JP5502817B2 - 障壁の完全性の改善 - Google Patents

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Description

本発明は、腸の障壁の完全性(barrier integrity)の改善のための方法、およびそのような方法における使用に適した組成物に関する。
消化管上皮は通常、栄養分、電解質および水の吸収を可能にし、且つ食物アレルゲンを含む食事性および微生物性抗原に対する曝露を妨げる選択的障壁として機能する。消化管上皮は、例えばアレルギー反応のような炎症反応を引き起こす可能性のある抗原の、体循環への通過を制限する。アレルギー、特に食事性アレルギーの発生率が増加しているため、多くの研究グループは、これらの疾患に対する(予防的な)治療法を探している。
EP1272058号は、腸の透過性を低下させるためのタイトジャンクションの改善のための、およびアレルギー反応の低減のための、不消化性オリゴ糖を含む組成物について記載している。該組成物は、LC-PUFA’s(長鎖-多価不飽和脂肪酸)を含んでよい。
EP 745001号は、潰瘍性結腸炎の治療のための不消化性オリゴ糖ならびにn-3およびn-6脂肪酸の組み合わせについて記載している。
Usamiらは、腸の単層細胞でのタイトジャンクションの透過性におけるエイコサペンタエン酸(EPA)の効果について記載している(Clinical Nutrition 2001, 20(4): 351-359)。彼らの研究では、EPAは透過性を増大させることがわかり、EPAは腸の障壁の完全性の改善には適さないことが示された。
先行技術による製剤は、障壁の完全性の改善に対して最適ではない。
本発明は、特定の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA’s)と特定のオリゴ糖の組み合わせを提供する。該LC-PUFA’sとオリゴ糖の組み合わせは、相乗的に、腸の透過性および粘液生成を改善することによって、効果的に障壁の完全性を改善し、ヒトの乳児における障壁の完全性の改善に特に適している。
特定のLC-PUFA’sが、効果的に上皮性傍細胞の透過性を低下させることは驚くべき発見である。Usamiらの報告(Clinical Nutrition 2001, 20(4): 351-359)とは対照的に、本発明者らは、C18およびC20多価不飽和脂肪酸、特に、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸(ARA)が、腸のタイトジャンクションの透過性を効率的に低下させることができることを発見した。
LC-PUFAsに加えて、本組成物はオリゴ糖を含む。特定のオリゴ糖は、粘液の生成を刺激し、その結果粘液の層の厚さを増加させることで障壁の完全性を改善する。この効果は、短鎖脂肪酸(SCFA)の生成における、異なるオリゴ糖の効果によって引き起こされると考えられている。それゆえ、哺乳類に経腸的に投与されると、LC-PUFAと不消化オリゴ糖の本発明の組み合わせは、併発するタイトジャンクションの透過性の低下および粘膜生成の刺激によって、相乗的に障壁の完全性を改善し、および/または相乗的に腸の透過性を低下させる。
さらなる側面において、本組成物は、腸の粘膜層の品質を改善する。粘膜層はムチンを含む。ムチンは、杯状細胞によって合成されおよび分泌される高分子量の糖タンパク質である。それらは、粘膜表面にゲル状の層を形成し、これによって障壁の完全性を改善する。粘膜層は、異なるタイプのムチンを含み、例えば、酸性、中性およびスルホン化ムチンを含む。粘膜層の不均一性の増大は、障壁の完全性を改善すると考えられている。
本組成物は、好ましくは、少なくとも二つの異なるオリゴ糖を含み、該オリゴ糖は、直接または腸内フローラを変化させることのどちらかによって、粘膜の構造に影響し、好都合にムチン層におけるムチン不均一性に影響する。それぞれの異なる特定のオリゴ糖は、粘膜の量および質において、異なる効果を有すると考えられている。そのうえ、二つの異なるオリゴ糖はまた、SFCA生成の相乗的な刺激を通しての硫酸化の程度に反映される通り、粘膜の質を刺激することができる。本発明者らが、本発明による二つの異なるオリゴ糖の混合物が、相乗的に酢酸塩生成を刺激することを発見したことは、驚くべきことである。また、粘膜の生成は酢酸塩の生成に依存することが、本発明者らによって発見された。
本組成物は、好ましくは、長鎖および短鎖オリゴ糖の両方を提供することによって、さらに改善される。異なる鎖長の供給によって、回腸および大腸の異なる部分における粘膜生成の刺激がもたらされる。(典型的に、2、3、4または5の重合度(DP)の)短鎖オリゴ糖が、近位大腸および/または遠位回腸におけるムチン生成を刺激し、一方で(好ましくは5より大きく60までの重合度(DP)の)長鎖のオリゴ糖は、大腸のより遠位な部位にてムチン生成を刺激すると考えられている。
短鎖および長鎖の両オリゴ糖としての、少なくとも二つの異なるオリゴ糖を提供することで、さらなる改善さえ達成することができる。これらの好ましい実施態様はすべて、回腸および/または大腸を通して、障壁の完全性のさらなる改善に貢献する。
さらに、驚くべきことに、EPA、DHA、およびARAは、腸の透過性におけるインターロイキン4(IL-4)の有害効果を低減させることができることがわかった。IL-4は、特定の患者の粘膜性T細胞によって大量に分泌され、腸の透過性を引き起こすサイトカインである。それゆえ、本発明はまた、アレルギー、特にアトピー性皮膚炎といった、腸のIL-4濃度が増加している疾病の治療および/または予防のための方法を提供する。
図1は、基底障壁の完全性(TER)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびAA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的効果を示すグラフである。 図1は、基底障壁の完全性(TER)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびAA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的効果を示すグラフである。 図2は、IL-4が介在する障壁の破損(フラックス)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびARA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的な保護効果を示すグラフである。 図2は、IL-4が介在する障壁の破損(フラックス)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびARA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的な保護効果を示すグラフである。 図3は、異なるオリゴ糖の発酵による、絶対的(図3A)および相対的(図3B)SCFAプロファイルを示すグラフである。 図3は、異なるオリゴ糖の発酵による、絶対的(図3A)および相対的(図3B)SCFAプロファイルを示すグラフである。 図4は、腸の上皮細胞(MC T84)および上皮-間充組織細胞の共培養(CC T84)のMUC-2発現に対するSCFA(酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩)の異なる効果を示すグラフである。
発明の詳細な説明
本発明は、栄養性の組成物であって:
a. EPA、DHAおよびARAを、20および22炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の含量が、全脂肪含量の15重量%を上回らないように含み;且つ
b. 単糖単位で90%未満の相同性を有する、少なくとも二つの異なるオリゴ糖を含む組成物に関する。
この組成物は、腸の障壁の完全性を刺激するための方法であって、哺乳類に当該組成物を投与することを含む方法において、好都合に使用されうる。
[多価不飽和脂肪酸]
本発明者らは驚くべきことに、エイコサペンタエン酸(EPA、n-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、n-3)およびアラキドン酸(ARA、n-6)が、腸のタイトジャンクションの透過性を効果的に低下させることを発見した。それゆえ、本組成物は、腸の障壁の完全性の改善に特に適し、EPA、DHAおよびARAを含む。
本発明者らは、低濃度のLC-PUFA’sが、タイトジャンクションの透過性の低下に有効であることを発見した(実施例およびUsamiらの結果を参照)。それゆえ、本組成物における20および22炭素原子を有するLC-PUFAの含量は、好ましくは全脂肪量の15重量%を上回らず、好ましくは10重量%を上回らず、さらに好ましくは全脂肪量の5重量%を上回らない。好ましくは、本組成物は、20および22炭素原子を有するLC-PUFAを、全脂肪量の少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらに好ましくは少なくとも0.75重量%で含む。同じ理由のため、EPAの含量は、好ましくは全脂肪量の5重量%を上回らず、より好ましくは1重量%を上回らず、しかし好ましくは全脂肪量の少なくとも0.05重量%であり、より好ましくは少なくとも0.1重量%である。DHA含量は、好ましくは全脂肪量の5重量%を上回らず、より好ましくは1重量%を上回らず、しかし少なくとも0.1重量%である。ARAが、タイトジャンクションの透過性の低下に特に有効であることがわかったため、本組成物は、相対的に高い量を含み、好ましくは全脂肪量の0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.25重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%である。ARA含量は、好ましくは全脂肪量の5重量%を上回らず、より好ましくは1重量%を上回らない。ARAを含有する本経腸組成物において、EPAおよびDHAは好都合に、ARAの作用の平衡を保たせるため、例えば、ARA代謝の潜在的な炎症誘発性作用を低下させるために加えられる。ARA由来の過剰な代謝産物は、炎症を引き起こしうる。それゆえ、本組成物は、好ましくはARA、EPAおよびDHAを含み、そのARA/DHAの重量比は、好ましくは0.25より大きく、好ましくは0.5より大きく、さらにより好ましくは1より大きい。その比率は、好ましくは25未満である。ARA/EPAの重量比は、好ましくは1から100の間であり、より好ましくは5から20の間である。
本組成物は、好ましくは全脂肪量に対して5から75重量%の多価不飽和脂肪酸を含み、好ましくは10から50重量%である。
本組成物が、乳児の調合乳として使用される場合(例えば、乳児に摂食させるための方法であり、該方法は、乳児に本組成物を投与することを含む)、LC-PUFA、特に20および22炭素原子を有するLC-PUFAの含量は、できる限りヒトの乳に似せることが望まれるため、好ましくは全脂肪含量の3重量%を上回らない。同様の理由で、オメガ-3 LC-PUFA含量は、好ましくは全脂肪含量の1重量%を上回らず;オメガ-6 LC-PUFA含量は、好ましくは全脂肪含量の2重量%を上回らず;ARA(オメガ-6)含量は、好ましくは全脂肪含量の1重量%未満であり;および/またはEPA/DHAの重量比は、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5未満である。
20および22炭素原子を有するLC-PUFAは、トリグリセリドの形態にて、リン脂質の形態にて、または前記の形態の1以上の混合物として、遊離脂肪酸として提供されてよい。本組成物は、好ましくは少なくとも一つのARAおよびDHAをリン脂質の形態にて含む。
本栄養性の組成物はまた、十分な栄養を提供するために、好ましくはオメガ-9(n-9)脂肪酸(好ましくはオレイン酸、18:1)を提供する。好ましくは、本組成物は、全脂肪酸の重量を基準にして、少なくとも15重量%のn-9脂肪酸を提供し、より好ましくは少なくとも25重量%で提供する。n-9脂肪酸の含量は、好ましくは80重量%未満である。
[オリゴ糖]
本発明による適したオリゴ糖は、少なくとも2単糖単位の重合度を有し、ヒトの上部消化管(小腸および胃)に存在する酸または消化酵素の作用によって、腸にて消化されないまたは部分的にしか消化されないが、ヒトの腸内フローラによって発酵され得る糖である。単糖単位という用語は、閉環構造を有する単位を意味し、好ましくは、ピラノースまたはフラノースの形態といった六炭糖を意味する。オリゴ糖の重合度は、典型的に、60単糖単位未満であり、好ましくは40単糖単位未満であり、さらに好ましくは20単糖単位未満である。
本組成物は、少なくとも二つの異なるオリゴ糖を含み、該オリゴ糖は、単糖単位において約90%未満の相同性を有し、好ましくは50%未満の、さらに好ましくは25%未満の、さらに好ましくは5%未満の相同性を有す。本発明において使用される「相同性」という用語は、異なるオリゴ糖における、同じ単糖単位の累積的なパーセンテージである。例えば、オリゴ糖1(OL1)は、フルクトース-フルクトース-グルコース-ガラクトースの構造を有しており、このため50%のフルクトース、25%のガラクトースおよび25%のグルコースを含む。オリゴ糖2(OL2)は、フルクトース-フルクトース-グルコースの構造を有しており、このため66%のフルクトース、33%のグルコースを含む。これらの異なるオリゴ糖は、このため、75%の相同性(50%フルクトース + 25%グルコース)を有す。
好ましい実施態様において、本組成物は、ガラクトオリゴ糖ならびに、フルクトオリゴ糖およびイヌリンから成る群から選択される少なくとも一つを含む。
それぞれの本オリゴ糖は、そこに含まれる単糖単位の総数で計算して、好ましくは少なくとも66%、より好ましくは少なくとも90%の、マンノース、アラビノース、フルクトース、フコース、ラムノース、ガラクトース、β-D-ガラクトピラノース、リボース、グルコース、キシロース、ウロン酸およびその誘導体から成る群から選択される単糖単位を含む。
さらなる実施態様によると、本組成物の少なくとも一つのオリゴ糖は、フルクタン(fructans)、フルクトオリゴ糖、不消化性デキストリンガラクトオリゴ糖(トランスガラクトオリゴ糖を含む)、キシロオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、グルコオリゴ糖、マンノオリゴ糖、フコオリゴ糖、酸性オリゴ糖(以下を参照、例えば、ペクチン加水分解産物といったウロン酸オリゴ糖)およびその混合物から成る群から選択される。好ましくは、本組成物は、少なくとも一つの、好ましくは少なくとも二つの、フルクトオリゴ糖またはイヌリンから成る群から選択されるオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖およびペクチン加水分解産物を含む。
優良な粘膜の量および質のために、本組成物は、好ましくは、少なくとも66%のガラクトースまたはフルクトースを単糖単位として含む、少なくとも一つのオリゴ糖を含む。好ましい実施態様において、本組成物は、少なくとも66%のガラクトースを単糖単位として含む少なくとも一つのオリゴ糖および少なくとも66%のフルクトースを単糖単位として含む少なくとも一つのオリゴ糖を含む。特に好ましい実施態様において、本組成物は、ガラクトオリゴ糖おならびに、フルクトオリゴ糖およびイヌリンから成る群から選択されるオリゴ糖を含む。フルクトオリゴ糖は、ヒトフローラ関連ラットの近位大腸において、スルホムチン生成を刺激し(Kleessen et al, (2003) Brit J Nutr 89:597-606)、およびガラクトオリゴ糖は、酸性ムチン生成を刺激する(Meslin et al, Brit. J.Nutr (1993), 69: 903-912)。
大腸の全領域にかかる粘膜層の厚さの改善のために、本組成物における少なくとも10重量%のオリゴ糖は2から5(すなわち2、3、4および/または5)のDPを有し、少なくとも5重量%は10から60のDPを有す。好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%のオリゴ糖が、2から9(すなわち、2、3、4、5、6、7、8および/または9)のDPを有し、これは、回腸ならびに近位および中間部分の大腸を通して機能すると考えられているためであり、および望んだ効果を達成するために本組成物に取り込まれる必要のあるオリゴ糖の重量パーセンテージが低減されるためである。
好ましい重量比:
a. (DPが2から5のオリゴ糖):(DPが6、7、8および/または9のオリゴ糖)>1;および
b. (DPが10から60であるオリゴ糖):(DPが6、7、8および/または9のオリゴ糖)>1
は、ともに1より大きい。
好ましくは、どちらの重量比も2より大きく、さらに好ましくは5より大きい。
大腸の全領域にかかる粘膜層の厚さおよび質のさらなる改善のために、好ましくは少なくとも二つの異なるオリゴ糖のそれぞれは、異なる鎖長にて提供され、好ましくは、各々のオリゴ糖の全重量を基準としてそれぞれのオリゴ糖の少なくとも10重量%が、2から5(すなわち、2、3、4および/または5)のDPを有し、少なくとも5重量%が、10から60のDPを有す。そのオリゴ糖の全重量を基準として、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%のオリゴ糖が、2から10の間のDPを有しており、それは、回腸ならびに近位および中間部分の大腸を通して機能すると考えられるためである。
[酸性オリゴ糖]
障壁の完全性をさらに改善するために、本組成物は、好ましくは2から60のDPを有する酸性オリゴ糖を含む。酸性オリゴ糖という用語は、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル型カルボン酸、硫酸基およびリン酸基から成る群から選択される少なくとも一つの酸性基を含むオリゴ糖を意味する。酸性オリゴ糖は、好ましくはウロン酸単位(すなわち、ウロン酸ポリマー)、より好ましくはガラクトウロン酸単位を含む。酸性オリゴ糖は、均一のまたは不均一の炭水化物であってよい。適した例は、ペクチンおよび/またはアルギン酸塩の加水分解産物である。消化管において、ウロン酸ポリマーは、加水分解されウロン酸モノマーとなり、それが腸内の酢酸塩の生成を刺激し、次に腸内の粘膜分泌を刺激する(Barcelo et al., Gut 2000; 46:218-224)。
好ましくは、酸性オリゴ糖は以下の構造Iを有し、この末端の六炭糖(左)は、好ましくは二重結合を有する。末端の六炭糖単位以外の六炭糖単位は、好ましくはウロン酸単位であり、さらに好ましくはガラクトウロン酸単位である。これらの単位におけるカルボン酸基は、遊離または(部分的に)エステル化されてよく、好ましくは少なくとも10%がメチル化される(下記参照)。
構造I:ポリマー化酸性オリゴ糖
Figure 0005502817
ここにおいて:
Rは、好ましくは、水素、水酸基または酸性基から成る群から選択され、好ましくは水酸基であり;および
R2、R3、R4およびR5から成る群から選択される少なくとも一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル型カルボン酸、硫酸基およびリン酸基、を表し、R2、R3、R4およびR5の残りは水酸基および/または水素を表す。好ましくは、R2、R3、R4およびR5から成る群から選択される一つは、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコロイルノイラミン酸、遊離またはエステル型カルボン酸、硫酸基およびリン酸基、を表し、残りは水酸基および/または水素を表す。さらに好ましくは、R2、R3、R4およびR5から成る群から選択される一つは、遊離またはエステル型カルボン酸を表し、R2、R3、R4およびR5の残りは水酸基および/または水素を表し;および
nは整数であり、六炭糖単位(重合度もまた参照、下記)の数を表し、この六炭糖単位は何れの六炭糖単位であってよい。適したnは、1から5000の整数である。好ましくは、六炭糖単位はウロン酸単位である。
最も好ましくはR1、R2およびR3はヒドロキシを表し、R4は水素を表し、R5はカルボン酸を表し、nは1から250の間の何れかの数、好ましくは1から10の数を表し、六炭糖単位はガラクトウロン酸である。
本方法において用いられる好ましい酸性オリゴ糖の、検出、測定および分析は、酸性オリゴ糖に関する先の特許出願、すなわちWO 0/160378号にて示される。
大腸の全領域にかかる粘膜層の厚さの改善を刺激するために、本組成物は、好ましくは、オリゴ糖の全重量を基準として、少なくとも10重量%の2から5(すなわち2、3、4および/または5)のDPを有する酸性オリゴ糖および少なくとも5重量%の10から60のDPを有する酸性オリゴ糖を含む。
本発明において用いられる酸性オリゴ糖は、好ましくは、ペクチン、ペクチン酸塩、アルギン酸塩、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン(heparane)、細菌性炭水化物、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖またはカラゲナンから作製され、より好ましくはペクチンおよび/またはアルギン酸塩から作製される。
[オリゴ糖の含量]
すぐ摂取できる液体の形態の場合、本組成物は、不消化性オリゴ糖を、好ましくは1リットル当たり0.1から100グラム含み、より好ましくは1リットル当たり0.5から50グラム含み、さらに好ましくは1リットル当たり1から25グラム含む。高すぎるオリゴ糖の含有量は、過度の発酵のために不快感を引き起こすかもしれず、一方で非常に低い含量は、不十分な粘膜層をもたらすかもしれない。
少なくとも二つの異なるオリゴ糖の重量比は、好ましくは1から10の間であり、より好ましくは1から5の間である。これの重量比は、最適に、腸において異なる部位で、異なるタイプのムチン生成を刺激する。
オリゴ糖は、好ましくは、本発明による本組成物に、本組成物の全乾燥重量に対して、0.1重量%を超える量で含まれ、好ましくは0.2重量%を超える量であり、より好ましくは0.5重量%を超える量であり、さらに好ましくは1重量%を超える量で含まれる。本組成物は好ましくは、20重量%未満の含量の、より好ましくは10重量%未満の含量の、さらに好ましくは5重量%未満の含量のオリゴ糖を有する。
本組成物へのヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドの付加はさらに、腸粘膜の障壁の機能を改善し、特に、細菌の転移の発生率を阻害および/または低下させ、および腸の損傷を減少させる。それゆえ、本組成物はまた、好ましくは、乾燥した製剤100グラム当たり、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドを1から500 mg含み、さらに好ましくは5から100 mg含む。
[応用]
本組成物は、哺乳類、特にヒトにおける、障壁の完全性の改善のための方法に好都合に使用することができる。本組成物はまた、障壁の完全性の低下に関連する疾病の治療または予防のための方法において好都合に使用することができ、当該方法は、哺乳類に本組成物を投与することを含む。本組成物は好ましくは経口にて投与される。
病中および乳児期に対して、本組成物は、好ましくは、タンパク質、炭水化物および脂肪を含む、完全栄養と併用される。本組成物は、好都合に、0から2歳までの乳児に投与される。本組成物は、障壁の完全性が損なわれている患者および健康な患者に対して投与してよい。本組成物は、好都合に、早産児(妊娠37週目以前に生まれた乳児)の栄養要求を提供するための方法に用いられる。
本組成物はまた、腸の損傷を引き起こすかもしれない、医学的治療より先にまたはその後に、本組成物を患者に投与することによって、腸の損傷を治療および/または予防するための方法において好都合に使用することができる。そのような医学的治療は、例えば、手術または腸内医薬の治療(例えば、抗生物質、鎮痛薬、NSAID、化学療法薬等)であってよい。
本組成物はまた、好都合に、腸の障壁の破損が疾病の経過の発展の根底にある、疾病の治療または予防に使用することができ、例えば、慢性炎症性疾病、特に炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)(IBD)、過敏性大腸症候群(irritable bowel syndrome)(IBS)、小児脂肪便症(celiac disease)、膵炎、肝炎、関節炎または糖尿病の治療または予防のための方法において使用することができる。そのうえ、本発明は、腹腔の手術を受けたまたは受けている患者に対し、および腸の術後の機能障害を経験している患者に対しおよび/または栄養不良の患者に対し、栄養を提供するための方法において使用することができる。
本発明の更なる実施態様において、本組成物は、好都合に、例えば、AIDSおよび/またはHIV感染の治療のための方法において、後天性免疫不全症候群(AIDS)を患う患者に対し、および/またはヒト免疫不全症ウイルス(HIV)に感染している患者に対して投与される。そのような方法は、好ましくは炭水化物、タンパク質および脂肪からなる群から選択される栄養と併用される、本組成物の経口投与を含む。
そのうえ、本発明はまた、減少した障壁の完全性に起因する合併症の治療または予防するために使用することができ、特に、下痢、特に乳児期の下痢の治療および/または予防のための方法において使用することができる。乳児期の下痢における発生率の低下のために、本組成物は、おむつかぶれを低減するために好都合に使用することができる。
本組成物を投与することは、腸管腔から粘膜性循環または体循環への、食事性および微生物性抗原、特に食物アレルゲンの通過を低減させ、それゆえ、好ましくは、アレルギーおよび/またはアレルギー反応の治療または予防のための方法において好都合に使用するこができ、特に、例えば食糧の摂取を起因とするアレルギー反応といった、食物アレルギーの治療または予防のための方法において好都合に使用することができる。
また、EPA、DHAおよび/またはARAが、腸の透過性におけるIL-4の効果を低減することができることが、発明者らによって発見された。それゆえ、本発明の一側面は、腸のIL-4濃度が増加する疾病(例えば、アレルギー疾患)の治療および/または予防のための方法を提供し、該方法は、好ましくはEPA、DHAおよびARAから成る群から選択されるLC-PUFAを、好ましくは、特定の本オリゴ糖と併用して、投与することを含む。それゆえ、本組成物はまた、好都合に、アトピー性皮膚炎の治療のための方法において使用することができる。
新生児の障壁の機能は十分に発達していないため、本組成物は、幼い乳児、すなわち生後0から6ヶ月の乳児に、好都合に投与することができる。当該組成物は、ヒトの乳なしで、またはヒトの乳と混ぜて、乳児用調合乳の形態にて、乳児に投与してよい。それゆえ、本発明はまた、ヒトの乳および本組成物を含む、調合乳食を提供する。ヒトの乳および本組成物を含む組成物は、未熟な乳児の摂食に特に適している。
本組成物は、好ましくは、包装された散剤、または包装されすぐ摂取できる製剤として提供される。生成物の劣化を防ぐため、すぐ摂取できる製剤の包装サイズは、一回分(one serving)を超えず、例えば500mlを超えず;散剤の形態における本発明による包装サイズは、250回分(250 servings)を超えない。散剤のための適した包装サイズは、2000グラム以下、好ましくは1000グラム以下である。
消費者を、1以上の上記または下記目的に一致した当該生成物の使用に、明示的にまたは暗示的に導くラベルを施された、包装された生成物は、本発明に包含される。そのようなラベルは、例えば、「低減される食物感受性」、「腸の耐容性を改善する」、「改善される食物耐性」または同様な言葉を含むことによって、食物アレルゲンに対するアレルギー反応を抑制するための本方法に言及してよい。同様に、アレルギーの治療および/または予防のための本方法の言及は、「改善される抵抗性」または「低減される感受性」に等しい用語を取り込むことによって、行われてよい。
[調合乳]
本組成物は、好都合に、乳児用食および臨床用食といった、食事に応用することができる。そのような食事は、好ましくは、脂質、タンパク質および炭水化物を含み、および好ましくは液体の形態にて投与される。本発明にて使用される「液体食」という用語は、その乾燥食の混合物と適した液体(例えば水)を混合することを示す説明書が添付される、乾燥食(例えば、粉)を含む。
それゆえ、本発明はまた、好ましくは、5から50en%の脂質、5から50en%のタンパク質、15から90en%の炭水化物およびオリゴ糖とLC-PUFA’sの本組み合わせを含む、栄養性組成物に関する。好ましくは、本栄養性組成物は、10から30en%の脂質、7.5から40en%のタンパク質および25から75en%の炭水化物を、好ましくは含む(en%はエネルギーパーセントの略であり、個々の成分が製剤の全カロリー値に対して寄与する相対的量を表す)。
好ましくは、植物性脂質と、魚の油およびオメガ-3植物性、藻類性または微生物性油から成る群から選択される少なくとも一つの油との組み合わせが用いられる。
栄養性製剤にて使用されるタンパク質は、好ましくは、ヒトでない動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質および卵タンパク質)、植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、およびエンドウマメタンパク質)、遊離アミノ酸およびそれらの混合物の群から選択される。窒素源由来の牛乳、特にカゼインといった牛乳タンパク質および乳清タンパク質は、特に好ましい。
消化可能な炭水化物の原料は、栄養性調合乳に加えられてよい。それは好ましくは、栄養性組成物のエネルギーの約40%から約80%を提供する。例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、トウモロコシシロップ固形物(corn syrup solids)、およびマルトデキストリン、およびそれらの混合物といった、何れかの適した炭水化物(の原料)が用いられてよい。
本組成物は、好ましくは乳児用調合乳として使用され、好ましくは7.5から12.5エネルギー%のタンパク質;40から55エネルギー%の炭水化物;および35から50エネルギー%の脂肪を含む。本組成物は、乳児のアレルギー反応の低減のために適切に使用されるため、乳児用調合乳のタンパク質は、好ましくは、加水分解された乳タンパク質(例えば、加水分解されたカゼインまたは加水分解された乳清タンパク質)、植物性タンパク質および/またはアミノ酸から成る群から選択される。これらのタンパク質の使用は、さらに、乳児のアレルギー反応を低減させた。
便の不規則性(例えば、硬い便、不十分な便の量、下痢)は、多くの乳児および液体食を受ける病気の患者にとって主要な問題である。便の問題は、重量モル浸透圧濃度が50から500 mOsm/kg、より好ましくは100から400 mOsm/kgである液体食による、本オリゴ糖の投与によって、減少するかもしれないことがわかった。
上記の観点から、液体食は、過度のカロリー密度を有しないが、それでも患者に与えるに十分なカロリーを提供するということは、また重要なことである。このため、液体食は好ましくは、0.1から2.5kcal/ml、さらに好ましくは0.5から1.5 kcal/ml、最も好ましくは0.6から0.8 kcal/mlのカロリー密度を有している。
[実施例1]:障壁の完全性におけるLC-PUFAの効果
腸管上皮細胞株T84 (American Type Culture Collection (ATTC)、米国、マナッサス)の単層(MC)を、トランスウェルフィルター(transwell filters)(Corning, Costar BV,オランダ)にて培養し、粘膜性および漿膜性の両サンプリングおよびヒト腸管上皮細胞の刺激を行えるようにした。集密状態となった後二週間、単層を、内腔の画分にて、多価不飽和脂肪酸ARA(アラキドン酸;5,8,11,14-エイコサテトラエン酸)、DHA(cis-4,7,10,13,16,19ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)またはコントロールであるパルミチン(C 16:0)酸(Palm)(Sigma、米国、セントルイス)とともに、培養した。後半の手順は、食事性化合物のin vivoの投与経路を模倣するために選択された。細胞を、ARA、DHA、EPA、またはパルミチン酸で、0、24、48および72時間、異なる濃度で(10μMおよび100μM)培養した。実験は、基底障壁の完全性(basal barrier integrity)を評価するために行った。上皮性障壁の機能は、経上皮抵抗性(TER、Ω.cm2) および4kD FITCデキストラン(paracellular permeability marker, Sigma, 米国)の透過性を測定することによって決定した。該経上皮抵抗性は、上皮のボルト−オームメーター(EVOM; World Precision Instruments, ドイツ)にて測定した。4kD FITCデキストランの上皮の透過性は以下のように決定した。デキストランのフラックスに先駆けて、培地を、1時間かけてフェノールの入っていない培養培地と交換し、続いて5μl(ストック 100 mg/ml)の4 kDa FITC-デキストランを内腔画分に添加した。30分の培養の後、100μlのサンプルを漿膜性画分から回収し、蛍光シグナルを、励起波長を485 nmおよび放出波長を520 nmで測定した(FLUOstar Galaxy(登録商標), BMG Labtechnologies, 米国)。FITC-デキストランのフラックスは、pmol FITC-デキストラン/cm2/hで算出した。統計分析は、ANOVA (SPSS version 10)を用いて行った。
72時間培養の後の、自発的な障壁の完全性における、脂肪酸(100μl)の効果の結果を、表1に示した。表1は、LC-PUFA’s ARA、EPAおよびDHAが、分子のフラックスを低下させ、上皮の抵抗性を改善していることを表している。対照的に、コントロール実験は、パルミチン酸が、逆の効果を有す、すなわち障壁の完全性を損なうことを表す。これらの結果は、本発明による組成物におけるEPA、DHAおよびARA、特にARAの有利な使用を示しており、本発明による方法、例えば障壁の完全性の改善のための方法における使用を示している。これらの結果はさらに、脂肪酸と不消化性オリゴ糖の本組み合わせの相乗的な効果を裏付けている。
図1は、基底障壁の完全性(TER)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびAA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的効果を示している。図1は、抵抗性(TER)の増加に反映される通り、LC-PUFA’s AA、DHA、およびGLAが、上皮の障壁の完全性を改善することを表している。これらの結果は、本発明による組成物における、EPA、DHA、GLAおよびARA、特にARAの有利な使用を示しており、本発明による方法、すなわち障壁の完全性の改善のための方法における使用を示している。これらの結果はさらに、脂肪酸と不消化性オリゴ糖の本組み合わせの相乗的な効果を裏付けている。
Figure 0005502817
[実施例2]:IL-4に介在される障壁の破損における、LC-PUFAの効果
腸管上皮細胞株T84 (ATTC、米国)の単層(MC)を、トランスウェルフィルター(transwell filters)(Corning, Costar BV,オランダ)にて培養し、粘膜性および漿膜性の両サンプリングおよびヒト腸管上皮細胞の刺激を行えるようにした。集密状態となった後二週間、単層を、IL-4(2 ng/ml、漿膜性画分、Sigma、米国)の存在下、多価不飽和脂肪酸ARA、DHA、GLA、EPAまたはコントロールであるパルミチン酸(10μMまたは100μM、粘膜性画分、Sigma、米国、セントルイス)を添加して、または添加せずに培養した。細胞を、IL-4培養に先駆けて、48時間 ARA、DHA、EPAまたはパルミチン酸存在下にて前培養した。IL-4と、PUFA’sおよびパルミチン酸の共培養を、さらに48時間続け;一方で培養培地および添加物を24時間毎に交換した。上皮の障壁の機能は、実施例1に記載した通り経上皮の抵抗性(TER)および透過性を測定することで決定した。統計的評価は実施例1に記載の通りに行った。
IL-4に介在される障壁の破損における、ARA、DHA、EPAおよびパルミチン酸(100μM)の効果の結果を表2に示した。表2は、LC-PUFA’s ARA、DHAおよびEPAが、IL-4によって引き起こされるフラックスの増加を阻害することを表している。対照的に、パルミチン酸は、有害な効果を有し、コントロールと比較して障壁の破損を減少させた。これらの結果は、IL-4が介在する障壁の破損、例えば食物または牛乳アレルギーを予防するまたは低減させるために、臨床用および乳児用栄養性製剤における、ARA、DHAおよびEPAの有利な使用を示している。これらの結果はさらに、脂肪酸と不消化性オリゴ糖の本組み合わせの相乗的な効果を裏付けている。
図2は、IL-4が介在する障壁の破損(フラックス)における、様々な脂肪酸(パルミチン酸、DHA、GLAおよびARA)の、時間および濃度(10μMおよび100μM)依存的な保護効果を示している。図2は、4kD デキストランフラックスの減少に反映される通り、ARA、DHAおよびGLAが、IL-4が介在する障壁の破損から保護することを表している。これらの結果は、IL-4が介在する障壁の破損、例えば食物または牛乳アレルギーを予防するまたは低減させるために、臨床用および乳児用栄養性製剤における、ARA、DHAおよびGLAの有利な使用を示している。これらの結果はさらに、脂肪酸と不消化性オリゴ糖の本組み合わせの相乗的な効果を裏付けている。
Figure 0005502817
[実施例3]:酢酸塩生成におけるオリゴ糖の効果
微生物を、ミルク(人工栄養)で育った乳児の新鮮な便から得た。生まれて1から4ヶ月の間の乳児から採った新鮮な便の材料を、溜め、保存培地に2時間入れた。基質として、プレバイオティクス(TOS;TOS/イヌリン(HP)混合物9/1 (w/w)の比率;イヌリン;オリゴフルクトース(OS)/イヌリン混合物1/1(w/w)の比率)を用い、または何も用いなかった(ブランク)。トランスガラクトオリゴ糖(TOS)は、Vivinal GOS, Borculo Domo Ingredients(オランダ、ズヴォーレ)から得て、不消化性オリゴ糖として:33重量%の二糖、39重量%の三糖、18重量%の四糖、7重量%の五糖および3重量%の六-、七-、八糖を含む。イヌリン(HP)は、Orafti active food ingredients(ベルギー、ティーエン)より、Raftiline HP(登録商標)として得て、平均DPは23である。培地:McBain&MacFarlane培地:緩衝ペプトン水3.0g/l、イースト・エクストラクト2.5 g/l、ムチン(刷子縁(brush borders)) 0.8 g/l、トリプトン3.0g/l、L-システイン-HCl 0.4 g/l、胆汁酸塩0.05 g/l、K2HPO4.3H2O 2.6 g/l、NaHCO3 0.2 g/l、NaCl 4.5 g/l、MgSO4.7H2O 0.5 g/l、CaCl2 0.228 g/l、FeSO4.7H2O 0.005 g/l。500 ml Scottビンを培地で満たし、121℃で15分間滅菌する。緩衝培地:K2HPO4.3H2) 2.6 g/l、NaHCO3 0.2 g/l、NaCl 4.5 g/l、MgSO4.7H2O 0.5 g/l、CaCl2 0.228 g/l、FeSO4.7H2O 0.005 g/l。K2HPO4またはNaHCO3で、pH 6.3±0.1に調整。500 ml Scottビンを培地で満たし、121℃で15分間滅菌する。保存培地:緩衝ペプトン20.0 g/l、L-システイン-HCl 0.5 g/l、チオグリコール酸ナトリウム0.5 g/l、レザズリン錠剤を1リッター当り1錠。1M NaOHまたはHClで、pH 6.7±0.1に調整。電子レンジで沸騰させる。血清ビンを25 mlの培地で満たし、121℃で15分間滅菌した。
新鮮な便サンプルを、保存培地と混合し、4℃で数時間保存した。便の保存溶液を、13,000rpmで15分間遠心し、上清を除き、便をMcBain&MacFarlane培地と、重量比1:5で混合した。この便懸濁液3 mlを、ビンの中で、85 mgのグルコースもしくはプレバイオティクスとあわせ、または何も添加せず(ブランク)、十分に混合した。t=0のサンプルを取り出した(0.5 ml)。残りの懸濁液の2.5 mlを、透析チューブに移し、60 mlの緩衝培地を満たした60 mlビンに入れた。ビンはしっかりとふたを閉め、37℃でインキュベートした。サンプルを、皮下注射器を用いて、透析チューブ(0.2 ml)または透析バッファー(1.0 ml)から、3、24、および48時間後に採り、即座に氷上に置き発酵を停止した。本実験は、以下のサンプルを用いて行った。
1) 85mg TOS
2) 85mg イヌリン
3) 85mg TOS/イヌリン 9/1 (w/w)の比率、および
4) 85mg OS/イヌリン 1/1 (w/w)の比率。
SCFA(酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩)を、水素炎イオン化検出器を備えた、Varian 3800ガスクロマトグラフ(GC) (Varian Inc., 米国、ウォルナットクリーク)を用いて定量化した。サンプル0.5μlを、キャリアーガスとしてヘリウム(3.0 psi)を用いて、カラム(Stabilwax, 15 x 0.53 mm, フィルム厚 1.00 μm, Restek Co., U.S.A.)に80℃で注入した。サンプルの注入の後、オーブンを16℃/minの速度で160℃まで加熱し、その後20℃/minの速度で220℃まで加熱し、最終的に220℃で1.5分間維持した。注入器および検出器の温度は200℃であった。2-エチル酪酸を、内部標準として用いた。
図3は、異なるオリゴ糖の発酵による、絶対的(図3A)および相対的(図3B)SCFAプロファイルを示している。図3Aは、90未満の単糖単位での相同性および異なる鎖長を有する、二つの異なるオリゴ糖の混合物(TOS/イヌリン)が、単一の成分よりも、線維1グラム当りのSCFA(特に酢酸塩)の量の有意なおよび相乗的な増加をもたらすことを表している。図3Bは、TOS/イヌリンの組み合わせの添加が、有益な酢酸塩のより高い比率をもたらすことを表している(B)。in vivoの酢酸塩の生成は、杯状細胞による改善された粘膜生成および腸の粘膜層の厚さの程度に言い換えられる(実施例4参照)。これらの結果は、本組成物の有利な使用を示している。
[実施例4]:粘膜生成におけるSCFAの効果
単層の腸の上皮T84細胞(ATCC、米国)を24または96ウェル組織培養プレート(Corning B.V.)にて培養した。T84を、0.025-4.0 mMの濃度範囲にて短鎖脂肪酸酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩とともに、24時間培養した。上清および/または細胞を回収し、MUC-2(ムチン)発現を検出した。ムチンは非常に大きな糖タンパク質(500 kDaより大きい)であり、ウエスタンブロッティング技術で扱うには難しいため、ドットブロット技術にて、細胞培養のMUC-2発現を検出した。この方法は、免疫前血清(T84をネガティブに染色)、CCD-18Co (ATCC, 米国)ネガティブコントロール細胞およびウシ血清アルブミン(BSA)を用いて確認した。細胞サンプルをLaemmli(タンパク質単離バッファー)にて回収し、マイクロプロテインアッセイ(Biorad, 米国)を用いて、説明書に従って、タンパク質検出を行った。サンプル(0.3-0.7-1.0μg/2μl)をニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell,ドイツ)にドットした。膜を、TBST/5% Protivar(Nutricia,オランダ)でブロックし、続いて抗MUC-2抗体(オランダ、ロッテルダム、エラスムス大学Einerhand博士のご好意による提供)で1時間インキュベートした。洗浄の後、ブロットをヤギ抗ウサギ-HRP(Santacruz Biotechnology,米国)でインキュベートし、基質による検出のために、ECL(Roche Diagnostics,オランダ)を用いた。濃度測定を、Lumi-Imager (Boehringer Mannheim B.V.,オランダ)を用いて行い、シグナルをライトユニット(light units)で表した(BLU)。BLU’sはまた、コントロールのインキュベートに対して相対値で表した(%BLU)。MUC-2発現におけるSCFAの刺激の効果を比較するため、基本のMUC-2発現の値を差し引いた。
図4は、腸の上皮細胞(MC T84)および上皮-間充組織細胞の共培養(CC T84)のMUC-2発現に対するSCFA(酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩)の異なる効果を表している。図2はまた、プロピオン酸塩、酪酸塩と比較して、酢酸塩が、MUC-2発現(粘膜生成)をより強く刺激することを表している。それゆえ、オリゴ糖(酢酸塩生成の亢進を示す(実施例3参照))の本組み合わせは、粘膜生成の刺激に特に有用であり、障壁の完全性の刺激のための方法において好都合に使用できる。
[実施例5]:乳幼児用調乳I
成分(リッター当り)、エネルギー672 Kcal;タンパク質15 g;乳清: カゼイン比 60:40; 脂肪 36 g; 炭水化物72 g; ビタミン A 750 RE;混合型天然カロチド(carotids) 400 IU;ビタミン D 10.6 mcg; ビタミン F 7.4 mg; ビタミン K 67.0 mcg; ビタミン B.sub.1 (チアミン) 1000 mcg; ビタミン B.sub.2 (リボフラビン) 1500 mcg; ビタミン B.sub.6 (ピリドキシン) 600 mcg; ビタミン B.sub.12 (シアノコバラミン(cyanacobalmine)) 2.0 mcg; ナイアシン 9.0 mcg; 葉酸80 mcg; パントテン酸 3000 mcg; ビオチン90 mcg; ビタミン C (アスコルビン酸) 90 mg; コリン100 mg; イノシトール33 mg; カルシウム460 Mg; 亜リン酸333 Mg; マグネシウム64 Mg; 鉄8.0 Mg ; 亜鉛6.0 Mg; マンガン50 mcg; 銅560 mcg; ヨウ素100 mcg; ナトリウム160 mg; カリウム650 mg; 塩素イオン433 mgおよびセレン14 mcg;ここにおいて脂肪含量は、魚の油3グラムおよび40%アラキドン酸3グラム(DSM Food Specialties, オランダ、デルフト);さらに、4グラムのトランスガラクトオリゴ糖Elix’or(商標)(Borculo Domo Ingredients, オランダ)および4グラムのRaftiline(商標)(Orafti Active Food Ingredients, ベルギー)を含む。

Claims (7)

  1. タイトジャンクションの透過性を低下させると同時に粘膜生成を刺激することによって腸の障壁の完全性を改善するための方法において使用する組成物を製造するための、多価不飽和脂肪酸の使用であって、前記方法は、哺乳類にたいして、下記aおよびbを含有する組成物を投与することを含んでなる使用:
    a. エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびアラキドン酸(ARA);ここでの20および22炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の含量は、全脂肪含量の15重量%を上回らない;および
    b. ガラクトオリゴ糖ならびに、フルクトオリゴ糖、イヌリンおよびその混合物から成る群から選択されるフルクタン。
  2. 栄養性の組成物であって:
    a. EPA、DHAおよびARAを、20および22炭素原子を有する長鎖多価不飽和脂肪酸の含量が、全脂肪含量の15重量%を上回らないように含み;且つ
    b. ガラクトオリゴ糖ならびに、フルクトオリゴ糖、イヌリンおよびその混合物から成る群から選択されるフルクタンを含む組成物。
  3. 請求項2に記載の組成物であって、少なくとも10重量%のガラクトオリゴ糖およびフルクタンが、2から5の重合度(DP)を有し、少なくとも5重量%が10から60の間のDPを有する組成物。
  4. 請求項2または請求項の何れか1項に記載の組成物であって、7.5から12.5エネルギー%のタンパク質;40から55エネルギー%の炭水化物;および35から50エネルギー%の脂肪を含み、前記タンパク質が、加水分解された乳タンパク質、植物性タンパク質および/またはアミノ酸から成る群から選択されたメンバーを含む組成物。
  5. 請求項2から請求項の何れか1項に記載の組成物であって、該組成物が、0.6から0.8 kcal/mlのカロリー含量;50から500 mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度;および50 mPas未満の粘性を有する組成物。
  6. 請求項2から請求項のいずれか1項に記載の組成物であって、乳児に摂食させるのに適しており:
    a. 長鎖多価不飽和脂肪酸の含量が、全脂肪含量の3重量%未満であり;
    b. オメガ-3長鎖多価不飽和脂肪酸が、全脂肪含量の1重量%未満であり;
    c. オメガ-6長鎖多価不飽和脂肪酸が、全脂肪含量の2重量%未満であり;
    d. ARA含量が、全脂肪含量の1重量%未満であり;および
    e. EPA/DHAの割合が1以下である、組成物。
  7. 医薬品としての使用するための、請求項2から請求項の何れか1項に記載の組成物。
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