JP5479006B2 - 土壌・地下水の浄化方法 - Google Patents

土壌・地下水の浄化方法 Download PDF

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Description

本発明は、土壌又は地下水中に含まれるジクロロメタン、四塩化炭素、1、2−ジクロロエタン、1、1−ジクロロエチレン、シス−1、2−ジクロロエチレン、1、1、1−トリクロロエタン、1、1、2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び1、3−ジクロロプロペン等の脂肪族有機ハロゲン化合物、ダイオキシン類、PCB等の芳香族有機ハロゲン化合物、カドミウム、鉛、クロム、砒素、セレン、シアン等の重金属等を効率よく、持続的に、しかも経済的に分解・不溶化できる浄化方法を提供するものである。
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の脂肪族有機ハロゲン化合物は、半導体工場での洗浄用や金属加工金属の脱脂用として幅広く用いられている。
また、都市ごみや産業廃棄物を焼却するごみ焼却炉から発生する排ガスや飛灰、主灰中には、微量ではあるが人体に対して極めて強い毒性を持つ芳香族有機ハロゲン化合物であるダイオキシン類が含まれている。ダイオキシン類は、ジベンゾ−p−ジオキシン、ジベンゾフラン等の水素が塩素で置換された化合物の総称である。排ガスや飛灰はごみ焼却炉周辺に滞留し周辺地域の土壌中にダイオキシン類が残存することとなる。
更に、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は化学的、熱的に安定であり、電気絶縁性にも優れており、トランス、コンデンサーの絶縁油、可塑剤、熱媒体として多用されていたが、有害であることから製造及び使用が禁止されている。しかしながら、過去において使用されていたPCBの有効な処理方法は確立されておらず、大部分が処理されずにそのまま保存されている。
脂肪族有機ハロゲン化合物及び芳香族有機ハロゲン化合物等の有機ハロゲン化合物類は難分解性である上に発癌性物質又は強い毒性を有する物質であるため、土壌・地下水の有機ハロゲン化合物類による汚染が深刻な環境問題になっている。
即ち、前記有機ハロゲン化合物類が排出された場合、有機ハロゲン化合物類は難分解性であるため、排出された土壌中に蓄積され有機ハロゲン化合物類で汚染された状態となり、また、地下水も有機ハロゲン化合物類によって汚染されることとなる。更に、地下水は汚染土壌以外の周辺地域についても広がるため、広範な領域で有機ハロゲン化合物類による汚染が問題となる。
有機ハロゲン化合物類によって汚染された土壌では土地の再利用・再開発を行うことができないため、有機ハロゲン化合物類によって汚染された土壌・地下水の浄化処理方法として様々な技術手段の提案がなされているが、有機ハロゲン化合物類は難分解性であり、しかも、多量の土壌・地下水が処理対象となるため、効率的、且つ、経済的な浄化技術は未だ十分に確立されていない。
有機ハロゲン化合物類によって汚染された土壌の浄化方法として、各種触媒を用いて浄化処理する方法、有機ハロゲン化合物類の揮発性を利用して吸引除去する方法、土壌を掘削して加熱処理によって無害化する熱分解法、微生物を利用する方法等が知られている。また、有機ハロゲン化合物類によって汚染された地下水の浄化方法として、汚染地下水を土壌外に抽出して無害化する方法、地下水を揚水することによって有機ハロゲン化合物類を除去する方法等が知られている。
有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌・地下水の浄化方法として提案されている技術手段のうち、有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌・地下水と鉄系粒子を用いた浄化剤とを混合接触させて無害化する技術手段が提案されている(特許文献1〜14)。
一方、近年の環境意識の向上から、重金属による土壌・地下水の汚染が注目されている。特に、カドミウム、鉛、クロム、砒素、セレン、シアン等の重金属等からなる有害物質による汚染は人体又は生態系に対して有害であるため、前記有害物質の浄化・除去処理が急務とされている。
周知のとおり、重金属等の有害物質で汚染された土壌又は地下水の対策技術は「浄化技術」と「封じ込め」に分類され、浄化技術は「原位置浄化」と対象地から汚染土壌を掘削する「掘削除去」とに分類される。「原位置浄化」は更に、汚染土壌・地下水に含まれる重金属等を地下(原位置)で分解する「原位置分解」と汚染土壌・地下水を抽出または掘削した中の重金属等を取り除く「原位置抽出」に分けられる。
「原位置抽出」は、重金属等に分類される対象物質のうち、シアン、農薬などの化合物を熱化学的に分解する「分解」と物理的な分離によって濃縮された重金属等を土壌・地下水から分離する「分離」とがある。
一方、「封じ込め」は「原位置封じ込め」と「掘削除去後封じ込め」に分類される。原位置封じ込めは、汚染土壌に固化剤を混合して固型化し、その後現場の土壌を移動させずに原位置で汚染土壌を封じ込める技術である。また、掘削除去後封じ込めは、前処理として汚染土壌に不溶化剤を混合し、難溶化させ、その後一度掘削してから、改めて汚染土壌を封じ込める技術である。
「浄化技術」に係る施工法としては、土壌洗浄法、熱脱着法などが挙げられ、例えば、薬品を添加し、重金属等を溶解して分離する化学溶解法、水で土壌を洗浄・分級し、重金属等を多く含んだ微粒子を分離する水洗浄法、土壌粒子の表面に付着した汚染物質を洗浄剤で洗浄し、更に粒子の大きさと比重によって清浄な大粒子と汚染物の微粒子に分級する土壌湿式洗浄法などが挙げられる。
また、「封じ込め」に係る施工法は、「原位置封じ込め」では汚染土壌にセメント等の固化剤を混合して不透水層と鋼矢板等によって封じ込める方法があり、「掘削除去後封じ込め」では、汚染土壌に対して薬剤によって不溶化処理して汚染土壌を溶出しにくい形態に変化させた後に遮断工、遮水工で封じ込める方法がある。
しかしながら、前記各処理技術は、処理コストが高く、長期間を要するものであり、重金属等の有害物質を効率よく、かつ、持続的に、低減する技術とは言い難いものである。
最近では、主に鉄粉の還元作用を利用し重金属類の価数を低減し無害化、安定化する低コストの処理技術が開発されている。例えば、クロムに対して鉄粉の還元作用(金属の価数低減)を利用した技術が記載されている(特許文献15)。また、特許文献16には、重金属イオンを含む溶液をpH5〜6程度に調整し、鉄粉を加えて攪拌すると、鉄粉の一部が溶解して、水酸化第2鉄が沈殿し、pHの上昇とともにゲーサイト、レピッドクロサイトが生成し、この際重金属の一部は共沈して大部分は鉄粉へ吸着することが記載されており、また、低いpHでは鉄粉の溶出が増大し、吸着除去効果は劣化することが記載されている。
特開平11−235577号公報 特開2000−5740号公報 特開2000−334063号公報 特開2001−38341号公報 特開2001−198567号公報 特開2002−161263号公報 特開2002−210452号公報 特開2002−317202号公報 特開2000−135483号公報 特開2004−105882号公報 特開2005−21882号公報 特開2005−334825号公報 特開2006−102675号公報 特開2006−150354号公報 特開2001−198567号公報 特公昭52−45665号公報
前出特許文献1には0.1重量%以上の炭素を含有する鉄粉を土壌に添加・混合して土壌中の有機ハロゲン化合物を無害化する技術が開示されているが、鉄粉の比表面積及び粒度は記載されているものの粒子サイズが大きいため、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献2には銅を含有した鉄粉を用いて土壌中の有機ハロゲン化合物を無害化する技術が開示されているが、有機ハロゲン化合物の分解に長時間を必要とするため効率よく有機ハロゲン化合物を無害化できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献3にはダイオキシン類と製鉄所における熱間圧延鋼板の製造工程から生じるミルスケールを含む塩酸酸性水溶液とを100℃より低温で接触させてダイオキシン類を無害化する技術が開示されているが、無害化を促進させる塩酸酸性水溶液が必須であり、ミルスケール自体の分解反応が十分とは言い難いものである。
また、前出特許文献4には平均粒子径1〜500μmの鉄粒子を含む水懸濁液からなる土壌浄化剤が開示されているが、粒子サイズが大きく、有機ハロゲン化合物を十分に分解することが困難となる。
また、前出特許文献5には平均粒子径が10μm未満の球状鉄粒子を含有する水懸濁液を用いる技術が開示されているが、該球状鉄粒子を含有する水懸濁液は製鋼用の酸素吹転炉から精錬中に発生する排ガスを集塵し、ガスを除去して得られる水懸濁液であり、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献6には、ニッケル、銅、コバルト及びモリブデンから選ばれる金属が表面に付着し、付着金属以外の表面が鉄酸化被膜で覆われている有機ハロゲン化合物分解用鉄粉が記載されているが、ミルスケールで得られた鉄粉や溶鋼を水アトマイズした鉄粉を用いており、記載されている鉄粉の比表面積から、鉄粉の粒子サイズが大きいと思われ、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難いものである。
また、前出特許文献7には、Sを含有する鉄粉を有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、粒子サイズが大きく、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献8には、マグネタイトを含有する鉄複合粒子粉末を有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、Sを含有しておらず、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献9記載の技術は、鉄粉を水または泥水に混入させた掘削用水を噴射しながら水平方向及び/又は斜め方向にボーリングを進めることによる汚染土壌浄化方法であるが、鉄粉の粒子径が大きいために、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献10記載の技術は、鉄微粒子を含む水性スラリーの原液を水と混合し、その混合直後に、該混合液を汚染された土壌に注入することを特徴とする土壌浄化方法であるが、鉄粉の粒子径が大きく、また混合器による分散状態が不十分なために、土壌への浸透性が悪く、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献11には、AlとSを含有するα−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子及びその鉄複合粒子を含有する水懸濁液を土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、該鉄複合粒子の製造現場で水懸濁液の状態として保存してしまうため、保存・貯蔵中及び水懸濁液の浄化現場への運搬中に、水と該鉄複合粒子との酸化反応が進み、該鉄複合粒子表面に酸化被膜層が形成され、粒子が粗大化するとともに、還元性能も劣化することから、浄化現場で使用する際には、土壌への浸透性が悪く、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献12には、α−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子及びポリアクリル酸ナトリウムを含有する水溶液を土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されており、前出特許文献13には、α−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子及びポリマレイン酸又はその塩を含有する水溶液を土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されており、前出特許文献14には、α−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子及びポリアスパラギン酸またはその塩を含有する水溶液を土壌・地下水の浄化処理に用いることが記載されているが、いずれも該鉄複合粒子の製造現場で水懸濁液の状態として保存してしまうため、保存・貯蔵中及び水懸濁液の浄化現場への運搬中に、水と該鉄複合粒子との酸化反応が進み、該鉄複合粒子表面に酸化被膜層が形成され、粒子が粗大化するとともに、還元性能も劣化することから、浄化現場で使用する際には、土壌への浸透性が悪く、有機ハロゲン化合物を十分に低減できるとは言い難い。
また、前出特許文献15記載の技術は、鉄粉の還元作用(価数低減)を利用した無害化、安定化処理方法であり、年数が経つと鉄粉の還元作用の持続性に問題を生じ、重金属が無害で安定な価数になっていても再度価数が上がり有害な金属に変わる可能性がり、恒久的な対策とは言い難いものである。
また、前出特許文献16記載の技術は、鉄粉の作用は還元もしくは吸着が主である。一部溶解による作用もあるが、全て酸性領域での鉄粉の溶出を経由して、ゲーサイト、レピッドクロサイト、マグネタイトが生成し取り込まれるメカニズムであり、鉄粉を利用した処理技術においてFe2+もしくはFe3+の溶解により重金属を取り込みながらスピネルフェライト化する現象を積極的に利用した技術ではない。
そこで、本発明は、鉄複合粒子の土壌中への浸透性を向上させることによって、土壌・地下水中に含まれる有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類を効率よく、持続的に、しかも、経済的に処理できる鉄複合粒子を用いた浄化方法を提供することを技術的課題とする。
前記技術的課題は以下の通りの本発明により達成できる。
即ち、本発明は、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類で汚染された土壌・地下水の浄化方法であって、気相中で表面酸化皮膜を形成した鉄複合粒子粉末を浄化処理の現場に運搬し、浄化処理の現場において前記鉄複合粒子粉末をスラリー化して平均粒子径が0.05〜0.50μmである鉄複合粒子を分散させた後、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類で汚染された土壌に前記鉄複合粒子を含有するスラリーを注入して浄化処理を行うことを特徴とする土壌・地下水の浄化方法である(本発明1)。
また、本発明は、本発明1において、鉄複合粒子粉末をスラリー化する際に、連続せん断式分散機又はメディア式分散機を用いて分散させる土壌・地下水の浄化方法である(本発明2)。
また、本発明は、本発明1又は2記載の鉄複合粒子を含有するスラリーの固形分濃度が0.5〜50g/lである土壌・地下水の浄化方法である(本発明3)。
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の鉄複合粒子粉末が、α−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子粉末であって、鉄複合粒子粉末のX線回折スペクトルにおいてα−Feの(110)面の回折強度D110とマグネタイトの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))が0.30〜0.95であり、Al含有量が0.10〜1.50重量%であり、S含有量が3500〜10000ppmである土壌・地下水の浄化方法である(本発明4)。
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかに記載の鉄複合粒子粉末が、飽和磁化値が85〜170Am/kgであり、BET比表面積が5〜60m/gであり、α−Feの(110)面の結晶子サイズが200〜400Åである土壌・地下水の浄化方法である(本発明5)。
本発明に係る土壌・地下水の浄化方法は、高い分解性能を有する鉄複合粒子粉末の特性を保持したまま、土壌中への優れた浸透性を有するもので、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類を効率よく分解・不溶化でき、有機ハロゲン化合物及び/又は重金属類によって汚染された土壌・地下水の浄化方法として好適である。
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
本発明に係る土壌・地下水の浄化方法について述べる。
本発明に係る土壌・地下水の浄化方法は、気相中で表面酸化皮膜を形成した鉄複合粒子粉末を浄化処理の現場に運搬し、浄化処理の現場において前記鉄複合粒子をスラリー化して鉄複合粒子を分散させた後、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類で汚染された土壌に前記鉄複合粒子粉末を含有するスラリーを注入して浄化処理を行う。
まず、本発明における鉄複合粒子粉末の製造法について述べる。
本発明における鉄複合粒子粉末は、常法に従って、ゲータイト粒子を作製した後、加熱脱水してヘマタイト粒子とし、該ヘマタイト粒子を加熱還元して鉄粒子とした後、気相中で表面酸化被膜を形成して得られる。
ゲータイト粒子粉末は、常法に従って、例えば、第一鉄塩を含有する水溶液と、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ又はアンモニアから選ばれる1種又は2種以上とを反応させて得られる鉄の水酸化物や炭酸鉄等の第一鉄含有沈殿物を含む懸濁液中に空気等の酸素含有ガスを通気することにより得ることができる。
なお、不純物含有量の少ない浄化処理用鉄複合粒子粉末を得るためには、前記第一鉄塩を含有する水溶液として、重金属等の不純物を低減し、純度の高いものを使用することが好ましい。
ゲータイト粒子粉末の平均長軸径は0.05〜0.50μmであり、S含有量が2200〜5500ppmである。粒子形状は紡錘状又は針状のどちらでも良い。軸比は4〜30が好ましく、より好ましくは5〜25であり、BET比表面積は20〜200m/gが好ましく、より好ましくは25〜180m/gである。
本発明においては、前記ゲータイト粒子中にAlを含有させるか、又は、ゲータイト粒子にAl被覆することが好ましい。Alを含有または被覆することによって造粒物の体積収縮を抑制することより造粒物の硬さを制御することができる。したがって湿式粉砕を行う場合の労力も小さくすることができる。また相対的に一次粒子の大きさを小さくすることができ、比表面積も相対的に大きくなり、性能が向上する。
ゲータイト粒子粉末のAl含有量又はAl被覆量は0.06〜1.00重量%が好ましい。
なお、ゲータイト粒子粉末は、常法に従って、造粒しておくことが好ましい。造粒することによって、固定層方式の還元炉を使用できるほか、鉄複合粒子とした場合でも還元条件によってはそのまま造粒物の形態を保つことが可能となる。
得られたゲータイト粒子粉末は250〜350℃の温度範囲で加熱脱水したヘマタイト粒子粉末にすることが好ましい。
本発明におけるヘマタイト粒子粉末は、あらかじめS含有量が高いゲータイト粒子を用いるか、又は、S含有量が低いゲータイト粒子の場合には、ヘマタイト粒子粉末の水懸濁液に硫酸を添加することで、ヘマタイト粒子粉末のS含有量を制御する。
ヘマタイト粒子粉末の平均長軸径は0.05〜0.50μmであり、S含有量が2400〜8000ppmである。ヘマタイト粒子粉末のAl含有量又はAl被覆量は0.07〜1.13重量%が好ましい。
前記ゲータイト粒子粉末又は前記ヘマタイト粒子粉末を350〜600℃の温度範囲で加熱還元することによって鉄粒子(α−Fe)粉末とする。
加熱還元温度が350℃未満である場合には、還元反応の進行が遅く、還元反応に長時間を要する。また、BET比表面積を大きくすることができるが、結晶成長を十分に行うことができず、α−Fe相が不安定となり粒子表面に酸化被膜が厚く形成される。またFe相からα−Fe相への相変化が不十分のため、α−Fe相の存在比率を高くすることができない。600℃を超える場合には、還元反応が急激に進行して粒子及び粒子相互間の焼結が過度に促進され粒子径が大きくなり、BET比表面積も小さくなるため好ましくない。
なお、還元反応の昇温時の雰囲気は水素ガス、窒素ガス等が利用できるが、工業的には水素ガスが好ましい。
加熱還元後の鉄粒子粉末は、そのまま気相中で表面酸化処理を行って冷却・乾燥する。
気相中での表面酸化被膜を形成する方法は、低温で窒素ガスと少量の空気を混合したガスを導入し、鉄粒子(α−Fe)粒子の粒子表面を酸化して、鉄複合粒子の表層にFeの酸化被膜層を形成することが好ましい。酸化処理温度は、150℃以下が好ましい。本発明においてAlを含有させることによって、鉄複合粒子粉末を容易に微細化でき、鉄複合粒子粉末の表面積を大きくすることが可能となるため、鉄複合粒子表層に気相酸化による表面酸化被膜を形成しても十分な分解特性を維持することができる。
冷却時の雰囲気は窒素又は水素のいずれでもよいが、最終的には窒素に切り替えることが好ましい。
表面酸化被膜を形成した鉄複合粒子粉末は、常法に従って、粉砕・解砕処理を行ってもよい。
次に、表面酸化被膜を形成した鉄複合粒子粉末の特性について述べる。
本発明における鉄複合粒子粉末の構成相はα−Fe相とともに、Fe相を含有する。Feの含有量は該鉄複合粒子粉末のX線回折スペクトルにおいて、α−Feの(110)面の回折強度D110とFeの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))が0.30〜0.97である。強度比が0.30未満の場合、α−Fe相の存在比率が低いため有機ハロゲン化合物類の浄化性能が十分ではなく、本発明の目的とする効果が得られない。強度比が0.97を超える場合には、α−Fe相の存在比率は十分であるが本発明で生成されたFe相の存在比率が低くなり、本発明の目的とする効果が得られない。好ましい強度比は0.32〜0.96である。また、Feは鉄複合粒子粉末の粒子表面に存在することが好ましい。
本発明における鉄複合粒子粉末のS含有量は3500〜10000ppmである。S含有量が3500ppm未満の場合には、有機ハロゲン化合物類の浄化性能が十分ではなく本発明の目的とする効果が得られない。10000ppmを越える場合には、有機ハロゲン化合物類の浄化性能はあるが、多量に含有しても効果が飽和し経済的ではない。好ましいS含有量は3800〜10000ppmであり、より好ましくは3800〜9500ppmである。
本発明における鉄複合粒子粉末のAl含有量は0.10〜1.50重量%が好ましい。Al含有量が0.10重量%未満の場合には、造粒物の体積収縮により硬い造粒物になり易い為、湿式粉砕を行う場合に労力を要する。1.50重量%を越える場合には、還元反応の進行が遅く、還元反応に長時間を要する。また結晶成長を十分に行うことができず、α−Fe相が不安定となり粒子表面に酸化皮膜が厚く形成されたり、また加熱還元時におけるFe相からα−Fe相への相変化が不十分のため、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることができない。より好ましいAl含有量は0.20〜1.20重量%である。
本発明における鉄複合粒子粉末の粒子形状は粒状が好ましい。本発明では紡錘状又は針状のゲータイト粒子粉末又はヘマタイト粒子をそのまま加熱還元処理するので、α−Fe相へ結晶変態する際、粒子形状が崩れ、等方的に成長する過程を経るので粒状形状となる。一方、球状では粒子サイズが同じであれば、BET比表面積が小さくなり触媒活性が低くなるため、球状粒子が存在しないことが好ましい。
本発明における鉄複合粒子粉末の平均粒子径は0.05〜0.50μmが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合にはα−Fe相が不安定であるため表面に厚い酸化被膜が形成され、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。0.50μmを越える場合にはα−Fe相の存在比率は高くできるが、本発明で得られるFe相の存在比率を本発明の目的とする効果が得られる程度に保持することが困難となる。より好ましい平均粒子径は0.05〜0.30μmである。
本発明における鉄複合粒子粉末の結晶子サイズ(α−Feの(110)面)は200〜400Åが好ましい。200Å未満の場合にはα−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。400Åを越える場合には、α−Fe相の存在比率は高くできるが、本発明で生成したFe相の存在比率を本発明の目的とする効果が得られる程度に保持することが困難となる。より好ましい結晶子サイズは200〜350Åである。
本発明における鉄複合粒子粉末のBET比表面積値は5〜60m/gが好ましい。5m/g未満の場合には、接触面積が小さくなり触媒活性が発現しにくい。60m/gを越える場合には、α−Fe相の存在比率を高くすることが困難となり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。より好ましいBET比表面積値は7〜55m/gである。
本発明における鉄複合粒子粉末のFeの含有量は全粒子粉末に対して75重量%以上が好ましい。75重量%未満の場合には触媒活性が低下するため、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。より好ましいFe含有量は75〜98重量%である。
本発明における鉄複合粒子粉末は、Pb、Cd、As、Hg、Sn、Sb、Ba、Zn、Cr、Nb、Co、Bi等のFe以外の金属元素は毒性のある金属であるため極力含有しないことが好ましい。殊に、高純度化及び触媒性能を考慮した場合、浄化処理用鉄複合粒子粉末のカドミウムの溶出量が0.01mg/l以下、全シアンは溶出が検出されず、鉛の溶出量が0.01mg/l以下、クロム溶出量が0.05mg/l以下、砒素の溶出量が0.01mg/l以下、総水銀の溶出量が0.0005mg/l以下、セレンの溶出量が0.01mg/l以下、フッ素の溶出量が0.8mg/l以下、ホウ素の溶出量が1mg/l以下であることが好ましい。
本発明における鉄複合粒子粉末の飽和磁化値は85〜170Am/kg(85〜170emu/g)が好ましい。85Am/kg未満の場合には、α−Fe相の存在比率が低いものであり、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。170Am/kgを越える場合にはα−Fe相の存在比率は高くできるが、本発明で得られるFe相の存在比率を本発明の目的とする効果が得られる程度に保持することが困難となる。より好ましい飽和磁化値は90〜170Am/kg(90〜170emu/g)である。
本発明においては、前記鉄複合粒子粉末を浄化処理の現場にて、浄化処理直前に該鉄複合粒子と水とを混合してスラリー化、鉄複合粒子の分散を行う。
本発明においては、浄化処理の現場にて、浄化処理直前に鉄複合粒子粉末を粉砕及びスラリー化することよって、保存・貯蔵中及び浄化現場への運搬中における水と鉄複合粒子との酸化反応が生じることが無いので鉄複合粒子の特性劣化が抑制され、微細な粒子を保ったままで土壌中への浸透性が向上するものである。しかも、鉄複合粒子粉末の状態で運搬できるので、スラリー化した場合に対し容量が小さくすることができ、保管場所も小さくすることができ、また、運搬コストも低減することができる。
本発明に用いる粉砕装置としては、メディアを用いる場合、転動ミル(ポットミル、チューブミル、コニカルミル)や振動ミル(ファイン・バイブレーションミル)等の容器駆動式、塔型(タワーミル)、攪拌槽型(アトライター)、流通管型(サンドグラインドミル)及びアニュラー型(アニュラーミル)等の媒体攪拌式を用いることができる。メディアを用いない場合、容器回転型(オングミル)、湿式高速回転型(コロイドミル、ホモミキサー、ラインミキサー)等のせん断・摩擦式を用いることができる。
好ましくは、複数のスリットを外周に入れて軸固定面部にカッター歯を設けた回転子と固定子を多段式に組み合わせた装置で、回転子の周速が10m/s以上のメディアレスであるラインミキサー等の連続せん断分散機を用いることができる。例えば、(株)美粒製の泡レスミキサーが特に好ましい。
また、好ましくは、円筒形のベッセル内にφ1〜φ3のメディアを充填率70〜80%で挿入し、ベッセル中心部に設置された回転軸に複数個の円板を取り付けて回転させることにより、メディアに急速旋回作用が起こり、その中を処理物が下から上に通過するサンドグラインドミル等のメディア式分散機を用いることができる。例えば、浅田鉄工(株)製のADミルが特に好ましい。
また、好ましくは、短い円筒形粉砕部内が攪拌用ロータと外周のセパレータで構成され、その内部にφ0.3〜φ1.0のメディアが充填され、ロータを回転させると、遠心力とメディア間の強力な剪断力により均一な粉砕・分散が得られるメディア式分散機を用いることができる。例えば、日本コークス工業(株)製のSC−MILLが特に好ましい。
湿式粉砕時の水懸濁液の濃度は鉄複合粒子が20〜40重量%が好ましい。20重量%未満の場合は、粉砕時にせん断等の応力が掛かり難く所定の粉砕粒度が得られないか長時間を要し、また粉砕に必要なメディアが著しく摩耗する為好ましくない。40重量%を超える場合には、水懸濁液が増粘し、機械的な負荷が大きく工業的に製造するのは困難である。
次に、本発明における鉄複合粒子を含有するスラリーについて述べる。
本発明において使用する鉄複合粒子を含有するスラリーは、前記鉄複合粒子を含む湿式粉砕後の水懸濁液、又は該水懸濁液を適度に希釈した懸濁液である。鉄複合粒子のスラリー中の含有量は0.5〜50g/lの範囲内で適宜選択することができ、より好ましくは1〜30g/lである。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリー中に、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアスパラギン酸又はその塩及びポリマレイン酸又はその塩等の分散剤を含有させることによって、従来に比べて格段に土壌への浸透性を向上させることもできる。特に、ポリアスパラギン酸又はその塩若しくはポリマレイン酸又はその塩は、生分解性を有し、土壌・地下水への注入後、微生物によって生分解を起こすため、環境に蓄積されることがほとんど認められないことから、原位置浄化処理に用いる鉄複合粒子を含有するスラリーの分散剤としてより好適である。前記各分散剤は水溶性であるので、湿式粉砕時又は粉砕後の水懸濁液中に、粉末或いは水溶液で添加し、攪拌混合すればよい。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリー中の分散剤の添加量は、鉄複合粒子に対して5〜50重量%が好ましい。5重量%未満の場合には、土壌への浸透性の寄与が十分でなく、50重量%を越える場合には、スラリーの粘度が高くなるため、工業生産性が低下し、且つ、注入時にも土壌への浸透性の低下に繋がるため、本発明の目的とする効果が得られない。より好ましくは5〜30重量%である。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリー中の鉄複合粒子について、レーザー回折装置を用いて粒度分布を測定した場合、鉄複合粒子の二次粒子の粒度分布は単一ピークであることが好ましい。複数のピークを有する場合、汚染土壌中への浸透速度が均一でなく浄化に長時間を要し本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリー中の鉄複合粒子の二次粒子のメジアン径(D50:鉄複合粒子の全体積を100%として粒子径に対する累積割合を求めたときの累積割合が50%となる粒子径)は0.5〜5.0μmが好ましい。二次粒子のメジアン径(D50)はより微細であることが好適であるが、一次粒子が微粒子でありα−Feを含有するため、磁気凝集を起こし易く、また、0.5μm未満とすることは工業的には困難である。5.0μmを超える場合は、汚染土壌への浸透が遅くなり短時間で浄化し難く、本発明の目的とする効果を得ることが困難となる。より好ましい二次粒子のメジアン径は0.5〜3.5μmである。
本発明においては、浄化処理の直前にスラリー化するので、前記特性を有する鉄複合粒子を含有するスラリーの状態のまま、特性を劣化させることなく、浄化処理に用いることができる。
次に、本発明に係る有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌・地下水の浄化方法ついて述べる。
有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌・地下水の浄化方法は、一般的に、含有される汚染物質を直接地下で分解する原位置分解法と掘削又は抽出した土壌・地下水中の汚染物質を分解する原位置抽出法とがあり、本発明においては原位置分解法に用いることができる。
原位置分解法においては、本発明における鉄複合粒子を含有するスラリーを高圧の空気、窒素等のガスあるいは水を媒体にしてそのまま浸透もしくはボーリング孔から地下に導入する方法が取られる。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリーの添加量は、土壌・地下水の有機ハロゲン化合物類の汚染の程度に応じて適宜選択することができるが、汚染土壌を対象とする場合には、通常土壌100重量部に対して鉄複合粒子の固形分換算で0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部である。0.01重量部未満の場合には、本発明の目的とする効果が充分得られない。20重量部を超える場合には、浄化効果は向上するが経済的ではない。また、汚染地下水を対象とする場合には、地下水100重量部に対して0.01〜20重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部である。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリーを用いて有機ハロゲン化合物類を浄化した場合には、後述する評価法において、見掛けの反応速度定数を0.035h−1以上にすることができる。
次に、本発明に係る重金属類の有害物質で汚染された土壌・地下水の浄化方法ついて述べる。
本発明に係る重金属の有害物質で汚染された土壌・地下水の浄化方法は、「封じ込め」による方法であり、「原位置封じ込め」又は「掘削後封じ込め」のいずれにも適用できる。
「原位置封じ込め」においては、鉄複合粒子を含有するスラリーを高圧の空気、窒素等のガスを媒体にしてそのまま浸透もしくはボーリング孔から地下に導入する方法である。本発明では、鉄複合粒子を含有するスラリーをそのまま使用するか、必要に応じて、希釈して使用すれば良い。
「掘削後封じ込め」においては、鉄複合粒子を含有するスラリーを、サンドミル、ヘンシェルミキサー、コンクリートミキサー、ナウターミキサー、一軸又は二軸式のニーダー型混合器等を用いて汚染土壌と混合攪拌して、土壌中の重金属等をフェライト化した後、封じ込める方法である。なお、必要に応じて、重金属等を取り込んだフェライトを磁気分離することもできる。
本発明における鉄複合粒子を含有するスラリーの添加量は、土壌・地下水中における重金属等の有害物質の汚染の程度に応じて適宜選択することができるが、汚染土壌を対象とする場合には、通常土壌100重量部に対して鉄複合粒子の固形分換算で0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部である。0.01重量部未満の場合には、本発明の目的とする効果が充分得られない。20重量部を超える場合には、浄化効果は向上するが経済的ではない。また、汚染地下水を対象とする場合には、地下水100重量部に対して0.01〜20重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部である。
<作用>
本発明において重要な点は、浄化処理の直前に鉄複合粒子のスラリーとすることによって、保存・貯蔵中及び浄化現場への運搬中における水と鉄複合粒子との酸化反応による鉄複合粒子の特性の劣化を抑制できるとともに、微細な粒子形態を保ったままで土壌中へ注入できるので土壌への浸透性が向上することにより、土壌・地下水の有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類を効率よく、経済的に分解・不溶化できるという点である。
土壌中への浸透性が向上する理由については、浄化処理の直前に鉄複合粒子のスラリーとすることによって、鉄複合粒子間の磁気的凝集が抑えられ、微細な粒子状態が保持され、浄化処理に用いる際に二次粒子径を小さくできることによるものと本発明者は推定している。
本発明においては、鉄複合粒子をスラリーの状態ではなく乾燥粉末の状態で保持し、浄化処理の直前にスラリー化する。本発明における鉄複合粒子は高活性であるので水中で保持した場合、鉄複合粒子との酸化反応が進み、該鉄複合粒子表面により厚く酸化被膜層が形成され、粒子が粗大化するとともに、還元性能も劣化する傾向にある。そこで、乾燥粉末の状態で保持・運搬し、浄化処理の直前にスラリー化することによって、鉄複合粒子の分解性能を維持したままスラリー化でき、高活性の鉄複合粒子を有するスラリーをそのまま浄化処理に用いることができるので、有機ハロゲン化合物をより効率よく分解することができる。
また、本発明においては、α−Feに還元した後に気相中で表面酸化皮膜を形成した鉄複合粒子粉末を用いており、α−Feに還元した後、水中に分散する工程はないため、水が介在することによる凝集や特性の劣化がないため、鉄複合粒子自体が有する高い特性をそのまま発揮することができる。
土壌・地下水中の有機ハロゲン化合物を効果的に分解できる理由は未だ明らかではないが、本発明者は下記のように推定している。
即ち、本発明における鉄複合粒子は、α−Fe相(0価)とFe相とが特定の割合で存在するとともに、一部の硫黄が加熱還元工程を経て0価の状態で存在することによって、鉄複合粒子として高い還元作用を有することができ、有機ハロゲン化合物類の分解反応に寄与するものと推定している。
以上のように、触媒活性効果が高いため、効率的に短期間で浄化処理を行うことが可能となり、特に高濃度の有機ハロゲン化合物類で汚染された土壌・地下水の浄化に好適である。
また、本発明における鉄複合粒子は、粒子サイズが微細であり高い活性を保持しているため、加熱することなく常温でα−Feが溶解しやすく、更に、土壌中に含有されている水又は地下水を効率よく分解して水素又は水酸基を生じさせ局所的に常にアルカリ性領域となるため、α−Feの溶解反応が徐々に進行する。次いで、溶解したα−Feと重金属等の有害物質とが鉄複合粒子の界面で、水の分解による水酸基、酸素又は溶存酸素等を取り込みスピネルフェライト化が持続的に進行し重金属等の有害物質を不溶化するものと本発明者は推定している。また、鉄複合粒子中に含有するSも局所的にα−Feの溶解に寄与しているものと推定される。
また、溶解したα−Feと重金属等の有害物質とのフェライト化反応が、スピネル構造である表層マグネタイトをシードとし、エピタキシャルに粒子が成長するため、効率よく重金属等の有害物質を不溶化できるものと本発明者は推定している。
本発明においては、酸又はアルカリを添加してpHを調整する処理、加熱処理及び空気吹き込みなどによる強制的な酸化処理も不要であることからも、効率よく重金属等の有害物質を不溶化できるものである。
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
ゲータイト粒子粉末の平均長軸径及び軸比は透過型電子顕微鏡写真で測定した。ヘマタイト粒子粉末及び鉄複合粒子粉末の平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真を用いて測定した。
鉄複合粒子粉末のFe量及びAl量は、「誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS4000」(セイコー電子工業(株)製)を使用して測定した。
各粒子粉末のS含有量は、「カーボン・サルファーアナライザー:EMIA−2200」(HORIBA製)を使用して測定した。
各粒子粉末の結晶相はX線回折によって10〜90°の範囲で測定して同定した。
鉄複合粒子粉末のピーク強度比は、前記の通りX線回折の結果から、α−Feの(110)面の回折強度D110及びマグネタイトの(311)面の回折強度D311を測定し、D110/(D311+D110)として強度比を求めた。
鉄複合粒子粉末の結晶子サイズ(α−Feの(110)面)は、X線回折法で測定される結晶粒子の大きさを、各粒子の結晶面のそれぞれに垂直な方向における結晶粒子の厚さを表したものであり、各結晶面についての回折ピーク曲線から、下記シェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
結晶子サイズ=Kλ/βcosθ
但し、β=装置に起因する機械幅を補正した真の回折ピークの半値幅(ラジアン単位)。
K=シェラー定数(=0.9)。
λ=X線の波長(Cu Kα線 0.1542nm)。
θ=回折角(各結晶面の回折ピークに対応)。
各粒子粉末の比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム(株)製)を使用し、BET法により測定した値で示した。
鉄複合粒子粉末の飽和磁化値は、「振動試料磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で測定した。
スラリー中の鉄複合粒子の粒度分布は、レーザー散乱・回折方式「マイクロトラック MT330 EXII」(日機装社製)を用いて測定した。なお、分散溶媒をイオン交換水とし、分散を超音波分散機で1分間とした。
鉄複合粒子粉末中に存在する鉄以外のカドミウム、鉛、クロム、砒素、総水銀、セレン、全シアン、フッ素及びホウ素の各溶出量は、平成3年 環境庁告示第46号 「土壌の汚染に係る環境基準について」に基づき測定した。
<検量線の作製:有機ハロゲン化合物の定量>
有機ハロゲン化合物の濃度は下記手順に従ってあらかじめ検量線を作成し、得られた検量線に基づいて濃度を算出した。
トリクロロエチレン(TCE:CHCl):分子量131.39
試薬特級(99.5%)、密度(20℃)1.461〜1.469g/ml
トリクロロエチレンを0.05μl、0.1μl及び1.0μlの3水準とし、褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)にイオン交換水30mlを添加し、次いで、トリクロロエチレンを各水準量注入し、直ちにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付ける。バイアル瓶を20℃、20分静置した後、ヘッドスペースのガスをシリンジで50μl分取し、「GC−MS−QP5050」(島津製製作所製)を用いてトリクロロエチレンを測定する。トリクロロエチレンは全く分解されないものとして、添加量とピーク面積との関係を求める。このときのカラムはキャピラリーカラム(DB−1:J&W Scientific社製、液相:ジメチルポリシロキサン)とし、キャリアガスにはHeガス(143l/min)を使用し、40℃、2分間保持した後、10℃/minの速度で250℃まで昇温してガスを分析する。
<有機ハロゲン化合物測定用試料調整>
褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に鉄複合粒子0.1gを含有するスラリーとイオン交換水30mlを注入し、次いで、トリクロロエチレン1μlを注入し、直ぐにフッ素樹脂ライナー付きゴム栓で蓋をし、その上からアルミシールで強固に締め付ける。
<有機ハロゲン化合物の分解反応における評価方法(見掛けの反応速度定数の測定)>
前記バイアル瓶を24℃で静置する。トリクロロエチレン残存量を、前記バイアル瓶を20℃、20分静置した後、ヘッドスペースからシリンジで50μlのガスを分取した。尚、ガスの分取は最大500時間まで、回分法によって所定時間におけるトリクロロエチレンの残存濃度を、前記「GC−MS−QP5050」(島津製作所社製)を用いて測定した。
得られた残存濃度から、下記式に基づいて見掛けの反応速度定数kobsを算出した。
ln(C/Co)=−k・t
Co:トリクロロエチレンの初期濃度
C:トリクロロエチレンの残存濃度
k:見掛けの反応速度定数(h−1
t:時間(h)
<土壌浸透特性評価>
直径0.94cm、長さ50cmのガラスカラム(25mLガラスビュレット)下部にガラスウールを詰め、カラムにイオン交換水を満たした状態で、カラムを振動させながら豊浦砂(粒径0.08〜0.3mm)を少量ずつ落下させて充填し飽和帯水層(透水係数5.24×10−2cm/s、間隙率44.7%)を形成した。次に、鉄複合粒子濃度8g/Lに調製した鉄複合粒子スラリー25mLを、飽和帯水層が形成されたガラスカラム上部に注入圧力が一定となるように土層表面から液高2cmの状態を保持しながら、重力注入によるカラム浸透試験を行い、25mLのスラリー全量がカラムを通過する時間(s)を測定した。
また、浸透完了後のカラムにおいて、カラム上表面から砂が鉄複合粒子の黒色に着色した位置までを浸透距離とし、後述比較例1に対する浸透距離の比率を浸透倍率(%)とした。
<重金属不溶化反応における評価方法>
褐色バイアル瓶50ml(実容積68ml)に、環境庁告示第46号に基づいた溶出試験によって6価クロムイオンを2.0mg/lを含む飽和土壌試料30gを入れ、その上から鉄複合粒子0.06gを含有するスラリーを滴下し、直ちにゴム栓で蓋をし、24℃で7日間静置反応させる。7日後に、その土壌試料を全量取り出し、環境庁告示第46号に基づいた溶出試験を行い、その溶出液中の6価クロムイオン濃度を測定する。反応前濃度(2.0mg/l)に対する反応後濃度から、低減率(不溶化率)を算出する。
<鉄複合粒子粉末1の製造>
毎秒3.4cmの割合でNガスを流すことによって非酸化性雰囲気に保持された反応容器中に、1.16mol/lのNaCO水溶液704lを添加した後、Fe2+1.35mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液296lを添加、混合(NaCO量は、Feに対し2.0倍当量に該当する。)し、温度47℃においてFeCOを生成させた。
ここに得たFeCOを含む水溶液中に、引き続き、Nガスを毎秒3.4cmの割合で吹き込みながら、温度47℃で70分間保持した後、当該FeCOを含む水溶液中に、温度47℃において毎秒2.8cmの空気を5.0時間通気してゲータイト粒子を生成させた。なお、空気通気中におけるpHは8.5〜9.5であった。
ここに得たゲータイト粒子を含有する懸濁液に、Al3+0.3mol/lを含む硫酸Al水溶液20lを添加、十分撹拌した後フィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してゲータイト粒子粉末1の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成する含有するゲータイト粒子粉末1は、平均長軸径0.30μm、軸比(長軸径/短軸径)12.5の紡錘状を呈した粒子であった。BET比表面積は85m/g、Al含有量は0.40重量%、S含有量は400ppmであった。
前記造粒物を330℃で加熱しヘマタイト粒子1とし乾式粉砕する。その後水に邂逅し70%硫酸を10ml/kgの割合で添加し攪拌する。その後、脱水しプレスケーキとし、圧縮成型機を用いて孔径3mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してヘマタイト粒子粉末1の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成するヘマタイト粒子粉末1は、平均長軸径0.24μm、軸比(長軸径/短軸径)10.7の紡錘形を呈した粒子であった。S含有量は3300ppmであった。
前記ヘマタイト粒子粉末1の造粒物1kgを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、窒素ガスに切り替えて90℃まで冷却し、次いで、酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化被膜を形成し、鉄複合粒子1を得た。
ここに得た鉄複合粒子1は、α−Feを主体としており、飽和磁化値152Am/kg(152emu/g)、BET比表面積24m/g、結晶子サイズ281Å、Fe含有量は87.9重量%、S含有量は4000ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.90であった。
<鉄複合粒子粉末2の製造>
Fe2+1.50mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液12.8lと0.44−NのNaOH水溶液30.2l(硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し0.35当量に該当する。)とを混合し、pH6.7、温度38℃においてFe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液の生成を行なった。次いで、Fe(OH)を含む硫酸第一鉄水溶液に温度40℃において毎分130lの空気を3.0時間通気してゲータイト核粒子を生成させた。
前記ゲータイト核粒子を含む硫酸第一鉄水溶液(ゲータイト核粒子の存在量は生成ゲータイト粒子に対し35mol%に該当する。)に、5.4NのNaCO水溶液7.0l(残存硫酸第一鉄水溶液中のFe2+に対し1.5当量に該当する。)を加え、pH9.4、温度42℃において毎分130lの空気を4時間通気してゲータイト粒子粉末を生成させた。ここに得たゲータイト粒子を含有する懸濁液にAl3+0.3mol/lを含む硫酸Al水溶液を0.96lを添加、十分撹拌した後をフィルタープレスで水洗し、得られたプレスケーキを圧縮成型機を用いて孔径4mmの成型板で押し出し成型して120℃で乾燥してゲータイト粒子粉末2の造粒物とした。
ここに得た造粒物を構成する含有するゲータイト粒子粉末2は、平均長軸径0.33μm、軸比(長軸径/短軸径)25.0の針状を呈した粒子であった。BET比表面積は70m/g、Al含有量は0.42重量%、S含有量は4000ppmであった。
前記造粒物を330℃で加熱しヘマタイト粒子粉末2の造粒物とした。ここに得た造粒物を構成するヘマタイト粒子粉末2は、平均長軸径0.25μm、軸比(長軸径/短軸径)21.4の針状を呈した粒子であった。S含有量は4500ppmであった。
前記ヘマタイト粒子粉末2の造粒物1kgを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、窒素ガスに切り替えて90℃まで冷却し、次いで、酸素分圧を徐々に増加させて空気と同じ比率として粒子表面に安定な酸化被膜を形成し、鉄複合粒子2を得た。
ここに得た鉄複合粒子粉末2は、α−Feを主体としており、飽和磁化値135Am/kg(135emu/g)、BET比表面積30m/g、結晶子サイズ274Å、Fe含有量は84.3重量%、S含有量は5500ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.84であった。
実施例1
<鉄複合粒子含有水懸濁液及びスラリーの製造>
前記鉄複合粒子1 1.0kgと水3.07kgを連続式せん断式分散機として 動力0.5kWの泡レスミキサー((株)美粒製)に入れ、周速21m/sで46分間分散処理し、鉄複合粒子を含有する水懸濁液1とした。
得られた水懸濁液1の比重は1.25、鉄複合粒子濃度(固形分濃度)は24.6重量%であり、レーザー回折・散乱法による水懸濁液中の鉄複合粒子の粒度分布は単一ピークであり、メジアン径(D50)が2.12μmであった。
得られた水懸濁液1中に含有する鉄複合粒子は、走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察した結果、一次粒子の粒子形状は米粒状であって平均長軸径が0.09μmであって軸比が1.4であった。
この水懸濁液1に水を加えて希釈後、プロペラ型攪拌機で30分間攪拌混合し、鉄複合粒子濃度8g/lの鉄複合粒子スラリーを得た。
<有機ハロゲン化合物の浄化処理結果(見掛けの反応速度定数)>
ここに得られた鉄複合粒子スラリーを用いて、スラリー作製後、直ちに前記評価方法に基づいて、浄化処理を行った。
前記評価方法によれば、前記スラリーを用いた場合のトリクロロエチレン浄化における見掛けの反応速度定数は0.042h−1であった。
<土壌浸透特性評価>
前記評価方法による前記鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー(スラリー化直後)を用いた場合の後述する比較例1に対する浸透倍率は150%であった。
実施例2〜10
<鉄複合粒子含有水懸濁液の製造>
鉄複合粒子の種類、分散剤の有無、分散剤と水の配合、粉砕機種類と運転条件を変化させて、前記実施例1と同様にして鉄複合粒子水懸濁液及び鉄複合粒子濃度8g/lのスラリーを製造した。鉄複合粒子水懸濁液の処理条件と特性を表1に示す。
Figure 0005479006
<有機ハロゲン化合物の浄化処理結果(見掛けの反応速度定数)>
前記評価方法により、前記鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー(スラリー化直後)を用いた場合のトリクロロエチレン浄化における見掛けの反応速度定数を求めた。その結果を表2に示す。
<土壌浸透特性評価>
前記評価方法による前記鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー(スラリー化直後)を用いた場合の後述する比較例1に対する浸透倍率、又はカラム通過時間を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 0005479006
比較例1
<鉄複合粒子含有水懸濁液及びスラリーの製造>
前記ヘマタイト粒子粉末1の造粒物1kgを固定層還元装置に導入し、Hガスを通気させながら、450℃で180分間、完全にα−Feとなるまで還元した。次に、Nガスに切替え室温まで冷却させた後、イオン交換水3lを直接還元炉に導入し、そのまま約25重量%の鉄粒子粉末を含有する水懸濁液として取り出した。
その水懸濁液をバッフルを取り付けたステンレスビーカーに移し、中速回転型攪拌機として動力0.2kWのT.Kホモディスパー2.5型(直径40mmφのエッジタービン翼、特殊機化工業(株)製)を挿入し、回転数3600rpmで30分間攪拌した。
次いで、連続せん断式分散機として、動力0.55kWのT.Kホモミックラインミル(PL−SL型、特殊機化工業(株)製)で、回転数4000rpmで分散処理した。
その後、メディア式分散機として、動力1.5kWの四筒式サンドグラインダー(4TSG−(1/8G)型、特殊機化工業(株)製)に、直径2mmのガラスビーズを0.25l充填し、回転数500rpmで分散処理し水懸濁液11とした。
得られた水懸濁液の比重は1.25、固形分濃度は24.3重量%であり、レーザー回折・散乱法による水懸濁液2の粒度分布は単一ピークであり、メジアン径(D50)が2.55μmであった(水懸濁液11)。
得られた水懸濁液11中に含有する鉄複合粒子は、走査型電子顕微鏡(30000倍)で観察した結果、一次粒子の粒子形状は米粒状であって平均長軸径が0.09μmであって軸比が1.4であった。
この水懸濁液11に水を加えて希釈後、プロペラ型攪拌機で30分間攪拌混合し、鉄複合粒子濃度8g/lのスラリーを得た。
ここに得られた鉄複合粒子スラリーを7日間保管した。
7日経過後のスラリーに含まれる鉄複合粒子粉末は、α−Feを主体としており、飽和磁化値128Am/kg(128emu/g)、BET比表面積31m/g、結晶子サイズ275Å、Fe含有量は82.4重量%、S含有量は5500ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.82であった。また、レーザー回折・散乱法によるスラリー中の鉄複合粒子の粒度分布は単一ピークであり、メジアン径(D50)が2.55μmであった。
保管後のスラリー(鉄複合粒子濃度8g/l)について、前記評価方法に基づいて見掛けの反応速度定数を測定したところ、トリクロロエチレン浄化における見掛けの反応速度定数は0.033h−1であった。
比較例2
前記水懸濁液11の1kgに対して、25%ポリマレイン酸水溶液(日本油脂(株)製ポリスターOM)を170g添加し、プロペラ型攪拌機で10分間攪拌混合し、水懸濁液12を得た。この水懸濁液3に水を加えて希釈後、プロペラ型攪拌機で30分間攪拌混合し、鉄複合粒子濃度8g/lのスラリーを得た。
ここに得られた鉄複合粒子スラリーを7日間保管した。
7日経過後のスラリーに含まれる鉄複合粒子粉末は、α−Feを主体としており、飽和磁化値126Am/kg(126emu/g)、BET比表面積32m/g、結晶子サイズ275Å、Fe含有量は82.1重量%、S含有量は5500ppmであった。X線回折の結果、α−FeとFeとが存在することが確認された。そのD110(α−Fe)とD311(Fe)との強度比D110/(D110+D311)は0.81であった。また、レーザー回折・散乱法によるスラリー中の鉄複合粒子の粒度分布は単一ピークであり、メジアン径(D50)が2.42μmであった。
保管後のスラリー(鉄複合粒子濃度8g/l)について、前記評価方法に基づいて見掛けの反応速度定数を測定したところ、トリクロロエチレン浄化における見掛けの反応速度定数は0.032h−1であった。
<土壌浸透特性評価>
前記鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー(製造後7日経過後)について、前記評価方法に基づいて浸透性の評価を行った場合、カラム通過時間は1230sであった。
実施例11、12、比較例3
<重金属不溶化反応における評価結果>
前記鉄複合粒子水懸濁液5、10、12を希釈して得た鉄複合粒子濃度8g/lのスラリーを用いて、前記評価方法による評価を行った。その結果を表3に示す。なお、水懸濁液5及び10のスラリーは製造直後のもの、水懸濁液12のスラリーは製造後7日経過後のものを使用した。
Figure 0005479006
<実汚染土壌での土壌浸透特性評価>
実施例13
<試験施工現場>
実施工サイトは、トリクロロエチレンで汚染された機械製造工場跡地で、地下(GL−)3mまでのTCE土壌溶出量が最大0.23mg/l(環境基準0.03mg/lの約8倍)であった。サイトの土質は玉石混じりの礫層であり、透水係数は10−3〜10−4cm/s程度、地下水位はGL−2m〜−4m、空隙率が35%である。試験施工対象範囲は、施工深度が地下2〜4m、施工面積が1m、施工容積が2mとした。
<鉄複合粒子含有スラリーの施工>
実施例10の仕様で得た鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー500lを使用し、100l×5回に分けて注入した。
施工は、先ず、削孔はロータリー式ボーリング機を用いて清水を送りながらボーリングロッド(二重管)によりGL−4mの深度まで削孔した(削孔径50mmφ)。次に、2ショット等量方式により、瞬結剤20l(水ガラス系)を注入し、さらに同一ステップにて該鉄複合粒子含有スラリーを100l注入した。これらの瞬結剤+鉄複合粒子含有スラリー注入を1ステップ0.5mのステップアップ方式によりGL−2mまでのこり4回繰り返した。
<性能評価>
注入孔から地下水の流れ方向に3m間隔で、内径50mmφの塩ビ製で深度GL−4m、ストレーナー区間がGL−2〜4mの観測井戸を3本設置した。
TCE浄化性能評価は、注入孔から数えて2番目の観測井戸にて、専用の地下水サンプル採集器で一定期間毎に地下水を採取し、TCE濃度を分析した。土壌浸透性能評価は、注入して6時間後、全ての観測井戸から地下水をサンプリングし、地下水中の鉄複合粒子の有無を目視観察し、鉄複合粒子の浸透・到達度を判定した。これらの結果を表4に示す。
比較例4
比較例2の仕様で得た鉄複合粒子濃度8g/lのスラリー(製造後7日経過後)を用いた以外は、前記実施例11と同様にして、鉄複合粒子含有スラリーの施工と性能評価を行った。このときの結果を表4に示す。
Figure 0005479006
本発明に係る土壌・地下水の浄化方法は、高い分解性能を有する鉄複合粒子粉末の特性を保持したまま、土壌中への優れた浸透性を有するもので、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類を効率よく分解・不溶化でき、有機ハロゲン化合物及び/又は重金属類によって汚染された土壌・地下水の浄化方法として好適である。

Claims (5)

  1. 有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類で汚染された土壌・地下水の浄化方法であって、気相中で表面酸化皮膜を形成した鉄複合粒子粉末を浄化処理の現場に運搬し、浄化処理の現場において前記鉄複合粒子粉末をスラリー化して平均粒子径が0.05〜0.50μmである鉄複合粒子を分散させた後、有機ハロゲン化合物類及び/又は重金属類で汚染された土壌に前記鉄複合粒子を含有するスラリーを注入して浄化処理を行うことを特徴とする土壌・地下水の浄化方法。
  2. 請求項1において、鉄複合粒子粉末をスラリー化する際に、連続せん断式分散機又はメディア式分散機を用いて分散させる土壌・地下水の浄化方法。
  3. 請求項1又は2記載の鉄複合粒子を含有するスラリーの固形分濃度が0.5〜50g/lである土壌・地下水の浄化方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の鉄複合粒子粉末が、α−Feとマグネタイトとからなる鉄複合粒子粉末であって、鉄複合粒子粉末のX線回折スペクトルにおいてα−Feの(110)面の回折強度D110とマグネタイトの(311)面の回折強度D311との強度比(D110/(D311+D110))が0.30〜0.95であり、Al含有量が0.10〜1.50重量%であり、S含有量が3500〜10000ppmである土壌・地下水の浄化方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の鉄複合粒子粉末が、飽和磁化値が85〜170Am/kgであり、BET比表面積が5〜60m/gであり、α−Feの(110)面の結晶子サイズが200〜400Åであ土壌・地下水の浄化方法。
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