JP5408585B2 - 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法 - Google Patents

鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5408585B2
JP5408585B2 JP2009159256A JP2009159256A JP5408585B2 JP 5408585 B2 JP5408585 B2 JP 5408585B2 JP 2009159256 A JP2009159256 A JP 2009159256A JP 2009159256 A JP2009159256 A JP 2009159256A JP 5408585 B2 JP5408585 B2 JP 5408585B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
delta
boundary
gamma
dendrite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009159256A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011011249A (ja
Inventor
秀幸 安田
知也 柳楽
真人 吉矢
憲章 中塚
明 杉山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Original Assignee
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka University NUC filed Critical Osaka University NUC
Priority to JP2009159256A priority Critical patent/JP5408585B2/ja
Publication of JP2011011249A publication Critical patent/JP2011011249A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5408585B2 publication Critical patent/JP5408585B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Description

本発明は鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法に関し、特にデンドライトの溶断機構を用いた鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法に関する。
鉄鋼製品は、一般的に結晶粒が小さいほど、また等軸晶化されているほど偏析が低減し、力学的特性や耐食性が向上する。しかし、結晶粒の微細化や等軸晶化は、その形成機構が必ずしも明確ではないため、経験的な知見に基づいて、以下に示すような種々の技術により、結晶粒の微細化を制御することが行われている。
例えば、結晶粒の核生成サイトとなる介在物を含有させて制御する技術として、鋼鋳片の製造に際してCaを含む金属酸化物を介在物として含有させる技術が開示されている(特許文献1)。
その他、結晶粒の核生成サイトとなる介在物として、TiN等を用いて制御する等の技術が実用化されている。
また、流動を付加して制御する技術として、連続鋳造において電磁撹拌ならびに圧下により、結晶粒の微細化や等軸晶化を図るだけでなく鋳片の中心偏析と内質欠陥を防止する技術が開示されている(特許文献2)。
その他、電磁力により生じた振動で微細化を図る技術も開示されている(非特許文献1)。
なお、溶解したFe−C系において、0.5mass%C以下の鉄鋼材料の冷却においては、デルタ相の液相線温度からbcc(体心立方格子、通常デルタ相と呼ばれる)が成長し、包晶温度(Fe−C系においては1493℃)において形成されるfcc(面心立方格子、通常ガンマ相と呼ばれる)が成長し、凝固が完了する。デルタ相ならびにガンマ相の凝固においてはデンドライト(樹枝状結晶)の形態になる。また、Fe−C系において0.5mass%Cより炭素濃度が高い鉄鋼材料の冷却においても、デルタ相の液相線温度以下まで冷却されてもガンマ相が核生成しない場合、デルタ相が核生成して成長し、包晶温度未満でガンマ相が形成し、0.5mass%C以下の鉄鋼材料の冷却と同様の凝固機構となる。実際の製鋼においては、デルタ相ならびにガンマ相の結晶粒を均一かつ微細化することが、後工程での圧延の組織制御の観点から重要とされている。
特開2008−127599号公報 特開平8−224650号公報
M.Usui 他2名、「Solidified Structure Comparison under Imposition of Oscillating Electromagnetic Force and DC Electromagnetic Force」、ISIJ International Vol.47(2007)、No.11 pp1571−1574
しかしながら、経験的な知見に基づいている従来の技術では、一定の制約や限界があるため、近年の産業、技術の高度化の下で、鉄鋼材料の偏析の低減、力学的特性や耐食性の向上に対して益々厳しくなっているユーザからの要望を充分満たしているとは言えないのが実状である。
例えば、前記の結晶粒の核生成サイトとなる介在物を含有させる方法では、効果が限定的であるだけでなく、介在物が製品特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
そして、前記の溶鋼の電磁撹拌や電磁振動を利用する方法は、インゴットを用いた製造(鋳造)に適用しようとすると、多くの場合適用することが困難である。
このため、適用の制約を受けることなく、鉄鋼材料の結晶粒をより微細化し、等軸晶化することにより、偏析をより低減させ、力学的特性や耐食性をより向上させた鉄鋼材料を提供することが可能な技術の開発が望まれていた。
本発明者は、以上の課題を解決することを目的として鋭意研究を行った結果、溶融した鉄鋼材料の冷却過程において、デルタ相のデンドライトが発生し、さらにガンマ相が形成される過程において、包晶温度近傍における冷却を制御すると、即ち、包晶変態を制御することによりデルタ相とガンマ相の境界が溶解してデンドライトが分断されることをX線観察により見出し、鉄鋼材料の結晶粒を一層微細化し、併せて一層の等軸晶化も可能となる本発明を完成させるに至ったものである。以下、本発明に関する各技術について説明する。
本発明に関する第1の技術は、
鉄鋼材料の冷却過程において、冷却速度の制御、撹拌、所定の元素の配合等により、
デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、
さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度から所定の範囲内にある様にし、
同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が所定の臨界値以下である様にし、
デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる相境界溶解工程を有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
技術においては、鉄鋼材料の冷却過程においてデルタ相とガンマ相の境界を溶解し、分離したデンドライトからデルタ相あるいはガンマ相の結晶を形成させるため、結晶の粒を小さくすることができる。このため、鉄鋼材料の結晶粒を一層微細化し、等軸晶化することが可能となる。
なお、本技術は、電磁気的な流動付加等の従来の方法と異なり適用の制約が少なく、広く適用できるため、現在以上に偏析が低減し、力学的特性や耐食性が向上した鉄鋼材料を広く提供することができる。また、本技術は、従来の他の微細化の方法と組合せて実施することを排除するものではなく、他の方法と組合せてもよい。
また、「冷却速度の制御、撹拌、所定の元素の配合等」における「等」の趣旨は、「デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度から所定の範囲内にある様にし、同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が所定の臨界値以下である様にし」、その結果として「デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる」方法を具体的に例示することにあり、例えば、振動の付加等の他の方法でも「デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる」のであれば本技術に含める趣旨である。
また、「凝固界面付近」とは、液相と固相の境界面やその近傍を指し、液相は一旦凝固した後再度溶解して形成される場合をも含み、固相は液相が凝固して形成されたデルタ相やガンマ相である。
また、「包晶変態」とは、初晶のデルタ相の周囲を包晶相であるガンマ相が取囲む一般的な包晶変態のみならず、デンドライト(樹枝状結晶)のデルタ相がアームに沿ってガンマ相に変態する現象をも含む。
また、「包晶温度から所定の範囲内」とは、包晶温度±15℃、好ましくは±10℃である。但し、液相、デルタ相、ガンマ相が入組んだ微細構造であるため、局所的に範囲外となってもよい。
また、凝固シェルや鋳型内の鋼材全体としては、デルタ相とガンマ相の境界の溶融の対象となっていない領域では、例えば鋳型壁近傍はそれ以下の温度であり、中央の液相部はそれより高い温度であってもよい。
また、「固相率が所定の臨界値以下」とは、40%程度以下の固相率であることを示しているが、材料の組成によっては多少増加しても良い。
本発明に関する第2の技術は、
前記相境界溶解工程は、
凝固界面付近において、デルタ相からなるデンドライトを成長させるデルタ相デンドライト成長ステップと、
成長しつつあるデンドライトの冷却側をガンマ相に変態させ、デルタ相とガンマ相の境界とデンドライトの先端との距離を冷却時間の経過と共に短縮させるデンドライト内ガンマ相成長ステップと、
前記ガンマ相の成長に伴いデンドライトの先端との距離が所定の距離より小さくなった時点で、デルタ相とガンマ相の境界を溶解させ、デルタ相からなる先端側のデンドライトを分断して液相内に移動させるデンドライト分断ステップを、
を有していることを特徴とする第1の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
鉄鋼材料の冷却過程において冷却速度を制御する等の手段により、包晶温度付近において液相内にデルタ相のデンドライトを発生させ、冷却により冷却側をガンマ相に変態させ、デルタ相とガンマ相の境界とデンドライトの先端との距離を冷却時間の経過と共に短縮させ、距離が小さくなった時点でデルタ相とガンマ相の境界を溶解させることにより、現在以上に偏析が低減し、力学的特性や耐食性が向上した鉄鋼材料を広く提供できる。
なお、ここに「デンドライトの先端との距離が所定の距離」の「所定の距離」とは、一般的には5mm以下を指す。ただし、デルタ相の液相線温度と包晶温度マイナス15℃の温度差をその位置における温度勾配で割った距離であり、材料の組成や温度分布等によっては多少長くなってもよい。
また、「デルタ相からなる先端側のデンドライトを分断」するに際しては、その境界の位置やその近傍における固相率が40%と程度以下であることが好ましい。
本発明に関する第3の技術は、
前記相境界溶解工程はさらに、
前記液相内に移動したデルタ相からなる先端側のデンドライトを基に、新たにデルタ相からなるデンドライトを成長させる分断デンドライト成長ステップを、
有していることを特徴とする第2の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
液相内に移動したデルタ相からなる先端側のデンドライトを基に、新たにデルタ相からなるデンドライトを成長させることにより、分断と新たなデンドライトの成長が繰返されるため、第2の技術の効果が一層発揮される。
なお、先端側のデンドライトを液相内に積極的に移動させる手段としては、電磁気的な撹拌等が考えられる。
本発明に関する第4の技術は、
前記相境界溶解工程は、冷却速度の制御により成されるものであり、
前記デンドライト内ガンマ相成長ステップと、前記デンドライト分断ステップにおける冷却速度は、前記デルタ相デンドライト成長ステップにおける冷却速度の70%以下であることを特徴とする第2の技術または第3の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
デンドライト内ガンマ相成長ステップと、デンドライト分断ステップにおける冷却速度を、デルタ相デンドライト成長ステップにおける冷却速度に対し、70%以下とすることにより、デンドライトのデルタ相とガンマ相の境界の溶解が適切になされるため、第2の技術または第3の技術の効果が一層発揮される。
なお、前記した「70%以下」の冷却速度については、生産効率の面から60%以上であることが好ましい。50%以下であるとより好ましい。
本発明に関する第5の技術は、
前記デンドライト内ガンマ相成長ステップにおける冷却速度は150℃/s以下であることを特徴とする第4の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
技術においては、デンドライト内ガンマ相成長ステップにおける冷却速度は150℃/s以下であるため、、第2の技術または第3の技術の効果が一層発揮される。
冷却速度が150℃/sを超えると、デンドライトのデルタ相とガンマ相の境界の溶解が適切になされなくなる。150℃/s以下であると、これらの問題が発生せず、好ましい。1℃/s以下であるとより好ましい。
本発明に関する第6の技術は、
前記鉄鋼材料は、普通鋼で、炭素は0.4〜0.9mass%であることを特徴とする第1の技術ないし第5の技術のいずれかに記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
普通鋼で、炭素は0.4〜0.9mass%である鉄鋼材料を用いた場合、第1の技術ないし第5の技術の効果を良好に発揮させることができ好ましい。
本発明に関する第7の技術は、
前記相境界溶解工程は、
デルタ相からガンマ相に変態した凝固シェルの一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して、前記凝固シェルの一部を溶解させると共に、デルタ相を形成させるガンマ相加熱ステップと、
形成された前記デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる溶解ステップを
有していることを特徴とする第1の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
一旦デルタ相からガンマ相に変態した凝固シェルの一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して、前記凝固シェルの一部を溶解させると共に、デルタ相を形成させ、デルタ相とガンマ相の境界を溶解させることにより、凝固シェルに第1の技術を適用することが可能となり、適用範囲が広がる。
なお、「所定時間」とは、ミクロ偏析が消滅しない時間を言い、具体的には、30秒以内が好ましく、早いほど好ましい。数秒程度が望ましい。
また、「凝固シェル」とは、デンドライトおよびデンドライトが粗大化した固相が相互に接触し、力学的には固相様のように振る舞う領域を指す。
本発明に関する第8の技術は、
前記ガンマ相加熱ステップは、
電磁的な撹拌により凝固シェル内の液相の熱を、デルタ相から変態したガンマ相に移動させて、当該箇所のデルタ相を包晶温度以上に加熱するものであることを特徴とする第7の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
技術においては、「包晶温度以上に加熱」する手段として、簡便な手段である電磁的な撹拌を液相に与えて、温度が高い液相から温度の低い固相に熱を移動させて、固相を加熱するため、第7の技術の効果を簡単に発揮させることが可能となる。
本発明に関する第9の技術は、
前記鉄鋼材料は、普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%であることを特徴とする第7の技術または第8の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
普通鋼で、炭素は0.1〜0.5mass%である鉄鋼材料を用いた場合、第7の技術または第8の技術の効果を良好に発揮させることができ好ましい。
本発明に関する第10の技術は、
鉄鋼材料の冷却過程において、冷却速度の制御、撹拌、所定の元素の配合等により、デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度から所定の範囲内にある様にし、同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が所定の臨界値以下である様にし、それらの結果デルタ相とガンマ相の境界が溶解する様子を、18〜30keVの単色X線、あるいはそのエネルギー領域を含む白色X線でリアルタイムに観察して、デルタ相とガンマ相の境界が包晶温度の近傍で溶解する温度条件、組成の条件、臨界固相率等の条件を測定し、取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で得られた温度条件、組成の条件、臨界固相率等の条件を基に、鉄鋼材料の製造における温度条件、組成の条件、臨界固相率等の条件を制御して、デルタ相とガンマ相の境界を包晶温度の近傍で溶解させて分断する相境界溶解工程を、
有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
技術においては、データ取得工程で得られたデータを基に相境界溶解工程における各種の条件を設定するため、多種、多様な鉄鋼材料に対して確実にデルタ相とガンマ相の境界を包晶温度の近傍で溶解させて分断することが可能となる。このため、冷却に伴ってデルタ相、さらにその周囲や周囲の一部にガンマ相が形成される際にできる結晶の粒を確実、効率的に小さくすることができるため、鉄鋼材料の結晶粒を一層微細化し、等軸晶化することが可能となる。
なお、「データ取得工程」と「相境界溶解工程」は、同一の製鋼所、製鉄会社である必要はなく、このため既に得られたデータ、公開されているデータを基になされる相境界溶解工程を有していたり、それらのデータから推定される数値を基になされる相境界溶解工程を有しておれば、本技術に含まれる。
本発明に関する第11の技術は、
前記相境界溶解工程は、
普通鋼かつ炭素は0.4〜0.9mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
デンドライト内におけるガンマ相の成長は、150℃/s以下の冷却速度の下で成長させるものであり、
デルタ相が成長したのちガンマ相への変態をさせ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させる際の冷却速度は、前記デルタ相のデンドライトが成長する際の冷却速度の70%以下であることを特徴とする第10の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
デンドライト内におけるガンマ相の成長は冷却速度が150℃/s以下であり、形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させる際の冷却速度は、デルタ相のデンドライトが成長する際の冷却速度の70%以下に制御することにより、普通鋼かつ炭素は0.4〜0.9mass%の鉄鋼材料を製造するに際して、第10の技術の効果が一層発揮される。
本発明に関する第12の技術は、
前記相境界溶解工程は、
普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
凝固シェル内のデルタ相からガンマ相に変態した箇所の一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して溶解させると共に、デルタ相を形成させ、次いで形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させるものであることを特徴とする第10の技術に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
凝固シェル内のデルタ相からガンマ相に変態した箇所を、その後所定時間内に包晶温度以上に加熱して、変態直後のガンマ相の一部を溶解させると共に、デルタ相を形成させ、次いで形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させることにより、普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%の鉄鋼材料を製造するに際して、第10の技術の効果が一層発揮される。
本発明に関する第13の技術は、
前記相境界溶解工程は、
デルタ相とガンマ相の境界が溶解し、さらにデルタ相が分離されるために、
デルタ相とガンマ相の境界の温度を包晶温度近傍とし、
またデルタ相とガンマ相の境界の固相率を所定の値以下とするものであることを特徴とする第10の技術ないし第12の技術のいずれかに記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
温度と固相率の制御を適切に行ってデルタ相を分離させることにより、結晶粒子を一層微細化させることができ、第10の技術ないし第12の技術のいずれかに記載の技術の効果が一層発揮される。
本発明に関する第14の技術は、
前記相境界溶解工程は、
分離されたデンドライトが位置する箇所の温度を液相線以下に調節し、分離されたデルタ相のデンドライトを種として新たに結晶を成長させる分断デンドライト成長ステップを有していることを特徴とする第10の技術ないし第13の技術のいずれかに記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
分離されたデルタ相のデンドライトを種として新たに結晶を成長させることにより、結晶粒子を一層微細化させることができ、第10の技術ないし第13の技術のいずれかに記載の効果が一層発揮される。
本発明に関する第15の技術は、
前記相境界溶解工程は、
所定の元素を配合して、液相線温度と、包晶温度の少なくとも一方を調節する元素配合温度調節ステップを有していることを特徴とする第1の技術ないし第14の技術のいずれかに記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
液相線温度と、包晶温度の少なくとも一方(特に包晶温度)を、所定の元素を配合して調節するため、適用範囲が広がる。
一般的には、包晶温度(平衡温度)を上昇させる元素としては、特にMn、その他Co、Cu、Nb、Ni等を挙げることができ、低下させる元素としては、特にSi、その他Al、Cr、Mo、P、Sn、Ti、V、W等を挙げることができる。なお、液相線温度は、配合物が増加すると一般的には低下する。
本発明は、以上の知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、
鉄鋼材料の冷却過程において、
デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、
さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度±15℃である様にし、
同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が40%以下である様にし、
デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる相境界溶解工程を有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項2に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
凝固界面付近において、デルタ相からなるデンドライトを成長させるデルタ相デンドライト成長ステップと、
成長しつつあるデンドライトの冷却側をガンマ相に変態させ、デルタ相とガンマ相の境界とデンドライトの先端との距離を冷却時間の経過と共に短縮させるデンドライト内ガンマ相成長ステップと、
前記ガンマ相の成長に伴いデンドライトの先端との距離が、デルタ相の液相線温度と包晶温度マイナス15℃の温度差をその位置における温度勾配で割った距離より小さくなった時点で、デルタ相とガンマ相の境界を溶解させ、デルタ相からなる先端側のデンドライトを分断して液相内に移動させるデンドライト分断ステップ
を有していることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記相境界溶解工程はさらに、
前記液相内に移動したデルタ相からなる先端側のデンドライトを基に、新たにデルタ相からなるデンドライトを成長させる分断デンドライト成長ステップを、
有していることを特徴とする請求項2に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項4に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、冷却速度の制御により成されるものであり、
前記デンドライト内ガンマ相成長ステップと、前記デンドライト分断ステップにおける冷却速度は、前記デルタ相デンドライト成長ステップにおける冷却速度の70%以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項5に記載の発明は、
前記デンドライト内ガンマ相成長ステップにおける冷却速度は150℃/s以下であることを特徴とする請求項4に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項6に記載の発明は、
前記鉄鋼材料は、普通鋼で、炭素は0.4〜0.9mass%であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項7に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
デルタ相からガンマ相に変態した凝固シェルの一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して、前記凝固シェルの一部を溶解させると共に、デルタ相を形成させるガンマ相加熱ステップと、
形成された前記デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる溶解ステップを
有していることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項8に記載の発明は、
前記ガンマ相加熱ステップは、
電磁的な撹拌により凝固シェル内の液相の熱を、デルタ相から変態したガンマ相に移動させて、当該箇所のデルタ相を包晶温度以上に加熱するものであることを特徴とする請求項7に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項9に記載の発明は、
前記鉄鋼材料は、普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項10に記載の発明は、
鉄鋼材料の冷却過程において、デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度±15℃である様にし、同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が40%以下である様にし、それらの結果デルタ相とガンマ相の境界が溶解する様子を、18〜30keVの単色X線、あるいはそのエネルギー領域を含む白色X線でリアルタイムに観察して、デルタ相とガンマ相の境界が包晶温度の近傍で溶解する条件を測定し、取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で得られた条件を基に、鉄鋼材料の製造における条件を制御して、デルタ相とガンマ相の境界を包晶温度の近傍で溶解させて分断する相境界溶解工程を、
有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項11に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
普通鋼かつ炭素は0.4〜0.9mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
デンドライト内におけるガンマ相の成長は、150℃/s以下の冷却速度の下で成長させるものであり、
デルタ相が成長したのちガンマ相への変態をさせ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させる際の冷却速度は、前記デルタ相のデンドライトが成長する際の冷却速度の70%以下であることを特徴とする請求項10に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項12に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
凝固シェル内のデルタ相からガンマ相に変態した箇所の一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して溶解させると共に、デルタ相を形成させ、次いで形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させるものであることを特徴とする請求項10に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項13に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
デルタ相とガンマ相の境界が溶解し、さらにデルタ相が分離されるために、
デルタ相とガンマ相の境界の温度を包晶温度近傍とし、
またデルタ相とガンマ相の境界の固相率を40%以下とするものであることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項14に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
分離されたデンドライトが位置する箇所の温度を液相線以下に調節し、分離されたデルタ相のデンドライトを種として新たに結晶を成長させる分断デンドライト成長ステップを有していることを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
請求項15に記載の発明は、
前記相境界溶解工程は、
Mn、Co、Cu、Nb、Ni、Si、Al、Cr、Mo、P、Sn、Ti、V、Wから選択された元素を配合して、液相線温度と、包晶温度の少なくとも一方を調節する元素配合温度調節ステップを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法である。
本発明によれば、適用の制約を受けることなく、鉄鋼材料の結晶粒をより微細化し、等軸晶化することにより、偏析をより低減させ、力学的特性や耐食性をより向上させた鉄鋼材料を提供することができる。
鉄鋼材料の凝固過程をリアルタイムで観察する観察装置の構成を概念的に示す図である。 0.58mass%C、0.6mass%Mn、0.3mass%Siの炭素鋼の凝固過程においてδ相とγ相の相境界でデンドライトが溶断した様子を示すX線透過像である。 0.44mass%Cの炭素鋼の凝固過程において生成したδ相とδ相がγ相へ変態した3秒後の状態を示すX線透過像である。 本発明の第1の実施の形態における鉄鋼材料の凝固過程においてデンドライトの溶断を起こす位置における液相線温度(M.P.)から包晶変態点近傍の温度範囲の冷却速度を概念的に示すグラフである。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1.鉄鋼材料の凝固過程に関するデータの取得
鉄鋼材料の組成は多種多様であり、また組成に応じて融点や各変態点とも変化する。そこで、本発明を適切に実施するためには、実施対象の材料と同じ組成の試料を対象に予め包晶変態がなされる温度の付近における凝固や相の変態等の過程を観察し、柱状結晶から等軸晶へ遷移する温度、冷却速度、温度勾配等について必要なデータを取得し、あるいは確認しておくことが好ましい。また、鉄鋼材料に各種の元素が配合される場合のδ相とγ相の平衡温度に及ぼす影響等についても必要なデータを取得しておくことが好ましい。以下、データを取得するための手段について説明する。
(1)凝固過程観察用の観察装置および観察用試料
イ.観察装置
図1は、鉄鋼材料の凝固過程をリアルタイムで観察する観察装置の構成を概念的に示す図である。図1において、19は試料であり、51はX線スリットであり、52はチャンバであり、53はグラファイトヒータであり、54はX線検出器(2次元)であり、55は図示しないX線発生源から照射されたX線ビームである。
本観察装置は、溶融させた試料19を凝固させる際の冷却速度を0.1〜2K/sの範囲内で制御して冷却する機能を有している。また、使用するX線ビームは、18〜30keVの単色X線、あるいはそのエネルギー領域を含む白色X線である。以上のほか、試料の保持具、温度センサ、グラファイトヒータの電源、チャンバの真空ポンプ、試料の温度や冷却速度を制御するための装置等と装備しているが、これらは本発明の趣旨に直接の関係が無く、自明であり、また煩雑となるため、図示は省略してある。なお、このことは他の図でも同様である。
ロ.観察用試料
試料の厚さは、用いるX線ビームのエネルギーの大きさに応じて適宜設定されるが、例えば20keVのX線ビームを用いる場合には50〜200μm程度である。
(2)試料の溶融方法および凝固過程の制御
イ.溶融方法
まず、グラファイトヒータにより試料19を0.1℃/s(秒)〜1℃/sで昇温する様に加熱し、一旦融点より多少高い温度まで昇温して試料を溶解させ、溶融状態を1分以上保持する。
ロ.凝固過程の制御
次に、0.1〜2K/sの範囲の速度で冷却し、δ相のデンドライトを形成させる。次いで、さらなる温度の低下によりデンドライトの冷却側にγ相が形成されるが、この時点で冷却速度を30%以上低下させるか一定温度に保持し、これによりデンドライト内におけるδ相とγ相との相境界がデンドライトの先端に近づく様にする。相境界がデンドライトの先端からある距離以内に近づき、また相境界の温度が包晶温度近傍まで温度で上昇と、相境界の溶解を確認することができる。なお、この時の試料中の温度勾配は1〜3K/mmであり、δ相のデンドライトの成長速度は5〜200μm/sの範囲であった。
以上のように制御された凝固過程にある試料を前記観察装置を用いて観察し、併せて実施に必要な温度等のデータを取得する。また、各種元素の及ぼす影響についても、それらの元素を所定濃度含む複数の試料を対象にして同様の実験を行って必要なデータを取得する。
(3)データの取得例
以下、2種類の鉄鋼材料について、データの取得を行った例について説明する。
イ.第1の例
本例は、0.58mass%C、0.6mass%Mn、0.3mass%Siの炭素鋼の凝固過程におけるデータの取得を行った例である。図2は、本例の炭素鋼の凝固過程においてδ相とγ相の相境界でデンドライトが溶断した様子を示すX線透透過像である。本例の場合1.7K/sの速度で冷却することによりδ相のデンドライトが成長し、その低温側にγ相が発生している様子と、かかる現象が生じた時点で冷却を停止することによりδ相とγ相との相境界でデンドライトが溶断(分断)し、その結果δ相のデンドライトが分離された状態(折れ曲っている状態)とを示している。なお、分断されたデンドライトがその場の留まった場合やデンドライトの分断位置における固相率が高く移動できない場合には、分岐柱状晶様の組織が形成される。例えば、図2において溶断し折れ曲がったデンドライトが液相に移動しない場合は分岐柱状晶が形成される。
また、図1に示す装置で可能な0.1〜2K/sの範囲の冷却速度では、デンドライトの寸法(平均アーム径)は50〜10μmまで変化するが、成長の形態は同じであり、類似した包晶変態の発生、デンドライトの溶断が期待される。
また、冷却を停止せず、その速度を30%以上低下させた場合においても、デンドライトの成長速度の低下、その先端とδ相とγ相との相境界の距離(長さ)の短縮が顕在化し、また相境界での溶断が生じることも確認できた。
なお、従来の平衡状態図による知見では、Cの含有量が0.5mass%C以上の組成範囲は、δ相デンドライトは形成されない組成範囲であるが、0.4〜0.9mass%Cまでの組成範囲においてδ相のデンドライトの成長、δ相とγ相の相境界がデンドライトの先端の近傍(デンドライトの先端からおよそ5mm以内)へ移動する現象が観察された。このように、本例では、デンドライトが一方向に連続的に成長できる条件、つまり柱状晶が形成できる条件にも拘わらずデンドライトが溶断かつ分離し、等軸晶化、結晶粒の微細化が実現でき、その結果偏析などの欠陥生成を抑制する効果がある。
ロ.第2の例
Cの含有量が0.45mass%C以下の炭素鋼では、δ相からγ相への変態が非平衡で生じる場合がある。δ相が包晶温度より低温となり、かつ固相率が高い状態では数秒以内にγ相に変態するが、この状態ではδ相とγ相との相境界での溶断は生じない。即ち、図3は、0.44mass%Cの炭素鋼(S45C)の凝固過程において生成したδ相とδ相がγ相へ変態した3秒後の状態を示すX線透過像である。本炭素鋼の場合は、δ相が包晶温度以下の温度にまで過冷し、過冷状態で、かつ、固相率の高い状態でγ相へ変態する。このような変態モードではδ相とγ相との相境界での溶解は生じない。
しかし、変態によって生成したγ相を変態直後に包晶温度近傍まで加熱すると液相とδ相が形成され、固相率が40%以上であり力学的には固相様の性質を有する凝固シェルの先端近傍(5mm以内)にδ相とγ相との相境界が形成され、前記第1の例における冷却過程と同様にこの相境界が溶解し、デンドライト様のδ相を分離させることが可能となる。
このように、液相線温度と包晶温度との差が20K以上である、即ち、δ相とγ相の相境界がδ相デンドライト先端近傍に形成されない0.4mass%C以下の炭素鋼においては、γ相を包晶温度近傍まで加熱する手段でδ相とγ相との相境界を溶解させ、デンドライト様のδ相を分離することが可能である。
2.溶断の機構および溶断の条件の説明
δ相とγ相の相境界が溶断することは、従来の知見では全く予想できなかった現象であり、また本発明の原理、ポイントに関わる。以下、前記のデータの取得例等の観察結果を踏まえて、溶断の機構および溶断が生じる条件を説明する。
(1)δ相がγ相に変態して相境界が形成されると、そこに過剰なエネルギー(δ相とγ相の粒界エネルギー)が生じる。
(2)δ相とγ相の相境界が包晶温度に保持されて条件では、微量の液相が形成されてもバルクの自由エネルギーは増加しない。
(3)δ相と液相との界面エネルギーとγ相と液相との界面エネルギーの和が、δ相とγ相の界面エネルギーより低い場合、包晶温度やその近傍の温度ではδ相とγ相と界面に液相が在る方が自由エネルギーは低くなるため相境界が溶解する。
(4)包晶温度より高温では、平衡状態で液相が存在できるため、δ相とγ相との相境界の溶解は、より容易になる。
(5)包晶温度未満では、液相が形成されることによりバルクの自由エネルギーが増加する為溶解は困難になるが、一定の温度範囲では溶解が生じる。但し、どの程度の範囲で溶解が生じるかは、δ相と液相との界面エネルギー、γ相と液相との界面エネルギー、δ相とγ相の界面エネルギーのみならずδ相、γ相、液相の自由エネルギーの相対的な関係に拠る。このため、実施に際しては、図1に示す装置で実施の対象である鉄鋼材料のデータを取得する必要がある。
(6)δ相とγ相との相境界が溶解する範囲は、包晶温度±10K程度である。本発明ではこの温度範囲を包晶温度近傍としている。
3.取得データの利用
各組成の鉄鋼材料に対して、以上の方法で取得した適切な冷却条件、包晶温度等のデータを、実際の連続鋳造、鋳造等に利用することとなる。
一般的に、鉄鋼材料の連続鋳造においては、前記の試料の場合に比べて冷却条件の範囲は広い。即ち、鋳片の表面から内部に向かって凝固時の冷却速度は200K/sから数K/sまで変化し、温度勾配も数10K/mmからほぼ0K/mmまで変化している。しかし、デンドライトの形状、性状を決定する主要な因子である成長速度は、図1に示す装置の試料でも連続鋳造でも10〜200μm/sの範囲であり、連続鋳造における成長速度と同じである。また固相率分布は温度勾配から容易に求めることができる。このため、前記の試料から取得されたデータを基に、科学的合理性を失うことなく連続鋳造時のδ相デンドライトの成長、δ相からγ相への包晶変態の評価を行うことができる。特に図1に示した観察装置を用いた凝固過程の観察は、従来の如何なる手法よりも現実の凝固過程の情報を実証的に得ることができる手法であり、その観察に基づいた連続鋳造時におけるδ相デンドライトの成長、包晶変態の評価は信頼性が高い。
一般的には、デンドライトの成長速度V、デンドライト先端における温度勾配Gならびに冷却速度Rには、
R = G x V
の関係が成り立つ。図1に示した観察装置を用いて得られたデンドライトの溶断の条件は上式を用いて実際の連続鋳造における条件の評価に用いることができる。
連続鋳造であれば、柱状晶から等軸晶への遷移が望まれる位置を決め、その位置における凝固開始温度時の冷却速度と温度勾配、δ相デンドライトの成長速度を推定する。その上で、その位置が包晶温度になる時の冷却速度が凝固開始時の冷却速度に比べて30%以上低下する様に(1)モールドフラックスと鋳型間の熱伝達を調整する。(2)モールドの冷却水量を調整する。(3)モールド外での冷却水のスプレー量を調整する。(4)電磁撹拌装置等による液相の流動速度を増加させて液相から凝固シェルへの熱輸送を促進させる等の操作を行う。
なお、必要に応じて、δ相とγ相の平衡温度を上昇させる元素や、低下させる元素を添加してもよい。一般的には、上昇させる元素としては、特にMn、Co、Cu、Nb、Ni等が用いられ、低下させる元素としては、特にSi、Al、Cr、Mo、P、Sn、Ti、V、W等が用いられる。添加に際しては、鉄鋼材料中に存在する、あるいは配合されている他の元素との相互作用をも考慮したうえで添加する元素が適宜選定される。
4.実施の形態
(1)第1の実施の形態
本実施の形態は、デンドライトが発生し、成長する過程において、液相線温度になった時に比べて、包晶変態点近傍の温度になった時点での冷却を多少遅らせ、包晶変態を制御してデンドライトを溶断させることに関する。
図4は、当該データの具体的な内容を、即ち液相線温度(M.P.)から包晶変態点(包晶温度)近傍における鉄鋼材料の冷却速度を概念的に示すグラフである。このグラフにおいて、縦軸は温度であり、横軸は冷却の経過時間である。図4において破線は従来の冷却速度であり、実線は本実施の形態の冷却速度である。
本実施の形態においては、Cの含有量が0.4〜0.9mass%Cの範囲の炭素鋼において、150℃/s以下の速度で冷却することによりδ相デンドライトを成長させた後、冷却速度を30%以上低下させることによりδ相とγ相との相境界を包晶温度近傍とし、デンドライトにγ相を発生させさらにデンドライトを溶断させる。分断されたデンドライトの先端から新たにδ相が成長し、また分断箇所から、即ち冷却側からγ相への変態が生じていき、再度の相境界の溶断が生じることとなる。
以上の冷却過程により、等軸晶のみならず分岐柱状晶の形成がなされる。これらのため、鋳型側から鋳片内部に向かって柱状晶、さらに鋳造時にはδ相とγ相の相境界が溶断した位置からデンドライト先端の位置までは分岐状晶、内部では分離したデンドライトの先端が種になった等軸晶が分布した組織となる。そして、この状態で圧延、より一層の熱処理が成される。
(2)第2の実施の形態
本実施の形態は、δ相からγ相へ変態している凝固シェルを加熱し、凝固先端付近にδ相を形成し、δ相とγ相との相境界を溶解させて固相を溶断させるものである。
以上の下で、Cの含有量が0.1〜0.5mass%Cの鉄鋼材料において、δ相からγ相へ溶解を伴わずに変態した凝固シェルを、γ相が変態した後ミクロ偏析が生じない30秒以内に電磁的に撹拌し、これにより液相から熱を移動させて加熱し、凝固シェルの一部を、あるいは当該γ相の一部を再度溶解させると共に、冷却によりδ相を形成させ、δ相とγ相との相境界を溶解させて凝固シェルの溶断を行う。
本実施の形態においても、等軸晶のみならず分岐状晶が形成される。これらのため、鋳型側から鋳片内部に向かって柱状晶、さらに鋳造時にはδ相とγ相との相境界が溶断した位置からデンドライト先端の位置までは分岐状晶、内部では分離したデンドライトの先端が種になった等軸晶が分布した組織となる。そして、この状態で圧延、より一層の冷却等の処理が成される。
19 試料
51 X線スリット
52 チャンバ
53 グラファイトヒータ
54 X線検出器
55 X線ビーム

Claims (15)

  1. 鉄鋼材料の冷却過程において
    デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、
    さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度±15℃である様にし、
    同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が40%以下である様にし、
    デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる相境界溶解工程を有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  2. 前記相境界溶解工程は、
    凝固界面付近において、デルタ相からなるデンドライトを成長させるデルタ相デンドライト成長ステップと、
    成長しつつあるデンドライトの冷却側をガンマ相に変態させ、デルタ相とガンマ相の境界とデンドライトの先端との距離を冷却時間の経過と共に短縮させるデンドライト内ガンマ相成長ステップと、
    前記ガンマ相の成長に伴いデンドライトの先端との距離が、デルタ相の液相線温度と包晶温度マイナス15℃の温度差をその位置における温度勾配で割った距離より小さくなった時点で、デルタ相とガンマ相の境界を溶解させ、デルタ相からなる先端側のデンドライトを分断して液相内に移動させるデンドライト分断ステッ
    有していることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  3. 前記相境界溶解工程はさらに、
    前記液相内に移動したデルタ相からなる先端側のデンドライトを基に、新たにデルタ相からなるデンドライトを成長させる分断デンドライト成長ステップを、
    有していることを特徴とする請求項2に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  4. 前記相境界溶解工程は、冷却速度の制御により成されるものであり、
    前記デンドライト内ガンマ相成長ステップと、前記デンドライト分断ステップにおける冷却速度は、前記デルタ相デンドライト成長ステップにおける冷却速度の70%以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  5. 前記デンドライト内ガンマ相成長ステップにおける冷却速度は150℃/s以下であることを特徴とする請求項4に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  6. 前記鉄鋼材料は、普通鋼で、炭素は0.4〜0.9mass%であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  7. 前記相境界溶解工程は、
    デルタ相からガンマ相に変態した凝固シェルの一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して、前記凝固シェルの一部を溶解させると共に、デルタ相を形成させるガンマ相加熱ステップと、
    形成された前記デルタ相とガンマ相の境界を溶解させる溶解ステップを
    有していることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  8. 前記ガンマ相加熱ステップは、
    電磁的な撹拌により凝固シェル内の液相の熱を、デルタ相から変態したガンマ相に移動させて、当該箇所のデルタ相を包晶温度以上に加熱するものであることを特徴とする請求項7に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  9. 前記鉄鋼材料は、普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  10. 鉄鋼材料の冷却過程において、デルタ相からガンマ相への変態を凝固界面付近に形成させ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界の温度が包晶温度±15℃である様にし、同じくデルタ相とガンマ相の境界で固相率が40%以下である様にし、それらの結果デルタ相とガンマ相の境界が溶解する様子を、18〜30keVの単色X線、あるいはそのエネルギー領域を含む白色X線でリアルタイムに観察して、デルタ相とガンマ相の境界が包晶温度の近傍で溶解する条件を測定し、取得するデータ取得工程と、
    前記データ取得工程で得られた条件を基に、鉄鋼材料の製造における条件を制御して、デルタ相とガンマ相の境界を包晶温度の近傍で溶解させて分断する相境界溶解工程を、
    有していることを特徴とする鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  11. 前記相境界溶解工程は、
    普通鋼かつ炭素は0.4〜0.9mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
    デンドライト内におけるガンマ相の成長は、150℃/s以下の冷却速度の下で成長させるものであり、
    デルタ相が成長したのちガンマ相への変態をさせ、さらに形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させる際の冷却速度は、前記デルタ相のデンドライトが成長する際の冷却速度の70%以下であることを特徴とする請求項10に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  12. 前記相境界溶解工程は、
    普通鋼かつ炭素は0.1〜0.5mass%の鉄鋼材料を製造するものであり、
    凝固シェル内のデルタ相からガンマ相に変態した箇所の一部を、ガンマ相への変態後、所定時間内に包晶温度以上に加熱して溶解させると共に、デルタ相を形成させ、次いで形成されたデルタ相とガンマ相の境界を溶解させるものであることを特徴とする請求項10に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  13. 前記相境界溶解工程は、
    デルタ相とガンマ相の境界が溶解し、さらにデルタ相が分離されるために、
    デルタ相とガンマ相の境界の温度を包晶温度近傍とし、
    またデルタ相とガンマ相の境界の固相率を40%以下とするものであることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  14. 前記相境界溶解工程は、
    分離されたデンドライトが位置する箇所の温度を液相線以下に調節し、分離されたデルタ相のデンドライトを種として新たに結晶を成長させる分断デンドライト成長ステップを有していることを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
  15. 前記相境界溶解工程は、
    Mn、Co、Cu、Nb、Ni、Si、Al、Cr、Mo、P、Sn、Ti、V、Wから選択された元素を配合して、液相線温度と、包晶温度の少なくとも一方を調節する元素配合温度調節ステップを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法。
JP2009159256A 2009-07-03 2009-07-03 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法 Expired - Fee Related JP5408585B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009159256A JP5408585B2 (ja) 2009-07-03 2009-07-03 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009159256A JP5408585B2 (ja) 2009-07-03 2009-07-03 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011011249A JP2011011249A (ja) 2011-01-20
JP5408585B2 true JP5408585B2 (ja) 2014-02-05

Family

ID=43590619

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009159256A Expired - Fee Related JP5408585B2 (ja) 2009-07-03 2009-07-03 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5408585B2 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61157612A (ja) * 1984-12-28 1986-07-17 Nippon Steel Corp 鋼の凝固偏析制御法
JPS61154748A (ja) * 1984-12-28 1986-07-14 Nippon Steel Corp 連続鋳造鋳片の凝固偏析制御法
JP5167628B2 (ja) * 2006-11-17 2013-03-21 新日鐵住金株式会社 凝固組織が微細な鋼鋳片

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011011249A (ja) 2011-01-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Metan et al. Grain size control in Al–Si alloys by grain refinement and electromagnetic stirring
JP4382152B1 (ja) 鉄系合金の半凝固スラリー製造方法、その半凝固スラリー製造方法を用いた鋳鉄鋳物製造方法及び鋳鉄鋳物
Chen et al. Microstructure evolution of SiCp/ZM6 (Mg–Nd–Zn) magnesium matrix composite in the semi-solid state
Liu et al. An investigation of direct-chill cast 2024 aluminum alloy under the influence of high shearing with regards to different shear positions
Chen et al. Sudden transition from columnar to equiaxed grain of cast copper induced by rare earth microalloying
Nourouzi et al. Microstructure evolution of A356 aluminum alloy produced by cooling slope method
Song et al. Semi-solid rolling process of steel strips
Xu et al. In-situ X-radiographic study of nucleation and growth behaviour of primary silicon particles during solidification of a hypereutectic Al-Si alloy
Mehreen et al. Peritectic phase formation kinetics of directionally solidifying Sn-Cu alloys within a broad growth rate regime
Wang et al. Effect of temperature field on the porosity and mechanical properties of 2024 aluminum alloy prepared by direct chill casting with melt shearing
Eisaabadi et al. Effect of Sr on the microstructure of electromagnetically stirred semi-solid hypoeutectic Al–Si alloys
Granath et al. Determining effect of slurry process parameters on semisolid A356 alloy microstructures produced by RheoMetal process
Reisi et al. Effects of stirring parameters on rheocast structure of Al–7.1 wt.% Si alloy
JP2001170757A (ja) 液体金属で冷却される方向性凝固法
Ziewiec et al. The microstructure development in arc-melt and melt-spun Fe50Ni10Cu20P10Si5B5 immiscible alloy
Quinelato et al. An experimental investigation of continuous casting process: Effect of pouring temperatures on the macrosegregation and macrostructure in steel slab
JP6264524B1 (ja) 鋼の連続鋳造方法
Boontein et al. Reduction in secondary dendrite arm spacing in cast aluminium alloy A356 by Sb addition
JP5408585B2 (ja) 鉄鋼製品の結晶粒の微細化方法
Liu et al. Influence of process papameters by vibrational cooling-shearing slope on microstructures of semi-solid ZAlSi9Mg alloy
Beil et al. A continuous casting device with electromagnetic stirring for production of ssm feedstock using Al-Si alloys
Flemings Dendrite fragmentation in semisolid casting: could we do this better?
Gao et al. Grain nucleation and growth behavior of (Cu, Ni) 6Sn5 in Sn–10Cu–1Ni alloy under pulse current: An in situ observation
Yang et al. Halo formation of Zn-Al alloys under conventional solidification and intensive convection solidification
Xiao-li et al. Microstructure evolution of A356 alloy in a novel rheocasting approach

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120628

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130719

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130729

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130924

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131021

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131028

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5408585

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees