JP5435891B2 - アルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシート、アルミニウム合金製熱交換器及びアルミニウム合金製熱交換器の製造方法 - Google Patents
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係る従来のAl合金製熱交換器、例えば自動車用ラジエーターを図1(a),(b)に示す。図1(a)は自動車用熱交換器1の正面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面拡大模式図である。
またろう付け法としては、フッ化物系フラックスを用いるろう付け法を行う。
この一般部Gにおいてろう付後のZn量が多くなることは、一般部Gの内張材4bに早期に貫通孔が形成されることを防止する必要があるという点からすれば、機能上有効な現象である。
図2はタンク6とヘッダープレート4相互間の接合部JにおけるZn拡散プロファイルを示す。
図に示すように、ヘッダー/タンク接合部の内張材4bでは、ろう材6cとの境界Bから芯材4a方向にZnが分散し、かつ境界Bにおいて最も濃度が高く、芯材4a方向に向けて濃度が低くなるZn分布となる。これは拡散エネルギーはZn濃度が低い芯材4a側が大きく、境界B側が低い結果として図上斜めの直線によって近似する指数関数曲線を描く様に芯材4a方向に向けてZn濃度が低くなり、均一化されないためである。
例えば特許文献2に示す様な、従来のブレージングシートを用いた場合には、図3の接合部J断面写真に示すように、そのヘッダー/タンク接合部において内張材4bのAl−Zn合金層が優先的に腐食し、早期に貫通してしまう問題があった。
これを防止するために、ヘッダー材4の内張材4b全体のZn量を小さくした場合には一般部Gの内張材4bの防食機能が損なわれ、一般部Gにおいて早期に貫通孔が形成される原因となる。
またタンク材の材質をAl−Znの両面クラッド材に変える必要があり、タンク材を両面クラッド材に変えると、タンクとパイプ材の接合も置きろうなどを用いて行う必要が生じ、その点でも部品点数および工数の増加につながりコストが上がる問題がある。
前記Al−Si系ろう材部と前記Al−Zn系内張材とをろう付により接合して中空構造を形成して熱交換器媒体通路としてなることを特徴とする。
Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材の片面にAl−Si系ろう材を接合し、他面にAl−Zn系内張材をクラッドしてブレージングシートを作製し、作製したブレージングシートをヘッダープレートとして成型するヘッダープレート成型工程と、
前記タンクを構成するAl−Si系ろう材と前記ヘッダープレートを構成するAl−Zn系内張材とが接合するように中空構造を形成し熱交換器媒体通路とする接合工程と、を含み
前記ヘッダー材成型工程に用いるブレージングシートにおけるAl−Zn系内張材のろう付前段階でのZn量X(wt%)が0.5〜1.0であり、厚さY(μm)が30〜70であってかつ積XYが25〜70であり、かつろう付け加熱後の接合部のZn量が0.55未満、一般部のZn量が0.25〜1.0であることを特徴とする。
図4に示すように、ろう付け前の内張材のZn量が多く、クラッド率が高い場合には、接合部Jにおいてはろう付け後の内張材のZn量が多くなり、ろう材よりも電位的に卑になって優先的に腐食し貫通もれに至る。
一方、図5に示すようにろう付け前の内張材のZn量を少なくし、クラッド率を低くした場合には、接合部Jにおいてはろう付け後の内張材のZn量が少なくなり、ろう材と電位的に等しくなるために、ろう材と内張材が均等に腐食し、内張材の優先腐食がなくなり貫通漏れが発生しない。
しかし、内張材の一般部G及び接合部J全体のZn量を小さくした場合には一般部Gの内張材の防食機能が損なわれ、一般部Gにおいて早期に貫通孔が形成される。
本発明のアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシートはZnを0.1以下とするAl−Mn系芯材と、芯材の片面に接合されたAl−Si系ろう材と、芯材の他面に熱間圧延でクラッドされたAl−Zn系内張材とを有する。
(i)Zn0.5〜1.0、Mg2.6以下、Cu2.6以下、Mn0.7以下を含み残部が不可避的不純物およびアルミニウム合金からなるAl−Zn系内張材のZn量X(wt%)を0.5〜1.0とする。
Znはアルミニウム合金に固溶し、ろう材の自然電極電位を卑にして芯材を防食し、チューブの耐食性を向上させる。しかしながら、Zn量が多いとヘッダー/タンク接合部においてろう付け後Zn濃度が高くなり、内張材の優先腐食を発生させる。
Znの添加量が0.5wt%未満ではヘッダー材の熱交換器媒体通路7を流通する冷却水と接している一般部Gに早期に貫通腐食を発生してしまう。
一方1.0wt%を超えると冷却水と接している一般部Gの耐食性は良好になるが、ヘッダー/タンク接合部の優先腐食を促進する。従ってZnの添加量を0.5wt%〜1.0wt%と規定した。
ろう付け後のヘッダー/タンク接合部における内張材でのZn量はヘッダー内張材のZn量だけでなくクラッド厚さ(μm)にも関係してくる。
このクラッド厚さY(μm)が30(μm)未満である場合には、冷却水と接している一般部Gに早期に貫通腐食を発生しない充分なZn量とするためには1.0wt%を超える過剰なZn量とする必要が生じる。
その様に1.0wt%を超える過剰なZn量とする場合には、ヘッダー/タンク接合部の内張材においてろう付け後のZn量を抑制して貫通もれを防止する適切なバランスを図ることはできない。
冷却水と接している一般部Gに早期に貫通腐食を発生しない充分なZn量とし、かつヘッダー/タンク接合部の内張材においてろう付け後のZn量を抑制して貫通もれを防止する適切なバランスを図る指標として積XYを採用し、これを25〜70とした。
その結果、ヘッダー/タンク接合部においてはろう材と内張材とが電位的に等しくなるために、ろう材と内張材が均等に腐食し、内張材の優先腐食がなくなり貫通漏れが発生しない。
ここで本発明で提案されるブレージングシート材の製造工程は、クラッド熱間圧延の温度を(開始から終了までを通して)450℃〜470℃で実施する。
これはこの温度範囲で熱間圧延することにより、熱間圧延時の予備加熱や圧延時の温度上昇によって内張材のZnを芯材に予め拡散させ、ろう付け加熱時においてヘッダー材/タンクヘッダー/タンク接合部において内張材のZn量を小さくするためである。しかし、特に500℃を超える温度域では、圧延加工による内張材・外ろう材の温度上昇が芯材より高いため、内張材のZnの拡散が大きくなりすぎてしまう。このため、ヘッダー材/タンクヘッダー/タンク接合部において内張材のZn量が小さくなり、ヘッダー/タンク接合部の腐食は問題ないが、冷却水と接している一般部Gでのろう付け後Zn量が0.25%未満になるために、内張材の犠牲腐食効果が小さくなり、一般部において早期に貫通してしまう問題点がある。
以上の製造工程を経て製造される本発明のアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシートにあっては、そのZn量は各製造段階において以下の通りとなる。
(i)皮材の鋳塊
0.5−1.0%必要である。これは、ろう付け後に優先腐食・犠牲効果の観点でZn量の条件を満たす必要があるためである。
(ii)製造後のクラッドした状態のブレージングシート
クラッド熱間圧延の温度が高すぎると、鋳塊のZn量から減ってしまうが、それではろう付け後に充分な犠牲効果が得られない。従って、熱間圧延後もろう付前は0.5−1.0%必要である。
(iii)ろう付後のヘッダー/タンク接合部
ヘッダー/タンク接合部の優先腐食を防止する観点から0.55%未満であることが必要となる。
(iv)ろう付後の一般部G
充分な犠牲防食効果を得るために0.25%以上であることが必要となる。
図1(a),(b)に示すように本発明のアルミニウム合金製熱交換器1は、本発明のアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシートを成型してなるヘッダー材プレート4を有し、Al−Si系ろう材6cとAl−Zn系内張材4bとをろう付により接合して中空構造を形成して熱交換器媒体通路7とする。この熱交換器媒体通路7は580〜600℃のろう付により形成してなる。
以上の本発明のアルミニウム合金製熱交換器1は、次の各工程によって製造される。
Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材6aの片面にAl−Si系ろう材6cを接合し、他面にAl−Zn系内張材6bをクラッドしてブレージングシートを作製し、作製したブレージングシートをタンク(6A),(6B)として成型するタンク成型工程を行う。
系内張材4bをクラッドしてブレージングシートを作製し、作製したブレージングシートをヘッダー材プレート4として成型するヘッダー材プレート成型工程を行う。
このブレージングシートには本発明のアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシートを用いる。
表1に本発明例のヘッダー材の内の内張材成分とクラッド率および本発明例を外れる比較例内張材成分を示す。これら内張材と芯材合金(JIS3003合金)と内ろう材(BA4343P合金(内ろう材と示す)を鋳塊サイズ幅600mm、長さ5000mm、幅1200mmのサイズで鋳造し、外ろう材、内ろう材は所定のクラッド率になるよう熱間圧延の開始温度500℃で圧延した後に、所定のクラッド率になるように重ね合わせ、クラッド熱間圧延の開始温度を460℃、終了温度470℃で圧延し、冷間圧延にて最終板厚を1.0mmにしたものに、最終焼鈍温度を400℃で1時間実施してブレージングシートを作製した。なお、比較例として、内張材合金の成分およびZn量とクラッド厚さの積XYは本発明例範囲内であるが、クラッド熱間圧延の開始温度を520℃、終了温度を530℃で実施し、冷間圧延にて1.0mmにしたものに、最終焼鈍温度を400℃で1時間実施したブレージングシートも作製した。
ヘッダー/タンク接合部の腐食試験として、表1の構成のヘッダー材を幅25mm、長さ100mmの試験片に加工し、ヘッダー材の内張材とタンク材(BAS311P:板厚1.0mm)のろう材を接合面積幅25mm、長さ20mmで接合し、窒素雰囲気下でろう付け相当の加熱(600℃で3分)を行った後、接合面を残して裏面・端部をマスキングした後に、JISH8601に準じるCASS試験を行ない、腐食生成物を除去した後に、ヘッダー/タンク接合部の腐食深さを焦点深度法にて測定した。また一般部の腐食試験として、表1の構成のヘッダー材を幅25mm、長さ100mmの試験片に加工し、窒素雰囲気下でろう付け加熱(600℃で3分)を行った。内張材の部分を幅20mm、長さ80mmを残し、端部と裏面をマスキングした後に、OY水(Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppm)の溶液に浸漬し、88℃×8時間加熱、16時間放冷の熱サイクルを繰り返す試験に3ヶ月供した。試験後、腐食生成物を除去した後に、腐食深さを焦点深度法にて測定した。その結果を表1に示す。
したがって、以上の本発明例はいずれも本発明の条件を充足し、ヘッダー/タンク接合部に優先腐食が生じず、かつ一般部の耐食性が良好で、最適バランスが図られていることが判る。
Claims (7)
- Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材と、前記芯材の片面に接合されたAl−Si系ろう材と、前記芯材の他面に熱間圧延でクラッドされたAl−Zn系内張材とを有し、前記内張材のろう付け加熱前のZn量X(wt%)が0.5〜1.0であり、厚さY(μm)が30〜70であってかつ積XYが25〜70であり、かつろう付け加熱後の接合部のZn量が0.55未満、一般部のZn量が0.25〜1.0であることを特徴とするアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシート。
- 前記Al−Zn系内張材を450〜470℃における熱間圧延でクラッドしてなる請求項1に記載のアルミニウム合金製熱交換器用ブレージングシート。
- Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材と、その芯材に接合されたAl−Si系ろう材部とを有するタンクと、Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材と、その芯材に熱間圧延でクラッドされたAl−Zn系内張材とを備えるブレージングシートを成型してなるヘッダープレートと、を有し、
前記ブレージングシートにおける前記Al−Zn系内張材のろう付前段階でのZn量X(wt%)が0.5〜1.0であり、厚さY(μm)が30〜70であってかつ積XYが25〜70であり、かつろう付け加熱後の接合部のZn量が0.55未満、一般部のZn量が0.25〜1.0であり、
前記Al−Si系ろう材部と前記Al−Zn系内張材とをろう付により接合して中空構造を形成して熱交換器媒体通路としてなることを特徴とするアルミニウム合金製熱交換器。 - 前記熱交換器媒体通路を580〜600℃のろう付により形成してなる請求項3に記載のアルミニウム合金製熱交換器。
- Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材の片面にAl−Si系ろう材を接合し、他面にAl−Zn系内張材をクラッドしてブレージングシートを作製し、作製したブレージングシートをタンクとして成型するタンク成型工程と、
Znを0.1以下とするAl−Mn系芯材の片面にAl−Si系ろう材を接合し、他面にZn0.5〜1.0、Mg2.6以下、Cu2.6以下、Mn0.7以下を含み残部が不可避的不純物およびアルミニウム合金からなるAl−Zn系内張材をクラッドしてブレージングシートを作製し、作製したブレージングシートをヘッダープレートとして成型するヘッダープレート成型工程と、
前記タンクを構成するAl−Si系ろう材と前記ヘッダープレートを構成するAl−Zn系内張材とが接合するように中空構造を形成し熱交換器媒体通路とする接合工程と、を含み
前記ヘッダー材成型工程に用いるブレージングシートにおけるAl−Zn系内張材のろう付前段階でのZn量X(wt%)が0.5〜1.0であり、厚さY(μm)が30〜70であってかつ積XYが25〜70であり、かつろう付け加熱後の接合部のZn量が0.55未満、一般部のZn量が0.25〜1.0であることを特徴とするアルミニウム合金製熱交換器の製造方法。 - 前記ヘッダープレートとして成型するブレージングシートを作製するために芯材とAl−Zn系内張材とAl−Si系ろう材とを重ね合わせて行うクラッド熱間圧延の温度を450〜470℃とする請求項5に記載のアルミニウム合金製熱交換器の製造方法。
- 前記接合工程を580〜600℃でのろう付により行う請求項5または請求項6に記載のアルミニウム合金製熱交換器の製造方法。
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