JP5479658B1 - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

本発明は、ピストンリング周辺が高温となるエンジンにおいて、長期にわたり、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できるピストンリングを提供する。本発明は、ピストンリング母材の上下側面の少なくとも一方の上に樹脂系皮膜を形成したピストンリングであって、前記樹脂系皮膜は、平均粒径2〜20μm、アスペクト比20〜200の板状充填材を含有する第1の樹脂系皮膜と、前記第1の樹脂系皮膜よりも下層に位置し、平均粒径0.01〜1μmの硬質粒子を含有する第2の樹脂系皮膜と、を有することを特徴とする。

Description

本発明は、ピストンリングに関し、詳しくは内燃機関用のピストンリングに関する。
内燃機関で用いられるピストンリングのうち、燃焼室の最も近いところに設置されるトップリングは、燃焼圧力により、アルミニウム合金等からなるピストンのピストンリング溝(リング溝)に激しく叩きつけられ、同時にリング溝の表面を摺動する。内燃機関内は、燃料の燃焼により高温となるが、ガソリンエンジンのトップリング付近においては、200℃以上となり、熱衝撃等によりピストンの強度低下を引き起こすことが知られている。
ピストンのリング溝の表面には、図1に示すように約1μmの突起が、0.2mm間隔で形成されている。これはバイトによる旋盤加工によるものである。この突起はピストンリングの叩きと摺動により欠落または摩耗し、リング溝表面に新生なアルミニウム面が露出する。新生なアルミニウム面は、金属からなるピストンリングの表面に凝着し易い。この現象を、以下「アルミニウム凝着」という。アルミニウム凝着が生じると、リング溝の摩耗が進行する。リング溝の摩耗が大きくなるとピストンリングによるシール性能が低下し、燃焼ガスが燃焼室からクランク室へ流入するブローバイが増加する。ブローバイガスが増加するとエンジンの出力低下等のトラブルを引き起こすおそれがある。
アルミニウム凝着の防止には、リング溝とピストンリングとを直接接触させない方法や、ピストンリングのリング溝に対する攻撃性を緩衝させる方法が提案されている。
ピストン側の対策としては、特許文献1に開示されているように、リング溝に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施し、さらにそのリング溝の陽極酸化処理により生じた微細孔中に潤滑性物質を充填する方法が提案されている。リング溝には表面の陽極酸化処理により硬質な酸化皮膜が生成されるため、アルミニウムの脱落が防止されアルミニウム凝着が発生しにくくなる。しかし、ピストンへの陽極酸化処理はコストが高く、また酸化皮膜が硬質であるために初期なじみ性が悪いという問題がある。
ピストンリング側の対策としては、特許文献2に開示されているように、耐熱性樹脂であるポリアミド等に固体潤滑剤である二硫化モリブデン等を分散させた皮膜をピストンリング上下側面に形成し、リング溝に対する攻撃性を緩和させる方法が提案されている。
特許文献3には、ポリアミドイミドを主成分として、ポリアミドイミドの塗膜改質剤と、アルミナ等の硬質粒子を含む乾性被膜潤滑剤とからなる被覆層を、所定の表面粗さの条痕を有する摺動部材の摺動面に形成することにより、摺動部材の耐摩耗性や密着性を向上させつつ、摩擦係数を低減できる方法が提案されている。
特許文献4には、耐熱性樹脂に金属粉末を含有した最表面層と、耐熱性樹脂からなる基底層をピストンリング上下側面に積層し、耐摩耗性と密着性を向上する方法が提案されている。
近年、環境問題への対策という観点から、エンジンの高出力化が進み、トップリング付近の到達温度はさらに上昇している。このような状況下では、ピストンリングに被覆した樹脂皮膜を長期にわたって維持し、アルミニウム凝着防止効果を持続することが困難となっている。
特許文献5には、ピストンリングが摺動するシリンダライナ内周面に形成された皮膜表面を加工して、プラトー構造に仕上げたシリンダライナとその加工方法が記載されている。
特開昭63−170546号公報 特開昭62−233458号公報 特許4151379号公報 特開2009−74539号公報 特開2003−286895号公報
本発明は、高温下で長期にわたりアルミニウム凝着防止効果を持続するピストンリングを提供することを目的とする。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ピストンリング上下側面の少なくとも一方の上に、所定の平均粒径およびアスペクト比を有する板状充填材を含有する第1の樹脂系皮膜と、第1の樹脂系皮膜よりも下層に位置し、所定の平均粒径を有する硬質粒子を含有する第2の樹脂系皮膜とを含む樹脂系皮膜を形成することで、高出力エンジンにおいても長期にわたって優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明のピストンリングは、ピストンリング上下側面の少なくとも一方の上に樹脂系皮膜を形成したピストンリングであって、前記樹脂系皮膜は、平均粒径2〜20μm、アスペクト比20〜200の板状充填材を含有する第1の樹脂系皮膜と、前記第1の樹脂系皮膜よりも下層に位置し、平均粒径0.01〜1μmの硬質粒子を含有する第2の樹脂系皮膜と、を有することを特徴とする。
本発明のピストンリングは、高温下で長期にわたりアルミニウム凝着防止効果を持続することができる。
一般的なリング溝の表面の凹凸を測定した図である。 本発明のピストンリング上下側面近辺の断面形状の一例である。 本発明のピストンリング上下側面近辺の断面形状の別の例である。 従来のピストンリング上下側面の断面形状の一例である。 従来のピストンリング上下側面の断面形状の別の例である。 従来のピストンリング上下側面の断面形状のさらに別の例である。 単体凝着試験機の概要を示す断面図である。
以下に本発明のピストンリングの実施形態について、図2から図6を用いて説明する。
図2に、本発明のピストンリングの一例を示す。図2には図示しないが、ピストンリング母材100の上下側面(以下、「表面500」とも表記する。)には、リン酸塩皮膜が形成されてもよい。表面500、又はリン酸塩皮膜上には、第2の樹脂系皮膜200が形成され、第2の樹脂系皮膜200には、硬質粒子202が含有されている。第2の樹脂系皮膜200の上には、第1の樹脂系皮膜300が形成されており、第1の樹脂系皮膜300には、板状充填材302が表面500と略平行な方向を向いて分散している。
本発明のピストンリングは、図3のように表面500がプラトー構造となっていてもよい。プラトー構造とは、例えば、日本工業規格JISB0671で定義されており、プラトー部分506(図3、図4)と谷部分502(図3、図4)で表面が形成されている構造をいう。表面500がプラトー構造となっていると、表面500の上に形成された第2の樹脂系皮膜200の一部が、谷部分502に入り込む。これにより第2の樹脂系皮膜200とピストンリング母材100との密着性が、アンカー効果により向上する。特に、本発明においては、谷部分502に入り込んだ第2の樹脂系皮膜200に含まれる硬質粒子202の一部が、図3のようにプラトー部分506よりも上方に突出し、ピストンリング母材100の谷部分502と第2の樹脂系皮膜200とに跨る構造となる。このため、図4に示すような、硬質粒子202を含まないで第2の樹脂系皮膜200が形成されている場合よりも、第2の樹脂系皮膜200とピストンリング母材100との横方向(表面500に平行な方向)へのせん断応力に耐えることができ、ピストンリング母材100からの第2の樹脂系皮膜200の剥離が起こりにくくなる。
表面500がプラトー構造ではなく、図5のように山部分504を含む凹凸形状の場合は、第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200が摩滅し、表面500が露出した場合、ピストンリング母材100の山部504が、ピストンのリング溝表面を攻撃する可能性がある。このため、アルミニウム凝着の発生を防止するためには、表面500がプラトー構造であることが好ましい。なお、図5において、第2の樹脂系皮膜200に硬質粒子202は含有されていない。
一方、図6のように、表面500をプラトー構造とし、その上に、第2の樹脂系皮膜200を省略して、板状充填材302を含有する第1の樹脂系皮膜300を形成した場合は、プラトー部分506に、一部の板状充填材302が、樹脂を介さず直接接する。この場合、板状充填材302と表面500のいずれも接着性を有していないため、第1の樹脂系皮膜300の密着性が大幅に低下する。従って、表面500と第1の樹脂系皮膜300の間には、硬質粒子202を含有する第2の樹脂系皮膜200を形成する。
[1]ピストンリング母材
ピストンリング母材100は、特に限定されないが、リング溝との衝突が繰り返されることから、ある程度の強度が必要である。好ましい材料としては、鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、高級鋳鉄等が挙げられる。また、耐摩耗性を向上させるために、ピストンリング外周面に、ステンレス鋼では窒化処理、鋳鉄では硬質クロムめっきや無電解ニッケルめっき処理を施してもよい。また、いずれの場合も、硬質炭素皮膜を形成してもよい。
[2]ピストンリング母材の下地処理
ピストンリング母材100と樹脂系皮膜の密着性向上のために、樹脂との密着性に優れたリン酸塩皮膜を予め表面500に形成しておくとよい。リン酸塩皮膜は、リン酸亜鉛系、リン酸マンガン系、リン酸カルシウム系の何れのリン酸塩皮膜でもよい。
なお、上記プラトー構造は、形成する場合には第2の樹脂系皮膜200の直下とする。よって、表面500上にリン酸塩皮膜を形成する場合には、リン酸塩皮膜の表面をプラトー構造にする。そのためには、リン酸塩皮膜の形成後、該皮膜の表面を研磨加工することが好ましい。しかし、リン酸塩皮膜が4μm以下と薄い場合には、表面500に研磨加工を施し、その後リン酸塩皮膜を形成しても、リン酸塩皮膜にプラトー構造が引き継がれる。
[3]樹脂系皮膜
樹脂系皮膜は、それぞれの機能が違う第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200を有する。第1の樹脂系皮膜300は、ピストンリング上下側面に対し略平行に配列された平均粒径2〜20μm、アスペクト比20〜200の板状充填材302を含有する。第2の樹脂系皮膜200は、第1の樹脂系皮膜300よりもピストンリング母材100側(下層)に位置し、平均粒径0.01〜1μmの硬質粒子202を含有する。
第1の樹脂系皮膜300は、硬質な板状充填材302がピストンリング上下側面に対し平行に配列して含有されているため、初期のリング溝表面との摺動により、リング溝表面を大きく荒らすことなく短時間でリング溝表面の突起を除去することができる。ピストンリングは、ピストンの上下運動と燃焼圧によりピストンリング上下側面が、リング溝表面に叩きつけられ、叩きすべりによる強い応力を受ける。しかし、本発明のピストンリングは、リング溝表面を荒らすことなく早期にリング溝表面の突起が除去されるため、リング溝表面によるピストンリングの樹脂系皮膜への攻撃性も早期に低下する。また、硬質な板状充填材302を、第1の樹脂系皮膜300に点在させることにより、リング溝表面との叩きすべりによる応力が緩和されるので、長期にわたって第1の樹脂系皮膜300が維持され、優れたアルミニウム凝着防止効果を維持できる。
第1の樹脂系皮膜300の摩滅後には、第1の樹脂系皮膜300よりも下層に位置する第2の樹脂系皮膜200が表面に現れるが、第2の樹脂系皮膜200に含有される硬質粒子202により第2の樹脂系皮膜200の強度が向上する。このため、リング溝表面との叩きすべりによる応力などによる第2の樹脂系皮膜200の摩滅を抑制することができる。これにより、ピストンリングの上下側面は、少なくとも第2の樹脂系皮膜200を介してリング溝表面と接触するので、アルミニウム凝着を防ぐことができる。
また、本発明のピストンリングが長期にわたり使用され、第2の樹脂系皮膜200が摩滅し、ピストンリング母材100が、リング溝表面と直接接触した場合でも、第2の樹脂系皮膜200が摩滅する過程において、第2の樹脂系皮膜200に含有されている細かい硬質粒子202により、リング溝表面が第1の樹脂系皮膜300摩滅時よりもさらに平滑化しているため、アルミニウム凝着の発生を抑制することができる。
第1の樹脂系皮膜300に含有される板状充填材302の平均粒径が20μmを超えると、リング溝表面を荒らす傾向があり、一方、2μm未満では、リング溝表面の突起を短時間で除去することができない。また、板状充填材302のアスペクト比が200を超えると応力緩和効果が小さくなり、一方、20未満では、リング溝表面を大きく荒らす傾向がある。
なお、本発明において「板状充填材の平均粒径」とは、板状充填材の長辺の平均長さであり、第1の樹脂系皮膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、視野中の任意の50個の板状充填材の長辺の50%累積値(D50)として、算出することができる。また、「板状充填材のアスペクト比」とは、板状充填材の長辺長さと厚みの比(長辺長さ/厚み)の平均であり、第1の樹脂系皮膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、視野中の任意の50個の板状充填材の厚みの50%累積値(D50)で、上記の方法で求めた平均粒径を除することにより、算出することができる。
板状充填材302の含有量は、第1の樹脂系皮膜300全体に対して1〜20体積%であることが好ましい。板状充填材302の含有量をこの範囲にすることで、リング溝表面を大きく荒らすことなく短時間でリング溝表面の突起を除去することができ、且つ、リング溝表面による第1の樹脂系皮膜300への攻撃に対する耐性を有しているため自己の摩滅を低減することができる。さらに、第1の樹脂系皮膜300の表面への板状充填材302の露出面積が最適化され、リング溝表面からの応力を緩和する効果が向上する。そのため、第1の樹脂系皮膜300がさらに長期にわたり安定して維持され、優れたアルミニウム凝着防止効果を持続できる。板状充填材302の含有量が20体積%を超えるとリング溝表面を荒らす可能性があり、一方、1体積%未満では、リング溝表面の突起を短時間で取ることができない。
板状充填材302は、前記平均粒径及びアスペクト比を有し、且つ、第1の樹脂系皮膜300を構成する樹脂よりも硬質であればよく、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。板状充填材は、公知の方法で製造することもできるが、市販品を用いることもできる。板状アルミナとしては、キンセイマテック株式会社製合成板状アルミナ(セラフ)や河合石灰工業株式会社製アルミナ系フィラー(セラシュール)等が挙げられる。板状充填材302は、1種でもよいが2種以上の材料を添加してもよい。
第2の樹脂系皮膜200に含有される硬質粒子202は、平均粒径が0.01〜1μmである。硬質粒子202の平均粒径を、この範囲とすることで、第1の樹脂系皮膜300が摩滅した後、第2の樹脂系皮膜200が露出しているときに、細かい硬質粒子202により、リング溝表面がさらに平滑化されるため、第2の樹脂系皮膜200の摩滅が抑制され、且つ、リング溝表面とピストンリング母材100とが直接接触したときのアルミニウム凝着を抑制できる。硬質粒子202の平均粒径が1μmを超えるとリング溝表面を荒らすこととなり、一方、0.01μm未満では、リング溝表面を平滑化するのが困難となる。また、硬質粒子202は異方性を有しない、つまり、アスペクト比が略1(1〜1.5)である。
なお、本発明において「硬質粒子の平均粒径」は、第2の樹脂系皮膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、視野中の任意の50個の硬質粒子の粒径の50%累積値(D50)として、算出することができる。また、「硬質粒子の平均粒径」は、第2の樹脂系皮膜200の形成前に、硬質粒子の粉体の状態で、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定したD50としてもよい。両者はほぼ同じ値となるからである。
硬質粒子202の含有量は、第2の樹脂系皮膜200全体に対して1〜20体積%であることが好ましい。硬質粒子202の含有量をこの範囲にすることで、第2の樹脂系皮膜200の摩滅までに、リング溝表面を、第1の樹脂系皮膜300の摩滅時よりもさらに平滑化して、リング溝表面とピストンリング母材100とが直接接したときのアルミニウム凝着を抑制できる。硬質粒子202の含有量が20体積%を超えると、リング溝表面を荒らす可能性があり、一方、1体積%未満では、リング溝表面を平滑化するのに時間がかかる。
硬質粒子202は、ピストンリング母材100を構成する材料よりも硬い材料からなる。具体的には、硬質粒子202としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド、酸化セリウム等が挙げられるが、特に、研磨砥粒として実績があるアルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化セリウムが好ましい。硬質粒子202は、1種でもよいが、2種以上の材料を添加してもよい。
第1の樹脂系皮膜300および第2の樹脂系皮膜200の樹脂材料としては、主鎖に芳香族環や芳香族複素環を有する耐熱性高分子が好ましく、リング溝付近の温度が190℃以上に達する場合は、ガラス転移温度が190℃以上の非結晶性高分子、または、融点が190℃以上の結晶性高分子や液晶性高分子が適している。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、フェノールなどが挙げられ、これらを2種類以上含む混合物又は複合物であってもよい。
また、これらの樹脂にシリカ等の無機物を分子レベルで分散させた有機−無機ハイブリッド樹脂では、ピストンリング母材100との密着性をさらに向上させることができる。第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200には、同一の樹脂材料を用いることができるが、第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200の機能を考慮すると、第1の樹脂系皮膜300には、耐熱性が高く摩擦係数が低いポリイミドが好ましく、一方、第2の樹脂系皮膜200には、耐熱性が高く密着性に優れたポリアミドイミドが好ましい。例えば、市販されているポリイミド(PI)として、U−ワニスA、U−ワニスS(宇部興産株式会社製)、H801D、H850D(荒川化学工業株式会社製)、RC5057、RC5097、RC5019(株式会社I.S.T製)が挙げられ、ポリアミドイミド(PAI)では、HPCシリーズ(日立化成工業株式会社製)、バイロマックス(東洋紡績株式会社製)などが挙げられる。第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200は、樹脂材料を主成分、すなわち、それぞれの樹脂系皮膜の全体に対して50体積%超えとする。
第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200を含む樹脂系皮膜の合計の厚さ(片面)は、5〜20μmが好ましく、第2の樹脂系皮膜200の厚さは、1〜3μmが好ましい。第2の樹脂系皮膜200の厚さが、1μmより小さい場合は、被覆時の製造ばらつきにより、局所的に硬質粒子202の含有量が多い箇所や膜厚が薄い箇所で発生した場合、そこを起因とする剥離が起こりやすくなる。一方、3μmを超える場合は、第2の樹脂系皮膜の硬化時に発生する内部応力により、第2の樹脂系皮膜200とピストン母材100との間で剥離が起こりやすくなる。樹脂系皮膜全体の厚さが20μmを超えると、ピストンリングをリング溝に装着するときに問題が生じ、一方、5μmより小さい場合は、樹脂皮膜全体が摩滅する可能性が高くなる。なお、図3のように表面500がプラトー構造の場合、第2の樹脂系皮膜の厚さは、プラトー部分から測定するものとする。また、本発明において「樹脂系皮膜の膜厚」は、樹脂系皮膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意の10箇所の厚みの算術平均として算出する。
本発明のピストンリングは、ピストンリングの上下側面の少なくとも一方に第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200を被覆することにより得られるが、特にピストンリングの下側面に被覆することにより優れたアルミニウム凝着防止効果が発揮される。
[4]樹脂系皮膜の形成方法
第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200の形成方法は、特に限定されず、スプレーコーティング、印刷法、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング等の公知の方法を用いることができる。第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200の形成効率と、塗り斑の発生を抑えるという観点から、印刷法が好ましい。
第1の樹脂系皮膜300と第2に樹脂系皮膜200の形成に用いるコーティング液やインクの調整方法は、特に限定されないが、例えば市販のポリイミド等のワニスに、板状充填材302を分散させた液と、市販のポリアミドイミド等のワニスに、硬質粒子202を分散させた液とを、必要に応じて溶剤を添加して最適な粘度に調整して用いることが好ましい。コーティング液やインクの粘度の調整に用いる溶剤や添加剤は、コーティング方法や印刷方法により適宜選択される。板状充填材302や硬質粒子202の分散方法は特に限定されず、サンドミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル等公知の方法を用いることができ、必要に応じて分散剤等を適宜添加してもよい。コーティング液やインクをピストンリング母材100に塗布、又は印刷後、ピストンリングを乾燥し、第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200の硬化処理を行う。硬化温度は用いる樹脂材料により適宜選択される。
樹脂系皮膜の形成方法は、ピストンリング母材100に第2の樹脂系皮膜200を塗布し、続けて第1の樹脂系皮膜300を塗布(印刷)して、同時に乾燥・硬化処理を行ってもよい。第1の樹脂系皮膜300を塗布する際に、ピストンリング母材100上で、第2の樹脂系皮膜200と第1の樹脂系皮膜300が混合してしまう場合は、第2の樹脂系皮膜200のみを塗布後、乾燥・硬化処理を行い、硬化した第2の樹脂系皮膜200の上に第1の樹脂系皮膜300を塗布し、第1の樹脂系皮膜300の乾燥・硬化処理を行ってもよい。また、第1の樹脂系皮膜300の塗布の際に、あらかじめピストンリング母材100上に形成された第2の樹脂系皮膜200が乾燥・硬化処理されていても、第1の樹脂系皮膜300の溶剤により、第2の樹脂系皮膜200が溶出し、第1の樹脂系皮膜300と混合してしまう場合は、第1の樹脂系皮膜300の塗布の前に、第2の樹脂系皮膜200の上に第1の樹脂系皮膜300の溶剤に溶けない材料の層を設けてもよい。
また、表面500またはリン酸塩皮膜表面を研磨加工して、プラトー構造にしてもよい。これにより、長期の使用により、第1の樹脂系皮膜300と第2の樹脂系皮膜200が摩滅し、ピストンリング母材100が露出しても、ピストンリング母材100の表面500またはリン酸塩皮膜表面の凹凸によるピストンの摩耗を防ぐことができる。
研磨加工の方法は、一般的なベルト研磨、平面研磨等を用いるまた、砥石材質、押付圧等を変更することにより、谷部分およびプラトー部分の寸法を制御することができる。
また、プラトー構造としては、谷部分504の幅の平均が、第2の樹脂系皮膜200の硬質粒子202の平均粒径とほぼ同じ、0.01〜1μmであることが好ましい。これにより、プラトー構造の谷部分504に第2の樹脂系皮膜200中の硬質粒子202が挿入されるが、谷部分504に嵌り、且つ、硬質粒子202の一部がプラトー構造の表面500から突き出るため、第2の樹脂系皮膜200とピストンリング母材100との間にせん断応力が付加された時、すなわち、第2の樹脂系皮膜200がピストンリング母材に対してピストンリング上下側面に平行な方向にずれる力に対して対抗できるようになる。また、プラトー部分506の幅の平均は、3〜15μmであることが好ましい。
本発明のピストンリングを以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明のピストンリングはそれらに限定されるものではない。
(実験例1)
ピストンリング母材が低クロム鋼のピストンリングの上下側面に研磨加工をして、該上下側面をプラトー構造とした。このピストンリングの外周面にイオンプレーティングすることで、厚さ約30μmのCrN皮膜を形成し、アルカリ脱脂後、約80℃に加熱したリン酸マンガン水溶液に約5分浸漬することで、ピストンリングの外周面以外の面に厚さ約2μmのリン酸マンガン皮膜を形成した。このリン酸マンガン皮膜の断面をSEMにて観察したところ、プラトー構造が引き継がれており、視野内の谷部分の幅の平均は0.01μm、プラトー部分の幅の平均は8μmであった。
ポリイミドワニス(株式会社I.S.T製 RC5057)に、板状充填材として、平均粒径10μm、アスペクト比100のアルミナ粉末を、硬化後の第1の樹脂系皮膜全体に対して10体積%となるように添加し、撹拌機により十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通すことで第1の樹脂系皮膜のコーティング液を調整した。また、ポリアミドイミドワニス(東洋紡績株式会社製 HR−13NX)に、硬質粒子として、平均粒径0.5μmの異方性を有しないアルミナ粉末を、硬化後の第2の樹脂系皮膜全体の体積に対して10体積%となるように添加し、撹拌機により十分に撹拌した後、ロール間隔を最小にした三本ロールミルに通すことで第2の樹脂系皮膜のコーティング液を調整した。
ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第2の樹脂系皮膜用コーティング液をスプレーコーティングした後、100℃で5分間乾燥し、その後、第1の樹脂系皮膜用コーティング液をスプレーコーティングした後、100℃で5分間乾燥した。さらに、300℃の電気炉で1時間加熱し、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を硬化させた。本実験例の第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜の硬化後の合計の厚さ(片側)は、10μmであった。
(実験例2)
第1の樹脂系皮膜の樹脂をポリイミドからポリアミドイミドへ、板状充填材をアルミナ粉末から炭化ケイ素粉末へ、第2の樹脂系皮膜の樹脂をポリアミドイミドからポリイミドへ、硬質粒子をアルミナ粉末からジルコニア粉末へ変更した以外は、実験例1と同様にしてピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例3)
第1の樹脂系皮膜中のアルミナ粉末の粒径を1、2、20、30μmに変更した以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例4)
第1の樹脂系皮膜中のアルミナ粉末のアスペクト比を10、20、200、300に変更した以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例5)
第1の樹脂系皮膜中のアルミナ粉末の添加量を0.5、1、20、30体積%に変更した以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例6)
第2の樹脂系皮膜のアルミナ粉末の粒径を0.008、0.01、0.1、1、3μmに変更した以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例7)
第2の樹脂系皮膜のアルミナ粉末の添加量を0.5、1、20、30体積%に変更した以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例8)
第1の樹脂系皮膜を形成せず、実験例1の第2の樹脂系皮膜のアルミナを固体潤滑剤に変更してコーティング液を調整し、実験例1と同様の方法で、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第2の樹脂系皮膜を形成した。固体潤滑剤は、二硫化モリブデン粉末(平均粒径2μm)とグラファイト粉末(平均粒径2μm)を各5体積%添加した。
(実験例9)
第1の樹脂系皮膜を形成せず、実験例8の第2の樹脂系皮膜にさらにアルミナ粉末(粒径0.5μm)を硬化後で5体積%となるように添加し、実験例1と同様の方法で、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例10)
第1の樹脂系皮膜の板状充填材としてのアルミナ粉末を板状銅粉末に変更し、硬化後に10体積%から60体積%となるように添加した。第2の樹脂系皮膜の樹脂をポリアミドイミドからポリイミドに変更し、硬質粒子のアルミナ粉末から軟質の板状銅粉末(平均粒径:10μm、アスペクト比:100)に変更し、硬化後に10体積%から20体積%となるように添加した。その他は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。なお、銅はピストンリング母材を構成する低クロム鋼よりも軟らかい。
(実験例11)
第2の樹脂系皮膜のアルミナ粉末を、板状のアルミナ粉末(平均粒径:1μm、アスペクト比:2)に変更した他は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例12)
第1の樹脂系皮膜の板状のアルミナ粉末を、平均粒径0.5μmの異方性を有しないアルミナ粉末に変更した他は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。
(実験例13)
第2の樹脂系皮膜にアルミナ粉末を添加しない以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。本実験例は図4の例に相当する。
(実験例14)
第2の樹脂系皮膜を形成しない以外は、実験例1と同様にして、ピストンリング母材の上下側面のリン酸マンガン皮膜上に、第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を形成した。本実験例は図6の例に相当する。
<特性評価>
各実験例のピストンリングをエンジンと相関が取れた単体凝着試験機により試験した。単体凝着試験機は、図7に示すピストン2が上下に往復運動を行い、ピストンリング3が回転運動を行う機構であり、試験は、ヒーター1と熱電対5によりピストン2を加熱制御させて行った。試験条件は、面圧5.0MPa、回転速度3.0mm/s、制御温度250℃、試験時間3hとし、オイルの添加を随時行った。
単体凝着試験の結果を表1に示す。表1の判定基準は、以下の要領による。表面粗さはコア部のレベル差Rkで比較し、試験前のピストン材表面のRkは、約1.0μmであった。
(1)試験後の樹脂系皮膜の残存厚さ
◎:3μm以上
○:1μm以上3μm未満
△:1μm未満(リン酸マンガン皮膜有り)
×:1μm未満(リン酸マンガン皮膜無し)
(2)凝着
○:なし
△:あり(段差計等を用いて確認できるレベル)
×:あり(肉眼で凹凸(凝着の存在)が観察できるレベル)
(3)リング溝摩耗
◎:0.5μm未満
○:0.5μm以上1.0μm未満
△:1.0μm以上1.5μm未満
×:1.5μm以上
(4)表面粗さ(Rk)
◎:0.3μm未満
○:0.3μm以上0.5μm未満
△:0.5μm以上0.7μm未満
×:0.7μm以上
Figure 0005479658
<評価結果>
比較例である実験例8,9では、単体試験後には、樹脂系皮膜は全く残存せず、ピストンリング母材下地のリン酸マンガン皮膜まで摩耗が進行しており、顕著なアルミニウム凝着が認められた。また、ピストン2の表面は平滑化されておらず、摩耗が進行していることが確認された。
ポリイミドに軟質の板状銅粉末を分散して添加量毎に第1の樹脂系皮膜と第2の樹脂系皮膜を被覆した実験例10(比較例)では、単体試験後には、軽微なアルミニウム凝着が認められ、ピストンリングの樹脂系皮膜は殆ど残存しておらず、リング溝も摩耗が進行し、リング溝表面は平滑化されていないことが確認された。
一方、実験例1,2は、いずれもアルミニウム凝着の発生は認められず、樹脂系皮膜の摩耗及びリング溝の摩耗は少なく、リング溝表面は平滑化されていた。
第1の樹脂系皮膜の板状充填材としてのアルミナ粉末の平均粒径を変えた実験例3では、平均粒径2〜20μmの範囲の樹脂系皮膜が優れた耐摩耗性を示した。第1の樹脂系皮膜の板状充填材としてのアルミナ粉末のアスペクト比を変えた実験例4は、アスペクト比20〜200の範囲の樹脂系皮膜が優れたリング溝表面の平滑化効果を示した。板状充填材としてのアルミナ粉末の含有量を変えた実験例5では、1〜20体積%の範囲の樹脂系皮膜が特に優れた耐摩耗性を示した。
第2の樹脂系皮膜の硬質粒子としてのアルミナ粉末の平均粒径を変えた実験例6では、平均粒径0.01〜1μmの範囲の樹脂系皮膜が優れた耐摩耗性とリング溝表面を示した。第2の樹脂系皮膜の硬質粒子としてのアルミナ粉末の含有量を変えた実験例7は、1〜20体積%の範囲の樹脂系皮膜が特に優れた耐摩耗性とリング溝表面を示した。
一方、実験例13では、本発明例より短時間で、リング溝の摩耗と樹脂系皮膜の摩滅が生じることが確認された。また、実験例14では、皮膜の剥離に伴い皮膜が最終的に摩滅した。
また、第1の樹脂系皮膜及び第2の樹脂系皮膜の双方に板状のアルミナを添加した実験例11(比較例)に比べ、本発明例では、優れた皮膜の密着性を有し、より長時間にわたり皮膜が維持されアルミニウム凝着が防止できることが確認された。さらに、第1の樹脂系皮膜及び第2の樹脂系皮膜の双方に平均粒径0.5μmの異方性を有しないアルミナ粉末を添加した実験例12(比較例)に比べても、本発明例では、より長期にわたり皮膜が維持されアルミニウム凝着が防止できることが確認された。
以上の結果より、本発明のピストンリングは、長期にわたりアルミニウム凝着防止を持続できることが確認された。
本発明は、高温下で長期にわたりアルミニウム凝着防止効果を持続するピストンリングを提供することができる。
1 ヒーター
2 ピストン
3 ピストンリング
4 温度コントローラー
5 熱電対
100 ピストンリング母材
200 第2の樹脂系皮膜
202 硬質粒子
300 第1の樹脂系皮膜
302 板状充填材
500 ピストンリング母材の表面
502 谷部分
504 山部分
506 プラトー部分

Claims (8)

  1. ピストンリング母材の上下側面の少なくとも一方の上に樹脂系皮膜を形成したピストンリングであって、
    前記樹脂系皮膜は、平均粒径2〜20μm、アスペクト比20〜200の板状充填材を含有する第1の樹脂系皮膜と、前記第1の樹脂系皮膜よりも下層に位置し、平均粒径0.01〜1μmの硬質粒子を含有する第2の樹脂系皮膜と、を有し、
    該第2の樹脂系皮膜の直下がプラトー構造であり、該プラトー構造の谷部分に、前記硬質粒子が挿入されていることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記板状充填材の含有量は、前記第1の樹脂系皮膜に対して1〜20体積%である請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記硬質粒子の含有量は、前記第2の樹脂系皮膜に対して1〜20体積%である請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記板状充填材は、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる群の少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストンリング。
  5. 前記硬質粒子は、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド、酸化セリウムからなる群の少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のピストンリング。
  6. 前記樹脂系皮膜の厚さは、5〜20μmであって、前記第2の樹脂系皮膜の厚さが1〜3μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のピストンリング。
  7. 前記樹脂系皮膜は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、フェノール樹脂からなる群の少なくとも1種を主成分とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のピストンリング。
  8. ピストンリング母材の上下側面の少なくとも一方と前記樹脂系皮膜との間に、リン酸塩皮膜を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のピストンリング。
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