本発明に係るフィルター枠は、特にレンズ保護用のフィルター、円偏光フィルター、光量減少用フィルターや、特殊効果をもたらす光条効果用フィルター、被写体を柔らかく表現できるソフトフォーカス用フィルター等、利用価値の大きなデジタルカメラ用の各種フィルターレンズの保持機構に関するものである。
デジタル1眼レフカメラの普及に伴いファインダーや液晶画面でフィルターの使用効果をダイレクトに確認しながら撮影することや、種々の交換レンズを装着し、その交換レンズ鏡筒先端部に各種効果を有するフィルターを装着してカメラ撮影を楽しむことが可能になってきた。
然しながら、フィルターは、フィルター枠本体内に各種の効果を有する円盤状のフィルターレンズを内蔵、保持し、該フィルター枠本体の入射光側の内径には、その前縁部から後方に向けてフード等のアタッチメントや異なるフィルターの重ね合わせ用に雌ネジ部が螺設してある前筒枠部が形成されており、また、フィルター枠本体のカメラレンズ鏡筒側の外径にはカメラレンズ鏡筒内径部に設けられた装着用の雌ネジ部に螺着される雄ネジ部が螺設してある後筒枠部が形成されている。
従って、フィルター枠本体における光軸方向の寸法、即ちフィルター枠本体の厚さは、前記雌ネジ部が螺設された前筒枠部と、フィルターレンズの厚さ、並びにフィルターレンズ保持用の環状リングの厚さ、そしてカメラレンズ鏡筒側内径部に螺着される後筒枠部を加えたものから構成されており、従来のフィルター枠は、どうしてもフィルター枠の厚さが厚くなり、該フィルター枠はカメラレンズ鏡筒先端部に装着して用いるとケラレ現象を生じせしめてしまうと云う欠点がある。
また、フィルターは、決められたフィルター口径を有するフィルター枠本体内に円盤状のフィルターレンズを保持する機構が必要であり、該フィルターレンズの保持機構は、例えばフィルター保持用の押さえ環やリングスプリングを用いる方法、或いはフィルターレンズ後枠の一部をカシメることにより固定する方法等が知られている。そして、前記カシメによるフィルター保持機構においては、フィルター枠本体の入射光側内径部に環状に突出した環状縁部を設け、該環状縁部の後方にフィルターレンズを嵌着した後、該フィルターレンズの後方周縁部をカシメ用金型工具やカシメ用加熱工具にてカシメ加工することによりフィルターレンズをフィルター枠本体内に固着、保持している。
而して、上記カシメ加工によるフィルターレンズの固着方法では、フィルター枠本体の入射光側内径部に設けられる環状縁部がフィルターレンズの後部に設けられるカシメベロ部の形状加工や、カシメ加工を行う際のカシメ用金型工具の外径寸法やカシメ用加熱工具の外径寸法により制限されてしまうためにフィルターレンズの環状縁部が構成する有効径が縮小されて一般的に小さくなり、折角、フィルター枠本体を薄く製作してもフィルターレンズの有効径が小さくなることでケラレ現象を生じせしめてしまう欠点が発生する。
斯して、ケラレにくい薄型形状を有するフィルター枠を構成した一例が、特開2010−113016号(以下、特許文献1と称する)に開示されている。特許文献1に記載された従来例の説明では、フィルター枠への光学フィルター(フィルターレンズ)の固定方法について、止め輪(押さえ環)を用いた例を開示して説明し、該止め輪の幅寸法を短くすることには限界があり、更に、多種多様な光学フィルターの厚さ寸法を一律に薄くすることは困難で、このために、フィルター枠の寸法を短くすることは難しい問題としている。
そして、特許文献1の発明は、上記の課題を解決するために、カメラ用フィルターユニットは、筒状のフィルター枠と前記フィルター枠の内側に固定した筒状のフィルター保持リングと、前記フィルター保持リングの内側に保持されている光学フィルターと、前記光学フィルターの前後の移動を阻止している前側ストッパーおよび後側ストッパーとを有し、前記前側ストッパーは、前記フィルター保持リングの前端縁に形成されており、前記後側ストッパーは、前記フィルター保持リングの後端縁あるいは前記フィルター枠の内周面に形成されており、前記フィルター保持リングおよび前記光学フィルターは、前記フィルター枠の前後の端から露出しない状態で配置されているものである。
従って、特許文献1の発明において、カメラ用フィルータユニットは、フィルター枠の内側にフィルター保持リングが固定されており、このフィルター保持リングの内側に光学フィルターが保持されている。即ち、光学フィルターをフィルター枠へ取り付けるための部材であるフィルター保持リングが、光学フィルターの前後に配置されるのではなく、光学フィルターの外周部に配置されている。この結果、フィルター保持リングおよび光学フィルターをフィルター枠から露出しない状態で配置するときに、フィルター枠とフィルター保持リングと光学フィルターとは同心に配置されるので、フィルター枠の前後方向の寸法を短くすることができる、と云うものである。
然しながら、特許文献1と、この特許文献1に記載された従来例の違いは、従来例が光学フィルターの固定具として止め輪を用いているものに対して、特許文献1の発明は、フィルター保持リングを用いたものであり、光学フィルターは突起とカシメ用金属金型によるカシメ加工(カシメを用いない実施例のある)により前記フィルター保持リングに固定され、このフィルター保持リングがフィルター枠の内側に固定されているものである。
而して、フィルター枠内にフィルター保持リングにて固定される光学フィルターを円環状の突起(前側ストッパ)や円環上のカシメ部(後側ストッパ)にて固定する構造では、前記突起やカシメ部が形成する部材の厚さ分のみの寸法を短くするのみで、大幅なフィルター枠の薄型化は具現化されていない。
また、特許文献1の発明においては、光学フィルターを入射光側で保持するためにフィルター保持リングを使用しており、該フィルター保持リングが光軸側に突出してフィルターレンズの有効径を縮小していること、加えてフィルター保持リングの前端縁(本発明の実施例では前縁部と称する)で光軸側に突出している円環状突起がフィルターレンズの有効径の大きさを縮小しており、折角薄型フィルターを提供しても、決められたフィルター口径を有するフィルター枠においてフィルターレンズの有効径が縮小されることによるケラレ現象の発生要因についての言及はなされていない。
次に、本発明は、ケラレ現象を生じせしめない薄型のフィルター枠の形状、及びフィルター口径の決まったフィルター枠においてフィルターレンズの有効径を最大限大きく取ることのできるフィルター枠の形状を得るものであり、且つ、フィルターレンズをフィルター枠内に固着する際に、フィルターレンズには物理的な歪や加熱による歪を付加されない状態にてフィルターレンズをフィルター枠内に挟持可能なカシメ加工手段を提供するものであることから、この目的を具現化するためにフィルターレンズの後方に設けられるカシメベロ部の構成や形状が要件となるもので、この事に関連した従来の特開2008−191412号公報(以下、特許文献2と称する)の発明を開示する。
即ち、特許文献2は、合成樹脂からなるレンズ鏡枠本体において、熱カシメによりレンズが固定される構成のレンズ鏡枠に関するものであり、レンズ鏡枠に固定されるレンズに歪を与えることなく鏡枠に固着することができるレンズ鏡枠を提供すると云うものである。
特許文献2の発明の構成は、光学部材(レンズ)を光軸方向に位置決めするために上記光学部材の一面と当接するため光軸方向に突出し、互いに間隔をあけて配置された三箇所の突起部と、上記突出部それぞれから光軸方向に離間して配置され、上記光学部材を挟むように熱カシメするための三箇所のかしめ部と、を有する合成樹脂からなるレンズ鏡枠であることが示されている。
而して、特許文献2の発明における熱カシメによるレンズ固定方法では、固定するために枠、及びレンズに対して荷重を掛けるために、特にレンズが薄肉である場合には、熱カシメ荷重付与により残留応力が残り、カシメ固定後の状態でもその変化が残ったままでレンズ枠に固定されるという問題がある。枠の保持精度確保のため、レンズ受け面を3箇所の凸面部で受ける保持構造を作用することが多いとされ、このような場合、レンズ面の変形が特に助長されてしまうことが多いと云う課題の解決を模索しているものと思われる。
然しながら、本発明を説明するにあたり、注目した特許文献2の構成は、〔図1〕及び〔図3〕に記載された凸状かしめ部(1c)の断面形状であり、また、〔図4〕及び〔図6〕に記載されたカシメ用金型(3)の断面形状図である。特許文献2の〔図1〕において、鏡枠本体(1)は、合成樹脂からなる筒状部材であり、前方側に周方向に沿ってレンズ装着用段部(1a)が設けられ、該段部(1a)上の三箇所に光軸と直交する一平面を形成する周方向に間隙をあけて配される三つのレンズ光軸方向位置決め用突出部である円弧形状の凸平面部(1b)が設けられる。さらに、レンズ(2)が隙間なく挿入可能な内径部(1d)、および、該内径部に沿って凸平面部(1b)から離間し。レンズ(2)の周辺の厚さに対応してかしめるための必要寸法だけ上方に延出し、周方向に間隙をあけて配される3箇所の円弧形状の凸状かしめ部(1c)が設けられている。(特許文献2の段落番号〔0023〕参照)
なお、凸平面部(1b)に対して対応する凸状カシメ部(1c)は、周方向同一位置にあって、周方向の大きさ(幅)も略同一とする。但し、凸平面部(1b)の周方向の大きさ(幅)は、凸状かしめ部(1c)の周方向大きさ(幅)と異ならせてもかまわない。なお、凸状かしめ部(1c)の上方外側は、かしめを行うためにわずかなテーパー面となっている。(特許文献2の段落番号〔0024〕)
レンズ鏡枠(10)は、図4〜6に示すかしめ用金型(3)によって熱かしめされ、鏡枠本体(1)にレンズ(2)が固着される。そのかしめ用金型(3)は下面側に全周リング状の平面かしめ部(3a)と、その外周にテーパー部(3b)とを有している。平面かしめ部(3a)は、光軸に対して直交するリング状の平面で形成されている(図6)。
かしめ用金型(3)によりレンズ鏡枠(10)の熱かしめを行う場合、レンズ(2)を据え付け台(4)上にセットされた鏡枠本体(1)の内径部(1d)に挿入し、レンズ(2)の下面(2b)を凸平面部(1b)上に当接させる。この状態で凸状かしめ部(1c)の先端は、レンズ(2)の周囲表面よりかしめ量だけ突出している。加熱状態のかしめ用金型(3)を降ろして凸状かしめ部(1c)の先端部分を平面かしめ部(3a)で加熱しながら爪状に押圧変形させてレンズ(2)を鏡枠本体1に固着する。この熱かしめ時、かしめ用金型(3)の平面かしめ部(3a)は、凸状かしめ部(1c)以外に当接することがない。(特許文献2の段落番号〔0025〕)
レンズ(2)が固着されたレンズ鏡枠(10)において、図7〜9に示すようにレンズ2の外周(3)箇所が鏡枠本体1の凸平面部(1b)と凸状かしめ部(1c)の押圧熱変形された先端(爪部)とにより挟持される。従って、レンズ(2)には上記三箇所の挟持部分(凸平面部1bと凸状かしめ部1c)以外での加圧力が作用せず、レンズ(2)のかしめによる歪みは極めて少ない。(特許文献2の段落番号〔0026〕)
と云う点である。(以上、特許文献2の公報参照。カッコ内の符号は特許文献2に記載された符号を示す。)
斯くして、上記特許文献2の発明における欠点は、レンズ(2)の外周(3)箇所が鏡枠本体(1)の凸平面部(1b)と凸状かしめ部(1c)が押圧熱変形される際に、隙間なく内径部(1d)に挿入されているレンズ(2)の周縁部のコーナー部が、かしめ加工の際にカシメベロ部に押圧されレンズ(2)にかしめ加工による歪を与えてしまう事である。また、このことはアルミや真鍮等の金属環状リングを切削加工して製作されるレンズ鏡枠本体(1)においても同様の現象がみられる他、上記特許文献2の如く合成樹脂からなるレンズ鏡枠本体(1)においては、熱かしめによりレンズ(2)が固定される構成のレンズ鏡枠であり、加熱状態のかしめ用金型(3)を降ろして平面かしめ部(3)にて加熱しながら押圧変形させる際に固着されるレンズ(2)には、凸平面部(1b)、凸状かしめ部(1c)、内径部(1)を介して熱が直接伝わりレンズ(2)に熱歪を与えてしまうと云う欠点がある。
次に、本発明の明細書における図5、及び図6(A)、(B)は、アルミや真鍮等の環状リングを切削して製造する金属製のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構の従来例を説明するものである。
図5は、フィルター枠本体とレンズ鏡筒の装着位置説明図であり、図6(A)、(B)は、従来のフィルターレンズ保持機構における製造工程、並びに加工後の保持機構を説明するもので、図6(A)、(B)は、図5のA−A部分拡大断面図である。
図5において、51はフィルター枠本体、52はフィルターレンズ、53はデジタルカメラ本体、54はカメラレンズ鏡筒を示しており、前記フィルター枠本体51を中心にして、55は入射光側、56はカメラレンズ鏡筒側、Cはフィルター枠本体とカメラレンズ鏡筒の光軸を示している。
そして、前記フィルター枠本体51に内蔵されるフィルターレンズ52には、レンズ保護用のフィルター、円偏光フィルター、光量減少用フィルターや、特殊効果をもたらす光条効果用フィルター、被写体を柔らかく表現できるソフトフォーカス用フィルター等の各種フィルターレンズが用いられている。
図6(A)、(B)において、51はフィルター枠本体でアルミや真鍮から成る金属製の環状リングを切削加工にて製造される。また、52はフィルターレンズ、tはフィルター枠本体51の厚さ、55はフィルター枠本体の入射光側、56はフィルター枠本体のカメラレンズ鏡筒側を示しており、前記フィルター枠本体51はフィルター枠本体を略二分して入射光側55を前筒枠57、カメラレンズ鏡筒側56を後筒枠58として一体的に形成されている。
フィルター枠本体1の前筒枠57の内径部分59には、フード等のアタッチメント装着用の雌ネジ部60が螺設されており、該雌ネジ部60のネジ基部には、逃げ溝61が刻設されている。そして、逃げ溝61は雌ネジ部60に螺合するアタッチメントの雄ネジがゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面62に当接する構成で、前記アタッチメントの雄ネジが固くかみ合うことなく前筒枠57の雌ネジ部60に着脱自在に螺合操作可能である。
次に、フィルター枠本体51の後筒枠58の外周部63には、カメラレンズ鏡筒54への装着用雄ネジ部64が螺設されており、該雄ネジ部64のネジ基部には、逃げ溝65が刻設されている。そして、この逃げ溝65は、雄ネジ部64が螺合するカメラレンズ鏡筒54の雌ネジにゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面66に当接する構成を有しており、前記カメラレンズ鏡筒54の先端部にフィルター枠本体51の雄ネジ部64が固くかみ合うことなく着脱自在に螺合操作可能である。
また、前記前筒枠57と後筒枠58の中間接合部内側67には環状のフィルターレンズ保持環部68が光軸C方向に突出した環状にて設けられ、該フィルターレンズ保持環部68の先端縁部にはフィルターレンズ52のフィルターレンズ前縁枠69が設けられている。
而して、前記フィルターレンズ前縁枠69の後方部(カメラレンズ鏡等側56)には、図6(A)に示す如くカシメベロ部70が円環状切削溝71を刻設することにより形成されており、該カシメベロ部70は外周先端部にカシメ補助用のテーパー72を有して光軸Cを中心に環状の筒形状に配置され、また、前記筒形状のカシメベロ部70の内径部にはフィルターレンズ52を嵌合可能なフィルターレンズ嵌合部73が形成されている。
前記フィルターレンズ嵌合部73の内径部に嵌合されたフィルターレンズ52は、カシメベロ部70のテーパー72部を環状のカシメ用金型74のテーパー部75とカシメ部76により加圧変形され、図6(B)に示す如くカシメベロ部70のテーパー72の先端部をカシメ加工され、フィルターレンズ52は、前記フィルターレンズ前縁枠69とカシメ加工されたカシメベロ部70間にて挟持されるフィルターレンズの保持機構である。
斯くして、図6(A)、(B)に示す従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型74によりカシメベロ部70の先端部をカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分が直接フィルターレンズ52の後周縁部に設けたコーナー部77に接触しており、カシメ加工時においては前記コーナー部77が支点となってしまいフィルターレンズ前縁部69にもカシメ加工のための加圧変形力がかかることになり、フィルターレンズ前縁部69やフィルターレンズ前縁部69を形成するフィルターレンズ保持環部68の厚さは、大きな厚さt2を有する丈夫な形状が必要とされている。
従って、フィルター枠本体51の厚さtを雌ネジ部60と逃げ溝61の最小機能(雌ネジの螺合とストッパー機能)厚t1で構成された前筒枠57、雄ネジ部63と逃げ溝65の最小機能(雄ネジの螺高とストッパー機能)厚t3で構成された後筒枠58に厚め構成されたフィルターレンズ保持環部68の厚さt2を加えることは、全体として、フィルター枠本体51の光軸方向の厚さtを大きくしてしまいケラレが発生し易い要因を作ってしまう欠点が生じている。
また、従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用のカシメベロ部70全体を製作するにあたり、円環状切削溝71を刻設することにより形成されるものである。従って、円環状切削溝71は光軸C方向に深く切削してカシメベロ部70を形成し、且つ、円環状切削溝71にカシメ用金型74を挿入して加圧変形加工をするものであることから、該円環状切削溝71はその内径寸法φ2を大きく設定して刻設する必要がある。そして、円環状切削溝71の内径φ2を大きく、該円環状切削溝71の幅Wを幅広に形成することが必要となり、前記フィルターレンズ保持環部58の先端縁部に設けられるフィルターレンズ前縁枠59の内径を光軸C方向に移行させることになり、フィルター口径φが決められたフィルター枠本体51において、その有効径φ3を著しく小さくしてしまいケラレの発生要因を作ってしまう欠点を生じせしめている。
更に、図6(A)、(B)に示す従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型74によりカシメベロ部70の先端部を90度に折り曲げてカシメ加工するもので、その曲げ角度は大きくなる。また、従来例は、カシメによる折り曲げ部分が直接フィルターレンズ52の後周縁部やコーナー部77にも接触しており、カシメ加工時にはコーナー部77が支点となってしまうので、前記フィルターレンズ52にはカシメ加工のための加圧変形力が歪として加えることになり、その物理的な歪はフィルターレンズ52の保持精度やフィルターレンズ面の変形をさせることになりフィルターレンズの保持機構に悪影響をおよぼしている。
本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルター枠の光軸方向の寸法、即ちフィルター枠の厚さを薄型に形成することができ、また、フィルター口径の決まったフィルターにおいてフィルター枠内に内蔵されるフィルターレンズの有効径を最大限大きく取ることの可能なフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を提供して、望遠レンズや広角レンズの前面に装着してもケラレにくいフィルター枠を提供するものである。そして、本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルターレンズをフィルター枠内に内蔵、保持する際の固着時において、当該フィルターレンズには、物理的な歪や加熱による歪を付加しない状態にてフィルター枠内に各種のフィルターレンズを保持可能なカシメ加工手段を提供するものである。
本発明に係るフィルター枠は、特にレンズ保護用のフィルター、円偏光フィルター、光量減少用フィルターや、特殊効果をもたらす光条効果用フィルター、被写体を柔らかく表現できるソフトフォーカス用フィルター等、利用価値の大きなデジタルカメラ用の各種フィルターレンズの保持機構に関するものである。
デジタル1眼レフカメラの普及に伴いファインダーや液晶画面でフィルターの使用効果をダイレクトに確認しながら撮影することや、種々の交換レンズを装着し、その交換レンズ鏡筒先端部に各種効果を有するフィルターを装着してカメラ撮影を楽しむことが可能になってきた。
然しながら、フィルターは、フィルター枠本体内に各種の効果を有する円盤状のフィルターレンズを内蔵、保持し、該フィルター枠本体の入射光側の内径には、その前縁部から後方に向けてフード等のアタッチメントや異なるフィルターの重ね合わせ用に雌ネジ部が螺設してある前筒枠部が形成されており、また、フィルター枠本体のカメラレンズ鏡筒側の外径にはカメラレンズ鏡筒内径部に設けられた装着用の雌ネジ部に螺着される雄ネジ部が螺設してある後筒枠部が形成されている。
従って、フィルター枠本体における光軸方向の寸法、即ちフィルター枠本体の厚さは、前記雌ネジ部が螺設された前筒枠部と、フィルターレンズの厚さ、並びにフィルターレンズ保持用の環状リングの厚さ、そしてカメラレンズ鏡筒側内径部に螺着される後筒枠部を加えたものから構成されており、従来のフィルター枠は、どうしてもフィルター枠の厚さが厚くなり、該フィルター枠はカメラレンズ鏡筒先端部に装着して用いるとケラレ現象を生じせしめてしまうと云う欠点がある。
また、フィルターは、決められたフィルター口径を有するフィルター枠本体内に円盤状のフィルターレンズを保持する機構が必要であり、該フィルターレンズの保持機構は、例えばフィルター保持用の押さえ環やリングスプリングを用いる方法、或いはフィルターレンズ後枠の一部をカシメることにより固定する方法等が知られている。そして、前記カシメによるフィルター保持機構においては、フィルター枠本体の入射光側内径部に環状に突出した環状縁部を設け、該環状縁部の後方にフィルターレンズを嵌着した後、該フィルターレンズの後方周縁部をカシメ用金型工具やカシメ用加熱工具にてカシメ加工することによりフィルターレンズをフィルター枠本体内に固着、保持している。
而して、上記カシメ加工によるフィルターレンズの固着方法では、フィルター枠本体の入射光側内径部に設けられる環状縁部がフィルターレンズの後部に設けられるカシメベロ部の形状加工や、カシメ加工を行う際のカシメ用金型工具の外径寸法やカシメ用加熱工具の外径寸法により制限されてしまうためにフィルターレンズの環状縁部が構成する有効径が縮小されて一般的に小さくなり、折角、フィルター枠本体を薄く製作してもフィルターレンズの有効径が小さくなることでケラレ現象を生じせしめてしまう欠点が発生する。
更に、従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型によりカシメベロ部の先端部を折り曲げてカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分が直接フィルターレンズの周縁部に接触しており、該フィルターレンズの周縁部におけるコーナー部が支点となりカシメ加工においては、前記フィルターレンズにカシメ加工のための加圧変形力が歪として加えることになり、その物理的な歪はフィルターレンズの保持精度やフィルターレンズ面の変形をさせることになりフィルターレンズの保持機構に悪影響をおよぼしている。
斯くして、本発明は、従来のカシメ加工による欠点を解消するもので、上述したカシメ加工によるフィルターの製造方法は、アルミや真鍮等の金属製環状リングを切削加工にてフィルター枠本体を製作し、フィルターレンズを物理的なカシメ加工にて嵌着して製作する場合と、高分子化合物からなる熱可塑性樹脂や繊維強化プラスチックスなどの複合樹脂を成形加工してリング形状のフィルター枠本体を製作し、フィルターレンズを熱カシメ加工により嵌着して製作する場合に採用されて大きな効果を発揮することができる。
斯くして、本発明において、カメラレンズ鏡筒先端部に装着されるフィルター枠本体は、円環状のフィルター枠本体を略二分して入射光側を前筒枠としカメラレンズ鏡筒側を後筒枠として形成し、前記前筒枠には入射光側より前筒枠内径部にアタッチメント装着用の雌ネジ部を螺設し、また前記後筒枠の外周部にはカメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部が螺設され、該雌ネジ部と雄ネジ部からなるフィルター枠本体の中央部内部側にはフィルターレンズ保持環部が光軸側に突出して設けられ、該フィルターレンズ保持環部の先端部には環状のフィルターレンズ前縁枠が設けられ、該フィルターレンズ前縁枠の後部嵌合枠にてフィルターレンズを嵌着保持し、該後部嵌合枠にて嵌着保持されたフィルターレンズを後方の裏面にて挟持するカシメベロ部は前記フィルターレンズ前縁枠の後部よりL字型形状を有してフィルターレンズの光軸C方向に延びる環状体を形成し、該L字型形状のカシメベロ部先端部内径側には前記フィルターレンズの後端部に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズの円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズの円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝を刻設して前記カシメベロ部の加圧変形時にカシメベロ部の変形部がフィルターレンズの円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成することが好ましい。
また、本発明において、前記フィルターレンズ前縁枠の後部にて嵌着保持されるフィルターレンズの後端部には、前記L字型形状のカシメベロ部先端部内径側に設けられるカシメ当接部が当接するように少なくともフィルターレンズの光軸Cに対して45度程度の傾きを有する面取り当接面を設けており、該フィルターレンズの面取り当接面に前記カシメベロ部のカシメ当接部がカシメ加工により当接してフィルターレンズを前記フィルターレンズ前縁枠とカシメベロ部のカシメ当接部間で挟持するよう構成することが好ましい。
そして、本発明における前記L字型形状のカシメベロ部先端部内径側には、フィルターレンズの後端部面取り部に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズの円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズの円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝を刻設し、該曲げ変形用円周溝の底部断面形状が半円形の形状を有しており前記カシメベロ部の加圧変形時にカシメベロ部の変形部がフィルターレンズの円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成することが好ましい。
また、本発明における前記L字型形状のカシメベロ部先端部内径側には、フィルターレンズの後端部面取り部に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズの円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズの円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝を刻設し、該曲げ変形用円周溝の底部断面形状が台形の形状を有しており前記カシメベロ部の加圧変形時にカシメベロ部の変形部がフィルターレンズの円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成することが好ましい。
更に本発明における前記L字型形状のカシメベロ部先端部内径側には、フィルターレンズの後端部面取り部に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズの円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズの円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝を刻設し、該曲げ変形用円周溝の底部断面形状がV字型の形状を有しており前記カシメベロ部の加圧変形時にカシメベロ部の変形部がフィルターレンズの円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成されている。
更にまた、本発明は、フィルターレンズ前縁枠の後部にてフィルターレンズを嵌着保持し、該嵌着保持されたフィルターレンズを後部にて挟持するカシメベロ部は前記フィルターレンズ前縁枠の後部より外観が円錐台型形状を有してフィルターレンズの後方へ延びる環状体を形成し、該円錐台型形状のカシメベロ部先端部内径側には前記フィルターレンズの後端部面取り当接部に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズの円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルターレンズの円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝を刻設し、該曲げ変形用円周部の底部段面形状が半円形や台形或いはV字型の形状を有して前記カシメベロ部の加圧変形時にカシメベロ部の変形部がフィルターレンズの円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成することが好ましい。
そして、本発明は、前記フィルターレンズ本体のフィルター保持機構を構成する前筒枠、後筒枠、アタッチメント装着用の雌ネジ部、カメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部、フィルターレンズ保持環部、フィルターレンズ前縁部、カシメベロ部をアルミ及び真鍮から成る金属製環状リングを切削加工して一つのフィルター枠を製作し、前記カシメベロ部の加工はカシメ用金型工具によりカシメ加工することが好ましい。
また、本発明は、前記フィルターレンズ本体のフィルター保持機構を構成する前筒枠、後筒枠、アタッチメント装着用の雌ネジ部、カメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部、フィルターレンズ保持環部、フィルターレンズ前縁部、カシメベロ部を高分子化合物により一つのフィルター枠として成形して製作し、前記カシメベロ部の加工は熱カシメ用金型工具によりカシメ加工することがこのましい。
斯くして、本発明は、フィルター枠の光軸方向の寸法、即ちフィルター枠の厚さを薄型に形成したデジタルカメラ用のフィルター枠を提供し、該フィルター枠は、望遠レンズや広角レンズに装着してもケラレにくいフィルター枠を提供可能にした。
また、本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルター口径の決まったフィルターにおいて、フィルター枠内に内蔵されるフィルターレンズの有効径を最大限大きく取ることの可能なフィルターレンズの保持機構を提供して、望遠レンズや広角レンズの前面に装着してもケラレにくいフィルター枠を提供可能にした。
更に、本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルターレンズをフィルター枠内に内蔵、保持する際の固着時において、当該フィルターレンズには、物理的な歪や加熱による歪を付加しない状態にてフィルター枠内に各種のフィルターレンズを保持可能なカシメ加工手段を提供可能にし、フィルターレンズ2の保持精度の向上やフィルターレンズ面に変形を与えないフィルターレンズの保持機構を提供することが可能である。
そして、本発明おいては、カメラレンズ鏡筒先端部に装着されるフィルター枠を薄型に製作することができるので、フィルターの重量を軽量化して、オートフォーカス用モーターの負担を軽減することが可能なフィルターを提供することができる。
更に、本発明は、部品数をフィルター本体の部品とフィルターレンズの組み合わせと云ったように極端に軽減することができ、コストダウンと組立効率の向上をはかることができた。
図1は、本発明の実施例1を説明するフィルター枠の要部断面図であり、該フィルター枠はデジタルカメラのレンズ鏡筒前面に装着して使用される。そして、図2(A)は、図1のA−A部分拡大断面図、図2(B)は、図2(A)の拡大断面図でカシメ加工完了状態を示す説明図である。
図1において、1はフィルター枠本体、2はフィルターレンズを示しており、前記フィルター枠本体1を中心にして、3は入射光側、4はカメラレンズ鏡筒側、Cはフィルター枠本体の光軸を示している。尚、図1において、tはフィルター枠本体の厚さ、φ1はフィルター口径、φ3はフィルターレンズの有効径を示している。
そして、前記フィルター枠本体1に内蔵されるフィルターレンズ2には、レンズ保護用のフィルター、円偏光フィルター、光量減少用フィルターや、特殊効果をもたらす光条効果用フィルター、被写体を柔らかく表現できるソフトフォーカス用フィルター等の各種フィルターレンズが用いられている。
而して、実施例1はレンズ鏡筒の前面に装着されるフィルター枠本体1の光軸方向Cの寸法、即ちフィルター枠本体1の厚さtを薄型に形成することができ、また、フィルター口径φ1の決まったフィルターにおいてフィルター枠本体1内に内蔵されるフィルターレンズの有効径φ3を最大限大きく取ることの可能なフィルター枠本体1におけるフィルターレンズ2の保持機構を提供して、望遠レンズや広角レンズの前面に装着してもケラレにくいフィルター枠本体1を提供するものである。また、本発明におけるフィルターレンズ2の保持機構は、フィルターレンズ2をフィルター枠本体1内に内蔵、保持する際の固着時において、当該フィルターレンズ2には、物理的な歪を付加しない状態にてフィルター枠本体1内に各種のフィルターレンズ2を保持可能なカシメ加工機構を提供するものである。
図2(A)、(B)において、1はフィルター枠本体でアルミや真鍮による金属製の環状リングを切削加工にて製造される。また、2はフィルターレンズ、tはフィルター枠本体1の厚さ、3はフィルター枠本体の入射光側、4はフィルター枠本体のカメラレンズ鏡筒側を示しており、前記フィルター枠本体1はフィルター枠本体1を略二分して入射光側3を前筒枠5、カメラレンズ鏡筒側4を後筒枠6として一体的に形成されている。
フィルター枠本体1の前筒枠5の内径部7には、フード等のアタッチメント装着用の雌ネジ部8が螺設されており、該雌ネジ部8のネジ基部には、逃げ溝9が刻設されている。そして、逃げ溝9は雌ネジ部8に螺合するアタッチメントの雄ネジがゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面10に当接する構成で、前記アタッチメントの雄ネジが固くかみ合うことなく前筒枠5の雌ネジ部8に着脱自在に螺合操作可能である。
次に、フィルター枠本体1の後筒枠6の外周部11には、カメラレンズ鏡筒への装着用雄ネジ部12が螺設されており、該雄ネジ部12のネジ基部には、逃げ溝13が刻設されている。そして、この逃げ溝13は、雄ネジ部12が螺合するカメラレンズ鏡筒の雌ネジにゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面14に当接する構成を有しており、前記カメラレンズ鏡筒の先端部にフィルター枠本体1の雄ネジ部12が固くかみ合うことなく着脱自在に螺合操作可能である。
また、前記前筒枠5と後筒枠6の中央部内部側15には環状のフィルターレンズ保持環部16が光軸C側に突出した環状にて設けられ、該フィルターレンズ保持環部16の先端縁部にはフィルターレンズ2のフィルターレンズ前縁枠17が設けられている。
而して、前記フィルターレンズ前縁枠17の後方部には、図2(A)に示す如くカシメベロ部18が円環状切削溝19と曲げ変形用円周溝20を刻設することにより形成されており、該カシメベロ部18はカメラレンズ鏡筒側に開口する円環状切削溝19と前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20の刻設によりフィルターレンズ前縁枠17の後部よりL字型形状を有してフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を有するカシメベロ部18を形成している。
また、前記フィルターレンズ前縁枠17の後部にて嵌着保持されるフィルターレンズ2の後端部には前記L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側に設けられるカシメ当接部21が当接するように少なくともフィルターレンズ2の光軸Cに対して45度程度の傾きを有する面取り当接面22を設けており、該フィルターレンズの面取り当接面22にカシメベロ部18のカシメ当接部21がカシメ加工により当接してフィルターレンズ2を前記フィルターレンズ前縁枠17とカシメベロ部18のカシメ当接部21間で挟持するよう構成されている。
尚、前記カシメベロ部18は環状のカシメ用金型23のテーパー部24とカシメ部25により加圧変形されるもので、図(B)に示す如くカシメベロ部18の当接部21の先端部をフィルターレンズの面取り当接面22に当接する物理的なカシメ加工が施される。
従って、実施例1は、カメラレンズ鏡筒先端部に装着されるフィルター枠本体1は円環状のフィルター枠本体を略二分して入射光側3を前筒枠5としカメラレンズ鏡筒側4を後筒枠6として形成し、前記前筒枠5には入射光側3より前筒枠5の内径部7にアタッチメント装着用の雌ネジ部8を螺設し、また前記後筒枠6の外周部11にはカメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部が螺設され、該雌ネジ部と雄ネジ部12からなるフィルター枠本体1の中央部内部側15にはフィルターレンズ保持環部16が光軸C側に突出して設けられ、該フィルターレンズ保持環部16の先端部には環状のフィルターレンズ前縁枠17が設けられ、該フィルターレンズ前縁枠17の後部嵌合枠17aにてフィルターレンズ2を嵌着保持し、該後部嵌合枠17aに嵌着保持されたフィルターレンズ2を後方裏面にて挟持するカシメベロ部18は前記フィルターレンズ前縁枠17の後部よりL字型形状を有してフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を形成し、該L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側には前記フィルターレンズ2の後端部に当接してフィルターレンズ2を挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部21の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部18の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設して前記カシメベロ部18の加圧変形時にカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構である。
斯くして、図2(A)、(B)に示す実施例1のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型23によりカシメベロ部18の先端部をカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分が直接フィルターレンズ2の後周縁部等に接触しておらず、カシメ加工時においてはフィルターレンズ前縁枠17にはカシメ加工のための加圧変形力がかかることがなくなり、フィルターレンズ前縁部17やフィルターレンズ前縁部17を形成するフィルターレンズ保持環部16の厚さt2は、カシメ加工時に力がかかることがないので薄い形状にすることができる。
従って、フィルター枠本体1の厚さtは、雌ネジ部8と逃げ溝9の最小機能で構成した前筒枠5の厚さt1と雄ネジ部12と逃げ溝13の最小機能で構成した後筒枠6の厚t3に、従来よりも薄く製作可能なフィルターレンズ保持環部16の厚さt2を加えることになり、全体として、フィルター枠本体1の光軸方向の厚さtを最小限小さくすることができ、従来のフィルター枠に比較してケラレが発生し難いフィルターレンズの保持機構を提供することが可能になる。
また、従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用のカシメベロ部全体を製作するにあたり、円環状切削溝を刻設するものであり、該円環状切削溝は光軸C方向に深く切削してカシメベロ部を形成するもので、且つ、円環状切削溝はカシメ用金型を挿入して加圧変形加工をするもので、該円環状切削溝は切削加工時においてその円環状切削溝の内径φ2寸法及び円環状切削溝の幅Wを大きく設定して刻設する必要があったが、本発明におけるカシメベロ部18の形状は、カメラレンズ鏡筒側に開口する円環状切削溝19と前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20の刻設によりフィルターレンズ前縁枠17の後部よりL字型形状を有してフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を有するカシメベロ部18を形成するものであり、前記円環状切削溝19の深さを非常に浅く構成でき、また円環状切削溝19の幅Wを小さく形成できるので、前記フィルターレンズ保持環部16の先端縁部に設けられるフィルターレンズ前縁部17の内径を大きくすることができ、フィルター口径φが決められたフィルター枠本体1において、そのフィルターレンズの有効径φ3を著しく大きくしてケラレが発生し難いフィルターレンズの保持機構を提供することが可能になる。
更に、図2(A)、(B)に示す本発明のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型23によりカシメベロ部18の先端部を折り曲げてカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分は前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20により大きな空間を形成して直接フィルターレンズ2の後周縁部においてコーナー部等に接触していないことから、前記フィルターレンズ2にカシメ加工のための加圧変形力が歪としてフィルターレンズ2に与えることがなく、フィルターレンズ2の保持精度やフィルターレンズ面の変形をさせることのないフィルターレンズの保持機構を提供できる。
次に実施例1をより利用しやすいようにした具体例を図3(A)、(B)、(C)により説明する。図3(A)、(B)、(C)において、図2と同一符号は、同一構成要素を示しており、カメラレンズ鏡筒先端部に装着されるフィルター枠本体1は円環状のフィルター枠本体を略二分して入射光側3を前筒枠5としカメラレンズ鏡筒側4を後筒枠6として形成し、前記前筒枠5には入射光側3より前筒枠5内径部7にアタッチメント装着用の雌ネジ部8を螺設し、また前記後筒枠6の外周部11にはカメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部12が螺設され、該雌ネジ部8と雄ネジ部12からなるフィルター枠本体1の中央部内部側15にはフィルターレンズ保持環部16が光軸C側に突出して設けられ、該フィルターレンズ保持環部16の先端部には環状のフィルターレンズ前縁枠17が設けられ、該フィルターレンズ前縁枠17の後部嵌合枠17aにてフィルターレンズ2を嵌着保持し、該後部嵌合枠17aに嵌着保持されたフィルターレンズ2を後方の裏面にて挟持するカシメベロ部18は前記フィルターレンズ前縁枠17の後部よりL字型形状を有してフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を形成し、該L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側には前記フィルターレンズ2の後端部に当接してフィルターレンズ2を挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部18の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設して前記カシメベロ部18の加圧変形時にカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構である。
そして、具体例1は、図3(A)に示すごとく、前記L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側にはフィルターレンズ2の後端部面取り当接面22に当接してフィルターレンズを挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部21の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設し、該曲げ変形用円周溝20の底部断面形状が半円形形状の曲げ変形用円周溝底部26を有しており、前記カシメベロ部18の加圧変形時に想像線にて示す如くカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ2面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を提供するものである。
また、具体例2は、図3(B)に示す如く、前記L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側にはフィルターレンズ2の後端部面取り当接面22に当接してフィルターレンズ2を挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部21の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部18の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設し、該曲げ変形用円周溝20の底部断面形状が台形形状の曲げ変形用円周溝底部27を有しており、前記カシメベロ部18の加圧変形時に想像線にて示す如くカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を提供するものである。
また、具体例3は、図3(C)に示す如く、前記L字型形状のカシメベロ部18の先端部内径側にはフィルターレンズ2の後端部面取り当接面22に当接してフィルターレンズ2を挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部21の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部18の内径部が接触しないように前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設し、該曲げ変形用円周溝20の底部断面形状がV字型形状の曲げ変形用円周溝底部28を有しており、前記カシメベロ部18の加圧変形時に想像線にて示す如くカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を提供するものである。
図4(A)、(B)は本発明の実施例2を説明するものであり、前記図2と同一符号は同一構成要素を示している。図4(A)、(B)において、1はフィルター枠本体でアルミや真鍮による金属製の環状リングを切削加工にて製造される。また、2はフィルターレンズ、tはフィルター枠本体1の厚さ、3はフィルター枠本体の入射光側、4はフィルター枠本体のカメラレンズ鏡筒側を示しており、前記フィルター枠本体1はフィルター枠本体1を略二分して入射光側3を前筒枠5、カメラレンズ鏡筒側4を後筒枠6として一体的に形成されている。
フィルター枠本体1の前筒枠5の内径部7には、フード等のアタッチメント装着用の雌ネジ部8が螺設されており、該雌ネジ部8のネジ基部には、逃げ溝9が刻設されている。そして、逃げ溝9は雌ネジ部8に螺合するアタッチメントの雄ネジがゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面10に当接する構成で、前記アタッチメントの雄ネジが固くかみ合うことなく前筒枠5の雌ネジ部8に着脱自在に螺合操作可能である。
次に、フィルター枠本体1の後筒枠6の外周部11には、カメラレンズ鏡筒への装着用雄ネジ部12が螺設されており、該雄ネジ部12のネジ基部には、逃げ溝13が刻設されている。そして、この逃げ溝13は、雄ネジ部12が螺合するカメラレンズ鏡筒の雌ネジにゆとりを持って螺着されネジ基部に設けられたストッパー面14に当接する構成を有しており、前記カメラレンズ鏡筒の先端部にフィルター枠本体1の雄ネジ部12が固くかみ合うことなく着脱自在に螺合操作可能である。
また、前記前筒枠5と後筒枠6の中央部内部側15には環状のフィルターレンズ保持環部16が光軸C側に突出した環状にて設けられ、該フィルターレンズ保持環部16の先端縁部にはフィルターレンズ2のフィルターレンズ前縁枠17が設けられている。
而して、前記フィルターレンズ前縁枠17の後部嵌合枠17aには、フィルターレンズ2を嵌着保持しており、該後部嵌合枠17aの後方には、図4(A)に示す如くカシメベロ部18が円環状切削溝19と曲げ変形用円周溝20を刻設することにより形成されており、該カシメベロ部18はカメラレンズ鏡筒側に開口する円環状切削溝19と前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20の刻設によりフィルターレンズ前縁枠17の後部よりフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を有するカシメベロ部18を形成している。
また、前記フィルターレンズ前縁枠17の後部にて嵌着保持されるフィルターレンズ2の後端部には前記カシメベロ部18の先端部内径側に設けられるカシメ当接部21が当接するように少なくともフィルターレンズ2の光軸Cに対して45度程度の傾きを有する面取り当接面22を設けており、該フィルターレンズの面取り当接面22にカシメベロ部18のカシメ当接部21がカシメ加工により当接してフィルターレンズ2を前記フィルターレンズ前縁枠17とカシメベロ部18のカシメ当接部21間で挟持するよう構成されている。
尚、前記カシメベロ部18は環状のカシメ用金型23のテーパー部24とカシメ部25により加圧変形されるもので、図(B)に示す如くカシメベロ部18の当接部21の先端部をフィルターレンズの面取り当接面22に当接する物理的なカシメ加工が施される。
実施例2は、前記フィルターレンズ前縁枠17の後部にてフィルターレンズ2を嵌着保持し、該嵌着保持されたフィルターレンズ2を後部にて挟持するカシメベロ部18は前記フィルターレンズ前縁枠17の後部より外観が円錐台型形状29を有してフィルターレンズ2の後方へ延びる環状体30を形成し、該円錐台型形状29のカシメベロ部18の先端部内径側には前記フィルターレンズ2の後端部面取り当接面22に当接してフィルターレンズ2を挟持するためのカシメ当接部21を設け、該カシメ当接部21の曲げ変形部位には前記フィルターレンズ2の円周縁部にカシメベロ部18の内径部が接触しないように前記フィルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20を刻設し、該曲げ変形用円周溝20の底部段面形状が半円形や台形或いはV字型の形状を有して前記カシメベロ部18の加圧変形時にカシメベロ部18の変形部がフィルターレンズ2の円周縁部やフィルターレンズ面に接触しないよう構成したフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を提供するものである。
斯くして、図4(A)、(B)に示す実施例2のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型23によりカシメベロ部18の先端部をカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分が直接フィルターレンズ2の後周縁部等に接触しておらず、カシメ加工時においてはフィルターレンズ前縁枠17にはカシメ加工のための加圧変形力がかかることがなくなり、フィルターレンズ前縁部17やフィルターレンズ前縁部17を形成する後部嵌合枠17aの厚さt2は、薄い形状でも可能になる。
従って、フィルター枠本体1の厚さtは、雌ネジ部8と逃げ溝9の最小機能で構成した前筒枠5の厚さt1と雄ネジ部12と逃げ溝13の最小機能で構成した後筒枠6の厚t3に従来よりも薄く製作可能なフィルターレンズ保持環部16の厚さt2を加えることになり、全体として、フィルター枠本体1の光軸方向の厚さtを最小限小さくすることができ、従来のフィルター枠に比較してケラレが発生し難いフィルターレンズの保持機構を提供することが可能になる。
また、従来のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構が、カシメ用のカシメベロ部全体を製作するにあたり、円環状切削溝19を刻設することにより形成されており、該円環状切削溝19は光軸C方向に深く切削して形成し、且つ、円環状切削溝にカシメ用金型を挿入して加圧変形加工をするものであり、該円環状切削溝はその円環状切削溝の内径寸法φ2を大きく設定して切削加工する必要があったが、本発明におけるカシメベロ部18の形状は、カメラレンズ鏡筒側に開口する円環状切削溝19と前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20の刻設によりフィルターレンズ前縁枠17の後部より外観が円錐台形状を有してフィルターレンズ2の光軸C方向に延びる環状体を有するカシメベロ部18を形成するものであり、前記円環状切削溝19の深さを浅く構成でき、該円環状切削溝19の幅Wを小さく形成できるので、前記フィルターレンズ保持環部16の先端縁部に設けられるフィルターレンズ前縁部17の内径を大きくすることが可能となり、フィルター口径φが決められたフィルター枠本体1において、そのフィルターレンズの有効径φ3を著しく大きくしてケラレが発生し難いフィルターレンズの保持機構を提供することが可能になる。
更に、図4(A)、(B)に示す本発明のフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構は、カシメ用金型23によりカシメベロ部18の先端部を折り曲げてカシメ加工する際に、カシメによる折り曲げ部分が前記フィルルターレンズ2の円周縁部方向に開口する曲げ変形用円周溝20の刻設により空隙部ができ直接フィルターレンズ52の後周縁部においてコーナー部等に接触していない構成となることから、前記フィルターレンズ2にカシメ加工のための加圧変形力が歪として与えることがなく、フィルターレンズ2の保持精度やフィルターレンズ面の変形をさせることのないフィルターレンズの保持機構を提供できる。
而して、本発明においては、実施例1、実施例2共にフィルターレンズ本体のフィルター保持機構を構成する前筒枠、後筒枠、アタッチメント装着用の雌ネジ部、カメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部、フィルターレンズ保持環部、フィルターレンズ前縁部、カシメベロ部をアルミや真鍮から成る金属製の環状リングを切削加工して一つのフィルター枠として製作し、前記カシメベロ部の加工はカシメ用金型工具によりカシメ加工するフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構を説明した。
然しながら、本発明はアルミや真鍮等における金属製のフィルター枠のみではなく、フィルターレンズ本体のフィルター保持機構を構成する前筒枠、後筒枠、アタッチメント装着用の雌ネジ部、カメラレンズ鏡筒への螺着用雄ネジ部、フィルターレンズ保持環部、フィルターレンズ前縁部、カシメベロ部を高分子化合物により一つのフィルター枠として成形して製作し、前記カシメベロ部の加工は熱カシメ用金型工具によりカシメ加工するフィルター枠におけるフィルターレンズの保持機構においても何ら問題もなく実施可能である。
本発明は、フィルター枠の光軸方向の寸法、即ちフィルター枠の厚さを薄型に形成したデジタルカメラ用のフィルター枠を提供し、該フィルター枠は、望遠レンズや広角レンズに装着してもケラレにくいフィルター枠を提供可能にした。
また、本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルター口径φ1の決まったフィルターにおいて、フィルター枠内に内蔵されるフィルターレンズの有効径φ3を最大限大きく取ることの可能なフィルターレンズの保持機構を提供して、望遠レンズや広角レンズの前面に装着してもケラレにくいフィルター枠を提供可能にした。
更に、本発明におけるフィルターレンズの保持機構は、フィルターレンズをフィルター枠内に内蔵、保持する際の固着時において、当該フィルターレンズには、カシメ用金属金型による物理的な歪や熱カシメ用金型の加熱による熱歪を付加しない状態にてフィルター枠内に各種のフィルターレンズを保持可能なカシメ加工手段を提供可能にし、フィルターレンズの保持精度の向上やフィルターレンズ面に変形を与えないフィルターレンズの保持機構を提供することができる。
そして、本発明おいては、カメラレンズ鏡筒先端部に装着されるフィルター枠を薄型に製作することができるので、フィルターの重量を軽量化して、オートフォーカス用モーターの負担を軽減することが可能なフィルターを提供することができる。
また、本発明は、部品数をフィルター本体の部品とフィルターレンズの組み合わせと云ったように極端に軽減することができ、フィルターの製作コストダウンと組立効率の向上をはかることが可能になった。