以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
また、本実施形態において、レンズ制御部37は、カメラ制御部21の指示により、フォーカスレンズ37を所定のレンズ駆動速度で駆動させるため、レンズ駆動速度に応じた駆動パルス信号を、フォーカスレンズ駆動モータ36に送信する。また、レンズ制御部37は、レンズ制御部37が備えるメモリ(不図示)に、後述するフォーカスレンズ32の焦点検出可能最大速度Vmaxを記憶している。
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるメモリ24に記録される。メモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。なお、撮像素子22の撮像面の前方には、赤外光をカットするための赤外線カットフィルタ、および画像の折り返しノイズを防止するための光学的ローパスフィルタが配置されている。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
操作部28は、シャッターレリーズボタンや撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オードフォーカスモードの中でも、ワンショットモード/コンティニュアスモードの切換が行えるようになっている。ここで、ワンショットモードとは、一度調節したフォーカスレンズ32の位置を固定し、そのフォーカスレンズ位置で撮影するモードであるのに対し、コンティニュアスモードとは、フォーカスレンズ32の位置を固定することなく被写体に応じてフォーカスレンズ位置を調節するモードである。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
図2は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図3は、図2のIII部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図、図4は、図2のIV部を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
本実施形態の撮像素子22は、図3および図4に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
図5は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図7は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図7の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系31の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
なお、本実施形態のカラーフィルタはマイクロレンズ2211と光電変換部2212との間に設けられ、緑画素Gと赤画素Rと青画素Bのそれぞれのカラーフィルタの分光感度は、たとえば図9に示すとおりとされている。図9は、図3および図4に示す3つの撮像画素RGBそれぞれの波長に対する相対感度を示す分光特性図である。
図2に戻り、撮像素子22の撮像面の中心、ならびに中心から上下および左右対称位置の5箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a,22b,22c,22d,22eが設けられている。そして、図3、図4に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、横一列(22a,22d,22e)または縦一列(22b,22c)に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
なお、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所または三箇所等にすることもでき、また、六箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列22a〜22eの中から、撮影者が操作部28を手動操作することにより所望の焦点検出画素列を、焦点検出位置として選択することもできる。
図6(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図8(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図6(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図8(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図6(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図8(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図6(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図8(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図3、図4に示すように、互いに隣接して交互に、横一列または縦一列に配列されることにより、図2に示す焦点検出画素列22a〜22eを構成する。
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。図10に焦点検出画素222a,222bの分光特性を示すが、相対感度は、図9に示す撮像画素221の青画素B、緑画素Gおよび赤画素Rの各感度を加算したような分光特性とされ、また感度が現れる光波長領域は、図10に示す撮像画素221の青画素B、緑画素Gおよび赤画素Rの感度の光波長領域を包摂した領域となっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。なお、図10は、図3および図4に示す焦点検出画素の波長に対する相対感度を示す分光特性図である。
また、図6(A)、図6(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
図11は、図3および図4のXI-XI線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳34の測距瞳341,342から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図11においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L近傍に位置するもののみを例示して示したが、図11に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳341,342から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
ここで、射出瞳34とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳341,342とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
なお、図11において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳341,342の並び方向と一致している。
また、図11に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳34上に投影され、その投影形状は測距瞳341,342を形成する。
すなわち、測距距離Dにある射出瞳34上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳341,342)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
図11に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳341を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳342を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図3および図4に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳341と測距瞳342とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出位置における焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算して焦点電圧を検出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出し、それぞれを積算して焦点電圧を検出することでも求めることができる。
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
次いで、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図12は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作は、カメラ1の電源がONされ、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンが半押し(第1スイッチSW1がオン)されることにより開始される。また、以下においては、コンティニュアスモード、すなわち、光学系の焦点状態を連続的に検出することで、フォーカスレンズ32の位置を固定することなく被写体に応じたフォーカスレンズ位置で撮影するモードが選択されている場合を例示して説明を行う。
ステップS1では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理が行われる。本実施形態では、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出処理は、次のように行われる。すなわち、まず、撮像素子22により、撮影光学系からの光束の受光が行われ、カメラ制御部21により、撮像素子22の5つの焦点検出画素列22a〜22eを構成する各焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しが行われる。この場合、撮影者の手動操作により、特定の焦点検出位置が選択されているときは、その焦点検出位置に対応する焦点検出画素からのデータのみを読み出すような構成としてもよい。そして、カメラ制御部21は、読み出された一対の像データに基づいて像ズレ検出演算処理(相関演算処理)を実行し、5つの焦点検出画素列22a〜22eに対応する焦点検出位置における像ズレ量を演算し、さらに像ズレ量をデフォーカス量に変換する。また、カメラ制御部21は、算出したデフォーカス量の信頼性の評価を行う。なお、デフォーカス量の信頼性の評価は、たとえば、一対の像データの一致度やコントラストなどに基づいて行われる。
そして、ステップS2では、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出ができたか否かの判定が行われる。デフォーカス量が算出できた場合には、測距可能と判断して、ステップS3に進む。一方、デフォーカス量が算出できなかった場合には、測距不能と判断して、ステップS7に進む。なお、本実施形態においては、デフォーカス量の算出ができた場合でも、算出されたデフォーカス量の信頼性が低い場合には、デフォーカス量の算出ができなかったものとして扱い、ステップS7に進むこととする。本実施形態においては、たとえば、被写体のコントラストが低い場合、被写体が超低輝度被写体である場合、あるいは被写体が超高輝度被写体である場合などにおいて、デフォーカス量の信頼性が低いと判断される。
ステップS3では、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出できたと判定され、測距可能と判断されているため、カメラ制御部21により、ステップS1で算出されたデフォーカス量に基づく、合焦動作が行われる。
すなわち、ステップS3では、位相差検出方式により算出されたデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させるための処理が行われる。具体的には、カメラ制御部21により、位相差検出方式により算出されたデフォーカス量から、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させるのに必要となるレンズ駆動量の算出が行われ、算出されたレンズ駆動量が、レンズ制御部37を介して、フォーカスレンズ駆動モータ36に送出される。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36は、カメラ制御部21により算出されたレンズ駆動量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させる。
なお、本実施形態においては、ステップS3において、フォーカスレンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を合焦位置に駆動させている間においても、ステップS4に進み、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動されたか否かの判定が行われる。フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動されていない場合(ステップS4=No)は、ステップS1に戻り、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出を行う(ステップS1)。そして、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させている間に、新たなデフォーカス量が算出された場合には、カメラ制御部21は、新たなデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動させる。
一方、合焦位置までのフォーカスレンズ32の駆動が完了した場合(ステップS4=Yes)は、ステップS5に進み、フォーカスレンズ32の合焦駆動を終了し、次いで、ステップS6に進み、合焦表示が行われる。合焦表示が行われた後は、ステップS1に戻り、この焦点調節処理が繰り返されることとなる。なお、ステップS6における合焦表示は、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。また、合焦表示を行う際には、位相差検出方式により合焦動作が行われた旨を撮影者に報知するための表示を併せて行なってもよい。
このように、本実施形態では、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出できる間(ステップS2=Yes)は、位相差検出方式により算出されたデフォーカス量に基づくフォーカスレンズ32の駆動が行われる。一方、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出できなかったと判定された場合、または、算出されたデフォーカス量の信頼性が低いと判定された場合(ステップS2=No)には、ステップS7に進む。
ステップS7では、カメラ制御部21により、スキャン動作が行われているか否かの判断が行われる。ここで、スキャン動作とは、フォーカスレンズ駆動モータ36により、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、カメラ制御部21により、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による焦点評価値の算出を、所定の間隔で同時に行い、これにより、位相差検出方式による合焦位置の検出と、コントラスト検出方式による合焦位置の検出とを、所定の間隔で、同時に並行して実行する動作である。
具体的には、スキャン動作において、カメラ制御部21は、まず、レンズ制御部37にスキャン駆動開始指令を送出し、レンズ制御部37は、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ駆動モータ36を駆動させ、フォーカスレンズ32を光軸L1に沿ってスキャン駆動させる。なお、フォーカスレンズ32のスキャン駆動は、無限端から至近端に向かって行ってもよいし、あるいは、至近端から無限端に向かって行ってもよい。
そして、スキャン動作において、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ32を駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の焦点検出画素222a,222bから一対の像に対応した一対の像データの読み出しを行い、これに基づき、位相差検出方式により、デフォーカス量の算出および算出されたデフォーカス量の信頼性の評価を行うとともに、フォーカスレンズ32を駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の撮像画素221から画素出力の読み出しを行い、これに基づき、焦点評価値を算出し、これにより、異なるフォーカスレンズ位置における焦点評価値を取得することで、コントラスト検出方式により合焦位置の検出を行う。
ステップS7において、スキャン動作が行われていないと判断された場合は、スキャン動作を開始するために、ステップS8に進み、一方、スキャン動作が行われていると判断された場合は、ステップS14に進む。
ステップS8では、カメラ制御部21により、スキャン速度Vscanの設定が行われる。ここで、スキャン速度Vscanとは、スキャン動作におけるフォーカスレンズ32の駆動速度をいう。本実施形態において、カメラ制御部21は、スキャン速度Vscanを、位相差検出方式による焦点検出に適した速度に設定する。ここで、位相差検出方式による焦点検出に適した速度としては、例えば、位相差検出方式による焦点検出が可能な速度のうち最大の速度を挙げることができる。
また、本実施形態において、スキャン速度Vscanは、フォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく速度ではなく、フォーカスレンズ32を駆動させた際の像面の移動速度(像面移動速度)に基づく速度として設定される。なお、スキャン速度Vscanを、被写体の輝度やフォーカスレンズ32が駆動可能な最大速度を加味して設定する構成としてもよい。
次いで、ステップS9では、カメラ制御部21により、焦点検出可能最大速度Vmaxの取得が行われる。本実施形態において、焦点検出可能最大速度Vmaxは、コントラスト検出方式により合焦位置の検出が可能な速度のうち最大の速度となる。ここで、上述したように、コントラスト検出方式による焦点検出は、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、所定のサンプリング間隔で、焦点評価値を算出するものである。この焦点評価値のサンプリング間隔は、フォーカスレンズ32の駆動速度が速くなるほど大きくなるものであり、フォーカスレンズ32の駆動速度が所定速度を越えた場合には、焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなり過ぎて、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう。焦点検出可能最大速度Vmaxは、コントラスト検出方式による合焦位置の検出ができる最大の速度であり、スキャン速度Vscanについて、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能か否かを判断するための基準となる速度である。
また、本実施形態において、焦点検出可能最大速度Vmaxは、レンズ制御部37のメモリに記憶されており、カメラ制御部21は、レンズ制御部37から、レンズ制御部37のメモリに記憶されている焦点検出可能最大速度Vmaxを取得することができる。さらに、本実施形態において、焦点検出可能最大速度Vmaxは、上述したスキャン速度Vscanと同様に、像面移動速度に基づく速度であり、カメラ制御部21は、レンズ制御部37から、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxを取得する。なお、絞り34を絞ると焦点深度は深くなるため、合焦位置を検出できる焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなる場合があり、そのため、絞り34に応じた焦点検出可能最大速度Vmaxがレンズ制御部37のメモリに記憶されている場合には、カメラ制御部21は、絞り34に応じた焦点検出可能最大速度Vmaxを取得することができる。
なお、レンズ制御部37のメモリに、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxが記憶されていない場合でも、フォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmax_lnsが記憶されている場合には、カメラ制御部21は、以下に説明するように、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxを取得することができる。すなわち、カメラ制御部21は、まず、レンズ制御部37から、フォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmax_lnsを取得する。そして、カメラ制御部21は、取得したフォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmax_lnsを、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxに変換することで、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxを取得することができる。具体的には、カメラ制御部21は、レンズ制御部37から、フォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmax_lnsとともに、像面移動係数(フォーカスレンズ32の駆動に伴う像面移動速度/フォーカスレンズ32の実際の駆動速度)を含むレンズ情報を取得し、取得したレンズ情報に基づいて、フォーカスレンズ32の実際の駆動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmax_lnsを、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxに変換することで、像面移動速度に基づく焦点検出可能最大速度Vmaxを取得することができる。
そして、ステップS10では、カメラ制御部21により、ステップS8で設定したスキャン速度Vscanと、ステップS9で取得した焦点検出可能最大速度Vmaxとの比較が行われ、スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmax以下の速度であるか否かの判断が行われる。スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmax以下の速度(スキャン速度Vscan≦焦点検出可能最大速度Vmax)であると判断された場合は、ステップS11に進み、一方、スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmaxよりも速い速度(スキャン速度Vscan>焦点検出可能最大速度Vmax)であると判断された場合は、ステップS12に進む。
ステップS11では、カメラ制御部21により、後述するステップS13で開始されるスキャン動作が、第1スキャン動作であると判断される。ここで、第1スキャン動作とは、焦点検出可能最大速度Vmax以下のスキャン速度Vscan、すなわち、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanで、フォーカスレンズ32をスキャン駆動し、スキャン動作を行うものである。
一方、ステップS12では、カメラ制御部21により、後述するステップS13で開始されるスキャン動作が、第2スキャン動作であると判断される。ここで、第2スキャン動作とは、焦点検出可能最大速度Vmaxよりも速いスキャン速度Vscanで、フォーカスレンズ32をスキャン駆動し、スキャン動作を行うものである。
ステップS13では、カメラ制御部21により、スキャン動作が開始される。具体的には、カメラ制御部21は、まず、ステップS8で設定したスキャン速度Vscanでスキャン動作を行うために、スキャン速度Vscanをレンズ制御部37に送出する。そして、レンズ制御部37は、カメラ制御部21から送出されたスキャン速度Vscanに基づいて、フォーカスレンズ32を駆動するための駆動パルス信号を生成し、生成した駆動パルス信号を、フォーカスレンズ駆動モータ36に送信することで、フォーカスレンズ32をスキャン速度Vscanで駆動させる。そして、フォーカスレンズ32をスキャン速度Vscanで駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による焦点評価値の算出を、所定の間隔で同時に実行することで、スキャン動作を実行する。
ステップS14では、カメラ制御部21により、コントラスト検出方式による焦点評価値の算出処理が行われる。本実施形態では、焦点評価値の算出処理は、撮像素子22の撮像画素221から画素出力を読み出し、読み出した画素出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算して焦点電圧を検出することにより行われる。焦点評価値の算出は、撮影者の手動操作により、あるいは、被写体認識モードなどにより、特定の焦点検出位置が選択されているときには、選択された焦点検出位置に対応する撮像画素221の画素出力のみを読み出すような構成としてもよい。
そして、ステップS15では、カメラ制御部21により、スキャン動作を行なった結果、コントラスト検出方式により、焦点評価値のピークの検出ができたか否かの判定が行われる。コントラスト検出方式により、焦点評価値のピークの検出ができた場合には、ステップS16に進み、一方、コントラスト検出方式により、焦点評価値のピークの検出ができない場合は、ステップS23に進む。
ステップS15において、コントラスト検出方式により焦点評価値のピークの検出ができないと判定された場合は、ステップS23に進み、カメラ制御部21により、スキャン動作が、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について行われたか否かの判定が行われる。フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域についてスキャン動作が行われていない場合は、ステップS1に戻る。ステップS1に戻った後は、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出が再度行われ(ステップS1)、デフォーカス量が算出できない場合(ステップS2=No)は、ステップS7に進む。ステップS7では、スキャン動作が実行されていると判断され(ステップS7=Yes)、ステップS14に進み、焦点評価値が再度算出される(ステップS14)。そして、コントラスト検出方式により焦点評価値のピークが検出されているため(ステップS15=Yes)、再度、ステップS23で、スキャン動作が、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について行われたか否かの判定が行われる。
このように、スキャン動作が開始された後は、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出されたか(ステップS2=Yes)、焦点評価値のピークが検出されたか(ステップS15=Yes)、または、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域についてスキャン動作が実行されるまで(ステップS23=Yes)は、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)、およびコントラスト検出方式による焦点評価値の算出(ステップS14)を繰り返す、スキャン動作が継続される。そして、スキャン動作を行った結果、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出された場合(ステップS2=Yes)は、ステップS3に進み、上述した合焦動作が行われる(ステップS3〜S6)。一方、スキャン動作を行った結果、コントラスト検出方式により焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)は、ステップS16に進む。
ステップS16では、カメラ制御部21により、コントラスト検出方式により検出された合焦位置にフォーカスレンズ32を駆動させる合焦駆動が実行されているか否かの判断が行われる。コントラスト検出方式による検出結果に基づいて合焦駆動が行われている場合には、ステップS20に進み、一方、コントラスト検出方式による検出結果に基づいて合焦駆動が行われていない場合は、ステップS17に進む。
ステップS17では、カメラ制御部21により、実行中のスキャン動作が第2スキャン動作であるか否かの判断が行われる。実行中のスキャン動作が第2スキャン動作ではないと判断された場合は、合焦駆動を行うために、ステップS18に進む。一方、実行中のスキャン動作が第2スキャン動作であると判断された場合は、ステップS19に進む。
ステップS17において、実行中のスキャン動作が第2スキャン動作ではないと判断された場合は、ステップS18に進み、ステップS18において、フォーカスレンズ32を合焦位置に駆動させる合焦駆動が開始される。例えば、実行中のスキャン動作が、第1スキャン動作である場合(ステップS17=No)に、第1スキャン動作により検出された合焦位置に向かって、合焦駆動が開始される。ここで、第1スキャン動作では、そのスキャン速度Vscanが、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能な速度であるため、コントラスト検出方式により検出された焦点評価値のピークを、合焦位置と判断することができる。そこで、スキャン動作の結果、焦点評価値のピークが検出されており(ステップS15=Yes)、実行中のスキャン動作が第2スキャン動作ではない場合(ステップS17=No)は、ステップS18において、スキャン動作で検出された焦点評価値のピーク(合焦位置)に、フォーカスレンズ32を駆動させる合焦駆動が開始される。なお、合焦駆動におけるフォーカスレンズ32の駆動速度は、フォーカスレンズ32が駆動可能な速度のうち最大の速度とすることができる。
そして、ステップS18で合焦駆動が開始された後は、ステップS1に戻り、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)、および焦点評価値の算出(ステップS14)が行われた後、再度、ステップS16に進み、合焦駆動が実行されているか否かの判断が行われる。ステップS18で合焦駆動が開始された後は、ステップS16において、合焦駆動が実行されていると判断され(ステップS16=Yes)、ステップS20に進む。
ステップS20では、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動したか否かの判断が行われる。スキャン動作で検出された合焦位置に向かって合焦駆動を開始した後(ステップS18)は、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了するまで、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動していないと判断され(ステップS20=No)、ステップS1に戻る。そして、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了するまで(ステップS20=No)は、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)と、コントラスト検出方式による焦点評価値の算出(ステップS14)とを繰り返しながら、合焦位置に向かって合焦駆動が継続される。一方、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了すると(ステップS20=Yes)、ステップS21に進む。なお、ステップS20においては、フォーカスレンズ32を、合焦位置まで駆動させた場合に加えて、フォーカスレンズ32を、合焦位置に対応する焦点深度内まで駆動させた場合にも、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動したものとして扱い、ステップS21に進む。
ステップS21では、カメラ制御部21によりフォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了しているため、フォーカスレンズ32の合焦駆動を終了する処理が行われ、次いで、ステップS22に進み、合焦表示が行われる。合焦表示が行われた後は、ステップS1に戻り、この焦点調節処理が繰り返されることとなる。なお、ステップS22における合焦表示は、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。また、合焦表示を行う際には、コントラスト検出方式により合焦動作が行われた旨を撮影者に報知するための表示を併せて行なってもよい。
このように、本実施形態では、スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmax以下の速度(スキャン速度Vscan≦焦点検出可能最大速度Vmax)であると判断され(ステップS10=Yes)、スキャン動作が第1スキャン動作であると判断された場合(ステップS11)において、焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)には、第1スキャン動作により検出された焦点評価値のピーク位置が合焦位置と判断され、フォーカスレンズ32を焦点評価値のピーク位置(合焦位置)に駆動させる合焦駆動が行われる(ステップS18)。
ここで、図13を参照して、上述した第1スキャン動作が実行された場合におけるカメラ1の動作について説明する。図13は、第1スキャン動作における、フォーカスレンズ位置と焦点評価値との関係、およびフォーカスレンズ位置と時間との関係を表す図を示す。図13に示すように、スキャン動作開始時には、フォーカスレンズ32は、図13に示すP0に位置しており、P0から、無限遠側から至近側に向けてフォーカスレンズ32を駆動させながら、焦点評価値の取得を行う。そして、フォーカスレンズ32を、図13に示すP1の位置に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置が検出されると(ステップS15=Yes)、スキャン動作が第2スキャン動作であるか判断される(ステップS17)。ここで、図13に示す例では、第1スキャン動作によるスキャン動作が実行されているため(ステップS17=No)、第1スキャン動作で検出された焦点評価値のピーク位置が合焦位置として判断され、フォーカスレンズ32を合焦位置(図13中、P2の位置)まで駆動するための合焦駆動(ステップS18)が開始される。
一方、ステップS17において、第2スキャン動作が実行されていると判断された場合(ステップS17=Yes)は、ステップS19に進む。ステップS19では、カメラ制御部21により、第3スキャン動作が開始される。ここで、第3スキャン動作とは、第2スキャン動作に続いて行われ、第2スキャン動作により検出された焦点評価値のピーク位置近傍において、スキャン動作を行うものである。また、第3スキャン動作は、上述した第1スキャン動作と同様に、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanで、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させて、スキャン動作を行うものである。ステップS19において、カメラ制御部21は、スキャン速度Vscanを、第2スキャン動作における速度(スキャン速度Vscan>焦点検出可能最大速度Vmax)から、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能な速度(スキャン速度Vscan≦焦点検出可能最大速度Vmax)に変更し、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanで、第3スキャン動作を開始する。
ステップS19において、第3スキャン動作が開始された後は、ステップS1に戻る。そして、第3スキャン動作においても、位相差検出方式によりデフォーカス量が算出されたか(ステップS2=Yes)、焦点評価値のピークが検出されたか(ステップS15=Yes)、または、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について第3スキャン動作が実行されるまで(ステップS23=Yes)は、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanで、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)と、コントラスト検出方式による合焦位置の検出(ステップS14)とを繰り返す第3スキャン動作が実行される。そして、第3スキャン動作により焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)に、カメラ制御部21は、第3スキャン動作で検出された焦点評価値のピークを合焦位置と判断し、ステップS16に進む。
第3スキャン動作により焦点評価値のピークが検出された直後は、合焦駆動は開始されていないため(ステップS16=No)、ステップ17に進む。そして、ステップS17では、第3スキャン動作が実行されているため、実行されているスキャン動作は第2スキャン動作ではないと判断され(ステップS17=No)、第3スキャン動作で実行された焦点評価値のピーク位置(合焦位置)に向かって、合焦駆動が開始される(ステップS18)。
第3スキャン動作で検出された焦点評価値のピーク位置に向かって合焦駆動が開始された後は、ステップS1に戻り、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)、焦点評価値の算出(ステップS14)が行われた後、再度、ステップS16に進み、合焦駆動が実行されているか否かの判断が行われる。合焦駆動が開始された後は、合焦駆動が実行されていると判断され(ステップS16=Yes)、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動したか否かの判断が行われる(ステップS20)。第3スキャン動作で検出された合焦位置への駆動が完了するまでは、フォーカスレンズ32が合焦位置まで駆動していないと判断され(ステップS20=No)、ステップS1に戻り、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出(ステップS1)と、コントラスト検出方式による焦点評価値の算出(ステップS20)とを繰り返しながら、第3スキャン動作で検出された合焦位置に向かって合焦駆動が継続される。そして、フォーカスレンズ32の合焦位置への駆動が完了すると(ステップS20=Yes)、フォーカスレンズ32の合焦駆動を終了し(ステップS21)、合焦表示が行われる(ステップS22)。
このように、本実施形態では、スキャン速度Vscanが、焦点検出可能最大速度Vmaxよりも速い速度(スキャン速度Vscan>焦点検出可能最大速度Vmax)であると判断され(ステップS10=No)、スキャン動作が第2スキャン動作であると判断された場合(ステップS12)において、焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)には、スキャン速度Vscanが、焦点検出可能最大速度Vmax以下の速度、すなわち、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能な速度に変更され、第3スキャン動作が開始される(ステップS19)。そして、第3スキャン動作により焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)に、第3スキャン動作で検出された焦点評価値のピーク位置が合焦位置と判断され、フォーカスレンズ32を焦点評価値のピーク位置(合焦位置)に駆動させる合焦駆動が行われる。
ここで、図14を参照して、上述した第2スキャン動作およびこれに続く第3スキャン動作が実行された場合におけるカメラ1の動作について説明する。図14は、第2スキャン動作および第3スキャン動作における、フォーカスレンズ位置と焦点評価値との関係、およびフォーカスレンズ位置と時間との関係を表す図を示す。図14に示すように、スキャン動作開始時には、フォーカスレンズ32は、図14に示すP0に位置しており、P0から、無限遠側から至近側に向けてフォーカスレンズ32を駆動させながら、焦点評価値の取得を行う。そして、フォーカスレンズ32を、図14に示すP1の位置に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置が検出されると(ステップS15=Yes)、スキャン動作が第2スキャン動作であるか判断される(ステップS17)。ここで、図14に示す例では、第2スキャン動作が実行されているため(ステップS17=Yes)、図14に示すように、第2スキャン動作に続いて、第3スキャン動作によるスキャン動作が開始される(ステップS19)。そして、図14に示すように、第3スキャン動作が実行され、第3スキャン動作により焦点評価値のピークが検出された場合(ステップS15=Yes)には、第3スキャン動作によるスキャン動作で検出された焦点評価値のピーク位置が合焦位置として判断され、第3スキャン動作で検出された合焦位置(図14中、P2の位置)まで合焦駆動が開始される(ステップS18)。
なお、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域において、スキャン動作が実行された場合には、ステップS23において、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲の全域について、スキャン動作の実行が完了したと判断され、ステップS24に進む。ステップS24では、スキャン動作を行なった結果、位相差検出方式およびコントラスト検出方式のいずれの方式によっても、焦点検出を行うことができなかったため、スキャン動作の終了処理が行われ、次いで、ステップS25に進み、合焦不能表示が行なわれる。そして、合焦不能表示が行われた後は、ステップS1に戻り、この焦点調節処理が繰り返されることとなる。なお、ステップS25における合焦不能表示は、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。
以上のように、本実施形態においては、まず、位相差検出方式により、デフォーカス量の算出を行い、デフォーカス量を算出できた場合には、算出したデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させ、デフォーカス量を算出できない場合には、フォーカスレンズ32をスキャン駆動させながら、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を同時に実行するスキャン動作を実行する。そして、スキャン動作を実行した結果、位相差検出方式およびコントラスト検出方式のうち、デフォーカス量の算出、または合焦位置の検出ができた検出方式による、焦点検出結果を用いて、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させる処理を行う。そのため、本実施形態によれば、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、およびコントラスト検出方式による合焦位置の検出を同時に実行し、焦点検出ができた方式により、撮影光学系の焦点調節を行うため、従来技術(すなわち、まず、位相差検出方式により合焦位置近傍までフォーカスレンズ32を駆動し、次いで、合焦位置近でコントラスト検出方式による合焦位置の検出を行う技術)と比較して、撮影光学系の焦点調節を短い時間で行うことができる。
また、本実施形態によれば、スキャン速度Vscanと焦点検出可能最大速度Vmaxとを比較した結果、スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmax以下(スキャン速度Vscan≦焦点検出可能最大速度Vmax)である場合(すなわち、スキャン動作が第1スキャン動作である場合)には、焦点評価値のピークが合焦位置として判断され、合焦駆動が行われる。このように、本実施形態では、スキャン速度Vscanがコントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能な速度である場合には、コントラスト検出方式により検出された焦点評価値のピークをそのまま合焦位置と判断して、合焦駆動を行うため、焦点調節にかかる時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態によれば、スキャン速度Vscanと焦点検出可能最大速度Vmaxとの比較の結果、スキャン速度Vscanが焦点検出可能最大速度Vmaxよりも速い速度(スキャン速度Vscan>焦点検出可能最大速度Vmax)である場合(すなわち、スキャン動作が第2スキャン動作である場合)には、第2スキャン動作による焦点評価値のピークの検出後、第2スキャン動作に続いて、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanでスキャン動作を行う第3スキャン動作が実行される。そして、第3スキャン動作により焦点評価値のピークが検出された場合には、第3スキャン動作で検出された焦点評価値のピーク位置が合焦位置として判断され、合焦駆動が行なわれる。このように、本実施形態では、スキャン速度Vscanの速い第2スキャン動作で焦点評価値のピークを検出した後に、コントラスト検出方式による合焦位置の検出が可能なスキャン速度Vscanでスキャン駆動する第3スキャン動作が行われるため、焦点調節にかかる時間を短縮しつつ、合焦位置を適切に検出することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述した実施形態では、ステップS8において設定されたスキャン速度Vscanと、焦点検出可能最大速度Vmaxとを比較することで、開始されるスキャン動作が第1スキャン動作であるか、あるいは、第2スキャン動作であるかを判断しているが、例えば、スキャン動作を開始した後(ステップS13)に、スキャン動作におけるスキャン速度を実測し、実測したスキャン速度と焦点検出可能最大速度Vmaxとを比較することで、スキャン動作が第1スキャン動作であるか、あるいは、第2スキャン動作であるかを判断する構成としてもよい。
また、上述した実施形態においては、スキャン動作において、コントラスト検出方式により焦点評価値のピーク(合焦位置)が検出された場合でも、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出が行われ、デフォーカス量の算出ができた場合には、位相差検出方式により検出された合焦位置に向かって合焦駆動が行われる構成となっていたが、この構成に特に限定するものではなく、コントラスト検出方式により焦点評価値のピーク(合焦位置)が検出された場合に、位相差検出方式によるデフォーカス量の算出、または位相差検出方式により検出された合焦位置への合焦駆動を禁止する構成としてもよい。
さらに、上述した実施形態では、図13および図14に示すように、コントラスト検出方式により合焦位置が検出された場合に、フォーカスレンズ32を、直接、合焦位置まで駆動させているが、例えば、ガタ詰めのため、一度、合焦位置を超えた位置までフォーカスレンズ32を駆動させた後、合焦位置に、フォーカスレンズ32を戻す構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、コントラスト検出方式による焦点検出と同時に、位相差検出方式による焦点検出を行うために、撮像素子22に、焦点検出画素222a,222bを備える構成としているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、半透過型のペリクルミラーを用いて、光学系からの光束を分岐し、一部の光束を図示しない位相差検出モジュールに導くことで、コントラスト検出方式による焦点検出と同時に、位相差焦点検出方式による焦点検出を行うこともできる。
加えて、上述した実施形態では、スキャン動作として、位相差検出方式による焦点状態の検出と、コントラスト検出方式による焦点状態の検出とを同時に並行して実行可能なカメラ1を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、位相差検出方式による焦点状態の検出にかえて、アクティブAF方式による焦点状態の検出、または、外光パッシブAF方式による焦点状態の検出と、コントラスト検出方式による焦点状態の検出とを同時に行う構成としてもよい。
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、一眼レフデジタルカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。