JP5448544B2 - 宇宙機用複合材料及び燃料タンク - Google Patents

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Description

本発明は、人工衛星、ロケット等の宇宙機を形成する宇宙機用複合材料に関するものであり、特に、宇宙機の大気圏への突入時に、宇宙機が燃え尽きる又は小片に分断されることを可能とする宇宙機用複合材料に関するものである。
設計寿命を終えて機能を停止したり事故などにより制御不能となった人工衛星や、宇宙空間に投入されたロケットの上段部分等の回収の必要がない宇宙機は、最終的に大気圏に突入し、突入の際に空気との摩擦熱により燃焼して消滅する。
しかしながら、前記宇宙機は、稀にではあるが、大気圏への突入の際に全てが燃え尽きず、機体の一部が地球上に落下するケースもあり、現実に大型の宇宙機の構成部材が地球上に墜落した例も確認されている。
ところで、前記宇宙機を形成する材料として、チタンやチタン合金を採用する例が多い。チタンやチタン合金は、とくに軽量で強度が高いことから宇宙機を形成する材料として採用されている。例えば、ロケットや人工衛星の姿勢制御用燃料タンクにもチタン合金で作成されたものが採用されている。しかしながら、チタンの融点は1668℃、最も一般的なチタン合金であるTi−6Al−4V合金の融点は1650℃と極めて高い。そのため、チタンやチタン合金を材料として形成された宇宙機は、大気圏への突入の際に燃え残りが発生するリスクが高い。
そこで、このような大型の宇宙機の構成部材の地球上への落下の対応として、特許文献1には、寿命を終えて宇宙空間に放置された衛星を回収するシステムを反射鏡面を利用して構築し、構成を簡易にして簡便な衛星回収システムの構築を実現し得るようにした人工衛星が開示されている。
また、チタン又はチタン合金に限らず、宇宙機を形成する材料に関する技術として、例えば特許文献2、3には材料の断熱性を高めるための表面コーティング樹脂が開示されている。
特開平5−270498号公報 特許第2819169号公報 特許第2906083号公報
前述のような寿命を全うした宇宙機の燃え残りが地球上へ落下する問題は、今後の宇宙開発を進める上で極めて大きなリスクであり、避けて通れない課題といえる。
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、簡易な構成で、簡便な衛星の回収が可能ではあるが、反射鏡面の取り付けが必要であり、人工衛星以外の宇宙機への展開が困難である。また、特許文献1に開示された技術は、原子炉を搭載した人工衛星などの崩壊することで問題のある衛星を安全に回収する技術であるため、回収する必要がなく大気圏で燃え尽きさせればよい衛星にまで適用することは衛星の重量増、衛星製作コスト増という問題がある。
また、特許文献2、3に開示された技術においては、材料の耐熱性を高める技術であって、この技術を利用しても寿命を全うした宇宙機の燃え残りの地球上への落下の問題を解決することはできない。
したがって、本発明においては、チタンやチタン合金のとくに軽量で強度が高い性質を生かしつつ、寿命を全うした宇宙機の燃え残りが地球上への落下することを防ぐため、宇宙機の構成する材料をチタン又はチタン合金を金属材料で被覆する、即ち表面コーティングの技術を利用し、宇宙機の大気圏突入時に、宇宙機の形成材料を確実に燃え尽きさせることが可能なチタン又はチタン合金を使用した宇宙機用複合材料を提供することを目的とする。
本発明者は課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属の共晶反応による融点の低下に着目し、チタン又はチタン合金からなる母材の表面に共晶反応を誘発する金属又は金属間化合物による被覆層を形成することで、大気圏突入時の空気との摩擦熱により燃え尽きやすい宇宙機用複合材料の発明の完成に至った。
上記課題を解決するため本発明においては、チタン又はチタン合金を母材とし、該母材の表面に金属又は金属間化合物による被覆層を形成してなり、
前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するとともに、
前記被覆層の厚みを、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって、前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みとしたことを特徴とする。
また、前記被覆層の厚みを、前記母材の厚みに対して5%以上としたことを特徴とする。
チタン又はチタン合金を母材とし前記被覆層を形成してなる宇宙機用複合材料を用いて成形された宇宙機が、宇宙空間から大気圏への突入時に空気との摩擦で加熱されると、前記被覆層と母材との間に共晶反応が誘発されて融点が低下する。これにより宇宙機用複合材料の溶解・燃焼が加速されて、宇宙機用複合材料を確実に燃え尽きさせることが可能となる。
なお、前記融点の低下により宇宙機用複合材料を確実に燃え尽きさせることができる温度として、宇宙機構造用金属として使用されているステンレス鋼や合金鋼の融点を参照するとともに、宇宙機は前記大気圏への突入時に空気との摩擦で1500℃以上に加熱されることを考慮すると、前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するのがよい。
さらに、前記融点の低下により宇宙機用複合材料を確実に燃え尽きさせるために、前記被覆層の厚みは、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みが必要であり、前記母材の厚みに対して5%以上の厚みとすることが望ましい。
また、前記被覆層を形成する金属又は金属間化合物は、前記母材と被覆層との共晶融点が1300℃以下となる金属又は金属間化合物であることを特徴とする。
前記共晶融点が1300℃以下である材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
チタン又はチタン合金との共晶融点が1300℃以下である金属又は金属間化合物として、Ni、TiNi、Cu、TiCu、TiCu、Fe、TiFeを挙げることができる。また、前記金属又は金属間化合物として、Au、TiAu、TiAu、Co、TiCo、Cr、Mn、TiMn、Si、TiSiなどを使用しても前記共晶融点を1300℃以下とすることが可能である。
また、前記被覆層を、前記母材の表面の一部に形成し、該被覆層の形成部分で、大気圏突入時に分断可能としたことを特徴とする。
母材の全面に被覆層を形成する場合、宇宙機の重量増加の悪影響が懸念される。そこで、宇宙機の大気圏突入時に溶解・分断させたい任意の一部の位置のみに被覆層を形成することで、該任意の一部の位置で分断・細切れにすることが可能となる。これにより、大型部材のまま大気中に突入するケースに比べて空気との摩擦が大きくなり、また、局所的に温度が上がらない位置も減少することから、大幅な重量増加を伴うことなく、燃焼を加速させる効果が発生する。
また、前記金属又は金属化合物を、溶射法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする。
予め準備した共晶反応を誘発する金属又は金属間化合物の粉末を溶射することで、チタン又はチタン合金からなる母材の表面にコーティングを行ない被覆層を形成するものである。母材全面にコーティングを施すことも可能であるし、マスキング等をもちいて、任意の位置のみにコーティングすることも可能である。
溶射法を用いることで、任意の成分比で金属又は金属間化合物を混合して被覆層を形成することが容易となる。
また、前記金属又は金属間化合物を、めっき法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする。
めっき法を用いて母材全面にコーティングを施すことも可能であるし、マスキング等をもちいて、任意の位置のみにコーティングすることも可能である。
めっき法を用いることで、純金属に近い被覆層を形成することができるとともに、より薄膜の被覆層を形成することができ、宇宙機用複合部材の軽量化が可能となる。
また、宇宙機の1つである燃料タンクの発明として、請求項1〜5何れかに記載の宇宙機用複合材料を用いて成形されたことを特徴とする。
燃料タンクは大型の宇宙機部品であるため、小型の部品に比べて大気圏突入時に燃え尽きさせることが困難であるとともに必要不可欠である。そこで、本発明の宇宙機用複合部材を用いて燃料タンクを成形することで、大気圏突入時に確実に燃え尽きさせることが可能な燃料タンクを提供することができる。
使用済みロケット・人工衛星等の宇宙機が大気圏に突入する際に完全に燃え尽きずに部材が地上へ落下する問題に対して、本発明では、チタンまたはチタン合金からなる母材の表面に共晶反応を誘発する金属または金属間化合物をコーティングして被覆層を形成する技術を利用して、大気圏突入時に確実に燃え尽きるチタンまたはチタン合金を用いた宇宙機用複合材料を提供することができる。本発明により、宇宙機用材料の地上落下のリスクが極めて低くなり、安全・安心社会の形成に貢献すると共に、宇宙開発に対する不安を払拭してさらなる開発加速に繋がるものと思慮される。
以上記載のごとく本発明によれば、チタンやチタン合金のとくに軽量で強度が高い性質を生かしつつ、寿命を全うした宇宙機の燃え残りの地球上への落下を防ぐため、宇宙機の構成材料であるチタン又はチタン合金を金属材料で被覆する、即ち表面コーティングの技術を利用し、宇宙機の大気圏突入時に、宇宙機の形成材料を確実に燃え尽きさせることが可能なチタン又はチタン合金を使用した宇宙機用複合材料を提供することができる。
実施例1における実験結果をまとめた表である。 実施例2における実験結果をまとめた表である。 実施例3で用いる試験片及び治具の概略図である。 実施例3における実験結果をまとめた表である。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
まず、母材として純チタン及び最も一般的なチタン合金であるTi−6Al−4V合金の板を用意した。前記チタン及びTi−6Al−4V合金の板の板厚は1mmとした。さらに、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する金属又は金属間化合物であるNi、TiNi、Cu、TiCu、TiCu、Fe、TiFe、Si、Crの微粉末材料を用意した。
次に、溶射法により、加熱・溶解した前記微粉末材料を前記母材に吹き付け皮膜を形成(以下溶射コーティングと称する)し、以下の10種類の試料を用意した。
試料番号1−1 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号1−2 母材:純チタン、コーティング材料:TiNi
試料番号1−3 母材:純チタン、コーティング材料:Fe
試料番号1−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号1−5 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiNi
試料番号1−6 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiFe
試料番号1−7 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
試料番号1−8 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiCu/TiCu
試料番号1−9 母材:純チタン、コーティング材料:Si
試料番号1−10 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cr
ここで、コーティング材料とは、溶射コーティングするために使用した前記微粉末材料をいう。
なお、試料番号1−8の試料については、母材であるTi−6Al−4V合金の上にまずTiCuを溶射コーティングした後、引き続きTiCuを溶射コーティングして用意した試料である。
また、比較材料として、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発しないV、Moの微粉末試料を用意し、前記母材に溶射コーティングして、以下の2試料を用意した。
試料番号1−11 母材:純チタン、コーティング材料:V
試料番号1−12 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cr
なお、試料番号1−1から1−12の12試料すべてにおいて、溶射コーティングの厚みは350±50μmとした。前述したように、母材の厚みを1mmとしているので、母材の厚みに対する溶射コーティングの厚みは35±5%である。
次に、試料番号1−1から1−12の12試料それぞれについて、試料より示差熱分析用の小型試験片を切り出し、不活性ガス雰囲気中で、室温より昇温速度5℃/分の条件で加熱し、融点の測定を行った。結果を図1に示す。
図1に示すように、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発するコーティング材料を用いた試料番号1−1から1−10の10試料では、何れも母材であるチタンの融点1688℃、チタン合金(Ti−6Al−4V合金)の融点1650℃よりも低く、1500℃以下の温度で融点が観測された。
特に、Ni、TiNi、Cu、TiCu、TiCu、Fe、TiFeをコーティング材料とした試料番号1−1から1−8の8試料では、何れも1150℃以下の融点が観測された。
一方、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発しないコーティング材料を用いた試料番号1−11、1−12の2試料については、1500℃まで加熱しても融点を確認することはできなかった。
以上のことより、チタン又はチタン合金(Ti−6Al−4V合金)と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物を溶射法により表面に被覆することにより融点が低下することが明らかとなり、特にNi、TiNi、Cu、TiCu、TiCu、Fe、TiFeを被覆した場合、融点が1150℃以下まで降下し、融点降下の効果が大きいことが明らかとなった。
宇宙機の大気圏への突入の際には、宇宙機の表面温度は空気との摩擦熱により1500℃以上まで加熱される。従って、母材であるチタン又はチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する金属又は金属間化合物を母材の表面に被覆した複合材料を用いて、宇宙機を形成することで、該材料の融点は前述の通り1500℃以下であるので、宇宙機の大気圏突入時に空気との摩擦熱による宇宙機を形成する材料の溶解・燃焼の加速が可能であることが明らかとなった。
特に、共晶融点が前記摩擦熱によって加熱される温度である1500℃よりも充分に低い温度である1300℃以下である複合材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、確実に宇宙機を燃え尽きさせることが可能であるといえ、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
まず、母材として純チタン及び最も一般的なチタン合金であるTi−6Al−4V合金の板を用意した。前記チタン及びTi−6Al−4V合金の板の板厚は1mmとした。さらに、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する金属であるNi、Cuをコーティング材料として用意した。
次に、めっき法、特に電気めっきにより、前記コーティング材を前記母材の上に被覆して以下の4種類の試料を用意した。
試料番号2−1 母材:純チタン、コーティング材料:Cu
試料番号2−2 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号2−3 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
試料番号2−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
なお、試料番号2−1から2−4の4試料すべてにおいて、めっきによる被覆の厚みは80±30μmとした。前述したように、母材の厚みを1mmとしているので、母材の厚みに対するめっきによる被覆の厚みは8±3%である。
次に、試料番号2−1から2−4の4試料それぞれについて、試料より示差熱分析用の小型試験片を切り出し、不活性ガス雰囲気中で、室温より昇温速度5℃/分の条件で加熱し、融点の測定を行った。結果を図2に示す。
図2に示すように、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発するコーティング材料を用いた試料番号2−1から2−4の4試料では、何れも母材であるチタンの融点1688℃、チタン合金(Ti−6Al−4V合金)の融点1650℃よりも低く、1150℃以下の融点が観測された。
以上のことより、チタン又はチタン合金(Ti−6Al−4V合金)と共晶反応を誘発する金属をめっき法により表面に被覆することにより融点が低下することが明らかとなり、特にNi、Cuを被覆した場合、融点降下の効果が大きいことが明らかとなった。
従って、母材であるチタン又はチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する金属を母材の表面に被覆した複合材料を用いて宇宙機を形成することで、該材料の融点は前述の通り1500℃以下であるので、宇宙機の大気圏突入時に空気との摩擦熱による宇宙機を形成する材料の溶解・燃焼の加速が可能であることが明らかとなった。
特に、融点が前記摩擦熱によって加熱される温度である1500℃よりも充分に低い温度である1300℃以下である材料で宇宙機を形成した場合、該材料の溶解・燃焼の加速の効果は大きく、確実に宇宙機を燃え尽きさせることが可能であるといえ、さらには共晶融点が1150℃以下であればその効果はさらに大きい。
図3は、実施例3で用いる試験片及び治具の概略図である。
まず図3を用いて試験片及び治具の概略について説明する。
2は母材であり、純チタン又は最も一般的なチタン合金であるTi−6Al−4V合金の板である。母材2はその板厚が1mmであり、120×15mmの大きさに切り出されている。さらに母材2は、支持間隔40mmで2つの治具4で支持されている。
母材2は、その長手方向中央部に4mmの幅で母材2との間に共晶反応を誘発する材料(コーティング材料6)が被覆されている。
次に実施例3で用いる試験片について説明する。
母材2にチタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する材料であるNi、TiNiのコーティング材料6を溶射法により被覆して試験片1を用意し、さらに、母材2に、チタン及びチタン合金(Ti−6Al−4V合金)との間に共晶反応を誘発する材料であるNi、Cuのコーティング材料6をめっき法により被覆して試験片1を用意した。
用意した試験片は以下の7種類である。
試料番号3−1 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号3−2 母材:純チタン、コーティング材料:TiNi
試料番号3−3 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号3−4 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:TiNi
試料番号3−5 母材:純チタン、コーティング材料:Ni
試料番号3−6 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Ni
試料番号3−7 母材:Ti−6Al−4V合金、コーティング材料:Cu
なお、試料番号3−1から3−4の4つの試験片については母材2の上にコーティング材料6を溶射法によって被覆し、試料番号3−5から3−7の3つの試験片については母材2の上にコーティング材料6をめっき法によって被覆した。
試料番号3−1から3−4の4試料、即ち溶射法によって母材2の上にコーティング材料6を被覆した試料については、被覆の厚みは350±50mmとした。前述したように、母材2の厚みを1mmとしているので、母材の厚みに対するコーティング材料6の厚みは35±5%である。
また、試料番号3−5から3−7の3試料、即ちめっきによって母材2の上にコーティング材料6を被覆した試料については、被覆の厚みは80±30mmとした。前述したように、母材2の厚みを1mmとしているので、母材の厚みに対するコーティング材料6の厚みは8±3%である。
次に加熱実験について説明する。
支持間隔40mmの治具4の上に母材2及びコーティング材料6からなる試験片1をセットし、電気炉(不図示)内に挿入した後、1000℃/hの昇温速度で炉を加熱した。NiまたはTiNiをコーティング材料として用いた試験片は1050℃、Cuをコーティング材料として用いた試験片は1000℃まで加熱した後、0.5hの保持をおこなった。保持後、電気炉から取り出して、試験片が半分に分割されたか否かを目視で確認した。
結果を図4に示す。
表3の再右(評価)欄に結果を示すように、試験片3−1から3−7の何れも、1500℃よりも充分に低い1050℃又は1000℃で保持したが、コーティング材料を被覆した部分が解け落ちて半分に分割された。
以上のことより、チタンまたはチタン合金と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物を任意の位置に表面コーティングすることにより、当該位置で分断・細切れにできることが明らかとなった。
従って、チタンまたはチタン合金と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物を、宇宙機の表面全面に被覆するのではなく、分断させたい任意の位置のみに被覆することで、宇宙機の大気圏突入時に前記被覆位置で宇宙機の分断が可能であるといえる。
これにより、大型部材のまま大気中に突入するケースに比べて空気との摩擦が大きくなり、また、局所的に温度が上がらない位置も減少することから、燃焼を加速させる効果が発生することが明らかとなった。
また、宇宙機の表面全面をコーティング材料(チタンまたはチタン合金と共晶反応を誘発する金属または金属間化合物)で被覆する必要がないため、コーティング材料の使用量を少なく抑えることができ、宇宙機の重量増加を抑えることができる。
なお、前記分断を起こさせるためには、母材2の表面にコーティング材料6を被覆した部分が、母材2の板厚方向に全て溶解することが理想的であるが、共晶反応で発生した融液は結晶粒界等を優先的に侵食して母材2の強度低下を引き起こすため、ある程度の融液が発生すれば当該位置での分断・細切れが可能である。試料番号3−5から3−7の試験片1においては、母材2の厚みに対して8±3%の厚みのコーティング材料6を用いて試験片の分断が可能であった実験結果より、少なくとも母材2の厚みに対して5%の厚みのコーティング材料6を被覆すれば、前記分断は可能であるといえる。
チタンやチタン合金のとくに軽量で強度が高い性質を生かしつつ、寿命を全うした宇宙機の燃え残りが地球上への落下することを防ぐため、宇宙機を構成する材料をチタン又はチタン合金を金属材料で被覆する、即ち表面コーティングの技術を利用し、宇宙機の大気圏突入時に、宇宙機の形成材料を確実に燃え尽きさせることが可能なチタン又はチタン合金を使用した宇宙機用複合材料として、また該宇宙機用複合材料を用いて形成された燃料タンクとして用いることができる。
1 試験片
2 母材
4 治具
6 コーティング部材

Claims (8)

  1. チタン又はチタン合金を母材とし、該母材の表面に金属又は金属間化合物による被覆層を形成してなり、
    前記被覆層と母材であるチタン又はチタン合金との共晶融点が1500℃以下となる金属又は金属間化合物を使用して前記被覆層を形成するとともに、
    前記被覆層の厚みを、宇宙空間から大気圏突入時の摩擦熱によって、前記共晶反応によって融点が低下した母材を融解せしめる厚みとしたことを特徴とする宇宙機用複合材料。
  2. 前記被覆層を形成する金属又は金属間化合物は、前記母材と被覆層との共晶融点が1300℃以下となる金属又は金属間化合物であるとともに、該金属又は金属間化合物が、Ni、Ti Ni、Cu、TiCu 、TiCu 、Fe、TiFe、Au、TiAu 、TiAu、Co、Ti Co、Cr、Mn、TiMn 、Si、Ti Si のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の宇宙機用複合材料。
  3. 前記被覆層の厚みを、前記母材の厚みに対して5%以上としたことを特徴とする請求項記載の宇宙機用複合材料。
  4. 前記金属又は金属間化合物が、Ni、TiNi、Cu、TiCu、TiCu、Fe、TiFe、Au、TiAu 、TiAu、Co、Ti Co、Cr、Mn、TiMn 、Si、Ti Si のいずれかであることを特徴とする請求項3記載の宇宙機用複合材料。
  5. 前記被覆層を、前記母材の表面の一部に形成し、
    該被覆層の形成部分で、大気圏突入時に分断可能としたことを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の宇宙機用複合材料。
  6. 前記金属又は金属間化合物を、溶射法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の宇宙機用複合材料。
  7. 前記金属又は金属間化合物を、めっき法によって前記母材の表面に皮膜して前記被覆層を形成することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の宇宙機用複合材料。
  8. 請求項1〜7何れかに記載の宇宙機用複合材料を用いて成形されたことを特徴とする燃料タンク。
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