JP5451252B2 - 人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー - Google Patents

人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー Download PDF

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Description

本発明は、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーに関する。
近年、腎臓の機能が低下した患者に対し、患者の血液を体外に取り出して血液中の老廃物を、透析やろ過により除去した後、浄化された血液を患者の体内へ戻す、体外循環式血液浄化療法(人工透析)が普及している。
これらの人工透析においては、「ダイアライザー」と呼ばれる、筒状容器からなる「本体」の内部に、体液から目的成分を除去するために中空糸等の分離膜が充填され、その両端部に、体液を出入りさせるためのノズルが備わった「ヘッダー」と呼ばれるキャップ部品が取り付けられた構造の、透析用部品が用いられている。
一般的に、「ヘッダー」と呼ばれるキャップ部品は、本体とは別部品として成形され、本体に中空糸の分離膜を充填した後において、後工程で接合されるために用いられ、これにより「ダイアライザー」として製品化される。
また、体液の出口側と入口側とを明確に区別するため、本体の両端に取り付けられるヘッダーは、異なる着色とすることが一般的に行われている。
また、ダイアライザーは使い捨て製品であるため、安価かつコンパクトであることが要求され、さらには、ダイアライザー内部の視認性が必要なため、実用上十分な透明性が要求されることから、ダイアライザーの本体及びヘッダーは、現在その殆どが樹脂化されている。
さらに、ダイアライザーの本体及びヘッダーには、電子線やγ線による滅菌処理が施されるため、電子線やγ線に対する耐性が要求され、機械的特性の維持と色調等の外観上の品質の維持が要求される。
またさらには、ダイアライザーを透析装置に装着する場合、本体に透析液を通すためダイアライザーに設けられたノズル部に、透析装置の接続部を、互いの接触部材を回転させて締め付け固定する際、しっかりと締め付けて確実に接続固定できるように、リブの乗り越えトルクを高くするために、樹脂組成物の剛性は、高過ぎず低過ぎず、バランスのとれた最適範囲であることが要求される。
さらにまた、誤って落とした場合や、透析液を充填する際に残留空気を抜くため、かん子等で繰り返し強く叩いた場合等においても破損しない程度の、実用上十分な衝撃強度(耐衝撃性)を有していることが要求される。
上述したダイアライザー本体及びヘッダー用の材料として、例えば、汎用ポリスチレンは、透明性、剛性及び耐γ線性については、優れた特性を発揮するものの、割れやすく衝撃強度に劣っている。
ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンは、衝撃強度は良好であるが、乳白色となるため製品内部の視認性に劣る。
また、ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性と衝撃強度を有しているが、電子線やγ線による滅菌処理を行うと黄変し、製品価値を損なうという問題がある。
上記の従来技術の課題に対し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなる熱可塑性ブロック共重合体を主体とした、ダイアライザーの本体及びヘッダー用の材料開発が行われており、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなる熱可塑性ブロック共重合体と、特定のゴム粒子径を有するゴム変性耐衝撃性ポリスチレンとからなる樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
さらには、特定のスチレン系共重合樹脂からなる人工腎臓透析器が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第3192253号公報 特許第3409823号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている材料においては、スチレン系樹脂の良好な耐γ線性及び透明性については優れているものの、特に剛性と耐衝撃性とのバランスの観点からは、未だ十分な特性が得られていない。
また、特許文献2に開示されている材料を用いたダイアライザー本体においては、実際に回路に組み込んで使用する際、透析装置の接続部に軟質塩化ビニル製チューブが用いられていると、軟質塩化ビニルに配合されている可塑剤が移行して極度に白化するという欠点があり、ダイアライザーとしての要求特性が満足できないという問題がある。
さらに、特許文献1及び特許文献2に開示されている材料を用いると、ダイアライザー本体に中空糸を固定する際にウレタン等の熱硬化性樹脂で固定後に端面の切削加工を行うとき、樹脂組成の比率によっては、本体の割れや欠けといった不具合が多く発生することが予想され、製造歩留まりの観点や、不良品発生の防止の観点から、材料物性の改善を図る必要がある。
そこで本発明においては、スチレン系樹脂の特徴である良好な電子線及びγ線に対する耐性を有し、透明性、耐衝撃性、剛性といった各種物性バランスに優れ、さらには切削加工性についても良好な人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーを得るための樹脂組成物、及び人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構造を有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなる線状ブロック共重合体と、スチレン系樹脂とからなる樹脂組成物を、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーに用いることによって、上記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
〔1〕
人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物であって、
ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%からなる線状ブロック共重合体(a)と、
ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)と、を含有し、
前記(a)と前記(b)との重量比(a)/(b)が、80/20〜20/80であり、
前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%であり、当該線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合が60〜95質量%以下であり、
線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と、共役ジエン重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)とを有しており、当該線状ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)であり、当該両末端のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の、それぞれの内端には、直接結合した共役ジエン重合体ブロック(B)を有しており、当該共役ジエン重合体ブロック(B)の、それぞれの内端には、1以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が結合しており、前記共役ジエン重合体ブロック(B)のそれぞれの内側に結合しているビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が、2以上である場合には、当該2以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)の両端には、それぞれ前記共役ジエン重合体ブロック(B)が結合しており、
前記線状ブロック共重合体(a)は、5万〜15万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、15万〜35万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、合計2以上のピーク分子量の異なる成分を含有しており、
前記ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)は、1万〜6万の範囲に1個以上、12万〜25万の範囲に1個以上のピーク分子量を有しており、
前記線状ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は5万〜50万であり、
前記直鎖状ブロック共重合体(b)は、前記線状ブロック共重合体(a)よりもビニル芳香族炭化水素含有量が少なくとも10質量%以上高く、前記直鎖状ブロック共重合体(b)のピーク分子量が5万〜35万の範囲に存在する、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物を提供する。
〔2〕
ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)が、さらに0.3〜15質量%含有されており、前記ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)には、平均粒子径が1.5μm〜5μmのグラフトゴム粒子が含有されている前記〔1〕に記載の人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物を提供する。
〔3〕
前記線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)とを、それぞれ溶媒中に溶解した状態で混合する溶液ブレンド法により得られる前記線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)との混合物を用いて製造した前記〔1〕又は〔2〕に記載の人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物を提供する。
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の樹脂組成物を成形した人工透析用ダイアライザー本体を提供する。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の樹脂組成物を成形した人工透析用ダイアライザーのヘッダーを提供する。
本発明によれば、透明性が高く内部の視認性が良好で、耐衝撃性及び剛性のバランスに優れ、電子線やγ線照射による滅菌処理後も変色や物性低下が効果的に低減化され、かつ製造工程における切削加工性も良好な人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーが得られる。
本実施形態におけるダイアライザー本体とヘッダーとを一体化した状態の概略断面図を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図を参照して説明する。
本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、特に、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物である。
本実施形態の樹脂組成物は、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物である。
本実施形態の樹脂組成物は、ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%からなる線状ブロック共重合体(a)と、ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)とを含有している。
前記(a)線状ブロック共重合体と、前記(b)直鎖状ブロック共重合体との重量比(a)/(b)は80/20〜20/80である。
前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%である。
前記線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合が60〜95質量%以下である。
前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と、 共役ジエン重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)と、を有している。
前記線状ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)である。
前記線状ブロック共重合体(a)の両末端のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の、それぞれの内端には、直接結合した共役ジエン重合体ブロック(B)を有している。
前記共役ジエン重合体ブロック(B)の、それぞれの内端には、1以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が結合している。
前記共役ジエン重合体ブロック(B)のそれぞれの内側に結合しているビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が、2以上である場合には、当該2以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)の両端には、それぞれ前記共役ジエン重合体ブロック(B)が結合している。
前記線状ブロック共重合体(a)は、5万〜15万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、15万〜35万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、合計2以上のピーク分子量の異なる成分を含有している。
前記ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)は、1万〜6万の範囲に1個以上、12万〜25万の範囲に1個以上のピーク分子量を有している。
線状ブロック共重合体(a)は5万〜50万の重量平均分子量を有している。
前記直鎖状ブロック共重合体(b)は、前記線状ブロック共重合体(a)よりもビニル芳香族炭化水素含有量が少なくとも10質量%以上高い。
前記直鎖状のブロック共重合体(b)のピーク分子量が5万〜35万の範囲に存在するものとする。
(線状ブロック共重合体(a))
本実施形態の樹脂組成物を構成する線状ブロック共重合体(a)は、炭化水素溶媒中、重合開始剤を用い、ビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを共重合することにより得られる。
線状ブロック共重合体(a)の製造に用いる炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。中でも、n−へキサン、シクロヘキサンが一般的で好ましく使用される。
また重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。特に、n−ブチルリチウムが一般的で好ましく使用される。
共重合反応に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。特にスチレンが一般的であり好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合反応に用いられる共役ジエンとは、一対の共役二重結合を有するジオレフィンである。例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが一般的であり好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の樹脂組成物を構成する線状ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族炭化水素含有量は65質量%〜89質量%であり、共役ジエン含有量は35質量%〜11質量%である。好ましくは、ビニル芳香族炭化水素含有量が70質量%〜85質量%であり、共役ジエン含有量が30質量%〜15質量%である。
ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%である線状ブロック共重合体を用いることにより、剛性及び耐衝撃性のバランスに優れた樹脂組成物が得られ、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用材料として最適化が図られる。
線状ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族炭化水素含有量、及び共役ジエン含有量は、UV計(紫外線吸光光度計)を用いて測定できる。具体的には、後述する実施例に記載した方法により測定できる。
前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%であり、当該線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合が60〜95質量%以下である。
線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合は、UV計(紫外線吸光光度計)を用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法に従い測定できる。
前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と、 共役ジエン重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)と、を有している。
前記線状ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)である。
前記線状ブロック共重合体(a)の両末端のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の、それぞれの内端には、直接結合した共役ジエン重合体ブロック(B)を有している。
前記共役ジエン重合体ブロック(B)の、それぞれの内端には、1以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が結合している。
前記共役ジエン重合体ブロック(B)のそれぞれの内側に結合しているビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が、2以上である場合には、当該2以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)の両端には、それぞれ前記共役ジエン重合体ブロック(B)が結合している。
線状ブロック共重合体(a)は、5万〜15万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、15万〜35万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、合計2以上のピーク分子量の異なる成分を含有している。
前記ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)は、1万〜6万の範囲に1個以上、12万〜25万の範囲に1個以上のピーク分子量を有している。
線状ブロック共重合体(a)は、5万〜50万の重量平均分子量を有している。
線状ブロック共重合体(a)の低分子成分及び高分子成分のピーク分子量、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の低分子量成分及び高分子量成分のピーク分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
線状ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は、既知の分子量を有する標準サンプルを使用し、検量線法を適用することにより求められる。
線状ブロック共重合体(a)の具体的な構造として、下記の一般式(1)で表される。
S1−(B1−B/S)n−B2−S2・・・(1)
(式中、Sはビニル芳香族炭化水素重合体ブロック、Bは共役ジエン重合体ブロック、B/Sはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体ブロックを表し、nは1〜5の整数である。)
例えば、
S1−B1−B/S1−B2−S2、
S1−B1−B/S1−B2−B/S2−B3−S2、
S1−B1−B/S1−B2−B/S2−B3−B/S3−B4−S2、
等のブロック構造を有するものが挙げられる。
なお、S、Bに付記している数字が異なるものは、それぞれ分子量(重合度)が同じであっても異なっていてもよい。
線状ブロック共重合体(a)は、分子量5万〜12万、好ましくは分子量5万〜10万の範囲に、少なくとも1つのピーク分子量を有しているものの成分含有量が、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%であり、分子量15万〜35万、好ましくは分子量16万〜30万の範囲に、少なくとも1つのピーク分子量を有しているものの成分含有量が好ましくは70〜30質量%、より好ましくは65〜35質量%であるものとする。
すなわち、線状ブロック共重合体(a)は、2以上のピーク分子量成分から構成されている。
線状ブロック共重合体(a)における上記高分子量範囲、低分子量範囲に、それぞれピーク分子量を有しているものの成分含有量については、先ずGPC測定により得られたGPC曲線を用い面積比から成分比率を求め、この比率を用いて算出することができる。
上記のように、低分子量側のピーク分子量が5万〜12万の範囲で、かつ、高分子量側のピーク分子量が15万〜35万の範囲にある線状ブロック共重合体(a)を用いることにより、樹脂組成物を成形した人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーにおいて、剛性と耐衝撃性とのバランスが優れたものとなる。また、このような線状ブロック共重合体(a)を用いることにより、後述するように人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーの製造工程における切削加工性が良好なものとなる。
線状ブロック共重合体(a)は、重合途中から開始剤を添加する方法、重合途中に重合活性点未満のアルコール、水等を添加した後、再度モノマーを供給して重合を継続する方法等を適宜選択することにより、分子量の異なる成分を作製できる。
線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合は、好ましくは60〜95質量%であり、より好ましくは65〜90質量%である。
線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち重合体ブロックを構成している割合(ブロック率)は、線状ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなる共重合体ブロックの、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比を変えることにより制御できる。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなる共重合体ブロックを作製する方法としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの混合物を連続的に重合系に供給して重合する方法が挙げられる。又は極性化合物あるいはランダム化剤を使用して、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとを共重合する等の方法が挙げられる。
極性化合物やランダム化剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合とは、四酸化オスミウムを触媒としてジターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている。)を、線状ブロック共重合体(a)中の全ビニル芳香族炭化水素の重量で除した値であり、その値を質量%で表したものである。
線状ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)は、分子量1万〜6万の範囲と12万〜25万の範囲、好ましくは1万〜5万の範囲と15万〜25万以下の範囲に、それぞれ1個以上のピーク分子量を有し、全体として2個以上のピーク分子量を有していることが好ましい。
線状ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックのピーク分子量が、1万〜6万の範囲と12万〜25万の範囲とにあることにより、特に耐衝撃性に優れた樹脂組成物からなるダイアライザー本体及びヘッダーが得られる。
線状ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の低分子量成分と高分子量成分のピーク分子量は、GPCにより測定できる。
線状ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)のピーク分子量は、上記ビニル芳香族炭化水素重量体ブロックのブロック率の定量に用いたものと同一成分のものをGPCで特定する。
分子量はGPC用の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>」講談社発行)に従って算出する。
線状ブロック共重合体(a)のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、加工性や機械的特性の点から、0.1〜50g/10分が好ましく、1〜20g/10分がより好ましい。
(直鎖状ブロック共重合体(b))
本実施形態の樹脂組成物を構成する直鎖状ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体である。
直鎖状ブロック共重合体(b)は、上述した線状ブロック共重合体(a)よりも、ビニル芳香族炭化水素含有量が少なくとも10質量%以上高く、かつ前記直鎖状ブロック共重合体(b)のピーク分子量は5万〜35万の範囲に存在するものとする。
直鎖状ブロック共重合体(b)を構成するビニル芳香族炭化水素は、上述した線状ブロック共重合体(a)を構成するビニル芳香族炭化水素と同一であっても異なっていてもよく、特に限定されるものではない。
直鎖状ブロック共重合体(b)を構成する重合体ブロックの割合(ブロック率)は、65〜100質量%が好ましく、75〜100質量%がより好ましい。
線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)との組成比は、前記(a)と前記(b)との重量比(a)/(b)が、80/20〜20/80(合計100質量部)である。
線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)との組成比を、上記範囲内とすることにより、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れた人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーが得られる。
線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)との組成比は、(a)/(b)=75/25〜30/70が好ましく、(a)/(b)=70/30〜40/60がより好ましい。
次に、直鎖状ブロック共重合体(b)について詳細に説明する。
ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)を構成するモノマーは、上述した共役ジエン化合物を用いることができ、線状ブロック共重合体(a)を構成する同一モノマー種であっても異なるモノマー種であってもよい。特に、スチレン、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)成分は、上述した線状ブロック共重合体(a)成分と同様に線状のブロック共重合体であり、(b)成分におけるビニル芳香族炭化水素含有量は、(a)成分におけるビニル芳香族炭化水素含有量よりも10質量%以上高いことが必要である。
直鎖状ブロック共重合体(b)成分として、上記線状ブロック共重合体(a)成分よりも、ビニル芳香族炭化水素含有量が10質量%以上高いものを用いることにより、本実施形態の樹脂組成物を用いた人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーは、剛性及び耐衝撃性のバランスが良好なものとなる。
また、直鎖状ブロック共重合体(b)成分を、上記線状ブロック共重合体(a)成分よりも、ビニル芳香族炭化水素含有量が10質量%以上高いものとするためには、上記(a)成分、上記(b)成分の、それぞれの作製段階で調整して適宜組み合わせる。
また、直鎖状ブロック共重合体(b)成分におけるピーク分子量は、上述した線状ブロック共重合体(a)成分における2つのピーク分子量の範囲内(上限、下限と同一分子量も含む)にあることが好ましい。
すなわち、直鎖状ブロック共重合体(b)のピーク分子量は、5〜35万の範囲に存在していることが好ましい。
(b)成分におけるピーク分子量が、上記(a)成分における2つのピーク分子量の範囲内とすることにより、本実施形態の樹脂組成物を用いた人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーにおける機械的特性と成形加工性とが実用上優れたものとなり、特性の両立が図られる。
上述した直鎖状ブロック共重合体(b)のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、本実施形態の樹脂組成物において良好な成形加工を得る観点から、0.1〜50g/10分が好ましく、1〜20g/10分がより好ましい。
(ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c))
本実施形態の樹脂組成物には、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)を、さらに含有してもよい。
ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)は、耐衝撃性ポリスチレンとして知られているものであり、特に限定されるものではない。
一般的に、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)は、ゴム状重合体を予めスチレン等のビニル芳香族炭化水素モノマーに溶解させて重合して得られる乳白色状の重合体である。
上記ビニル芳香族炭化水素重合体(c)の原料として用いられるゴム状重合体としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンモノマーを主体とした単独重合体、共重合体、及び/又はこれらの水素添加物が挙げられ、その他、スチレン等のビニル芳香族炭化水素モノマーとの共重合ゴムも好ましい例として挙げられる。
上記ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)を、上述した線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)とからなる樹脂組成物に、少量配合することにより、(a)成分と(b)成分と(c)成分との組み合わせ、又は(a)成分と(c)成分との組み合わせによる相乗効果より、剛性等の機械物性に殆ど影響せずにデュポン衝撃強度のみを更に大幅に向上させる効果があるが、透明性の大幅に低下させないことを考慮し、物性バランスを改善する上で少量配合することが好ましい。
ゴム変性ビニル芳香族炭化水素重合体(c)は、ダイアライザー本体及びヘッダーを構成する樹脂組成物中、0.3〜15質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましく、3〜8質量%の範囲がさらに好ましい。
ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)に含まれるグラフトゴム粒子の平均粒子径は、1.5μm〜5μmの範囲が好ましい。
グラフトゴム粒子の平均粒子径を1.5μm〜5μmの範囲とすることにより、少量配合による衝撃強度改善効果が顕著に得られ、かかる効果を得る観点から2μm〜4μmの範囲とすることがより好ましい。
平均粒子径の測定方法を下記に示す。
先ず、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)を、四酸化オスミウムで染色し、それから厚み約75nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて撮影し、倍率1万倍の写真を得る。
次に、写真中、黒く染色されたゴム粒子径を測定して、次式により算出する。
(平均粒子径)=ΣnDi4/ΣnDi3 ・・・長径Diの個数がn
ゴム粒子は、その内部にポリスチレンを内包した、いわゆるサラミ構造のものやコアシェル構造のものがある。
ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)のメルトフローレート(ISO1133 温度200℃、荷重5kgf)は、樹脂組成物において良好な成形加工性を得るために、0.1〜50g/10分が好ましく、1〜20g/10分がより好ましい。
(添加剤、その他の熱可塑性樹脂)
本実施形態における樹脂組成物には、必要に応じて添加剤やその他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。
特に、加熱による各成分の混練や成形加工時の熱劣化や酸化劣化を抑制するために、酸化防止剤等の熱安定剤等を添加することが好ましい。
添加剤は、樹脂組成物中0.1〜1.5質量%とすることが好ましい。0.1質量%未満とすると添加剤の効果が不十分となり、1.5質量%を超えて添加しても効果上意味が無いものとなる。
例えば、2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等の熱安定剤、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニルプロピオネート等の酸化防止剤が挙げられる。
更に、その他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。本実施形態の樹脂組成物を用いた人工透析用ダイアライザー及びヘッダーにおいて、良好な特性が得られる範囲であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリスチレンやスチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物との共重合体等を適量配合することができる。
その他の添加剤としては、熱可塑性樹脂に一般的に用いられるものであれば、特に制限されない。
例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤;有機繊維、クマロンインデン樹脂等の有機充填剤;有機パーオキサイド、無機パーオキサイド等の架橋剤;酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料;青,赤,紫,黄等の染料;難燃剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩等の滑剤;ミネラルオイル、シリコンオイル等のオイル類等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物は、従来公知の混練・混合方法によって製造でき、特に限定されることはない。
例えば、ロール、ミキサー、ニーダー、バンバリー、押出機(単軸又は二軸等)等の公知の混練機を用いた溶融混練方法、ダイアライザーやヘッダーを成形時に複数の材料をドライブレンドし、成形機内の溶融過程で混合させる方法、各成分を有機溶剤等に溶解した溶液状態で攪拌・混合した後、溶剤を加熱や減圧等の任意の方法により除去して混合物を得る方法等が挙げられる。
特に、溶液状態で攪拌・混合し、溶媒除去を行う方法(溶液ブレンド法)が好ましい。
溶液ブレンド法については、特開2008−231371号、特開2008−231372号公報に記載されている方法により実施できる。
線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)とを溶液ブレンド法により仕上げる方法を採用することにより、樹脂組成物に対する熱履歴は、重合後の脱溶剤工程、成形体の成形工程の2回のみとすることができるが、当該溶液ブレンド法を採用しない場合には、上記工程に加え、線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)とを溶融混練する工程が必要となる。すなわち、溶液ブレンド法を採用することにより、樹脂組成物に対する熱履歴が1回少なくなるため、樹脂組成物やダイアライザー本体やヘッダー等の成形体を製造するための手間やコストを削減できる利点が得られ、さらには品質面においても架橋ゲルの低減や色調や透明性に優れるのみならず、溶融混練時の際に、樹脂の熱劣化物に由来した黒色・茶色異物の混入を防止でき、成形体を成形する手段として好適である。
〔ダイアライザー本体及びヘッダー〕
図1に、上述した樹脂組成物によりなるダイアライザー本体及びヘッダーを組み合わせた透析用部材の概略構成図を示す。
ダイアライザー本体10は、両端に開口を有する略円筒形状を有している。ダイアライザー本体10の両端の開口近傍の側壁部には、それぞれノズル部11a、11bが設けられており、外部の透析装置と接続可能になされている。
ダイアライザー本体10の両端の開口には、それぞれヘッダー12a、12bが設けられており、当該ヘッダー12a、12bには、それぞれヘッダーの一部を成すノズルが設けられている。
透析実施の際には、ダイアライザー本体10の内部に所定の中空糸膜を収納し、ヘッダー12a、12bで封止し、ノズル20a(又は20b)を介して体液を注入する。また、「透析液」と呼ばれる電解質水溶液を11a、11bを介して循環させる。
体液は20b(又は20a)から20a(又は20b)へと導かれ、さらに循環するようになされる。
中空糸膜により透析が行われた後、ノズル部11a、11bから外部へと導かれるようになされる。
〔ダイアライザー本体及びヘッダーの製造方法〕
人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーは、公知の成形加工方法によって成形することが可能である。ブロー成形法、押出成形法、射出成形法が可能であるが、とりわけ射出成形法が生産効率上優れているため好ましい。
〔ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物の物性〕
(曲げ弾性率)
本実施形態における人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物は、ISO178における曲げ弾性率が1400MPa以上1900MPa以下であることが好ましい。
曲げ弾性率が1400MPa未満であると、寸法安定性の悪化を招来し、更にはダイアライザー本体と中空糸とを、ウレタン等の熱硬化性樹脂を用いて固定する際、その反応熱によって熱変形を起こし易くなるため好ましくない。
一方、樹脂組成物の曲げ弾性率が1900MPaを超えると、ダイアライザーを所定の透析装置に装着する際、ダイアライザー本体に設けられたノズル部11a、11bに、透析装置を構成する接続部を回転し締め付けて固定するとき、低トルクで容易にノズル11a、11bのリブを乗り越えてしまい、しっかりと締め付け接続固定することが出来ないという、不具合が生じるおそれがあるため好ましくない。
かかる観点から、樹脂組成物の曲げ弾性率は、1400〜1700MPaの範囲がさらに好ましい。
(デュポン衝撃強度)
本実施形態の人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物は、JIS K5400における50%破壊デュポン衝撃強度(ミサイル先端径1/4インチ)が、厚さ2mmの射出鏡面平板を用いて測定したとき、3kg・cm以上であることが好ましい。
特に、ヘッダーの場合は、誤って床に落下してもノズル部が折れたり割れたりする事態を回避するため、JIS K5400における50%破壊デュポン衝撃強度(ミサイル先端径1/4インチ)が20kg・cm以上であることが好ましい。
ダイアライザー本体についても、透析液を充填する際、かん子で叩いて内部の空気泡を抜く作業が必ず発生するため、デュポン衝撃強度が3kg・cm以上であることが好ましい。しかしながら、例えば、誤って床に落下して、本体のノズル部が折れたり割れたりする事態を回避するためには、デュポン衝撃強度は高い方が望ましい。かかる観点から、ダイアライザー本体及びヘッダーは共に、デュポン衝撃強度は20kg・cm以上であることが好ましく、30kg・cm以上であることがより好ましく、40kg・cm以上であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態における樹脂組成物のデュポン衝撃強度の上限値については、特に制約されるものではないが、剛性や透明性等の他の要求特性とのバランスの観点から、その実力値として、上限値は100kg・cm程度である。
(曇価)
本実施形態における人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物は、ISO3537における曇価が、厚さ2mmの射出鏡面平板を用いて測定したとき、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
曇価が30%以下とすることで、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製したダイアライザーの内部視認性が実用上良好なものとなる。
(黄変度)
本実施形態における樹脂組成物を用いた人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーは、成形品を製品へ組立て製造する過程において、通常、電子線滅菌やγ線滅菌が行われる。
そのため、本実施形態の樹脂組成物は、電子線やγ線に対する耐性を有していることが要求される。
電子線やγ線に対する耐性として照射した際の黄変度(ΔYI)が適用できる。
黄変度(ΔYI)は、電子線を照射エネルギーとして25kGyを照射後、JIS K7105の規定に従い測定できる。
外観上の品質の低下や機械的特性の低下を抑制する観点から、黄変度(ΔYI)は、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
〔ダイアライザー本体及びヘッダーの特性〕
(切削加工性)
本実施形態の樹脂組成物を用いてダイアライザー本体の成形を行い、ウレタン等の熱硬化性樹脂により内部の中空糸を開口部面で固定し、端面から所定の位置にて切削加工機により切削を行うと、割れや欠け、あるいは開口部面の変形の発生が確認されず、切削加工性が極めて良好である。
本実施形態の樹脂組成物として、2以上のピーク分子量を有する線状ブロック共重合体(a)を含有するものとし、曲げ弾性率が1400〜1900MPaであるものとすることにより、上記良好な切削加工性が実現できる。
以下、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて具体的に説明する。
先ず、線状ブロック共重合体(a)、直鎖状ブロック共重合体(b)、ビニル芳香族炭化水素重合体(c)を製造し、これらを用いて、試験片、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーを成形し、評価を行った。
〔線状ブロック共重合体(a)−1〕
窒素ガス雰囲気下において、スチレン20質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液に、n−ブチルリチウムを0.08質量部とテトラメチルメチレンジアミン0.015質量部とを添加し、80℃で20分間重合した。
その後、1,3−ブタジエン8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を一度に添加し、80℃で15分間重合した。
次に、1,3−ブタジエン9質量部とスチレン15質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を30分かけて連続的に添加しながら80℃で重合した。
次に、1,3−ブタジエン8質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を一度に添加して、80℃で15分間重合した。
次に、スチレン3質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加して80℃で5分間重合した。
次に、エタノールをn−ブチルリチウムに対して0.4倍モル添加して、5分間保持した。
次に、スチレン37質量部を25質量%の濃度で含むシクロヘキサン溶液を添加し、80℃で25分間重合した。
その後、重合を完全に停止するため、反応器中にエタノールをn−ブチルリチウムに対して0.6倍モル添加し、熱安定剤としてブロック共重合体100質量部に対して2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、目的とする線状ブロック共重合体(a)が25質量%であるシクロヘキサン溶液を得た。
後述する実施例及び比較例においては、2通りの方法で、線状ブロック共重合体(a)成分を用意した。
先ず、第1の方法としては、溶液ブレンド法を用いた。
この方法においては、シクロヘキサン溶液のままで線状ブロック共重合体(a)成分と後述する直鎖状ブロック共重合体(b)成分との溶液ブレンドを行った後に、溶媒を除去して、後述する(b)成分とブレンドされた状態の線状ブロック共重合体(a)を得た。
第2の方法としては、単独仕上げ法を用いた。
上述のようにして線状ブロック共重合体(a)のシクロヘキサン溶液において、溶媒を除去し、単独の線状ブロック共重合体(a)を得た。この単独仕上げ法により得られた線状ブロック共重合体(a)は、スチレン含有量75質量%の、S1−B1−B/S−B2−S2構造の、2つのピーク分子量を有するバイモダル型の線状ブロック共重合体であった。
〔線状ブロック共重合体(a)−2〜10〕
線状ブロック共重合体(a)のスチレン含有量を、ブタジエンとスチレンとの重量比で調整した。
線状ブロック共重合体(a)の分子量を開始剤の量とエタノールの添加位置と添加量で調整した。
そのブロック率をB/S部の量比で調整した。
更に、スチレンブロック分子量を、S(スチレン)の量比とエタノールの添加位置と添加量とで調整した。
上記方法により、構造の異なる線状ブロック共重合体(a)を作製した。
下記表1に、線状ブロック共重合体(a)−1〜10単体での構造、組成等を示す。
なお、下記表1中、「ブロック率」とは、「線状ブロック共重合体(a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち重合体ブロックを構成している割合」であるものとする。
なお、下記表1に示す線状ブロック共重合体(a)に関する構造は、下記の方法に従い測定した。
<線状ブロック共重合体(a)のスチレン含有量>
UV計(紫外線吸光光度計)により測定した。
具体的には、線状ブロック共重合体(a)を約30mg(0.1mg単位まで正確に秤量)をクロロホルム100mLに溶解させ、そのポリマー溶液を石英セルに満たして分析装置にセットし、これに紫外線波長260〜290nmを走査させ、得られた吸光ピーク高さの値により検量線法を用いて求めた。ビニル芳香族炭化水素がスチレンの場合、ピーク波長は269.2nmに現れる。
<線状ブロック共重合体(a)における低分子成分のピーク分子量、線状ブロック共重合体(a)における高分子成分のピーク分子量、線状ブロック共重合体(a)を構成するスチレンブロック(S)の低分子側のピーク分子量、線状ブロック共重合体(a)を構成するスチレンブロック(S)の高分子側のピーク分子量、線状ブロック共重合体(a)の低分子成分及び高分子成分の含有量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるGPC曲線から求めた。
成分比率は、GPC曲線の面積比から求めた。
なお、スチレンブロック(S)のピーク低分子側及び高分子側のピーク分子量の測定においては、線状ブロック共重合体(a)をクロロホルムに溶解させ、オスミウム酸で処理し、酸化分解により共役ジエン性二重結合部分を切断する処理を行い、処理後のポリマー溶液を用いて、GPCにより、スチレンブロック(S)の分子量を測定した。
<線状ブロック共重合体(a)の重量平均分子量>
GPCにより分子量分布曲線を得、既知の標準サンプルにより検量線を作成し、そこから統計処理により重量平均分子量を算出した。
<線状ブロック共重合体(a)のブロック率>
先ず、上記のようにしてスチレン含有量を測定し、次に、重合体ブロックを構成しているスチレンの測定を行った。具体的には、正確に秤量した重合体約50mgを約10mLのクロロホルムに溶解した後、オスミウム酸溶液を加えて共役ジエン部分を分解し、分解後のポリマー溶液を約200mLのメタノール中に静かに滴下した。これによりメタノールに溶解しない重合体ブロックスチレン成分が沈殿した。
この沈殿したポリマー分がブロックのスチレンのみである。ブロックを形成していないスチレン単量体や、重合度の低いスチレンは、メタノールに溶解した。
ポリマー沈殿分をろ過し、乾燥し、残さとしてのブロックスチレンの重量を秤量することにより、ブロックスチレン量を計算した。ブロック率は、ブロックスチレン量を全スチレン量で除した値とした。
Figure 0005451252
〔直鎖状ブロック共重合体(b)−1〜3〕
ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量%〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)は、下記の方法により作製した。
先ず、窒素ガス雰囲気下で、シクロヘキサン溶媒中で、開始剤としてn−ブチルリチウムを用い、スチレン、1,3−ブタジエン、スチレンの順、又はスチレン、スチレンと1,3−ブタジエンの混合物、スチレンの順、のいずれかの方法により、モノマーのシクロヘキサン溶液を添加して重合し、その後、エタノールを添加して重合を停止した。その後、安定剤として当該重合体100質量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを0.3質量部添加し、目的とする直鎖状ブロック共重合体(b)が25質量%であるシクロヘキサン溶液を得た。
後述する実施例及び比較例においては、2通りの方法で、直鎖状ブロック共重合体(b)を用意した。
先ず、第1の方法としては、溶液ブレンド法を用いた。
この方法においては、シクロヘキサン溶液のままで直鎖状ブロック共重合体(b)成分と、上述した線状ブロック共重合体(a)成分との溶液ブレンドを行った後に、溶媒を除去して、上述した線状ブロック共重合体(a)成分とブレンドされた状態の直鎖状ブロック共重合体(b)を得た。
第2の方法としては、単独仕上げ法を用いた。
上述のようにして直鎖状ブロック共重合体(b)のシクロヘキサン溶液において溶媒を除去し、単独の直鎖状ブロック共重合体(b)を得た。
単独仕上げ法により得られた直鎖状ブロック共重合体(b)は、S1−B1−S2、又はS1−B/S−S2の構造であった。
直鎖状ブロック共重合体(b)−1〜3単体での構造、スチレン含有量(質量%)、ブロック率、メルトフローレート、ピーク分子量を下記表2に示す。
なお、下記表2に示す直鎖状ブロック共重合体(b)−1〜3の構造、物性は、下記の方法に従い測定した。
<スチレン含有量>
UV計を用いて測定した。具体的には、正確に秤量した重合体約50mgを100mLのクロロホルムに溶解して石英セルに満たしUV計により測定した。
<ブロック率>
直鎖状ブロック共重合体(b)−1〜3のブロック率は、下記の方法により測定した。
先ず、上記のようにしてスチレン含有量を測定した。次に、重合体ブロックを構成しているスチレンを測定した。具体的には、正確に秤量した重合体約50mgを約10mLのクロロホルムに溶解した後、オスミウム酸溶液を加えて共役ジエン部分を分解し、分解後のポリマー溶液を約200mLのメタノール中に静かに滴下した。これによりメタノールに溶解しない重合体ブロックスチレン成分が沈殿した。
この沈殿したポリマー分がブロックスチレンのみである。ブロックを形成していないスチレン単量体や、重合度の低いスチレンは、メタノールに溶解した。
ポリマー沈殿分をろ過し、乾燥し、残さとしてのブロックスチレンの重量を秤量することにより、ブロックスチレン量を計算した。ブロック率は、ブロックスチレン量を全スチレン量で除した値とした。
<メルトフローレート>
ISO1133の規格に従い、G条件(200℃、荷重5kgf)で測定した。
<ピーク分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるGPC曲線から求めた。
Figure 0005451252
〔ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)−1〜3〕
ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)は、下記表3に示すゴム成分をスチレンモノマーに溶解し、攪拌翼が装着された反応容器中で重合し、未反応のモノマー等を減圧下にて除去することにより得られた。
このとき攪拌翼の回転速度を調節することにより、ゴム粒子の平均粒子径を調整した。
平均粒子径の測定方法を下記に示す。
先ず、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)を、四酸化オスミウムで染色し、それから厚み約75nmの超薄切片法を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて撮影し、倍率1万倍として写真を撮影した。
次に、写真中、黒く染色されたゴム粒子径を測定して、次式により算出した。
(平均粒子径)=ΣnDi4/ΣnDi3 ・・・長径Diの個数がn
下記表3に、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)−1〜3の、ゴム成分、ゴム成分含有量、ゴム粒子の平均粒子径(μm)、メルトフローレート(G条件)を示した。
なお、下記表3に示すゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重量体(c)−1〜(c)−3の構造、物性は、下記の方法に従い測定した。
<ゴム成分含有量>
用いたスチレンモノマー及びゴム状重合体の重量から算出した。
<メルトフローレート>
ISO1133の規格に従い、G条件(200℃、荷重5kgf)で測定した。
Figure 0005451252
〔実施例1〜19〕、〔比較例1〜19〕
上述のようにして製造した線状ブロック共重合体(a)と、直鎖状ブロック共重合体(b)と、ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)とを、下記表4、5に示す配合比率に従って混合し、樹脂組成物を作製した。
実施例1〜17、比較例1〜19の樹脂組成物は、下記の方法により作製した。
上記(a)成分と上記(b)成分の各々を、上述した単独仕上げ法により得た場合には、上記(c)成分の有無に関わらず、スクリュー径40mm、L/D=36、シリンダー設定温度210℃の二軸押出機で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
上記(a)成分と上記(b)成分とを、上述した溶液ブレンド法により得た場合であって、上記(c)成分を更に配合する場合には、上記二軸押出機により溶融混練し樹脂組成物のペレットを得る方法と、溶融混練を行わず、ペレットによるドライブレンドを行い、そのまま射出成形を行う方法との、2通りを実施した。
上記(a)成分と上記(b)成分とを、溶液ブレンド法により得た場合であって、上記(c)成分を配合しない場合には、そのまま射出成形を行った。
実施例18、19の樹脂組成物は、下記の方法により作製した。
先ず上記(a)成分と上記(b)成分とを溶液ブレンド法を用いて仕上げた樹脂組成物と、上記(c)成分とを、1対1の配合割合で上記二軸押出機を用いて溶融混練し、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分からなる樹脂組成物を得た。続いて、この上記(a)成分、上記(b)成分、上記(c)成分からなる樹脂組成物を6質量%、上記溶液ブレンド法により仕上げた上記(a)成分と上記(b)成分とからなる樹脂組成物を94質量%の割合として、ペレットによるドライブレンドを行った。
上述のようにして作製した樹脂組成物のペレットを、120トン射出成形機により、シリンダー温度210℃、金型温度40℃として、ISO規格の引張り・曲げ用試験片、及び縦80mm、横50mm、厚み2mmの鏡面状平板を成形した。
23℃で24時間状態調節後、下記試験、測定評価を行った。
曲げ試験(ISO178)
デュポン衝撃強度(JIS K5400、ミサイル先端径1/4インチ、50%破壊強度)
曇価(ISO3537)
YI(イエローインデックス)(JIS K7105):照射前と、電子線25kGy照射後について各々測定し、その差であるΔYI(黄変度)を求めた。
曲げ試験における弾性率の結果についての指標を示す。
1400MPa未満:低過ぎ
1400MPa以上、1900MPa以下:最適
1900MPa超:高過ぎ
デュポン衝撃強度については、上記鏡面状平板を使用し、ミサイル先端径1/4インチにて、50%破壊強度を求めた。
錘は300gと1kgの2種類をその強度によって使い分けを行い、10kg・cm超の強度の場合は1kgの錘を用いて算出した。
算出方法は1kgの錘を用いて、30cmの高さから自由落下で50%の確率にて破壊する場合、デュポン衝撃強度は30kg・cmとなる。
デュポン衝撃強度の結果について指標を加えた(単位:kg・cm)。
3未満:×
3以上20未満:○
20以上40未満:◎
40以上:◎+
曇価は、上記鏡面状平板を使用し、ISO3537に従い測定した。
曇価の測定結果の指標を下記に示す。
10%以下:内部の視認に十分かつ良好な透明性を有する。
10%超30%以下:若干の曇りがあるものの、実用上、内部の視認性に問題が無い。
30%超100%以下:透明性がかなり損なわれており、内部の視認性が妨げられている。
ΔYIは、上記鏡面状平板を使用し、JIS K7105に従い測定した。
ΔYIの測定結果の指標を下記に示す。
5以下:十分な耐性を有し、外観及び機械的強度への影響は小さく限定的である。
5超10以下:若干の黄変が認められるが、耐衝撃性や剛性への影響は小さく限定的である。
10超:黄変度が大きく、外観における品質低下のみならず、耐衝撃性や剛性への悪影響が懸念される。
さらに、実施例1〜19、比較例1〜19の樹脂組成物のペレットを用いて成形体を作製し、切削加工性を評価した。
切削加工性は、切削加工時における成形体の欠けや割れの有無を評価するため、上記各樹脂組成物のペレットを用いて、350トン射出成形機により、シリンダー温度220℃、金型温度55℃として、図1に示されているダイアライザー本体の成形を行い、熱硬化性ウレタン樹脂により開口部を塞いだ後、端面から5mmの位置にて切削加工機にて切削を行った。
n=10(サンプル数:10)で切削を実施し、欠けや割れの不具合の発生数を下記の基準により評価した。
10本全てにおいて欠け・割れ・開口部の変形が発生せず、切削加工性良好:◎
10本の内、少なくとも1本に欠け・割れが発生した:×a
10本の内、少なくとも1本に変形が発生し、ヘッダーとの勘合に不具合を生じた:×b
比較例17としてポリスチレン樹脂単味(PSジャパン(株)製 PSJポリスチレン 685)、比較例18として市販のポリカーボネート樹脂単味(出光石油化学製 タフロンA2200)、比較例19としてメタクリル酸メチル・スチレン・ブタジエン樹脂(MBS樹脂)単味(電気化学工業製 デンカTHポリマー TH−11)の各評価結果も併せて下記表4、表5に示した。
Figure 0005451252
Figure 0005451252
実施例1〜19の樹脂組成物は、いずれも曲げ弾性率とデュポン衝撃強度とのバランスが良好であり、実用上十分な透明性、視認性が確保できており、電子線照射後のΔYIが低減化されており、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーとして、優れた物性を有していることが分かった。
また、実施例1〜19の樹脂組成物を用いて人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーを製造する工程における切削加工性についても良好な評価が得られており、製造歩留まりが良く、不良品の発生が極めて低く、製造コストの観点からも優れていたことが分かった。
比較例1〜19の樹脂組成物は、曲げ弾性率、デュポン衝撃強度、及びこれらのバランス、透明性、ΔYI、切削加工性の、少なくともいずれかの評価に劣り、人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダーとして、実用上十分な特性を有していないことが分かった。
曲げ弾性率が高すぎるもの、線状ブロック共重合体(a)成分の分子量が2ピークでない(a)−9を使用しているもの、B/SブロックとS2ブロックの間にB2ブロックを持たない(a)−10を使用しているものは、切削加工性が悪化し、欠けや割れが生じる不具合が少なからず発生した。
また、曲げ弾性率が低すぎるものは、剛性が不足して軟らか過ぎ、また耐熱性が不足しているため、熱硬化性ウレタンによる端面の固定時や、切削加工時に変形が生じた。
また、線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)を溶液ブレンド法により仕上げ、かつ、グラフト重合体(c)をドライブレンドにより配合する方法を用いた実施例2、4、5、11、13、15、17においては、樹脂組成物に対する熱履歴は、重合後の脱溶剤工程、成形体の成形工程の2回のみであるため、樹脂組成物やダイアライザー本体やヘッダー等の成形体を製造するための手間やコストを削減でき、さらには品質面においても色調や透明性に優れたものが得られた。すなわち、溶融混練の際における樹脂の熱劣化物に由来する黒色・茶色異物の混入を防止でき、かかる点において、成形体の成形手段として優れていることが分かった。
特に、実施例18、19のように、線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)のブレンド物の一部をグラフト重合体(c)と溶融混練し、その後、所定の配合比率にてドライブレンドを行う方法を適用した場合には、上記グラフト重合体(c)が、上記(a)成分、(b)成分のブレンド物の全体にスムーズに分散し、良好な分散性が実現できることを、超薄切片法による透過型電子顕微鏡を用いて確認した。また、線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)のブレンド物の全部を溶融混練するよりもコストの低減化が図られた。
さらには、線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)のブレンド物とグラフト重合体(c)との全部をドライブレンドする方法と比較して、分散ムラの発生を効果的に低減化でき、結果としてより安定した高い衝撃強度を発現できる樹脂組成物を作製するために有利な方法であることが分かった。
〔実施例20〕
上述した実施例1〜19、比較例1〜19において作製した表4、5に示す配合比率の樹脂組成物ペレットを用いて、それぞれ、350トン射出成形機により、シリンダー温度220℃、金型温度55℃として、図1に示す人工透析用ダイアライザー本体とヘッダーとを成形した。
このダイアライザー本体とヘッダーとを組み合わせ、実際に所定の外部透析装置に接続し使用した。
実施例1〜19の樹脂組成物を用いた場合においては、曲げ弾性率とデュポン衝撃強度のバランスが良好であるため、寸法安定性に優れ、外部透析装置と確実に接続させることができ、さらには良好な視認性が得られ、かん子で叩いたり落下させたりした場合においても破損することが無かった。また、上記のように切削加工性についても良好であった。
本発明の樹脂組成物は、ダイアライザー本体及びヘッダーの成形材料として産業上の利用可能性がある。
10 ダイアライザー本体
11a、11b ノズル
12a、12b ヘッダー
20a、20b ノズル

Claims (5)

  1. 人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物であって、
    ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89質量%、共役ジエン含有量が35質量
    %〜11質量%からなる線状ブロック共重合体(a)と、
    ビニル芳香族炭化水素含有量が75質量%〜99質量%、共役ジエン含有量が25質量
    %〜1質量%からなる直鎖状ブロック共重合体(b)と、を含有し、
    前記(a)と前記(b)との重量比(a)/(b)が、80/20〜20/80であり

    前記線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素含有量が65質量%〜89
    質量%、共役ジエン含有量が35質量%〜11質量%であり、当該線状ブロック共重合体
    (a)における全ビニル芳香族炭化水素単位のうち、重合体ブロックを構成している割合
    が60〜95質量%以下であり、
    線状ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と、共役
    ジエン重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(
    B/S)と、を有しており、
    当該線状ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合
    体ブロック(S)であり、
    当該両末端のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)の、それぞれの内端には、直
    接結合した共役ジエン重合体ブロック(B)を有しており、
    当該共役ジエン重合体ブロック(B)の、それぞれの内端には、1以上のビニル芳香族
    炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が結合しており、
    前記共役ジエン重合体ブロック(B)のそれぞれの内側に結合しているビニル芳香族炭
    化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)が、2以上である場合には、
    当該2以上のビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体ブロック(B/S)の両端に
    は、それぞれ前記共役ジエン重合体ブロック(B)が結合しており、
    前記線状ブロック共重合体(a)は、5万〜15万の範囲に少なくとも1つのピーク分
    子量を有し、15万〜35万の範囲に少なくとも1つのピーク分子量を有し、合計2以上
    のピーク分子量の異なる成分を含有しており、
    前記ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)は、1万〜6万の範囲に1個以上、1
    2万〜25万の範囲に1個以上のピーク分子量を有しており、
    前記線状ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は5万〜50万であり、
    前記直鎖状ブロック共重合体(b)は、前記線状ブロック共重合体(a)よりもビニル
    芳香族炭化水素含有量が少なくとも10質量%以上高く、前記直鎖状ブロック共重合体(
    b)のピーク分子量が5万〜35万の範囲に存在する人工透析用ダイアライザー本体及び
    ヘッダー用の樹脂組成物。
  2. ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)が、さらに0.3
    〜15質量%含有されており、
    前記ゴム状重合体をグラフト重合したビニル芳香族炭化水素重合体(c)には、平均粒
    子径が1.5μm〜5μmのグラフトゴム粒子が含有されている請求項1に記載の人工透
    析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物。
  3. 前記線状ブロック共重合体(a)と直鎖状ブロック共重合体(b)とを、それぞれ溶媒
    中に溶解した状態で混合する溶液ブレンド法により得られる前記線状ブロック共重合体(
    a)と直鎖状ブロック共重合体(b)との混合物を用いて作製した請求項1又は2に記載
    の人工透析用ダイアライザー本体及びヘッダー用の樹脂組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形した人工透析用ダイアライザ
    ー本体。
  5. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形した人工透析用ダイアライザーのヘッダー。
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