JP5393254B2 - 非晶質合金の成形方法及び非晶質合金の成形装置 - Google Patents

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Description

本発明は、非晶質合金の成形方法及び非晶質合金の成形装置に関する。
非晶質合金の鋳造において結晶化を避けるためには、成形材料が溶解された材料溶湯の温度と冷却速度とを制御し、結晶化領域を避けつつ一定以上の冷却速度で急冷することが必要であることが知られている。
このような制御の方法として、例えば、特許文献1には、材料溶湯を金型内に導入してから、熱交換器によって冷却速度を変化させ、結晶化領域を避けるものが記載されている。
特許文献1に記載の制御方法では、成形に用いる金型と材料溶湯の温度、成形品のサイズ等から、溶湯となる材料の最短結晶化時間及び当該最短結晶化時間における結晶化温度(以下、「Tnose」と称する。)に基づき、最短結晶化時間付近での材料溶湯の冷却速度を算出して材料溶湯の温度曲線が結晶化領域を通過するかどうかを予測している。
特表2005−515898号公報
しかしながら、特許文献1に記載の制御方法では、材料溶湯が金型に導入された後に冷却速度の調節が開始される。したがって、材料溶湯の温度推移が結晶化領域を通過すると予測された場合であっても、冷却速度の調節が間に合わない結果、材料溶湯の温度推移(熱履歴)が結晶化領域を回避しきれず、結晶化を生じてしまうことがあるという問題がある。
これを避けるには、材料溶湯を金型に注入する前に金型を冷却しておく方法が考えられるが、一般に金型を冷却すれば、材料溶湯の金型内への充填率は低下し、成形品の仕上がりに影響を与える。そのため、結晶化領域回避の観点からは事前に金型を冷却する必要がない場合にまで一律に冷却を行うと、得られる成形品全体の品質が低下してしまう恐れがある。さらに非晶質合金の材料によってはTnoseが明らかになっていない場合も少なくなく、金型を予め冷却すべきかどうかの判断は容易ではないことも多い。
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、材料溶湯の充填率に及ぼす影響を最小限に抑えつつ、結晶化リスクを大きく低減できる非晶質合金の成形方法及び非晶質合金の成形装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様である非晶質合金の成形方法は、非晶質合金材料を溶解した材料溶湯を金型内に導入する非晶質合金の成形方法であって、前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを制御ユニットによって判定する事前冷却判定工程と、前記事前冷却判定工程において前記事前冷却が必要であると判定されたときに、前記事前冷却を行う事前冷却工程と、を備え、前記事前冷却判定工程は、前記非晶質合金材料の最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseを前記制御ユニットによって取得する結晶化領域算出工程と、前記金型の金型情報と前記材料溶湯の溶湯情報とにもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度T1と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間t1とを前記制御ユニットによって予測する熱平衡点予測工程と、前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを前記制御ユニットによって判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
本発明の非晶質合金の成形方法によれば、事前冷却判定工程において、熱平衡点とTnoseの位置関係にもとづいて金型の事前冷却の必要性が判定されるため、結晶化を防ぐために真に必要な場合にのみ金型の事前冷却が行われる。
前記判定工程において、T1<Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要がないと判定されてもよい。
前記判定工程において、T1>Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。このとき、前記事前冷却工程において、前記金型の温度をTn以下に下げるように前記事前冷却が行われてもよい。
前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。
前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されてもよい。
前記金型情報は、前記金型を構成する材料の熱伝導率及び比熱と、前記金型の質量と、前記材料溶湯導入前の前記金型の温度と、前記金型と前記材料溶湯との接触面積とを含み、前記溶湯情報は、前記材料溶湯の比熱と、前記材料溶湯の質量と、前記材料溶湯の導入時の温度とを含んでもよい。この場合、成形体や金型の形状が複雑であっても、より高精度に事前冷却の必要性を判定することができる。
前記結晶化領域算出工程において、前記金属材料が結晶化を起こす条件を示す結晶化領域が算出されてもよい。このとき、前記結晶化領域は、少なくとも3点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されてもよいし、予め明らかになっている前記Tnose及び少なくとも1点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されてもよい。これらの場合、より確実に結晶化のリスクを低減することができる。
前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定してもよい。
前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのとき、前記熱平衡点が前記結晶化領域内に位置する場合は前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定し、前記熱平衡点が前記結晶化領域外に位置する場合は前記事前冷却の必要がないと判定されてもよい。この場合、判定が細分化され、より確実に充填性の低下を防ぎつつ結晶化のリスクを低減することができる。
本発明の非晶質合金の成形方法は、前記材料溶湯が前記金型内に導入された後に前記金型を冷却する事後冷却が必要かどうかを判定する事後冷却判定工程と、前記事後冷却判定工程において前記事後冷却が必要であると判定されたときに、前記金型の事後冷却を行う事後冷却工程とをさらに備え、前記事後冷却判定工程は、前記材料溶湯の導入後に前記金型の温度を計測する金型温度計測工程と、前記金型温度計測工程で得られた前記金型の温度にもとづいて、前記金型の予測温度推移を算出する予測温度推移算出工程と、前記予測温度推移算出工程における算出結果に基づいて、前記事後冷却が必要かどうかを判定する第2判定工程とを有してもよい。この場合、結晶化のリスクをさらに低減することができる。
本発明の第2の態様である非晶質合金の成形装置は、金型を用いて非晶質合金の成形を行う成形装置であって、前記金型を冷却する冷却手段と、前記非晶質合金の材料が溶解された材料溶湯を前記金型に導入する導入手段と、前記金型の金型情報と、前記材料溶湯の溶湯情報と、最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseとを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に接続されて設けられ、前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを判定する冷却態様決定部とを備え、前記冷却態様決定部は、前記金型情報及び前記溶湯情報にもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間とを予測し、前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを判定することを特徴とする。
本発明の非晶質合金の成形方法及び非晶質合金の成形装置によれば、材料溶湯の充填率に及ぼす影響を最小限に抑えつつ、結晶化を確実に回避することができる。
本発明の一実施形態の非晶質合金の成形方法を実行する非晶質合金の成形装置の構成を示す図である。 (a)は、同成形装置の金型及び冷却支持台を示す図であり、(b)は、同金型が同冷却支持台に設置された状態を示す図である。 同成形装置の上冷却部及びノズル、並びに同金型及び同冷却支持台を示す断面図である。 同成形装置の機能ブロック図である。 本実施形態の非晶質合金の成形方法の流れを示すフローチャートである。 同成形方法の事前冷却判定工程の詳細を示すフローチャートである。 一般的な結晶化領域を示すモデル図である。 材料溶湯及び金型の熱履歴を示すモデル図である。 同成形方法の事後冷却判定工程の詳細を示すフローチャートである。 同成形方法の各実施例の内容を示す表である。
本発明の一実施形態について、図1から図10を参照して説明する。図1は、本実施形態の非晶質合金の成形方法(以下、「本成形方法」と称する。)を実行する非晶質合金の成形装置(以下、単に「成形装置」と称する)の構成を示す図である。
本実施形態の成形装置50は、非晶質合金の材料となる金属材料を加熱溶解して材料溶湯(以下、単に「溶湯」と称することがある。)とし、金型60の成形空間内に射出して冷却固化することで、金型60の成形空間の形状に沿った成形品を製造するものである。
非晶質合金とは、複数の金属元素が結晶構造を形成せずに凝固(アモルファス化)した合金のことである。非晶質合金は、複数の金属元素からなる金属材料の溶湯を、ガラス遷移温度以下になるまで急速冷却することにより形成される。非晶質合金は、通常の結晶金属に見受けられるような結晶粒界を有さず、結晶粒界を起因とした粒界腐食(結晶粒界に沿って腐食が進行する現象)を生じないことから、耐食性に優れている。
上述の金属材料から非晶質合金を成形するには、溶湯が急速冷却される必要があり、部分的に必要な冷却速度より遅い速度で冷却されると結晶を生じた状態で固化される部分が発生し、全体として非晶質合金の性能が劣化してしまう。
非晶質合金の例としては、例えば、チタン(Ti)基合金、鉄(Fe)基合金、ジルコニウム(Zr)基合金、マグネシウム(Mg)基合金などを挙げることができる。
非晶質合金のうち、ガラス遷移領域(結晶化温度からガラス遷移温度を引いた値)が20℃以上である非晶質合金は、特に、金属ガラスと称される場合がある。
このような金属ガラスは、結晶金属のような凝固収縮を生じないことから、成形金型に対する高精度な転写性を有し、さらにガラス遷移領域ではガラスのような熱間プレス加工も可能であることから、成形品の形状自由度、寸法精度、生産性に優れている。また、金属ガラスは、その物性として低ヤング率・高強度であり、さらに熱に対して低膨張である。
射出成形装置50は、溶解ユニット1、チャンバー底部2、チャンバー3、天井部4、冷却媒体貯蔵循環部5、および制御ユニット14(後述)を備えている。
溶解ユニット1は、図1に示すように、内部の雰囲気を減圧した不活性ガス雰囲気に保持することができるように、函型の筐体1bに覆われている。筐体1bの側面には、金属材料を内部に投入するために開閉可能に設けられた原材料投入口1aが設けられている。
溶解ユニット1は、図示しない質量測定機構及び溶解機構を有し、材料投入口1aから投入された金属材料を所定量秤量して成形に必要な量の溶湯を準備することができる。溶湯はチャンバー3内における突出長を調整可能なノズル(導入手段)6から金型60内に注入される。
チャンバー底部2は、溶解ユニット1の筐体1b上に断熱して設置された構造部材であり、チャンバー底部2の上面はチャンバー3の底面部3aを構成している。
チャンバー底部2の厚さ方向には、溶解ユニット1から延びるノズル6を進退可能に挿通させる図示しない貫通孔が設けられている。また、チャンバー底部2の内部には、外部から挿入された冷却媒体輸送管10(後述)が設けられている。
チャンバー3は、図1に示すように、複数の金型60を用いた射出成形を、連続的かつ遠隔的に行うために直方体状に囲われた密閉空間であり、チャンバー底部2の上面で構成された底面部3aの外周は、3つの側面3b、および本体部11で囲まれ、これら側面3bおよび本体部11の上端部には、底面部3aに対向して天井部4が設けられている。
また、チャンバー3は、不図示の減圧部24および不活性ガス供給部25(図4参照)によって、内部の雰囲気が減圧した不活性ガス雰囲気に保持されている。
チャンバー3の内部には、底面部3a上に、冷却支持台7、金型台61、および金型交換アーム9が設けられ、天井部4の下面側に上冷却部8が配置されている。
冷却支持台7、上冷却部8等の細部形状は、金型60の外形に合わせて適宜変更すべきものである。
まず、以下の説明に用いる金型60の形状について説明する。
金型60は、図2(a)及び図3に示すように、外形が円状の上面60eおよび下面60gを備え、それらの間に円筒面状の側面60fが形成された、全体として略円板ブロック状の金属部材である。
下面60gの中心部には、内部側に向かって、射出成形後の成形体の外形に対応する穴部が彫り込まれ、この穴部の内部が、材料溶湯が注入される成形空間60cを構成している。成形空間60cの形状は、図示の簡略化のため、一例として円柱の端面に円錐台が形成された成形体に対応する形状を描いている。
成形空間60cの下面60g側の端部には、図3に示すように、下面60gから内部側に設けられた平面視円形の段穴部60aと、段穴部60aの底面(図3の上側)の中心に成形空間60cまで貫通し設けられた段穴部60aより小径の開口60bとが設けられている。
段穴部60aの内径は、ノズル6を外嵌できる大きさに設定されている。
成形空間60cの側方において径方向に互いに対向する2箇所には、下面60gから内部側に向かう直方体状の角穴からなる位置決め凹部60dが設けられている。
各位置決め凹部60dは、段穴部60aの中心に対して精度よく位置出して形成されている。
また、位置決め凹部60dの図3の紙面奥行き方向の大きさ、位置は、本実施形態では、図6の水平方向から見た側面視で、成形空間60cを覆う又は略覆うことができる大きさ、位置に設定されている。
なお、模式図のため、図示は省略しているが、位置決め凹部60dの開口部には、位置決めを円滑に行うため面取りが設けられている。
金型60の材質は、射出時の材料溶湯の温度に対する耐熱性がある高融点材料であれば、適宜の材質を採用することができる。例えば、無酸素銅、ジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2)やMn、Ti、あるいは、ジルコニアやTiを含む合金などを採用することができる。
冷却支持台7は、底面部3aの上方で、金型60を一定の成形位置に位置決めして配置し、金型60を冷却する冷却ユニットである。
冷却支持台7の概略構成は、底面部3a上に突出するノズル6の上方を跨ぐように設けられた金型60より大径の円板状の支持台部7aと、支持台部7aを底面部3a上に支持する4本の支持脚部7bと、金型60の位置決め凹部60dに嵌合することで、金型60を支持台部7aの上面である合わせ面7dの面内の位置を位置決めする一対の位置決め凸部7cとからなる。
支持台部7aの平面視の中心には、底面部3aから進出されるノズル6を挿通可能な貫通孔7eが厚さ方向に貫通して設けられている。
貫通孔7eの内径は、ノズル6が貫通孔7eの内部を非接触で円滑に進退できる程度の径として、ノズル6の側面との隙間ができるだけ小さくなるようにすることが好ましい。
各位置決め凸部7cの合わせ面7d上の位置は、各位置決め凸部7cが各位置決め凹部60dに嵌合された状態で、金型60の段穴部60aの中心と、貫通孔7eの中心とが同軸上に整列される位置に設定される。
また、各位置決め凸部7cの合わせ面7dからの高さ寸法は、嵌合時に金型60の下面60gが、合わせ面7dに密着して当接できるように、嵌合相手の位置決め凹部60dの深さ寸法よりもわずかに小さい寸法とされる。
なお、模式図のため、図示は省略しているが、位置決め凸部7cの先端部には、位置決めを円滑に行うため面取りが設けられている。
このような構成により、2つの位置決め凹部60dが冷却支持台7の位置決め凸部7cにそれぞれ嵌合されるとともに、図2(b)に示すように、金型60の下面60gが冷却支持台7の合わせ面7dに密着して当接された状態では、金型60が射出ノズル部6に対して一定の位置関係に位置決めされる。
本実施形態の射出成形はこの配置位置に設置された金型60に対して行われるので、以下、この配置位置を射出成形位置と称する。
冷却支持台7の内部には、図3に示すように、冷却媒体輸送管10から供給される冷却媒体Cを他の冷却媒体輸送管10に帰還させて循環させるため、脚部内流路7A、支持台部内流路7B、および凸部内流路7Cで構成される2系統の流路が設けられている。
脚部内流路7Aは、各支持脚部7bの内部に貫通して設けられ、チャンバー底部2の内部に配管された冷却媒体輸送管10と支持台部内流路7Bとに接続される流路である。
支持台部内流路7Bは、支持台部7aの内部で合わせ面7dに平行な面内を、貫通孔7eを中心として、外周側から内周側に向かって螺旋状に周回し、凸部内流路7Cの端部に接続される流路である。
凸部内流路7Cは、位置決め凸部7c内で蛇行を繰り返すように設けられ、両端部が2つの支持台部内流路7Bにそれぞれ接続される流路である。
このような流路構成により、対をなす2つの支持脚部7b内の脚部内流路7Aと、一方の位置決め凸部7c内の凸部内流路7Cと、対をなす2つの支持台部内流路7Bとが、一続きの連続的な1系統の流路を形成し、同様の経路が他方の位置決め凸部7cにも形成され、これらにより冷却支持台7の内部を網羅する2系統の冷却媒体の流路が形成されている。
上冷却部8は、冷却支持台7上の射出成形位置に配置された金型60に着脱可能に設けられ、冷却支持台7とともに冷却部(冷却手段)13を構成して、射出成形位置に配置された金型60の外周面の全面又は略全面を覆った状態で金型60を冷却する。
上冷却部8の形状は、図3に示すように、射出成形位置に配置された金型60に対向する側に開口し、底部が鉛直上方に位置する全体として有底円筒状の部材である。
上冷却部8は、有底円筒状の底部の上面で、天井部4から鉛直下方に進退可能に設けられた上冷却部移動機構12の先端部に接続され、鉛直方向に移動可能に支持されている。
上冷却部8の円筒部の外径は、支持台部7aの外径と略同等とされ、開口の設けられた軸方向の端部には、支持台部7aの合わせ面7dと密着して当接可能な合わせ面8aが形成されている。
上冷却部8の開口の内面は、金型60の側面60fに外嵌する円筒内周面8cと、上側内面8bとからなる。上側内面8bの深さ方向の位置は、合わせ面8aからの深さが金型60の下面60gから上面60eまでの厚さ(以下、単に金型の厚さと称する)と略同程度に形成されている。このため、上冷却部8の開口の内面は、金型60の側面60fおよび上面60eを覆う円筒穴状に形成されている。
上側内面8bの深さ方向の位置が金型60の厚さと同じであると、金型60は、冷却支持台7および上冷却部8によって、外周面の略全面が密着状態、かつ貫通孔7eを除く略密閉状態に覆われるため冷却効率が高くなる。そのため、上側内面8bは、金型60の厚さと同じ深さの位置に形成されることが最も好ましい。
ただし、金型60の厚さの寸法バラツキを考慮すると、金型60に対して、上冷却部8を円滑に着脱するためには、上側内面8bは、金型60の厚さと同じ深さの位置に形成することができない場合がある。この場合は、金型60の厚さよりわずかに深い位置に設定するよりは、わずかに浅い位置に設定することがより好ましい。わずかに浅い位置に設定した場合、金型60の下面60g側の端部がわずかに上冷却部8で覆われないことになるが、全体としては金型60の外周面の略全面を覆っており、さらに上側内面8bと上面60eとが確実に密着して当接できるため、冷却効率が高くなる。
なお、上側内面8bと上面60eとの間に隙間があっても、この隙間による断熱効果が無視できる等の場合には、わずかに深い設定としてもよい。この場合、合わせ面8aと合わせ面7dとが密着して当接され、金型60の外周面である上面60e、側面60f、下面60gが冷却支持台7および上冷却部8で囲まれて、略全面が略密閉状態に覆われる。
上冷却部8の開口の近傍の側面部8dの外側には、冷却媒体輸送管10に接続された冷却媒体流入口8Aおよび冷却媒体流出口8Bが設けられている。
図3に示すように、上冷却部8の有底円筒状の側面部8dおよび有底円筒状の底部を構成する上面部8eの内部には、それぞれ側面部流路8C、上面部流路8D、および側面部流路8Eが設けられている。
側面部流路8Cは、一端部が、冷却媒体流入口8Aに接続され、上冷却部8の側面部内を上面部8e側に向かって螺旋状に周回し、他端部が上面部流路8Dの一方の端部と接続された流路である。
上面部流路8Dは、上面部8e内を上面部流路8Dと接続された一方の端部から径方向の対向位置の他方の端部まで、蛇行を繰り返すように設けられ、他方の端部において、側面部8d内を開口側に進んでから冷却媒体流出口8Bに接続される側面部流路8Eに接続されている。
このような流路構成により、上冷却部8の側面部8d、上面部8eの内部には、冷却媒体流入口8Aに流入された冷却媒体Cが、側面部流路8Cによって側面部8d内を周回し、上面部流路8Dによって上面部8e内に流通し、側面部流路8Eを通って冷却媒体流出口8Bに流通して、上冷却部8の内部を網羅する1系統の流路が形成されている。
上冷却部移動機構12の鉛直方向の移動ストロークは、上冷却部8の合わせ面8aを冷却支持台7の合わせ面7dに密着して当接できる位置である装着位置と、金型60を冷却支持台7上から取り出すことができる距離だけ離れた開放位置との間で往復できる距離に設定する。
本実施形態の開放位置は、合わせ面7d、8aとの間の距離が、金型60の厚さと位置決め凸部7cの高さとを加えた距離以上となる位置である。
上冷却部移動機構12としては、減圧雰囲気下で1軸方向に進退可能に設けられた適宜の1軸移動ステージや1軸アクチュエータなどを採用することができる。
金型台61は、図1に示すように、複数の金型60を交換可能に収容する棚状の複数の金型載置部61aが設けられた部材であり、本実施形態では冷却支持台7の側方に2台配置されている。
金型台61の各金型載置部61aは、成形位置から離間した金型退避位置を構成する。
金型交換アーム9は、成形工程に使用前または使用後の金型60を、金型台61と冷却支持台7上の成形位置と金型退避位置との間で移動させて、金型60の交換を行うものである。
本実施形態の金型交換アーム9は、底面部3a状に基端が固定され、任意の金型載置部61aと支持台部7a上の位置との間で、金型60を移動させられるように、例えば、旋回、伸縮、屈曲等の自由度が設定されたロボットアーム9bと、ロボットアーム9bの先端に設けられた金型60を把持するハンド部9aとからなる。
天井部4は、チャンバー3の上部側を密閉して、チャンバー3の天井を構成するもので、上冷却部移動機構12の基端部が取り付けられている。
また、天井部4の側部側からは、図1に示すように、冷却媒体輸送管10が挿入され、特に図示しないが、天井部4の内部を通してチャンバー3内の上冷却部8の冷却媒体流入口8A及び冷却媒体流出口8Bに連結されている。チャンバー3内の冷却媒体輸送管10は、上冷却部8の移動量に合わせて進退可能に設けられている。
冷却媒体貯蔵循環部5は、冷却支持台7および上冷却部8を冷却するため、例えば、水などの流体からなる冷却媒体Cを、冷却媒体輸送管10と、冷却支持台7の内部の流路である脚部内流路7A、支持台部内流路7B、凸部内流路7Cと、上冷却部8の内部の流路である側面部流路8C、上面部流路8D、側面部流路8Eとを通して循環させるものである。
冷却媒体貯蔵循環部5の概略構成は、図4に示すように、冷却媒体Cを流路内に循環させるポンプなどからなる冷却媒体循環機構5aと、冷却支持台7および上冷却部8側で加熱された後に冷却媒体貯蔵循環部5内に帰還した冷却媒体に対して熱交換を行って冷却し、冷却媒体循環機構5aに送出する冷却媒体冷却部5bとからなる。
冷却媒体貯蔵循環部5は、チャンバー底部2および天井部4の側方に配置され、チャンバー底部2および天井部4との間で、それぞれ独立な往復管路を形成する複数の冷却媒体輸送管10によって連結されている。
冷却媒体循環機構5aおよび冷却媒体冷却部5bは、それぞれ制御ユニット14に電気的に接続され、制御ユニット14から制御信号に応じて、それぞれ冷却媒体Cの流量や温度が制御される。
図4は、成形装置50の機能ブロック図である。溶解ユニット1、冷却媒体貯蔵循環部5の冷却媒体循環機構5aおよび冷却媒体冷却部5b、金型交換アーム9、上冷却部移動機構12、ノズル6の突出長を調節するノズル移動機構22、減圧部24、及び不活性ガス供給部25の各機構は、いずれも制御ユニット14に接続されている。
制御ユニット14は、成形装置50の各装置部分にそれぞれ制御信号を送出して各装置部分の制御を行うもので、本実施形態では本体部11に内蔵されている。また、特に図示しないが、作業者が制御ユニット14により動作制御を行うための制御データを入力するため、例えばキーボード、マウスなどの操作入力部や、操作画面を表示するためのモニタなどが、本体部11に設けられている。
制御ユニット14の機能構成は、図4に示すように、雰囲気制御部34、冷却制御部33、溶解制御部31、動作制御部32、および主制御部30からなる。
雰囲気制御部34は、減圧部24および不活性ガス供給部25に制御信号を送出して、溶解ユニット1およびチャンバー3の内部の減圧雰囲気および不活性ガス雰囲気を制御する。
冷却制御部33は、冷却媒体循環機構5aおよび冷却媒体冷却部5bに制御信号を送出して、冷却媒体Cの流量および温度を制御する。
また、冷却制御部33には、成形時において、金型台61に設置された金型60の事前冷却及び事後冷却を行うかどうかの判定及び冷却条件の設定を行う冷却態様決定部35が接続されている。冷却態様決定部35には、本体部11の操作入力部から入力された金型情報及び溶湯情報(後述)を受取り記憶する記憶手段36が接続されている。冷却態様決定部35お呼び記憶手段36の詳細な動作については後述する。
溶解制御部31は、溶解ユニット1の質量測定部、溶解機構等の各部に制御信号を送出して、1回の射出成形に使用する金属材料を秤量して加熱溶解して溶湯を形成する。
動作制御部32は、金型交換アーム9、上冷却部移動機構12、およびノズル移動機構22に制御信号を送出し、金型60の交換動作、上冷却部8の移動動作、ノズル6の移動動作等の各動作を制御する。
主制御部30は、成形装置50全体の動作シーケンスを制御するため、雰囲気制御部34、冷却制御部33、溶解制御部31、および動作制御部32と通信を行い、各制御信号の送出のタイミングを制御する。
制御ユニット14は、本実施形態では、適宜のハードウェアと、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータを含んで構成され、このコンピュータにより制御プログラムを実行することで上記の各制御機能を実現している。
以上のように構成された成形装置50の使用時の動作、及び成形装置50を用いて行う本成形方法について説明する。
図5は、本成形方法の流れを示すフローチャートである。本成形方法は、成形の準備を行う準備工程S10と、金型60の事前冷却が必要か否かを判定する事前冷却判定工程S20と、事前冷却が必要と判定されたときに溶湯の導入前に金型60を冷却する事前冷却工程S30と、金属材料から溶湯を生成して、金型60に導入する溶湯導入工程S40と、溶湯導入後に金型60の冷却が必要か否かを判定する事後冷却判定工程S50と、事後冷却が必要と判定されたときに金型60を冷却する事後冷却工程S60と、成形後に成形品を金型から取り出す取出工程S70とを備えている。
まず、ステップS10の準備工程において、溶解ユニット1およびチャンバー3の内部の雰囲気が、減圧部24および不活性ガス供給部25によって、一定の減圧下の不活性雰囲気に調整される。次に、ユーザの入力又は自動プログラム等によって選択された金型60が、金型交換アーム9によって金型61から冷却支持台7上に移動されて設置される。このとき、各位置決め凹部60dを冷却支持台7の位置決め凸部7cにそれぞれ嵌合させ、下面60gを合わせ面7dに密着して当接させる。
次に、上冷却部移動機構12によって、上冷却部8を装着位置まで下降させる。これにより、金型60の上面60eおよび側面60fが上冷却部8の上面内周面8bおよび円筒内周面8cによって覆われる状態となる。
制御ユニット14には、成形する金属材料の結晶化領域を特定するための情報(溶湯情報)と、成形体の質量、熱容量、溶湯射出時の温度、個数等の各種情報(成形体情報)と、金型の質量、熱容量、熱伝導率、溶湯と金型との接触面積(成形体の表面積と同一又は略同一)等の各種情報(金型情報)と、射出時の内圧、射出ガス圧等の射出条件を規定する情報が設定される。これらの設定は、ユーザが操作入力部を介して入力してもよいし、制御ユニット14が前回入力内容や参照テーブル等を用いて自動で設定してもよい。設定された情報は、記憶手段36に記憶される。
図6は、事前冷却判定工程S20の詳細を示すフローチャートである。事前冷却判定工程S20は、Tnoseを含む材料溶湯の結晶化領域を算出する結晶化領域算出工程S21と、金型60に導入された溶湯及び金型60の熱平衡点(後述)を算出する熱平衡点予測工程S22と、結晶化領域算出工程S21及び熱平衡点予測工程S22の算出結果にもとづいて、事前冷却の有無及び条件を決定する判定工程S23とを備えている。
ステップS21の結晶化領域算出工程では、制御ユニット14に設定された溶湯情報にもとづいて冷却態様決定部35が演算を行い、成形する金属材料からなる材料溶湯の結晶化領域が特定される。
図7は、一般的な結晶化領域を示すモデル図である。図7に示すように、縦軸に材料溶湯の温度T(K)、横軸に時間t(秒)をとると、一般的な非晶質合金の結晶化領域は、Tnoseを頂点として、当該非晶質合金の融点Tmとガラス転移点Tgとの間の過冷却液体領域A2内において時間tの正方向に向かって開く二次関数曲線様の結晶化領域特定曲線C1(以下、単に「曲線C1」と称する。)に囲まれた領域A2として表すことができる。
曲線C1を特定するためには、数式t−b=α(T−a)において、Tnoseの時間(最短結晶化時間tn)及び温度(最短結晶化時間tnにおける結晶化温度Tn)をそれぞれ示す変数b及びaと、曲線C1の勾配(開き角度)を決定する変数αを求めればよい。これらの変数を求めるために、冷却態様決定部35は制御ユニット14に設定された溶湯情報にもとづいて上記数式の演算を行う。したがって、溶湯情報としては、少なくとも以下のいずれかが必要となる。
1.当該金属材料について実験等により求めた曲線C1上に位置する少なくとも3点の結晶化境界点の座標(時間t及び温度T)
2.文献等により明らかにされているTnoseの温度a及び時間bと、実験等により求めた少なくとも1点の結晶化境界点の座標
a、b、及びαのすべての変数が求められると、曲線C1の形状が定まり、不等式t−b≧α(T−a)を満たす温度と時間の条件(座標(t、T))の集合が結晶化領域A1として定義される。
ステップS22の熱平衡点予測工程S22では、金型60に溶湯が導入された後の金型60及び溶湯の熱平衡点の情報を含む温度推移予測(予測熱履歴)が算出される。
外部に逃げる熱がないと仮定した場合、熱力学の第一法則より、溶湯が成形体になる際に失われる熱量は、金型60が受け取る熱量に等しいと考えることができる。そこで、m:金属材料の質量、c:金属材料の比熱、ΔT:金属材料(材料溶湯)の温度変化、M:金型60の質量、c:金型60の比熱、ΔT:金型60の温度変化とすると、溶湯が成形体になる際に失われる熱量及び金型60が受け取る熱量は、それぞれ|mcΔT|及び|McΔT|として表すことができ、これらは等しくなる。これを移動熱量j(j>0)とする。
また、Ta0:溶湯導入時の溶湯の温度、Ta1:導入時より所定時間t経過後の溶湯の温度、Tb0:溶湯導入時の金型60の温度、Tb1:導入時より所定時間t経過後の金型60の温度、(Ta0>Tb0が成立していることが前提)、s:作製される成形体の表面積、λ:金型60の熱伝導率とすると、以下の式1及び式2が成り立つ。
式1:|mca(Ta1−Ta0)|=tsλ(Ta0−Tb0
式2:|Mc(Tb1−Tb0)|=tsλ(Ta0−Tb0
式1及び式2より、以下の式3及び式4で表される2つの方程式を導くことができる。
式3:{mca(Ta1−Ta0)}={tsλ(Ta0−Tb0)}
式4:{Mc(Tb1−Tb0)}={tsλ(Ta0−Tb0)}
式3の方程式をTa1について解くと、下記式5のようになる。
式5:Ta1=Ta0±tsλ(Ta0−Tb0)/mca
このとき、Ta0>Tb0であるから、tsλ(Ta0−Tb0)/mca>0である。溶湯の温度について、金型60への導入時のTa0とt経過後のTa1とを比較すると、Ta0>Tb0であり、溶湯は金型60への熱移動により冷却され、加熱されることはないからTa0>Ta1である。よって、Ta1は、以下の式6で表される。
式6:Ta1=Ta0−tsλ(Ta0−Tb0)/mca
同様に、式4の方程式をTb1について解くと、下記式7のようになる。
式7:Tb1=Tb0−tsλ(Ta0−Tb0)/Mc
溶湯から金型60に熱が移動すると、やがて両者の温度は同一となる。このときの時間及び温度を示す座標を熱平衡点P(t1、T1)と定義すると、熱平衡点Pにおいては、Ta1とTb1とが同一又は略同一となるから、式6及び式7より以下の式8が成り立つ。
式8:Ta0−tsλ(Ta0−Tb0)/mca=Tb0−tsλ(Ta0−Tb0)/Mc
式8をtについて解くと、以下の式9のようになる。
式9:t=mca Mc/sλ(mca+Mc
したがって、金属材料の質量及び比熱、金型60の質量、比熱及び熱伝導率、並びに作製される成形体の表面積が溶湯情報及び金型情報として与えられれば、これを式9に代入することによって熱平衡点Pに到達する予測時間t1を算出することができる。
さらに、式9を式6又は式7に代入すると、熱平衡点Pにおける金型60及び溶湯の温度T1を算出することができる。一例として、式6に代入した場合を下記式10として示す。
式10:Ta1=Ta0−Mc(Ta0−Tb0)/(mca+Mc
したがって、上述した各情報に加えて、溶湯導入時の溶湯及び金型60の温度が与えられれば、これらを式10(あるいは式9を式7に代入した式)に代入することによって温度T1の予測値が定まる。よって、図7のグラフ(以下、「判定グラフ」と称する。)における熱平衡点Pの座標が定まり、結晶化領域算出工程S21で取得された結晶化領域A1と熱平衡点Pとの位置関係を比較することが可能になる。
ステップS23の判定工程では、判定グラフ上における結晶化領域A1と熱平衡点Pとの位置関係にもとづいて、金型60の事前冷却の有無の判定及び事前冷却を行う場合の金型60の目標温度の設定が行われる。
まず冷却態様決定部35は、Tnoseの座標(tn、Tn)を原点として判定グラフをQ1ないしQ4の4つの象限に分割し、熱平衡点Pの座標(t1、T1)がいずれの象限に位置するかを判断する。
図8に示すように、熱平衡点Pに到達した後の金型60の温度(曲線C3で示す)及び材料溶湯の温度(曲線C4で示す)は、時間経過と共に徐々に低下していく。したがって、熱平衡点Pが第3象限Q3に位置する、すなわち、T1≦Tnかつt1<tnを満たす場合、溶湯の予測熱履歴曲線C4が結晶化領域A1を通過するリスクは高くないため、冷却態様決定部35は事前冷却不要と判定する。
熱平衡点Pが第2象限Q2に位置する、すなわち、T1>Tnかつt1<tnを満たす場合、材料溶湯が熱平衡点Pに到達後、徐々に温度が下がる過程において、予測熱履歴曲線C2が結晶化領域A2を通過する可能性が高くなる。そこで、冷却態様決定部35は事前冷却必要と判定する。
熱平衡点Pに到達した後の予測熱履歴曲線C4の傾きは基本的にマイナスであるため、金型60の事前冷却によって熱平衡点Pにおける温度T1が最短結晶化温度Tn以下に下げられれば、予測熱履歴曲線C4は第3象限Q3側にシフトし、結晶化のリスクを大きく減らすことができる。ただし、事前冷却が強すぎると、溶湯の金型への充填性が不必要に低下されるので、本実施形態では、T1とTnとが同一となるように金型60の冷却目標温度が設定される。
熱平衡点Pが第1象限Q1に位置する、すなわち、T1≧Tnかつt1≧tnを満たす場合、熱平衡点Pが結晶化領域A1内に位置していれば、確実に結晶化を生じることになる。また、結晶外領域A1外に位置している場合であっても、材料溶湯及び金型60の温度が熱平衡点Pに到達後、漸次低下する際に予測熱履歴曲線C2が結晶化領域A1を通過する可能性が極めて高い。
この場合、冷却態様決定部35は事前冷却必要と判定し、金型60の冷却目標温度を熱平衡点Pの到達時間t1における結晶化領域A1の最低温度Tc(図7参照)以下になるように設定する。ただし、事前冷却が強すぎると、溶湯の金型への充填性が不必要に低下されるので、本実施形態では、T1とTcとが同一となるように金型60の冷却目標温度が設定される。
なお、冷却媒体の種類及び流量等によって決定される成形装置50の金型冷却能力によっては、上述の冷却目標温度まで金型60を冷却することが困難であることもある。その場合、冷却態様決定部35は、冷却能力の上限まで事前冷却を行うように設定する。この場合、結晶化のリスクを完全に排除することは困難であるが、一定の結晶化リスク低減効果を発揮することができる。
熱平衡点Pが第4象限Q4に位置する、すなわち、T1<Tnかつt1≧tnを満たす場合は、冷却態様決定部35は熱平衡点Pが結晶化領域A1内に位置するかどうかによって事前冷却の有無を決定する。熱平衡点Pが結晶化領域A1内に位置する場合、冷却態様決定部35は、上述の第1象限Q1の場合と同様、事前冷却必要と判定し、かつ金型60が最低温度Tc以下になるか、又は冷却能力の上限まで事前冷却を行うように設定する。一方、熱平衡点Pが結晶化領域A1外に位置する場合、溶湯及び金型60の温度が漸次低下する際も結晶化領域A1を通過する可能性は高くないので、冷却態様決定部35は事前冷却不要と判断する。
事前冷却判定工程S20が終了すると、処理はステップS24に進む。事前冷却判定工程S20において冷却態様決定部35が事前冷却必要と判断した場合(ステップS24におけるYes)、処理はステップS30の事前冷却工程に進む。冷却態様決定部35が事前冷却不要と判断した場合(ステップS24におけるNo)、成形装置50は金型の事前冷却を行わず、処理はステップS40の溶湯導入工程に進む。
ステップS30の事前冷却工程では、冷却態様決定部35の設定した金型60の目標温度等の冷却条件にもとづいて、冷却制御部33が冷却媒体循環部5を制御して冷却媒体の流量等を調節し、溶湯の導入前に金型60の事前冷却を行う。金型60の温度管理は、金型60に取り付けた熱伝対等による計測で行ってもよいし、冷却条件等に基づいた推測値等によって管理してもよい。事前冷却終了後、冷却制御部33は冷却媒体の循環を停止するよう制御し、処理はステップS40に進む。
ステップS40の溶湯導入工程では、溶解制御部31が溶解ユニット1を制御して、成形に必要な量の溶湯を所定の温度に調整する。次に、動作制御部32はノズル移動機構22を介してノズル6を金型60の段穴部60aに当接させ、ガス圧によって溶湯を上方に射出する。これにより、材料溶湯は開口60bを通して金型60内の成形空間60c内に導入される。射出する際のガス圧は、成形空間60c内がすべて溶湯で満たされるまで保持される。なお、溶解ユニット1内に溶湯の保温用ヒーター等を設け、予めステップS40よりも前に調整した溶湯を保温しつつ溶解ユニット1内で待機させてもよい。
溶湯の導入後、処理はステップS50の事後冷却判定工程に進む。
図9は、事後冷却判定工程S50の詳細な流れを示すフローチャートである。事後冷却判定工程S50は、材料溶湯の温度の近似値としての金型60の温度を計測する金型温度計測工程S51と、金型60の予測温度推移を算出する予測温度推移算出工程S52と、金型60の予測温度推移に基づいて金型60の事後冷却の有無等を判定する判定工程(第2判定工程)S53とを備える。
ステップS51の金型温度計測工程では、金型60に取り付けられた熱伝対等によって、金型60の温度が、所定間隔、例えば0.5秒ごとに計測される。計測された金型60の温度は、材料溶湯の温度として代用されるため、当該熱伝対等は、できるだけ金型60に導入される溶湯の近くに取り付けられるのが好ましい。また、このような条件を満たすものであれば、上述した金型60の事前冷却において、金型60の温度管理に使用するものと兼用しても構わない。
ステップS52の予測温度推移算出工程では、金型温度計測工程S51で取得された金型60の温度に基づいて、冷却態様決定部35が金型60及び材料溶湯(成形体)の予測温度推移を算出する。以下に本実施形態における予測温度推移の算出方法を説明するが、これは一例であり、この方法に限定されるものではない。
所定時点(t)における金型60の温度をTbn、所定時点tに連続して所定時間t経過時(tn+1)において計測した金型60の温度をTb(n+1)とすると、この連続計測した2点の金型60の温度を結ぶ直線は金型60及び材料溶湯の予測温度を示す予測温度推移直線となり、以下の式11のように演算できる。
式11:予測温度={(Tb(n+1)−Tbn)/t}×(時間)+{(t+t)Tbn−tb(n+1)}}/t
このとき、式11における{(Tb(n+1)−Tbn)/t}が予測温度推移直線の傾きを表す。
S53の判定工程では、予測温度推移算出工程S52で取得された金型60及び溶湯の予測温度推移に基づいて、冷却態様決定部35が金型60の事後冷却の有無を判定し、事後冷却を行う場合はその具体的態様を設定する。
具体的には、予測温度推移直線の傾きが正、すなわち、{(Tb(n+1)−Tbn)/t}>0の場合、又は、予測温度推移直線が結晶化領域特定曲線C1と交わる、すなわち、予測温度推移直線が結晶化領域A1を通る場合、冷却態様決定部35は結晶化リスクが高いと判断し、金型60の事後冷却を行うあるいはその冷却条件を強める。それ以外の場合は、事後冷却の冷却条件を緩和するあるいは事後冷却を停止する。なお、詳細な制御内容は、予測温度推移直線の傾きの値や予測温度推移直線と結晶化領域特定曲線C1との交点の座標等によって適宜設定されてよい。
以上が事後冷却判定工程S50の流れであり、この工程は、ステップS51における金型温度の計測値に基づいて、所定の計測間隔で繰り返し行われる。
ステップS54では、事後冷却の確認が行われる。判定工程S53で事後冷却が必要と判定された場合(ステップS54におけるYes)は、処理はステップS60に進んで金型60の事後冷却が行われる。判定工程S53で事後冷却が不要と判定された場合(ステップS54におけるNo)は、処理は後述するステップS61に進む。
ステップS60の事後冷却工程では、事後冷却判定工程S50において、冷却態様決定部35が事後冷却を行うと設定した場合に、冷却制御部33が冷却態様決定部35の設定内容に基づいて冷却媒体循環部5を制御して金型60の事後冷却を行う。
ステップS61では、主制御部30が、所定の成形終了条件を満たしているかどうかの判定を行う。成形終了条件は適宜設定することができるが、例えば、最短結晶化時間Tnから所定の長さの時間が経過することを条件としたり、金型60又は溶湯(成形体)の温度が所定温度(例えばガラス転移点Tg)以下になったことを条件としたりすることができる。
成形終了条件を満たしていない場合(ステップS61におけるNo)、処理はステップS50に戻り、成形が継続されると共に、引き続き所定間隔で事後冷却判定が行われる。成形終了条件が満たされている場合(ステップS61におけるYes)、処理は取出工程S70に進む。
取出工程S70では、上冷却部移動機構12によって、上冷却部8が開放位置まで上昇される。そして、金型交換アーム9によって、射出成形が終了した金型60が把持されて冷却支持台7から取り外される。さらに、チャンバー3の雰囲気が大気圧に開放され、金型60がチャンバー3の外部に搬出される。最後に、成形装置50の外部で、金型60から非晶質合金からなる成形体が脱型されて一連の工程が終了する。なお、チャンバー3の雰囲気を大気圧に開放する前に、必要に応じて金型60を金型台61に載置された未使用のものと交換して連続成形を行ってもよい。
以上説明したように、本成形方法を行う本実施形態の成形装置50によれば、事前冷却判定工程S20において、金型60に注入された材料溶湯の結晶化リスクが冷却態様決定部35によって判定され、当該判定結果にもとづいて事前冷却工程S30において溶湯の導入前に金型60の事前冷却が行われる。したがって、成形体の結晶化リスクを確実に低減して非晶質合金の成形体を好適に製造することができる。
また、事前冷却判定工程S20において、冷却態様決定部35が、Tnose(tn、Tn)を含む結晶化領域A1及び熱平衡点Pの座標(t1、T1)を算出し、熱平衡点Pが第3象限Q3に位置するときは事前冷却不要と判定されて事前冷却が行われない。したがって、結晶化のリスクが低い場合に金型が過度に事前冷却されることがなく、結晶化リスクを確実に低減しつつ、材料溶湯の充填不良の発生も抑制することができる。
さらに、熱平衡点Pが第2象限Q2に位置するときは、熱平衡点Pの温度T1がTnと略同一となるように冷却態様決定部35が事前冷却の態様を設定して事前冷却が行われるので、結晶化リスクの低減と充填不良の発生抑制とのバランスを好適にとりながら非晶質合金の成形を行うことができる。
さらに、熱平衡点Pが第1象限Q1に位置するときは、熱平衡点Pの温度T1が結晶化領域A1の時間t1における最低温度Tcと略同一となるように冷却態様決定部35が事前冷却の態様を設定して事前冷却が行われるので、結晶化リスクの低減と、充填不良の発生抑制とのバランスを好適にとりながら非晶質合金の成形を行うことができる。
さらに、熱平衡点Pが第4象限Q4に位置する場合、熱平衡点Pが結晶化領域A1内に位置するときは熱平衡点Pの温度T1が結晶化領域A1の時間t1における最低温度Tcと略同一となるように冷却態様決定部35が事前冷却の態様を設定して事前冷却を行い、熱平衡点Pが結晶化領域A1外に位置するときは事前冷却不要と判定されて事前冷却が行われない。したがって、熱平衡点Pが同一の第4象限Q4内にある場合でも、結晶化リスクに応じて充填不良が最小限になるように材料溶湯及び金型の温度制御が行われるので、好適に非晶質合金の成形を行うことができる。
さらに、熱平衡点Pは、熱平衡点予測工程S22において、金型60の質量、熱伝導率、比熱、材料溶湯導入時の温度、及び材料溶湯との接触面積を含む金型情報と、材料溶湯の質量、比熱、及び金型への導入時の温度を含む溶湯情報に基づいて算出されるので、金型や成形体が複雑な形状である塔の場合でも、高精度に熱平衡点を予測することができる。
さらに、Tnoseを含む結晶化領域A1は、結晶化領域算出工程S21において、冷却態様決定部S35が3以上の結晶化境界点、又はTnose及び1以上の結晶化境界点にもとづいて算出するので、使用する金属材料の結晶化領域を実験値や文献値等を用いて簡便に取得することができる。
加えて、事後冷却判定工程S50において、金型60及び材料溶湯の予測温度推移にもとづいて冷却態様決定部S35が事後冷却の必要性を判定し、必要と判定された場合に事後冷却工程S60において金型60の事後冷却が行われる。したがって、成形時における結晶化のリスクをさらに低減することができる。
本成形方法及び本実施形態の成形装置について、実施例を用いてさらに説明する。図10は本発明の各実施例の内容を示す表である。
(実施例1)
成形する金属材料として、Zr基金属ガラスであるZr55Cu30Al10Ni5を使用した。溶湯情報及び金型情報の詳細は図10に示すとおりである。実施例1−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例1−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
(実施例2)
成形する金属材料として、実施例1と同一の材料を使用した。金型の材質も実施例1と同一としたが、成形体の形状及び金型の質量を変更した。そのため、図10に示すように、溶湯情報及び金型情報のうち、金属材料の質量m、金型の質量M、及び成形体の表面積sが実施例1と異なっている。実施例2−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例2−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
(実施例3)
成形する金属材料として、パラジウム(Pd)基金属ガラスであるPd40Cu30Ni10P20を使用した。溶湯情報及び金型情報は図10に示すとおりである。実施例3−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例3−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
(実施例4)
成形する金属材料として、実施例3と同一の材料を使用した。金型の材質も実施例3と同一としたが、成形体の形状及び金型の質量を変更した。そのため、図10に示すように、溶湯情報及び金型情報のうち、金属材料の質量m、金型の質量M、及び成形体の表面積sが実施例3と異なっている。実施例4−1では、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を行わず、実施例4−2ではこれらの工程を加えて成形を行った。事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30は、両方の実施例で行った。
成形時の雰囲気圧及び材料溶湯の射出圧は、すべての実施例で図10に示すように同一とした。得られた成形体の評価は、目視による充填性の評価及びX線回折装置(XRD)を用いた非晶質性の評価の2項目行った。
(結果)
実施例1及び2では、実験によって取得された結晶化境界点3点(65s、767K)、(68s、741K)、及び(70s、731K)の情報にもとづいて冷却態様決定部35が結晶化領域算出工程S21において演算を行った。その結果、結晶化領域特定曲線C1を表す下記の式13が得られた。
式13:t−64.68669≧0.0023504(T−778.55)
したがって、Tnoseを規定する最短結晶化時間tn及び最短結晶化温度Tnは、それぞれ図10に示すように64.7秒及び778.6Kとなった。
実施例3及び4では、実験によって取得された結晶化境界点1点(225s、650K)及び文献に記載されたTnoseの値(100s、683K)にもとづいて冷却態様決定部35が結晶化領域算出工程S21で演算を行った。その結果、結晶化領域特定曲線C1を表す下記の式14が得られた。
式14:t−100≧0.11478(T−683)
したがって、いずれの例においても、Tnoseを含む結晶化領域A1を適切に算出することができた。
熱平衡点予測工程S22において算出された各実施例1ないし4の熱平衡点Pは図10に示すとおりであった。
実施例1の熱平衡点Pは、上述の第3象限Q3に位置するため、判定工程S23において事前冷却不要と判定された。
実施例2の熱平衡点Pは、上述の第4象限Q4に位置していたが、結晶化領域A1外に位置していたため、判定工程S23において事前冷却不要と判定された。
実施例3の熱平衡点Pは、上述の第2象限Q2に位置するため、判定工程S23において、T1とTnの差分である19.5Kだけ金型60の温度を下げる目標で事前冷却を行うように冷却態様決定部35が設定を行い、事前冷却工程S30において金型60の事前冷却が行われた。
実施例4の熱平衡点Pは、上述の第1象限Q1に位置していたが、t1における曲線C2上の最低温度Tc(約662K)とT1との差分約70Kが成形装置50の冷却能力を超えていたため、判定工程S23において、冷却限界まで事前冷却を行うように冷却態様決定部35が設定を行い、事前冷却工程S30において金型60の事前冷却が行われた。
事後冷却判定及び事後冷却を行った実施例においては、いずれも金型60の温度計測を0.5秒間隔で行った。
各実施例の成形体の評価を行ったところ、事後冷却判定及び事後冷却を行わなかった実施例1−1、2−1、3−1、および4−1においては、実施例1−1および3−1では非晶質性は良好に保たれていたものの、実施例2−1および4−1において一部結晶化が発生した。
しかし、一部結晶化が生じた実施例においても、事前冷却と併せて事後冷却を必要に応じて行うことによって、実施例2−2および4−2に示すように、より良好に非晶質性が保持された成形体を得ることができた。なお、事後冷却を組み合わせることによって充填性が悪くなることはなかった。
一方、事前冷却を行わず事後冷却だけ行ったものを検討したところ、冷却能力の不足による顕著な結晶化が観察された。
以上より、事前冷却判定工程S20及び事前冷却工程S30を備える本成形方法で、成形体の結晶化のリスクが低減され、事後冷却判定工程S50及び事後冷却工程S60を組み合わせることで、結晶化のリスクはさらに低減され、非晶質性が良好に保たれた成形体を得ることができることが確認された。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態においては、成形の開始前に準備工程S10において溶湯情報及び金型情報がユーザによって入力される例を説明したが、一度入力された溶湯情報及び金型情報の値や一度算出された結晶化領域A1や熱平衡点Pの情報が適宜記憶されて、ユーザの指定等により適宜呼び出されてもよい。
また、本発明の非晶質合金の成形方法における判定工程S23では、熱平衡点Pが4つの象限Q1からQ4のいずれに位置するかにもとづいて事前冷却の有無が判定される例を説明した。この場合、t1=tn又はT1=Tnのいずれかの場合、熱平衡点Pがいずれの象限に位置するかの定義は、数学的定義に限らず、使用する金属材料の結晶化のしやすさ等によって適宜設定されてよい。
さらに、事後冷却工程S60においては、予測温度推移の傾きが正である場合と、予測温度推移が結晶化領域を通過する場合とで冷却態様を異ならせてもよい。この場合、例えば、傾きが正の場合により強く事後冷却を行う等の調節を行うことによって結晶化をより確実に防いだり、充填性の低下リスクをさらに低減したりすることができる。
また、本発明の非晶質合金の成形方法においては、Tnoseが取得されれば、結晶化領域A1は必ずしも特定されなくてもよい。結晶化領域A1を算出しない場合でも、熱平衡点Pがいずれの象限に位置するかの判定は行うことができる。この場合、熱平衡点Pが第4象限Q4に位置する場合の判定の場合分けは、例えば、TnよりもT1が所定差分以上低いかどうか等の代わりになる場合分け基準を設定すれば良い。
加えて、各象限に対応する上述した事前冷却の態様はあくまで一例であり、よりよい成形結果を求めるためにそれぞれ個別に適宜変更、調節等されてよい。
6 ノズル(導入手段)
13 冷却部(冷却手段)
35 冷却態様決定部
36 記憶手段
50 非晶質合金の成形装置
60 金型
P 熱平衡点
S20 事前冷却判定工程
S21 結晶化領域算出工程
S22 熱平衡点予測工程
S23 判定工程
S30 事前冷却工程
S50 事前冷却判定工程
S51 金型温度計測工程
S52 予測温度推移算出工程
S53 判定工程(第2判定工程)
S60 事後冷却工程
T1 熱平衡温度
t1 熱平衡時間
Tn 最短結晶化時間における結晶化温度
tn 最短結晶化時間

Claims (14)

  1. 非晶質合金材料を溶解した材料溶湯を金型内に導入する非晶質合金の成形方法であって、
    前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを制御ユニットによって判定する事前冷却判定工程と、
    前記事前冷却判定工程において前記事前冷却が必要であると判定されたときに、前記事前冷却を行う事前冷却工程と、
    を備え、
    前記事前冷却判定工程は、
    前記非晶質合金材料の最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseを前記制御ユニットによって取得する結晶化領域算出工程と、
    前記金型の金型情報と前記材料溶湯の溶湯情報とにもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度T1と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間t1とを前記制御ユニットによって予測する熱平衡点予測工程と、
    前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを前記制御ユニットによって判定する判定工程と、を有することを特徴とする非晶質合金の成形方法。
  2. 前記判定工程において、T1<Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要がないと判定されることを特徴とする請求項1に記載の非晶質合金の成形方法。
  3. 前記判定工程において、T1>Tnかつt1<tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
  4. 前記事前冷却工程において、前記金型の温度をTn以下に下げるように前記事前冷却が行われることを特徴とする請求項3に記載の非晶質合金の成形方法。
  5. 前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
  6. 前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのときは、前記事前冷却の必要があると判定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
  7. 前記金型情報は、前記金型を構成する材料の熱伝導率及び比熱と、前記金型の質量と、前記材料溶湯導入前の前記金型の温度と、前記金型と前記材料溶湯との接触面積とを含み、
    前記溶湯情報は、前記材料溶湯の比熱と、前記材料溶湯の質量と、前記材料溶湯の導入時の温度とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
  8. 前記結晶化領域算出工程において、前記金属材料が結晶化を起こす条件を示す結晶化領域が算出されることを特徴とする請求項1に記載の非晶質合金の成形方法。
  9. 前記結晶化領域は、少なくとも3点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されることを特徴とする請求項8に記載の非晶質合金の成形方法。
  10. 前記結晶化領域は、予め明らかになっている前記Tnose及び少なくとも1点の結晶化境界点の情報にもとづいて算出されることを特徴とする請求項8に記載の非晶質合金の成形方法。
  11. 前記判定工程において、T1>Tnかつt1>tnのときは、前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の非晶質合金の成形方法。
  12. 前記判定工程において、T1<Tnかつt1>tnのとき、
    前記熱平衡点が前記結晶化領域内に位置する場合は前記結晶化領域においてt1に対応する最低温度以下の温度を前記事前冷却における目標温度に設定し、
    前記熱平衡点が前記結晶化領域外に位置する場合は前記事前冷却の必要がないと判定されることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の非晶質合金の成形方法。
  13. 前記材料溶湯が前記金型内に導入された後に前記金型を冷却する事後冷却が必要かどうかを判定する事後冷却判定工程と、
    前記事後冷却判定工程において前記事後冷却が必要であると判定されたときに、前記金型の事後冷却を行う事後冷却工程と、
    をさらに備え、
    前記事後冷却判定工程は、
    前記材料溶湯の導入後に前記金型の温度を計測する金型温度計測工程と、
    前記金型温度計測工程で得られた前記金型の温度にもとづいて、前記金型の予測温度推移を算出する予測温度推移算出工程と、
    前記予測温度推移算出工程における算出結果に基づいて、前記事後冷却が必要かどうかを判定する第2判定工程と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質合金の成形方法。
  14. 金型を用いて非晶質合金の成形を行う成形装置であって、
    前記金型を冷却する冷却手段と、
    前記非晶質合金の材料が溶解された材料溶湯を前記金型に導入する導入手段と、
    前記金型の金型情報と、前記材料溶湯の溶湯情報と、最短結晶化時間tn及び前記最短結晶化時間における結晶化温度Tnの情報を含むTnoseとを記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に接続されて設けられ、前記材料溶湯が前記金型内に導入される前に前記金型を冷却する事前冷却が必要かどうかを判定する冷却態様決定部と、
    を備え、
    前記冷却態様決定部は、前記金型情報及び前記溶湯情報にもとづいて、前記金型と前記金型内に導入された前記材料溶湯とが熱平衡状態に到達した熱平衡点における熱平衡温度と、前記材料溶湯の導入後前記熱平衡点に到達するまでの到達時間とを予測し、前記熱平衡点と前記Tnoseとの位置関係にもとづいて前記事前冷却が必要かどうかを判定することを特徴とする非晶質合金の成形装置。
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