以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
また、以下の説明では、ベルトが互いに圧接して回転するツインベルト方式のベルト搬送装置を例示しているが、これに限定されるものではない。複数の懸架部材に懸架されて回転するベルトを有するベルト搬送装置であれば他のベルト搬送装置であっても良い。
以下、ベルト搬送装置としての画像加熱装置及びこの画像加熱装置を有する画像形成装置を例示して説明する。なお、ここでは画像加熱装置として、記録材上に未定着画像を定着するベルト定着装置を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大化装置等のその他の画像加熱装置であっても良い。
本実施形態に係るツインベルト方式の定着装置は、以下の2つのモードを組み合わせた制御を行っている。1つは、ベルトが幅方向の所定の範囲から外れた位置に移動した場合にベルトを所定の範囲内に戻すようにステアリングローラの姿勢を蛇行解消位置にする蛇行解消モードである。1つは、前記所定の範囲内に戻されたベルトを前記所定の範囲内に維持するようにステアリングローラの姿勢を平衡位置にする平衡維持モードである。そして、前述の平衡角度にステアリングローラを維持する時間を極力長くするために、そのステアリングローラの平衡角度を微調整している。更に、前述の平衡角度を微調整しても左右蛇行のバランスがとりにくくなった場合には定着装置のアライメントのずれを再計測する。これにより安定したベルト寄り制御を実現している。以下、順次詳しく説明する。
(画像形成装置)
まず、図2を用いて、ベルト定着装置を有する画像形成装置の基本構成について説明する。図2は、ベルト定着装置を搭載した画像形成装置の一例である電子写真フルカラー複写機の概略構成を示す縦断面図である。
図2において、1はデジタルカラー画像リーダ部であり、原稿台ガラス2上に載置したカラー画像原稿の画像をフルカラーセンサ(CCD)3により色分解画像信号として光電読取りする。色分解画像信号は、画像処理部4にて画像処理が施された後、デジタルカラー画像プリンタ部5の制御回路部(以下、CPUという)100に送出される(図6参照)。
プリンタ部5において、UY,UM,UC,UKはタンデム配置した第1〜第4の4つの画像形成部である。各画像形成部はそれぞれレーザー露光方式の電子写真プロセス機構である。画像処理部4からCPU100に送出された色分解画像信号に基づいて、各画像形成部において、回転する電子写真感光ドラムの面にそれぞれ色トナー像が所定の制御タイミングにて形成される。即ち、第1の画像形成部UYではドラムの面にイエロートナー像が、第2の画像形成部UMではドラムの面にマゼンタトナー像が、第3の画像形成部UCではドラムの面にシアントナー像が、第4の画像形成部UKではドラムの面にブラックトナー像が形成される。
各画像形成部のドラムの面に形成される上記の色トナー像はそれぞれ一次転写部6にて、矢印の時計回り方向に回転する中間転写ベルト7の面に対して順次に重畳転写される。これにより、ベルト7の面に上記4つの色トナー像の重ね合わせによる未定着のフルカラートナー像が合成形成される。その合成形成されたフルカラートナー像が二次転写部8にて、記録材Pの面に一括して二次転写される。なお、記録材Pは、カセット給送機構部9或いはデッキ給送部10或いは手差し給送部11から所定の制御タイミングにて二次転写部8に給送される。
トナー像が転写された記録材Pはベルト7の面から分離されてベルト定着装置12に導入され、定着ニップ部で挟持搬送される。その挟持搬送過程で未定着のフルカラートナー像が熱と圧力により溶融混色して記録材Pの面にフルカラーの固着画像として定着される。ベルト定着装置12を出た記録材Pはフラッパ13で進路切り換えされて、FU(フェイスアップ)排出トレイ14、またはFD(フェイスダウン)排出トレイ15に排出される。
また両面プリントモードが選択されている場合には、ベルト定着装置12を出た第1面側プリント済みの記録材Pがフラッパ13で一旦FD排出トレイ15に通じるシートパスに送り込まれる。その記録材Pがスイッチバック搬送されて、再搬送シートパス16に導入され、表裏反転された状態になって再度二次転写部8に導入される。これにより記録材Pの第2面側にトナー像が二次転写形成される。以後、記録材Pは第1面側プリントの場合と同様に、ベルト定着装置12に導入される。これにより、両面プリント済みの記録材がFU排出トレイ14またはFD排出トレイ15に排出される。
(ベルト定着装置)
次に図1を用いて、ベルト定着装置12の構成について説明する。図1はベルト定着装置12の概略構成を示す横断面図である。この定着装置12は、離間可能に圧接して回転するエンドレス状の第1のベルト並びに第2のベルトを有する、ツインベルト方式のベルト搬送装置である。
ここで、以下の説明において、定着装置12に関して、正面とは、図1及び図2に示すように装置手前側から見た装置面である。左右とは、図4などに示すように定着装置12を正面から見て手前側が右、奥側が左である。上流側と下流側とは、記録材搬送方向に関して上流側と下流側である。幅方向と幅とは、記録材搬送路面において記録材搬送方向に直交する方向とその方向の長さである。
定着装置12は、装置の上側に配設した定着ベルトユニット21と、装置の下側に配設した加圧ベルトユニット31を有する。
定着ベルトユニット21は、ケーシング22の内側に、エンドレス状(無端)の第二のベルトとしての定着ベルト27、駆動ローラ24、ステアリングローラ26、加圧パッド28、誘導加熱コイル29などを組み込んだアセンブリである。
駆動ローラ24は、定着ベルト27を回転駆動するベルト支持部材(ベルト懸架部材)である。このローラ24は、その左右の両端軸部をそれぞれケーシング22の左右の側板間に軸受を介して回転可能に支持させて配設してある。
ステアリングローラ26は、定着ベルト27の幅方向への移動を補正する第二の移動補正手段を構成するベルト支持部材である。このローラ26は、駆動ローラ24よりも上流側において、その左右の両端軸部をそれぞれケーシング22の左右の側板間に軸受を介して回転可能に支持させて、駆動ローラ24と略並行に配設してある。このローラ26は、後述する検知センサユニット65からの検出情報に基づいてローラ26の傾斜(位置)を切り換えることで定着ベルト27の移動を補正するものである。
定着ベルト27は、前記2本のローラ24,26間に懸け回してある。定着ベルト27は、上部に配設した加熱手段としての誘導加熱コイル29により加熱されるものである。定着ベルト27は、例えば、厚さ75μm、幅380mm、周長200mmのニッケル金属層もしくはステンレス層などの磁性金属層に、厚さ300μmのシリコンゴムをコーティングしたものが用いられる。
加圧パッド28は、定着ベルト27の内側に配置され、その左右の両端部をそれぞれケーシング22の左右の側板間に支持させてある。この加圧パッド28は駆動ローラ24側に寄せた位置において、定着ベルト27の下側の内面に接する。
ステアリングローラ26は、その左右の軸受をそれぞればね部材により駆動ローラ24から離れる方向に移動付勢することで、定着ベルト27に張りを与えるテンションローラとしても機能させている。
加圧ベルトユニット31は、ケーシング35の内側に、エンドレス状の第一のベルトとしての加圧ベルト32、駆動ローラ33、ステアリングローラ34、加圧パッド38などを組み込んだアセンブリである。
駆動ローラ33は、加圧ベルト32を回転駆動するベルト支持部材(ベルト懸架部材)である。このローラ33は、その左右の両端軸部をそれぞれケーシング35の左右の側板間に軸受を介して回転可能に支持させて配設してある。
ステアリングローラ34は、加圧ベルト32の幅方向への移動を補正する第一の移動補正手段を構成するベルト支持部材である。このローラ34は、駆動ローラ33よりも上流側において、その左右の両端軸部をそれぞれケーシング35の左右の側板間に軸受を介して回転可能に支持させて、駆動ローラ33と略並行に配設してある。このローラ34は、後述する検知センサユニット66からの検出情報に基づいてローラ34の傾斜(位置)を切り換えることで加圧ベルト32の移動を補正するものである。
加圧ベルト32は、前記2本のローラ33,34間に懸け回してある。
加圧パッド38は、加圧ベルト32の内側に配置され、その左右の両端部をそれぞれケーシング35の左右の側板間に支持させてある。この加圧パッド38は駆動ローラ33側に寄せた位置において、加圧ベルト32の上側の内面に接する。
ステアリングローラ34は、その左右の軸受をそれぞればね部材により駆動ローラ33から離れる方向に移動付勢することで、加圧ベルト32に張りを与えるテンションローラとしても機能させている。
加圧ベルトユニット31は、図6に示すベルト着脱機構102により、着脱軸43を中心に回動されて、ベルト27,32が圧接するベルト圧接位置(図1参照)と、ベルト27,32が離間するベルト離間位置(図3参照)とに切り換えられる。すなわち、定着ベルトユニット21と加圧ベルトユニット31とは、ベルト着脱機構102によって、記録材Pを挟持搬送する際は図1に示す圧接状態(第1状態)、それ以外の場合は図3に示す離間状態(第2状態)へと切り換えられる。これにより、定着ベルトユニットと加圧ベルトユニットとの間に不要な圧力がかかるのを防止し、部材の損耗を防いでいる。
次に図4を用いて、ベルト定着装置12のベルトの寄り制御機構を説明する。ベルト寄り制御機構は、定着ベルトユニット21と加圧ベルトユニット31のそれぞれにおいて、定着ベルト27と加圧ベルト32の回転状態時に生じる幅方向への片寄り移動を戻し移動制御する機構である。なお、定着ベルトユニット21と加圧ベルトユニット31の各ベルト寄り制御機構の構成はほぼ同様である為、ここでは定着ベルトユニット21のベルト寄り制御機構を例示して説明する。
ベルト寄り制御機構は、ステアリング制御ステッピングモータ60、ウォームギア61、扇形ギア62、ステアリングローラ軸受63、および、それらを支持する側板64によって構成される。ステアリングローラ軸受63は、定着ステアリングローラ26の軸を支持している。
65は定着ベルト寄り検知センサユニットであり、定着ベルト27の幅方向の位置を段階的に検出する第二のベルト位置検出手段である。定着ベルト寄り検知センサユニット65は、定着ベルト27の幅方向の左右端部に配設され、左側ベルト寄り検知を行うフォトセンサ上SL1,上SL2、および、右側ベルト寄り検知を行うフォトセンサ上SR1,上SR2を収めたものである。その詳細は後述する。なお、加圧ベルトユニット31側にも加圧ベルト32の幅方向の左右端部に、同様の加圧ベルト寄り検知センサユニット66(図6参照)を配設している。加圧ベルト寄り検知センサユニット66は、加圧ベルト32の幅方向の位置を段階的に検出する第一のベルト位置検出手段である。定着ベルト寄り検知センサユニット65と区別する為、加圧ベルト寄り検知センサユニット66側のフォトセンサは下SL1,下SL2,上SR1,上SR2と記述する。
ステッピングモータ60がCW方向(時計回り)に駆動するとウォームギア61が回転し、扇形ギア62が軸を中心に下方向に揺動する。それに伴いステアリングローラ軸受63は下方向に移動するため、定着ステアリングローラ26は奥側(左側)に僅かに傾き、定着ベルトユニット21全体は奥側に傾いた形になる。これにより定着ベルト27は、手前側よりも奥側の張力が低い状態になるため、定着ベルト27が回転するに従って徐々に張力の低い奥側(左側)へと移動する。
また、逆にステッピングモータ60がCCW方向(反時計回り)に駆動するとウォームギア61が回転し、扇形ギア62が軸を中心に上方向に揺動する。それに伴いステアリングローラ軸受63は上方向に移動するため、定着ステアリングローラ26は手前側(右側)に僅かに傾き、定着ベルトユニット21全体も手前側に傾いた形になる。これにより定着ベルト27は、奥側よりも手前側の張力が低い状態になるため、定着ベルト27が回転するに従って徐々に張力の低い手前側(右側)へと移動する。
以上はベルトの蛇行解消モードについての動作である。蛇行解消モードとは、前述したように、ベルトの蛇行が確認された場合に、その蛇行を反対方向に戻すのに十分な角度にステアリングローラを傾けるモードである。
次に、ベルトの蛇行が解消されると、図8で詳述する様に、ベルトの左右蛇行のバランスが崩れない平衡角度(ベルトの蛇行が最小限になる様な位置)にステアリングローラを戻す操作(平衡維持モード)をする。以下、説明する。
なお、ここで例示するベルト定着装置は、ベルトの蛇行を解消し、そのベルトを左右蛇行のバランスが崩れない平衡位置に維持する時間を長くするために、前述した蛇行解消モードと平衡維持モードを組み合わせたベルトの寄り制御を行っている。
図5は、定着ベルトユニット21の定着ベルト27を、真上から見て右側へ寄りを戻す為、定着ステアリングローラ26を傾斜させた場合の図である。定着ステアリングローラ26を傾斜させる為の制御機構は前述のように奥側にあるため、ステッピングモータ60によってステアリングローラ26の端部を上げた形となる。この端部の高さの変位量を、これ以降、端部の変位量Dとして表記する。変位量Dの+方向は上側であり装置手前側(右側)へ寄りを戻す方向、−方向は下側であり装置奥側(左側)へ寄りを戻す方向である。
端部の変位量Dが変化するとベルトの幅方向の位置はそれに従って移動する傾向にあるため、理想的にはベルト位置が現在位置から極力左右に移動しないようほぼ水平な傾斜角となる変位量を、基準量±0状態と表記する。なお、理想的には変位量Dを基準量±0とすればその位置からはベルトが左右に寄らないが、実際は様々な要因によって寄りが発生し、ベルトが張架ローラに対して左右に移動する。
図5では定着ベルトユニット21に関して述べたが、基本的な構成は加圧ベルトユニット31に関しても同様である。なお、定着ベルトと加圧ベルトとは、互いに内側である当設面に向かって回転している為、ステアリングローラの傾斜に対して幅方向への寄りが発生する方向が逆である。
よって、定着ベルト27と加圧ベルト32を幅方向において同方向に移動させる場合、定着ステアリングローラ26と加圧ステアリングローラ34の傾斜角を逆方向に変位させることになる。
図6はベルト定着装置を含む画像形成装置の制御系を示したブロック図である。全体の制御は制御回路部であるCPU100が行っており、これに液晶タッチパネルやボタン等によって構成される操作部101が接続される。操作部101からのユーザの入力によって、画像形成装置は動作を開始する。
CPU100には、前述したベルト着脱機構102、ベルト寄り制御機構106、定着ベルト寄り検知センサユニット65、加圧ベルト寄り検知センサユニット66が接続され、CPU100から制御や状態検知を行う。更にCPU100には、定着ベルト駆動ローラ駆動機構103、加圧ベルト駆動ローラ駆動機構104、ヒータ給電回路部105などが接続され、CPU100から制御や状態検知を行う。
ベルト着脱機構102は、前述の定着ベルトユニット21と加圧ベルトユニット31との圧接、離間動作を行う機構である。定着ベルト駆動ローラ駆動機構103は、定着ベルトユニット21の定着駆動ローラ24を駆動させ、張架された定着ベルト27を回転させる動作を行う。加圧ベルト駆動ローラ駆動機構104は、同様に加圧ベルトユニット31の加圧駆動ローラ33を駆動させ、張架された加圧ベルト32を回転させる動作を行う。ヒータ給電回路部105は誘導加熱コイル29への給電を制御する回路であり、CPU100からの信号によって給電をON,OFFする。
ベルト寄り制御機構106は、CPU100からの信号に従って図4に示したステアリング制御ステッピングモータ60を駆動させ、定着ベルト27および加圧ベルト32の幅方向への寄り移動を補正する制御を行う。なお、各検知センサユニット65,66が有する寄り検知センサSL1,SL2,SR1,SR2は、定着ベルト27および加圧ベルト32の幅方向一方又は他方へのベルト寄り量を段階的(ここでは2段階)に検出するセンサである。
次に図7を用いて、ベルトの幅方向の位置を検出するベルト位置検出手段について詳細に説明する。定着ベルト27および加圧ベルト32の幅方向の位置(幅方向への片寄り)を検出する構成は、基本的に同様である為、定着ベルトユニット21を例示して説明する。
図7(a)はベルト駆動ローラ24とステアリングローラ26との間の定着ベルト部分を見た図である。フォトセンサSL1,SL2、フォトセンサSR1,SR2は定着ベルト27の幅方向の左側と右側の両脇にそれぞれ所定の間隔を開けて配置したベルト位置検出手段である。ベルト位置検出手段は、幅方向内側のフォトセンサSL1,SR1と、これより幅方向外側のフォトセンサSL2,SR2が、ベルト幅方向の左側と右側にそれぞれ設けられている。各センサは図7(b)のように送光素子aと受光素子bを組にした光検知式センサ(フォトセンサ)である。各センサは、定着ベルト回動駆動過程で定着ベルト27が幅方向左側又は右側に所定量以上に寄り移動したとき、その寄り移動側のベルト縁部が送光素子aと受光素子bの間に進入して両者間の光路を遮断するように構成してある。各センサは光路開放状態でオン、光路遮断状態でオフとする。
図7(a),(b)は、定着ベルト27が左側第1センサSL1と右側第1センサSR1との間の許容の寄り移動範囲内で回動駆動されている状態であり、左側第1センサSL1と右側第1センサSR1は共にオンである。制御回路部100はこの両センサSL1,SR1のオンにより定着ベルト27が許容の寄り移動範囲内で回動駆動されていると判断する。この時の定着ベルト27についての許容の寄り移動範囲内を、所定の範囲としての寄り正常範囲51(図7(b)参照)と表す。
定着ベルト27が左側に寄り移動して、図7(c)のように左側ベルト縁部で左側第1センサSL1がオフにされると、制御回路部100は定着ベルト27が左側に寄り過ぎたと判断する。そして、後述するベルト寄り制御機構106(ステアリングローラ変位機構)を作動させて定着ベルト27を逆の右側に戻し移動させるように定着ステアリングローラ26の端部を変位させ、ローラを傾斜させる。それにも拘わらず、定着ベルト27が更に左側に寄り移動することで、図7(d)のように左側ベルト縁部で左側第2センサSL2もオフとなったときは、定着ステアリングローラ26の変位をさらに増大させ、ローラの傾斜を大きくする。この状態であっても左側第2センサSL2のオフ状態が所定時間(ここでは10秒間)継続された場合は、定着ベルト27が左側に寄り切ったと判断し、定着ベルト27の破損防止のため定着ベルト27を駆動する定着駆動ローラ24の動作を停止させる。さらに装置全体の画像形成動作を停止した上で操作部101にエラー表示を行い、お客様にサービスマンに連絡を取って頂く旨を表示する。この定着ベルトの左端の移動範囲を、正常範囲51より幅方向外側の左寄り異常範囲52(図7(b)参照)と表記する。
また、定着ベルト27が右側に寄り移動して、図7(e)のように右側ベルト縁部で右側第1センサSR1がオフにされると、制御回路部100は定着ベルト27が右側に寄り過ぎたと判断する。そして、後述するベルト寄り制御機構106を作動させて定着ベルト27を逆の左側に戻し移動させる方向に定着ステアリングローラ26の端部を変位させ、ローラを傾斜させる。それにも拘わらず、定着ベルト27が更に右側に寄り移動することで、図7(f)のように右側ベルト縁部で右側第2センサSR2もオフとなったときは、定着ステアリングローラ26の変位を更に増大させ、ローラの傾斜を大きくする。この状態であっても右側第2センサSR2のオフ状態が所定時間(ここでは10秒間)継続された場合は、定着ベルト27が右側に寄り切ったと判断し、定着ベルト27の破損防止のため定着ベルト27を駆動する定着駆動ローラ24の動作を停止させる。さらに装置全体の画像形成動作を停止した上で操作部101にエラー表示を行い、お客様にサービスマンに連絡を取って頂く旨を表示する。この定着ベルトの右端の移動範囲を、正常範囲51より幅方向外側の右寄り異常範囲53(図7(b)参照)と表記する。
次に、図6で述べたベルト寄り検出とベルト寄り補正制御について、図10を用いてCPU100の制御判断フローを詳細に説明する。
図8は、ベルト位置検出センサのオン・オフ状態に応じた、ベルト寄り補正を行う時のステアリングローラの駆動パルスと、制御に使用するベルト位置ラベルの対応について表した表(テーブル)である。
図8で表しているステアリング量は、定着ベルトユニット21の設計上、定着ベルト左右のベルト寄りバランスの均衡がとれているステアリングローラ26の位置を基準とする。ただし、実際の定着ベルトユニットはユニットの部品や組み立て時の僅かなばらつきがあるため、均衡がとれる位置はユニットにより異なる。そこで、後述する図11で計測したベルト往復移動に要する時間Tref1,Tref2を用いて左右のベルト移動時間のばらつきを補正する傾き補正パルス(アライメント初期位置)PHPを以下の計算式(式1)で求める。
ステアリングローラは後述するホームポジションセンサ(不図示)によってホームポジション位置が検出され、そのホームポジション位置から傾き補正パルス(アライメント初期位置)PHP分移動させた位置が、ステアリングローラの基準位置となる。この基準位置は、ベルトを平衡状態に維持するための基準となる位置である。なお、以下の計算式において、Tはベルトの蛇行を解消するためのステアリングローラの最大ステアリング量(駆動パルス数)であり、ここでは680を例示している。
PHP=T×(Tref1−Tref2)÷(Tref1+Tref2)
上記計算式(式1)によって求められる傾き補正パルスPHPに後述する微調整分のαを加算した値が、ベルトの蛇行解消後に、ベルトの左右蛇行のバランスが崩れない平衡角度にステアリングローラを戻すステアリング量(駆動パルス数)である。すなわち、ステアリングローラの平衡位置となる。
特に図示しないが、左右のベルト蛇行時間が著しく異なると、PHPの値は大きくなるが、所定パルス(200パルス)以上になる場合は、定着装置に何らかの異常が発生していると判断し、操作者に定着装置の点検を促すメッセージを表示する。
また、PHPは定着装置及び定着装置と画像形成装置本体の設置関係から発生するアライメントの狂いを補正するものであるため、蛇行解消モード及び平衡維持モードのいずれの動作モードにおいてもステアリングパルスをPHPにより補正している。
図示しないが、ステアリングローラがホームポジション位置にいる時にオンするホームポジションセンサが、図3の定着装置の上下各ベルトに装着されている。図8で表している各ステアリング量は、前記ホームポジションセンサ(不図示)がオンしてからステアリングローラ駆動モータ(図4のモータ60)を駆動するステップ数を示している。このステップ数が正の数の場合はベルトが右側に動く方向にステアリングローラを移動し、ステップ数が負の数の場合はベルトが左側に動く方向にステアリングローラを移動する。
図8において、全てのセンサが0(オン)である時は、ベルトが幅方向の所定の範囲である中央ゾーン(図7(b)に示す寄り正常範囲51)にいる。後述する様に、中央ゾーンの中の中央にベルトが移動したタイミングで、ベルトが平衡位置(平衡角度)になる様にステアリングローラを移動する。この時のステアリングローラのステアリング量が、前述した計算式によって算出された傾き補正パルスPHPに後述する微調整分のαを加算したものである。また、この時のステアリングローラの姿勢が平衡位置であり、ポジションラベルはCTとしている。
同様に、ベルトが左側1段階目にいる(SL1=1かつSL2=0)時のステアリング量(蛇行解消位置)は340+PHPパルスで、ポジションラベルはL1となる。340+PHPパルスは、ベルトが左側1段階目にいる時の蛇行をベルト右側に補正可能な角度だけステアリングローラの姿勢を傾けている。
同様に、ベルトが左側2段階目にいる(SL1=1かつSL2=1)時のステアリング量(蛇行解消位置)は680+PHPパルスで、ポジションラベルはL2となる。680+PHPパルスは、ベルトが左側2段階目にいる時の蛇行をベルト右側に補正可能な角度だけステアリングローラの姿勢を傾けている。
同様に、ベルトが右側1段階目にいる(SR1=1かつSR2=0)時のステアリング量(蛇行解消位置)は−340+PHPパルスで、ポジションラベルはR1となる。−340+PHPパルスは、ベルトが右側1段階目にいる時の蛇行をベルト左側に補正可能な角度だけステアリングローラの姿勢を傾けている。
同様に、ベルトが右側2段階目にいる(SR1=1かつSR2=1)時のステアリング量(蛇行解消位置)は−680+PHPパルスで、ポジションラベルはR2となる。−680+PHPパルスは、ベルトが右側2段階目にいる時の蛇行をベルト左側に補正可能な角度だけステアリングローラの姿勢を傾けている。
図9は、ベルト蛇行補正制御について説明したフローチャートである。図9のステップS201は、CPU100がインターバルタイマによって100msおきに実行する処理手順である。
ステップS201が開始されると、まずステップS202にて記憶しておいたベルトの位置PosNowをPosOldに退避する。
次にステップS203において、ベルト位置検出センサの状態を検出し、後述する図8のテーブルから相当するベルト位置のラベルを求めてPosNowに代入する。同時に、ベルト位置に応じたステアリングパルス(ステアリング量)Pstairを求める。
次にステップS204ではPosNowとPosOldを比較する。ここで、同じであればベルト位置が変わっていないので、ステアリングローラの操作は不要であり、ステップS210へ移行する。一方、ベルト位置が変わっていればステップS205に進み、ステップS205にてPosOldがL2もしくはR2であるかどうかを比較する。この時、既にベルト位置がL2もしくはR2であった場合は、L1もしくはR1間での寄り補正制御から外れたことを意味するので、ベルトが中央(PosNow=CT)になるまでステアリングローラのステアリング量をL2もしくはR2の時のまま維持する。
次にステップS206で現在のベルト位置が中央(PosNow=CT)であるならばステップS207に進み、ステップS207にてステアリングローラを平衡位置(平衡角度)に戻すまでの時間(Tref)カウントをスタートする。一方、ステップS206で現在のベルト位置が中央でないならばステップS208に進む。この時間Trefとは、ベルトの蛇行が解消されたことをセンサで検知してから、ステアリングローラの平衡位置への移動を開始するまでの時間のことである。以下、この時間Trefをベルト平衡戻し時間という。
ステップS208に進むのは、ベルト位置が中央(CT)からL1もしくはR1に移動した場合、L1もしくはR1からL2もしくはR2に移動した場合のどちらかであり、ベルトが中心から外側に向けた方向に蛇行していることが分かる。従ってベルトの蛇行補正が必要であり、S208で現在のベルト位置に応じたステアリングパルス(Pstair)分、ステッピングモータ(ステアリングローラ駆動モータ)を駆動させる(蛇行解消モード)。
またステップS209では、ベルト位置が中央(CT)からL1もしくはR1に戻り、尚且つステアリングローラの平衡維持制御をしていたかどうかを判断している。ステアリングローラが平衡維持制御の状態でベルト位置がL1もしくはR1に戻った場合は、平衡状態の維持が終了したため、ステップS605にて平衡状態を維持できた時間を算出する。なお、ステップS605の平衡状態を維持できた時間については、図14(b)を用いて後述する。
またステップS210ではステアリングローラを平衡位置に戻す時の微調整分の駆動ステップαを計算している。このステップS210のα演算アルゴリズムについては、図13を用いて後述する。
図10は、ベルト平衡戻し時間(タイマー)Trefがタイムアップした時のステアリングローラを平衡に戻す制御について述べたフローチャート図である。
ステップS220でTrefがタイムアップすると、ステップS221では図8のテーブルを元に、現在のベルト位置(PosNow)ラベルを求める。
ステップS222で現在のベルト位置PosNowがCTであるならば、ベルトが中央ゾーン(図7(b)に示す寄り正常範囲51)にいるために、ステップS223で基準位置からのステアリング量Pstairに微調整ステアリング量αをセットする。ここで、基準位置とは前述した計算式から求められた傾き補正パルスPHPであり、Pstairは基準位置からのステアリング量を表すモータのステップ数(パルス数)である。そのため、ステップS224ではステアリングローラを一旦基準位置に戻す駆動をした後、前述のPstair分だけステッピングモータを駆動させてステアリングローラを平衡位置に戻す。
そして、ステップS601では、平衡状態を維持できる時間を計測するためのタイマーをスタートさせる。なお、ステップS601の平衡状態を維持できる時間の測定開始については、図14(a)を用いて後述する。
一方、ステップS222で現在のベルト位置PosNowがCTでないならば、Trefカウント中にベルトが中央ゾーンから抜けたことになる。そのため、ステアリングローラを平衡位置に戻すことを行わずに、図9のステップS206以降のフローに従って、所望の位置にステアリングローラを移動させる(蛇行解消モード)。
前記微調整ステアリング量αは、ツインベルトでベルトを左右蛇行のバランスが崩れない平衡位置に維持する時の微小調整パルス数である。後述するが、このαを微調整することにより、ベルトを常に最適な平衡位置に維持することができる。
図11は、ベルト平衡戻し時間(タイマー)Trefのタイムアップ値を算出するシーケンスについて説明したフローチャートである。本シーケンスは、画像形成装置に定着装置を装着した時に算出する。
ステップS301にて時間Trefの測定が開始されると、まずベルトが中央にある状態で、ステップS302で基準位置からDL1パルス分だけステッピングモータを駆動させてステアリングローラを傾ける。ここで、基準位置とは前述した計算式から求められた傾き補正パルスPHPである。ここで、DL1とはベルトの左への移動時間を計測するための基準傾きパルスであり、DR1はベルトの右への移動時間を計測するための基準傾きパルスである。また、本実施例ではベルトの傾きとベルトの移動速度の関係は左右で同じ条件であるため、DL1とDR1は同値である。また、DL1及びDR1の値は、ベルトがそれぞれR2及びL2にいる時のステアリング量に等しい。
前述の如くしてステアリングローラを傾けるとベルトが左側へ移動する。そして、ステップS303でセンサSL1がオフになると、ステップS304では逆に基準位置からDR1パルス分だけステッピングモータを駆動させてステアリングローラを傾ける。同時に、ベルトがセンサSL1からセンサSR1へ移動する時間(ベルトの幅方向一方から他方への移動時間)Tref1の計測を開始する。
前述の如くしてステアリングローラを傾けるとベルトが右側へ移動する。そして、ステップS305でセンサSR1がオフになると、ステップS306では時間Tref1の計測を終了し、基準位置からDL1パルス分だけステッピングモータを駆動させてステアリングローラを傾ける。同時に、ベルトがセンサSR1からセンサSL1へ移動する時間(ベルトの幅方向他方から一方への移動時間)Tref2の計測を開始する。
前述の如くしてステアリングローラを傾けると再びベルトが左側へ移動する。そして、ステップS307でセンサSL1がオフになると、ステップS308では時間Tref2の計測を終了する。
そして、ステップS309では、計測した時間Tref1と時間Tref2の平均時間を算出し、S310で時間Trefとしている。なお、図示していないが、前述の時間の計測後は、ベルトを平衡位置へ戻す。
ここでは図示しないが、時間Trefの求め方は、Tref1とTref2を平均して求めた時間を代入する他、例えばTrefタイマー計測開始前のベルト位置を元にTref1とTref2のいずれかを採用する等でも良い。
上述のように、ベルトが蛇行した時には蛇行を解消する方向にベルトを寄らせる蛇行解消モードと、蛇行が解消された時にはベルトの幅方向への蛇行のバランスがとれる位置にステアリングローラを戻す平衡維持モードを組み合わせて、ツインベルト定着装置における安定したベルト蛇行補正制御を実現することが可能になった。
ところで、実際には、ベルトが左右どちらにも寄らない平衡位置を維持するステアリングローラの平衡角度を見つけることは困難である。なぜならば、定着装置の組み立て時のベルト懸架部材等の平行性のばらつき、熱膨張による部品寸法の変化、耐久による部品の磨耗等の影響により、ベルトの左右どちらかへの緩やかな蛇行は常に発生するからである。このような状況で、ベルトの蛇行速度が極力少なくなる角度を検出することが最適な平衡角度を求める事であると考えることができる。
そのような状況において、常に最適な平衡角度を求めるために、ここでは平衡角度を最適な位置へ微調整する。後述する図12、図13では、前述の平衡角度を最適な位置へ微調整するためのαの演算アルゴリズムについて述べている。
また、先に述べたように、ステアリングローラを平衡角度に維持する時間を極力長くするには、ステアリングローラをステアリング角度から平衡角度に傾けるタイミングを、極力ベルトの中央に近い位置で行う事である。これにより、ベルトの蛇行補正開始位置への距離が最も長くなり、ステアリングローラが平衡角度を維持する時間を最も長くすることができる。
ところが、上記ベルト中央位置を検知するためには、ベルトの蛇行を検知するためのベルト位置検出センサSL1,SL2,SR1,SR2の他に、ベルト中央を検知するためのセンサが必要である。このため、センサ追加によるコストアップ及びセンサの設置による定着装置の複雑化が課題となっていた。
図11で述べたステアリングローラを平衡角度に戻すための時間Trefを求めることにより、ベルト中央位置を検知するセンサが不要になったため、装置のコストダウン、及び装置の簡略化が可能になった。
図12は、図9で説明したステアリングローラを平衡状態に戻す時の基準位置PHPからの変位量(パルス数)αを初期化するアルゴリズムについて説明する。
図12に示すアルゴリズム(ステップS401以降)は、画像形成装置の電源投入後、もしくはメンテナンス等による定着装置の脱着後に行っている。
ところで連続プリント中の定着ユニットの昇温や画像形成する転写シートの材質により定着ベルトの表面の凹凸は様々な状態になっている。従ってベルトが平衡状態にある時のベルトの片寄り傾向も異なる。従って、プリント終了後も補正したαを保持して次のプリント時に適用すると、かえって平衡制御の収束時間が長くなる場合がある。
そこで、画像形成開始時にαをゼロに初期化(ステップS403)し、各画像形成ジョブ単位でαを再度求めている。
一方で、前述した傾き補正パルスPHPについては、定着装置の静的なアライメントずれが起因となるベルト寄りの不釣合いを補正するパラメータである。このため、大きなアライメントのずれが生じない限りは、定着装置を新規に画像形成装置本体に取り付けた時(ベルトの初期使用開始時)に計測した補正値(PHP)をバックアップ保持している。
図13は、図8以降に登場するパラメータαを補正するためのアルゴリズムについて述べたフローチャート(図9におけるステップS210のサブルーチン)である。本フローチャートでは、ベルトが平衡位置にいる状態で、中央ゾーンからラベルL1もしくはラベルR1に蛇行した頻度を記憶しておき、ベルトを平衡位置に移動する時、頻度の低い方に移動するように平衡位置を補正する。
まず、ステップS502では、αが2以上で、なおかつベルトの現在位置PosNowがラベルL1ならば、これまで平衡制御位置ではラベルR1寄り傾向だったものがラベルL1寄り傾向になったため、平衡が取れたと見なしてαの微調整を中断する。
同様にS503では、αが−2以下で、なおかつベルトの現在位置PosNowがラベルR1ならば、これまで平衡制御位置からラベルL1寄り傾向だったものがラベルR1寄り傾向になったため、平衡が取れたと見なしてαの微調整を中断する。
次に、ステップS504にて、図9のステップS202にて置き換えたベルトの位置PosOldがCTである場合には、ベルトの現在位置PosNowが平衡位置からラベルL1もしくはラベルR1に寄った状態(αを再演算するタイミング)かを判断する。即ち、ステップS505にてベルトの現在位置PosNowがラベルL1であれば、ステップS507にてαを一つ減算する(αを右寄り傾向に補正)。一方、ステップS505にてベルトの現在位置PosNowがラベルL1でなく、ステップS506にてベルトの現在位置PosNowがラベルR1であれば、ステップS508にてαを一つ加算する(αを左寄り傾向に補正)。
前述の如くベルトの平衡位置をαで微調整しても、定着装置の耐久時間が長くなってきた時に、先に説明した設置時に測定するステアリング補正パルスPHPの値が定着装置の現在のアライメント状態と一致しなくなる事がある。積極的にベルト寄りを補正する蛇行解消モードにある時には多少のアライメント不一致は蛇行の解消に影響を与えない。しかし、αの微小な補正を繰り返す平衡維持モードにおいては、平衡制御開始時の平衡性がある程度保たれた状態から微調整を開始しないと、その後のαが収束するまでの時間が長くなり、ベルトを平衡状態に保つ平衡制御の効果が半減してしまう。
図14は、ベルトを平衡状態に保つ事が出来た時間を測定するためのサブルーチンである。図14(a)は図10に示すステップS601のサブルーチンであり、図14(b)は図9に示すステップS605のサブルーチンである。
まず図14(a)に示すステップS601以降のフローでは、ベルトを平衡状態に保つ平衡維持モードを開始した時(ステアリングローラを図8のラベルCTに移動させた時)の現在時刻を変数Tflat_sに記憶する(ステップS603)。すなわち、蛇行解消モードから平衡維持モードへ移行した時刻を時間計測の始点としている。この時、ステップS602において定着装置が加圧中かどうかを判断する。スタンバイ中など定着装置が加圧中でない場合は平衡維持モードを行わないため、現在時刻を記憶しない。
次に図14(b)に示すステップS605以降のフローでは、平衡維持モードから蛇行解消モードに切り替わった時(ステアリングローラを図8のラベルCT以外に移動させた時)の現在時刻をTflat_eに記憶する(ステップS608)。すなわち、平衡維持モードから再び蛇行解消モードへ戻る時刻を時間計測の終点としている。この時、ステップS607において定着装置が平衡維持時間の測定を開始してから加圧状態を継続しているかを判断する。ここで、ステップS602と同様にステップS606にて定着装置が加圧していない時、もしくはステップS601で平衡維持時間の測定開始してから複数の印刷ジョブが時間を開けて入る等で一旦離間すると平衡維持時間を正しく測定する事が出来ない。そのため、このような場合は平衡維持時間の計測を中止し、再び平衡維持モードが開始したタイミングでステップS601から測定開始する。
ここで、定着装置が加圧中(画像形成中)のみ、時間を計測しているのは、ツインベルト定着装置における定着ベルトのアライメントは、離間時と加圧時でバランスが異なるからである。離間時は相互のベルトの蛇行による影響を受けないため、比較的平衡状態を維持しやすい。加圧状態と離間状態をまたがって平衡維持時間を計測すると、正しい平衡維持時間を見つける事が出来ないため、ここでは加圧の間に測定した時間を元に平衡維持時間を計測する。
図15は、図14で計測したベルト平衡維持時間を元に、ステアリングローラを平衡位置に戻す時間Trefの再計測及びステアリングローラを平衡位置に移動させる傾き補正パルスPHPの再計算を行う事を判断するルーチンのフローチャートである。
ステップS702、S703では、ステップS603で求めたTflat_s及びステップS608で求めたTflat_eが更新されたかどうかを判断する。両者とも更新されていると最新のベルト平衡維持時間を計算する事ができる。
ステップS704では、平衡維持時間の更新が、定着装置交換後の最初の測定であるかを判断する。定着装置交換後の最初の測定であるならば、定着装置の耐久が進む前の初期平衡維持時間であるため、ステップS705で変数Tflat0に平衡維持時間(Tflat_e−Tflat_s)を代入する。また、定着装置交換後の最初の測定でないならば、ステップS706で変数Tflatに平衡維持時間(Tflat_e−Tflat_s)を代入する。
ステップS707では、ベルトが平衡維持モードにとどまる平衡維持時間(Tflat)が所定時間(Tflat0÷2)より短いか否かを判断する。ここで、所定時間とは、定着装置交換後の最初(ベルトの初期使用開始時)に計測した初期の平衡維持時間に基づいて算出した時間である。Tflat<Tflat0÷2であるならば、現在の平衡維持時間が定着装置交換時の初期平衡維持時間と比べて著しく維持時間が短くなっているため、Tref及びPHPの再計算が必要であると判断する(ステップS709)。一方、現在の平衡維持時間が定着装置交換時の初期平衡維持時間と比べて著しく維持時間が短くなっていない場合は、Tref及びPHPの再計算は必要ではないと判断する(ステップS708)。
図16は、画像形成装置に新たな定着装置を装着した時(ベルトの初期使用開始時)のベルト平衡戻し時間Trefの計測及びステアリングローラを平衡位置に移動させる傾き補正パルスPHPの算出タイミングについて説明した動作フローチャートである。
ステップS801で新たな定着装置を画像形成装置に装着すると、ステップS301(図11参照)のTref測定ルーチンによりベルトの寄り時間(アライメント測定)を行い、上記計算式1を用いて傾き補正パルスPHPを算出する(ステップS802)。
続いて、画像形成装置は定着装置及び装置本体のウォームアップ動作を行い、同時に画像濃度等の自動調整(ステップS803)を行い、スタンバイ状態(ステップS804)に遷移する。
次にステップS805で画像形成動作がスタートすると、図15で説明したアライメント再測定判断ルーチン(ステップS701)を実行する。画像形動作が終了すると、再びスタンバイ状態(ステップS804)に遷移する。
図17は、図15のステップS701以降のフローでPHPの再計測が必要であると判断された場合のベルト平衡戻し時間Trefの再計測実行タイミングについて説明したフローチャートである。ここでは、画像形成装置の電源投入時に行われる画像濃度調整及び定着装置の加熱と並行してベルト平衡戻し時間Trefの再測定を実施する。なお、ベルト平衡戻し時間Trefを再測定することでベルトの往復移動時間Tref1,Tref2が求められるため、前述した計算式1によりステアリングローラの初期位置PHPの再計測することができる。
まずステップS902で定着装置の加熱を開始する。図示しないが定着装置は表面温度がある一定の温度(ここでは200℃)になると、記録材上のトナー像を定着可能な温度(画像を加熱可能な温度)になる。次にステップS903では画像濃度調整を開始する。
次にステップS904でベルト平衡戻し時間の再計測が必要であるかを判断する。ここでの判断は、図15又は図19にてなされた判断である。ステップS904で再計測が必要であると判断した場合、画像濃度調整に要する予測時間を積算し、ベルト平衡戻し時間の再計測動作に必要な時間(ここでは30秒)よりも長いかどうかを判断する(ステップS905)。長い場合は更にステップS906で定着装置の温度が所定温度(ここで150℃)以上かどうかを判断する。この所定温度とは、再計測終了時に定着装置が定着可能な温度になる温度である。定着装置の温度が所定温度以上になると、ステップS301(図11参照)でベルト平衡戻し時間Trefを再測定する。画像濃度調整が終了し、かつベルト平衡戻し時間Trefの再測定が終了し、なおかつ定着装置の表面温度が定着可能な温度(前述の200℃)に到達すると画像形成装置は画像形成可能となる(ステップS907)。
このとき、画像濃度調整中に並行してベルト平衡戻し時間Trefの再計測を行う事により、操作者の待ち時間を増やさずに調整を実施する事ができる。また、画像濃度調整に要する予測時間が所定時間(ここでは30秒)に満たない場合は、ベルト平衡戻し時間Trefの再計測は行わない。また、ステップS906で定着装置の温度が所定温度(150℃)に達してからベルト平衡戻し時間Trefの再計測を行うのは、定着装置の加熱状態ができるだけスタンバイや印刷中の温度に近い温度で計測を行う事により、定着装置の熱膨張によるアライメントが一時的にずれた状態で計測を行わないようにするためである。また特に図示しないが、スタンバイ中に画像濃度調整を行う画像形成装置であれば、前記画像濃度調整中にベルト平衡戻し時間の再計測を行うと、ベルト平衡戻し時間の計測精度がより正確になる。また、定着装置を交換した時も同様にウォームアップ動作が入り、尚且つ定着ベルトの温度が下がっているために、前述したベルト平衡戻し時間の再計測が行われる事は自明である。一方、画像形成途中に画像濃度調整が入る場合は、並行してベルト平衡戻し時間の再計測を行わない。なぜならば、画像形成中断直後は定着装置の温度がオーバーシュートしているため、熱膨張により本来のベルト寄り時間を計測できないからである。ここでいうオーバーシュートとは、画像濃度調整開始直後は、通紙のために定着器が発した熱を吸収する媒体がないため、一時的に定着ユニットの部材温度が上昇する事を示している。
この様に、ベルトを平衡状態に維持するためのステアリングローラの平衡角度(PHP+α)を、αで微調整するだけでなく、所定の条件でPHPを再測定する。これにより、経年変化等で定着ユニット(或いは加圧ユニット)のアライメントが変化した場合であっても、ベルトを安定して平衡位置に維持することができる。
また、定着装置の経年劣化等によるアライメントの狂いに対しても、操作者に待ち時間を強要することなく、自動的にベルトの蛇行補正を行うことができる。
また、速やかにベルトの平衡制御を収束させることができるので、ステアリングローラ駆動モータへの駆動頻度が最小限となり、消費電力の低減、モータ駆動による稼動音の低減等、ユーザビリティ上も有利である。
また、ベルトが耐久が進んだ状態でも安定して平衡制御をするため、蛇行を補正する頻度が常に少なくなり、加圧した状態で頻繁にベルトが蛇行することによるベルトの劣化を著しく改善することが可能になる。
〔第2実施形態〕
第1実施形態ではベルトアライメントの狂いをベルトが平衡位置に維持される時間を元に判断したが、第2実施形態では平衡位置の微調整が収束するまでに要した時間(微調整が完了するまでの微調整完了時間)を元に判断する。
ベルトのアライメントが狂っていると、第1実施形態で説明した通り、ベルトを平衡位置に維持できる時間が短くなると同時に、図13で説明した平衡位置の微調整が収束するまでの時間が長くなってしまう。そこで第2実施形態では、ベルトの平衡位置の微調整が収束する時間(微調整完了時間)が、所定時間と比べて長くなった時に、Tref及びPHPの再計算が必要であると判断し、ベルト平衡戻し時間Trefの再計測を行う。ここで、所定時間とは、新たな定着装置を画像形成装置に装着した時(ベルトの初期使用開始時)に計測した初期の微調整完了時間に基づいて算出した時間である。
第2実施形態における画像形成装置は図1〜図13及び図16〜図17において第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。以下、図18及び図19を用いて本実施形態について詳しく説明する。
図18は、平衡位置の微調整完了時間を計測するフローチャートである。ステップS1001で画像形成を開始すると、ベルトの蛇行を補正し平衡を維持する平衡制御の開始タイミングをステップS1002で監視する。平衡制御を開始すると、ステップS1003で現在の時刻(平衡制御を開始した時刻)を変数Tbalance_sに記憶する。平衡位置の微調整はベルト加圧中のみ行っているため、ステップS1005で画像形成動作が終了すると、ステップS1004でサンプリングを中止してTbalance_sをリセットする。ステップS1005で画像形成中であるならば、ステップS1006で平衡位置補正パルスαの微調整が完了したかを判断する。ここでいうα微調整の完了とは、図13のS502もしくはS503が“はい”の場合である。平衡位置補正パルスαの微調整が完了した場合(S1006)、ステップS1007で変数Tbalance_eに現在時刻(平衡位置の微調整が完了した時刻)を記憶する。すなわち、連続画像形成開始後最初に平衡点への移動を開始した時刻とαが収束するまでに要した時刻を計測し、それぞれTbalance_sとTbalance_eへと格納しているのである。
図19は、図18で記憶した微調整完了時間を元に、ベルト平衡戻し時間Tref及び傾き補正パルス(初期位置)PHPの再計測が必要かどうかを判断するサブルーチンである。ステップS1102及びS1103では微調整完了時間を算出するための時刻Tbalance_s及びTbalance_eが更新されたかどうかを判断している。いずれも更新されているとステップS1104で定着装置の交換後、最初の更新かどうかを判断する。最初の更新であるならば、ステップS1105で初期の微調整完了時間として変数Tbalance0に時間差を記憶する。一方、定着装置交換後の最初の更新ではないならば、ステップS1006で変数Tbalanceに時間差を記憶する。その後、ステップS1107でTbalanceとTbalance0を比較する(Tbalance>Tbalance0×2)。即ち、現在の微調整完了時間が初期の微調整完了時間に比べて2倍以上の時間を要しているならば、ステップS1109でベルト平衡寄り時間Tref及び初期位置PHPの再測定が必要であると判断する。一方、現在の微調整完了時間が初期の微調整完了時間に比べて2倍以上の時間を要しないならば、ステップS1108でベルト平衡戻し時間Tref及び初期位置PHPの再測定は不要であると判断する。
このように構成しても、前述した実施形態と同様に、経時変化等によりベルトのアライメントがずれた場合であっても、ベルトを安定して平衡位置に維持することができる。
〔他の実施形態〕
第1実施形態ではベルトアライメントの狂いをベルトが平衡位置に維持される時間を元に判断し、第2実施形態では平衡位置の微調整が完了するまでに要した時間を元に判断したが、これらを組み合わせても良い。
即ち、ベルトを所定の範囲(図7(b)に示す範囲51)内に維持する平衡維持時間、及びステアリングローラの平衡位置の微調整が完了するまでの微調整完了時間を計測する。そして、計測した現在の平衡維持時間が、予め設定された所定時間より短い時は、もしくは計測した現在の微調整完了時間が、予め設定された所定時間より長い時は、ベルト平衡戻し時間Tref及びステアリングローラの初期位置PHPを再計測する。これにより、更に確実にベルトを安定して平衡位置に維持することができる。
また第1及び第2実施形態では、ステアリング補正パルスPHPはベルトの加圧状態と離間状態で共通であったが、ベルトの加圧状態と離間状態ではアライメント特性が異なる場合がある。そのため、ステアリング補正パルスPHPを加圧状態と離間状態別々に持ち、それぞれの状態に応じたステアリング補正パルスPHPを適用するようにしても良い。これにより、どちらの状態でもベルトの片寄りを効果的に補正することができる。
前述の場合、図11に示したベルト平衡戻し時間Trefの測定モードを、加圧時と離間時の両方行うわけだが、ツインベルト定着装置において加圧時のベルト平衡戻し時間測定モードを行うと、加圧状態で長時間ベルトを回転させることとなる。このため、加圧ベルトの温度が通常の画像形成状態よりも昇温してしまい、図17で加圧時のベルト平衡戻し時間の測定モードを行った直後に画像形成動作を行うと、紙しわやカール等の記録材の出力品位を損ねる場合がある。
そこで、ベルト平衡戻し時間Trefの測定モードを加圧状態と離間状態の両方で行う場合は、必ず加圧状態でのベルト平衡戻し時間の測定を先に実施する。これにより、続く離間状態でのベルト平衡戻し時間の測定の間に加圧ベルトの昇温を下げることが可能になる。
また前述した実施形態では、画像形成部を4つ使用しているが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
また前述した実施形態では、画像形成装置として複写機を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばプリンタ、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に用いられるベルト搬送装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。