以下に図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクター1の概略構成を示す図である。プロジェクター1は、本体部2及び投写ユニット3を有する。本体部2は、画像信号に応じた映像光を射出する。投写ユニット3は、本体部2からの映像光をスクリーンSCの被照射面へ向けて投写させる。
図2は、本体部2の概略構成を示す図である。光源10は、例えば、超高圧水銀ランプであって、R光、G光、B光を含む光を射出する。ここで、光源10は、超高圧水銀ランプ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。第1インテグレーターレンズ11及び第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子及び重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11のレンズ素子の像を液晶表示パネル18R、18G、18Bに形成する。このような構成により、光源10からの光が液晶表示パネル18R、18G、18Bの所望の領域(画像表示面)全体を、略均一な明るさで照明する。
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を液晶表示パネル18R、18G、18Bの照射面上で重畳させる。
第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16及びフィールドレンズ17Rを経て、空間光変調装置である液晶表示パネル18Rへ入射する。液晶表示パネル18Rは、R光を画像信号に応じて変調する。
第2ダイクロイックミラー21は、第1ダイクロイックミラー15からのG光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー21で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、空間光変調装置である液晶表示パネル18Gへ入射する。液晶表示パネル18Gは、G光を画像信号に応じて変調する。第2ダイクロイックミラー21を透過したB光は、リレーレンズ22、24、反射ミラー23、25、及びフィールドレンズ17Bを経て、空間光変調装置である液晶表示パネル18Bへ入射する。液晶表示パネル18Bは、B光を画像信号に応じて変調する。
色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム19は、各液晶表示パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して映像光とし、投写レンズ20へ進行させる。投写レンズ20は、本体部2から映像光を射出させる射出光学系として機能する。なお、空間光変調装置としては、透過型の液晶表示パネル18R、18G、18Bに代えて、反射型の液晶表示パネルを採用してもよい。また、空間光変調装置としては、反射型のデバイス(例えば、マイクロ・ミラー・デバイス等)を採用してもよい。
図3(A)は、本体部2単体によって映像光を投写した場合の投写距離について説明する模式図である。本体部2は、プロジェクター1から着脱可能とされている。プロジェクター1から取り外された単体の本体部2は、投写レンズ20から投写させた映像光により、被照射面に映像を映し出す。この場合、本体部2は、スクリーンSC側へ投写レンズ20を向けて設置される。本体部2は、距離Aから距離B(A<Bとする)の間において、例えば同じ画面サイズでフォーカスを合わせることが可能であるとする。
図3(B)は、本体部2に投写ユニット3を組み合わせて映像光を投写した場合の投写距離について説明する模式図である。プロジェクター1は、投写レンズ20から射出された映像光を投写ユニット3により投写させ、被照射面に映像を映し出す。この場合、本体部2は、スクリーンSCとは反対側の投写ユニット3へ投写レンズ20を向けて、プロジェクター1に取り付けられる。プロジェクター1は、距離Aより短い距離Cでの投写が可能となる。
図4は、投写ユニット3の断面構成と、投写ユニット3へ入射する前後における映像光の光線とを例示する図である。投写ユニット3は、光学要素として、第1レンズ31、第2レンズ32、及び広角化ミラー33を備える。第1レンズ31及び第2レンズ32は、投写レンズ20に対向する位置に配置されている。第1レンズ31及び第2レンズ32は、例えば球面レンズ等とすることができる。第1レンズ31及び第2レンズ32は、レンズ支持部34により、基板36上に支持されている。
広角化ミラー33は、第1レンズ31及び第2レンズ32からの映像光が入射する位置に設けられている。広角化ミラー33は、映像光を反射させて広角化させる凹の非球面ミラーである。広角化ミラー33は、ミラー支持部35により、基板36上に支持されている。第1レンズ31及び第2レンズ32と、広角化ミラー33とは、共通の基板36を介して位置決めされ、固定されている。
広角化ミラー33は、中心軸(光軸)に関して略回転対称な形状、例えば、すり鉢形状の一部を切り取った非球面形状を備える。広角化ミラー33の対称軸又は光軸は、投写レンズ20の光軸AXと一致している。第1レンズ31及び第2レンズ32の光軸も、投写レンズ20の光軸AXと一致している。このように、投写レンズ20、第1レンズ31、第2レンズ32、及び広角化ミラー33は、光軸AXを一致させて配置されている。
投写レンズ20、第1レンズ31、第2レンズ32、及び広角化ミラー33は、画像信号に応じて変調された光を、特定の側へシフトさせて進行させる。具体的には、像側において、光軸AXに対して特定の側である鉛直下側へ光をシフトさせて進行させる。クロスダイクロイックプリズム19の入射面に仮想的に形成される像面の中心法線(後で説明する表示面DSの画像表示面領域の中心法線と等しい)は、光軸AXに対して平行であって、光軸AXに対して特定の側とは反対側である鉛直上側にある。
なお、投写レンズ20及び投写ユニット3を説明する際に、物体側とは液晶表示パネル18G(18R,18B)側であり、像側とは像面IMG側又はスクリーンSC側である。
本体部2は、例えば、投写ユニット3とは完全に別体構造とし、プロジェクター1から着脱可能とされる。また、本体部2は、プロジェクター1内で移動させることとし、投写ユニット3と一体に構成されることとしてもよい。例えば中長距離投写の場合、投写レンズ20から投写される映像光が投写ユニット3により遮られない位置に本体部2を移動させる構成としてもよい。本体部2と投写ユニット3とを一体構成とする場合、プロジェクター1の持ち運び後における両者の位置調整を省略できるなどにより、使用者の利便性を向上させることが可能となる。もちろん、本体部2を固定し、投写レンズ20から投写される映像光が投写ユニット3により遮られない位置に投写ユニット3が移動できるようにしてもよい。
図5は、プロジェクター1の投写用光学系を構成する各光学要素を概念的に示す模式図である。投写レンズ20は、拡大投写用のマスターレンズMLを備えており、単独で図3(A)に示すような中長距離投写を可能にする。投写ユニット3は、投写レンズ20と組み合わせることで、投写レンズ20の背後上方に配置される不図示のスクリーンSCに対して超短距離の近接投写を可能にする。ここで、投写ユニット3は、屈折光学系30に相当しマスターレンズML側に配置される調整用レンズL1と、広角化ミラー33に相当しスクリーンSC側の非球面ミラーAMとに分けて考えることができる。
マスターレンズMLには、可動機構22が付属しており、投写ユニット3の着脱に際して、マスターレンズMLの光軸AX方向の位置を手動又は電動で相対的に変更することができるようになっている。投写ユニット3の前段の調整用レンズL1は、全体として正のパワーを有しており、マスターレンズML側又は光入射側に配置される負のパワーの第1レンズ31と、光射出側に配置される正のパワーの第2レンズ32とを備える。なお、調整用レンズL1は、マスターレンズMLによる像面に傾きを持たせる像面制御光学系である像面傾斜光学系Tとして機能するとともに、マスターレンズMLによる像面をなす中間像を縮小する縮小光学系Rとして機能する。非球面ミラーAMは、屈折光学系30の光射出側に形成された中間像を不図示のスクリーンSC上に再結像させる役割を有する。
以上において、投写ユニット3は、全体として比較的小さな正のパワーを有する調整用レンズL1と、比較的大きな正のパワーを有する非球面ミラーAMとを組み合わせたものであり、ケプラー型のアフォーカル系のように機能し、焦点距離を短縮化させ像の倍率を拡大させる。つまり、投写ユニット3は、マスターレンズML又は投写レンズ20に対するフロントコンバーター(この場合、広角化用のワイドコンバーター)になっている。ここで、フロントコンバーターとしての投写ユニット3をレンズのみで構成しようとすると色収差を抑えることが容易でなくなり、例えば130度以上の広角化を実現しようとする場合に色収差の発生が顕著となる。このため、投写ユニット3のうちパワーの大きな部分を非球面ミラーAMで構成して色収差の発生を抑えることとしている。このような非球面ミラーAMを用いる場合、反射により光を折り返すことになるので、光軸AX近傍の光線の干渉を回避させる必要がある。このため、物体としての表示面DSを光軸AXから外し、マスターレンズML、調整用レンズL1、及び非球面ミラーAMをシフト光学系とする。なお、表示面DSとは、図2に示す本体部2の液晶表示パネル18R、18G、18Bにおいて画像信号に応じた画像が形成される画像表示面に対応する。さらに、以上のようなシフト光学系では、投写ユニット3等を構成する各光学素子において光軸AXからはなれた周辺部が使用される傾向が高まり、スクリーンSCも光軸AXから大きく離れることになる。このため、投写ユニット3等を構成する1つ以上の光学素子(具体的には非球面ミラーAM)を非球面で形成することにより、光軸AXから大きく離れた位置での収差を大きく低減している。
図6は、マスターレンズML単独での中長距離投写に際しての像高と光線距離との関係を説明する図である。像高とは、光軸AXを基準とする鉛直方向についての像の高さとする。マスターレンズMLのみによる一般的な中長距離投写の場合、像高が最小である部分の倍率as0/apと、像高が最大である部分の倍率bs0/bpとは近い値となり、像面IMG0は光軸AXに略垂直(表示面DSに略平行)となる。
図7は、マスターレンズMLに投写ユニット3を追加した超短距離の近接投写の場合を説明する図である。超短距離の近接投写の場合、マスターレンズML等によって、調整用レンズL1と非球面ミラーAMとの間の設定された像面IMGb上に表示面DSの中間像IIが形成される。中間像IIをこのような位置に形成するためには、詳細は後に説明するが、まずマスターレンズMLを可動機構22によって光軸AX方向に沿って適宜移動させ、元の像面IMG0よりも非球面ミラーAMに近い位置に移動させた像面IMGaとする。さらに、投写ユニット3を配置することで、調整用レンズL1の像面傾斜光学系Tとしての機能により、マスターレンズMLのみによる像面IMGaを光軸AXの法線Nに対して倒れた状態とするとともに、調整用レンズL1の縮小光学系Rとしての機能により、マスターレンズMLのみによる中間像IIを法線Nに対して倒れた状態のまま縮小する。結果的に、マスターレンズMLのみによる像面IMG0,IMGaは、非球面ミラーAMの像側に傾いて配置される像面IMGbに変化する。なお、マスターレンズMLの移動のみによって非球面ミラーAMの像側の像面IMGb上に中間像IIを形成できる場合、調整用レンズL1に縮小光学系Rとしての機能を持たせる必要はなくなる。
以上において、マスターレンズMLは、第1の範囲FL1を使用して単独で中長距離投写をする。また、マスターレンズMLは、第1の範囲FL1よりマスターレンズML側の第2の範囲FL2では、超短距離の近接投写のために、調整用レンズL1と協働して像面IMGbに中間像IIを形成する状態となる。
非球面ミラーAMの正面の像面IMGbに形成された中間像IIは、非球面ミラーAMによってスクリーンSC上に拡大されて再結像される。この際、像高が最小である部分の倍率as/apと、像高が最大である部分の倍率bs/bpとは近い値となる必要がある。これは、スクリーンSC上の像の歪曲をなくすために、像高に関わらず像の倍率を一様にするためであるが、このためには、中間像IIの像面IMGbを光軸AXの法線Nに対して大きく傾ける必要がある。見方を変えれば、非球面ミラーAMは、映像光を反射させることにより、像面IMGbを光軸AXに対して垂直(表示面DSに平行)に正立又は倒立させる役割を果たしている。非球面ミラーAMによって像面IMGbを表示面DSに平行に正立又は倒立させることにより、表示面DSに平行なスクリーンSCの被照射面において表示面DSの像を適正に投写させることができる。
非球面ミラーAMは、以下の多項式hで表される非球面形状を含む。ここで、yは光軸AXからの像の高さ(像高)、cは非球面ミラーAMの形状の基準とする球面の曲率、kは円錐定数、A2、A4、A6、A8、A10、・・・のそれぞれは所定の補正項とする。
上記式の分数項は、基準となる非球面形状を表す項であって、k=0である場合に球面形状を表す。補正項は、その基準となる非球面形状からのずれを表す。上記式は、基準となる非球面形状が補正項によって補正されても、中心軸に関して回転対称な非球面形状を表している。なお、多項式hにおける補数項の個数は、任意であるものとする。
映像光を広角化させる場合、一般的に、光軸AXから遠くの周辺部ほど、歪曲等の収差が発生し易くなるため、特に、周辺部の収差を大きく低減させる設計が必要とされる。本実施形態では、非球面ミラーAMの形状を表す多項式hに補数項が含まれることで、c及びkで定められた二次曲線に対し、光軸AXからの高さyに応じた形状の補正が可能となる。各補数項にはyの階乗が乗算されることから、yが大きくなる部分ほど効果的に補正がなされることとなる。従って、非球面ミラーAM等を含む投写ユニット3によってマスターレンズMLを短焦点化しても、周辺部に歪曲等の収差が非常に少なく高性能な光学系を実現することが可能となる。なお、非球面ミラーAMの形状を表す式は、本実施形態で説明するものに限られず、適宜変形してもよい。さらに、広角化ミラー33の形状は、XY多項式として表される自由曲面であってもよい。
図8に示すように、スクリーンSCと非球面ミラーAMとをさらに近接化させていくと、像高が最大である部分については、光線の距離がbsからbs'へと変化する。像高が高い部分については、このように光線の距離を変化させるように非球面ミラーAMの形状を表す多項式を調整することにより、効果的な補正が可能となる。近接化が進められると、像高が高い部分のみならず、像高が低い部分についても、光線の距離をasからas'と変化させるような補正が必要となってくる。像高が低い部分ほど、上記の非球面ミラーAMの多項式による補正が困難となる。そこで、本実施形態では、像高が低い部分については、非球面ミラーAMによる収差補正によらず、マスターレンズMLの光学特性を利用して収差補正を行うこととする。
図9(A)及び9(B)は、マスターレンズMLを光軸AX方向に沿って移動させる意味を説明する図である。図9(A)は、バックフォーカスをfaとする中長距離投写の場合を示す(第1のモード)。第1のモードは、本体部2すなわちマスターレンズML単体で被照射面に画像を表示するモードであり、通常表示状態に相当する。図9(B)段は、バックフォーカスをfa'(fa<fa')とする超短距離の近接投写の場合を示す(第2のモード)。第2のモードは、本体部2と投写ユニット3とを組み合わせて被照射面に画像を表示するモードであり、マクロ表示状態に相当する。
第2のモード(マクロ表示状態)では、図5の可動機構22により、第1のモード(通常表示状態)におけるマスターレンズMLの通常の位置に対して、バックフォーカスが長くなるように、マスターレンズMLを光軸AX方向に沿って像側に移動させる。これにより、像面が近づくとともに画像が縮小される。つまり、マスターレンズMLから遠かった像面IGaがマスターレンズMLにより近い像面IGbに移動し、この像面IGbをなす像は、像面IGaのなす像を縮小したものとなる。これにより、投写ユニット3と組み合わせる近接投写に際して、投写ユニット3によって縮小され倒れた中間像IIを形成する負担が軽減される。結果的に、マスターレンズML等を備える本体部2を非球面ミラーAM等を備える投写ユニット3に組み合わせる場合に、高い光学性能を発揮させることができる。
以上のマスターレンズMLは、一般的な拡大投写レンズとすることができる。さらに、モードを変換に際しては、本体部2内でマスターレンズMLを光軸AX方向に移動させるだけの簡易な動作とすることができ、ほとんどコストアップを生じさせず、簡単かつ高精度な構成を実現できる。なお、第2のモードでは、既に説明したように、マスターレンズMLによる像面IMGaは、調整用レンズL1(像面傾斜光学系T,縮小光学系R)によって表示面DS又は光軸AXに垂直な面に対して傾けられるとともに縮小されて、非球面ミラーAMの正面に適正に設定された像面IMGbに変換される。このように、傾斜され縮小された像面IMGbをなす縮小された中間像IIからの映像光は、非球面ミラーAMで反射させることにより、表示面DSに略平行に正立又は倒立して、光軸AXに対して略垂直なスクリーンSC上で結像される(図7参照)。
以下、図5等を参照して、プロジェクター1を構成する投写ユニット3や投写レンズ20の機能について詳細に説明する。投写レンズ20は、一般的な拡大投写レンズであるが、像高が低い部分について、収差を補正する機能を持たせることで、近接投写時の画質を向上させることができる。投写ユニット3すなわち第1レンズ31、第2レンズ32、及び広角化ミラー33は、像を拡大させるフロントコンバーターとして機能する。
なお、本実施形態では、フロントコンバーターとして機能する投写ユニット3について、シフト光学系を採用することから、スクリーンSC上に投写する際に焦点位置が若干ずれることとなる。このために生じる諸収差に対しては、広角化ミラー33による補正や、収差を低減させるためのレンズを併用する措置を取り得る。また、屈折光学系30を構成する第1レンズ31及び第2レンズ32は、球面レンズに代えて非球面レンズを採用することとして、収差を補正する機能を持たせることとしてもよい。このように収差補正の機能を持たせた複数の光学要素を組み合わせることにより、高性能な光学使用を満足させることが可能となる。特に、屈折光学系30を構成するレンズ群内において、球面レンズに代えて非球面レンズや自由曲面レンズを採用することで、レンズの枚数を少なくさせることや、レンズを小型化させることも可能となる。これにより、コスト低減や鏡枠の小型化が可能となる。
負のパワーの光学要素である第1レンズ31と、正のパワーの光学要素である第2レンズ32は、投写レンズ20及び広角化ミラー33の間において、投写レンズ20による像面IMGaを傾ける像面傾斜光学系Tとしてのみだけでなく、像面IMGaを縮小する縮小光学系Rとしても機能する。ここで、第1レンズ31と第2レンズ32で構成される縮小光学系Rは、光軸AXの法線Nに対して傾けられた像面IMGaをなす像について倍率を変換させる変倍光学系として機能している。
非球面ミラーAMに相当する広角化ミラー33は、像面傾斜光学系Tにより傾けられ縮小光学系Rにより縮小された像面IMGb(図7参照)がスクリーンSCの被照射面に略平行になるように、映像光を折り返して拡大投影する。また、広角化ミラー33は、特に、像高が高い部分について、収差を補正させる機能を持つ。
広角化ミラー33は、中心軸に関して略回転対称な形状とすることで、他の構成(投写レンズ20及び屈折光学系30)との光軸AX合わせを容易にできる。また、広角化ミラー33は、旋盤等による加工が可能であるため、容易かつ高い精度で製造することができる。プロジェクター1は、共軸光学系を採用することにより、通常の共軸光学系の設計手法を採用することが可能である。よって、光学系の設計工数を少なくし、かつ収差が少ない光学系を実現することができる。
本実施形態は、光軸AXに沿って所定の間隔をなして複数の光学要素を配置する構成を採用することから、光軸AXを揃えることで組み立てを容易にでき、高い性能の実現も可能となる。特に、本体部2の着脱の際、本体部2の投写レンズ20と、投写ユニット3の各光学要素との高精度な位置合わせが要求されることとなる。光軸AXを共通とすることで、本体部2側の光学要素と、投写ユニット3側の光学要素との位置調整をし易くすることができる。共軸光学系の場合、光軸AXから周辺に向かっての光学性能の変化が、偏芯光学系における光学性能の変化に比較して緩やかにできる。このため、配置精度にある程度の余裕を持たせることが可能となるため、本発明に適した構成を実現可能となる。
以上により、画像の品質を劣化させずに、一台のプロジェクター1による超短距離の近接投写と中長距離投写とを実現することが可能となる。一台のプロジェクター1によって、超短距離から中長距離まで、広い投写距離をカバーすることができる。
図10は、第2のモードの投写レンズ20及び投写ユニット3を組み合わせた近接投写の具体的な実施例1を説明する図である。ここで、投写レンズ20は、レンズL01〜L10で示され、投写ユニット3は、第1及び第2レンズ31,32と、広角化ミラー33とを有する。このうち、第1レンズ31は、2つのレンズ31a,31bを含み、第2レンズ32は、2つのレンズ32a,32bを含む。
以下の表1に、実施例1のレンズデータ等を示す。この表1において、「面番号」は、表示面DS側から順に各レンズの面に付した番号である。また、「面タイプ」は、球面・非球面の別や反射面であることを示し、「R(Y曲率半径)」は、面の曲率半径を示し、「D(面間隔)」は、次の面との間のレンズ厚み或いは空気空間を表している。さらに、「Nd」は、レンズ材料のd線における屈折率を示し、「νd」はレンズ材料の分散を示す。
実施例1において、投写レンズ20や投写ユニット3は、基本的に球面で形成されているが、第5レンズL05の出射面と、第9レンズL09の入出射面と、第2レンズ32に含まれるレンズ32a,32bの入出射面と、広角化ミラー33とについては、非球面となっている。これらの非球面形状の光軸AX方向の面頂点からの変位量は、上述の多項式hとして与えられる。実施例1を構成する非球面の円錐定数「k」、高次補正項「A2」〜「A10」の値については、下記の表2に示した通りである。
図11は、本体部2に投写ユニット3を接続した場合のスクリーンSCへの投写状態を示している。図からも明らかなように、スクリーンSC上に良好な結像状態で近接投写が行われている。
図12及び図13は、本体部2から投写ユニット3を切り離し投写レンズ20が第1のモードとなった状態を示している。この場合、図10の状態と比較すると、第1レンズL01〜第10レンズL10が一体的に物体側に移動して通常表示状態となっている。また、投写レンズ20に近い位置には像面が形成されておらず、スクリーンSC上に像面が形成されている。
図14は、本体部2から投写ユニット3を切り離し投写レンズ20が第2のモードとなった状態を示している。この場合、図13の状態と比較すると、第1レンズL01〜第10レンズL10が一体的に像面側に移動してマクロ表示状態となっている。すなわち、投写レンズ20に近い位置には像面が形成されておらず、スクリーンSC上に像面が形成されている。一方、図14では、投写レンズ20に近い位置に正立像が形成されている。図10に示したように、図14の本体部2に投写ユニット3を配置することで、広角化ミラー33又は非球面ミラーAMの手前に傾けられ縮小された像面IMGbが形成されていることが分かる。
図15は、第2のモードの投写レンズ20及び投写ユニット3を組み合わせた近接投写の具体的な実施例2を説明する図である。ここで、投写レンズ20は、レンズL01〜L10を有する。また、投写ユニット3は、第1及び第2レンズ31,32と、広角化ミラー33とを有する。このうち、第1レンズ31は、3つのレンズ31a,31b,31cを含む。
以下の表3に、実施例2のレンズデータ等を示す。この表3において、「面番号」、「面タイプ」、「R(Y曲率半径)」、「D(面間隔)」、「Nd」、「νd」は、実施例1と同様のものを意味する。
実施例2において、投写レンズ20や投写ユニット3は、基本的に球面で形成されているが、第5レンズL05の入出射面と、第9レンズL09の入出射面と、第1レンズ31に含まれるレンズ31cの入出射面と、第2レンズ32の入出射面と、広角化ミラー33とについては、非球面となっている。これらの非球面形状の光軸AX方向の面頂点からの変位量は、上述の多項式hとして与えられる。実施例1を構成する非球面の円錐定数「k」、高次補正項「A2」〜「A10」の値については、下記の表4に示した通りである。
図16は、本体部2に投写ユニット3を接続した場合のスクリーンSCへの投写状態を示している。図からも明らかなように、スクリーンSC上に良好な結像状態で近接投写が行われている。
図17は、本体部2から投写ユニット3を切り離し投写レンズ20が第1のモードとなった状態を示している。この場合、図15の状態と比較すると、第1レンズL01〜第10レンズL10が一体的に物体側に移動して通常表示状態となっている。
図18は、図17に対応し、本体部2から投写ユニット3を切り離した場合のスクリーンSCへの投写状態を示している。この場合、投写レンズ20は、通常表示状態となっている。図からも明らかなように、投写レンズ20単独でスクリーンSC上に良好な結像状態で近接投写が行われている。
図19は、第2のモードで投写レンズ20及び投写ユニット3を組み合わせた近接投写に際しての結像状態を示す図である。このように投写ユニット3を配置することで、広角化ミラー33又は非球面ミラーAMの手前に傾けられ縮小された像面IMGbが形成されていることが分かる。
図20は、本体部2から投写ユニット3を切り離し投写レンズ20が単独で第2のモードとなった状態を示している。この場合、図18の状態と比較すると、第1レンズL01〜第10レンズL10が一体的に像面側に移動としている。また、第2のモード状態では、どこにも結像していないことを特徴とする。すなわち、図19に示すように、投写レンズ20に投写ユニット3を組み合わせることで倒れた像面IMGbを形成している。
〔第2実施形態〕
図21は、本発明の第2実施形態に係る電子黒板50の正面側斜視図である。電子黒板50は、第1実施形態に係るプロジェクター1(図1等参照)と同様に構成されたプロジェクター51と、プロジェクター51の上方に配置される画面表示部54とを備える。ここで、プロジェクター51は、本体部52及び投写ユニット53を有する。
本体部52は、画像信号に応じた映像光を射出する。投写ユニット53は、本体部52からの映像光を画面表示部54へ向けて投写させる。本体部52及び投写ユニット53は、それぞれ第1実施形態で説明した本体部2(図2等参照)及び投写ユニット3(図4等参照)と同様に構成されている。投写ユニット53の光学要素は、筐体に収納されている。筐体は、映像光を射出するための開口を備える。
画面表示部54は、プロジェクター51から入射した映像光により画像を表示し、かつ映像の表示面への書き込みを可能とする。画面表示部54は、光を透過させる半透過ガラスもしくは合成樹脂を材料として構成されている。使用者は、書き込み用のツール、例えば、ペンや指し棒等を使用して、画面表示部54へ文字や図画等を書き込む。また、使用者は、画面表示部54への書き込みを、消去用のツール等を使用して消去する。
電子黒板50は、以上のほかに、読込装置(図示省略)を備える。読込装置は、画面表示部54の表示面に書き込まれている書き込み内容や、画面表示部54に表示されている映像、画面表示部54にツールを接触あるいは近接させる等により入力された情報等を読み込む。読込装置としては、例えば、CCDカメラ等のイメージセンサを用いる。電子黒板50にかかる読込装置を設けることにより、画面表示部54への書き込み内容やその際に表示されている映像、入力情報等の記録が可能となる。
画面表示部54は、枠状の基台55に取り付けられて設置されている。基台55のうち二本の脚部58を繋ぐ角柱59上には、プロジェクター51を固定する板状部材であるプロジェクター固定部56が設けられている。プロジェクター51は、プロジェクター固定部56により、画面表示部54に対して鉛直下側に取り付けられている。プロジェクター固定部56と基台55とを繋いで放射状に延びる四本の棒状部材57は、基台55におけるプロジェクター固定部56の取り付け強度を補強するための補強部材として機能する。各棒状部材57は、プロジェクター51と画面表示部54との間において、映像光を妨げないように図中に破線矢印で示す映像光が進行する領域の周辺に配置されている。
図22は、電子黒板50の背面側斜視図である。プロジェクター51は、画面表示部54のうち映像を観察する正面側とは反対側の裏面へ、映像光を近接投写する。画面表示部54は、裏面(すなわち被照射面)へ入射したプロジェクター51からの映像光を、正面側へ透過させる。画面表示部54は、プロジェクター51から入射した映像光を拡散させる光拡散性を備える。画面表示部54は、裏面から映像光を入射させて表示される映像に、表面に書き込まれた文字や図画等を重ね合わせて表示する。観察者は、表面に書き込まれた文字や図画等と、画面表示部54で拡散した映像光とを観察する。
図23(A)は、電子黒板50のうち、プロジェクター51が設置されている状態のプロジェクター固定部56とその周辺部分を示す図である。この電子黒板50では、プロジェクター固定部56によってプロジェクター51を基台55に固定することで、画面表示部54に対して高い精度で位置決めされた状態でプロジェクター51を保持することが可能となる。これにより、画面表示部54において高精細な映像を表示することが可能となる。なお、プロジェクター51のうち投写ユニット53は、プロジェクター固定部56に固定されており、プロジェクター51のうち本体部52は、投写ユニット53から分離可能になっており、プロジェクター固定部56から単独で取り外すことができる。
図23(B)は、図23(A)に示す状態から本体部52が取り外された状態を示す図である。本体部52は、プロジェクター固定部56から適宜着脱可能とされ、単独で使用可能になっている。これにより、本体部52をプロジェクター固定部56に取り付けることによる電子黒板50としての使用(近接投写)と、電子黒板50から本体部52を取り出すことによる中長距離投写とが可能となる。
画面表示部54に対して鉛直下側にプロジェクター51が配置される構成を採用することで、本体部52は、電子黒板50のうち低めの位置に設置される。これにより、電子黒板50への本体部52の取り付けを容易にすることができる。
なお、図24に示すように、プロジェクター固定部56は、本体部52を位置決めするためのガイド構造60を備えることとしてもよい。ガイド構造60としては、例えば、本体部52の側面に沿うように形成された板状部材を用いる。本体部52は、ガイド構造60に沿ってプロジェクター固定部56上をスライドさせ、投写ユニット53のケースに当接させることで、位置決めされる。これにより、電子黒板50に本体部52を取り付けるごとに、正確な位置に、本体部52を容易に設置することができる。なお、ガイド構造60は、ここで図示する構成に限られず、電子黒板50において本体部52を投写ユニット53等に対して位置決め可能であれば、いずれの構成を採用してもよい。
図25は、画面表示部54に形成されているフレネルレンズ61の断面模式図である。フレネルレンズ61は、画面表示部54のうち、プロジェクター51からの映像光が入射する側の裏面に形成されている。フレネルレンズ61は、映像光を角度変換する角度変換部として機能する。フレネルレンズ61は、略三角形の断面形状をなす複数のプリズム構造体62を備える。プリズム構造体62は、例えば光軸AX(図4等参照)を中心とする略同心円状に配置されている。フレネルレンズ61は、画面表示部54へ斜めに進行する映像光を角度変換することで、観察者の方向へ効率良く進行させる。これにより、電子黒板50は、画面表示部54において、明るく、かつ明るさが均一な映像を表示することが可能となる。
電子黒板50は、超短距離の近接投写のためのプロジェクター51を採用することで、奥行き方向のサイズを抑制させる。また、本体部52単体での中長距離投写を可能とすることで、高い汎用性、利便性を確保できる。電子黒板50は、近接して十分なサイズを確保できる拡大投写のためのプロジェクター51の適用により、重量、消費電力、コストの軽減が可能となる。これにより、重量、消費電力、コストの軽減、奥行きサイズの抑制を可能とし、高い利便性を得ることができるという効果を奏する。
図26は、本実施形態の変形例に係る電子黒板70の正面側斜視図である。本変形例に係る電子黒板70は、画面表示部54に対して鉛直上側にプロジェクター51が取り付けられることを特徴とする。プロジェクター固定部56は、基台55のうち、画面表示部54の上部に設けられた角柱71にプロジェクター51を固定する。
画面表示部54に対して鉛直上側にプロジェクター51を配置することで、画面表示部54へは鉛直上側から映像光を入射させる。使用者による画面表示部54への書き込みの際に、書き込みのためのツールの影は、鉛直下向きに生じることとなる。これにより、影によって書き込み位置を見失うケースを少なくし、利便性を向上させることができる。
上記実施形態のプロジェクター1は、第1レンズアレイ、第2レンズアレイ、及び重畳レンズを備える光学系を用いて液晶パネル18R、18G、18Bの所望の領域全体を略均一な明るさで照明していたが、これに限定されるものではなく、導光ロッドを備える光学系など、他の照明光学系を用いて液晶パネル18R、18G、18Bの所望の領域全体を略均一な明るさで照明することもできる。
上記第1、第2実施形態のプロジェクター1は、例えば中長距離の投写時に投写画像を観察する側から透写するフロントタイプのプロジェクターとして適用しているが、投写画像を観察する側とは反対側から投写するリアタイプのプロジェクターにも適用できる。
上記実施形態のプロジェクター1は、3つの液晶パネルを用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。