次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る制御方法を実施できる射出成形機1の構成について、図6〜図9を参照して説明する。
射出成形機1は、図6に示すように、機台10上に設置した型締装置1cと、左右に並べて設置した一対の射出装置1ia,1ibを備える。型締装置1cは、機台10の中程に固定した固定盤11と、機台10の端部に固定した支持盤12と、この支持盤12と固定盤11間に架設した四本のタイバー13…を備えるとともに、各タイバー13…にスライド自在に装填した可動盤14を備える。なお、各タイバー13…は、図7に示すように、可動盤14(支持盤12,固定盤11)の四隅に配される。また、図7及び図8に示すように、可動盤14の前面(内面)には、移動部2である回転テーブル2rを重ねるように配するとともに、可動盤14の後面(外面)には、回転テーブル2rを正逆回転させる駆動機構3を配設する。
駆動機構3は、可動盤14の裏面に固定し、かつ同軸上に配したリングギア15と、可動盤14の後面に取付けたサーボモータ5s(駆動モータ5)と、このサーボモータ5sの回転シャフトに取付けた駆動ギア16を備え、この駆動ギア16は、リングギア15の内周面に形成したネジ部15nに噛合する。このため、可動盤14の前面には、リングギア15及び駆動ギア16等を収容する収容凹部17を設ける。
一方、18は、サーボモータ5sをフィードバック制御するサーボ回路20(図9)を内蔵するコントローラであり、サーボモータ5sはこのサーボ回路20の出力部に接続する。サーボモータ5sの後端には、このサーボモータ5sの回転数を検出するロータリエンコーダ6を付設し、このロータリエンコーダ6は、コントローラ18に接続するとともに、サーボモータ5sは、図8に示すように、サーボモータ5sの回転シャフトを把持することによりサーボモータ5sの停止を保持可能なモータブレーキ(ブレーキ部)7を内蔵し、このモータブレーキ7もコントローラ18に接続する。
図9は、コントローラ18の具体的回路を示し、このコントローラ18には、ホストコントローラ部18mとサーボ回路20が含まれる。サーボ回路20は、偏差演算部22,23、速度制御部25、電流制御部26、インタフェース27、電流検出部28を備え、図9に示す系統によりサーボ制御系(サーボ回路20)を構成する。そして、電流制御部26の出力側(出力部)からサーボモータ5sに対して給電が行われるとともに、このサーボモータ5sに付設したロータリエンコーダ6から出力するエンコーダパルス(パルス列)Dpは、インタフェース27及びホストコントローラ部18mに付与される。そして、インタフェース27からは、速度フィードバック信号(速度検出値Dvd)が出力し、速度偏差Evを出力する偏差演算部22の反転入力部に付与される。また、電流検出部28の検出信号(電流検出値)Diは、トルク偏差Etを出力する偏差演算部23の反転入力部及び制御部31に付与される。制御部31では検出信号DiからトルクTの大きさを得る。
これにより、サーボ回路20では、回転テーブル2rに対する速度制御が行われる。速度制御時には、制御部31から偏差演算部22の非反転入力部に対して速度指令値Dvsが付与され、インタフェース27から得られる速度検出値Dvdと比較されるとともに、偏差演算部22から速度偏差Evが得られるため、この速度偏差Evに基づいて速度のフィードバック制御が行われる。なお、速度偏差Evは、速度制御部25により補償されて偏差演算部23の非反転入力部に付与され、電流検出部28から得るトルク検出値(電流検出値Di)と比較されるとともに、偏差演算部23からトルク偏差Etが得られる。このトルク偏差Etは、電流制御部26に付与され、電流制御部(ドライバ)26から駆動電流がサーボモータ5sに供給される。
一方、ホストコントローラ部18mは、マイクロコンピュータ等を用いた制御部31を内蔵し、各種制御及び処理を行うことができる。また、ホストコントローラ部18mには、偏差演算部21及び位置制御部24を備える。これにより、エンコーダパルスDpは、位置偏差Epを出力する偏差演算部21の反転入力部に位置検出値Dxdとして付与されるとともに、制御部31から偏差演算部21の非反転入力部に対して位置指令値Dxsが付与される。この結果、偏差演算部21からは位置検出値Dxd位置指令値Dxsの位置偏差Epが得られるため、この位置偏差Epに基づいて位置のフィードバック制御が行われる。そして、位置偏差Epは、位置制御部24により補償され、ホストコントローラ部18mからは位置の補正された速度指令値Dvsとして出力し、前述した偏差演算部22の非反転入力部に付与される。以上により、回転テーブル2rをフィードバック制御により回転(移動)させる制御系が構成される。
さらに、ホストコントローラ部18mには、本発明に係る制御方法を実行するため、回転テーブル2rが後述するストッパ4a,4bに係止する直前の目標位置Xsまで所定の標準速度Vnにより回転(移動)させ、目標位置Xsに達した後に標準速度Vnよりも低速となる突当速度Vsにより回転(移動)させる制御機能を備えるとともに、タイマFt,総パルスカウンタFpc及び移動量カウンタFmcに係わる機能を備えている。したがって、制御部31には、メモリ32が付属し、このメモリ32には、本発明に係る制御方法を実行するための制御プログラム(シーケンスプログラム)を格納したROMをはじめ、RAM等の各種記憶手段が含まれる。なお、33は、ホストコントローラ部18mに接続したタッチパネル式のディスプレイであり、各種の設定及び表示を行うことができる。
他方、射出成形機1は、本実施形態に係る制御方法を含む自動停止制御モードに加え、手動停止制御モードを備えている。自動停止制御モードは、後述するように、回転テーブル2rが停止した後に位置制御を行う生産時に用いる制御モードである。また、手動停止制御モードは、回転テーブル2rが停止した後にサーボモータ5sに内蔵するモータブレーキ7により停止を保持する、主に調整時(段取時)に用いる制御モードであり、この場合、位置制御は行わない。したがって、オペレータは、自動停止制御モードと手動停止制御モードを任意に選択することができる。本実施形態に係る制御方法を用いれば、位置決め制御を行う自動停止制御モードと位置決め制御を行うことなくモータブレーキ7により停止を保持する手動停止制御モードのいずれを選択した場合であっても同一の停止状態にすることができため、モードの相違に伴う型同士の位置ズレ(干渉)の発生を回避できる。この結果、金型C…の損傷を防止し、成形品質の更なる向上に寄与できる利点がある。
また、可動盤14の後面における中心位置には、図8に示すように、回転テーブル2rを軸方向へ僅かに押出して可動盤14から離間させ、かつ軸方向へ引込むことにより可動盤14に当接させる回転テーブル進退駆動機構41を配設する。図8に示すLsは、回転テーブル2rを軸方向へ押出した際に、回転テーブル2rと可動盤14間に生じる隙間を示しており、この隙間Lsは、回転テーブル2rと可動盤14の接触を解除できる数〔mm〕程度で足りる。回転テーブル進退駆動機構41は、可動盤14の後面に固定した進退シリンダ42を備え、この進退シリンダ42に内蔵するピストン43のピストンロッド43rは、可動盤14に挿通させるとともに、先端を回転テーブル2rの裏面に固定する。したがって、このピストンロッド43rは、回転テーブル2rの回転軸を兼用する。一方、進退シリンダ42の後室及び前室は、油圧回路44に接続するとともに、油圧回路44は、上述したコントローラ18に接続する。これにより、油圧回路44は、コントローラ18により制御される。
さらに、図7及び図8に示すように、回転テーブル2rと可動盤14間には、回転テーブル2rに対して機械的に係止して停止させるストッパ機構4を配設する。ストッパ機構4は、回転テーブル2rの裏面における外周付近に固定したストライカ2rsを備えるとともに、可動盤14の収容凹部17の内部であって、ストライカ2rsの移動軌跡上に固定した一対のストッパ4a,4bを備える。これにより、回転テーブル2rが正逆方向にそれぞれ回転した際には、ストライカ2rsが各ストッパ4a,4bに突当たり、回転テーブル2rの回転範囲が180〔°〕に規制されるストッパ機構部4が構成される。
一方、回転テーブル2r上であって、中心に対して180〔°〕対向する位置には、一対の可動型Cam,Cbmを取付けるとともに、各可動型Cam,Cbmに対面する固定盤7上には、一対の固定型Cac,Cbcを取付ける。可動型Cam,Cbmと固定型Cac,Cbcは、一対の金型Ca,Cbを構成する。この場合、可動型Cam,Cbmは、前述した金型Ca,Cbにおける一方の型Cam,Cbmを構成する。これにより、一方の固定型Cac側が一次金型Ca、他方の固定型Cbc側が二次金型Cbとなる。なお、各可動型Cam,Cbmは、交互に入替えて用いられるため、符号Cam,Cbmは、個々の可動型を指すものではなく、固定型Cacに対向する可動型が一次側の可動型Camとなり、固定型Cbcに対向する可動型が二次側の可動型Cbmとなる。
各固定型Cac,Cbcには、それぞれ四本のガイドピン61…を備え、各ガイドピン61…は、各可動型Cam,Cbmに向かって突出する。他方、各可動型Cam,Cbmには、各ガイドピン61…に対向するガイドブッシュ62…を備える。これにより、型締工程では、各ガイドピン61…が各ガイドブッシュ62…に進入し、可動型Cam,Cbmと固定型Cac,Cbcの正確な位置決めが行われる。
また、一次金型Caの位置に対応する支持盤12の背面には、型締シリンダ63aを取付けるとともに、二次金型Cbの位置に対応する支持盤12の背面には、型締シリンダ63bを取付ける。そして、各型締シリンダ63a,63bの図に現れないピストンロッドの先端は可動盤14に結合する。各型締シリンダ63a,63bは、それぞれ前述した油圧回路44に接続する。他方、一次金型Caの位置に対応する可動盤14の後面には、突出シリンダ64aを取付けるとともに、二次金型Cbの位置に対応する可動盤14の後面には、突出シリンダ64bを取付ける。そして、各突出シリンダ64a,64bのピストンロッドの先端はエジェクタピンに結合するとともに、各突出シリンダ64a,64bは、それぞれ前述した油圧回路44に接続する。
次に、本実施形態に係る制御方法を含む射出成形機1の全体動作について、図1〜図9参照して説明する。
今、型締装置1cは型開状態、即ち、可動盤14が型開停止位置(全開位置)にあるものとする。まず、型締シリンダ63a,63bが駆動制御され、図4に示すように、型閉工程を含む型締工程Pcが行われる。型締工程Pcでは、型開停止位置(全開位置)から可動盤14が前進し、高速型閉,低速型閉,高圧型締が順次行われる。
型締工程Pcが終了することにより、射出工程Pmが行われる。この場合、射出工程Pmには、本来の射出工程のみならず、計量工程及び冷却工程が含まれるとともに、射出装置1ia,1ibを前進させてノズルタッチを行うノズルタッチ工程、圧抜きを行う圧抜き工程等も含まれる。射出工程Pmでは、一次金型Caにおいて、一次射出工程Pmifにより射出装置1iaから一次射出が行われ、一次射出工程Pmifの終了により一次冷却工程Pmcf及び一次計量工程Pmmfが行われる。一方、二次金型Cbにおいて、二次射出工程Pmisにより射出装置1ibから二次射出が行われ、二次射出工程Pmisの終了により二次冷却工程Pmcs及び二次計量工程Pmmsが行われる。この場合、一次射出と二次射出では、樹脂の種類や樹脂量等が異なることから、一次射出と二次射出に伴う全体の処理時間も異なることになる。
射出工程Pmが終了することにより、可動盤14を後退させて型開きを行う型開工程Poが行われる。型開工程Poでは、型締位置から可動盤14を後退させる。そして、可動盤14を型開停止位置(全開位置)まで後退させたなら可動盤14を停止させる。これにより、型開工程Poが終了する。
一方、型開工程Poの開始後、型開き途中において、可動盤14が予め設定した設定位置(回転開始位置)に達したなら、型替工程Prが行われる。この型替工程Prでは、回転テーブル2rに対する回転駆動制御が行われるとともに、本実施形態に係る制御方法に従って回転テーブル2rに対する停止制御が行われる。
図1に、型替工程Prにおける処理手順をフローチャートで示す。型替工程Prでは、最初に進退シリンダ42が駆動制御され、図8に示すように、回転テーブル2rが軸方向に押出される(ステップS1)。押出された回転テーブル2rと可動盤14間には隙間Lsが生じる。また、サーボモータ5sが駆動制御され、回転テーブル2rは、図5に示す標準速度Vnにより回転する(ステップS2)。この場合、制御部31からは、標準速度Vn(スピードアップ区間(加速領域Vnu),定速領域Vnc及びスローダウン区間(減速領域Vnd)を含む。)に対応する速度指令値Dvsが出力し、サーボ回路20に付与される。この際、定速領域Vncでは回転テーブル2rの位置を監視し、回転テーブル2rが目標位置Xcに達したなら、減速領域Vndの設定に従い、所定の減速率により減速させる減速制御を開始する(ステップS3,S4)。なお、目標位置Xcは、ストライカ2rsがストッパ4a又は4bに突当たる直前に設定される。
そして、減速領域Vndでは、減速制御時の速度を監視し、速度が予め設定した定速領域Vncよりも十分に遅い突当速度Vsに達したなら、減速制御を解除して突当速度Vsを維持する制御を行うとともに、本実施形態に係る制御方法に従って仮停止位置判定処理を実行する(ステップS5,S6,S7)。このように、標準速度Vnに、少なくとも定速領域Vncから突当速度Vsまで所定の減速率により減速する減速領域Vndを含ませれば、比較的高速の標準速度Vnから比較的低速の突当速度Vsへの移行時におけるオーバーシュート等の無用な変動を回避し、標準速度Vnから突当速度Vsへの安定かつ円滑な移行を実現できる。さらに、突当速度Vsに対しては、定速に維持するフィードバック制御を行う。これにより、エンコーダパルスDpのパルス数における無用な変動を回避できるため、仮停止位置を迅速かつ安定に検出し、特に、本発明に係る制御方法に係わる処理の安定化に寄与できる。なお、突当速度Vsによる移動中は、低圧(低トルク)を維持する。即ち、突当速度Vsによる制御時には、サーボモータ5sのトルクTの大きさが標準速度Vnによる制御時よりも小さくなるようにトルク制限する。この場合、トルクTの大きさは標準速度Vnの40〔%〕以下、望ましくは25〔%〕前後に設定することが望ましい。このようなトルク制限を行うことにより、ストライカ2rsがストッパ4a,4bに衝突した際に過剰なトルクTが発生する不具合を回避できる。
以下、仮停止位置判定処理の具体的な処理手順について、図3を参照しつつ図2に示すフローチャートに従って説明する。
図3及び図5中、ts(Xs)は速度が突当速度Vsに達した時点(位置)、即ち、仮停止位置判定処理の開始時点を示している。今、この開始時点tsにおける総パルス数(回転を開始したときからの累積パルス数)を、便宜上、「200」パルスであるとし、図3に、開始時点tsからの具体的なデータを示す。なお、図3中、(a)はサンプリング周期Zs(例えば、250〔μs〕)、(b)はエンコーダパルスDp、(c)は一サンプリング周期Zsのパルス数、(d)は総パルスカウンタFpcによりカウントされる総パルス数、(e)は移動最大値、(f)は移動量、(g)は移動量カウンタFmcによりカウントされる移動量カウント値、(h)は平均移動量、(i)は停止したか否か、即ち、仮停止位置に達したか否かの判定結果をそれぞれ示している。
仮停止位置判定処理は、突当速度Vsにより変化する第一物理量M1を監視し、この第一物理量M1が予め設定した第一閾値M1sに達したことを条件として仮停止位置に達したものと判定する。第一物理量M1には、ロータリエンコーダ6から得るエンコーダパルスDpの、所定のサンプリング周期Zs…内におけるパルス数(移動量)を用いる。第一物理量M1として、このようなエンコーダパルスDpのパルス数を用いれば、移動部2の僅かな移動量であっても容易かつ的確に検出できるため、移動部2が仮停止位置に達したか否かを確実に判定できる。
具体的な処理手順は次のようになる。最初に、開始時点tsから最初のサンプリング周期Zsが経過した時点の総パルス数Xmを求める(ステップS21)。例示の場合、突当速度Vsが一定の速度を維持していれば、一サンプリング周期Zsにおけるパルス数は「5」パルスとなるため、最初のサンプリング周期Zsが経過した時点における総パルス数カウンタFpcのカウント値、即ち、総パルス数Xmは「205」となる。最初の検出は1回目となるため、このときに得られる総パルス数「205」は、移動最大値Xpとしてセットされる(ステップS22,S23)。
次いで、2回目のサンプリング周期Zsが経過したなら、得られた総パルス数Xmとセットされている移動最大値Xpの比較が行われる(ステップS22,S24)。この際、回転テーブル2rが移動中であれば、Xm>Xpの条件を満たすため、Xm−Xpの絶対値Xsが移動量として求められる(ステップS24,S25)。例示の場合、総パルス数Xmは「210」、移動最大値Xpは「205」であるため、移動量として、210−205=「5」が求められる。また、Xm>Xpの条件を満たしたなら、移動最大値Xpを、得られた総パルス数Xmに更新する(ステップS26)。例示の場合、移動最大値Xp「205」を「210」に書き替える。さらに、求めた移動量Xs(「5」)は移動量カウンタFmcに加算される(ステップS27)。
一方、移動量XsはN回分(例示は3回分)を平均して用いる。図3において、サンプリング周期〔1〕から〔5〕までは、一定の速度Vsにより移動しているため、3回分、即ち、サンプリング周期〔2〕から〔4〕までの移動量Xsが移動量カウンタFmcに加算されれば、カウント値は「15」となり、平均化処理(15/3回)を行うことにより、平均移動量「5」が得られる(ステップS28,S29)。このように、パルス数(移動量)に、複数回連続して得られるパルス数の平均値を用いれば、仮停止位置及びその付近においてパルス数が少なくなり、ノイズの影響を受けやすい場合であっても、正確かつ信頼性の高いパルス数を得ることができる。
また、平均移動量Xsが得られたなら移動量カウンタFmcはリセットする(ステップS30)。そして、得られた平均移動量Xsは、第一閾値M1sと比較され、「停止」又は「非停止(移動中)」の判定が行われる。第一閾値M1sは「0」が理想的であるが、この場合の判定は、仮停止位置の判定となるため、さほど精度は要求されない。したがって、迅速化を図る観点から、停止と見做す程度でよい。例示の第一閾値M1は「1」を設定した。したがって、1回目の平均移動量は「5」のため、仮停止位置とは判定されない(ステップS31)。
同様の処理を継続し、サンプリング周期〔6〕では、突出速度Vsが低下し、このときのパルス数(移動量)は「3」となる。この場合、突当に入った直後の状態と考えられる。また、サンプリング周期〔7〕では、パルス数(移動量)が「1」となる。この場合、エンコーダパルスDpには、正パルス,負パルス,正パルスの三つのパルスが含まれており、突当状態、特に、突当後、揺り戻しにより若干後退したことが考えられる。この場合、サンプリング周期〔5〕〜〔7〕における2回目の平均移動量は「3」となり、仮停止位置とは判定されない(ステップS31)。
他方、サンプリング周期〔8〕では、パルス数(移動量)は「−1」となる。この場合、総パルス数Xmは、直前にセットされた移動最大値Xp(「229」)よりも小さい値の「228」となり、ステップS24におけるXm>Xpの条件を満たさなくなる。したがって、この場合には、移動量カウンタFmcに「0」を加算する(ステップS32)。即ち、パルス数が移動方向に対して極性が反対(負)のときは、パルス数を強制的に0にする処理を行う。これにより、回転テーブル2rがストッパ4a又は4bに衝突して反対方向に揺り戻された場合であっても、発生する負パルスの影響が低減されるため、回転テーブル2rが仮停止位置に達したか否かを迅速かつ的確に判定できる。また、次のサンプリング周期〔9〕では、パルス数は「1」となる。この場合、総パルス数Xmは、直前にセットされた移動最大値Xp(「229」)と同じ値「229」となり、ステップS24でにおけるXm>Xpの条件を満たさないため、この場合にも、移動量カウンタFmcに「0」を加算する(ステップS32)。さらに、次のサンプリング周期〔10〕では、パルス数(移動量)は「0」となる。この場合、総パルス数Xmは、直前にセットされた移動最大値Xp(「229」)と同じ値「229」となり、ステップS24では、Xm>Xpの条件を満たさないため、この場合にも、移動量カウンタFmcに「0」を加算する(ステップS32)。この結果、サンプリング周期〔8〕〜〔10〕における3回目の平均移動量は「0」となり、仮停止位置と判定される(ステップS31)。
一方、仮停止位置に達したと判定されたなら、直ちに本停止位置制御処理を実行する。本停止位置制御処理では、突当速度Vsにより変化する第二物理量M2を監視し、この第二物理量M2が予め設定した本停止位置となる第二閾値M2sに達したなら位置制御による停止制御を行う。第二物理量M2には、サーボモータ5sのトルクTの大きさを用いる。第二物理量M2として、トルクTの大きさを用いれば、例えば、自動停止制御モードと手動停止制御モードにおける位置制御の有無やモータブレーキ7の使用有無等によって生じる停止位置におけるトルクTの大きさを同一のレベルに強制的に設定できるため、特に、停止位置におけるトルクTの大きさによる影響を排除し、型同士間の位置決めを正確に行うことができる。
具体的な処理手順は次のようになる。仮停止位置に達したと判定された時点では、回転テーブル2rがストッパ4a又は4bに突当たった状態にあり、さらに、突当速度Vsとなるようにフィードバック制御が行われているため、トルクTの大きさは徐々に上昇する。そこで、制御部31はトルクTの大きさを監視し、予め設定した目標トルク(第二閾値M2s)に達したか否かを判断する(ステップS8,S9,S10)。なお、目標トルクの大きさは、例えば、上述した自動停止制御モードと手動停止制御モードを実行した際に、型同士の位置ズレを解消できる必要最小限の大きさを設定できる。
そして、トルクTの大きさが第二閾値M2sに達したなら、突当速度Vsに対するフィードバック制御を解除し、トルクTの大きさが第二閾値M2sに達した時点における位置を維持するように位置制御(停止制御)を行う(ステップS10,S11)。これにより、トルクTは一定の大きさ、即ち、目標トルクの大きさ(第二閾値M2s)に維持される。この後、進退シリンダ42が駆動制御され、回転テーブル2rが軸方向に引込まれる(ステップS12)。これにより、回転テーブル2rは可動盤14に当接した状態となる。
型替工程Prが終了することにより、突出工程Peが行われる。突出工程Peでは、突出シリンダ64a,64bが駆動制御され、エジェクタピンが所定ストロークだけ前進することにより、可動型Cam(Cbm)に付着した、例えば、複合成形品を離型するとともに、この後、後退して元の位置に戻る。この場合、回転テーブル2rが回転した後、即ち、二次側に位置する可動型Cbmが一次側に移動してから突出工程Peが行われる。突出工程Peが終了することにより、中間工程が行われる。中間工程は、次の成形サイクルへ安定に移行させるためのインターバルであり、このインターバルはユーザサイドで任意に設定することができる。したがって、中間工程は、必要により設けるものであり、必ずしも設けることを要しない。
以上により、一成形サイクルが終了するため、さらに、次の成形がある場合には、上述した一連の成形工程が同様に繰り返される。この場合、型替工程Prでは、回転指令が出力するため、本停止位置制御処理を終了、即ち、回転テーブル2rに対する停止制御(位置制御)を解除し、回転方向(移動方向)を反対方向に切換えることにより、同様の処理を実行する(ステップS14,S1…)。なお、回転方向(移動方向)を反対方向に切換えることにより、エンコーダパルスDpの極性が反対となる。
このように、本実施形態に係る制御方法によれば、回転テーブル2rを標準速度Vnにより回転移動させ、かつ目標位置Xcに達した後に、標準速度Vnよりも遅く設定した突当速度Vsにより回転移動させるとともに、この突当速度Vsにより変化するロータリエンコーダ6から得るエンコーダパルスDpの、所定のサンプリング周期Zs…内におけるパルス数(移動量)を監視し、このパルス数(移動量)が予め設定した仮停止位置と見做す第一閾値M1sに達したなら、さらに、突当速度Vsにより変化するサーボモータ5sのトルクTの大きさを監視し、このトルクTの大きさが予め設定した本停止位置となる第二閾値M2sに達したなら位置制御による停止制御を行うようにしたため、停止制御時における第二物理量M2の大きさを一定にすることができる。これにより、第二物理量M2の大きさがバラつく条件下であっても当該バラつきを解消又は低減し、型同士間の無用な位置ズレ(干渉)を解消できるなど、様々な条件下であっても常に正確な位置決めを行うことができる。また、仮停止位置における正確な位置制御が不要になるとともに、速やかに本停止位置の停止制御を行うことができる。これにより、成形サイクルの短縮、更には生産効率を高めることができる。
特に、移動部2として、金型C…を構成する可動型Cm…又は固定型Cc…の一方の型(Cm…)を複数搭載し、回転移動させることにより、可動型Cm…又は固定型Cc…の一方の型(Cm…)を他方の型(Cc…)に対して切換えを行う回転テーブル2rを適用したため、本発明に係る制御方法を実施した際における位置決めの正確性を確保し、かつ成形サイクルを短縮する観点から最も望ましいパフォーマンスを得ることができる
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、複数の金型Ca…として、一対の金型Ca,Cbを順次交換して成形する場合を示したが、三以上の金型Ca…であっても一方の型Cam…を順次入替えて成形することにより同様に実施できる。さらに、型替工程Prは、回転テーブル2rを軸方向に押出す押出動作,この押出動作後に回転テーブル2rを回転させる回転動作,及びこの回転動作後に回転テーブル2rを軸方向に引込む引込動作を含む複合動作を例示したが、押出動作及び引込動作を行うことなく回転テーブル2rを回転させるのみの単純動作であってもよい。一方、射出成形機として、可動盤14と固定盤11間に複数の金型Ca,Cbを配するとともに、可動盤14と固定盤11間に配した移動部2である回転テーブル2rに各金型Ca,Cbを構成する一方の型Cam,Cbmを取付け、回転テーブル2rを回転させることにより一方の型Cam,Cbmを順次入替えて複合成形品Mを成形する射出成形機1を例示したが、他のタイプの射出成形機にも同様に適用できる。また、移動部2も、例示する回転テーブル2rのように回転する移動のみならず、直進方向に移動するなど、回転しない各種の移動部2に同様に適用することができる。