しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
圧縮機本体の吐気温度を所定の目標値とするために必要な冷却量は、圧縮機本体の吸気温度に応じて変動する。具体的に説明すると、例えば、春期や秋期などの常温期であって吸気温度が20℃前後である場合に必要な冷却量は比較的小さく、夏期などの高温期であって吸気温度が30℃程度である場合に必要な冷却量は比較的大きくなる。そのため、一般的に、例えば吸気温度が30℃若しくは40℃である場合に必要な冷却量を確保するように、冷却器の最大冷却能力が設定されている。そして、常温期であって吸気温度が20℃前後である場合は、上述した制御装置によって冷却器の冷却能力を低下させることになる。ここで、上記特許文献1に記載の従来技術では、冷却器の冷却能力の変化にかかわらず、圧縮機本体へ供給する油の流量はほぼ一定である。そのため、冷却器の冷却能力を低下させると、圧縮機本体へ供給する油の温度が上昇する。
ところで、同じ冷却量(ここで、冷却量=(圧縮空気の目標温度−油の供給温度)×油の供給流量)を必要とする場合に、高温・高流量の油を圧縮機本体に供給するよりも、低温・低流量の油を圧縮機本体に供給するほうが好ましい。その理由は、油の温度の低下に伴う粘度の増加によって作動室のシール性を高めつつ、油の流量の減少によって動力損失を抑えるので、圧縮機効率を高めることができるからである。しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、そのような点が考慮されていなかった。
本発明の目的は、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる液冷式圧縮機を提供することにある。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、気体を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられ、圧縮気体に含まれる液体を圧縮気体から分離して貯留する分離器と、前記分離器で貯留された液体を前記圧縮機本体の作動室内若しくは吸入側に供給する液体供給系統と、前記液体供給系統に設けられ、液体を冷却する冷却器と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられ、圧縮気体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された圧縮気体の温度が予め設定された所定の目標値となるように、前記冷却器の冷却能力を可変制御する冷却制御手段とを備えた液冷式圧縮機において、前記液体供給系統における前記冷却器の下流側に設けられたワックス式流量調整弁を備え、前記ワックス式流量調整弁は、前記冷却器の冷却能力が比較的大きくなって前記冷却器から導入した液体の温度が予め設定された第1の設定値以下となる場合に、全開状態となり、前記冷却器の冷却能力が比較的小さくなって前記冷却器から導入した液体の温度が前記第1の設定値を上回ると、その液体温度と前記第1の設定値との差分に応じて開度が小さくなる。
本発明の作用効果を、一つの具体例を用いて説明する。
冷却器は、例えば圧縮機本体の吸気温度が40℃である場合に吐気温度を所定の目標値(例えば78℃)とするために必要な冷却量を確保するように、最大冷却能力が設定されているものとする。そのため、吸気温度が40℃である場合、冷却制御手段は冷却器の冷却能力が最大となるように制御し、冷却器出口側の液体温度が例えば50℃となる。このとき、ワックス式流量調整弁は、冷却器から導入した液体の温度が第1の設定値(例えば50℃若しくはこれより若干高い温度)以下であるから、全開状態となる。
そして、圧縮機本体の吸気温度が40℃未満である場合、冷却制御手段は、吸気温度が40℃から低下するのに応じて必要な冷却量が減少するので、冷却器の冷却能力を低下させることになる。そのため、冷却器出口側の液体温度が上昇する。このとき、ワックス式流量調整弁は、冷却器から導入した液体温度が第1の設定値から上昇するのに応じて、開度が小さくなる。これにより、冷却器を通過する液体の流量を減少させ、冷却器出口側の液体温度の上昇を抑制することができる。言い換えれば、圧縮機本体へ供給する液体の流量を減少させ、圧縮機本体へ供給する液体の温度を低下させることができる。したがって、上述したワックス式流量調整弁を設けない場合と比べて、低温・低流量の液体を圧縮機本体へ供給することができ、圧縮機効率を高めることができる。
また、本発明においては、ワックス式流量調整弁を設けるので、例えば電磁式流量調整弁等(詳細には、電磁式流量調整弁以外に、冷却器出口側の液体温度を検出する温度検出器や、この温度検出器で検出された液体温度に応じて電磁式流量調整弁の開度を制御する制御装置等)を設ける場合と比べて、簡素かつ安価な構成で実現することができる。したがって、本発明においては、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる。
(2)上記目的を達成するために、本発明は、気体を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられ、圧縮気体に含まれる液体を圧縮気体から分離して貯留する分離器と、前記分離器で貯留された液体を前記圧縮機本体の作動室内若しくは吸入側に供給する液体供給系統と、前記液体供給系統に設けられ、液体を冷却する冷却器と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられ、圧縮気体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された圧縮気体の温度が予め設定された所定の目標値となるように、前記冷却器の冷却能力を可変制御する冷却制御手段とを備えた液冷式圧縮機において、前記液体供給系統における前記冷却器の下流側に設けられ、互いに並列となるように接続された第1のワックス式流量調整弁及び第2のワックス式流量調整弁を備え、前記冷却器は、前記圧縮機本体の吸気温度が比較的高い第1温度となる場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されており、前記第1のワックス式流量調整弁は、前記冷却器の冷却能力が最大となって前記冷却器から導入した液体の温度が予め設定された第1の設定値以下となる場合に、全開状態となり、前記冷却器の冷却能力が低下して前記冷却器から導入した液体の温度が前記第1の設定値を上回ると、その液体温度と前記第1の設定値との差分に応じて開度が小さくなり、前記第2のワックス式流量調整弁は、前記冷却器から導入した液体の温度が、前記第1の設定値より高くなるように予め設定された第2の設定値以下となる場合に、全閉状態となり、前記圧縮機本体の吸気温度が前記第1の温度よりさらに高い第2温度を超えて前記冷却器から導入した液体の温度が前記第2の設定値を上回ると、その液体温度と前記第2の設定値との差分に応じて開度が大きくなる。
本発明の作用効果を、一つの具体例を用いて説明する。
冷却器は、例えば圧縮機本体の吸気温度が30℃(第1温度)である場合に吐気温度を所定の目標値(例えば78℃)とするために必要な冷却量を確保するように、最大冷却能力が設定されているものとする。そのため、吸気温度が30℃である場合、冷却制御手段は冷却器の冷却能力が最大となるように制御し、冷却器出口側の液体温度が例えば50℃となる。このとき、第1のワックス式流量調整弁は、冷却器から導入した液体の温度が第1の設定値(50℃)以下であるから、全開状態となる。
一方、圧縮機本体の吸気温度が30℃未満である場合、冷却制御手段は、吸気温度が30℃から低下するのに応じて必要な冷却量が減少するので、冷却器の冷却能力を低下させることになる。そのため、冷却器出口側の液体温度が上昇する。このとき、第1のワックス式流量調整弁は、冷却器から導入した液体温度が第1の設定値から上昇するのに応じて、開度が小さくなる。これにより、冷却器を通過する液体の流量を減少させ、冷却器出口側の液体温度の上昇を抑制することができる。言い換えれば、圧縮機本体へ供給する液体の流量を減少させ、圧縮機本体へ供給する液体の温度を低下させることができる。したがって、上述した第1のワックス式流量調整弁を設けない場合と比べて、低温・低流量の液体を圧縮機本体へ供給することができ、圧縮機効率を高めることができる。したがって、本発明においては、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる。
また、上述した通り、冷却器は、圧縮機本体の吸気温度が30℃(第1温度)である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されていることから、例えば圧縮機本体の吸気温度が40℃である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されているものと比べて、小型化やコスト低減を図ることができる。
しかし、圧縮機本体の吸気温度が30℃を超えた場合は、冷却器の冷却能力が不足することになる。そのため、吸気温度が30℃から上昇するのに応じて、吐気温度が78℃(所定の目標値)から上昇する。また、冷却器出口側の液体温度も50℃から上昇する。このとき、第1のワックス式流量調整弁は、冷却器から導入した液体温度が第1の設定値(50℃)から上昇するのに応じて開度が小さくなるため、圧縮機本体に供給する液体の流量を減少させる。そのため、第2のワックス式流量調整弁を設けない場合には、冷却量を低下させてしまい、吐気温度の上昇を促すことになる。
そのため、本発明においては、第2のワックス式流量調整弁を設けている。この第2のワックス式流量調整弁は、例えば圧縮機本体の吸気温度が10℃〜32℃の範囲内にある場合、冷却器出口側の液体温度が第2の設定値(詳細には、第1の設定値より高くなるように設定されており、例えば52℃)以下になることから、全閉状態となる。また、圧縮機本体の吸気温度が32℃(第2温度)から上昇して液体温度が52℃(第2の設定値)から上昇するのに応じて、開度が大きくなり、例えば吸気温度が35℃以上になって液体温度が63℃以上となれば、全開状態となる。すなわち、圧縮機本体の吸気温度が32℃以上である場合、液体温度が52℃から上昇するのに応じて第1のワックス式流量調整弁の開度は小さくなるものの、これを補うように第2のワックス式流量調整弁の開度は大きくなる。これにより、圧縮機本体に供給する液体の流量が減少するのを抑制することができ、冷却量が低下するのを抑制することができる。その結果、圧縮機本体の吐気温度の上昇幅を抑えることができる。
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記液体供給系統は、前記冷却器及び前記ワックス式流量調整弁を経由する冷却用流路と、前記冷却器及び前記ワックス式流量調整弁をバイパスするバイパス流路と、前記冷却用流路と前記バイパス流路の上流側分岐点に設けられたワックス式三方弁と有し、前記ワックス式三方弁は、前記分離器から導入した液体の温度が、前記圧縮気体の温度に対する前記所定の目標値より低くなるように予め設定された第3の設定値以上となる場合に、前記冷却用流路側の出口が全開状態、前記バイパス流路側の出口が全閉状態となり、前記分離器から導入した液体の温度が前記第3の設定値より下回ると、その液体温度と前記第3の設定値との差分に応じて前記冷却用流路側の出口の開度が減少しつつ前記バイパス流路側の出口の開度が増加する。
例えば圧縮機本体の吸気温度が10℃未満まで低下した場合に、冷却制御手段によって冷却器の冷却能力を最小としても過冷却となり、圧縮機本体の吐気温度が所定の目標値より低下することがある。そのため、本発明では、液体供給系統にワックス式三方弁等を設けている。その作用効果を、一つの具体例を用いて説明する。
ワックス式三方弁は、分離器から導入した液体の温度が、例えば圧縮機本体の吐気温度の目標値(例えば78℃)より低くなるように予め設定された第3の設定値(例えば71℃)以上である場合に、冷却用流路側の出口が全開状態、バイパス流路側の出口が全閉状態となる。そして、分離器から導入した液体の温度が第3の設定値を下回ると、その液体温度と第3の設定値との差分に応じて冷却用流路側の出口の開度が減少しつつバイパス流路側の出口の開度が増加する。そして、分離器から導入した液体の温度が例えば65℃(圧縮空気の露点温度より高くなるように設定された温度)以下である場合に、冷却用流路側の出口が全閉状態、バイパス流路側の出口が全開状態となる。
このような構成により、圧縮機本体の吸気温度が10℃未満まで低下して吐気温度が目標値より低下した場合に、冷却器を経由する油の流量割合を減少させて、過冷却を防止することができる。したがって、圧縮空気の温度が低下して圧縮気体中の水分が凝縮するのを防止することができる。
本発明によれば、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる。
本発明の第1の実施形態を、図1〜図6により説明する。
図1は、本実施形態における油冷式圧縮機の構成を表す概略図である。
この図1において、油冷式圧縮機は、空気を圧縮する圧縮機本体1と、この圧縮機本体1の吐出側に設けられ、圧縮空気に含まれる油を圧縮空気から分離して貯留する分離器2と、この分離器2で貯留された油を圧縮機本体1の作動室内に供給する油供給系統3とを備えている。なお、分離器2内の圧力は油供給系統3の供給先の圧力よりも高く、それらの圧力差によって油が供給されるようになっている。
圧縮機本体1は、詳細を図示しないが、例えばスクリュー型であり、互いに噛み合うように回転する雌雄一対のスクリューロータと、これらスクリューロータを収納するケーシングとを有している。そして、スクリューロータの歯溝とケーシングの内壁との間で形成された作動室は、スクリューロータの回転に伴ってロータ軸方向に移動しつつ、その容積が変化する。これにより、吸入口から吸い込んだ空気を圧縮し、吐出口から圧縮空気を吐出するようになっている。また、作動室内には油供給系統3から油が供給されており、シール効果や冷却効果が得られるようになっている。
分離器2は、圧縮機本体1から吐出された油を含む圧縮空気を、油と圧縮空気に分離するようになっている。分離器2で分離された圧縮空気は、分離器2の上部から圧縮空気供給系統4を介し外部の圧縮空気消費機器(図示せず)に供給されるようになっている。圧縮空気供給系統4は、図示しないが、圧縮空気を冷却する冷却器(エアクーラ)等の補器を備えている。
一方、分離器2で分離された油は、分離器2の下部に一旦貯留された後、油供給系統3を介し圧縮機本体1の作動室内に供給されるようになっている。油供給系統3は、油を冷却する空冷式の冷却器(オイルクーラ)5と、この冷却器5の下流側に設けられたワックス式流量調整弁6と、このワックス式流量調整弁6の下流側に設けられ、油中の不純物を除去するオイルフィルタ7とを備えている。空冷式の冷却器5は、冷却ファン8で生起された冷却風により油を冷却するようになっている。
圧縮機本体1の吐出側(言い換えれば、分離器2の上流側)には、圧縮空気の温度(なお、油の温度もほぼ同じ)を検出する温度検出器9が設けられている。制御装置(コントローラ)10は、温度検出器9で検出された圧縮空気の温度を入力し、この圧縮空気の温度が予め設定された所定の目標値(詳細には、例えば温度30℃、相対湿度80%RHの空気を圧縮する場合を考慮して、露点温度より高くなるように予め設定された目標値)となるように冷却ファン8の回転数(すなわち、冷却器4の冷却能力)を可変制御するようになっている。
なお、本実施形態においては、冷却器5は、圧縮機本体1の吸気温度が40℃である場合に吐気温度を所定の目標値とするために必要な冷却量を確保するように、最大冷却能力が設定されている。
次に、本実施形態の要部であるワックス式流量調整弁6を、図2及び図3により説明する。図2は、ワックス式流量調整弁6の概略構造を表す図である。図3は、ワックス式流量調整弁6の特性を一例として表す図である。この図3において、横軸は、ワックス式流量調整弁6内に導入された油の温度Toilを、縦軸は、ワックス式流量調整弁6の開度Avをとっている。なお、開度Av=100%は全開状態を意味し、開度Av=0%は全閉状態を意味するものとする。
ワックス式流量調整弁6は、図2で示すように、ワックス(熱膨張体)11が内蔵された弁部12と、この弁部12を軸方向(図中左右方向)に移動可能に収納したケーシング13とを有している。そして、ケーシング13内に導入した油の温度Toilに応じてワックス11の体積が変化し、これによって弁部12が軸方向に移動して出口14の開口率(開度)Avが変動するようになっている。具体的には、例えば図3で示すように、冷却器5から導入した油の温度Toilが予め設定された第1の設定値(50℃)以下である場合に、全開状態となり、冷却器5から導入した油の温度Toilが第1の設定値(50℃)を上回ると、その油温度Toilと第1の設定値との差分に応じて開度Avが小さくなるようになっている。なお、本実施形態では、前述した第1の設定値(50℃)は、冷却器5の冷却能力が最大となるときの冷却器5の出口側の油温度となるように設定されている。
以上のように構成された本実施形態の作用効果を、図4〜図6を用いて説明する。
図4は、本実施形態及び比較例(すなわち、ワックス式流量調整弁6を設けない場合)における圧縮機本体1の吸気温度Tsと油供給系統3から圧縮機本体1への給油温度Toilとの関係を一例として表す図である。図5は、図4で示された比較例における圧縮機本体1の吸気温度Ts及び油供給系統3から圧縮機本体1への給油温度Toilの変化とともに、圧縮機本体1の吐気温度Td、油供給系統3から圧縮機本体1への給油流量qoil、及び冷却器5の冷却能力ηcの変化を表すデータである。図6は、図4で示された本実施形態における圧縮機本体1の吸気温度Ts及び油供給系統3から圧縮機本体1への給油温度Toilの変化とともに、圧縮機本体1の吐気温度Td、油供給系統3から圧縮機本体1への給油流量qoil、ワックス式流量調整弁6の開度Av、及び冷却器5の冷却能力ηcの変化を表すデータである。なお、冷却器5の冷却能力ηcは、最大冷却能力(100%)を基準として表している。
本実施形態及び比較例のいずれにおいても、冷却器5は、圧縮機本体1の吸気温度Tsが40℃である場合に吐気温度Tdを所定の目標値(78℃)とするために必要な冷却量を確保するように、最大冷却能力が設定されている。そのため、吸気温度Tsが40℃である場合、制御装置10は冷却器5の冷却能力ηcが最大(100%)となるように制御し、冷却器5の出口側の油温度(言い換えれば、圧縮機本体1への給油温度)Toilが50℃となる。そして、吸気温度Tsが40℃未満である場合、制御装置10は、吸気温度Tsが40℃から低下するのに応じて必要な冷却量が減少するので、冷却器5の冷却能力ηcを低下させることになる。具体的には、吸気温度Tsが40℃から10℃まで低下するのに応じて、冷却器5の冷却能力ηcを100%から76%まで低下させる。
比較例では、ワックス式流量調整弁6を設けていないため、油供給系統3から圧縮機本体1への給油流量qoilが60L/minに固定されている。そのため、圧縮機本体1の吸気温度Tsが40℃から10℃まで低下するのに応じて、冷却器5の出口側の油温度(言い換えれば、圧縮機本体1への給油温度)Toilが50℃から59℃まで上昇する。
一方、本実施形態では、ワックス式流量調整弁6を設けている。そして、圧縮機本体1の吸気温度Tsが40℃である場合は、冷却器5の出口側の油温度(言い換えれば、ワックス式流量調整弁6に導入された油の温度)Toilが50℃(第1の設定値)であるから、ワックス式流量調整弁6が全開状態となる。そして、吸気温度Tsが40℃から低下して冷却器5の出口側の油温度Toilが50℃(第1の設定値)から上昇すると、その油温度Toilの上昇に応じてワックス式流量調整弁6の開度Avが小さくなる。これにより、冷却器5を通過する油の流量qoilを減少させ、冷却器5の出口側の油温度Toilの上昇を抑制することができる。言い換えれば、圧縮機本体1への給油流量qoilを減少させ、圧縮機本体1への給油温度Toilを低下させることができる。
具体的に説明すると、圧縮機本体1の吸気温度Tsが30℃である場合、比較例では、圧縮機本体1への給油流量qoilが60L/min、給油温度Toilが53℃であるのに対し、本実施形態では、ワックス式流量調整弁6の開度Avが87%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが56L/minに低減し、給油温度Toilが52℃となる。また、吸気温度Tsが20℃である場合、比較例では、給油流量qoilが60L/min、給油温度Toilが56℃であるのに対し、本実施形態では、ワックス式流量調整弁6の開度Avが78%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが53L/minに低減し、給油温度Toilが54℃となる。また、吸気温度Tsが10℃である場合、比較例では、給油流量qoilが60L/min、給油温度Toilが59℃であるのに対し、本実施形態では、ワックス式流量調整弁6の開度Avが69%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが50L/minに低減し、給油温度Toilが56℃となる。したがって、本実施形態においては、ワックス式流量調整弁6を設けない場合と比べて、低温・低流量の油を圧縮機本体1へ供給することができ、圧縮機効率を高めることができる。
また、本実施形態においては、ワックス式流量調整弁6を設けるので、例えば電磁式流量調整弁等(詳細には、電磁式流量調整弁以外に、冷却器5の出口側の油温度Toilを検出する温度検出器や、この温度検出器で検出された油温度Toilに応じて電磁式流量調整弁の開度を制御する制御装置等)を設ける場合と比べて、簡素かつ安価な構成で実現することができる。
したがって、本実施形態においては、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる。
なお、上記第1の実施形態においては、前述の図3、図4、及び図6で示すように、ワックス式流量調整弁6を全開状態から絞り状態に移行させる油温度の第1の設定値を、冷却器5の冷却能力ηcが最大(100%)となるときの冷却器5の出口側の油温度Toil(50℃)に設定した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、冷却器5の冷却能力ηcが比較的大きくなるときの冷却器5の出口側の油温度Toilに設定してもよい。具体的には、例えば冷却器5の冷却能力ηcが92%になるときの冷却器5の出口側の油温度Toil(53℃。図5参照)に設定してもよい。このような変形例においては、冷却器5の冷却能力ηcが92%未満であるときに(言い換えれば、圧縮機本体1の吸気温度Tsが10℃〜30℃であるときに)、ワックス式流量調整弁6を設けない場合と比べて、低温・低流量の油を圧縮機本体1へ供給することができ、圧縮機効率を高めることができる。
また、上記第1の実施形態においては、冷却器5は、圧縮機本体1の吸気温度Tsが40℃である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定された場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば圧縮機本体1の吸気温度Tsが30℃以下となるように制限するのであれば、冷却器5は、圧縮機本体の吸気温度Tsが30℃である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されてもよい。この場合には、小型化及びコスト低減を図ることができる。
次に、本発明の第2の実施形態を、図7〜図11により説明する。本実施形態は、2つのワックス式流量調整弁を設けた実施形態である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図7は、本実施形態における油冷式圧縮機の構成を表す概略図である。図8は、第1のワックス式流量調整弁6Aの特性を一例として表す図であり、図9は、第2のワックス式流量調整弁15の特性を一例として表す図である。図8において、横軸は、第1のワックス式流量調整弁6Aに導入された油の温度Toilを、縦軸は、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1をとっている。図9において、横軸は、第2のワックス式流量調整弁15に導入された油の温度Toilを、縦軸は、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2をとっている。
本実施形態では、油供給系統3Aは、冷却器5の下流側に設けられ互いに並列となるように接続された第1のワックス式流量調整弁6A及び第2のワックス式流量調整弁15を備えている。
第1のワックス式流量調整弁6Aは、上述したバイパス式流量調整弁6と同様の構造である。すなわち、図示しないが、ワックス(熱膨張体)が内蔵された弁部と、この弁部を軸方向(図中左右方向)に移動可能に収納したケーシングとを有している。そして、ケーシング内に導入した油の温度Toilに応じてワックスの体積が変化し、これによって弁部が軸方向(図中左右方向)に移動して出口の開口率(開度)Av1が変動するようになっている。具体的には、例えば図8で示すように、冷却器5から導入した油の温度Toilが予め設定された第1の設定値(50℃)以下である場合に、全開状態となり、冷却器5から導入した油の温度Toilが第1の設定値(50℃)を上回ると、その油温度Toilと第1の設定値との差分に応じて開度Av1が小さくなる。そして、冷却器5から導入した油の温度Toilが71℃以上である場合に、全閉状態となる。なお、前述した第1の設定値(50℃)は、冷却器5の冷却能力が最大となるときの冷却器5の出口側の油温度となるように設定されている。
第2のワックス式流量調整弁15は、上述したバイパス式流量調整弁6と同様の構造である。すなわち、図示しないが、ワックス(熱膨張体)が内蔵された弁部と、この弁部を軸方向(図中左右方向)に移動可能に収納したケーシングとを有している。そして、ケーシング内に導入した油の温度Toilに応じてワックスの体積が変化し、これによって弁部が軸方向(図中左右方向)に移動して出口の開口率(開度)Av2が変動するようになっている。具体的には、例えば図9で示すように、冷却器5から導入した油の温度Toilが、第1のワックス流量調整弁6Aの第1の設定値(50℃)より高くなるように予め設定された第2の設定値(52℃)以下である場合に、全閉状態となり、冷却器5から導入した油の温度Toilが第2の設定値(52℃)を上回ると、その油温度Toilと第2の設定値との差分に応じて開度Av2が大きくなる。そして、冷却器5から導入した油の温度Toilが63℃以上である場合に、全開状態となる。なお、本実施形態では、第1のワックス式流調整弁6Aの全開状態における開口面積と第2のワックス式流調整弁15の全開状態における開口面積は同じである。
以上のように構成された本実施形態の作用効果を、図10及び図11を用いて説明する。
図10は、本実施形態における圧縮機本体1の吸気温度Tsと油供給系統3から圧縮機本体1への給油温度Toilとの関係を一例として表す図である。図11は、図10で示された本実施形態における圧縮機本体1の吸気温度Ts及び油供給系統3から圧縮機本体1への給油温度Toilの変化とともに、圧縮機本体1の吐気温度Td、油供給系統3から圧縮機本体1への給油流量qoil、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2、及び冷却器5の冷却能力ηcの変化を表すデータである。
本実施形態においては、冷却器5は、圧縮機本体1の吸気温度Tsが30℃である場合に吐気温度Tdを所定の目標値(78℃)とするために必要な冷却量を確保するように、最大冷却能力が設定されている。そのため、吸気温度Tsが30℃である場合、制御装置10は冷却器5の冷却能力ηcが最大(100%)となるように制御し、冷却器5の出口側の油温度(言い換えれば、圧縮機本体1への給油温度)Toilが50℃となる。そして、吸気温度Tsが30℃未満である場合、制御装置10は、吸気温度Tsが30℃から低下するのに応じて必要な冷却量が減少するので、冷却器5の冷却能力ηcを低下させることになる。具体的には、吸気温度Tsが30℃から10℃まで低下するのに応じて、冷却器5の冷却能力ηcを100%から82%まで低下させる。
そして、吸気温度Tsが30℃である場合、冷却器5の出口側の油温度(言い換えれば、冷却器5からワックス式流量調整弁6A及び15に導入される油の温度)Toilが50℃であるから、第1のワックス式流量調整弁6Aが全開状態となり、第2のワックス式流量調整弁15が全閉状態となる。そして、吸気温度Tsが30℃から低下して冷却器5の出口側の油温度Toilが50℃(第1の設定値)から52℃までの範囲内で上昇すると、その油温度Toilの上昇に応じて第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1が小さくなる。このとき、第2のワックス式流量調整弁15は全閉状態のままである。これにより、冷却器5を通過する油の流量qoilを減少させ、冷却器5の出口側の油温度Toilの上昇を抑制することができる。言い換えれば、圧縮機本体1への給油流量qoilを減少させ、圧縮機本体1への給油温度Toilを低下させることができる。
具体的に説明すると、圧縮機本体1の吸気温度Tsが20℃である場合、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1が86%、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2が0%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが56L/minに低減し、給油温度Toilが51℃となる。また、吸気温度Tsが10℃である場合、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1が78%、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2が0%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが52L/minに低減し、給油温度Toilが52℃となる。したがって、本実施形態においては、圧縮機本体1の吸気温度Tsが10℃〜30℃であるときに、ワックス式流量調整弁6A等を設けない場合と比べて、低温・低流量の油を圧縮機本体1へ供給することができ、圧縮機効率を高めることができる。
また、本実施形態においては、ワックス式流量調整弁6A等を設けるので、例えば電磁式流量調整弁等(詳細には、電磁式流量調整弁以外に、冷却器出口側の液体温度を検出する温度検出器や、液体温度に応じて電磁式流量調整弁を駆動制御するコントローラ等)を設ける場合と比べ、簡素かつ安価な構成で実現することができる。
したがって、本実施形態においては、簡素かつ安価な構成で圧縮機効率を高めることができる。
また、本実施形態においては、冷却器5は、圧縮機本体1の吸気温度Tsが30℃(第1温度)である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されていることから、例えば圧縮機本体1の吸気温度Tsが40℃である場合に必要な冷却量に対応して最大冷却能力が設定されているものと比べ、小型化やコスト低減を図ることができる。
しかし、圧縮機本体1の吸気温度Tsが30℃を超えた場合は、冷却器5の冷却能力が不足することになる。そのため、吸気温度Tsが30℃から上昇するのに応じて、吐気温度Tdが78℃(所定の目標値)から上昇する。また、冷却器5の出口側の液体温度も50℃から上昇する。このとき、第1のワックス式流量調整弁6Aは、冷却器5から導入した油温度が第1の設定値(50℃)から上昇するのに応じて開度Av1が小さくなるため、給油流量qoilを減少させる。そのため、第2のワックス式流量調整弁15を設けなければ、冷却量が低下し、吐気温度Tdの上昇を促すことになる。
そのため、本実施形態においては、第2のワックス式流量調整弁15を設けている。この第2のワックス式流量調整弁15は、圧縮機本体1の吸気温度Tsが32℃(第2温度)から上昇して油温度Toilが52℃(第2の設定値)から上昇するのに応じて、開度Av2が大きくなり、吸気温度Tsが35℃以上になって油温度Toilが63℃以上となれば、全開状態となる。すなわち、圧縮機本体1の吸気温度Tsが32℃以上である場合、油温度Toilが52℃から上昇するのに応じて第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1は小さくなるものの、これを補うように第2のワックス式流量調整弁15の開度Av1は大きくなる。これにより、給油流量qoilが減少するのを抑制することができ、冷却量が低下するのを抑制することができる。その結果、圧縮機本体1の吐気温度Tdの上昇幅を抑えることができる。
具体的に説明すると、圧縮機本体1の吸気温度Tsが35℃である場合、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1が10%と小さくなるものの、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2が100%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが63L/minとなり、吐気温度Tdが87℃となる。また、吸気温度Tsが40℃である場合、第1のワックス式流量調整弁6Aの開度Av1が0%と小さくなるものの、第2のワックス式流量調整弁15の開度Av2が100%となって圧縮機本体1への給油流量qoilが60L/minとなり、吐気温度Tdが96℃となる。したがって、第2のワックス式流量調整弁15を設けない場合と比べて、吐気温度Tdの上昇幅を抑えることができる。
なお、上記第1の実施形態においては、特に説明しなかったが、制御装置10によって制御される冷却器5の冷却能力の最小値は、最大値を基準として例えば76%程度に設定されている。また、上記第2の実施形態においては、特に説明しなかったが、制御装置10によって制御される冷却器5の冷却能力の最小値は、最大値を基準として例えば82%程度に設定されている。そのため、例えば圧縮機本体1の吸気温度Tsが10℃未満まで低下した場合に、制御装置10によって冷却器5の冷却能力を最小としても過冷却となり、圧縮機本体10の吐気温度Tdが目標値(78℃)より低下することがある。そこで、これに対応するため、例えば図12又は図13で示す変形例のように、油供給系統3’又は3A’は、冷却器4及びワックス式流量調整弁6又は6A,15を経由する冷却用流路16と、冷却器4及びワックス式流量調整弁6又は6A,15をバイパスするバイパス流路17と、冷却用流路16とバイパス流路17の上流側分岐点に設けられたワックス式三方弁18と有してもよい。
ワックス式三方弁18は、上述したバイパス式流量調整弁6等と同様の構造である。すなわち、図示しないが、ワックス(熱膨張体)が内蔵された弁部と、この弁部を軸方向(図中左右方向)に移動可能に収納したケーシングとを有している。そして、ケーシング内に導入した油の温度に応じてワックスの体積が変化し、これによって弁部が軸方向(図中左右方向)に移動して冷却用流路側の出口及びバイパス流路側の出口の開口率(開度)が変動するようになっている。具体的には、分離器2から導入した油の温度が、例えば圧縮機本体1の吐気温度の目標値(78℃)より低くなるように予め設定された第3の設定値(例えば71℃)以上である場合に、冷却用流路16側の出口が全開状態、バイパス流路17側の出口が全閉状態となる。そして、分離器2から導入した油の温度が第3の設定値から減少するのに応じて、その油温度と第3の設定値との差分に応じて冷却用流路16側の出口の開度が減少しつつバイパス流路17側の出口の開度が増加する。そして、分離器2から導入した油の温度が例えば65℃以下である場合に、冷却用流路16側の出口が全閉状態、バイパス流路17側の出口が全開状態となる。
このような変形例においては、圧縮機本体1の吸気温度が10℃未満まで低下した場合に、過冷却となって吐気温度が低下するのを抑えることができ、圧縮気体中の水分が凝縮するのを抑えることができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、冷却ファン8で生起された冷却風により油を冷却する空冷式の冷却器5と、圧縮機本体1の吐気温度が所定の目標値となるように、冷却ファン8の回転数を可変制御して冷却器5の冷却能力を可変制御する制御装置10(冷却制御手段)とを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、ポンプから供給された冷却液により油を冷却する水冷式の冷却器と、圧縮機本体1の吐気温度が所定の目標値となるように、ポンプの回転数を可変制御して冷却器の冷却能力を可変制御する制御装置(冷却制御手段)とを備えてもよい。また、上記第1及び第2の実施形態においては、圧縮機本体1はスクリュー型である場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えばスクロール型であってもよい。また、上記第1及び第2の実施形態においては、圧縮機本体1の作動室内に油を供給する油供給系統3を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、圧縮機本体1の吸入側に油を供給する油供給系統を備えてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
なお、以上においては、本発明の適用対象の一つとして、圧縮機本体1の作動室内(又は吸入側)に油を供給する油冷式圧縮機を例にとって説明したが、これに限られず、圧縮機本体1の作動室内(又は吸入側)に水(液体)を供給する水冷式圧縮機に適用してもよいことは言うまでもない。