実施例1と同様にして金型を作製し、さらに実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。同じ操作を2回行ない、合計2つの防眩フィルムを得た。図67に示される単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図67はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。
図67に示される単位パターンは、第1のパターンに対し、バンドパスフィルタを適用して第2のパターンを作成した後、誤差拡散法の適用により二値化して第3のパターンを作成し、さらに、モンテカルロ法を60回繰り返し適用して作成された第4のパターンである。用いた第1のパターンは、12800dpiの解像度で32.768mm四方の8ビットのビットマップイメージであり、8ビットの深度を有する2次元配列PIXCEL[x,y]に対し、PIXCEL[x,y]=R[x+y×ImageWidth]×255を代入することによって作成した。ここで、x、yは画像におけるピクセルの座標であり、ImageWidthはx座標の画素幅である。配列R[]として、「.NET Framework2.0クラス ライブラリ」に含まれるRandomクラスNextDoubleメソッドにより生成される0.0と1.0の間の値をとるKnuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズムによる擬似乱数列を用いた。バンドパスフィルタとしては、空間周波数範囲下限値Bが0.045μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tが0.080μm-1であって〔したがって、2×(T−B)/(T+B)=0.56である〕、透過帯域ピークが、低空間周波数側の傾斜がより急峻である非対称形状を有するバンドパスフィルタを用いた。また、誤差拡散マトリクスとしては、図36に示される拡散距離が3である誤差拡散マトリクスと図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスとを0.4:0.6の割合で合成したもの(図36×0.4+図37×0.6)を用いた。図67に示される単位パターンの空間周波数範囲下限値Bは0.045μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tは0.086μm-1であった。
実施例1〜3で用いた単位パターンの空間周波数分布を図68に、比較例1〜2で用いた単位パターンの空間周波数分布を図69に、実施例4で用いた単位パターンの空間周波数分布を図70に示す。
<実施例5>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面にポジ型の感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
ついで、図71に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像した。レーザー光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なった。図71に示される単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図71はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。
図71に示される単位パターンは、第1のパターンに対し、バンドパスフィルタを適用して第2のパターンを作成した後、誤差拡散法の適用により二値化して第3のパターンを作成し、さらに、モンテカルロ法を60回繰り返し適用して作成された第4のパターンである。用いた第1のパターンは、12800dpiの解像度で32.768mm四方の8ビットのビットマップイメージであり、8ビットの深度を有する2次元配列PIXCEL[x,y]に対し、PIXCEL[x,y]=R[x+y×ImageWidth]×255を代入することによって作成した。ここで、x、yは画像におけるピクセルの座標であり、ImageWidthはx座標の画素幅である。配列R[]として、「.NET Framework2.0クラス ライブラリ」に含まれるRandomクラスNextDoubleメソッドにより生成される0.0と1.0の間の値をとるKnuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズムによる擬似乱数列を用いた。バンドパスフィルタとしては、空間周波数範囲下限値Bが0.055μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tが0.100μm-1であって〔したがって、2×(T−B)/(T+B)=0.58である〕、透過帯域ピークの形状がガウス関数型であるバンドパスフィルタを用いた。また、誤差拡散マトリクスとしては、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成したもの(図37×0.9+図38×0.1)を用いた。図71に示される単位パターンの空間周波数範囲下限値Bは約0.055μm-1であり、空間周波数範囲上限値Tは約0.100μm-1であった。図71に示される単位パターンの空間周波数分布を図72に示す。
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は5μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は8μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムを作製した。
実施例1〜5および比較例1〜2で得られた防眩フィルムについて、下記に示す評価試験を行なった。
(1)ギラツキ評価
ギラツキは、以下の方法で評価した。まず、図73(a)に平面図で示すようなユニットセル60のパターンを約40mm×約25mmの範囲に規則的に配列させたフォトマスクを用意した。ユニットセル60においては、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン61が形成され、そのクロム遮光パターン61の形成されていない部分が開口部62となっている。このようなフォトマスクにユニットセルの寸法に応じて「解像度呼び」〔単位:ppi(pixel per inch)〕を与えた。たとえば、解像度呼び90ppiのフォトマスクのユニットセル縦×ユニットセル横は282μm×94μm、開口部縦×開口部横は272μm×84μmである。このようなユニットセルを表1の数値に基づいて製作し、解像度呼び90〜180ppiの範囲で、計10パターンのフォトマスクを用意した。
次に、図73(b)に示すように、フォトマスク63のクロム遮光パターン61を上にしてライトボックス65(ライトボックス内にはライト66が設置されている)に置き、1.1mm厚のガラス板67に20μm厚みの粘着剤で防眩フィルム70を貼合したサンプルをフォトマスク63上に置き、サンプルから約30cm離れた場所(目視観察場所69)から目視観察することにより、ギラツキ発生の有無を官能評価した。この評価は、用意した、異なる解像度呼びを有するフォトマスクそれぞれについて行なった。
上記評価においては、防眩フィルムの特性に依存して、ある解像度呼び以上のフォトマスクにおいてギラツキが観察されるようになる。このときの解像度呼びからギラツキを評価した。具体的に例を挙げて評価数値の判別方法を述べる。
まず、官能評価の際、解像度呼び90ppiのフォトマスクにおいて強いギラツキが観察され、解像度呼び80ppiのフォトマスクにおいてギラツキが観察されなかったとき、ギラツキの評価として80ppiを与える。しかし、防眩フィルムの特性に依存して解像度呼び90ppiのフォトマスクにおいて弱いギラツキしか観察されない状態も存在する。このような状態を前記状態と区別するため、このように弱いギラツキしか生じていない場合は、ギラツキ評価として、評価に用いたフォトマスクの解像度呼び80ppiと90ppiの中間値である85ppiを与え、これを区別した。
(2)透過特性の評価
JIS K7136に準拠したヘイズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製 HM−150)を用いて、防眩フィルムのヘイズを測定した。
上記評価試験の結果を、単位パターンの作成方法および金型の作製条件とともに表2に示す。なお、実施例4については、2つの防眩フィルムの評価結果をそれぞれ示した。
フォトマスクによるギラツキ評価試験により、バンドパスフィルタの適用により低空間周波数成分を低減させたパターンを用いて作製した実施例1〜3の防眩フィルムはいずれも、ドットをランダムに分布させた第1のパターンを用いて作製した比較例1〜2の防眩フィルムに比べ、ギラツキが生じない解像度の上限がより高い水準となり、良好な光学特性を示すことが確認された。また、二値化方法として誤差拡散法を適用して第4のパターンを用いて作製した実施例4の2つの防眩フィルムおよび実施例5の防眩フィルムはいずれも、閾値法を用いた実施例1〜3の防眩フィルムに比べて、さらに高い解像度のフォトマスクでもギラツキが観察されず、より優れた光学特性を示した。
<実施例6>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意する。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定する。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面にポジ型の感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する。
ついで、図74に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザー光によって露光し、現像する。レーザー光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なう。図74に示される単位パターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図74はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。
図74に示される単位パターンは、第1のパターンに対し、ハイパスフィルタを適用して第2のパターンを作成した後、誤差拡散法の適用により二値化して第3のパターンを作成し、さらに、モンテカルロ法を60回繰り返し適用して作成された第4のパターンである。用いた第1のパターンは、平均ドット径が8μmであるドットを10000個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した。この際、できるだけ均一にドットが分布したものとするため、設定したドット密度に対応する三角格子を設定し、その格子点から、ドットの中心座標XおよびYのそれぞれを、設定された三角格子の格子に対してシフトさせることによりパターンを生成した。なお、シフト後の座標の決定には、下記に示すC#(Microsoft社により開発されたプログラミング言語であり、言語仕様は「JIS X 3015プログラム言語C#」等により規定されている)によるプログラムコードを用いた。この関数に、Averageとしてシフトさせる格子点の座標値(XまたはY)およびDeviationに対して0.3×15μmを与えることで、ドット位置をランダムにシフトさせた。この時、擬似乱数(C#プログラムコードにおける「RandomFunction()」)は広島大学のグループにより実装されたSIMD oriented Fast Mersenne Twisterプログラム、SFMT ver1.3.3に対し、種として数値607を与えることにより得た。
(実施例6で用いたC#によるプログラムコード)
//cx,cy:新たに描画するドット中心のX座標・Y座標を示す。
//px,py :設定された三角格子点のX座標・Y座標を示す。
//pD:0.3
//CoreSize:ドットの直径
cX = NormalRandom(px, pD * CoreSize);
cY = NormalRandom(py, pD * CoreSize);
//乱数の正規化関数
// RandomFunction():乱数を返す関数。
// RandomFunctionValueMax():乱数が取る値の最大値を返す関数。
// Math :.NET Framework Mathクラスライブラリ
public double NormalRandom(double Average,double Deviation)
{
double buff = 0;
buff = Deviation*Math.Sqrt(-2 * Math.Log(((double)RandomFunction() / (do uble)RandomFunctionValueMax()))) * Math.Sin(2 * Math.PI * ((double)Rando mFunction() / (double)RandomFunctionValueMax()))+Average;
if(buff<0){buff=0;};
return buff;
}
ハイパスフィルタとしては、空間周波数範囲下限値B’が0.067μm-1であるハイパスフィルタを用いた。また、誤差拡散マトリクスとしては、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成したもの(図37×0.9+図38×0.1)を用いた。図74に示される単位パターンの空間周波数範囲下限値B’は約0.050μm-1であった。
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なう。その際のエッチング量は7μmとなるように設定する。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なう。その際のエッチング量は18μmとなるように設定する。その後、クロムめっき加工を行ない、金型を作製する。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定する。
光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製する。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させる。乾燥後のフィルムを、先に得られる金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させる。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させる。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムを作製する。
<実施例7>
閾値法を用いて二値化したこと以外は実施例6と同様にして、図75に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンを作成した。ついで、このパターンを用いること以外は、実施例6と同様にして金型を作製し、防眩フィルムを得る。
図76は、図74に示されるパターンの空間周波数分布と、図75に示されるパターンの空間周波数分布とを比較する図である。図76より、誤差拡散法を適用した図74のパターンにおいて、低空間周波数成分がより低減されていることがわかる。
<実施例8>
図77に一部を示すパターンを繰り返し並べたパターンを用いること以外は、実施例6と同様にして金型を作製し、防眩フィルムを得る。
図77に示される第4のパターンは、12800dpiの解像度で生成された32.768mm四方のパターンであり、図77はそのうち1.024mm四方を切り出したものである。この第4のパターンは、第1のパターンに対し、空間周波数範囲下限値Bおよび空間周波数範囲上限値Tがそれぞれ上記式(I)および(II)〔MainPeriod=12(μm)、BandWidth=20(%)とした。〕で表され、透過帯域ピークの形状がガウス型であるバンドパスフィルタを適用することによって得られた第2のパターンを、誤差拡散距離が4である図37に示される誤差拡散マトリクスに従う誤差拡散法の適用により二値化して第3のパターンを作成し、さらに、モンテカルロ法を60回繰り返し適用して作成したものである。上記の第1のパターンは、12800dpiの解像度で32.768mm四方の8ビットのビットマップイメージであり、8ビットの深度を有する2次元配列PIXCEL[x,y]に対し、PIXCEL[x,y]=R[x+y×ImageWidth]×255を代入することによって作成した。ここで、x、yは画像におけるピクセルの座標であり、ImageWidthはx座標の画素幅である。配列R[]として、「.NET Framework2.0クラス ライブラリ」に含まれるRandomクラスNextDoubleメソッドにより生成される0.0と1.0の間の値をとるKnuthの乱数ジェネレータ減算アルゴリズムによる擬似乱数列を用いた。
<実施例9>
閾値法を用いて二値化したこと以外は実施例8と同様にして、図78に一部を示す単位パターンを繰り返し並べたパターンを作成した。ついで、このパターンを用いること以外は、実施例8と同様にして金型を作製し、防眩フィルムを得る。
図79は、図77に示されるパターンの空間周波数分布と、図78に示されるパターンの空間周波数分布とを比較する図である。図79より、誤差拡散法を適用した図77のパターンにおいて、低空間周波数成分がより低減されていることがわかる。
本発明の方法によって作製される防眩フィルム等の防眩処理が施された透明基材は、低空間周波数成分が少ないパターンを反映した微細凹凸表面形状を有しているため、ギラツキが発生せず、十分な防眩性を示し、白ちゃけも発生しないものとなる。また、ヘイズも低いため、画像表示装置に配置した際にもコントラストの低下を引き起こすことが無い。さらに、レジストワークによる再現が難しい孤立したドットが少ないため、エッチング処理も好適に行なうことができる。
<参考例:ハイパスフィルタの適用によるパターンの作成および評価>
以下に示す方法により、パターン1〜15を作成した。
(1)パターン1:平均ドット径が24μmであるドットを1111個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した、図80に一部を示す第1のパターンAに対し、空間周波数範囲下限値B’が約0.07μm-1であるハイパスフィルタを適用して第2のパターンを作成した後、127を閾値とした閾値法により二値化してパターン1を得た。図81は、パターン1を一部拡大して示す図である。なお、上記第1のパターンの作成にあたっては、実施例6で用いた第1のパターンと同じ方法を採用してドット分布の均一化を図った。
(2)パターン2:パターン1の作成に用いた第2のパターンに、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成した誤差拡散マトリクス(図37×0.9+図38×0.1)を用いた誤差拡散法を適用して第3のパターンであるパターン2を得た。図82は、パターン2を一部拡大して示す図である。
(3)パターン3:パターン2にモンテカルロ法を60回繰り返し適用して第4のパターンであるパターン3を得た。図83は、パターン3を一部拡大して示す図である。
(4)パターン4:平均ドット径が20μmであるドットを1600個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した、図84に一部を示す第1のパターンBを用いたこと以外は、パターン1と同様にしてパターン4を得た。図85は、パターン4を一部拡大して示す図である。
(5)パターン5:パターン4の作成に用いた第2のパターンに、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成した誤差拡散マトリクス(図37×0.9+図38×0.1)を用いた誤差拡散法を適用して第3のパターンであるパターン5を得た。図86は、パターン5を一部拡大して示す図である。
(6)パターン6:パターン5にモンテカルロ法を60回繰り返し適用して第4のパターンであるパターン6を得た。図87は、パターン6を一部拡大して示す図である。
(7)パターン7:平均ドット径が16μmであるドットを2500個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した、図88に一部を示す第1のパターンCを用いたこと以外は、パターン1と同様にしてパターン7を得た。図89は、パターン7を一部拡大して示す図である。
(8)パターン8:パターン7の作成に用いた第2のパターンに、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成した誤差拡散マトリクス(図37×0.9+図38×0.1)を用いた誤差拡散法を適用して第3のパターンであるパターン8を得た。図90は、パターン8を一部拡大して示す図である。
(9)パターン9:パターン8にモンテカルロ法を60回繰り返し適用して第4のパターンであるパターン9を得た。図91は、パターン9を一部拡大して示す図である。
(10)パターン10:平均ドット径が12μmであるドットを4444個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した、図92に一部を示す第1のパターンDを用いたこと以外は、パターン1と同様にしてパターン10を得た。図93は、パターン10を一部拡大して示す図である。
(11)パターン11:パターン10の作成に用いた第2のパターンに、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成した誤差拡散マトリクス(図37×0.9+図38×0.1)を用いた誤差拡散法を適用して第3のパターンであるパターン11を得た。図94は、パターン11を一部拡大して示す図である。
(12)パターン12:パターン11にモンテカルロ法を60回繰り返し適用して第4のパターンであるパターン12を得た。図95は、パターン12を一部拡大して示す図である。
(13)パターン13:平均ドット径が8μmであるドットを10000個/mm2の密度でランダムに分布させることにより作成した、図96に一部を示す第1のパターンEを用いたこと以外は、パターン1と同様にしてパターン13を得た。図97は、パターン13を一部拡大して示す図である。
(14)パターン14:パターン13の作成に用いた第2のパターンに、図37に示される拡散距離が4である誤差拡散マトリクスと図38に示される拡散距離が5である誤差拡散マトリクスとを0.9:0.1の割合で合成した誤差拡散マトリクス(図37×0.9+図38×0.1)を用いた誤差拡散法を適用して第3のパターンであるパターン14を得た。図98は、パターン14を一部拡大して示す図である。
(15)パターン15:パターン14にモンテカルロ法を60回繰り返し適用して第4のパターンであるパターン15を得た。図99は、パターン15を一部拡大して示す図である。
第1のパターンA〜Eの空間周波数分布を図100に、パターン1〜15の空間周波数分布を図101〜105に示す。また、図106は、パターンの作製方法の違いによる低空間周波数成分の低減の程度をまとめたものである。図106に示されるように、平均ドット径が異なるいずれの第1パターンを用いる場合であっても、ハイパスフィルタの適用、さらには誤差拡散法、モンテカルロ法の適用により、低空間周波数成分が効果的に低減されることがわかる。特に、誤差拡散法を適用した第3のパターンおよびさらにモンテカルロ法を適用した第4のパターンで、低空間周波数成分の低減効果が顕著である。
ハイパスフィルタを用いる場合、バンドパスフィルタと異なり、抽出する空間周波数領域に上限値を設けないため、孤立ドットの発生も懸念されるが、上記パターン1〜15のように、用いる第1のパターンがドットをランダムに配置したパターンである場合、図107に示すように孤立ドットの多発は見られなかった。
一方、図108に示されるような明度分布をランダムに配置した第1のパターンを用いる場合、これにハイパスフィルタを適用し、閾値法により二値化したパターン、および、ハイパスフィルタを適用し、誤差拡散法により二値化したパターンでは孤立ドットが十分な程度まで低減されにくく、モンテカルロ法の適用により孤立ドットの低減処理を行なうことが好ましい。
図109は、図108に示される第1のパターンに対し、上記パターン1の作成と同様の方法でハイパスフィルタの適用および閾値法による二値化を行なって得られたパターンを一部拡大して示す図である。図110は、図108に示される第1のパターンに対し、上記パターン2の作成と同様の方法でハイパスフィルタの適用および誤差拡散法による二値化を行なって得られたパターンを一部拡大して示す図である。図111は、図108に示される第1のパターンに対し、上記パターン3の作成と同様の方法でハイパスフィルタの適用、誤差拡散法による二値化およびモンテカルロ法の適用を行なって得られたパターンを一部拡大して示す図である。図112は、図109〜111に示されるパターンの孤立ドット発生個数を示す図である。また、図113は、図108〜111に示されるパターンの空間周波数分布を比較する図である。図112および113に示されるように、第1のパターンが高空間周波数成分を多く含む場合であっても、ハイパスフィルタおよびモンテカルロ法の適用により、低空間周波数成分が十分に低減されているとともに、孤立ドットの発生が少ない良好なパターンが得られることがわかる。