本発明の電極活物質は、空間群R3mに帰属する六方晶系の層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む電極活物質である。上記のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物が、一般式Li1+α[NixMnyCoz]O2(式中、αは0.1<α<0.3、x、yおよびzはx+y+z=1、0.075<z<0.250、0.50<x/y<0.90を満たす)で表される。上記のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉末について、CuKα線を用いて測定された粉末X線回折において、2θ=44.3±1.0°付近に観測される回折ピーク強度(B)に対する、2θ=18.6±0.2°付近に観測される回折ピーク強度(A)のピーク強度比(A/B)が、0を超え1.0未満である。
本発明の電極活物質を非水電解質二次電池に用いることにより低温環境下でのレート特性が改善される要因は明確ではない。しかし、ピーク強度比(A/B)が0を超え1.0未満であれば、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の結晶構造が充放電時に変化し難く、その結晶構造を壊れにくくすることができるものと考えられる。また、一般式中のα値を0.1<α<0.3の範囲内にすることにより、Li元素が他の遷移金属元素(Ni、Mn、Co)との置換が起こらず、定サイトに存在しやすいため、抵抗の増加を抑制することができるものと考えられる。さらに、Mn元素の含有モル比率(y)に対するNi元素の含有モル比率(x)の比(x/y)を0.5<x/y<0.9の範囲内にして、反応性の高いMn元素の含有量を増加させることによって、より安定な結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を合成することができるものと考えられる。x/yが0.9以上の場合、LiとNiの置換が起こりやすく、内部抵抗が増加する。また、x/yが0.5以下の場合には、異相が生成しやすく、内部抵抗が増加する。さらにまた、Co元素の含有モル比率(z)を0.075<z<0.250、かつ、Mn元素の含有モル比率(y)に対するNi元素の含有モル比率(x)の比(x/y)を0.50<x/y<0.90にすることにより、粒子成長が抑制される傾向があり、それによって電解液との接触面積が増えることが拡散抵抗を減少させ得るものと考えられる。以上のことから、上記の限定された組成と特性を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む電極活物質を非水電解質二次電池に用いることにより、低温環境下においてレート特性が向上するものと考えられる。
本発明の電極活物質は、タングステンを含むことが好ましい。この場合、ニッケルとマンガンとコバルトの含有量の合計に対するタングステンの含有量のモル比率が0.005以上0.03以下であることが好ましい。すなわち、ニッケルとマンガンとコバルトの含有モル比率の合計(x+y+z)に対するタングステンの含有モル比率(γ)の比(γ/(x+y+z))が0.005≦γ/(x+y+z)≦0.03であることが好ましい。上記の比(γ/(x+y+z))の値が0.005以上0.03以下の範囲内にある場合、低温環境下におけるレート特性をさらに向上させることができる。
本発明の電極活物質の製造方法は、少なくとも、リチウム含有原料とニッケル含有原料とマンガン含有原料とコバルト含有原料とを混合して混合物を得る混合工程と、上記の混合物を焼成する焼成工程とを備える。
本発明の一実施の形態として、上記のリチウム含有原料としては、リチウムの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩、塩化物等が挙げられる。具体的には、リチウム含有原料としては、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムから選ばれた少なくとも一種を使用することが好ましい。
上記のニッケル含有原料としては、ニッケルの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩、塩化物等が挙げられる。具体的には、ニッケル含有原料としては、金属ニッケル、酸化ニッケルおよび水酸化ニッケルから選ばれた少なくとも一種を使用することが好ましい。
上記のマンガン含有原料としては、マンガンの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩、塩化物等が挙げられる。具体的には、マンガン含有原料としては、二酸化マンガン、四三酸化マンガンおよび炭酸マンガンから選ばれた少なくとも一種を使用することが好ましい。
コバルト含有原料としては、コバルトの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩、塩化物等が挙げられる。具体的には、コバルト含有原料としては、水酸化コバルトおよび四三酸化コバルトから選ばれた少なくとも一種を使用することが好ましい。
上記の混合工程における混合方法と混合条件、および、上記の焼成工程における焼成方法と焼成条件は、非水電解質二次電池の要求特性、生産性等を考慮して任意に設定することができる。たとえば、電極活物質を製造する際、リチウム含有原料と遷移金属含有原料を水などの溶媒に混合して分散させることにより、得られたスラリーを噴霧乾燥した後、焼成することが好ましい。
次に、本発明の電極活物質を正極活物質に用いた場合の非水電解質二次電池の製造方法の一例を以下で詳細に説明する。
まず、正極を形成する。たとえば、正極活物質を導電剤および結着剤とともに混合し、有機溶剤または水を加えて負極活物質スラリーとし、この正極活物質スラリーを電極集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより正極を形成する。
次に、負極を形成する。たとえば、負極活物質を導電剤および結着剤とともに混合し、有機溶剤または水を加えて負極活物質スラリーとし、この負極活物質スラリーを電極集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより負極を形成する。
本発明において、負極活物質は特に限定されるものではないが、球状黒鉛等の炭素材料、スピネル型構造のチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)等のリチウムチタン複合酸化物を使用することができる。基準電位の高いリチウムチタン複合酸化物を負極活物質に用いても、上記の本発明の効果を得ることができる。
本発明において結着剤は特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂を使用することができる。
また、有機溶剤についても、特に限定されるものではなく、たとえば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N‐メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒等を使用することができる。また、有機溶剤の種類、有機化合物と有機溶剤との配合比、添加剤の種類とその添加量等は、二次電池の要求特性と生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
次いで、上記で得られた正極と負極とを、セパレータを介して積層し、内部空間に電解質を注入した容器に入れて密閉し、封止することによって非水電解質二次電池が作製される。
なお、電解質は、正極と対向電極である負極との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行う。このような電解質としては、室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導度を有するものを使用することができる。たとえば、電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用することができる。ここで、電解質塩としては、たとえば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等を使用することができる。
上記の有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン等を使用することができる。
また、電解質には、固体電解質を使用してもよい。固体電解質に用いられる高分子化合物としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン‐エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン‐トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン‐テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン‐テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル‐メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル‐メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル‐エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル‐エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル‐メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル‐アクリル酸共重合体、アクリロニトリル‐ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体、さらにはポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド‐プロピレンオキサイド共重合体、およびこれらのアクリレート体、メタクリレート体の重合体等を挙げることができる。また、これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを電解質として使用してもよい。あるいは電解質塩を含有させた高分子化合物のみをそのまま電解質に使用してもよい。なお、電解質として、Li2S‐P2S5系、Li2S‐B2S3系、Li2S‐SiS2系に代表される硫化物ガラス、ぺロブスカイト構造を有する酸化物、ナシコン構造を有する酸化物等の無機固体電解質を用いてもよい。
上記の実施の形態では、電池形状は特に限定されるものでないのはいうまでもなく、円筒型、角型、シート型等にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケース、モールド樹脂、アルミニウムラミネートフイルム等を使用してもよい。
また、上記の実施の形態では、本発明の電極活物質を正極に使用したが、負極にも適用可能である。
さらに、上記の実施の形態では、電極活物質を非水電解質二次電池に使用した場合について述べたが、一次電池にも使用することが可能である。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は一例であり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下、本発明の電極活物質として、空間群R3mに帰属する六方晶系の層状岩塩型の結晶構造を有し、一般式Li1+α[NixMnyCoz]O2(式中、αは0.1<α<0.3、x、yおよびzはx+y+z=1、0.075<z<0.25、0.5<x/y<0.9を満たす)で表されるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製し、それを用いた非水電解質二次電池の実施例1〜3と比較例1〜6について説明する。
(実施例1)
(リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の作製)
ニッケル含有原料としてニッケル金属粉と、マンガン含有原料として四三酸化マンガン(Mn3O4)と、コバルト含有原料として四三酸化コバルト(Co3O4)と、リチウム含有原料として炭酸リチウム(Li2CO3)とを準備した。これらの原料を、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.35:0.45:0.20となるように秤量した。秤量した原料を、溶媒に水を用いてボールミルにより混合してスラリーを作製した。得られたスラリーを噴霧乾燥し、乾燥粉を得た。得られた乾燥粉を、酸素ガス雰囲気中で950℃の温度にて20時間焼成することにより、リチウムニッケルマンガンコバルト酸複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.35Mn0.45Co0.20]O2を作製した。
(正極の作製)
上記で作製された正極活物質としてのリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物と、導電剤としての炭素材料と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF(Polyvinylidine DiFuoride))とを重量比で88:6:6になるように秤量し、混合して正極合材を作製した。この正極合材を、溶媒としてのN‐メチル‐2‐ピロリドン中に分散させて混錬することにより正極スラリーを作製した。作製された正極スラリーを、集電体としての厚みが20μmのアルミニウム箔の両面に片面あたり6.6mg/cm2となるように塗布し、130℃の温度で乾燥させた後、ロールプレスで圧延することによって正極シートを作製した。
(負極の作製)
負極活物質としての球状黒鉛と、結着剤としてのPVDFとを重量比で93:7になるように秤量し、混合して負極合材を作製した。この負極合材を、溶媒としてのN‐メチル‐2‐ピロリドン中に分散させて混錬することにより負極スラリーを作製した。作製された負極スラリーを、集電体としての厚みが10μmの銅箔の両面に片面あたり3.2mg/cm2となるように塗布し、140℃の温度で乾燥させた後、1トン/cm2の圧力でプレスすることによって負極シートを作製した。
(電池の作製と評価)
上述のようにして作製された正極シートと負極シートを、セパレーターとしてのポリエチレン多孔膜を介して重ね合わせたものと、電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒に、溶媒1リットル当たり1モルの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を混合したものとを、アルミニウムラミネートフィルム製容器に入れて密閉し、ラミネート型電池を作製した。
以上のようにして作製されたラミネート型電池を用いて低温環境下の放電特性を評価した。まず、75mAの電流値で4.2Vまで充電した。その後、4.2Vの電圧で5時間保持した後、ラミネート型電池のアルミニウムラミネートフィルム製容器の一部を切断し、内部に発生したガスを除去した。その後、ガスが除去されたラミネート型電池を再び密閉し、75mAの電流値、2.5〜4.2Vの電圧範囲で充放電を3回繰り返し行った。このときの3回目の放電容量から、1Cと10Cにおける各電流値(1C:250mA、10C:25A)を算出し、温度が−30℃の低温環境下において各電流値での放電試験を行った。
なお、ここで、上述したように1.0Cは1時間で充電または放電が終了する電流値であり、10Cは6分で充電または放電が終了する電流値である。
(実施例2)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.425:0.475:0.10となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.425Mn0.475Co0.10]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(実施例3)
ニッケル含有原料としてニッケル金属粉と、マンガン含有原料として四三酸化マンガン(Mn3O4)と、コバルト含有原料として四三酸化コバルト(Co3O4)と、タングステン含有原料として三酸化タングステン(WO3)と、リチウム含有原料として炭酸リチウム(Li2CO3)とを準備した。これらの原料を、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.35:0.45:0.20、(Ni+Mn+Co):W=1.0:0.01となるように秤量した。秤量した原料を、溶媒に水を用いてボールミルにより混合してスラリーを作製した。以下、実施例と同様の方法で、タングステンを含有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物として、タングステンを含有するLi1+0.15[Ni0.35Mn0.45Co0.20]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例1)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.40:0.40:0.20となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.40Mn0.40Co0.20]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例2)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.05、Ni:Mn:Co=0.45:0.45:0.10となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.05[Ni0.45Mn0.45Co0.10]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例3)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.45:0.45:0.10となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.45Mn0.45Co0.10]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例4)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.33:0.33:0.33となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.33Mn0.33Co0.33]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例5)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.30:0.40:0.30となるように原料を秤量した。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物としてのLi1+0.15[Ni0.30Mn0.40Co0.30]O2を正極活物質として用いて、実施例1と同様の方法でラミネート型電池を作製した。作製されたラミネート型電池を用いて実施例1と同様の方法で低温環境下の放電特性を評価した。
(比較例6)
実施例1と同様の方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を作製した。ただし、モル比でLi/(Ni+Mn+Co)=1.15、Ni:Mn:Co=0.30:0.60:0.10となるように原料を秤量した。得られた焼成粉末について、下記の測定条件で粉末X線回折測定を行った。その結果、空間群R3mに帰属する六方晶系の層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の他に、異相が存在していることが明らかになった。
(考察)
上記の実施例1〜3、比較例1〜5で作製されたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の粉末X線回折測定を下記の測定条件で行った。
(測定装置:XRD装置(RINT2500)、測定条件X線源:CuKα線 50kV/250mA、発散スリット:0.5°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、走査スピード1°/min、ステップ幅:0.01°)
粉末X線回折測定の結果から算出された、2θ=44.3±1.0°付近に観測される回折ピーク強度(B)に対する2θ=18.6±0.2°付近に観測される回折ピーク強度(A)のピーク強度比(A/B)と、仕込み組成のα、x、y、zの値と、低温環境下における電池特性についての評価結果として、1Cでの放電容量に対する10Cでの放電容量の比率(放電容量維持率)とを表1に示す。
表1に示す結果から、実施例1〜3においては、空間群R3mに帰属する六方晶系の層状岩塩型の結晶構造を有し、回折ピーク強度比が0<A/B<1.0であるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む本発明の電極活物質は、低温環境下において優れたレート特性を示すことがわかる。なお、回折ピーク強度比がA/B≧1.0であるリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物の場合、結晶が壊れやすくなり、低温環境下におけるレート特性が悪くなる。
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。