以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1の太陽光発電装置における太陽電池アレイの配置例を示す図であり、各太陽電池アレイが有する太陽電池モジュール8a〜8vの配置の様子を示している。すなわち、本発明の太陽光発電装置は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vを備えている。
図2は、本発明の実施例1の太陽光発電装置における太陽電池アレイ1の側面図と背面図である。図2に示すように、太陽電池アレイ1は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池モジュール8と、太陽電池モジュール8の方向を制御する方向制御装置7と、方向制御装置7を制御する基準となる基礎4とを備える。なお、方向制御装置7は、仰角可変装置2と、方位角可変装置3とにより構成される。上述した図1は、複数の太陽電池アレイ1を同じ場所に並べて配置した様子を示している。
仰角可変装置2は、図2(a)に示す仰角方向に太陽電池モジュール8を駆動する。さらに、方位角可変装置3は、図2(b)に示す方位角方向に太陽電池モジュール8を駆動する。なお、方位角可変装置3は、本発明を実現するうえで必ずしも必須の構成ではなく、単に太陽電池モジュール8を南側に向けた構成でもよい。
また、図3は、本実施例の太陽光発電装置の構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施例の太陽光発電装置は、環境測定装置5と、演算装置6と、複数の方向制御装置7a〜7fとを備えている。ただし、方向制御装置7は、太陽電池アレイ1の一部を構成しているため、太陽電池アレイ1(太陽電池モジュール8)と同数存在する。したがって、図1に示すように太陽電池モジュールの数が8a〜8vまである場合には、方向制御装置7は、それに対応して7a〜7vまで存在するものとする。なお、複数の方向制御装置7a〜7fの各々は、図2で説明したように仰角可変装置2と方位角可変装置3とを備えている。
環境測定装置5は、本発明の環境条件測定部に対応し、複数の太陽電池モジュール8が設置された場所の環境条件を測定する。ここで、環境条件は様々なものが考えられ、例として風向、風速、積雪量、雨量、温度、湿度、日射量等が挙げられる。環境測定装置5は、少なくとも1つの環境条件を定量的に測定できるものとする。環境測定装置5の詳細な動作については後述する。
演算装置6は、本発明の算出部に対応し、環境測定装置5により測定された環境条件に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。
方向制御装置7(仰角可変装置2)は、本発明の仰角制御部に対応し、演算装置6により算出された目標仰角に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の仰角を制御する。なお、方向制御装置7(仰角可変装置2)が単に仰角を調整する機構のみであるとし、実際に仰角を制御するのが演算装置6であるとすれば、演算装置6は、本発明の仰角制御部に対応し、自己が算出した目標仰角に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の仰角を制御する。
また、演算装置6は、環境測定装置5により測定された環境条件(例えば太陽の向き)に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の目標方位角を算出する。
方向制御装置7(方位角可変装置3)は、本発明の方位角制御部に対応し、演算装置6により算出された目標方位角に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の方位角を制御する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的に複数の太陽電池アレイ1の各々は、方向制御装置7により(あるいは元々)複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々から得られる電気エネルギーが最大になるように太陽の方向に向けて制御されている。しかしながら、太陽とは逆の方向から風を受けた場合に、演算装置6は、風上に近い太陽電池モジュール8a,8b,8c,8d,8eが風から受ける力が許容範囲内になるように目標仰角を算出する必要がある。同様に、演算装置6は、次に風上に近い太陽電池モジュール8f,8g,8h,8i,8jが風から受ける力が許容範囲内になるように目標仰角を算出する必要がある。このように風上に近い順に目標仰角を算出した結果、複数の太陽電池モジュールの各々は、場所によって異なった方向を向くことになる。本明細書において、このように環境状況に応じて各太陽電池モジュールの方向を同時に制御することを空間的に協調動作させるという。
まず、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として風向を測定するものとする。また、演算装置6は、環境測定装置5により測定された風向に基づいて、必要とする耐風性能を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出するものとする。
図4は、本実施例の太陽光発電装置の動作を示すフローチャート図である。最初に、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の風向を測定する(ステップS1)。次に、演算装置6は、環境測定装置5により測定された風向に基づいて、最も風の来る方向に近い太陽電池モジュールを特定し、太陽電池モジュールの向きを測定あるいは推定し(ステップS2)、最も風の来る方向に近い太陽電池モジュールが耐風性の高い仰角となっているか確認する(ステップS3)。耐風性の高い仰角となっていない場合には、演算装置6は、最も風の来る方向に近い太陽電池モジュールの耐風性が高くなるように目標仰角を算出する。方向制御装置7(仰角可変装置2)は、演算装置6により算出された目標仰角となるように、太陽電池モジュールの仰角を制御する(ステップS4)。
なお、ステップS2,S3は必須のステップではなく、演算装置6は、現在の太陽電池モジュールの仰角を確認することなく目標仰角を算出し、方向制御装置7に仰角を制御させてもよい(ステップS4)。
図5は、本実施例の太陽光発電装置の耐風性を説明する図である。図5に示すように、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールは、パネルの太陽光をあてる側を風の到来方向に向けることにより、高い耐風性を得られるものとする。
図6は、図1に示す本実施例の太陽光発電装置における太陽電池アレイのAA断面図であり、太い矢印が太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの各々が風から受ける力を示す。図6において、太陽電池モジュール8aは、最も風の来る方向に近いため、演算装置6は、太陽電池モジュール8aの耐風性が高くなるように目標仰角を算出し、図5に示すような高い耐風性を得られる仰角を目標仰角として出力する。方向制御装置7a(仰角可変装置2)は、演算装置6により算出された目標仰角となるように、太陽電池モジュールの仰角を制御する(図4のステップS4)。
なお、本実施例の太陽光発電装置は、風の来る方向に最も近い太陽電池モジュール8aの仰角を制御するのみで終了してもよいが、以下に説明するように他の太陽電池モジュールの仰角も制御してもよい。太陽電池モジュール8aは、図6に示すような仰角となることにより耐風性が高くなり、風下側に位置する他の太陽電池モジュールに対する風の力を弱めることができるが、完全になくすことはできない。そこで、演算装置6は、太陽電池モジュール8aの次に風の来る方向に近い太陽電池モジュール8fが風の力を受け流すことができるように、太陽電池モジュール8fの目標仰角を水平に近い角度として算出し出力する。
また、太陽電池モジュール8a,8fの存在によって風の力がだいぶ弱まると考えられるため、演算装置6は、太陽電池モジュール8k,8rの目標仰角を通常の角度(太陽の向きに合わせた角度)として算出し出力する。すなわち、演算装置6は、目標仰角を算出する際に、環境測定装置5により測定された環境条件に基づいて、現在の仰角を変える必要が無いと判断した太陽電池モジュールについては、現在の仰角を維持するように目標仰角を算出する。
次に、環境測定装置5が複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として風向と風速とを測定する場合について説明する。この場合には、演算装置6は、各太陽電池モジュールの目標仰角をより正確に算出することができ、環境測定装置5により測定された風向と風速とに基づいて、必要とする耐風性能を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。
図7は、環境測定装置5が風向と風速とを測定する場合の本実施例の太陽光発電装置の動作を示すフローチャート図である。最初にn=1とし(ステップS11)、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の風向と風速とを測定する。次に、演算装置6は、環境測定装置5により測定された風向に基づいて、最も風の来る方向に近い太陽電池モジュールを特定し、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが受ける風速を算出するか、あるいはセンサ等を用いて測定する(ステップS12)。
次に、演算装置6は、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの向きを測定あるいは推定し(ステップS13)、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度が、その太陽電池モジュールが受ける風速以上となっているか否か確認する(ステップS14)。風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていない場合には、その太陽電池モジュールが破壊されるおそれがあるため、演算装置6は、その太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し(ステップS15)、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させた後、ステップS12に戻る。
風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっている場合には、nを1つ増やし(ステップS16)、演算装置6は、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが存在するか否かを判断する(ステップS17)。風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが存在する場合にはステップS12に戻り、存在しない場合には演算装置6は演算を終了する。
図8は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角と耐風速度及び防風性との関係を説明する図である。図8に示すように、耐風速度は、太陽電池モジュールの向き(仰角)による、太陽電池モジュールが耐えられる風速である。また、防風性は、太陽電池モジュールを通過する前の風速から、太陽電池モジュールを通過した後の風速がどれくらい減少するかを示す割合である。
図9は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュール通過前後の風速の計算例を示す図である。図9に示すように、風速X[m/s]の風が防風性aの太陽電池モジュールを通過した場合には、通過後の風速はY[m/s]となる。ただし、風速Y[m/s]は、Y=X*(1−a)により算出することができる。演算装置6は、仰角と防風性との関係を示すデータを予め有することにより、太陽電池モジュール通過前の風速から、太陽電池モジュール通過後の風速を求めることができる。
図10は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角制御の1例を示す図であり、風速が弱く、耐風制御が必要でない場合を示している。最初に、耐風速度が25m/sの太陽電池モジュールに風速20m/sの風が吹いているので、演算装置6は、太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断し、目標仰角を通常の仰角のままとする。また、防風性が60%であるため、演算装置6は、太陽電池モジュール通過後の風速が8[m/s](=20*(1−0.6))であることを算出し、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度(=25m/s)未満であるため、2番目の太陽電池モジュールの目標仰角も通常の仰角のままとする。同様に、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュール通過後の風速が3.2m/s、3番目の太陽電池モジュール通過後の風速が1.3m/sであることを算出し、3番目、4番目の太陽電池モジュールの仰角も変える必要がないと判断する。
一方、図11は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角制御の別例を示す図であり、風速がやや強く、風上の1つを耐風制御した場合を示している。ただし、図11は耐風制御後の状態を示したものであり、図10の状態から図11の状態に移行したものとする。最初に、耐風速度が25m/sの太陽電池モジュールに風速40m/sの風が吹いたため、演算装置6は、太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、その太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度が40m/sとなり、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。1番目の太陽電池モジュールの防風性が50%となったため、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュール通過後の風速が20[m/s](=40*(1−0.5))であることを算出し、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度(=25m/s)未満であるため、2番目の太陽電池モジュールの目標仰角を通常の仰角のままとする。同様に、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュール通過後の風速が8m/s、3番目の太陽電池モジュール通過後の風速が3.2m/sであることを算出し、3番目、4番目の太陽電池モジュールの仰角も変える必要がないと判断する。
図12は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角制御の別例を示す図であり、風速が強く、風上の2つを耐風制御した場合を示している。ただし、図12は耐風制御後の状態を示したものであり、図10の状態から図12の状態に移行したものとする。最初に、耐風速度が25m/sの太陽電池モジュールに風速60m/sの風が吹いたため、演算装置6は、太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、その太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度が60m/sとなり、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。1番目の太陽電池モジュールの防風性が40%となったため、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュール通過後の風速が36[m/s](=60*(1−0.4))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの2番目の太陽電池モジュールに風速36m/sの風が吹いたため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が40m/sとなり、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。2番目の太陽電池モジュールの防風性が50%となったため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュール通過後の風速が18[m/s](=36*(1−0.5))であることを算出し、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度(=25m/s)未満であるため、2番目の太陽電池モジュールの目標仰角を通常の仰角のままとする。
同様に、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュール通過後の風速が7.2m/sであることを算出し、4番目の太陽電池モジュールの仰角も変える必要がないと判断する。
次に、環境測定装置5が複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として風向と風速とを測定するとともに、演算装置6が発電量も考慮に入れて目標仰角の算出を行う場合について説明する。この場合には、演算装置6は、環境測定装置5により測定された環境条件と複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の発電量とに基づいて、必要とする発電量を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。なお、「必要とする発電量」とは、必ずしも所定の発電量を指すものではなく、例えば「耐風性能を確保した上で、最大限の発電量」でもよい。また、演算部6は、環境測定装置5により測定された風向と風速とに基づいて、必要とする耐風性能を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。「発電量」と「耐風性能」が競合する場合には、演算部6は、どちらかに予め優先権を設定して仰角を算出してもよいし、自ら定めたルールに基づいて最終的な目標仰角を算出すればよい。
図13は、環境測定装置5が風向と風速とを測定する場合の本実施例の太陽光発電装置の動作を示すフローチャート図であり、演算部6が発電量も考慮に入れて動作する。最初に、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の風向と風速とを測定する。次に、演算装置6は、全ての太陽電池モジュール8a〜8vについて、最も発電量の大きくなる方向に仮定した目標仰角を算出する(ステップS21)。
なお、発電量を考慮に入れた目標仰角の算出については、様々な方法が考えられる。例えば、演算装置6は、予め仰角に応じた発電量をデータとして有していてもよい。また、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として日射量を測定してもよい。この場合には、演算装置6は、環境測定装置5により測定された日射量に基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の発電量を推定し、必要とする発電量を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。
あるいは、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として太陽の向きを測定してもよい。この場合には、演算装置6は、環境測定装置5により測定された太陽の向きに基づいて、複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々の発電量を推定し、必要とする発電量を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき目標仰角を算出する。ただし、環境測定装置5は、必ずしもセンサ等を用いて太陽の向きを測定する必要があるわけではなく、日付や時刻、緯度経度等から計算により太陽の向きを求めてもよい。
次に、演算装置6は、n=1とし(ステップS22)、環境測定装置5により測定された風向に基づいて、最も風の来る方向に近い太陽電池モジュールを特定し、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが受ける風速を算出するか、あるいはセンサ等を用いて測定する(ステップS23)。
次に、演算装置6は、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの向きを測定あるいは推定し(ステップS24)、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度が、その太陽電池モジュールが受ける風速以上となっているか否か確認する(ステップS25)。風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていない場合には、その太陽電池モジュールが破壊されるおそれがあるため、演算装置6は、その太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる(ステップS26)。その後、ステップS23に戻る。
風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっている場合には、nを1つ増やし(ステップS27)、演算装置6は、風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが存在するか否かを判断する(ステップS28)。風の来る方向にn番目に近い太陽電池モジュールが存在する場合にはステップS23に戻り、存在しない場合には演算装置6は太陽電池モジュールの合計の発電量が最大であるか否かを判断する(ステップS29)。合計の発電量が最大であれば演算装置6は演算を終了し、最大でなければ演算装置6はn=1番目の太陽電池モジュールの向きを防風性が高くなる方向に仮定し(ステップS30)、ステップS22に戻る。
図14は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角と耐風速度、防風性、及び発電量との関係を説明する図である。図14に示すように、発電量は、太陽電池モジュールの向き(仰角)による、太陽電池モジュールの発電量の比を示す。また、図14において、太陽は右斜め上方に位置すると仮定する。したがって、太陽電池モジュールのパネルが逆側(左側)を向いているときや地面に対して垂直なときには発電量が低い。
図15は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角制御の1例を示す図である。ただし、図15は耐風制御後の状態を示したものであり、図13のフローチャート図でいうステップS29の状態であるものとする。最初に、耐風速度が25m/sの太陽電池モジュールに風速90m/sの風が吹いたため、演算装置6は、太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、その太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度が100m/sとなり、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。1番目の太陽電池モジュールの防風性が20%となったため、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュール通過後の風速が72[m/s](=90*(1−0.2))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの2番目の太陽電池モジュールに風速72m/sの風が吹いたため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が80m/sとなり、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。2番目の太陽電池モジュールの防風性が30%となったため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュール通過後の風速が50[m/s](=72*(1−0.3))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの3番目の太陽電池モジュールに風速50m/sの風が吹いたため、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度が60m/sとなり、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。3番目の太陽電池モジュールの防風性が40%となったため、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュール通過後の風速が30[m/s](=50*(1−0.4))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの4番目の太陽電池モジュールに風速30m/sの風が吹いたため、演算装置6は、4番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、4番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、4番目の太陽電池モジュールの耐風速度が40m/sとなり、演算装置6は、4番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。4番目の太陽電池モジュールの防風性が50%となったため、演算装置6は、4番目の太陽電池モジュール通過後の風速が15[m/s](=30*(1−0.5))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの5番目の太陽電池モジュールに風速15m/sの風が吹いたため、5番目の太陽電池モジュールの耐風速度(=25m/s)未満であり、演算装置6は、5番目の太陽電池モジュールの目標仰角を通常の仰角のままとする。
ここで、図15に示す1番目の太陽電池モジュールの発電量は60%であり、2番目の太陽電池モジュールの発電量は70%であり、3番目の太陽電池モジュールの発電量は80%であり、4番目の太陽電池モジュールの発電量は90%であり、5番目の太陽電池モジュールの発電量は100%であるので、合計発電量は400%である。
演算装置6は、太陽電池モジュールの合計の発電量が最大であるか否かを判断する(図13のステップS29)。合計の発電量が最大でないと判断した場合に、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュールの向きを防風性が高くなる方向に仮定し(ステップS30)、計算をし直す。その結果を図16に示す。
図16は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの仰角制御の1例を示す図である。図15において1番目の太陽電池モジュールの防風性は20%であったが、演算装置6は、図16に示すように、1番目の太陽電池モジュールの防風性を40%とする。この場合には、図15に比して耐風速度が100m/sから90m/sに落ちてしまうが、吹いている風の風速が90m/sであるため、1番目の太陽電池モジュールは耐えることができる。
1番目の太陽電池モジュールの防風性が40%となったため、演算装置6は、1番目の太陽電池モジュール通過後の風速が54[m/s](=90*(1−0.4))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの2番目の太陽電池モジュールに風速54m/sの風が吹いたため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度が60m/sとなり、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。2番目の太陽電池モジュールの防風性が40%となったため、演算装置6は、2番目の太陽電池モジュール通過後の風速が32[m/s](=54*(1−0.4))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの3番目の太陽電池モジュールに風速32m/sの風が吹いたため、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていないと判断し、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度が風速以上になるように、目標仰角を算出し、方向制御装置7(仰角可変装置2)にその太陽電池モジュールの仰角を制御させる。
その結果、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度が40m/sとなり、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断する。3番目の太陽電池モジュールの防風性が50%となったため、演算装置6は、3番目の太陽電池モジュール通過後の風速が16[m/s](=32*(1−0.5))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの4番目の太陽電池モジュールに風速16m/sの風が吹いたため、演算装置6は、4番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断し、4番目の太陽電池モジュールの目標仰角を通常の仰角のままとする。
4番目の太陽電池モジュールの防風性が60%であるため、演算装置6は、4番目の太陽電池モジュール通過後の風速が6.5[m/s](=16*(1−0.6))であることを算出する。したがって、耐風速度が25m/sの5番目の太陽電池モジュールに風速6.5m/sの風が吹いたため、演算装置6は、5番目の太陽電池モジュールの耐風速度がその太陽電池モジュールが受ける風速以上となっていると判断し、5番目の太陽電池モジュールの目標仰角を通常の仰角のままとする。
ここで、図16に示す1番目の太陽電池モジュールの発電量は50%であり、2番目の太陽電池モジュールの発電量は80%であり、3番目の太陽電池モジュールの発電量は90%であり、4番目の太陽電池モジュールの発電量は100%であり、5番目の太陽電池モジュールの発電量は100%であるので、合計発電量は420%である。すなわち、本実施例の太陽光発電装置は、図15の場合でも図16の場合でも必要とする耐風性能を確保することができるが、図16の方がより多くの発電量を得ることができる。
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る太陽光発電装置によれば、対環境性能が高く最低限の発電量を確保して発電量の低下を抑えることができるとともに、大電力を確保するために多数の太陽電池モジュールを設置する必要がある場合においてもコストを抑えることができる。
図17は、従来の装置及び本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールが風から受ける力を示す図である。なお、図17に示す本発明のデータは、図6に示すように太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの各々の仰角が制御された場合のものである。本実施例の太陽光発電装置は、複数の太陽電池モジュールを空間的に協調動作させることにより、特許文献1のように遮風装置を必要とせず、太陽電池モジュールが風から受ける力を許容範囲内に入れ、破壊されるのを回避することができる。
また、図18は、従来の装置及び本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの発電量を示す図である。なお、図18に示す本発明のデータは、図6に示すように太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの各々の仰角が制御された場合のものである。本実施例の太陽光発電装置は、複数の太陽電池モジュールを空間的に協調動作させることにより、風上に近い太陽電池モジュール8a,8fを遮風に使用し、風下に近い太陽電池モジュール8k,8rの仰角を太陽の向きに制御することで最低限の発電量を確保することができる。
すなわち、図18の「従来技術3」に示すように太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rを全て水平面に平行となるように制御する場合に比して、本実施例の太陽光発電装置は、遮風と発電を両立するように太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの仰角を個別に制御するので、より多くの合計発電量を得ることができる。
また、多くの太陽電池モジュールが風上から風下に並べられ、風上から風下への距離が長い太陽光発電装置である場合には、より空間的な協調動作の恩恵を得ることができるといえる。コスト的に考えても、風下側の太陽電池モジュール(例えば縦横に多数の太陽電池モジュールが並べられた場合の内部側に位置する太陽電池モジュール)は風の影響をそれほど受けないと考えられるため、仰角制御の機構を省略することができ、全ての太陽電池モジュールに対策機構を必要とする従来の装置に比してコストを抑えることができる。
なお、図19は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池アレイの配置例を示す図であり、風向きに応じて柔軟に対応しうることを示す。例えば図19(a)に示すような風向の場合には、本実施例の太陽光発電装置は、太陽電池モジュール8a,8b,8c,8d,8gを耐風性能の高い仰角に制御する。また、図19(b)に示すような風向の場合には、太陽の向きと一致しているため、本実施例の太陽光発電装置は、各太陽電池モジュールの仰角を通常の仰角のままとしている。風の方向に近いのは太陽電池モジュール8g,8h,8iであるが、通常の太陽の向きに合わせた仰角が、そのまま耐風性能の高い仰角となっているからである。
図20は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池アレイの断面図であり、時間の推移とともに雪10が太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの各々に積もる様子を示す。本実施例の太陽光発電装置の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
ただし、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8が設置された場所の環境条件として積雪量を測定するものとする。
また、演算装置6は、環境測定装置5により測定された環境条件に基づいて、安定した発電量を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき所定時間毎の目標仰角を算出する。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的に複数の太陽電池アレイ1の各々は、方向制御装置7により(あるいは元々)複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々から得られる電気エネルギーが最大になるように太陽の方向に向けて制御されている。しかしながら、雪10が降ってきて太陽電池モジュールの上に積もると、積もった雪10の影響により日光が届きにくくなり、発電量が低下してしまう。そこで、本実施例の太陽光発電装置における演算装置6は、所定時間毎に積もった雪10を落とすように目標仰角を算出する。ただし、全ての太陽電池モジュールがいっせいに雪を落とすと、図29,30で説明した従来装置のように、発電量が一様に低下し、発電量の変動が生じるため、本実施例の太陽光発電装置は、所定時間毎に異なる太陽電池モジュール上の雪10を落とすように目標仰角を算出する。本明細書において、このように環境状況に応じて時間の経過に基づき各太陽電池モジュールの方向を制御することを時間的に協調動作させるという。
具体的には、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の環境条件として積雪量を測定する。演算装置6は、環境測定装置5により測定された積雪量が一定量を超えた場合に、図20に示すような時間的な協調動作を開始する。すなわち、演算装置6は、最初に太陽電池モジュール8aに積もった雪10を落とす(時刻T)ように目標仰角を算出し、それから時間Tが経過した後(時刻2T)に、太陽電池モジュール8fに積もった雪10を落とすように目標仰角を算出し、それから時間Tが経過した後(時刻3T)に、太陽電池モジュール8kに積もった雪10を落とすように目標仰角を算出し、それから時間Tが経過した後(時刻4T)に、太陽電池モジュール8rに積もった雪10を落とすように目標仰角を算出し、一連の動作を繰り返すようにする。
図21は、環境測定装置5が積雪量を測定する場合の本実施例の太陽光発電装置の動作を示すフローチャート図である。最初に、演算装置6は、全ての太陽電池モジュール8a〜8vの向きを、最も発電量の大きくなる方向に仮定し(ステップS31)、またn=1とする(ステップS32)。
環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8a〜8vが設置された場所の積雪量を測定する(ステップS33)。次に、演算装置6は、環境測定装置5により測定された積雪量に基づいて、位置nの太陽電池モジュールの積雪量を推定するか、あるいはセンサ等を用いて測定した位置nの太陽電池モジュールの積雪量を環境測定装置5を介して得る(ステップS34)。
次に、演算装置6は、環境測定装置5により測定された積雪量に基づいて、位置nの太陽電池モジュールの雪を落とすか否かを判断し(ステップS35)、安定した発電量を確保するように位置nの太陽電池モジュールがなすべき所定時間毎の目標仰角を算出する。
ステップS35で位置nの太陽電池モジュールの雪を落とすと判断した場合に、方向制御装置7(仰角可変装置2)は、算出された目標仰角に基づいて、雪が落ちる角度に位置nの太陽電池モジュールの仰角を制御し(ステップS36)、雪を落とすのに必要な時間、太陽電池モジュールの方向を保持(ステップS37)した後、位置nの太陽電池アレイを、最も発電量が大きくなる方向に制御する(ステップS38)。その後、ステップS33に戻る。
ステップS35で位置nの太陽電池モジュールの雪を落とすと判断しない場合にはnを1つ増やし(ステップS39)、演算装置6は、位置nの太陽電池モジュールが存在するか否かを判断し(ステップS40)、存在する場合にはステップS33に戻り、存在しない場合には処理を終了する。
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る太陽光発電装置によれば、対環境性能が高く最低限の発電量を確保して発電量の変動を抑えることができる。図22は、本実施例の太陽光発電装置における太陽電池モジュールの発電量を示す図である。本実施例の太陽光発電装置は、複数の太陽電池モジュールを時間的に協調動作させることにより、複数の太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの発電量の合計を平準化することができる。
すなわち、図22に示すように、太陽電池モジュール8a,8f,8k,8rの各々は、雪10を落とす直前には発電量がなくなってしまうが、いずれの瞬間においても別の太陽電池モジュールが発電を継続しているため、結果として発電量の合計は変化せず、発電量の変動を抑えることができる。
また、雪10が降っていない場合には、実施例1と同様に、本実施例の太陽光発電装置は、環境測定装置5が風向等を測定することにより、耐風性能を確保するような空間的な協調動作を行うことができる。
なお、環境測定装置5は、複数の太陽電池モジュール8が設置された場所の環境条件として降雪量を測定するものでもよい。ここで、降雪量とは、単位時間に降っている雪の量である。また、積雪量は、降雪した雪の累計である。例えば、前日の雪が残っている場合には、現時点における降雪量がゼロであっても積雪量は存在することになる。環境測定装置5は、降雪量を測定して、測定結果を演算装置6に出力する。演算装置6は、環境測定装置5により測定された降雪量に基づいて、例えば現在の積雪量を推定し、安定した発電量を確保するように複数の太陽電池モジュール8a〜8vの各々がなすべき所定時間毎の目標仰角を算出する。