JP5431092B2 - ポリオレフィン製微多孔膜の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、触媒残渣量が300ppmである高密度ポリエチレンを含むポリエチレン組成物からなる微多孔膜が開示されている。
特許文献2には、品質に優れたポリオレフィン製微多孔膜が開示されている。
特許文献3には、分子量が50万以下のポリエチレンを使用したポリオレフィン製微多孔膜が開示されている。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、膜中の異物が少なく品質に優れ、かつ非水電解液系二次電池用セパレーターとして使用した際に良好なサイクル特性を示すポリオレフィン製微多孔膜の製造方法を提供することである。
[1]
下記(a)〜(d)の各工程、
(a)ポリオレフィン組成物を混練する、混練工程、
(b)混練されたポリオレフィン組成物からシートを成形する、シート成形工程、
(c)成形されたシートを延伸して延伸体を成形する、シート延伸工程、
(d)前記シート又は前記延伸体から微多孔膜を成形する、微多孔膜成形工程、
を有し、
前記ポリオレフィン組成物中に占めるアルミニウムの割合が20ppm以下であり、
前記ポリオレフィン組成物が、下記要件(1)〜(4):
(1)デカリン溶液を用いて測定した極限粘度[η]が7dl/g以上25dl/g未満であること、
(2)13C−NMR(核磁気共鳴法)で測定したメソペンタッド分率が90.0〜99.5%の範囲にあること、
(3)示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点が153〜167℃であること、
(4)o−ジクロロベンゼンを用いた昇温溶離分別(TREF)による溶出温度−溶出量曲線において、最大ピークのピークトップ温度が116〜125℃に存在し、かつ該ピークの半値幅が7.0℃以下であること、
を満たす超高分子量プロピレン単独重合体(A)を含まない、ポリオレフィン製微多孔膜の製造方法。
[2]
前記ポリオレフィン組成物中に占めるカルシウム、マグネシウム、亜鉛、及びバリウムの総量の割合が300ppm以下である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記ポリオレフィン組成物が、重量平均分子量が50万以下であるポリオレフィンを含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
アルミニウムの含有量は、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましい。アルミニウムの含有量が20ppm以下であると、本実施形態のポリオレフィン製微多孔膜を電池用セパレーターとして使用した場合に、サイクル特性が良好となる傾向にある。また、微多孔膜中の異物が減少する傾向にある。この理由は定かではないが、原料中にアルミニウムが多く残っている場合は、アルミニウムを起点としたゲルが生成し、異物になり易いためであると推察される。またそのような異物は、サイクル特性を低下させやすいものと推察される。
一方、アルミニウムの含有量の下限としては、特に限定されないが、電解塩の分解に由来し、電池反応に悪影響を与えるフッ化水素を吸着するという観点から、0.1ppm以上であることが好ましい。
前記含有量の合計としては、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下、更により好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。一方、下限としては、電解塩の分解に由来し、電池反応に悪影響を与えるフッ化水素を吸着するという観点から、0.1ppm以上であることが好ましい。
本実施の形態におけるポリオレフィン製微多孔膜の引張強度は、MD(押出機の機械方向、樹脂吐出方向)、TD(MDと直交する方向、膜幅方向)共に好ましくは5MPa以上500MPa以下、より好ましくは10MPa以上400MPa以下、更に好ましくは20MPa以上300MPa以下である。引張強度が5MPa以上であると、電池捲回時の張力に対して破断しにくくなり、500MPa以下であると収縮が小さくなる傾向にあり、正極と負極との隔離性を維持しやすい。
本実施の形態におけるポリオレフィン製微多孔膜の引張伸度は、MD、TD共に好ましくは20%以上500%以下であり、より好ましくは25%以上400%以下、更に好ましくは30%以上300%以下である。20%以上であると、異物に対して破断しにくく、500%以下であると電池捲回時にセパレーターが伸びにくくなり、捲回性が向上する。
本実施の形態におけるポリオレフィン製微多孔膜の製造方法は、下記(a)〜(d)の各工程、
(a)ポリオレフィン組成物を混練する、混練工程、
(b)混練されたポリオレフィン組成物からシートを成形する、シート成形工程、
(c)成形されたシートを延伸して延伸体を成形する、シート延伸工程、
(d)前記シート又は前記延伸体から微多孔膜を成形する、微多孔膜成形工程、を有する。
(a)工程は、例えば、ポリオレフィンと、必要に応じて可塑剤及び/又は無機材とを含むポリオレフィン組成物を混練する混練工程である。
(a)工程において用いられるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンのホモ重合体、又はエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及びノルボルネンよりなる群から選ばれる少なくとも2種以上のモノマーにて形成される共重合体、が挙げられる。これらは混合物でも構わない。
(b)工程は、混練工程の後に混練物(ポリオレフィン組成物)を押出し、シート状(単層、積層であることは問わない)に成形するシート成形工程である。シート成形の方法としては、例えば、溶融混練し押出された溶融物を、圧縮冷却により固化させる方法が挙げられる。冷却方法としては、冷風や冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法等が挙げられるが、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法が、膜厚制御が優れる点で好ましい。
(c)工程は、成形されたシートを延伸して延伸体を成形する、シート延伸工程である。
シートの延伸方法としては、ロール延伸機によるMD(延伸加工装置の延伸方向)一軸延伸、テンターによるTD(延伸加工装置の幅方向)一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターやインフレーション成形による同時二軸延伸等が挙げられる。より均一な膜を得るという観点からは、同時二軸延伸であることが好ましい。トータルの面倍率は、膜厚の均一性、引張伸度、気孔率と平均孔径のバランスの観点から、8倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、30倍以上が更に好ましい。トータルの面倍率が8倍以上であると、高強度となり、且つ、厚み分布が良好のものが得られ易くなる。
(d)工程は、前記シート、又は前記延伸体から微多孔膜を成形する、微多孔膜成形工程である。前記シート、又は前記延伸体から微多孔膜を成形する方法としては、
(イ)湿式法(予め配合していた可塑剤や無機材等を抽出して開孔する方法)、
(ロ)乾式法(ポリオレフィンのラメラ構造を利用し、延伸のみによって開孔する方法(ラメラ開孔法)、或いは、ポリオレフィンと無機材との界面を利用し、延伸のみによって開孔する方法(フィラー開孔法))、
のいずれも採用することができる。なお、これらは併用することも可能である。
一方、乾式法を採用する場合には、(c)工程が(d)工程を兼ねることができる。
なお、上記のような延伸工程を、(d)工程の後に、更に採用することも可能である。
また、電子線照射、プラズマ照射、界面活性剤塗布、化学的改質等の表面処理工程を採用することもできる。
なお、上述した各種パラメータについては、特に断りのない限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される。
(1)重量平均分子量
Waters社製 ALC/GPC 150C型(商標)を用い、以下の条件で測定し、標準ポリスチレンを用いて較正曲線を作成した。
カラム:東ソー製 GMH6−HT(商標)2本+GMH6−HTL(商標)2本
移動相:o−ジクロロベンゼン
検出器:示差屈折計
流速 :1.0ml/min
カラム温度:140℃
試料濃度:0.1wt%
(ポリエチレンの重量平均分子量)
得られた較正曲線における各分子量成分に0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗じることによりポリエチレン換算の分子量分布曲線を得、重量平均分子量を算出した。ポリプロピレンに関しては0.63を乗じた。
東洋精機製の微小測厚器、KBM(商標)を用いて室温23℃で測定した。
10cm×10cm角の試料をポリオレフィン製微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと密度(g/cm3)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、混合組成物の密度は、用いた原料の各々の密度と混合比より計算して求められる値を用いた。
JIS P−8117に準拠し、東洋精器(株)製のガーレー式透気度計、G−B2(商標)により測定した。
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで微多孔膜を固定した。次に固定された微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(N)を得た。
JIS K7127に準拠し、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について測定した。また、サンプルはチャック間距離を50mmとし、サンプルの両端部(各25mm)の片面にセロハンテープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29)を貼ったものを用いた。さらに、試験中のサンプル滑りを防止するために、引張試験機のチャック内側に厚み1mmのフッ素ゴムを貼り付けた。
引張破断伸び(%)は、破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(50mm)で除して100を乗じることにより求めた。引張破断強度(MPa)は、破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除すことで求めた。
なお、測定は、温度;23±2℃、チャック圧0.30MPa、引張速度;200mm/minで行った。
試料約0.2gをフッ素樹脂製の密閉式分解容器に秤取り、高純度硝酸5mLを添加して、マイクロウエーブ分解装置(マイルストーンゼネラル株式会社製、ETHOS TC。機番125571)による加熱(200℃、20分)後、超純水で50mLに定容した。
その後、ICP質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、Xシリーズ X7 ICP−MS。機番X0126)によって測定を行った。
定量方法は内標準法により、4点検量線;各元素濃度0、2、10、20μg/L(測定用検液を検量線範囲になるように希釈する。)によって行った。内標準元素;コバルト(Co)
得られたフィルム25cm×25cm中の、直径1mm以上の異物の数を目視で測定した。
(9−1)電池の作製
非水電解液の調製:エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製した。
帯状負極:負極活物質として人造グラファイト96.9質量%、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.7質量%を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m2,活物質嵩密度は1.35g/cm3になるようにし、帯状負極を得た。
帯状正極:正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を92.2質量%、導電材としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.3質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.2質量%をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、正極の活物質塗布量は250g/m2,活物質嵩密度は3.00g/cm3になるようにし、帯状正極を得た。
電池組立て:微多孔膜セパレーター,帯状正極及び帯状負極を、帯状負極、セパレーター、帯状正極、セパレーターの順に重ねて渦巻状に12回捲回することで電極板積層体を作製した。この電極板積層体を70℃の温度条件下2MPaで30秒間平板状にプレスし、電池捲回体を得た。
作製した電池捲回体をアルミニウム製容器に収納し、正極集電体から導出したアルミニウム製リードを容器壁に、負極集電体から導出したニッケル製リードを容器蓋端子部に接続した。この容器内に前記の非水電解液を注入して密閉した。こうして作製されるリチウムイオン電池は、縦(厚み)6.3mm,横30mm,高さ48mmの大きさであった。この電池容量は600mAhであった。
(9−2)サイクル特性
サイクル特性(500サイクル):容量維持率(%)として評価した。組立てた電池の初充放電として、先ず1/6Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後に4.2Vの定電圧を保持するように電流値を絞り始めて合計8時間の初充電を行い、次に1/6Cの電流で2.5Vの終止電圧まで放電を行った。続いてサイクル充放電として、(i)電流量0.5C、上限電圧4.2V、合計8時間の定電流定電圧充電、(ii)10分間の休止、(iii)電流量0.5C、終止電圧2.5Vの定電流放電、(iv)10分間の休止なるサイクル条件で都合50回の充放電を行った。以上の充放電処理は全て20℃の雰囲気下にて実施した。その後、上記初充電での放電容量に対する上記500サイクル目の放電容量の比を100倍することで、容量維持率(%)を求めた。
重量平均分子量が70万、アルミニウム濃度が30ppmである市販のポリエチレン樹脂を1Nの塩酸で洗浄ろ過し、十分に乾燥させた後、滑剤としてステアリン酸カルシウムを4000ppm(カルシウム濃度としては280ppm)添加した。こうして得られたアルミニウム濃度が15ppm、カルシウム濃度が280ppmであるポリエチレン(PE(a))に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1質量%添加し、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。得られたポリマー等混合物は窒素で置換を行った後に、二軸押出機へ窒素雰囲気下でフィーダーにより供給した。また流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5m2/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
溶融混練し、押し出される全混合物中に占める流動パラフィン量比が65質量%となるように(即ち、ポリマー濃度(「PC」と略記することがある)が35質量%となるように)、フィーダー及びポンプを調整した。溶融混練条件は、設定温度200℃であり、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hで行った。
続いて、溶融混練物を、T−ダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、原反膜厚1400μmのゲルシートを得た。
次に、ゲルシートを同時二軸テンター延伸機に導き、二軸延伸を行った。設定延伸条件は、MD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)、二軸延伸温度125℃であった。
次に、メチルエチルケトン槽に導き、メチルエチルケトン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後メチルエチルケトンを乾燥除去した。
次に、熱固定(「HS」と略記することがある)を行なうべくTDテンターに導き、熱固定温度125℃、延伸倍率1.4倍でHSを行い、その後、0.8倍の緩和操作(即ち、HS緩和率が0.8倍)を行った。
表1に示す条件以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。得られた微多孔膜について、各種特性を評価した。結果を下表1に示す。
Claims (3)
- 下記(a)〜(d)の各工程、
(a)ポリオレフィン組成物を混練する、混練工程、
(b)混練されたポリオレフィン組成物からシートを成形する、シート成形工程、
(c)成形されたシートを延伸して延伸体を成形する、シート延伸工程、
(d)前記シート又は前記延伸体から微多孔膜を成形する、微多孔膜成形工程、
を有し、
前記ポリオレフィン組成物中に占めるアルミニウムの割合が20ppm以下であり、
前記ポリオレフィン組成物が、下記要件(1)〜(4):
(1)デカリン溶液を用いて測定した極限粘度[η]が7dl/g以上25dl/g未満であること、
(2)13C−NMR(核磁気共鳴法)で測定したメソペンタッド分率が90.0〜99.5%の範囲にあること、
(3)示差走査熱量計(DSC)によって測定された融点が153〜167℃であること、
(4)o−ジクロロベンゼンを用いた昇温溶離分別(TREF)による溶出温度−溶出量曲線において、最大ピークのピークトップ温度が116〜125℃に存在し、かつ該ピークの半値幅が7.0℃以下であること、
を満たす超高分子量プロピレン単独重合体(A)を含まない、ポリオレフィン製微多孔膜の製造方法。 - 前記ポリオレフィン組成物中に占めるカルシウム、マグネシウム、亜鉛、及びバリウムの総量の割合が300ppm以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ポリオレフィン組成物が、重量平均分子量が50万以下であるポリオレフィンを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
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