JP5393254B2 - 非晶質合金の成形方法及び非晶質合金の成形装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の制御方法では、成形に用いる金型と材料溶湯の温度、成形品のサイズ等から、溶湯となる材料の最短結晶化時間及び当該最短結晶化時間における結晶化温度(以下、「Tnose」と称する。)に基づき、最短結晶化時間付近での材料溶湯の冷却速度を算出して材料溶湯の温度曲線が結晶化領域を通過するかどうかを予測している。
前記判定工程において、T1>Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。このとき、前記事前冷却工程において、前記金型の温度をTn以下に下げるように前記事前冷却が行われてもよい。
前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。
前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。
上述の金属材料から非晶質合金を成形するには、溶湯が急速冷却される必要があり、部分的に必要な冷却速度より遅い速度で冷却されると結晶を生じた状態で固化される部分が発生し、全体として非晶質合金の性能が劣化してしまう。
非晶質合金のうち、ガラス遷移領域(結晶化温度からガラス遷移温度を引いた値)が20℃以上である非晶質合金は、特に、金属ガラスと称される場合がある。
このような金属ガラスは、結晶金属のような凝固収縮を生じないことから、成形金型に対する高精度な転写性を有し、さらにガラス遷移領域ではガラスのような熱間プレス加工も可能であることから、成形品の形状自由度、寸法精度、生産性に優れている。また、金属ガラスは、その物性として低ヤング率・高強度であり、さらに熱に対して低膨張である。
溶解ユニット1は、図示しない質量測定機構及び溶解機構を有し、材料投入口1aから投入された金属材料を所定量秤量して成形に必要な量の溶湯を準備することができる。溶湯はチャンバー3内における突出長を調整可能なノズル(導入手段)6から金型60内に注入される。
チャンバー底部2の厚さ方向には、溶解ユニット1から延びるノズル6を進退可能に挿通させる図示しない貫通孔が設けられている。また、チャンバー底部2の内部には、外部から挿入された冷却媒体輸送管10(後述)が設けられている。
また、チャンバー3は、不図示の減圧部24および不活性ガス供給部25(図4参照)によって、内部の雰囲気が減圧した不活性ガス雰囲気に保持されている。
チャンバー3の内部には、底面部3a上に、冷却支持台7、金型台61、および金型交換アーム9が設けられ、天井部4の下面側に上冷却部8が配置されている。
まず、以下の説明に用いる金型60の形状について説明する。
金型60は、図2(a)及び図3に示すように、外形が円状の上面60eおよび下面60gを備え、それらの間に円筒面状の側面60fが形成された、全体として略円板ブロック状の金属部材である。
下面60gの中心部には、内部側に向かって、射出成形後の成形体の外形に対応する穴部が彫り込まれ、この穴部の内部が、材料溶湯が注入される成形空間60cを構成している。成形空間60cの形状は、図示の簡略化のため、一例として円柱の端面に円錐台が形成された成形体に対応する形状を描いている。
段穴部60aの内径は、ノズル6を外嵌できる大きさに設定されている。
各位置決め凹部60dは、段穴部60aの中心に対して精度よく位置出して形成されている。
また、位置決め凹部60dの図3の紙面奥行き方向の大きさ、位置は、本実施形態では、図6の水平方向から見た側面視で、成形空間60cを覆う又は略覆うことができる大きさ、位置に設定されている。
なお、模式図のため、図示は省略しているが、位置決め凹部60dの開口部には、位置決めを円滑に行うため面取りが設けられている。
冷却支持台7の概略構成は、底面部3a上に突出するノズル6の上方を跨ぐように設けられた金型60より大径の円板状の支持台部7aと、支持台部7aを底面部3a上に支持する4本の支持脚部7bと、金型60の位置決め凹部60dに嵌合することで、金型60を支持台部7aの上面である合わせ面7dの面内の位置を位置決めする一対の位置決め凸部7cとからなる。
貫通孔7eの内径は、ノズル6が貫通孔7eの内部を非接触で円滑に進退できる程度の径として、ノズル6の側面との隙間ができるだけ小さくなるようにすることが好ましい。
各位置決め凸部7cの合わせ面7d上の位置は、各位置決め凸部7cが各位置決め凹部60dに嵌合された状態で、金型60の段穴部60aの中心と、貫通孔7eの中心とが同軸上に整列される位置に設定される。
また、各位置決め凸部7cの合わせ面7dからの高さ寸法は、嵌合時に金型60の下面60gが、合わせ面7dに密着して当接できるように、嵌合相手の位置決め凹部60dの深さ寸法よりもわずかに小さい寸法とされる。
なお、模式図のため、図示は省略しているが、位置決め凸部7cの先端部には、位置決めを円滑に行うため面取りが設けられている。
本実施形態の射出成形はこの配置位置に設置された金型60に対して行われるので、以下、この配置位置を射出成形位置と称する。
脚部内流路7Aは、各支持脚部7bの内部に貫通して設けられ、チャンバー底部2の内部に配管された冷却媒体輸送管10と支持台部内流路7Bとに接続される流路である。
支持台部内流路7Bは、支持台部7aの内部で合わせ面7dに平行な面内を、貫通孔7eを中心として、外周側から内周側に向かって螺旋状に周回し、凸部内流路7Cの端部に接続される流路である。
凸部内流路7Cは、位置決め凸部7c内で蛇行を繰り返すように設けられ、両端部が2つの支持台部内流路7Bにそれぞれ接続される流路である。
上冷却部8の形状は、図3に示すように、射出成形位置に配置された金型60に対向する側に開口し、底部が鉛直上方に位置する全体として有底円筒状の部材である。
上冷却部8は、有底円筒状の底部の上面で、天井部4から鉛直下方に進退可能に設けられた上冷却部移動機構12の先端部に接続され、鉛直方向に移動可能に支持されている。
上冷却部8の開口の内面は、金型60の側面60fに外嵌する円筒内周面8cと、上側内面8bとからなる。上側内面8bの深さ方向の位置は、合わせ面8aからの深さが金型60の下面60gから上面60eまでの厚さ(以下、単に金型の厚さと称する)と略同程度に形成されている。このため、上冷却部8の開口の内面は、金型60の側面60fおよび上面60eを覆う円筒穴状に形成されている。
ただし、金型60の厚さの寸法バラツキを考慮すると、金型60に対して、上冷却部8を円滑に着脱するためには、上側内面8bは、金型60の厚さと同じ深さの位置に形成することができない場合がある。この場合は、金型60の厚さよりわずかに深い位置に設定するよりは、わずかに浅い位置に設定することがより好ましい。わずかに浅い位置に設定した場合、金型60の下面60g側の端部がわずかに上冷却部8で覆われないことになるが、全体としては金型60の外周面の略全面を覆っており、さらに上側内面8bと上面60eとが確実に密着して当接できるため、冷却効率が高くなる。
図3に示すように、上冷却部8の有底円筒状の側面部8dおよび有底円筒状の底部を構成する上面部8eの内部には、それぞれ側面部流路8C、上面部流路8D、および側面部流路8Eが設けられている。
側面部流路8Cは、一端部が、冷却媒体流入口8Aに接続され、上冷却部8の側面部内を上面部8e側に向かって螺旋状に周回し、他端部が上面部流路8Dの一方の端部と接続された流路である。
上面部流路8Dは、上面部8e内を上面部流路8Dと接続された一方の端部から径方向の対向位置の他方の端部まで、蛇行を繰り返すように設けられ、他方の端部において、側面部8d内を開口側に進んでから冷却媒体流出口8Bに接続される側面部流路8Eに接続されている。
本実施形態の開放位置は、合わせ面7d、8aとの間の距離が、金型60の厚さと位置決め凸部7cの高さとを加えた距離以上となる位置である。
上冷却部移動機構12としては、減圧雰囲気下で1軸方向に進退可能に設けられた適宜の1軸移動ステージや1軸アクチュエータなどを採用することができる。
金型台61の各金型載置部61aは、成形位置から離間した金型退避位置を構成する。
本実施形態の金型交換アーム9は、底面部3a状に基端が固定され、任意の金型載置部61aと支持台部7a上の位置との間で、金型60を移動させられるように、例えば、旋回、伸縮、屈曲等の自由度が設定されたロボットアーム9bと、ロボットアーム9bの先端に設けられた金型60を把持するハンド部9aとからなる。
また、天井部4の側部側からは、図1に示すように、冷却媒体輸送管10が挿入され、特に図示しないが、天井部4の内部を通してチャンバー3内の上冷却部8の冷却媒体流入口8A及び冷却媒体流出口8Bに連結されている。チャンバー3内の冷却媒体輸送管10は、上冷却部8の移動量に合わせて進退可能に設けられている。
冷却媒体貯蔵循環部5は、チャンバー底部2および天井部4の側方に配置され、チャンバー底部2および天井部4との間で、それぞれ独立な往復管路を形成する複数の冷却媒体輸送管10によって連結されている。
冷却媒体循環機構5aおよび冷却媒体冷却部5bは、それぞれ制御ユニット14に電気的に接続され、制御ユニット14から制御信号に応じて、それぞれ冷却媒体Cの流量や温度が制御される。
雰囲気制御部34は、減圧部24および不活性ガス供給部25に制御信号を送出して、溶解ユニット1およびチャンバー3の内部の減圧雰囲気および不活性ガス雰囲気を制御する。
また、冷却制御部33には、成形時において、金型台61に設置された金型60の事前冷却及び事後冷却を行うかどうかの判定及び冷却条件の設定を行う冷却態様決定部35が接続されている。冷却態様決定部35には、本体部11の操作入力部から入力された金型情報及び溶湯情報(後述)を受取り記憶する記憶手段36が接続されている。冷却態様決定部35お呼び記憶手段36の詳細な動作については後述する。
動作制御部32は、金型交換アーム9、上冷却部移動機構12、およびノズル移動機構22に制御信号を送出し、金型60の交換動作、上冷却部8の移動動作、ノズル6の移動動作等の各動作を制御する。
主制御部30は、成形装置50全体の動作シーケンスを制御するため、雰囲気制御部34、冷却制御部33、溶解制御部31、および動作制御部32と通信を行い、各制御信号の送出のタイミングを制御する。
図5は、本成形方法の流れを示すフローチャートである。本成形方法は、成形の準備を行う準備工程S10と、金型60の事前冷却が必要か否かを判定する事前冷却判定工程S20と、事前冷却が必要と判定されたときに溶湯の導入前に金型60を冷却する事前冷却工程S30と、金属材料から溶湯を生成して、金型60に導入する溶湯導入工程S40と、溶湯導入後に金型60の冷却が必要か否かを判定する事後冷却判定工程S50と、事後冷却が必要と判定されたときに金型60を冷却する事後冷却工程S60と、成形後に成形品を金型から取り出す取出工程S70とを備えている。
次に、上冷却部移動機構12によって、上冷却部8を装着位置まで下降させる。これにより、金型60の上面60eおよび側面60fが上冷却部8の上面内周面8bおよび円筒内周面8cによって覆われる状態となる。
制御ユニット14には、成形する金属材料の結晶化領域を特定するための情報(溶湯情報)と、成形体の質量、熱容量、溶湯射出時の温度、個数等の各種情報(成形体情報)と、金型の質量、熱容量、熱伝導率、溶湯と金型との接触面積(成形体の表面積と同一又は略同一)等の各種情報(金型情報)と、射出時の内圧、射出ガス圧等の射出条件を規定する情報が設定される。これらの設定は、ユーザが操作入力部を介して入力してもよいし、制御ユニット14が前回入力内容や参照テーブル等を用いて自動で設定してもよい。設定された情報は、記憶手段36に記憶される。
図7は、一般的な結晶化領域を示すモデル図である。図7に示すように、縦軸に材料溶湯の温度T(K)、横軸に時間t(秒)をとると、一般的な非晶質合金の結晶化領域は、Tnoseを頂点として、当該非晶質合金の融点Tmとガラス転移点Tgとの間の過冷却液体領域A2内において時間tの正方向に向かって開く二次関数曲線様の結晶化領域特定曲線C1(以下、単に「曲線C1」と称する。)に囲まれた領域A2として表すことができる。
1.当該金属材料について実験等により求めた曲線C1上に位置する少なくとも3点の結晶化境界点の座標(時間t及び温度T)
2.文献等により明らかにされているTnoseの温度a及び時間bと、実験等により求めた少なくとも1点の結晶化境界点の座標
a、b、及びαのすべての変数が求められると、曲線C1の形状が定まり、不等式t−b≧α(T−a)2を満たす温度と時間の条件(座標(t、T))の集合が結晶化領域A1として定義される。
外部に逃げる熱がないと仮定した場合、熱力学の第一法則より、溶湯が成形体になる際に失われる熱量は、金型60が受け取る熱量に等しいと考えることができる。そこで、m:金属材料の質量、ca:金属材料の比熱、ΔTa:金属材料(材料溶湯)の温度変化、M:金型60の質量、cb:金型60の比熱、ΔTb:金型60の温度変化とすると、溶湯が成形体になる際に失われる熱量及び金型60が受け取る熱量は、それぞれ|mcaΔTa|及び|McbΔTb|として表すことができ、これらは等しくなる。これを移動熱量j(j>0)とする。
式1:|mca(Ta1−Ta0)|=txsλ(Ta0−Tb0)
式2:|Mcb(Tb1−Tb0)|=txsλ(Ta0−Tb0)
式3:{mca(Ta1−Ta0)}2={txsλ(Ta0−Tb0)}2
式4:{Mcb(Tb1−Tb0)}2={txsλ(Ta0−Tb0)}2
式3の方程式をTa1について解くと、下記式5のようになる。
式5:Ta1=Ta0±txsλ(Ta0−Tb0)/mca
式6:Ta1=Ta0−txsλ(Ta0−Tb0)/mca
同様に、式4の方程式をTb1について解くと、下記式7のようになる。
式7:Tb1=Tb0−txsλ(Ta0−Tb0)/Mcb
式8:Ta0−txsλ(Ta0−Tb0)/mca=Tb0−txsλ(Ta0−Tb0)/Mcb
式8をtxについて解くと、以下の式9のようになる。
式9:tx=mca Mcb/sλ(mca+Mcb)
したがって、金属材料の質量及び比熱、金型60の質量、比熱及び熱伝導率、並びに作製される成形体の表面積が溶湯情報及び金型情報として与えられれば、これを式9に代入することによって熱平衡点Pに到達する予測時間t1を算出することができる。
式10:Ta1=Ta0−Mcb(Ta0−Tb0)/(mca+Mcb)
したがって、上述した各情報に加えて、溶湯導入時の溶湯及び金型60の温度が与えられれば、これらを式10(あるいは式9を式7に代入した式)に代入することによって温度T1の予測値が定まる。よって、図7のグラフ(以下、「判定グラフ」と称する。)における熱平衡点Pの座標が定まり、結晶化領域算出工程S21で取得された結晶化領域A1と熱平衡点Pとの位置関係を比較することが可能になる。
まず冷却態様決定部35は、Tnoseの座標(tn、Tn)を原点として判定グラフをQ1ないしQ4の4つの象限に分割し、熱平衡点Pの座標(t1、T1)がいずれの象限に位置するかを判断する。
熱平衡点Pに到達した後の予測熱履歴曲線C4の傾きは基本的にマイナスであるため、金型60の事前冷却によって熱平衡点Pにおける温度T1が最短結晶化温度Tn以下に下げられれば、予測熱履歴曲線C4は第3象限Q3側にシフトし、結晶化のリスクを大きく減らすことができる。ただし、事前冷却が強すぎると、溶湯の金型への充填性が不必要に低下されるので、本実施形態では、T1とTnとが同一となるように金型60の冷却目標温度が設定される。
この場合、冷却態様決定部35は事前冷却必要と判定し、金型60の冷却目標温度を熱平衡点Pの到達時間t1における結晶化領域A1の最低温度Tc(図7参照)以下になるように設定する。ただし、事前冷却が強すぎると、溶湯の金型への充填性が不必要に低下されるので、本実施形態では、T1とTcとが同一となるように金型60の冷却目標温度が設定される。
なお、冷却媒体の種類及び流量等によって決定される成形装置50の金型冷却能力によっては、上述の冷却目標温度まで金型60を冷却することが困難であることもある。その場合、冷却態様決定部35は、冷却能力の上限まで事前冷却を行うように設定する。この場合、結晶化のリスクを完全に排除することは困難であるが、一定の結晶化リスク低減効果を発揮することができる。
溶湯の導入後、処理はステップS50の事後冷却判定工程に進む。
式11:予測温度={(Tb(n+1)−Tbn)/t}×(時間)+{(t+tn)Tbn−tnTb(n+1)}}/t
このとき、式11における{(Tb(n+1)−Tbn)/t}が予測温度推移直線の傾きを表す。
具体的には、予測温度推移直線の傾きが正、すなわち、{(Tb(n+1)−Tbn)/t}>0の場合、又は、予測温度推移直線が結晶化領域特定曲線C1と交わる、すなわち、予測温度推移直線が結晶化領域A1を通る場合、冷却態様決定部35は結晶化リスクが高いと判断し、金型60の事後冷却を行うあるいはその冷却条件を強める。それ以外の場合は、事後冷却の冷却条件を緩和するあるいは事後冷却を停止する。なお、詳細な制御内容は、予測温度推移直線の傾きの値や予測温度推移直線と結晶化領域特定曲線C1との交点の座標等によって適宜設定されてよい。
以上が事後冷却判定工程S50の流れであり、この工程は、ステップS51における金型温度の計測値に基づいて、所定の計測間隔で繰り返し行われる。
成形終了条件を満たしていない場合(ステップS61におけるNo)、処理はステップS50に戻り、成形が継続されると共に、引き続き所定間隔で事後冷却判定が行われる。成形終了条件が満たされている場合(ステップS61におけるYes)、処理は取出工程S70に進む。
(実施例1)
成形する金属材料として、Zr基金属ガラスであるZr55Cu30Al10Ni5を使用した。溶湯情報及び金型情報の詳細は図10に示すとおりである。実施例1−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例1−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
成形する金属材料として、実施例1と同一の材料を使用した。金型の材質も実施例1と同一としたが、成形体の形状及び金型の質量を変更した。そのため、図10に示すように、溶湯情報及び金型情報のうち、金属材料の質量m、金型の質量M、及び成形体の表面積sが実施例1と異なっている。実施例2−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例2−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
成形する金属材料として、パラジウム(Pd)基金属ガラスであるPd40Cu30Ni10P20を使用した。溶湯情報及び金型情報は図10に示すとおりである。実施例3−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例3−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
成形する金属材料として、実施例3と同一の材料を使用した。金型の材質も実施例3と同一としたが、成形体の形状及び金型の質量を変更した。そのため、図10に示すように、溶湯情報及び金型情報のうち、金属材料の質量m、金型の質量M、及び成形体の表面積sが実施例3と異なっている。実施例4−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例4−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
実施例1及び2では、実験によって取得された結晶化境界点3点(65s、767K)、(68s、741K)、及び(70s、731K)の情報にもとづいて冷却態様決定部35が結晶化領域算出工程S21において演算を行った。その結果、結晶化領域特定曲線C1を表す下記の式13が得られた。
式13:t−64.68669≧0.0023504(T−778.55)2
したがって、Tnoseを規定する最短結晶化時間tn及び最短結晶化温度Tnは、それぞれ図10に示すように64.7秒及び778.6Kとなった。
式14:t−100≧0.11478(T−683)2
したがって、いずれの例においても、Tnoseを含む結晶化領域A1を適切に算出することができた。
実施例1の熱平衡点Pは、上述の第3象限Q3に位置するため、判定工程S23において事前冷却不要と判定された。
実施例2の熱平衡点Pは、上述の第4象限Q4に位置していたが、結晶化領域A1外に位置していたため、判定工程S23において事前冷却不要と判定された。
実施例4の熱平衡点Pは、上述の第1象限Q1に位置していたが、t1における曲線C2上の最低温度Tc(約662K)とT1との差分約70Kが成形装置50の冷却能力を超えていたため、判定工程S23において、冷却限界まで事前冷却を行うように冷却態様決定部35が設定を行い、事前冷却工程S30において金型60の事前冷却が行われた。
事後冷却判定及び事後冷却を行った実施例においては、いずれも金型60の温度計測を0.5秒間隔で行った。
しかし、一部結晶化が生じた実施例においても、事前冷却と併せて事後冷却を必要に応じて行うことによって、実施例2−2および4−2に示すように、より良好に非晶質性が保持された成形体を得ることができた。なお、事後冷却を組み合わせることによって充填性が悪くなることはなかった。
以上より、事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30を備える本成形方法で、成形体の結晶化のリスクが低減され、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を組み合わせることで、結晶化のリスクはさらに低減され、非晶質性が良好に保たれた成形体を得ることができることが確認された。
13 冷却部(冷却手段)
35 冷却態様決定部
36 記憶手段
50 非晶質合金の成形装置
60 金型
P 熱平衡点
S20 事前冷却判定工程
S21 結晶化領域算出工程
S22 熱平衡点予測工程
S23 判定工程
S30 事前冷却工程
S50 事前冷却判定工程
S51 金型温度計測工程
S52 予測温度推移算出工程
S53 判定工程(第2判定工程)
S60 事後冷却工程
T1 熱平衡温度
t1 熱平衡時間
Tn 最短結晶化時間における結晶化温度
tn 最短結晶化時間
Claims (14)
- 非晶質合金材料を溶解した材料溶湯を金型内に導入する非晶質合金の成形方法であって、
前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを制御ユニットによって判定する事前冷却判定工程と、
前記事前冷却判定工程において前記事前冷却が必要であると判定されたときに、前記事前冷却を行う事前冷却工程と、
を備え、
前記事前冷却判定工程は、
前記非晶質合金材料の最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseを前記制御ユニットによって取得する結晶化領域算出工程と、
前記金型の金型情報と前記材料溶湯の溶湯情報とにもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度T1と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間t1とを前記制御ユニットによって予測する熱平衡点予測工程と、
前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを前記制御ユニットによって判定する判定工程と、を有することを特徴とする非晶質合金の成形方法。 - 前記判定工程において、T1<Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要がないと判定されることを特徴とする請求項1に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記判定工程において、T1>Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記事前冷却工程において、前記金型の温度をTn以下に下げるように前記事前冷却が行われることを特徴とする請求項3に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記金型情報は、前記金型を構成する材料の熱伝導率及び比熱と、前記金型の質量と、前記材料溶湯導入前の前記金型の温度と、前記金型と前記材料溶湯との接触面積とを含み、
前記溶湯情報は、前記材料溶湯の比熱と、前記材料溶湯の質量と、前記材料溶湯の導入時の温度とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。 - 前記結晶化領域算出工程において、前記金属材料が結晶化を起こす条件を示す結晶化領域が算出されることを特徴とする請求項1に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記結晶化領域は、少なくとも3点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されることを特徴とする請求項8に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記結晶化領域は、予め明らかになっている前記Tnose及び少なくとも1点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されることを特徴とする請求項8に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の非晶質合金の成形方法。
- 前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのとき、
前記熱平衡点が前記結晶化領域内に位置する場合は前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定し、
前記熱平衡点が前記結晶化領域外に位置する場合は前記事前冷却の必要がないと判定されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の非晶質合金の成形方法。 - 前記材料溶湯が前記金型内に導入された後に前記金型を冷却する事後冷却が必要かどうかを判定する事後冷却判定工程と、
前記事後冷却判定工程において前記事後冷却が必要であると判定されたときに、前記金型の事後冷却を行う事後冷却工程と、
をさらに備え、
前記事後冷却判定工程は、
前記材料溶湯の導入後に前記金型の温度を計測する金型温度計測工程と、
前記金型温度計測工程で得られた前記金型の温度にもとづいて、前記金型の予測温度推移を算出する予測温度推移算出工程と、
前記予測温度推移算出工程における算出結果に基づいて、前記事後冷却が必要かどうかを判定する第2判定工程と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。 - 金型を用いて非晶質合金の成形を行う成形装置であって、
前記金型を冷却する冷却手段と、
前記非晶質合金の材料が溶解された材料溶湯を前記金型に導入する導入手段と、
前記金型の金型情報と、前記材料溶湯の溶湯情報と、最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseとを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に接続されて設けられ、前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを判定する冷却態様決定部と、
を備え、
前記冷却態様決定部は、前記金型情報及び前記溶湯情報にもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間とを予測し、前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを判定することを特徴とする非晶質合金の成形装置。
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