JP5488775B1 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

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Abstract

レーザ動作中においても膜剥がれが発生しない堅牢な端面保護膜を設けた高い信頼性を有する窒化物半導体レーザ素子を提供する。III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、半導体積層体における発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜を備え、保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層から構成され、発光端面から端面保護層と酸素拡散抑制層の順に配置されており、端面保護層は、アルミニウムを含む窒化物からなる結晶性膜を含んだ層であり、酸素拡散抑制層は金属酸化物膜をシリコン酸化膜が挟んだ構造であり、金属酸化物膜はレーザ光によって結晶化することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。

Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子に関し、特に発光端面に保護膜を設けた窒化物半導体レーザ素子に関する。
半導体レーザ素子のうち、窒化物半導体レーザ素子は、ブルーレイディスク(Blu−ray(登録商標)Disc)等に代表される光ディスクメディアの再生及び記録用の光源として使用されている。また、出射光の波長を調整し、レーザアニールなどの加工用光源、プロジェクタやレーザテレビなどのディスプレイ用光源として用いることも検討されている。さらには窒化物半導体レーザ素子と蛍光体などを組み合わせることでディスプレイや照明装置の固体光源として用いることも検討されている。
窒化物半導体レーザ素子を含む一般的な半導体レーザは、光出力が増大すると、光出力一定の条件では動作電流が徐々に増加する劣化現象や、光学破壊と呼ばれる現象により半導体レーザが発振しなくなる現象が知られている。したがって、窒化物半導体レーザ素子を高光出力化させるため、窒化物半導体レーザ素子の劣化を抑制又は防止するさまざまな提案がなされている。
例えば、特許文献1や特許文献2には、光学破壊を伴う頓死を抑制する構造により光出力を数100mWまで向上させている。
具体的には、半導体レーザ素子が有する1組の対向する端面のうち、レーザ光が出射する発光端面(発光端面をフロント端面とし、もう一方を後端面またはリア端面とする)について、フロント端面およびリア端面を覆う保護膜を堅牢化及び安定化することで、光学破壊を抑制する提案がなされている。
以下、図18を用いて、従来の窒化物半導体レーザ素子400について説明する。従来の窒化物半導体レーザ素子400は、n型GaN基板上に活性層(発光層)を含む窒化物半導体層410を有している。窒化物半導体層410はフロント端面413と後面のリア端面414が形成される。フロント端面413には第1端面コート膜415と第2端面コート膜416で構成される端面コート膜が形成され、リア端面414には端面コート膜417が形成される。このとき第1端面コート膜415としてアルミニウム窒化膜(AlN)を用い、第2端面コート膜416として酸化アルミニウム(Al)を用いることが記述されている。
上記の従来構成では、第1端面コート膜としてAlN膜を六方晶の結晶膜を用いることにより、通常のAlN膜を用いる場合と比べて、窒化物半導体レーザ素子端面の酸化及び膜剥がれを防ぎ、光学破壊や端面の劣化を抑制して、光出力を数100mWまで高出力化することを可能にしている。
特開2007−318088号公報 特開2012−044230号公報
しかしながら、従来構造に示されているAlNの結晶膜をコート膜に用いただけでは、さらに高い光出力、特に光出力が1ワットを越える場合は、窒化物半導体レーザ素子の特性低下の抑制が不十分である。
本発明は、従来の問題を解決し、高光出力動作時においても発光端面もしくは/およびコート膜の劣化を抑制し、長時間駆動が可能な窒化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、半導体積層体における発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、端面保護層と酸素拡散抑制層とは発光端面側から端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、端面保護層は、結晶性のアルミニウム窒化膜よりなる層であり、酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも1層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記端面保護層側よりシリコン酸化膜、金属酸化物膜の順に配置され、金属酸化物膜は、発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されているものである。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、半導体積層体における発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、端面保護層と酸素拡散抑制層とは発光端面側から端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、端面保護層は、結晶性のアルミニウム窒化膜よりなる層であり、酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも2層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記金属酸化物膜が前記2層のシリコン酸化膜によって挟まれ、金属酸化物膜は、発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されているものである。
この構成により、金属酸化物膜が発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されることにより、結晶化による膜密度の増大によって酸素の拡散が阻害されることから、保護膜内部の劣化を抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
さらに、アルミニウム窒化膜と金属酸化物膜との間にシリコン酸化膜が挿入されることから、酸化反応の進行による膜応力の増大を緩和し、保護膜中の膜剥がれが抑制することができることから、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに金属酸化物膜がアルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タンタル、亜鉛のいずれかを含む酸化膜であることが好ましい。
この好ましい構成によれば、波長400nm近傍の光吸収によって結晶化反応が進行し、金属酸化物の結晶化膜が酸素の透過を阻害し、保護膜内部への酸素の侵入を防ぐことができることから、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに端面保護層は、発光端面を直接被覆した第一のアルミニウム窒化膜と、第一のアルミニウム窒化膜を被覆するよう配置された第一の金属酸化物膜と、第一の金属酸化物膜を被覆するよう配置された第二のアルミニウム窒化膜から構成されることが好ましい。
この好ましい構成によれば、2層のアルミニウム窒化膜によって端面が保護されることから酸素の発光端面への拡散を阻害できることから、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに第一の金属酸化物膜はアルミニウム酸化膜であり、発光端面から出射したレーザ光によって結晶化することが好ましい。
この好ましい構成によれば、金属酸化物膜はアルミニウム窒化膜で挟まれた構成であり、拡散酸素の少ない状態で結晶化するため、膜密度の高い結晶化アルミニウム酸化膜を形成することから、発光端面への酸素の拡散を抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに第一のアルミニウム窒化膜は、発光端面に対してm軸配向を主成分としてなり、第二のアルミニウム窒化膜はc軸配向を主成分としてなることが好ましい。
この好ましい構成によれば、アルミニウム窒化膜で挟まれた金属酸化物膜はm軸配向のアルミニウム窒化膜の基板効果によって高密度の結晶膜を形成し、第二のアルミニウム窒化膜がc軸配向することで応力を緩和することから、酸素の透過を阻害しかつ結晶化に伴う膜剥がれを防ぐことができ、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに発光端面の反射率が、発光端面より出射されるレーザの波長に対して反射率スペクトルの極大値または極小値であることが好ましい。
この好ましい構成によれば、金属酸化物膜が光結晶化によって屈折率が変化しても反射率の変動を低減することが可能となることから、高出力長時間動作においても安定した特性を維持できる窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに金属酸化物膜がレーザ光により結晶化される領域は、レーザ光の近視野像の領域であることが好ましい。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに金属酸化物膜が酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることが好ましい。
この好ましい構成によれば、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンは光結晶化の進行が早いため膜密度の高い結晶化膜を速やかに形成することができ、発光端面への酸素の拡散を速やかに抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、半導体積層体における発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、端面保護層と酸素拡散抑制層とは発光端面側から端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、端面保護層は、結晶性のアルミニウム酸窒化膜を有する層であり、酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物と少なくとも1層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記端面保護層側よりシリコン酸化膜、金属酸化物膜の順に配置され、金属酸化物膜は、発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されているものである。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、半導体積層体における発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、端面保護層と酸素拡散抑制層とは発光端面側から端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、端面保護層は、結晶性のアルミニウム酸窒化膜を有する層であり、酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物と少なくとも2層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記金属酸化物膜が前記2層のシリコン酸化膜によって挟まれ、金属酸化物膜は、発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されているものである。
この構成により、金属酸化物膜が発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されることにより、結晶化による膜密度の増大によって酸素の拡散が阻害されることから、保護膜内部の劣化を抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに端面保護層は、発光端面を直接被覆した第一のアルミニウム酸窒化膜と、第一のアルミニウム酸窒化膜を被覆するよう配置された第一の金属酸化物膜と、第一の金属酸化物膜を被覆するよう配置された第二のアルミニウム酸窒化膜から構成されることが好ましい。
この好ましい構成によれば、2層のアルミニウム酸窒化膜によって端面が保護され、酸素の発光端面への拡散を阻害できることから、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに第一のアルミニウム酸窒化膜は、発光端面に対してm軸配向を主成分としてなり、第二のアルミニウム酸窒化膜はc軸配向を主成分としてなることが好ましい。
この好ましい構成によれば、アルミニウム酸窒化膜で挟まれた金属酸化物膜はm軸配向のアルミニウム酸窒化膜の基板効果によって高密度の結晶膜を形成し、第二のアルミニウム酸窒化膜がc軸配向することで応力を緩和することから、酸素の透過を阻害しかつ結晶化に伴う膜剥がれを防ぐことができ、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、さらに第一のアルミニウム酸窒化膜および第二のアルミニウム酸窒化膜における窒素の原子組成が40%以上であることが好ましい。
本発明に係る窒化物半導体レーザ素子は、高出力動作時においても保護膜の酸化反応が生じず、光学破壊を起こさない堅牢な端面保護膜が得られるため、長寿命で且つ高信頼性を実現することができる。
図1Aは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の製造工程に係る断面図である。 図1Bは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の製造工程に係る断面図である。 図2は、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の断面図である。 図3Aは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の端面保護膜形成工程の概略を示す断面図である。 図3Bは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の端面保護膜形成工程の概略を示す断面図である。 図3Cは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の端面保護膜形成工程の概略を示す断面図である。 図3Dは、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の端面保護膜形成工程の概略を示す断面図である。 図4は、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の反射率スペクトルを示す図である。 図5は、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子をパッケージに搭載した窒化物半導体レーザ装置の断面図である。 図6は、本発明の第2の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子の断面図である。 図7は、窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の反射率スペクトルを示す図である。 図8は、比較例1に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の断面透過電子線像を示す図である。 図9Aは、比較例1に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の発光端面付近のアルミニウムの組成分布図である。 図9Bは、比較例1に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の発光端面付近の酸素の組成分布図である。 図10は、本発明に係る窒化物半導体レーザ素子と比較例2に係る窒化物半導体レーザ素子とのエージング試験による劣化曲線を比較した図である。 図11Aは、本発明に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の発光端面付近の断面透過電子線像を示す図である。 図11Bは、比較例2に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の発光端面付近の断面透過電子像を示す図である。 図12Aは、本発明に係る窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜のAl膜の変質した領域の透過電子線回折パターンを示す図である。 図12Bは、本発明に係る窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜のAl膜の変質していない領域の透過電子線回折パターンを示す図である。 図13Aは、比較例3に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の断面透過電子線像を示す図である。 図13Bは、比較例4に係る窒化物半導体レーザ素子のエージング後の断面透過電子線像を示す図である。 図14は、本実施例に係るAlON膜の酸素流量と原子組成の関係を示した図である。 図15は、本実施例に係るAlON膜の酸素流量と屈折率の関係を示した図である。 図16は、本実施例に係るAlON膜のN原子の原子組成と屈折率の関係を示した図である。 図17は、本実施例に係わるグループCのAlON膜のX線回折スペクトルを示した図である。 図18は、従来の窒化物半導体レーザ素子の模式断面図である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例について図面を参照しながら説明する。
第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子を、出射レーザ光の中心波長が390nm〜430nmの窒化ガリウム(GaN)系青紫色レーザ装置として、その構成を製造方法と共に説明する。
まず、図1Aを用いて本実施例の窒化物半導体レーザ素子の積層構造について説明する。窒化物半導体レーザ素子の積層構造は、例えば有機金属気相堆積(MOCVD)法により、n型GaNからなるn型基板11の上に、複数のIII族窒化物半導体からなる半導体積層体50をエピタキシャル成長することにより構成される。
具体的には、面方位のc面(=(0001)面)を主面とするn型GaNであるn型基板11の主面上に、例えば厚さが約1μmでn型ドーパントであるSiの濃度が1×1018cm−3のn型GaNであるn型半導体層12、厚さが約1.5μmでSiの濃度が5×1017cm−3のn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層13、厚さが約0.1μmでSiの濃度が5×1017cm−3のn型GaNからなるn型光ガイド層14、InGaNからなる多重量子井戸活性層15、厚さが約0.1μmでp型ドーパントであるMgの濃度が1×1019cm−3のp型GaNからなるp型光ガイド層16、厚さが約10nmでMgの濃度が1×1019cm−3のp型Al0.2Ga0.8Nからなるp型電子ブロック層17、p型AlGaNからなるp型クラッド層18及び厚さが約20nmでMgの濃度が1×1020cm−3のp型GaNからなるp型コンタクト層19を順次成長する。
ここで、多重量子井戸活性層15は、厚さが約7nmのアンドープのInGaNからなる井戸層と、厚さが20nmのアンドープのIn0.02Ga0.98Nからなる障壁層とにより構成された二重量子井戸構造を有する。井戸層のIn組成は、発振波長が例えば405nmとなるように調整されている。
なおp型電子ブロック層17は、多重量子井戸活性層15とp型光ガイド層16の間に配置してもよい。
また、p型クラッド層18は、それぞれMgの濃度が1×1019cm−3で且つ厚さが約2nmの、p型Al0.1Ga0.9Nとp型GaNとからなる超格子構造を有し、合計の膜厚は0.5μmであるp型超格子クラッド層としてもよい。
次に図1Bを用いて、本実施例の窒化物半導体レーザ素子のリッジ導波路の構成および製造方法について説明する。図1Aに示すように、図1Aの半導体積層体50のp型コンタクト層19の上に、SiOからなるマスク層20を形成する。続いて、リソグラフィ法及びエッチング法により、マスク層20をn型基板11の結晶軸に対して<1−100>方向に延びるストライプ状にパターニングする。続いて、ストライプ状にパターニングされたマスク層20を用いて、p型コンタクト層19及びp型クラッド層18に対してドライエッチングを行うことにより、p型コンタクト層19及びp型クラッド層18に、結晶軸の<1−100>方向に延びるストライプ状のリッジ導波路50aを形成する。
ここで、p型クラッド層18におけるリッジ導波路50aの側方部分の厚さ(残し膜厚)は例えば約0.1μmである。また、リッジ導波路50aの下部の幅は例えば約10μmであり、リッジ導波路50aの上部の幅は例えば約8μmである。
次に図2を用いて、本実施例の窒化物半導体レーザ素子1の構成および製造方法について説明する。まず図2に示すように、図1Bに示すマスク層20を除去し、その後、リソグラフィ法及び真空蒸着法等により、リッジ導波路50aを構成するp型コンタクト層19の上に、例えばパラジウム(Pd)と白金(Pt)の積層膜からなるP側電極21を形成する。続いて、n型基板11をへき開が容易となるように薄膜化(裏面研磨)する。その後、n型基板11の裏面に、例えばチタン(Ti)と金(Au)の積層膜からなるN側電極22を形成する。
続いて、半導体積層体50におけるリッジ導波路50aの下方に形成される共振器の長さが例えば、約600μmから約2000μmの間、好ましくは約800μm又は約1200μmとなるように、n型基板11及び半導体積層体50を劈開する。この劈開により、半導体積層体50には、面方位が(1−100)面からなる端面ミラーが形成される。
端面ミラーは、レーザ光を出射するフロント端面28とレーザ光を反射するリア端面29が対向して形成されることで構成される。
なお、本願明細書において、結晶軸及び面方位の指数に付した負の符号“−”は該符号に続く指数の反転を便宜的に表している。例えば(1−100)は以下の数1で表す。
Figure 0005488775
なお、方向についても同様に、例えば<1−100>は以下の数2で表す。
Figure 0005488775
その後、窒化物半導体レーザ素子の各端面には、高光出力時においても、半導体積層体50の端面の劣化を防止すると共に端面の反射率を調整することができる多層保護膜がそれぞれ形成される。具体的には、図2に示すように、レーザ光が出射するフロント端面28にはフロント端面の多層保護膜30を形成し、フロント端面の多層保護膜30は、端面保護層31および酸素拡散抑制層32が積層された構成とする。ここで、端面保護層31は結晶性のアルミニウム窒化膜(AlN)からなる保護膜33で構成され、該保護膜33の上には、シリコン酸化膜34およびシリコン酸化膜36と、シリコン酸化膜34およびシリコン酸化膜36に挟まれた金属酸化物膜35が積層されて酸素拡散抑制層32を構成する。ここで金属酸化物膜35は、具体的には酸化アルミニウム(Al)を用いる。
一方、フロント端面28と対向するリア端面29には、酸化アルミニウム(Al)/酸化ジルコニウム(ZrO)とを複数対で積層した多層保護膜25を形成する。但し、リア端面は、所望の反射率を得られる構成であれば、SiO/ZrO、AlON/SiO、Al/SiO又はAlN/SiOなどを複数対で積層した構成としてもよい。ここで、リア端面29においても、特にリア端面29と接する第1の保護膜にはフロント端面28と同様に、AlN膜を用いることが望ましい。AlN膜は堅牢で熱伝導性にも優れているため、この構成により、光出射がないリア端面においても、優れた保護膜として機能することができる。
上記、フロント端面28とリア端面29上に形成される多層保護膜の反射率は、フロント端面側の反射率は約1〜15%で、リア端面の反射率は約90〜100%で設計される。上記反射率は、フロント端面及びリア端面の各保護膜の膜厚を適宜設計されることにより得られる。
また、上記の多層保護膜を構成するAlNからなる保護膜33、シリコン酸化膜34、シリコン酸化膜36およびAlからなる金属酸化物膜35、は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法を用いて形成される。ECRスパッタ法は、劈開で形成したフロント端面およびリア端面にスパッタイオンを直接に照射せずに多層保護膜を形成することができる。このため、イオン照射により半導体表面にダメージを与え、結晶欠陥が増加することを抑制することができる。このため、半導体レーザ素子における端面コートの成膜法として好ましい。なお、上記ダメージの影響が十分小さい場合には、ECRスパッタ法の他に、高周波(RF)スパッタ法又はマグネトロンスパッタ法を用いて形成してもよい。
以下、図3A〜図3Dを用いて、窒化物半導体レーザ素子の製造方法、特にフロント端面の多層保護膜30とリア端面の多層保護膜25の具体的な製造方法について説明する。本実施例ではフロント端面の多層保護膜30とリア端面の多層保護膜25の形成方法の一例としてECRスパッタ法を用いた場合について説明する。
まず、図3Aに示すように、P側電極21とN側電極22を形成したn型基板11上の半導体積層体50を劈開し、半導体レーザ素子の発光端面を形成したレーザバーサンプル40を作製する。ここでレーザバーサンプルとは複数の半導体レーザ素子が同一の端面を共有する状態のことを指し、レーザバーサンプルを分割することで半導体レーザ素子が得られる。続いてECRスパッタ装置43内にレーザバーサンプル40を配置する。図3BはECRスパッタ装置43内でのレーザバーサンプル40の設置を模式的に示している。ECRスパッタの成膜領域において、発光面を成膜面として誘電体膜を成膜する。具体的には、以下のように成膜する。まずはECRスパッタ装置43において台44の上に冶具45を用いて複数のレーザバーサンプル40を配置し、レーザバーサンプル40のフロント端面をスパッタのターゲット材41側に向け、プラズマ発生チャンバ42で発生させたプラズマ流を用いて、図3Cに示すように当該フロント端面28にAlN膜などを成膜してフロント端面の多層保護膜30を形成する。次に図3Dに示すようにレーザバーサンプル40のリア端面29をスパッタのターゲット材41側に向け、当該リア端面にAlN膜などを成膜してリア端面の多層保護膜25を形成する。ここで、発光面の保護の観点からフロント端面の多層保護膜を先に成膜することが望ましい。
続いてフロント端面およびリア端面の多層保護膜の具体的な実施例について説明する。端面保護層を構成するAlN膜は、スパッタのターゲット材41として、AlNからなるターゲット材と窒素(N)ガスとの組み合わせ、又はAlからなるターゲット材と窒素ガスとの組み合わせによる反応性スパッタにより成膜が可能である。本実施例においては、金属精錬により純度を容易に高めることができるAlからなる金属ターゲット材に、基準ガスとしてアルゴン(Ar)と、反応性ガスとして窒素ガスとを組み合わせて用いている。Al金属ターゲットを用いることで、反応性ガスを窒素から酸素に置換すればターゲットの交換無しに連続してAlを成膜することができる。
本実施例においては、保護膜33(AlN膜)の膜厚は、約30nmに設定している。AlN膜は膜応力が大きく、AlN膜をレーザバーサンプル40の劈開端面に50nm以上の厚膜で成膜すると膜剥がれが生じる。したがって、端面保護層31の保護膜33(AlN膜)の膜厚は50nm以下であるのが望ましい。また、光吸収による発熱を抑えるには、AlN膜中の光の光路長を短くすることが望ましく、このことからも端面保護層31の保護膜33(AlN膜)の膜厚は50nm以下であるのが望ましい。一方、AlN膜を5nm未満の薄膜として形成した場合には、AlN膜を酸素等が透過しやすくなるため、レーザバーサンプル40の端面が酸化される要因となる。また、AlN膜の膜厚を5nm未満にすると成膜時の膜厚制御が困難であり、膜厚にばらつきが生じてしまう。したがって、端面保護層31を構成する保護膜33(AlN膜)の膜厚は5nm以上且つ50nm以下が望ましく、本実施例に示すように約30nmに膜厚を設定することがより好ましい。
本実施例の保護膜33であるAlN膜は、成膜条件として、各ガスの流量条件を、それぞれ室温で、アルゴン(Ar)ガスを30ml/minとし、窒素(N)ガスを4.7ml/minとして成膜される。本構成により堅牢なAlN膜を成膜できる。
本実施例の酸素拡散抑制層32を構成するシリコン酸化膜(SiO膜)および金属酸化物膜(Al膜)においても、ECRスパッタ法によって成膜する。SiOおよびAlはECRスパッタのターゲット材としてSiターゲットおよびAl金属ターゲットを用い、Arと反応ガスとして酸素を組み合わせて用いることで形成できる。したがって本実施例の構成により酸素拡散抑制層32を容易に形成することが可能である。
本実施例においては、AlN膜と接するシリコン酸化膜34(SiO膜)および最外層のシリコン酸化膜36(SiO膜)は、成膜条件として、各ガスの流量条件を、Arガスを30ml/minとし、酸素(O)ガスを7.9ml/minとして成膜される。またシリコン酸化膜(SiO膜)34および36で挟まれる金属酸化物膜35(Al膜)については、成膜流量条件としてArガスを20ml/minとし、酸素(O)ガスを4.9ml/minとして成膜される。
本実施例のフロント端面の多層保護膜30の各層の膜厚は、光出射面の反射率を約7%となるように調整される。具体的な各膜厚は、シリコン酸化膜(SiO膜)34、36はそれぞれ100nm、70nmとし、金属酸化物膜35(Al膜)は80nmとする。図4に本実施例の光出射面におけるフロント端面の多層保護膜30の端面反射率スペクトルを示す。ここで、フロント端面の多層保護膜30の反射スペクトルは、窒化物半導体レーザ素子の発振波長である約405nmで極大値となるように設計される。このようにフロント端面の多層保護膜の発振波長における反射率を、反射率スペクトルの極値に合わせることで、成膜プロセス上の膜厚変動や屈折率変動に対する反射率の変動を小さく抑えることが可能となる。
さらに本実施例のリア端面の多層保護膜25の各層の膜厚は、反射率が約95%となるように設計される。
上記、具体的に説明したフロント端面の多層保護膜30は、図3Cに示すようにレーザバーサンプル40のフロント端面28側にECRスパッタ法により形成される。そして同様に、リア端面29側にはリア端面の多層保護膜25が、ECRスパッタ法により形成される。そして、劈開によりレーザバーサンプル40を個々の窒化物半導体レーザ素子に分割することで、図3Dに示すように窒化物半導体レーザ素子1が作製される。
続いて図5を用いて、窒化物半導体レーザ素子1をパッケージングすることで構成される窒化物半導体レーザ装置51について説明する。図5に示すように、窒化物半導体レーザ装置51には、例えば、金属からなるステム52の一つの面に複数の電極端子52aが形成され、他の面にレーザ保持部52bが形成されている。窒化物半導体レーザ素子1は金属ステム52のレーザ保持部52bの上にサブマウント56を介して固着されている。ステム52には、窒化物半導体レーザ素子1及びレーザ保持部52bを覆うと共に、該窒化物半導体レーザ素子1のフロント端面の多層保護膜30と対向する位置に窓部53aを有する金属からなるキャップ53が固着されている。該窓部53aには、内側からガラス板54が固着されて、ステム52とキャップ53とガラス板54とから構成される空間は密閉される。窒化物半導体レーザ素子1が配置される密閉された空間は、水分を含まない乾燥空気又はアルゴン等の希ガスからなる封止気体55が充填される。
上記構成により、保護膜33(AlN膜)と金属酸化物膜35(Al膜)とはシリコン酸化膜34(SiO膜)により隔てられているので、金属酸化物膜35(Al膜)が発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されることにより、金属酸化物膜35(Al膜)の結晶化による密度の増大によって酸素の拡散が阻害され保護膜内部の劣化を抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
なお、本実施例に係る本発明の効果とメカニズムについては以下に示す第2の実施例とともに詳しく説明する。
(第2の実施例)
続いて図6から図13Bを用いて本発明に係る窒化物半導体レーザ素子の第2の実施例について説明する。なお、第1の実施例と同じ構成の部分については同じ符号を付してその説明を省略する。
図6に本発明に係る第2の実施例の窒化物半導体レーザ素子201の断面概略図を示す。第1の実施例と同様に半導体積層体50のフロント端面28には、端面保護層261と酸素拡散抑制層232が積層されることで構成されるフロント端面の多層保護膜230が形成されている。端面保護層261は3層構造を有しており、フロント端面28に接する第1の保護膜263としてAlN膜が成膜される。その上に第2の保護膜264としてAl膜である金属酸化物膜が成膜される。第2の保護膜264を被覆する第3の保護膜265としてAlN膜が成膜される。酸素拡散抑制層232は第1の実施例と同様の構成であり、シリコン酸化膜(SiO膜)234、236に金属酸化物膜(Al膜)235が挟まれた構成である。シリコン酸化膜、金属酸化物膜を構成するAlN膜およびAl膜、さらにSiO膜は、第1の実施例と同様の方法で成膜される。フロント端面の多層保護膜230を構成する各層の膜厚はフロント端面の多層保護膜230の反射率が6%となるように設計され、具体的には例えば各膜厚はフロント端面側からそれぞれ第1の保護膜(AlN膜)263が20nm、第2の保護膜(Al膜)264が10nm、第3の保護膜(AlN膜)265が15nm、シリコン酸化膜(SiO膜)234が89nm、金属酸化物膜(Al膜)235が89nm、シリコン酸化膜(SiO膜)236が235nmとなるように設定される。さらに、窒化物半導体レーザ素子201のパッケージングについては、第1の実施例1に記載の方法と同様の方法により、ステム52上に実装される。
ここで、第1の保護膜(AlN膜)263は、主にm軸配向を有する単結晶性の高い膜であるのに対し、第3の保護膜(AlN膜)265はc軸配向を主体とする多結晶膜である。
上記構成により、第3の保護膜(AlN膜)265と金属酸化物膜(Al膜)235とはシリコン酸化膜(SiO膜)234により隔てられているので、金属酸化物膜(Al膜)235が発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されることにより、金属酸化物膜(Al膜)235の密度の増大によって酸素の拡散が阻害され保護膜内部の劣化を抑制でき、高出力で且つ長寿命の窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
また、第1の保護膜(AlN膜)263はm軸配向であり、第3の保護膜(AlN膜)265はc軸配向であるので、金属酸化物膜(Al膜)264が、m軸配向している第1の保護膜(AlN膜)263の基板効果によって高密度の結晶膜を形成することができる。さらに第3の保護膜(AlN膜)265がc軸配向していることでフロント端面の多層保護膜内の応力を緩和させることができる。このためフロント端面の多層保護膜において、酸素の透過を阻害するとともに、結晶化に伴う膜剥がれを防ぐことができる。
上記構成において、フロント端面の反射率は第1の実施例の窒化物半導体レーザ素子と同様に発振波長での反射率が反射率スペクトルの極大値となるように設計した。図7は第2の実施例に係わる窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の反射率スペクトルを示している。発振波長が410nmのときに反射率が極大値を取るよう膜厚を定めている。このような構成にすることで、製造上の膜厚ばらつきによる反射率のばらつきが小さく抑えられることから、半導体レーザの特性ばらつきを小さくすることができる。
さらに、窒化物半導体レーザ素子を長期動作させることで、フロント端面の多層保護膜の金属酸化物膜が光結晶化により膜密度が高密度化し、金属酸化物膜の屈折率が0.05から0.1程度大きくなった場合でも、窒化物半導体レーザ素子の特性変動を小さくすることができる。つまり、フロント端面の多層保護膜の反射スペクトルを発振波長において反射率の極大値になるようにすることで、上記屈折率変化に対しても、半導体レーザ特性の変動を抑えることができる。したがって、高出力動作中においても安定したレーザ特性が確保でき、高出力で高信頼性の窒化物半導体レーザ素子を提供できる。
続いて本実施例に係る本発明の効果とメカニズムについて、実験データを用いながら以下に詳しく説明する。
なお、本発明にかかわる第1の実施例も第2の実施例も同一のメカニズムで説明できる。
(1)比較例について
まず、従来構造に基づいた比較例1の窒化物半導体レーザ素子について説明する。この比較例1の窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜は、端面に接してAlNの結晶膜である第1の端面保護膜、この第1の端面保護膜に接してAlよりなる第2の端面保護膜、この第2の端面保護膜に接して第3の端面保護膜が形成されたものである。
図8は、比較例1の窒化物半導体レーザ素子を光出力をワット級にし、1000時間エージング試験を行った後のフロント端面部付近の断面TEM画像を示したものである。ここでフロント端面の多層保護膜の詳細な構成を説明する。フロント端面の多層保護膜は3層構造であり、フロント端面271に接する第1の端面保護膜272は30nmのAlNからなる結晶膜である。第2の端面保護膜273は45nmのAlであり、第3の端面保護膜274は65nmのSiOである。この構成によってフロント端面の多層保護膜の反射率を約6%としている。3層の端面保護膜はECRスパッタによって連続成膜した。尚、各膜の成膜時におけるガスの流量条件は第1の実施例と同じ条件で行った。またエージング試験においては、通電条件が電流一定のエージング試験とし、ケース温度を60℃とし、動作電流を1.3Aとした。このときの初期光出力は約2Wであった。
図8に示すように、第1の端面保護膜(AlN膜)272と第2の端面保護膜(Al膜)273が激しく固相反応していることが確認できる。また、これらの固相反応に伴う膜剥がれ275も見られる。このような固相反応や膜剥がれが発生すると、窒化物半導体レーザ素子のレーザ光出射部において、レーザ光の光吸収や光散乱が発生し、端面において大きな光学損失が発生する。特に光吸収による端面の局所的な発熱は端面のバンドギャップを縮小化させ、GaN結晶内部の光吸収を増大させてしまう。この温度上昇と光吸収の正帰還によって加速度的に端面の温度が上昇し、局所的な端面近傍の劣化を引き起こすと考えられる。具体的には、活性層76のフロント端面近傍では、活性層の構造の乱れが見られる。この活性層の乱れはInGaN量子井戸のInが拡散しているためであり、先述の端面保護膜の劣化による端面の温度上昇に起因すると考えられる。
図9Aおよび図9Bに図8で示した端面領域のアルミニウム(Al)と酸素(O)の組成分布を示す。図9Aで示すようにAlNとAlはAlの密度差によって区別できるが、光出射領域では、AlNとAlの境界が不明瞭になっており、固相反応が進行したことがわかる。図9Bに示す酸素の分布から、光出射領域のみAlN側に大きく酸素が拡散していることがはっきりとわかる。この結果から、エージング試験によって発生した端面保護膜の劣化現象は、酸素の拡散(酸化反応)を伴うAlN膜の酸化反応であると結論できる。このように酸素の拡散と酸化反応が端面劣化のメカニズムの主要因である。この結果が示すことは従来のAlN膜を端面保護膜とする構成であってもワット級の高い光出力のもとでは、端面劣化が進行するということである。
(2)本発明の窒化物半導体レーザ素子の有利な点について
光出力がワット級など高光出力動作において端面劣化を抑制するためには、従来技術よりも酸素拡散と固相反応の抑制が必要である。これに対し、本発明の実施例に係わる構成では、酸素拡散抑制層のAl膜が光結晶化することで酸素拡散を抑制することが可能となる。
図10は、本実施例の窒化物半導体レーザ素子と比較例2の窒化物半導体レーザ素子のエージング試験による光出力と時間の関係を比較したグラフである。図中で示す劣化曲線291は本発明の第2の実施例で示した端面保護膜構成を有する窒化物半導体レーザ素子の光出力の劣化曲線である。図11Aに本発明の第2の実施例で示す窒化物半導体レーザ素子の端面近傍の断面写真を示す。図11Aにおいてフロント端面271には、半導体積層体50側より第1の保護膜263に相当するAlN膜311、金属酸化物膜264に相当するAl膜312、第3の保護膜265に相当するAlN膜313、シリコン酸化膜234に相当するSiO膜314、金属酸化物膜235に相当するAl膜315、シリコン酸化膜236に相当するSiO膜316の順に成膜された構成が示されている。
一方、劣化曲線292は、比較例2の窒化物半導体レーザ素子の光出力の劣化曲線を示す。比較例2の窒化物半導体レーザ素子の構成は、図6で示す実施例2の窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜構成において、第3の保護膜(AlN膜)265に接するシリコン酸化膜(SiO膜)234を除去した構成の端面保護膜を有する。具体的には、比較例2の窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の構成は図11Bに示されている。図11Bにおいてフロント端面271には半導体積層体50側より順に、第1の保護膜263に相当するAlN膜301、第2の保護膜264に相当するAl膜302、第3の保護膜265に相当するAlN膜303、金属酸化物膜235に相当するAl膜304、シリコン酸化膜236に相当するSiO膜305が成膜される。
上記、エージング試験の比較において、ケース温度を60℃、動作電流を1.3Aとして試験を行った。このとき、本実施例および比較例2の窒化物半導体レーザ素子の光出力はいずれも通電初期で約2.0Wであった。
図10において、劣化曲線291に示す本実施例の窒化物半導体レーザ素子は1000時間までほとんど劣化することなく動作しているのに対し、比較例2の窒化物半導体レーザ素子(フロント端面の多層保護膜がAlN膜303とAl膜304の間にSiO膜がなく直接接した構成)の劣化曲線292では820時間程度で頓死が発生している。
上記において劣化曲線291で示した本実施例の窒化物半導体レーザ素子について、1000時間エージング試験後のフロント端面付近の断面TEM像を図11Aに示す。また比較のため劣化曲線292に示した比較例2の窒化物半導体レーザ素子の820時間後のフロント端面付近の断面TEM像を図11Bに示す。
図11Aに示すように、本発明の実施例に係るフロント端面の多層保護膜の構成を有する窒化物半導体レーザ素子では、Al膜315の光通過領域に変質領域317が見られるものの、1000時間のエージング試験後でも端面保護膜中に膜剥がれは発生していない。
一方、図11Bに示す比較例2の窒化物半導体レーザ素子では、AlN膜303と酸素拡散抑制層のAl膜304の間に膜剥がれ306が発生していることがわかる。このため、エージング時間820時間で頓死したものと考えられる。さらにAlN膜303においては、酸化を伴う固相反応が進行していることもわかった。
上記結果から、本実施例の構成の窒化物半導体レーザ素子は、端面保護膜中の膜剥がれの発生が抑制され、酸素拡散抑制層と接するAlN膜の固相反応による劣化が劇的に抑制できていることがわかる。
なお、この変質領域317はAlの結晶層であった。図12Aおよび図12Bは、図11AのAl膜315において、変質している領域317とそれ以外の変質していない領域318の透過電子線回折パターンをそれぞれ示している。図12Aに示すように、変質領域317の領域では明瞭な電子線の回折パターンが得られたことから結晶性の膜となっていると推察できる。一方、Al膜が変質していない領域318の電子線回折パターンは、図12Bで示すように、アモルファスの特徴である回折ピークが存在しないハローパターンであった。また、変質領域317は、半導体レーザ素子のレーザ光の近視野像の領域にほぼ一致した。
このことからAl膜315は成膜時にはアモルファスなAl膜として形成されるが、長時間の出射光の照射により結晶性の高いAl膜に変質すると考えられる。さらにこの結果は、Al膜がSiO膜に挟まれた酸素拡散抑制層を用いることで膜剥がれやAlN膜の固相反応といった端面保護膜の劣化が劇的に抑制できることを示している。
メカニズムは完全に明確になっているわけではないが、本発明に係わる酸素拡散抑制層を用いることで(i)窒化物との酸化を伴う固相反応を抑制されるのと同時に、(ii)酸素の拡散も抑制されるためであると考えられる。固相反応の抑制においては、AlN膜に接する保護膜がAlの場合はAlNの酸化反応が進行しやすいのに対し、SiOの場合は反応速度が遅くなるためだと考えられる。また、酸素バリア性能についてはAl膜が結晶化することによって増大するものと考えられる。
さらに本実施例の窒化物半導体レーザ素子の効果について以下に示す比較例3および比較例4の窒化物半導体レーザ素子のエージング試験後のフロント端面付近のTEM写真を用い、推定メカニズムとともに説明する。
図13Aおよび図13Bは比較例3および比較例4の窒化物半導体レーザ素子のエージング試験後のフロント端面領域の断面TEM画像である。比較例3および比較例4は、いずれもAlN/Al/SiOの3層構造のフロント端面の多層保護膜を有するが、各層厚が異なる構成である。上記構成の窒化物半導体レーザ素子において動作光出力2W、ケース温度60℃でエージング試験を行い比較した。図13Aは300時間エージング試験後、図13Bは900時間エージング試験後のサンプルを用いてフロント端面付近を調査した。図13Aに示す比較例3の窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の各膜厚は、AlN膜321が30nm、Al膜322が45nm、最表面のSiO膜323が60nmである。一方、図13Bに示す比較例4の窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の各膜厚は、AlN膜326が10nm、Al膜327は比較例3と比較し厚く設定しており110nmである。最表面のSiO膜328は15nmである。図13Aに示すように比較例3では、わずか300時間のエージング試験であるにもかかわらず、AlN膜321とAl膜322の界面に反応層324が形成された。この領域の組成分析を行った結果、AlONが形成されており、AlN膜が酸化されていると考えられる。このAlN膜の酸化は、Al膜322およびSiO膜323を外部酸素が拡散することにより発生すると考えられる。また、比較例3の端面保護膜構成は、比較例1と同一構成であることから、図8で示すような膜剥がれを伴う劣化の前段階であると考えられる。他方、図13Bに示す比較例4の窒化物半導体レーザ素子では図13Aに示す比較例3の3倍の通電時間を印加したにもかかわらず、AlN膜326とAl膜327の界面での反応層の形成や膜剥がれがほとんど生じていない。この結果はAl膜327を厚膜化することで酸素の拡散距離が長くなり、AlN膜の酸化が抑制されたと考えることが可能である。しかし、図13Aに示す比較例3のAl膜322の膜厚は45nmであるのに対し、図13Bに示す比較例4のAl膜327は110nmであるため、膜厚は約2.4倍である。
一方、エージング試験時間による保護膜の劣化程度は3倍以上の差があることから、酸素の拡散距離の増加のみでは比較例3から比較例4へ変更したときの固相反応の抑制を説明するのは困難である。
一方、図13A、13BでAl膜内部の領域325、330、331の結晶化が進行していることがわかった。特に、図13Bに示すように比較例4では、Al膜中においてAlN膜側の領域330において結晶化が、図13Aに示す比較例3に対して進んでいることが判明した。この結果から、Al膜が厚膜化することで、AlN膜とAl膜の界面まで外部酸素が到達するのが遅くなり、先にAl膜の光結晶化が起こったと考えることができる。つまりレーザ動作時では、Al膜の光結晶化とAlN膜の光酸化反応が競争的に存在していると考えられ、AlN膜の酸化には酸素の存在が不可欠であることから、酸素が到達しない状態では先に光結晶が起こると考えられる。この結晶化層(領域330)の存在によって酸素の拡散が大きく抑制されるため、比較例4ではエージング試験時間が比較例3に対して3倍にもかかわらず、AlN膜の固相反応が抑制されていると考えられる。一般的にスパッタによって成膜されたAl膜の密度は低く、酸素供給を伴う結晶化によって膜密度が増大することが知られていることから、Al膜の結晶化を伴う高密度化が酸素バリア性の増大の要因であると考えられる。しかし、図13Bの比較例4で示したとおり、若干の反応層も確認されており、ワット級の高い光出力動作のもとでは、Al膜の結晶化による酸素拡散の抑制だけでは不十分であり、SiOによるAlN膜の固相反応抑制効果が組み合わされることで端面保護膜がより堅牢となる。よって本発明に係わる酸素拡散抑制層をAlN膜上に成膜することで、SiOのAlN膜の酸化反応の抑制効果と、結晶化Alの酸素バリア性の両効果が得られるため、ワット級の高光出力動作においても端面保護膜の劣化を生じさせない堅牢な端面保護膜を提供し、高い信頼性を有する半導体デバイスを実現することが可能となる。
次に酸素拡散を抑制する金属酸化物層の材料について説明する。酸素の拡散を抑制する効果はSiOで挟まれた金属酸化物層に起因し、特にレーザ動作によって光結晶化が生じることで膜密度が増大する材料であることが求められる。また、レーザの発振波長に対して透明であることも端面保護膜として必須の条件である。これらの観点から、本発明に係わる実施の形態では金属酸化物としてAl膜を用いたが、それに限る必要はなく、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タンタル、亜鉛のいずれかを含む酸化膜であればよい。これらの金属元素はECRスパッタやマグネトロンの反応性スパッタの固体ターゲットを用いて容易に作製が可能であり、結晶化についても容易に進行する。特に酸化ジルコニウムや酸化チタンは光結晶化の進行が早いため酸素拡散抑制層を構成する金属酸化物層としては適している。同様の理由で第2の実施例の窒化物半導体レーザ素子に係わる端面保護層中の金属酸化物もAl膜に限定する必要はなく、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タンタル、亜鉛のいずれかを含む酸化膜であってもよい。
なお、SiOで挟まれた金属酸化物層に関して言えば、波長400nm近傍でのSiOの屈折率は1.4と空気の屈折率(約1.0)に近いので、金属酸化物層としては波長400nm近傍にてSiOの屈折率よりも大きなものを用いる方が反射率を大きくとることができ、酸素拡散抑制層を構成する各層の層数を減らすことができ、窒化物半導体レーザ素子の歩留を向上させることができるので好ましい。よく用いられる金属酸化物層の屈折率を以下に示す。
Figure 0005488775
次に本発明に係わる第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子と第2の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子との相違について説明する。
第1の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子のフロント端面の多層保護膜の構成は光出射端面側からAlN/SiO/Al/SiOの4層構造で表される。一方、第2の実施例に係る窒化物半導体レーザ素子はAlN/Al/AlN/SiO/Al/SiOの6層構造で表される。第1の実施例と第2の実施例の相違は、端面保護層をAlN膜1層の構造からAlN/金属酸化物膜/AlNの3層構造に変更したことである。酸素がGaN端面に到達するのを防ぐためにAlN膜を2層化することで、より強固に酸素拡散をブロックすることが期待できる。さらに、図11Aからもわかるように、AlN膜311とAlN膜313では結晶性が異なる。これはAlN膜311は、結晶であるGaNの端面(m面)に成膜されるため、m軸配向を主成分とする単結晶性の高い膜であるのに対し、AlN膜313はアモルファスである金属酸化物膜の上に成膜されているため、c軸配向を主成分とする多結晶膜である。また、AlN膜311は結晶のグレインサイズも大きく、GaNのm面との格子不整合により、AlN膜内部の残留歪や応力が大きいのに対して、AlN膜313は多結晶膜であることから、膜ストレスが小さい。これらより、端面保護層を3層化することで、Al膜の結晶化による膜剥がれを抑制することが可能となる。さらに端面保護層内部の金属酸化物膜は、AlN膜311が単結晶性であり、光酸化による結晶化も基板効果によって緻密な結晶が形成される。さらにAlN膜313が酸素の拡散を抑制するため、フロント端面の多層保護膜内部のAl膜の結晶化がさらに促進される。この結果、端面保護層および酸素拡散抑制層の両層で酸素バリア性が増大することから、高出力動作においても高信頼性の半導体レーザを実現することが可能となる。ここで、端面保護層内部の金属酸化物膜の膜厚は膜剥がれを防止する観点から薄い方が好ましい。本第2の実施例に係わる窒化物半導体レーザ素子の端面保護層内部の金属酸化物膜(Al膜)の膜厚は10nmとした。
なお、上記実施例に係る本発明の窒化物半導体レーザ素子について、窒化物半導体の組成や用いられる基板は上記に限定されるものではなく、所望の発振波長を得るために窒化物半導体の組成や用いられる基板は適宜選択される。
具体的には、例えば出射光の中心波長を390nmよりも短波長化しても良く、430nmよりも長波長化してもよい。
また、上記の実施例において、p型クラッド層18におけるリッジ導波路50aの側方部分の厚さ(残し膜厚)を約0.1μmとし、リッジ導波路50aの下部の幅を約10μm、リッジ導波路50aの上部の幅を約8μmとしたがこの限りではない。例えば、ブルーレイディスク装置の光源として用いる場合、リッジ導波路の幅を1〜2μmとしシングルモードレーザとして用いてもよい。さらに、加工用光源、プロジェクタやレーザテレビなどの光源や、照明装置用の励起光源として用いる場合は、使用する光出力に応じてリッジ導波路の幅を2〜100μmの間で設定してもよい。
また、上記の実施例において、端面保護層31または端面保護層261を構成する膜として不純物が添加されたAlN膜を用いてもよい。例えば少量の酸素を添加したAl(O)Nでもよい。
また、上記の実施例において、端面保護層31または端面保護層261を構成する膜として、アルミニウム酸窒化膜(AlON)を用いてもよい。
ここで、アルミニウム酸窒化膜としては結晶性の膜がよく、例えば発光端面に対してm軸配向を主成分としてなる膜がよい。
また、端面保護層31または端面保護層261を構成する膜としてアルミニウム酸窒化膜を用いる場合に、半導体レーザ素子を構成する窒化物半導体層に接するアルミニウム酸窒化膜としてm軸配向を主成分としてなる結晶性の膜を用い、このm軸配向を主成分としてなる結晶性の膜と金属酸化物膜を介して接するアルミニウム酸窒化膜としてc軸配向を主成分としてなる膜を用いるのがよい。
次に、端面保護層31または端面保護層261を構成する膜として用いるアルミニウム酸窒化膜(AlON膜)について述べる。
AlONをECRスパッタを用いて成膜する場合は、OとNとの混合ガスを反応性ガスとして用いている。なお、成膜速度を制御するために、アルゴン(Ar)ガスをECRチャンバに同時に導入している。本実施例では、AlONの成膜には、該AlONの窒素の組成比を制御するため、Arの流量を20ml/min、Nの流量を5.5ml/minとし、さらに、Oの流量を変化させている。ここで、各ガスの流量は、標準状態(0℃、1気圧)としている(以下、同じ。)。本実施例においては、Oの流量を0ml/minから1.0ml/minまで変化させたときの、AlONを作製している。但し、各ガスの流量は一例であって、これに限られない。
図14にAlON膜の成膜時のOの流量とAlONの各元素組成との関係を示す。ここでNの原子組成とは、次のように定義する。
Nの原子組成(%)=(Nの原子数/AlとNとOの原子数の和)×100
このときのガス流量は、Arが20ml/minで、Nが5.5ml/minである。図14からは、Oの流量が増大するのに伴って、Nの組成が減少し且つOの組成が増加することが分かる。また、スパッタの雰囲気ガスとしてArを用いているため、膜中から若干のArを検出している。この組成の変化に伴って、AlONの物性も変化する。
図15は波長λが405nmの光に対する屈折率とOの流量との関係を示している。酸素を含まないAlN膜の屈折率は約2.1であり、窒素を含まないAl膜の屈折率は1.65である。図15からはAlON膜の屈折率はOの流量が増大するのに伴って、AlNに近い屈折率からAlに近い屈折率に向かって徐々に減少することが分かる。
図16に本実施例において作製したAlON膜におけるNの原子組成と屈折率(波長λが405nmの光に対する)との関係を示す。図16の横軸はAlON膜に含まれる窒素原子の原子組成を原子%で表しており、縦軸が屈折率を表している。Nの原子組成が0原子%の場合は、すなわちAlであり、Nの原子組成が50原子%の場合は、すなわちAlNである。本願発明者らは、図16に示すように、Nの原子組成に対して屈折率が異なる3つのグループに分かれることを見出した。ここで、Nの原子組成が0原子%〜23原子%のグループをグループAと呼び、Nの原子組成が24原子%〜40原子%のグループをグループBと呼び、Nの原子組成が40原子%以上のグループをグループCと呼ぶ。ここで、グループCに相当するNの原子組成が40原子%以上の場合は、屈折率が2.0前後とほぼAlNと同様の屈折率を示すことが分かった。
次に図17にNの原子組成が40%以上であるグループCのAlONのX線回折スペクトルを示す。グループAおよびグループBのAlONはアモルファス膜であるのに対し、グループCのAlONは結晶膜であり、AlN膜のX線回折スペクトルと一致することから、AlN膜と同様の結晶構造を有する結晶膜であることを見出した。これらの結果よりグループCのAlON膜はAlN膜と同等の物性を有することが推定できることから、端面保護層31または端面保護層261を構成する膜はNの原子組成が40%以上であるAlON膜であってもよい。
なお上記構成においてAlN膜とAl膜の間に挿入する酸化膜をシリコン酸化膜としたが、レーザ光により変質しない酸化膜であれば他の酸化膜で置き換えてもよい。また、同様にAlの表面に形成するシリコン酸化膜についても他の酸化膜で置き換えることも可能である。
本発明に係る窒化物半導体レーザ素子は、活性層の端面保護膜としてレーザ発振中においても膜剥がれが起こらず、且つ光学破壊を起こさない保護膜を得ることができ、特に、露出した活性層を含む端面を保護する保護膜を有する半導体レーザ素子に有用である。
1,201 窒化物半導体レーザ素子
11 n型基板
12 n型半導体層
13 n型クラッド層
14 n型光ガイド層
15 多重量子井戸活性層
16 p型光ガイド層
17 p型電子ブロック層
18 p型クラッド層
19 p型コンタクト層
20 マスク層
21 P側電極
22 N側電極
25 リア端面の多層保護膜
28 フロント端面(発光端面)
29 リア端面(後端面)
30,230 フロント端面の多層保護膜
31,261 端面保護層
32,232 酸素拡散抑制層
33 保護膜(AlN膜)
34,234 シリコン酸化膜(SiO膜)
35,235 金属酸化物膜(Al膜)
36,236 シリコン酸化膜(SiO膜)
40 レーザバーサンプル
41 ターゲット材
42 プラズマ発生チャンバ
50 半導体積層体
51 半導体レーザ装置
50a リッジ導波路
52 ステム
52a 電極端子
52b レーザ保持部
53 キャップ
53a 窓部
54 ガラス板
55 封止気体
263 第1の保護膜(AlN膜)
264 第2の保護膜(Al膜)
265 第3の保護膜(AlN膜)
271 フロント端面
272 第1の端面保護膜(AlN膜)
273 第2の端面保護膜(Al膜)
274 第3の端面保護膜(SiO膜)
275 膜剥がれ
291 劣化曲線
292 劣化曲線
301 AlN膜
302 金属酸化物膜(Al膜)
303 AlN膜
304 Al
305 SiO
306 膜剥がれ
311 AlN膜
312 金属酸化物膜(Al膜)
313 AlN膜
314 シリコン酸化膜(SiO膜)
315 金属酸化物膜(Al膜)
316 シリコン酸化膜(SiO膜)
317 変質領域
318 変質していない領域
321 AlN膜
322 Al
323 SiO
324 AlN膜の反応層
325 領域
326 AlN膜
327 Al
328 SiO
330 領域
331 領域
400 窒化物半導体レーザ素子
410 窒化物半導体層
413 フロント端面
414 リア端面
415 第1端面コート膜
416 第2端面コート膜
417 端面コート膜

Claims (14)

  1. III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、
    前記半導体積層体における前記発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、
    前記保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、前記端面保護層と前記酸素拡散抑制層とは前記発光端面側から前記端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、
    前記端面保護層は、結晶性のアルミニウム窒化膜を有する層であり、
    前記酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも1層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記端面保護層側よりシリコン酸化膜、金属酸化物膜の順に配置され
    前記金属酸化物膜は、前記発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、
    前記半導体積層体における前記発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、
    前記保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、前記端面保護層と前記酸素拡散抑制層とは前記発光端面側から前記端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、
    前記端面保護層は、結晶性のアルミニウム窒化膜を有する層であり、
    前記酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも2層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記金属酸化物膜が前記2層のシリコン酸化膜によって挟まれ、
    前記金属酸化物膜は、前記発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子
  3. 前記金属酸化物膜は、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、タンタル、亜鉛のいずれかを含む酸化膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記端面保護層は、発光端面を直接被覆した第一のアルミニウム窒化膜と、前記第一のアルミニウム窒化膜を被覆するよう配置された第一の金属酸化物膜と、前記第一の金属酸化物膜を被覆するよう配置された第二のアルミニウム窒化膜から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記第一の金属酸化物膜はアルミニウム酸化膜であることを特徴とする請求項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記第一のアルミニウム窒化膜は、前記発光端面に対してm軸配向を主成分としてなり、前記第二のアルミニウム窒化膜はc軸配向を主成分としてなることを特徴とする請求項またはに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記窒化物半導体レーザ素子の発光端面の反射率は、前記発光端面より出射されるレーザの波長に対して反射率スペクトルの極大値または極小値であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 前記金属酸化物膜が前記レーザ光により結晶化される領域は、前記レーザ光の近視野像の領域であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  9. 前記金属酸化物膜は、酸化ジルコニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  10. III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、
    前記半導体積層体における前記発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、
    前記保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、前記端面保護層と前記酸素拡散抑制層とは前記発光端面側から前記端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、
    前記端面保護層は、結晶性のアルミニウム酸窒化膜を有する層であり、
    前記酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも1層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記端面保護層側よりシリコン酸化膜、金属酸化物膜の順に配置され、
    前記金属酸化物膜は、前記発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  11. III族窒化物半導体からなり、発光端面を有する半導体積層体と、
    前記半導体積層体における前記発光端面を覆うように形成された誘電体多層膜からなる保護膜とを備え、
    前記保護膜は端面保護層と酸素拡散抑制層とから構成され、前記端面保護層と前記酸素拡散抑制層とは前記発光端面側から前記端面保護層と酸素拡散抑制層との順に配置されており、
    前記端面保護層は、結晶性のアルミニウム酸窒化膜を有する層であり、
    前記酸素拡散抑制層は、少なくとも1層の金属酸化物膜と少なくとも2層のシリコン酸化膜とを備え、かつ前記金属酸化物膜が前記2層のシリコン酸化膜によって挟まれ
    前記金属酸化物膜は、前記発光端面から出射したレーザ光によって結晶化されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  12. 前記端面保護層は、発光端面を直接被覆した第一のアルミニウム酸窒化膜と、前記第一のアルミニウム酸窒化膜を被覆するよう配置された第一の金属酸化物膜と、前記第一の金属酸化物膜を被覆するよう配置された第二のアルミニウム酸窒化膜から構成されることを特徴とする請求項10または11に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  13. 前記第一のアルミニウム酸窒化膜は、前記発光端面に対してm軸配向を主成分としてなり、前記第二のアルミニウム酸窒化膜はc軸配向を主成分としてなることを特徴とする請求項12に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  14. 前記第一のアルミニウム酸窒化膜および前記第二のアルミニウム酸窒化膜における窒素の原子組成は、40%以上であることを特徴とする請求項12または13に記載の窒化物半導体レーザ素子。
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