以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る製本システム10の全体構成図である。製本システム10は、給紙装置12、中綴じ折り装置14、断裁装置16、スタッカ18、および管理装置20を有する。
給紙装置12は、Aトレイ22A、Bトレイ22B(以下、必要に応じてこれらを「トレイ22」と総称する)を有する。トレイ22には、印刷、電子写真方式、インクジェット方式などによる画像形成方法によって画像が形成された用紙が積載される。
給紙装置12には、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する給紙制御部110が設けられている。Aトレイ22AおよびBトレイ22Bの各々に対応して、分離給送機構24が設けられている。分離給送機構24は、対応するトレイ22に積載された用紙のうち最上位の用紙を分離して送り出す。分離給送機構24はエア吸引式のものが採用されている。エア吸引式の分離給送機構は公知であるため、その詳細な説明は省略する。なおエア吸引式の分離給送機構に代えて、いわゆるフリクション式の分離給送機構が設けられてもよいことは勿論である。
また、給紙装置12は、トレイ22の各々を昇降させる昇降機構(図示せず)、およびトレイ22の各々に積載された用紙の高さを検知する用紙高さセンサ(図示せず)を有する。給紙制御部110は、トレイ22に積載された用紙のうち最上位の用紙が給紙可能高さに達したことが検知されたときにトレイ22の上昇を停止させる。こうして給紙制御部110は、トレイ22の最上位に積載された用紙の高さを給紙可能高さに維持し、分離給送機構24による用紙の連続的な送り出しを可能としている。
給紙装置12は、スイッチバック反転機構26を有する。管理装置20においてユーザにより反転を指定する入力がなされた場合に、スイッチバック反転機構26はAトレイ22Aから送り出された用紙を反転させて用紙搬送路に戻す。Aトレイ22Aから送り出された用紙が搬送される用紙搬送路、およびBトレイ22Bから送り出された用紙が搬送される用紙搬送路は、共通搬送路28で合流する。
中綴じ折り装置14は、糊転写機構30および折り機構70を有する。給紙装置12から送り出された用紙は、共通搬送路28および用紙搬送プレート34を通って糊転写機構30に送り込まれる。用紙搬送プレート34を挟んで対向するように搬送ローラ32が配置され、用紙搬送プレート34上に送り込まれた用紙を糊転写機構30に搬送する。糊転写機構30は、送り込まれた用紙を規定位置に停止させて糊を転写する。糊転写機構30を構成する糊付け装置の詳細については後述する。
なお、糊転写機構30には、用紙幅方向への用紙の移動を規制するサイドガイド(図示せず)が、装置前方および後方にそれぞれ1つずつ設けられている。この一対のサイドガイドの各々は、互いに対向する用紙規制面を有する。第1の実施形態では、一対のサイドガイドはいわゆる中心振り分け方式により用紙幅方向の中央から用紙規制面までの距離が等しくなるよう移動可能に構成されている。一対のサイドガイドの各々はギヤ機構を介してモータに接続されており、このモータを作動させることにより、対向する用紙規制面の間の距離を用紙の幅に合わせて変化させることが可能となっている。
中綴じ折り装置14には、糊付け制御部112が設けられている。糊付け制御部112はCPU、ROM、およびRAMを有し、糊転写機構30に設けられたアクチュエータの作動を制御することにより、用紙への糊の転写を制御する。糊転写機構30によって糊付けされた用紙は、サクション搬送機構40および搬送ローラ42によって折り機構70へ搬送される。なお、サクション搬送機構40は、サクションベルト、駆動ローラ、サクションチャンバを有する。サクションベルトは、複数のベルトを間隔をあけて幅方向に並設したものでもよいし、幅広のベルトに複数の孔が形成されたものでもよい。サクションチャンバは、サクションベルトの内方に設けられたファンによってエアを吸引し、それにより用紙をベルトに密着させるものである。サクション搬送機構40が駆動されると、用紙がサクションベルトに密着する態様で下流側へ搬送される。
折り機構70は、用紙搬送プレート72、折りストッパ74、折りナイフ76、折りローラ78、およびベルト搬送機構80を有する。用紙搬送プレート72は、糊転写機構30側の用紙搬送プレート34よりも一段低い位置に設けられている。このため、糊転写機構30から折り機構70に搬送されてきた複数の用紙は、用紙搬送プレート72上に積み重ねるように収容されて用紙束を形成する。折り機構70は、設定数の用紙が積み重ねされた後、糊付けされた各用紙の中央を貼り合わせつつ折り込み、三方断裁機構90へ向けて搬送する。すなわち、折り機構70は、複数の用紙を綴じる綴じ処理とその用紙束を冊子に折りたたむ折り処理を同時に実行する。
折りストッパ74は、用紙搬送プレート72の用紙搬送方向下流側(単に「下流側」という)端部近傍に、用紙搬送プレート72上面より上方に突出するよう配置される。折りストッパ74はボールネジ機構を介してストッパ移動モータ(図示せず)に接続されており、ストッパ移動モータが作動することにより用紙搬送方向に移動する。糊転写機構30から用紙搬送プレート72上に順次送り込まれる用紙は、その前端部が折りストッパ74に当接したところで用紙搬送方向の位置決めがされる。なお、用紙搬送プレート72上にも用紙の幅方向の位置を規制する図示しないサイドガイドが設けられている。そして、その決められた位置に順次積み重ねられた用紙が用紙束を形成する。折りストッパ74は、その用紙束の折りラインが、折りナイフ76に当接する位置になるよう、予め用紙搬送方向に移動されている。なお、製本システム10では、用紙搬送方向と垂直な方向(「用紙幅方向」という)が折りラインと平行な方向となる。
用紙搬送プレート72の上方には一対の折りローラ78が、軸方向が用紙幅方向に向くよう、用紙搬送方向に並設されている。折りナイフ76は、折りナイフ駆動モータ(図示せず)が作動することにより一対の折りローラ78の間に上昇し、また用紙搬送プレート72の下方に下降することが可能となっている。折りストッパ74により用紙束が用紙搬送方向の位置決めがされた状態で折りナイフ76を上昇させることにより、積み重ねられた用紙が確実に貼り付けられるとともに、その用紙束が一対の折りローラ78の間に巻き込まれて折られる。
一対の折りローラ78は、ギヤ機構などを介して折りローラ駆動モータに接続されている。折りローラ駆動モータが作動することにより、巻き込んだ用紙束を折りたたみながら上方に搬送するように一対の折りローラ78が駆動される。一対の折りローラ78によって折りたたまれた冊子は、一対の折りローラ78のニップ部から上方に向かう綴じ折り冊子搬送路82を通ってベルト搬送機構80に送り込まれる。ベルト搬送機構80は、作成された冊子を断裁装置16の用紙搬送路92に送り出す。
中綴じ折り装置14には、折り制御部116が設けられる。折り制御部116はCPU、ROM、およびRAMを有し、折りストッパ74の用紙搬送方向位置、折りナイフ76の昇降、および折りローラ78の駆動を制御する。
断裁装置16は、三方断裁機構90を有する。三方断裁機構90は、小口断裁刃98、用紙押さえ部96、ストッパ94、サイドガイド(図示せず)、および一対の天地断裁刃(図示せず)を有する。
ストッパ94は、ソレノイド(図示せず)をオン・オフすることにより、用紙搬送路92に進退可能とされている。冊子の小口を断裁する場合、三方断裁機構90は、各々の冊子が送り込まれる前にストッパ94を用紙搬送路92から上方に突出させておく。ストッパ94はボールネジ機構を介してストッパ移動モータ(図示せず)に接続されており、ストッパ移動モータが作動することにより用紙搬送方向に移動する。
三方断裁機構90に搬送された冊子は、背がストッパ94に当接する直後のタイミングで搬送が停止される。冊子の天地は、ストッパ94に当接する以前に一対のサイドガイド(図示せず)によって位置決めされる。用紙押さえ部96は、モータ(図示せず)が作動することにより、ストッパ94に当接した冊子に向けて下降する。
小口断裁刃98は、用紙押さえ部96より用紙搬送方向上流側(以下、「上流側」という)の用紙搬送路92上方に設けられ、小口断裁モータ(図示せず)が作動することにより下降する。天地断裁刃は、用紙搬送路92上方に用紙押さえ部96を挟んでそれぞれ一つずつ設けられ、天地断裁モータ(図示せず)が作動することにより下降する。これら一対の天地断裁刃は、中心振り分け方式により相互に離間または近接する方向に移動可能とされており、天地断裁刃移動モータ(図示せず)が作動するによって、ギヤ機構などを介して相互に離間または近接する方向に移動する。
サイドガイドの間を通過することにより天、地の位置が揃えられ、且つストッパ94により用紙搬送方向の位置決めがされた状態で、用紙押さえ部96が下降して冊子が押さえつけられる。この状態で、まず小口断裁刃98が小口を断裁し、次に一対の天地断裁刃が、冊子の天と地を断裁する。こうして最終的な中綴じ折り冊子が作成される。断裁処理が施された冊子は、スタッカ18上に搬送される。なお、三方断裁機構90に代えて、小口のみを断裁する小口断裁機構が設けられてもよい。
断裁装置16には、断裁制御部118が設けられる。断裁制御部118はCPU、ROM、およびRAMを有し、ストッパ94の用紙搬送方向位置、天地断裁刃の用紙幅方向位置、小口断裁刃98および天地断裁刃による冊子の断裁を制御する。
管理装置20は、管理PC(Personal Computer)100、ディスプレイ102、キーボード104、マウス106によって構成される。管理PC100は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどを有し、給紙装置12、中綴じ折り装置14、および断裁装置16とデータの送受信可能に接続されている。ディスプレイ102、キーボード104、およびマウス106は管理PC100に接続されている。
管理PC100は、ディスプレイ102に設定画面を表示することにより、ユーザによって各種の設定入力が可能な状態とする。ユーザは、設定画面が表示された状態でキーボード104やマウス106を使って各種の設定入力をすることができる。ディスプレイ102に表示されたスタートボタンがユーザによってクリックされると、管理PC100は、設定内容を示す情報と共に製本処理を開始する旨を示すスタート信号を、給紙制御部110、糊付け制御部112、折り制御部116、および断裁制御部118に送信する。
ここで、第1の実施形態の主要部をなす糊付け装置の詳細について説明する。図2は、糊転写機構30の構成を模式的に表した断面図である。
糊転写機構30は、糊シートユニット120、送り駆動機構122、転写作動機構124、およびストッパ駆動機構126を有する。
糊シートユニット120は、搬送ローラ32とサクション搬送機構40の間において、用紙搬送プレート34の上方に配置される。用紙搬送プレート34には図示しない糊付け装置の本体ケーシングが固定されており、糊シートユニット120は、その本体ケーシングに着脱可能に固定されるカートリッジの態様をなす。糊シートユニット120は、転写作動機構124との協働により、用紙搬送プレート34上に搬送された用紙の上面に糊を転写する。第1の実施形態では、糊シートユニット120は2つ、用紙幅方向に並設されている。なお、糊シートユニット120の数は2つに限られない。例えば用紙のサイズが小さい場合などには1つでもよい。また、例えば用紙のサイズが大きい場合など、3つ以上設けてもよいことは勿論である。
図3は、糊シートユニット120の構成を模式的に表した断面図である。図4は、糊シートユニット120を下方からみた斜視図である。図5は、糊シートユニット120を上方からみた斜視図である。図5においては便宜上、フレーム200の一側面を取り外した状態が示されている。
図3に示すように、糊シートユニット120は、フレーム200、供給リール202、巻取りリール204、ガイド部材206、送りローラ208、ニアエンド検知部材210を有する。供給リール202には糊シート212の一端側が巻回されており、巻取りリール204には糊シート212の他端側が巻回されている。
供給リール202は、フレーム200の片側半部(図の右側)に回転可能に取り付けられている。糊シート212は、可撓性のある長尺状の基材シートの一方の面に糊が付着されて構成され、その糊が付着された糊付着面が外側となるように供給リール202に巻回されている。糊シート212の糊が付けられている側を用紙に押し付けることにより、押し付けられた部分の糊が基材シートから剥離されて用紙に付着する。この糊シート212の具体的構成については後述する。
巻取りリール204は、フレーム200の上部中央に回転可能に取り付けられ、共に同軸に回転するよう巻取りギヤ214が固定されている。ガイド部材206は、フレーム200の下部中央に固定されている。巻取りギヤ214とガイド部材206との間には、巻取りギヤ214に噛合するアイドラギヤ216が回転可能に設けられている。巻取りギヤ214とアイドラギヤ216との減速比は、糊シート212の送り量を考慮して適切な値となるよう設定されている。送りローラ208は、フレーム200の供給リール202とは反対側半部に回転可能に取り付けられている。供給リール202とガイド部材206との間にはガイドローラ218が配設され、ガイド部材206と送りローラ208との間にはガイドローラ220が配設されている。ガイドローラ220の幅方向の両端には円板状のフランジが設けられており、糊シート212の幅方向の動きを規制している。
ガイド部材206は、その下端の受圧面240がフレーム200の最下部から露出し、糊シート212の糊付着面の裏面に一定のテンションを維持しつつ当接している。供給リール202から引き出された糊シート212は、ガイド部材206、送りローラ208等を経て巻取りリール204に巻き取られるが、その過程でガイドローラ218,220にガイドされる。
巻取りリール204が回転すると、供給リール202に巻回された糊シート212が引き出され、ガイド部材206の受圧面240を経由して巻取りリール204に巻き取られる。供給リール202は適度な摩擦が生じるよう回転軸に嵌挿されており、巻取りリール204によって糊シート212が巻き取られても、糊シート212には適度なテンションが保たれる。
送りローラ208には同軸に回転するプーリ222が固定される一方、アイドラギヤ216にも同軸に回転するプーリ224が固定されている。プーリ222とプーリ224との間には回転伝達用のベルト226が掛け渡されており、送りローラ208の回転がアイドラギヤ216および巻取りギヤ214を経て巻取りリール204に伝達されるように構成されている。一方、送りローラ208は、ワンウェイクラッチ(図示せず)を介してレバー228に接続されている。レバー228は、その一端側に送りローラ208の回転軸と同軸状の回動軸を有し、他端側がフレーム200の外部に延出している。レバー228の他端部には回転ローラ229が設けられている。
レバー228が正方向(図の時計回り)に回動すると、その回動がワンウェイクラッチを介して送りローラ208に伝達される。そして、その送りローラ208の回転がベルト226、アイドラギヤ216および巻取りギヤ214を介して巻取りリール204に伝達される。その結果、送りローラ208の回転により糊シート212が送られるとともに、巻取りリール204の回転により糊シート212が巻き取られる。一方、レバー228が逆方向(図の反時計回り)に回動しても、その回動はワンウェイクラッチにより送りローラ208には伝達されない。したがって、送りローラ208および巻取りリール204が逆転して一旦巻き取られた糊シート212が緩められるようなことはない。
レバー228の回動は、糊シートユニット120の外部に設置された送り駆動機構122(図2参照)により実現される。すなわち、送り駆動機構122は、糊付け装置の本体ケーシングに回転可能に取り付けられた回転軸130と、その回転軸130に固定された偏心カム132と、回転軸130を回転駆動する図示しない送り駆動モータを含んで構成されている。偏心カム132は、複数の糊シートユニット120に対応した数(第1の実施形態では2つ)設けられ、それぞれが各糊シートユニット120のレバー228に対応する位置に配置されている。偏心カム132は、その外周面がレバー228の回転ローラ229に当接し、レバー228を下方から支持している。レバー228は、図示しないスプリング(付勢部材)により、その回転ローラ229が偏心カム132に当接するように付勢されている。偏心カム132が1回転するごとに、レバー228が1回往復回動する。そのレバー228の回動角度により糊シート212の1回の送り量が決まる。
糊シート212の送り量を調整するために、レバー228の下方には送り量調整カム230が設けられている。送り量調整カム230は、フレーム200に取り付けられた偏心軸232に回動可能に設けられ、レバー228に当接することによりそのレバー228の回動範囲を規制する。第1の実施形態では、作業者の手動により送り量調整カム230を回動させ、レバー228の回動の下死点を調整可能に構成されている。このようにレバー228の回動範囲を変更することで送りローラ208の回転量が変化し、結果的に糊シート212の送り量が変化する。
また、送りローラ208との間に糊シート212を挟むように従動ローラ234が設けられている。従動ローラ234はゴム等の弾性体からなり、スプリング236によって送りローラ208側に付勢されて糊シート212に適度な摩擦力を付与し、糊シート212が安定して送られるよう補助している。
図2および図3に示すように、ガイド部材206は、その下面に用紙幅方向に延びる長方形状の受圧面240を有し、その受圧面240にて糊シート212の裏面に当接している。ガイド部材206の下方には、剥離部材242が配設されている。図4および図5にも示されるように、剥離部材242は、金属板材を成形して得られたものであり、長方形板状の本体に大きなスリット244を有する。そのスリット244からはガイド部材206の受圧面240や糊シート212が下方に向けて露出している。剥離部材242は、ガイド部材206の幅方向両側にその押圧面が設けられるとともに、ガイド部材206の用紙搬送方向上流側には全幅にわたってその押圧面が設けられている。
剥離部材242は、用紙への転写処理が行われた後、糊シート212に貼り付いた用紙を引き剥がすためのものである。剥離部材242の用紙搬送方向上流側(単に「上流側」という)の端部に上流側に向けて開放された図示しないスリットには、支点軸246が着脱可能に嵌合されている。また、剥離部材242の用紙搬送方向下流側(単に「下流側」という)の端部に下流側に向けて開放されたスリット245には、支持軸248が支点軸246が着脱可能に嵌合されている。支点軸246の両端は、フレーム200の対向する側面に形成されたスリット250にそれぞれ支持されている。スリット250は横方向に延び、その上流側端部よりも下流側端部がやや低くなるよう傾斜している。スリット250から突出した支点軸246の各先端にはスプリング252が取り付けられている。スプリング252の他端は、スリット250よりも下流側にてフレーム200に固定されている。
図示の状態においては、スプリング252の付勢力によって支点軸246が剥離部材242の上流側のスリットに押し付けられるように嵌合するとともに、剥離部材242の下流側のスリット245が支持軸248に押し付けられるように嵌合している。このため、剥離部材242は、支点軸246と支持軸248とにより安定に支持されている。この状態から支点軸246をスプリング252の付勢力に抗して剥離部材242から離れる方向に移動させると、剥離部材242と支点軸246との嵌合が外れる。そして、剥離部材242をさらに上流側に移動させれば剥離部材242と支持軸248との嵌合も外すことができ、剥離部材242をフレーム200から取り外すことができる。それにより、フレーム200内への糊シート212の設置や取り替えを容易に行うことができる。
また、フレーム200の下流側側壁から支持軸248の上面へ向けて延びるように、所定幅の板ばね253が設けられている。この板ばね253は、支持軸248を介して剥離部材242を下方、つまりガイド部材206から離間する方向に付勢している。
一方、支持軸248の両端も、フレーム200の対向する側面に形成されたスリット254にそれぞれ支持されている。スリット254は上下方向に延び、支持軸248の上下方向の変位を可能にしている。スリット254から突出した支持軸248の各先端には、脱落防止用の円板256が取り付けられている。スリット244の幅は、上方に位置する受圧面240の長さよりもやや大きく、下方に送り込まれる用紙の幅よりも小さく設定されている。剥離部材242は、その待機状態においては板ばね253の付勢力によって図示の下死点に位置するが、転写作動機構124が作動したときにその下面に配置された用紙とともに上方に押し上げられる。すなわち、剥離部材242は、転写工程において支点軸246を中心に回動する態様で上方に押し上げられるが、その転写処理が終了すると、板ばね253の付勢力によって下方に押し下げられて待機位置に戻る。その過程で糊シート212に貼り付いた用紙を確実かつ速やかに引き剥がす。
ニアエンド検知部材210は、フレーム200の下端角部近傍に設けられた回動軸260と、回動軸260を中心に回動する検知レバー262を有する。検知レバー262は、回動軸260から供給リール202側に延びるアーム部264と、回動軸260からアーム部264とは反対側に延びる検出部266とを有する。アーム部264の先端にはローラ268が設けられている。また、検知レバー262の下端部とフレーム200との間にはスプリング270が介装されており、検知レバー262を供給リール202側、つまり図の時計回りに付勢している。このため、ローラ268は、供給リール202に巻回された糊シート212の外周面に常に当接した状態を保持する。
供給リール202の糊シート212が消費されて少なくなるにつれて、アーム部264が図中矢印の方向へ回動する。その結果、糊シート212の糊未転写部分が残り少ないニアエンドに近づくと、検出部266が図示のようにフレーム200から突出し、フレーム200の外部に設置された光センサ272(図2参照)がこれを検出する。光センサ272は、光を照射する発光素子と、搬送される用紙によって反射される光を受光する受光素子とを有する透過型のセンサとして構成され、その発光素子および受光素子が、2つの糊シートユニット120の上流側端部近傍に対向配置されている。そして、いずれかの糊シートユニット120のニアエンド検知部材210がその光を遮断することにより、ニアエンドの発生が検出される。なお、変形例においては、光センサ272として反射型のセンサを採用し、いずれかの糊シートユニット120のニアエンド検知部材210がその光を反射することによりニアエンドの発生を検出するようにしてもよい。
このようにしてニアエンドが検出されると、糊シート212の巻き取り処理ひいては製本処理全体が一旦停止される。この光センサ272は、複数の糊シートユニット120(第1の実施形態では2つ)に共通のセンサとして設置されており、いずれかの糊シートユニット120がニアエンドとなった時点でそれが検出され、ディスプレイ102にその旨が表示される。作業者は、その表示をみてニアエンドとなった糊シートユニット120を目視により確認するなどしてその交換を行う。なお、変形例においては、個々の糊シートユニット120に対応させて光センサ等を設け、いずれの糊シートユニット120がニアエンドとなったのかを明示的に報知させるようにしてもよい。
ストッパ駆動機構126は、ストッパ290およびその駆動機構292を有する。ストッパ290は、サクション搬送機構40に並設されており、搬送された用紙Pの先端を係止してその用紙Pの糊転写時の位置決めを行うものである。駆動機構292は、ストッパ290を用紙搬送プレート34(搬送路)の上面に突出または退避させるストッパ駆動ソレノイドおよびスプリングと、ストッパ290を用紙搬送方向に移動させるストッパ移動モータを含んで構成されている。給紙装置12側から順次送り込まれる用紙Pは、その前端部がストッパ290に当接したところで用紙搬送方向の位置決めがされる。
転写作動機構124は、プッシャ280およびその駆動機構282を有する。プッシャ280は、その上端にガイド部材206の受圧面240に対向する押圧面284を有し、用紙幅方向に延びる長方形状をなしている。押圧面284は、用紙搬送方向には受圧面240よりも十分に大きくなっている。このため、押圧面284と受圧面240とによる押圧範囲は、受圧面240側の大きさに一致する。また、用紙幅方向には剥離部材242のスリット244の幅よりも大きく構成されている。このため、プッシャ280が上昇されると、剥離部材242を下方から押圧して上昇させるようになる。また、プッシャ280は、その押圧面284が用紙に密着できるよう、少なくとも押圧面284およびその近傍が弾性材料によって形成されている。
駆動機構282は、プッシャ280をガイド部材206に近接させる方向の力を付与するプッシャ駆動ソレノイドと、プッシャ280をガイド部材206から離間させる方向の付勢力を付与するスプリングを含んで構成されている。糊の転写工程においてはプッシャ駆動ソレノイドへの通電がなされ、その吸引力によってプッシャ280がガイド部材206側に駆動される。このとき、プッシャ280は、その押圧面284が用紙Pおよび剥離部材242を所定高さ押し上げた後、受圧面240に圧接される。このとき、受圧面240と押圧面284との間で糊シート212が用紙Pの糊付け位置に押し付けられて糊の転写が行われる。
糊の転写処理が終わると、プッシャ駆動ソレノイドへの通電がオフされるため、プッシャ280はスプリングの付勢力によって元の待機位置へ戻る。このとき、剥離部材242も板ばね253の付勢力によってその下死点である待機位置に戻り、その過程で用紙Pを糊シート212から引き剥がす。
次に、第1の実施形態の糊付け方法の詳細について説明する。
図6は、糊シート212の詳細を示す部分拡大図である。(A)はその一実施例を示し、(B)は他の実施例を示し、(C)は第1の実施形態では採用しない比較例を示している。同図における上下方向が糊シート212の長手方向(送り方向)となっている。
糊シート212は、剥離性を有する長尺状の基材シート300の片側面に、多数の円形ドット状の糊セグメント302を整列配置させて形成されている。糊セグメント302は、基材シート300においてその最も近接する糊セグメント同士を結ぶ配列方向(一点鎖線参照)がその長手方向に対して傾斜するように形成されている。なお、ここでいう「傾斜」は、平行でもなく直角でもない状態を意味する。同図(A)には、最も近接する糊セグメント同士が三角形の格子を形成する例が示されている。同図(B)には、最も近接する糊セグメント同士が四角形の格子を形成する例が示されている。
同図(A)および(B)のいずれの実施例においても、最も近接する糊セグメント同士の配列方向が傾斜しているため、同じ配列方向に並ぶ糊セグメント302であっても、転写範囲内(二点鎖線参照)に実質的に存在するか否かにより転写されるか否かが分かれる。仮に転写範囲内の面積が転写範囲外の面積よりも大きい場合に転写されるとすると、連続する転写範囲aおよびbのいずれも同等の糊セグメント302が転写されるようになる。なお、同図においては説明の便宜上、1つの糊セグメント302を大きく誇張表示しているが、その大きさを適度に設定すれば、その均一性も高められる。第1の実施形態では、ガイド部材206の受圧面240よりもプッシャ280の押圧面284のほうが十分に大きく形成されているため、各転写範囲の用紙搬送方向上流側の端部境界線eは、受圧面240の上流側の端部稜線(図7の端部稜線241を参照)に一致している。つまり、最も近接する糊セグメント同士の配列方向は、その端部境界線e、つまり受圧面240の上流側の端部稜線に対しても傾斜している。
一方、同図(C)の比較例においては、最も近接する糊セグメント同士の配列方向が傾斜していないため、図示のように転写範囲aの糊セグメント302の数が、転写範囲bの糊セグメント302の数よりも多くなるといったケースが増える。このため、転写ごとの糊の転写長さが不均一になる可能性がある。言い換えれば、第1の実施形態のように、糊セグメント同士の配列方向を傾斜させることで、糊の切れを良好にすることができ、その結果、糊シートの送り量に対してほぼ均等な量の糊を転写でき、用紙における糊付け部分の品質を良好に保つことができるようになる。
図7は、糊転写工程を模式的に表す図である。
第1の実施形態では、糊シート212を無駄なく効率的に消費できるよう、転写方法を工夫している。すなわち、転写工程へ移行する際に、糊シート212の糊転写済み部分310と糊未転写部分312との境界(「転写境界」という)314が、押圧面284と受圧面240との押圧範囲Aに含まれるように停止され、その状態で次の転写処理が行われる。第1の実施形態では、押圧面284よりも受圧面240を小さく構成しているため、押圧範囲Aは、実質的に受圧面240の幅と等しくなっている。つまり、押圧範囲Aは、受圧面240の上流側の端部稜線241と下流側の端部稜線243とを挟む領域ということになる。ただし、糊の転写長さlを確保するため、転写境界314を受圧面240の下流側端部の近傍(端部稜線243の近傍)に設定している。このように、転写境界314を押圧範囲A内に設定することで、糊シート212が無駄なく使用されるようになる。
糊の転写長さlは、送り量調整カム230による糊の送り量の調整により変更することができる。このとき、押圧範囲Aにおける転写境界314が移動することになる。第1の実施形態では、用紙Pに対する糊付け位置の精度を確保するために、糊の転写部分の中心位置(一点鎖線参照)が用紙Pの用紙搬送方向の中心に位置するよう、ストッパ290の位置調整がなされる。第1の実施形態では、送り量調整カム230(図2参照)の回転位相を検出する図示しない位置センサ(位置検出手段)が設けられ、その位置センサによって送り量調整カム230の回転位置(位置調整情報)が検出される。管理PC100は、その回転位置からレバー228の回動角度、ひいては糊シート212の送り量を算出し、その送り量から転写長さlを算出する。管理PC100は、ガイド部材206の上流側端部位置(上流側エッジの位置)を予め保持しており、その上流側端部位置から転写長さlの1/2の距離離れた位置を糊の転写部分の中心位置として算出することができる。算出された糊の転写部分の中心位置と、用紙Pのサイズ情報から、その糊の転写部分の中心位置が用紙Pの用紙搬送方向の中心に位置するよう、ストッパ290の停止位置を決定することができる。
図8は、製本システム10の機能ブロック図である。なお、図8は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
管理PC100は、サイズ情報取得部150および折りライン設定部152を有する。サイズ情報取得部150は、用紙の搬送方向長さを示す情報と用紙幅方向の幅方向長さを示す情報を含むサイズ情報を取得する。サイズ情報取得部150は、ユーザによって入力または選択された用紙サイズを示す情報をサイズ情報として取得してもよい。また、例えばトレイ22に用紙サイズセンサが設けられている場合、検出された用紙サイズをサイズ情報として取得してもよい。
折りライン設定部152は、取得されたサイズ情報を利用して用紙に折りラインを設定する。具体的には、折りライン設定部152は、取得したサイズ情報に含まれる用紙の搬送方向長さを示す情報を利用して、搬送する用紙の先端部から搬送方向長さの半分の距離にある直線を折りラインとして設定する。なお、ユーザは、設定画面において、折りラインの位置として搬送する用紙の先端部からの距離を入力することが可能となっている。折りライン設定部152は、このようにユーザに入力された用紙先端部からの距離にある直線を折りラインとして設定してもよい。
給紙制御部110は、分離給送機構24における、エアの吸引および吸引停止を切り換えるソレノイドや、搬送ベルトに噛合するローラを駆動するモータに接続されている。給紙制御部110は、搬送ベルトを駆動させた状態でエアの吸引および吸引停止を切り換えることで、給紙装置12からの用紙の送り出しを制御する。
糊付け制御部112は、プッシャ駆動ソレノイド154、ストッパ駆動ソレノイド156、ストッパ移動モータ158、送り駆動モータ160、転写間隔調整モータ162に接続されている。糊付け制御部112は、用紙のサイズ情報および折りラインの位置情報に基づき、用紙の糊付け位置を折りライン上に位置させるように用紙の搬送位置を演算する。また、調整された送り量の情報に基づいて算出された糊の転写部分の中心位置と、用紙のサイズ情報から、その糊の転写部分の中心位置が用紙の用紙搬送方向の中心に位置するよう、ストッパ290の停止位置を決定する。そして、ストッパ駆動ソレノイド156への通電を行ってストッパ290を用紙搬送プレート34上に突出させるとともに、ストッパ移動モータ158を駆動してストッパ290を用紙の搬送先端位置へ移動させる。また、糊の転写処理が終了するごとに送り駆動モータ160を駆動して偏心カム132を回転させ、糊シート212を所定量送る。すなわち、上述のように転写境界314が押圧範囲内の設定位置に停止するように糊シート212を送る。
糊付け制御部112は、用紙の搬送を停止したときにプッシャ駆動ソレノイド154を作動させてプッシャ280を上昇させることにより、用紙の上面に糊を転写する。糊付け制御部112は、また、転写間隔調整モータ162に駆動パルスを出力して複数の糊シートユニット120の間隔、すなわち糊シートユニット120による用紙への糊転写箇所の間隔を調整する。糊付け制御部112は、また、糊転写機構30にて糊付け処理が終了した用紙を折り機構70側へ搬送するために、サクション搬送機構40の駆動を制御する。
折り制御部116は、折りストッパ74を搬送方向に移動させるストッパ移動モータ164、折りナイフ76を昇降させる折りナイフ駆動モータ166、および折りローラ78を駆動する折りローラ駆動モータ168に接続されている。折り制御部116は、糊転写機構30側から折り機構70に用紙が送り込まれる前に、折りストッパ74を所定位置に移動させておく。その結果、用紙が折りストッパ74に当接して係止されつつ、順次積み重ねられて用紙束を形成する。折り制御部116は、その後、折りナイフ駆動モータ166および折りローラ駆動モータ168を作動させ、折りナイフ76を上昇させて重ねられた用紙を綴じつつ用紙束を折りローラ78に挟持させて折りたたんで冊子を作成する。
管理PC100は、ユーザによって入力された仕上がりサイズを仕上がりサイズ情報として取得する。なお、管理PC100は、サイズ情報取得部150によって取得された用紙サイズ情報が示すサイズの用紙を半分に折りたたんだサイズから、さらに断裁マージンを差し引いたサイズを、冊子の仕上がりサイズとして取得してもよい。管理PC100は、取得した仕上がりサイズ情報を断裁制御部118に送信する。
断裁制御部118は、ストッパ移動モータ170および天地断裁刃移動モータ172に接続されている。断裁制御部118は、受信した仕上がりサイズ情報に基づいて、小口の断裁位置、および天地の断裁位置を特定する。断裁制御部118は、特定した位置で小口を断裁するよう、ストッパ移動モータ170を作動させてストッパ94を移動させる。また、断裁制御部118は、特定した位置で天地を断裁するよう、天地断裁刃移動モータ172を作動させて天地断裁刃を移動させる。
図9は、製本システム10の製本手順を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、ユーザによってスタートボタンが押された後、ユーザによって入力された冊子数と、一つの冊子を構成する用紙枚数を掛け合わせた総用紙枚数の搬送が完了するまで、給紙装置12における給紙タイミング毎に繰り返し実施される。
管理PC100は、中綴じ折り装置14および断裁装置16にて円滑に製本処理が進行するよう、給紙タイミングを示す信号を給紙制御部110に送信する。給紙制御部110は、給紙タイミングを示す信号を受信すると、トレイ22から用紙を1枚送り出す給紙処理を実施する(S14)。
管理PC100は、糊転写機構30に用紙が送り込まれるタイミングで、その用紙が冊子の最後の用紙か否かを示す情報を糊付け制御部112に送信する。糊付け制御部112は、その情報に基づいて、送り込まれる用紙が冊子の最後の用紙か否かを判定する(S16)。
冊子の最終用紙でないと判定された場合(S16のN)、糊付け制御部112は、サクション搬送機構40を停止させ、ストッパ290を駆動して設定位置に調整する(S30)。これにより、ガイド部材206の受圧面240が押し当てられる用紙搬送方向における位置を糊付け位置として、この糊付け位置に折りラインが位置するように用紙が停止されるようになる。用紙が停止すると、糊付け制御部112は、プッシャ280を上昇させて用紙の上面に糊を転写する(S32)。このように糊付け位置に折りラインが位置している状態で糊を転写させることにより、折りライン周辺に糊付けすることができる。
このとき、折り制御部116は、その後に搬送されてくる用紙の糊付け位置が折りラインの位置にくるよう折りストッパ74の位置を調整しておく(S34)。転写処理が終了すると、糊付け制御部112は、ストッパ290を待機位置に退避させてからサクション搬送機構40を駆動し、糊が転写された用紙を折り機構70へ搬送させる(S36)。このようにして、折り機構70の用紙搬送プレート72上に用紙が順次積み重ねられる。
冊子の最終用紙と判定された場合(S16のY)、糊付け制御部112は、糊転写を回避し(S18)、その最終用紙を折り機構70へ搬送させる(S20)。このように冊子の最終用紙には用紙に糊付けしないことで、折り処理前の用紙束の上面に糊付けされることが回避される。
折り制御部116は、最終用紙が搬送されて用紙束が形成されたタイミングで、折りナイフ76を上昇させてその用紙束を折りローラ78に挟持させて折りたたむ。このとき、糊が転写された折ラインに折りナイフ76が当接し、さらにこの部分が折りローラ78に挟まれることにより、用紙の糊が転写された部分が互いに圧接され、接着することになる(S22)。折りたたまれて作成された中綴じ折り冊子は、断裁装置16に送り込まれる。断裁制御部118は、送り込まれた冊子の三方を断裁する断裁処理を実施する(S24)。こうして作成された中綴じ折り冊子は、スタッカ18に積載される。
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る製本システム400の一つの構成例を示す図である。以下、第1の実施形態に係る製本システム10と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
製本システム400は、丁合装置410、中綴じ折り装置414、断裁装置16、および管理装置20を有する。丁合装置410は、用紙収容部から用紙を送り出して搬出する給紙装置として機能する。具体的には、丁合装置410は、本体部430および搬送部432を有する。本体部430は、用紙収容部である複数の給紙トレイ434(第2の実施形態では10個)と、給紙トレイ434の各々に対応して設けられた給紙機構436と、共通搬送路438とを有する。
複数の給紙トレイ434は、鉛直方向に並ぶよう配置される。各々の給紙トレイ434は平板状に形成され、水平となるよう配置される。給紙トレイ434の各々に対応して、給紙トレイ434を昇降させる昇降機構(図示せず)と、給紙トレイ434に積載された用紙のうち最上位の用紙の高さを検知する用紙高さセンサ(図示せず)とが設けられている。この用紙高さセンサによって検知された最上位の用紙の高さを維持するよう、昇降機構によって給紙トレイ434の高さが調整される。
給紙機構436は、給紙トレイ434に積載された用紙のうち最上位の用紙を分離して送り出す。給紙機構436はエア吸引式のものが採用されている。エア吸引式の給紙装置は公知であるため、その詳細な説明は省略する。なおエア吸引式の給紙装置に代えて、いわゆるフリクション式の給紙装置が設けられてもよいことは勿論である。共通搬送路438は、鉛直方向に延びるよう設けられ、給紙機構436の各々によって給紙トレイ434から送り出された用紙は、この共通搬送路438を通って下方に搬送される。
丁合装置410には、給紙機構436による給紙動作を制御する給紙制御部422が設けられている。給紙制御部422は、給紙機構436の給紙タイミングを調整することにより、複数の給紙トレイ434から送り出された用紙を重ね合わせて搬送し、または他の用紙と重ならないよう単独で用紙を搬送するなど、用紙搬送を制御する。搬送部432は、本体部430から搬送された用紙を上方に搬送する。
中綴じ折り装置414は、綴じ装置450、折り装置480、および折り強化装置482を有する。綴じ装置450は、重ね合わされた状態で所定個所に配置された複数の用紙に対し、隣接する用紙同士の少なくとも一方が糊付けされているときにそれらを圧着して綴じる圧着処理と、綴じ針を打ち込んで綴じる針綴じ処理とを、択一的に実行可能に設けられている。
具体的には、綴じ装置450は、装置装着部452、機構収容部454、ベルト搬送機構456、ストッパ458、およびバッグジョガー460を有する。ベルト搬送機構456は、搬送ベルトの上面に用紙を載置して搬送する。ストッパ458は、ベルト搬送機構456における搬送ベルト上面より上方に進出可能に設けられている。バッグジョガー460は、ベルト搬送機構456の搬送ベルト上面に積載された用紙の後端を下流側に向かって押し付けることにより、用紙の先端をストッパ458に押し付けて用紙の端部を揃える。これらベルト搬送機構456、ストッパ458、およびバッグジョガー460の構成は公知であるため詳細な説明は省略する。
装置装着部452は、後述する糊付け装置と、用紙収容部から用紙を送り出し複数の用紙を重ね合わせて綴じ装置450に搬出する丁合装置410とが、択一的に装着可能に設けられている。具体的には、装置装着部452は、糊付け装置および丁合装置410のどちらも装着可能な共通装着機構を有する。なお、糊付け装置を装着する装着機構と丁合装置410を装着する装着機構とが別々に設けられてもよい。
また、綴じ機構収容部454は、後述する圧着機構と、針綴じ処理を実行する針綴じ機構470と、を択一的に装着可能に設けられている。糊付け装置は、用紙に糊付け可能に設けられる。圧着機構は、圧着処理を実行可能に設けられている。このように装置装着部452および機構収容部454を設けることにより、用紙に糊付けして圧着する糊綴じ処理と、針綴じ処理とを択一的に実行可能な製本システム400を実現することができる。図10は、装置装着部452に丁合装置410が装着され、機構収容部454に針綴じ機構470が装着されたときの製本システム400を例示している。
中綴じ折り装置414には、綴じ装置450の作動を制御する綴じ制御部424が設けられている。綴じ制御部424は、機構収容部454に圧着機構が装着されているときはその圧着機構の作動を制御し、針綴じ機構470が装着されているときには針綴じ機構470の作動を制御する。
折り装置480は、綴じ装置450から搬入された用紙を中央で折りたたみ、中折り冊子として搬送する。折り装置480は、用紙搬送プレート72に代えて一対のベルト搬送機構484が設けられ、全体的に下流側に進むほど下がるよう傾斜して配置されている以外は、第1の実施形態に係る折り機構70と同様に構成される。折り装置480によって折りたたまれ作成された冊子は、ベルト搬送機構80によって折り強化装置482へ搬送される。
折り強化装置482は、折り装置480によって折りたたまれた中折り冊子の膨らみを抑制すべく、冊子の背の部分を再度挟持するよう設けられる。折り強化装置482の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。折り強化装置482の上流側には用紙センサ490が設けられている。ベルト搬送機構80は、送り出した冊子の背が用紙センサ490によって検知された後、背が折り強化装置482によって挟持可能となる所定時間が経過したタイミングで冊子の搬送を一時停止させる。折り強化装置482は、こうして一時停止した冊子の背を押圧する。
中綴じ折り装置414には、折り制御部426が設けられている。折り制御部426は、折り装置480および折り強化装置482の作動を制御することにより、用紙を折りたたんで中折り冊子を作成する折り処理を実行する。作成された冊子は断裁装置16へ搬出され、その後断裁処理が施される。
給紙制御部422、綴じ制御部424、折り制御部426、および断裁制御部118の各々は、管理PC100に接続されている。管理PC100は、各装置を適切に制御するようこれら制御部に指令を与えるシステム制御部420として機能する。
図10のように、装置装着部452に丁合装置410が装着され、機構収容部454に針綴じ機構470が装着されている場合、管理装置20における製本処理のスタートボタンがユーザによってクリックされると、丁合装置410は、まず複数の用紙を重ね合わせて綴じ装置450に搬出する。綴じ装置450は、用紙搬入前に、ストッパ458の位置を用紙搬送方向に移動させることによって、重ね合わされた状態で搬入された複数の用紙を、搬送方向中央に綴じ針が打ち込まれるようベルト搬送機構456の搬送ベルト上に配置する。次に針綴じ機構470は、その複数の用紙に対し針綴じ処理を実行する。
こうして針綴じ処理が施された複数の用紙は、折り装置480および折り強化装置482によって折りたたまれ、断裁装置16において三方が断裁されて中綴じ折り冊子としてスタッカ18に集積される。なお、断裁装置16において小口のみ、または天地のみが断裁されてもよい。
図11は、第2の実施形態に係る製本システム400の別の構成例を示す図である。図11は、装置装着部452に糊付け装置500が装着され、機構収容部454に圧着機構510が装着された製本システム400を例示している。糊付け装置500の動作は、糊付け制御部504によって制御される。
糊付け装置500は、糊転写機構30および用紙反転機構502を有し、丁合装置410から搬入された用紙に糊付けして綴じ装置450に搬出する。用紙反転機構502は、用紙の反転要求があった場合に、サクション搬送機構40によって搬送された用紙を反転して中綴じ折り装置414に搬出する。なお、用紙反転機構502の構成は公知であるため説明を省略する。
圧着機構510は、プッシャ512および受け台514を有する。圧着機構510は、カム機構およびモータが設けられた昇降機構(図示せず)を有している。このモータが作動することによりカム機構を介してプッシャ512が上下に移動する。
圧着機構510は、一冊分の冊子に含まれる用紙のうち最後の用紙が積載されたときに昇降機構を作動させてプッシャ512で最上位の用紙を下方に押圧する。これにより、搬送ベルト上に積載された用紙は、プッシャ512と受け台514とによって挟持され圧着される。
図12は、プッシャ512の形状を示す斜視図である。プッシャ512は、四角い板状に形成される。プッシャ512は、ベルト搬送機構456の上方において上下方向に延在するように配置される。プッシャ512の下面には、用紙を押し付けるための押し付け面512aが形成されている。
なお、押し付け面512aの中央に用紙幅方向に延在する凹部が形成されてもよい。このような凹部を形成することによって、用紙の上面の糊転写箇所にプッシャ512を押し付けることを回避しつつ、その周辺を押し付けることができる。なお、プッシャ512の押し付け面512aにフッ素樹脂コーティング加工、またはフッ素樹脂含有ニッケルめっき加工など糊が転写しにくい加工が施されていてもよい。これによって、用紙の糊転写箇所にプッシャ512を直接押し付けることが可能となる。
図11に戻る。装置装着部452に糊付け装置500が装着され、機構収容部454に圧着機構510が装着されている場合、管理装置20における製本処理のスタートボタンがユーザによってクリックされると、丁合装置410は、まず作成する冊子に含ませる複数の用紙の各々を重ね合わさず一枚ずつ糊付け装置500に搬出する。次に糊付け装置500は、作成する冊子に含まれる複数の用紙を重ね合わせたときに隣接する用紙同士の少なくとも一方を糊付けられるよう、各用紙に糊付け処理を施す。具体的には、糊付け装置500は、冊子に含ませる複数の用紙のうち、最後に綴じ装置450に搬出する用紙のみ糊の転写を回避し、その他の用紙には、プッシャ280を上昇させて糊シートユニット120の糊シート212に用紙を押し付け、その上面に糊を転写する。このとき糊付け装置500は、用紙の停止位置を制御することにより、用紙の搬送方向中央に糊を転写するよう用紙への糊付け位置を調整する。
綴じ装置450は、用紙搬入前に、ストッパ458の位置を用紙搬送方向に移動させることによって、搬送方向中央をプッシャ512で押圧することができるよう搬入された各々の用紙をベルト搬送機構456の搬送ベルト上に積載する。圧着機構510は、こうして積載された複数の用紙に対し圧着処理を実行する。糊綴じ処理が施された複数の用紙は、折り装置480および折り強化装置482によって折りたたまれ、断裁装置16において三方が断裁されて中綴じ折り冊子としてスタッカ18に集積される。
綴じ装置450は、圧着機構510および針綴じ機構470のどちらが綴じ機構収容部454に装着されているかを検知する機構検知センサ462を有する。機構検知センサ462は、圧着機構510が装着されたときにのみ圧着機構510に設けられた突起によってオンにされるスイッチによって構成されている。なお、機構検知センサ462に他の方式のスイッチが採用されてもよい。綴じ制御部424は、機構検知手段の検知結果に基づいて、綴じ機構収容部454に装着された圧着機構510または針綴じ機構470を制御する。具体的には、第2の実施形態では、針綴じ機構470および圧着機構510は、共通のモータ(図示せず)によって、それぞれ綴じ針を打ち込むドライバ、およびプッシャ512が駆動される。
例えば機構収容部454への針綴じ機構470の装着が検知されている場合、綴じ制御部424は、複数の用紙がベルト搬送機構456の搬送ベルト上に搬送され、バッグジョガー460によって端部が揃えられた直後に綴じ針を打ち込むよう、モータを作動させてドライバを駆動する。また、例えば機構収容部454への圧着機構510の装着が検知されている場合、綴じ制御部424は、ベルト搬送機構456の搬送ベルト上に用紙が一枚ずつ送り込まれるタイミングで、モータを作動させてプッシャ512を駆動する。このように機構検知センサ462を設けることで、機構収容部454にいずれの機構が装着された場合においても、圧着処理または針綴じ処理を適切に実行することができる。
なお、管理装置20は、針綴じモードと糊綴じモードをユーザが選択できるよう設けられている。システム制御部420は、こうしてユーザに入力されたモード選択要求を取得する。例えば機構収容部454への針綴じ機構470の装着が検知されているにもかかわらず、糊綴じモードの選択要求を取得した場合、システム制御部420は、ディスプレイ102に警告を表示してユーザにその旨を報知し、糊綴じモードへの移行を回避する。このときシステム制御部420は、糊綴じ処理を実行するためのユーザによる管理装置20への各種の設定入力を不能とする。
また、例えば機構収容部454への圧着機構510の装着が検知されているにもかかわらず、針綴じモードの選択要求を取得した場合、システム制御部420は、ディスプレイ102に警告を表示してユーザにその旨を報知し、針綴じモードへの移行を回避する。このときシステム制御部420は、針綴じ処理を実行するためのユーザによる管理装置20への各種の設定入力を不能とする。これにより、ユーザに正しいモードの選択を促すことができ、ユーザの設定工数を削減することができる。
なお、装置装着部452には、丁合装置410および糊付け装置500のどちらが装着されているか、またはどちらも装着されていないかを検知する装置検知センサ464が設けられている。装置検知センサ464は、糊付け装置500が装着されたときにのみ糊付け装置500に設けられた突起によってオンにされるスイッチによって構成されている。なお、装置検知センサ464に他の方式のスイッチが採用されてもよい。
例えば機構収容部454への針綴じ機構470の装着が検知されているにもかかわらず、装置装着部452へのいずれの装置の装着も検知されない場合、システム制御部420は、ディスプレイ102に警告を表示してユーザにその旨を報知する。また、例えば機構収容部454への圧着機構510の装着が検知されているにもかかわらず、装置装着部452への丁合装置410の装着が検知された場合または装置装着部452へのいずれの装置の装着も検知されない場合、システム制御部420は、ディスプレイ102に警告を表示してユーザにその旨を報知する。
これらの場合、システム制御部420は、糊綴じモードおよび針綴じモードのいずれの選択要求を取得した場合においても、糊綴じモードおよび針綴じモードの双方への移行を回避する。また、ユーザによりスタートボタンがクリックされた製本処理の開始要求を取得した場合、システム制御部420は、製本処理の実行を回避する。これにより、製本システム400の誤動作を回避することができる。
(第3の実施形態)
図13は、第3の実施形態に係る製本システム600の全体構成図である。以下、上述の実施形態に係る製本システムと同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
製本システム600は、丁合装置410、糊付け装置500、中綴じ折り装置602、断裁装置16、および管理装置20を有する。中綴じ折り装置602は、綴じ装置604、折り装置480、および折り強化装置482を有する。第3の実施形態では、綴じ装置604は、圧着処理を実行する圧着機構510および針綴じ処理を実行する針綴じ機構470の双方を有する。圧着機構610は、プッシャ612および受け台614を有する。綴じ制御部620は、綴じ装置604の作動を制御するよう設けられる。
圧着機構610は、カム機構およびモータが設けられた昇降機構(図示せず)を有している。このモータが作動することによりカム機構を介してプッシャ612が上下に移動する。
圧着機構610は、一冊分の冊子に含まれる用紙のうち最後の用紙が積載されたときに昇降機構を作動させてプッシャ612で最上位の用紙を下方に押圧する。これにより、搬送ベルト上に積載された用紙は、プッシャ612と受け台614とによって挟持され圧着される。
図14は、針綴じ機構470および圧着機構610の斜視図である。針綴じ機構470は、綴じ針を用紙に打ち込むドライバ472が、用紙幅方向に2つ設けられている。プッシャ612は3本設けられ、2本は2つのドライバ472の両側に配置され、1つはドライバ472の間に配置される。
プッシャ612は、細長い矩形の板状に形成される。プッシャ612は、ベルト搬送機構456の上方において上下方向に延在するように配置される。プッシャ612の下面には、用紙を押し付けるための押し付け面612aが形成されている。なお、糊が転写された用紙を押し付けるために、押し付け面612aの中央に用紙幅方向に延在する凹部が形成されてもよく、また、プッシャ612の押し付け面612aにフッ素樹脂コーティング加工、またはフッ素樹脂含有ニッケルめっき加工など糊が転写しにくい加工が施されていてもよい点は上述と同様である。
図15は、糊転写機構30、針綴じ機構470、および圧着機構610の相対的な位置関係を示す図である。3つのプッシャ612は、用紙2の幅方向に収まるようそれぞれが配置される。受け台614は、このプッシャ612の下方に配置される。ベルト搬送機構456の搬送ベルトは2本設けられ、それぞれがプッシャ612とドライバ472の間において用紙搬送方向に延在するよう配置される。
第3の実施形態では、糊転写機構30には3つの糊シートユニット120が設けられる。糊シートユニット120の各々は、3つのプッシャ612の各々の上流側に配置される。これにより、糊シートユニット120による糊付け箇所をプッシャ612にて適切に圧着させることができる。
図13に戻る。管理装置20は、針綴じモードと糊綴じモードをユーザが選択できるよう設けられている。システム制御部420は、こうしてユーザに入力されたモード選択要求を取得する。糊綴じモードが選択された状態でスタートボタンがユーザによってクリックされると、システム制御部420は、その入力を糊綴じ製本要求として取得する。糊綴じ製本要求は、綴じ制御部620では圧着処理の実行要求として利用される。また、針綴じモードが選択された状態でスタートボタンがユーザによってクリックされると、システム制御部420は、その入力を針綴じ製本要求として取得する。針綴じ製本要求は、綴じ制御部620では針綴じ処理の実行要求として利用される。したがってシステム制御部420は、これらの実行要求を取得する実行要求取得部として機能する。
また、第3の実施形態では、折り装置480は、一対の折りローラ78で挟持することにより、隣接する用紙同士の少なくとも一方が糊付けされている複数の用紙を折りたたみながら圧着する圧着折り処理を実行可能に設けられる。システム制御部420は、この圧着折り処理による糊綴じ製本要求を取得可能に設けられる。
具体的には、管理装置20は、綴じ装置604にて圧着処理を実行して製本するための「第1糊綴じモード」とは別に、折り装置480にて圧着折り処理を実行して製本するための「第2糊綴じモード」をユーザが選択可能に設けられている。第2糊綴じモードが選択された状態でスタートボタンがユーザによってクリックされると、システム制御部420は、その入力を圧着折り処理を実行する糊綴じ製本要求として取得する。糊綴じ製本要求は、折り装置480では圧着折り処理の実行要求として利用される。以下、綴じ装置604にて圧着処理を実行する製本要求を「第1糊綴じ製本要求」といい、折り装置480にて圧着折り処理を実行する製本要求を「第2糊綴じ製本要求」という。
なお、管理装置20において、表紙のみ糊付けし、残る本身を針綴じする特別モードがユーザに選択可能に設けられていてもよい。特別モードが選択された状態で管理装置20のスタートボタンがユーザにクリックされた場合、システム制御部420は、その入力を特別製本処理の実行要求として取得する。
特別製本処理の実行要求を取得すると、丁合装置410は、本身に含ませる用紙のみ重ね合わせて糊付け装置500に搬出し、その後に表紙を単独で糊付け装置500に搬出する。糊付け装置500は、本身の用紙には糊付けを回避して綴じ装置604に搬出し、表紙には糊付け処理を実行して用紙反転機構502で反転した後、綴じ装置604に搬出する。
針綴じ機構470は、まず本身の用紙に針綴じ処理を実行する。圧着機構610は、針綴じされた用紙の上に糊付けされた表紙が積載されたときに圧着処理を実行する。その後、折り処理および断裁処理を実行する点は他の製本処理と同様である。このように表紙にのみ糊付け処理を施して本身に圧着させることにより、外部から綴じ針が視認されない美観のよい冊子を作成することができる。
図16は、第3の実施形態に係る製本システム600の動作を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、製本システム600の電源がオンにされたときに開始し、その後所定時間毎に繰り返し実行される。
システム制御部420は、針綴じ製本要求を取得したか否かを判定する(S10)。針綴じ製本要求を取得した場合(S10のY)、システム制御部420は、針綴じ製本処理を実行する(S12)。
針綴じ製本要求を取得していない場合(S10のN)、システム制御部420は、第1糊綴じ製本要求を取得したか否かを判定する(S14)。第1糊綴じ製本要求を取得した場合(S14のY)、システム制御部420は、第1糊綴じ製本処理を実行する(S16)。
第1糊綴じ製本要求を取得していない場合(S14のN)、システム制御部420は、第2糊綴じ製本要求を取得したか否かを判定する(S18)。第2糊綴じ製本要求を取得した場合(S18のY)、システム制御部420は、第2糊綴じ製本処理を実行する(S20)。第2糊綴じ製本要求を取得していない場合(S18のN)、本フローチャートにおける処理を一旦終了する。
図17は、図16におけるS12の針綴じ製本処理の手順を示すフローチャートである。針綴じ製本要求が取得された場合、まず丁合装置410は、一冊分の用紙を重ね合わせて糊付け装置500に搬出する(S40)。糊付け装置500は、搬入された複数の用紙を糊付けすることなく綴じ装置604に搬出する(S42)。綴じ装置604は、搬入された複数の用紙を、用紙の搬送方向中央に綴じ針が打ち込まれるよう端部を揃えてベルト搬送機構456の搬送ベルト上に配置する。圧着機構610は、この複数の用紙に針綴じ処理を実行する(S44)。
折り装置480は、搬入された複数の用紙に、綴じ針で綴じられた個所にて折りたたむ折り処理を実行する(S46)。断裁装置16は、中綴じ折り装置414から搬入された冊子に対し、三方を断裁する断裁処理を実行する(S48)。
図18は、図16におけるS16の第1糊綴じ製本処理の手順を示すフローチャートである。第1糊綴じ製本要求が取得された場合、まず丁合装置410は、作成する冊子に含ませる用紙を一枚ずつ糊付け装置500に搬出する(S60)。糊付け装置500は、作成する冊子に含ませる複数の用紙を重ね合わせたときに、隣接する用紙同士の少なくとも一方が糊付けされるよう、搬入された用紙に糊付け処理を実行する(S62)。
具体的には、糊付け装置500は、作成する冊子に含ませる複数の用紙のうち、最後に綴じ装置604に搬出する用紙のみ糊の転写を回避し、その他の用紙には、プッシャ280を上昇させて糊シートユニット120の糊シート212に用紙を押し付け、その上面に糊を転写する。このとき糊付け装置500は、用紙の停止位置を制御することにより、用紙の搬送方向中央に糊を転写するよう用紙への糊付け位置を調整する。
綴じ装置604は、糊付け装置500から搬入された用紙を、用紙の搬送方向中央を圧着できるよう端部を揃えながら積載する。このとき圧着機構610は、用紙が搬入されるたびにベルト搬送機構456の搬送ベルト上面に積載された用紙の後端を下流側に向かって押し付けるようバッグジョガー460を作動させる。これにより、用紙の先端をストッパ458に押し付けて用紙の端部を揃える。圧着機構610は、こうして積載された用紙に圧着処理を実行する(S64)。
折り装置480は、搬入された複数の用紙に、搬送方向中央で折りたたむ折り処理を実行する(S66)。断裁装置16は、中綴じ折り装置414から搬入された冊子に対し、三方を断裁する断裁処理を実行する(S68)。
図19は、図16におけるS20の第2糊綴じ製本処理の手順を示すフローチャートである。第2糊綴じ製本要求が取得された場合、まず丁合装置410は、作成する冊子に含ませる用紙を重ね合わせることなく一枚ずつ糊付け装置500に搬出する(S80)。糊付け装置500は、作成する冊子に含ませる複数の用紙を重ね合わせたときに、隣接する用紙同士の少なくとも一方が糊付けされるよう、搬入された用紙に糊付け処理を実行する(S82)。このときの糊付け方法は、図18におけるS62と同様である。
綴じ装置604は、糊付け装置500から搬入された用紙を、積載も圧着もすることなく、そのまま一枚ずつ折り装置480に搬出する(S84)。折り装置480は、折りストッパ74の搬送方向位置を調整することにより、綴じ装置604から搬入された用紙を、搬送方向中央を折りたたむことができるよう端部を揃えながら積載する。折り装置480は、こうして積載された複数の用紙を折りたたみながら圧着する圧着折り処理を実行する(S86)。断裁装置16は、中綴じ折り装置414から搬入された冊子に対し、三方を断裁する断裁処理を実行する(S88)。
なお、管理装置20は、作成する冊子を構成する複数の用紙の枚数をユーザが入力できるよう設けられている。システム制御部420は、こうしてユーザに入力された用紙の枚数を取得する。したがってシステム制御部420は、作成する冊子を構成する複数の用紙の枚数を取得する枚数取得部としても機能する。
システム制御部420は、取得された複数の用紙の枚数が所定枚数以上の場合、折り装置480による圧着折り処理の実行を回避する。具体的には、取得された複数の用紙の枚数が所定枚数以上の場合、第2糊綴じモードを選択不能とするよう管理装置20における設定入力画面が設けられている。また、第2糊綴じモードが選択されている場合、作成する冊子を構成する複数の用紙の枚数として所定枚数以上の用紙の枚数がユーザによって入力されると、システム制御部420は、ディスプレイ102に警告を表示し、さらに入力された用紙の枚数の取得を回避する。用紙の枚数が多くなるほど圧着折り処理における用紙同士の圧着が困難となる場合がある。このように用紙の枚数が所定枚数以上のときの圧着折り処理を回避することによって、用紙同士が適切に圧着されない事態を回避することができる。
(第4の実施形態)
図20は、第4の実施形態に係る製本システム700の全体構成図である。以下、上述の実施形態に係る製本システムと同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
製本システム700は、丁合装置410、糊付け装置500、中綴じ折り装置702、断裁装置16、および管理装置20を有する。中綴じ折り装置702は、綴じ装置704、折り装置480、および折り強化装置482を有する。第4の実施形態では、綴じ装置704には、多機能綴じ機構710が設けられている。多機能綴じ機構710は、圧着処理および針綴じ処理の双方を実行可能に設けられている。綴じ制御部720は、綴じ装置704の作動を制御するよう設けられる。
図21は、多機能綴じ機構710の構成を示す図である。多機能綴じ機構710は、ドライバ712、クリンチャ714、および受け部材716を有する。ドライバ712は、用紙に向かって移動しながら綴じ針を用紙に打ち込む。クリンチャ714は、綴じ針が用紙を貫通した先で綴じ針を折り曲げる。
ドライバ712の下面には、用紙を押圧するための押し付け面712aが設けられている。受け部材716は、ドライバ712と用紙を把持するための受け面716aを有する。受け部材716は、ベルト搬送機構456の搬送ベルト上面に受け面716aが位置するよう固定される。
針綴じ製本要求が取得された場合、多機能綴じ機構710は、ドライバ712とクリンチャ714により複数の用紙に綴じ針を打ち込んで綴じる。第1糊綴じ製本要求が取得された場合、多機能綴じ機構710は、ドライバ712の押し付け面712aと受け部材716の受け面716aとで挟持することにより複数の用紙を圧着して綴じる。針綴じ製本要求を取得した場合、第1糊綴じ製本要求を取得した場合、および第2糊綴じ製本要求を取得した場合の製本システム700の動作は、図16〜図19のフローチャートと同様である。
また、ドライバ712の押し付け面712aと用紙との間に進出可能な緩衝部材が設けられてもよい。この場合、緩衝部材はゴムなどの弾性部材によって成形される。緩衝部材は、ソレノイドなどのアクチュエータによって駆動される。第1糊綴じ製本要求が取得された場合、多機能綴じ機構710は、ドライバ712の押し付け面712aと用紙との間に緩衝部材を進出させた状態で、ドライバ712を下降させて圧着処理を実行する。このように緩衝部材を介在させることにより、ドライバ712の押し付け面712aの跡が用紙に残るなどの用紙に与える影響を抑制することができる。
図22(a)〜図22(c)は、多機能綴じ機構710の動作を示す図である。図22(a)〜図22(c)は、図21の視点Qから2つの多機能綴じ機構710のうち一つを見たときの図である。
図22(a)は、針綴じ処理を実行するときの多機能綴じ機構710の状態を示す図である。多機能綴じ機構710は、針送り機構730および切り替え機構732をさらに有する。針送り機構730は、互いに接するローラ736、738を有する。ローラ736はモータ(図示せず)によって駆動され、ローラ738はローラ736に従動する。綴じ針734は、このローラ736、738に挟持され、ローラ736が駆動されることによってドライバ712の先端に送り込まれる。
切り替え機構732は、針綴じ処理を実行するときは用紙に綴じ針を打ち込むよう綴じ針をドライバ712の先端に送り込み可能とし、圧着処理を実行するときは用紙への綴じ針の打ち込みを不能とすべくドライバ712の先端への綴じ針の送り込みを回避する。具体的には、切り替え機構732は、揺動ロッド740、カムフォロワ744、カム746、支持部材748、およびコイルスプリング750を有する。揺動ロッド740の一端はローラ736の回転軸を回転可能に支持し、他端は多機能綴じ機構710の筐体に揺動軸742を中心に揺動可能に支持されている。揺動ロッド740の中央では、円盤状のカムフォロワ744が回転可能に支持されている。カム746は、このカムフォロワ744に当接するよう配置されている。カム746はモータ(図示せず)によって駆動可能に設けられている。
コイルスプリング750は、多機能綴じ機構710の筐体に固定された支持部材748から、揺動ロッド740の一端を互いに離間させる方向に付勢する。これにより、ローラ736がローラ738に押し付けられ、綴じ針734の送り込みが可能となる。針綴じ処理を実行する場合、綴じ制御部720は、ローラ736、738を回転させて綴じ針734をドライバ712の先端に送り込んだ後、ドライバ712を下降させて綴じ針734を切断すると共に用紙に切断した綴じ針734を打ち込むよう多機能綴じ機構710を作動させる。
図22(b)は、圧着処理を実行するときの多機能綴じ機構710の最初の状態を示す図である。圧着処理を実行する場合、綴じ制御部720は、ローラ736を逆回転させることにより、ドライバ712の下方から綴じ針734を退避させる。
図22(c)は、図22(b)の次の多機能綴じ機構710の状態を示す図である。綴じ制御部720は、カム746を回転させることにより揺動ロッド740を揺動させ、ローラ736とローラ738とによる綴じ針734の挟持を解除する。これによって、ドライバ712の下降動作に伴う綴じ針734の送りを回避することができる。カム746を回転させると、綴じ制御部720は、ドライバ712を下降させて用紙を圧着する。
多機能綴じ機構710が図22(c)に示す状態となっているときに、次に針綴じ処理を実行する場合、上記の逆の処理を実行する。すなわち、綴じ制御部720は、まずカム746を回転させて揺動ロッド740を元の位置まで揺動させ、ローラ736とローラ738とによって綴じ針734を挟持した状態とする。次にローラ736を回転させて綴じ針734をドライバ712の下方に送り込み、最後にドライバ712を下降させて用紙に綴じ針734を打ち込む。
図23は、糊転写機構30および多機能綴じ機構710の相対的な位置関係を示す図である。ドライバ712は、用紙幅方向に2つ並設される。ベルト搬送機構456の搬送ベルトは2本設けられ、それぞれがドライバ712の外側において用紙搬送方向に延在するよう配置される。第4の実施形態では、糊転写機構30には2つの糊シートユニット120が設けられる。糊シートユニット120の各々は、2つのドライバ712の各々の上流側に配置される。これにより、糊シートユニット120による糊付け箇所をドライバ712にて適切に圧着させることができる。
(第5の実施形態)
図24は、第5の実施形態に係る製本システム800の全体構成図である。製本システム800は、丁合装置410に代えて給紙装置802が設けられた以外は、第3の実施形態に係る製本システム600と同様に構成される。
給紙装置802は、Aトレイ22A、Bトレイ22Bの各々に対応してイメージセンサ804が設けられた以外は、第1の実施形態に係る給紙装置12と同様に構成される。イメージセンサ804は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを含む。なお、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられてもよい。イメージセンサ804の各々は、Aトレイ22AおよびBトレイ22Bの各々に積載された用紙の所定領域に記録された画像を撮像する。給紙装置802には、内部のアクチュエータなどの制御を実行する給紙制御部806が設けられている。給紙制御部806は、イメージセンサ804の各々によって撮像された画像データをシステム制御部420に送信する。
例えば作成する冊子に含ませる用紙をすべてAトレイ22Aから送り出す場合、Aトレイ22Aには、綴じるときに積載されるときとは逆の順序で複数冊分の用紙が積載される。このとき、Aトレイ22Aには、1冊の冊子に含ませる用紙のうち、最後に送り出す用紙には上面にその旨を示す画像が付されている。この場合は、表紙となる用紙に、最後に送り出すことを示す画像が付されていることになる。
システム制御部420は、イメージセンサ804によって撮像された画像データを利用して、1冊分の最後の用紙か否かを判定する。最後の用紙と判定された場合、糊綴じ製本処理であれば、糊付け装置500はその用紙への糊付けを回避し、圧着機構610はその用紙が積載された時点で圧着処理を実行するよう各装置を制御する。針綴じ製本処理であれば、針綴じ機構470はその用紙が積載された時点で針綴じ処理を実行する。他の動作は第3の実施形態と同様である。
なお、例えばBトレイ22Bから表紙のみを送り出し、Aトレイ22Aからその他の用紙を送り出す場合においても、Aトレイ22Aには、1冊の冊子に含ませる用紙のうち、最後に送り出す用紙には上面にその旨を示す画像が付されている。この場合は、表紙の下に配置される用紙に、最後に送り出すことを示す画像が付されていることになり、綴じ装置604では、Bトレイ22Bから送り出された表紙が積載された後に、圧着処理または針綴じ処理が実行される。
このように、給紙装置802を利用しても、針綴じ製本処理および糊綴じ製本処理を択一的に実行することができる。なお、第2の実施形態または第4の実施形態に係る製本システムにおいても、丁合装置410に代えて給紙装置802が用いられてもよい。また、給紙装置802、丁合装置410に代えて、インクジェット記録装置等、用紙に印刷画像を形成する画像形成装置を設けてもよい。
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
上記実施形態では、糊シート212の送り量を調整するための送り量調整カム230を、作業者が手動で回動させる例を示した。変形例においては、送り量調整カム230をステッピングモータ等の駆動手段によりこれを回動させる構成とし、管理PC100からその回動指令信号を出力するようにしてもよい。ステッピングモータの回転量を調整することにより、送り量調整カム230の回転位置、レバー228の回動位置、ひいては糊の送り量を調整することができる。また、ステッピングモータの回転量から送り量を算出できるため、その送り量から転写長さlを算出し、さらに糊の転写部分の中心位置を算出することができる。管理PC100は、算出された糊の転写部分の中心位置と、用紙Pのサイズ情報から、その糊の転写部分の中心位置が用紙Pの用紙搬送方向の中心に位置するよう、ストッパ290の停止位置を決定することができる。
上記実施形態では、図3に示したように、ニアエンド検知部材210の検知レバー262を糊シートユニット120のフレーム200によって支持する構成例を示した。変形例においては、検知レバー262を糊シートユニット120の外側、つまり糊付け装置の本体ケーシングにて支持する構成とし、その先端のローラ268を供給リール202に巻回された糊シート212に接触させる構成としてもよい。フレーム200の下方にスリットを設けて検知レバー262を挿通可能とし、その検知レバー262を糊シートユニット120の下方に設置してローラ268を下方から接触させるようにすれば、糊シートユニット120の本体ケーシングへの着脱に支障をきたすこともない。
上記実施形態では、図6(A)および(B)に糊シート212の構成例を示したが、図示の態様以外にも様々な形状および大きさの糊セグメント302を配列して構成してもよいことはもちろんである。また、上記実施形態では、最も近接する糊セグメント同士を結ぶ配列方向が基材シート300の長手方向に対して傾斜するようにし、糊の転写の均一性を取れる例を示した。変形例においては、糊シート212そのものを受圧面240に対して傾斜させるように設置してもよい。例えば、供給リール202および巻取りリール204をその各々の回転軸が用紙搬送方向に対して傾斜するようにフレーム200に組み付けてもよい。あるいは、糊シートユニット120そのものを用紙搬送方向に対して傾ける態様で糊付け装置の本体ケーシングに取り付けるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、製本システムの一つの具体的構成例を示したが、それ以外に種々の態様の構成を採用できることはいうまでもない。上記実施形態では、中綴じ折り冊子を製本する装置の例を示したが、用紙の端部を綴じるタイプの製本システムであっても、上述した糊付け装置の構成を有効に適用することができる。また、本発明の糊付け装置は、製本システムに限らず、糊シートの一部を用紙に押し付けて糊を転写させる糊付け機構を備える装置であれば適用することが可能である。