次に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1に、一般的な固体高分子型燃料電池を示す。基本的構成要素として、中心に電解質体1が存在し、その両側にアノードを有するアノード部2及びカソードを有するカソード部3が配置されており、その外側に拡散層4、さらに外側に液体燃料を供給する流路を有する液体燃料供給部5a及び酸化剤を供給する流路を有する酸化剤供給部5b、集電板6及び絶縁板7を有し、これらを2枚のエンドプレート8、ボルト10及び支持棒11で締めつけた構造をしている。
アノードにアルコール等の液体燃料が供給され、アノードの触媒の作用により、水素イオンが発生する。この時、発生する電子は、外部回路に流れ出る。発生した水素イオンは、電解質体中を伝搬し、カソードに達する。カソードに酸素等の酸化剤を供給することにより、水素イオン、酸素及び外部回路を通して流れてくる電子が反応し、水を生成する。以下に、液体燃料として、メタノールを用いる場合の反応式を示す。
アノード反応:CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
カソード反応:6H++3/2O2+6e−→3H2O
全反応:CH3OH+3/2O2→2H2O+CO2
このように、アノードでは炭酸ガスが発生し、カソードでは水が生成する。
本発明の燃料電池は、図2に示すように、アノード部2は、カソード部3に対して、鉛直方向の上側に設けられている。本明細書及び特許請求の範囲において、鉛直方向とは、鉛直方向及びそれに近い方向を意味する。このとき、アノードで発生した炭酸ガス16は、鉛直上向きに移動するが、炭酸ガス16は、アノード部2の表面に溜まらず、液体燃料がアノードに接触しやすくなる。また、カソードで発生した水17は、鉛直下向きに移動するが、水17は、カソード部3の表面に溜まらず、酸化剤がカソードに接触しやすくなる。
これに対して、図3に示すように、アノード部2がカソード部3に対して鉛直方向の下側に設けられている場合、アノードで発生した炭酸ガス16は、鉛直上向きに移動するため、炭酸ガス16は、アノード部2の表面に溜まり、液体燃料のアノードへの接触を妨げ、発電特性の低下を招く。また、カソードで発生した水17は、鉛直下向きに移動するため、水17は、カソード部3の表面に溜まり、酸化剤のカソードへの接触を妨げ、発電特性の低下を招く。
一方、図4に示すように、鉛直方向に対して垂直な方向にアノード部2及びカソード部3が設けられている場合、アノードで発生した炭酸ガス16は、鉛直上向きに移動するため、炭酸ガス16は、図中、アノード部2の上部に溜まり、アノード部2の上部における液体燃料のアノードへの接触を妨げ、発電特性の低下を招く。また、カソードで発生した水17は、鉛直下向きに移動するため、水17は、図中、カソード部3の下部に溜まり、カソード部3の下部における酸化剤のカソードへの接触を妨げ、発電特性の低下を招く。
一般に、液体燃料供給部5aの流路に液体燃料が流れている場合は、液体燃料の流束が大きい程、発電特性は、良好になる。これは、炭酸ガス16がアノード部2の表面に溜まりにくくなるためである。
このとき、液体燃料の流束が低下したり、発電量の増加、温度の上昇、液体燃料の濃度の上昇等により、炭酸ガス16の体積が増加したりした場合、炭酸ガス16がアノード部2の表面に留まりやすくなり、発電性能が低下しやすくなる。
しかしながら、本発明の燃料電池を用いると、液体燃料の濃度が0.9mol/l以上であり、液体燃料供給部5aの流路における液体燃料の流束が1500μl/mm2・分以下である場合においても、炭酸ガスは、アノード部の表面に溜まらないため、発電性能は、良好である。本発明の燃料電池は、液体燃料供給部5aの流路における液体燃料の流速が0μl/mm2・分、すなわち、液体燃料の自然拡散のみで発電を行う場合も、発電性能は、良好である。
以下、液体燃料として、メタノールを用いる場合について説明する。アノード反応は、
CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
となり、炭酸ガスが発生する。
本発明の態様は、発電温度が80℃以上の発電において、メタノールを0.9mol/l以上含有する液体燃料の液体燃料供給部5aの流路における流束が1800μl/mm2・分以下、特に、1500μl/mm2・分以下の時に、炭酸ガスのアノードに与える悪影響が軽減される。
また、発電温度が80℃未満の時は、メタノールを0.9mol/l以上含有する液体燃料の液体燃料供給部5aの流路における流束が1500μl/mm2・分以下、特に、1300μl/mm2・分以下の時に、炭酸ガス16のアノードに与える悪影響が軽減される。
液体燃料として、エタノールを用いる場合、アノード反応は、
C2H5OH+3H2O→12H++12e−+2CO2
となる。なお、炭素数が4以下のアルコールの50重量%以下の水溶液においても、メタノールを用いる場合と同様の効果を有する。
液体燃料1分子当たりの炭酸ガスの発生量は、液体燃料の種類に依存する。例えば、メタノール等の炭素数が1である液体燃料1分子をアノード酸化すると、炭酸ガス1分子を発生する。また、エタノール等の炭素数が2である液体燃料1分子をアノード酸化すると、炭酸ガス2分子を発生する。このように、炭素数の多い炭化水素系液体燃料を使用する程、液体燃料1分子をアノード酸化した時に発生する炭酸ガスの分子数は、多くなる。
一般に、酸化剤供給部5b中を、酸素を含有する気体(以下、酸化剤気体という)が流れている場合は、酸化剤気体の流束が大きい程、発電特性は、良好になる。これは、水17がカソード部3の表面に溜まりにくくなるためである。
このとき、酸化剤気体の流束が低下したり、発電量の増加、温度の上昇、燃料濃度の上昇等により、水17の体積が増加したりした場合、水17がカソード部3の表面に留まりやすくなり、発電性能が低下しやすくなる。
しかしながら、本発明の燃料電池を用いると、酸化剤気体が酸素を20体積%以上含有する気体であり、酸化剤供給部5bの流路における酸化剤気体の流束が120ml/mm2・分以下である場合においても、水は、カソード部の表面に溜まらないため、発電性能は、良好である。本発明の燃料電池は、酸化剤供給部5bの流路における酸化剤気体の流速が0ml/mm2・分、すなわち、酸化剤気体の自然拡散のみで発電を行う場合も、発電性能は、良好である。
このとき、カソード反応は、
2H++1/2O2+2e−→H2O
となり、水17が生成する。
本発明の態様は、発電温度が80℃以上の発電において、酸化剤気体の酸化剤供給部5b中の流束が150ml/mm2・分以下、特に、120ml/mm2・分以下の時に、水17のカソードに与える悪影響を軽減することが可能である。
発電温度が80℃未満の時は、酸化剤気体の酸化剤供給部5bの流路における流束が120ml/mm2・分以下、特に、100ml/mm2・分以下の時に、水17のカソードに与える悪影響を軽減することが可能である。
燃料電池は、一般に、単独で用いると、1V以下の低い起電力となる。このため、燃料電池は、電気的に直列又は並列に接続することが好ましい。これにより、所望の電圧及び起電力を得ることができる。
本発明の燃料電池は、アノード部がカソード部に対して、鉛直方向の上側に設けられていることから、高さに比較し、底面積の大きい機器に対しては、扁平(薄型)の配置が好ましい。そこで、本発明の燃料電池を鉛直方向に直交する方向(複数の方向を含む)に複数個存在させると共に、それらを電気的に接続することにより、所望の電力が得られる扁平(薄型)の燃料電池集合体を構成することが可能である。
また、底面積に比較し、高さが大きい機器に対しては、本発明の燃料電池を鉛直方向に複数個存在させると共に、それらを電気的に接続することにより、所望の起電力が得られる縦長の燃料電池集合体を構成することが可能である。
所望の形状や起電力により、鉛直方向に直交する方向及び鉛直方向の配置を組み合わせることが好ましい。後述する燃料電池を積層した燃料電池集合体を併用することにより、体積エネルギー密度、重量エネルギー密度の高い燃料電池集合体を構成することが可能である。
このような複数の燃料電池に供給される液体燃料及び酸化剤は、燃料電池各々に独立に供給することが好ましい。また、液体燃料及び酸化剤の排出も独立に行われることが好ましい。すなわち、燃料電池毎に液体燃料及び酸化剤の供給口及び排出口を有することが好ましい。少なくとも、後述する燃料電池を積層した燃料電池集合体毎に供給口及び排出口を有していることが好ましい。
このような構成にすることより、液体燃料及び酸化剤の濃度のバラツキによる各燃料電池の発電性能のバラツキを抑え、寿命及び安全性を向上させることができる。
液体燃料及び酸化剤を供給するポンプは、それぞれ複数個使用することが好ましい。ポンプの排出量と消費電力との関係は、比例関係ではなく、流量が大きい程、単位流量当たりの消費電力が大きくなる。すなわち、同じ流量でも、ポンプを複数個使用することにより、低消費電力化が可能である。ポンプの電力を自立的に燃料電池の起電力の一部で補う構成は、特に好ましい態様である。また、ポンプの数を増やすことにより、一つのポンプで供給している場合より、排出力(吐出負荷圧)が小さいポンプの使用が可能となる。
燃料電池を積層した燃料電池集合体は、液体燃料、酸化剤及び生成物の漏れが起こらないように、また、接触電気抵抗を軽減させ、アノード部及びカソード部と電解質体との界面特性を向上させるために強固に狭持する必要がある。
このため、発電要素を、2枚のエンドプレート及びボルトで締め付けるのが一般的である。発電要素とは、電解質体、アノード部及びカソード部を必須とし、他に、拡散層、液体燃料供給部、酸化剤供給部等を含有する、燃料電池が発電を行うために必要な要素であり、2枚のエンドプレート間に存在する要素を指す。発電要素を狭持する方法としては、図5に示すように、発電要素18の外周のスペースをボルト10、支持棒11等で締め付け、発電要素18が面内で均一に加圧されるよう、四隅以上を固定する方法が挙げられる。
しかし、この形態では、エンドプレート8の外部にボルト10を締めるためのスペースが必要となり、燃料電池が大型化し、体積と重量の増加の要因となっていた。
図6に、本発明の燃料電池集合体の実施形態を示す。なお、(a)は、正面図、(b)は、下面図である。ここでは、3個の燃料電池19が積層された積層体を形成しており、この積層体を挟持する2つのエンドプレート8、エンドプレート8を締め付ける締め付け部材20から構成されている。
図7に、図6の燃料電池を概略的に示す。燃料電池19は、電解質体1、アノード部2、カソード部3、拡散層4、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bが積層されて構成されている。また、液体燃料や生成物の漏洩を防止するシール部材9が設けられている。
この燃料電池19が積層されることにより、大容量の燃料電池集合体を構成することができるが、燃料電池19に存在する液体燃料供給部5aは、隣接する燃料電池19の酸化剤供給部5bと表裏で共用して流体供給部を形成しても構わない。すなわち、流体供給部は、酸化剤供給部5bを液体燃料供給部5aに対して鉛直方向の上側に有する構成である。この場合、2枚のエンドプレートに最も近い2つの流体供給部は、一方は、液体燃料供給部5aのみ、他方は、酸化剤供給部5bのみを有していればよい。
図6に示すように、締め付け部材20がエンドプレート8の四隅に設けられている。すなわち、2つの締め付け部材20は、燃料電池19を介して対向する2つの位置にそれぞれ設けられている。これにより、均一な圧力を燃料電池19に加えることができる。このような締め付け部材20は、回転させることによって、2つのエンドプレート8を締め付ける構造になっている。
締め付け部材20は、2つのエンドプレート8にそれぞれ設けられた2つの支持棒11と、2つの支持棒11を連結する回転部21とから構成されている。ここで、2つの支持棒11は、第一の支持棒及び第二の支持棒である。2つの支持棒11と回転部21とは、支持棒11が雄ねじ、回転部21が雌ねじとして、接続されている。また、回転部21には、その回転方向により、2つの支持棒11が近付くか、離れるように、ねじ溝(図示せず)が切り込まれている。
このような構成において、エンドプレート8が近付く方向に4つの回転部21を回転させることで、燃料電池19は、エンドプレート8により加圧されて締め付けられている。このとき、締め付け部材20は、エンドプレート8の外面(燃料電池19と反対側の面)に飛び出していないため、燃料電池集合体の小型化を実現することができ、さらに、簡単な構成で、燃料電池19への十分な加圧を実現することができる。
なお、本実施形態では、締め付け部材20は、回転部21により、エンドプレート8を近付けるように構成されているが、これに限るものではなく、例えば、ねじ、コイルスプリング等のバネを利用してエンドプレート8を近付けるように構成されていてもよい。
図8に、このような締め付け部材を示す。ここでは、2つのエンドプレート(図示せず)に設けられる2つの支持棒22a及び22bと、それらの支持棒22a及び22bに装着された伸縮部材であるコイルスプリング23とから構成されている。コイルスプリング23の両端は、2つの支持棒22a及び22bのエンドプレート側の端部にそれぞれ固定されている。支持棒22aは、支持棒22bより一回り小さく形成されており、支持棒22bの内部に挿入することができる。すなわち、支持棒22aは、支持棒22bの内部をスライド可能な機構になっている。また、支持棒22bの長さを変更することが可能な機構になっている。ここで、支持棒22aが第一の支持棒であり、支持棒22bが第二の支持棒である。なお、燃料電池を挟持する前の締め付け部材は、コイルスプリング23、支持棒22a及び22bの長さは、最短状態になっている。この状態で、燃料電池がエンドプレート8の間に挿入されることにより、コイルスプリング23は、エンドプレート8を近付ける方向に張力を発生させる。
なお、本実施形態では、伸縮部材としてコイルスプリング23を用いているが、これに限るものではなく、例えば、ゴム状の部材が用いられてもよい。
図1の燃料電池では、液体燃料供給部5aに流れ込んだ液体燃料及び酸化剤供給部5bに流れ込んだ酸化剤は、拡散層4を介して、それぞれアノード2部及びカソード部3に供給され、アノード反応及びカソード反応が行われる。なお、拡散層4としては、通常、多孔質体が用いられる。
図9に、従来の液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の(a)平面図及び(b)断面図を示す。従来のアノード(又はカソード)は、単純な形状(一般的には、四角形)で形成されている。これに対して、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)は、流路24が形成されている。この流路24とアノード(又はカソード)を直接接触させると、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の流路24以外の面にアノード(又はカソード)が接してしまい、アノード反応(又はカソード反応)に寄与しない部分が生じる。このため、アノード(又はカソード)の全面を機能させるため、拡散層を設置し、液体燃料(又は酸化剤)がアノード(又はカソード)の全面に行き渡るように構成している。
しかしながら、拡散層を設けることは、体積及び重量の面で不利であり、特に、電子機器用の燃料電池の場合、小型軽量であることが要求される。また、拡散層は、液体燃料(又は酸化剤)の拡散抵抗を高くする要因にもなっている。また、アノード反応及びカソード反応で生成する炭酸ガス、水等の生成物が拡散層の中に留まり、反応を阻害する要因にもなっている。
液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)は、アノードで発生した電子を伝搬する役割も担っているため、通常、導電体で形成されている。また、酸化及び還元のいずれの雰囲気にも曝されることから、カーボンのような不活性な材料を使用しているのが現状である。しかしながら、カーボンは硬く、脆いため、加工性が悪く、製造コストがかかると共に、薄層化が困難である欠点を有している。
図10に、本発明の燃料電池の実施形態を示す。ここでは、拡散層を使用しないため、小型軽量化が可能であり、拡散層に起因する拡散抵抗は、存在しない。また、炭酸ガス、水等の生成物を電極から移動させることが容易になる。さらに、アノード部2と液体燃料供給部5aとで挟まれた部分及びカソード部3と酸化剤供給部5bとで挟まれた部分に電子伝導体25を設けて、アノードで発生した電子を伝搬するため、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bを電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型化が可能な高分子材料を、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bの材料として、使用することが可能となる。
図11に、本発明の燃料電池の実施形態の別の態様を示す。ここでは、電解質体1の表面のアノード部2及びカソード部3が形成されていない部分に電子伝導体25が形成されている。拡散層を使用しないため、小型軽量化が可能であり、拡散層に起因する拡散抵抗が存在しない。また、炭酸ガス、水等の生成物を電極から移動させることが容易になる。さらに、電解質体1の表面に形成した電子伝導体25により、アノードで発生した電子を伝搬するため、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bを電子伝導体で作製する必要がない。すなわち、加工性が容易であり、安価であり、小型軽量薄型化が可能な高分子材料を、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bの材料として、使用することが可能となる。また、アノード及びカソードの表面積を反応が行われる面積と概ね同一にできることから、アノード及びカソードを構成する材料の使用量が低減できる。
図12に、本発明で使用する電極の形成例を示す。ここでは、アノード(又はカソード)は、図9に示す液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の流路の形状に基づいて形成されている。図9の流路24に対応する部分にアノード(又はカソード)26が形成されている。このようなアノード(又はカソード)26を形成することにより、拡散層が不要になり、小型軽量化が可能となるとと共に、使用するアノード(又はカソード)26の材料の使用量を削減することができる。また、拡散層が存在しないことにより、拡散抵抗を減少させることが可能であると共に、生成物の除去も容易となる。なお、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)は、図9に限るものではなく、通路が2本以上であってもよく、図13に示すような混合通路であってもよい。ただし、アノード(又はカソード)は、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の流路に合わせて形成する必要がある。
電解質体に形成されるアノード及びカソードは、電解質体の表裏に、概ね同一位置に形成されていることが好ましい。イオン伝導抵抗は、その距離に比例するため、位置が異なる程、イオンの移動距離が長くなり、燃料電池としても抵抗が大きくなる。
図14に、本発明で使用する電極の形成例を示す。電解質体1の液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の流路に対応する部分にアノード(又はカソード)26を設け、アノード(又はカソード)26を有さない領域に電子伝導体25を設けた構成である。このような構成とすることにより、アノードで発生した電子を低抵抗で伝播することが可能となる。上記と同様な理由で、電解質体に形成されるアノード及びカソードは、電解質体の表裏の概ね同一位置に形成されていることが好ましい。また、図11の態様で説明したように、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の外部まで電子伝導体25を広げることにより外部へ電子を取り出す端子部を形成することが可能である。
図15に、本発明で使用する電極の別の形成例を示す。アノード(又はカソード)26を4箇所に形成し、各々のアノード(又はカソード)26の周囲に電子伝導体25を電解質体の表面に形成した例である。なお、裏面も同様に逆の電極が形成されている。4つの電子伝導体25(裏面を合わせると8つ)は、独立しているため、4個の素電池がひとつの電解質体1に形成されていることになる。表面に存在する電子伝導体25と、表面に存在する他の電子伝導体25を電気的に接続することにより、素電池の並列接続が可能である。また、表面に存在する電子伝導体25と、裏面に存在する電子伝導体(図示せず)とを電気的に接続することにより、素電池の直列接続が可能となる。直列接続の場合は、一つの素電池の起電力を0.7Vとすると、図の構成では2.8Vの電圧の電池を構成できる。このとき、電極の形成数を増やすことにより、さらに高電圧化も可能である。
本発明に使用される液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)は、液体燃料(又は酸化剤)に対して安定である必要がある。また、酸化及び還元の雰囲気に対しても安定であることが好ましい。このような材料としては、炭素材料が使用できる。しかしながら、軽量化及び成形性の面から、プラスチック材料で形成されていることが好ましい。また、電気抵抗の低下の観点から、アノード(又はカソード)と接することなく、電子伝導体と接し、さらに電子伝導体と接する部分が導電化されていることが好ましい。すなわち、非導電性部材で形成された液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の表面を導電化して使用することができる。導電化する方法としては、金属の蒸着、スパッタ、メッキ等の従来公知の方法が挙げられる。
また、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)の導電化を表面だけではなく、立体とすることも可能である。これは、液体燃料供給部(又は酸化剤供給部)を、導電性部材及びプラスチック部材のように複数の部材の組み合わせにより形成することを意味している。この場合、導電部は表面だけではないため、電気抵抗の低減の面で有利である。また、流路の表面から流路以外の領域の表面まで連続して導電性部材で形成することにより、同一の燃料電池の積層体の形成(接続)等に有利な構成とすることが可能である。
図16に、本発明の電極の形成方法の実施形態を示す。本明細書及び特許請求の範囲において、電極とは、アノード部及びカソード部、すなわち、アノード、カソード及び電子伝導体を意味する。静電気を担持する静電気担持体である基板31を用意して、基板31を帯電(図中、負帯電)させる(図16(a))。次に、帯電した基板31を、基板31と反対の電荷で帯電(図中、正帯電)した電極材料からなる粒子32を含む分散液33に浸し、粒子32を基板31に付着させる(図16(b))。さらに、粒子32が付着した基板31を取り出し、粒子32を含まない液に浸す。そして、基板31に対向させて基板34を浸し、それらの間に電解質体(又は多孔質体)35を浸す。なお、粒子32が付着した基板31と基板34とは、電源36を介して接続されている。基板34が粒子32と反対の電荷で帯電(図中、負帯電)するように直流電界を印加し、基板31に付着していた粒子32を電解質体(又は多孔質体)35上に電気泳動させて付着させる(図16(c))。このような方法により、電解質体(又は多孔質体)35と粒子32との積層体が作製される(図16(d))。なお、得られた積層体は、除電される。このとき、基板31と電解質体(又は多孔質体)35と基板34とを接近させることにより、液を介さずに電解質体(又は多孔質体)35に粒子32を直接転写させることも可能である。
ここで、基板31としては、静電気を担持できるもの、具体的には、表面が絶縁性又は半導性のものであれば、使用可能である。基板31を帯電させる方法としては、物理的に2種以上のものを接触摩擦させることによる帯電(摩擦帯電)、空気等に高い電界を印加することにより発生する電荷を利用する帯電(コロナ放電)、電子銃等による帯電(電荷注入)等の様々な方法を使用することができる。
静電気担持体は、光半導体を有することが好ましい。光半導体とは、光照射により正電荷又は負電荷を発生させることができる物質である。このような材料を本発明の実施形態の静電気担持体に使用した場合、前述したような様々な方法で表面全体を帯電させた静電気担持体に光を照射することにより、電荷を消失させることが可能となる。すなわち、光を照射する部位を制御することにより、任意の形状で静電気を表面に残すことが可能となる。
図17に、光照射を用いた本発明の電極の形成方法の実施形態を示す。ここでは、光半導体層を有する基板(光半導体基板37)を用いた。帯電器38により、光半導体基板37の帯電処理(図中、正帯電)を行う(図17(a))。その後、帯電した光半導体基板37に対して、任意形状の開口部39aを有するマスク39を介して光照射を行い、光が照射された部分のみ電荷を消失させる(図17(b))。すなわち、帯電した光半導体基板37の所定領域だけを除電する。これにより、光半導体基板37上に帯電部40が形成される。次に、光半導体基板37と反対の電荷で帯電(図中、負帯電)した粒子41が分散している分散液42を帯電ローラ43(負帯電ローラ)上に付着させ、同時に直流電界を印加し、粒子41を帯電部40に電気泳動させる(図17(c))。次に、粒子41と反対の電荷で帯電した帯電ローラ44(正帯電ローラ)により、粒子41を電解質体(又は多孔質体)45に転写する(図17(d))。これにより、電解質体(又は多孔質体)45と粒子41との積層体が作製される(図17(e))。なお、光半導体基板37をクリーニングして再利用する。
このように図16や図17に示すような電極の形成方法によれば、任意形状で粒子を電解質体又は光半導体に転写させることが可能になるため、任意形状の電極を簡便に形成することができる。さらに、光半導体を再使用することも可能である。また、図17に示すような光照射による電極の形成方法によれば、電極を短時間で大量に製造することができる。なお、一般的に、光照射は、通常の塗布法と比較して、解像度を高くすることができるという利点を有している。
ここで、任意形状を形成するための光照射法としては、ハロゲンランプ等の光のフォトマスク(マスク)による一括照射、半導体レーザー光をミラー等で走査する描画照射、LEDアレイによる線状照射等の方法が用いられる。特に、レーザー光による描画やLEDアレイによる描画は、解像度が高い点、複雑形状も可能な点、版(マスク)が不要で形状変化への対応性が高いことから好ましい。
また、光半導体の構成としては、導電性基板上に、少なくとも光半導体層を設けた形状が好ましい。このような形態とすることにより、光照射により発生した電荷を速やかに正負電荷に分離することが可能となり、解像度が向上する。特に、導電性基板を表面帯電とは逆の極性(又は接地)とすることが電荷分離の点から好ましい。
さらに、粒子としては、使用する分散媒中で安定であれば、特に制限はないが、電極に与える機能により、適宜選択される。また、本実施形態で使用する粒子は、分散媒中で帯電している。この帯電を利用して粒子を光半導体に付着させ、さらに電解質体(又は多孔質体)に転写させている。これは、基本的に電気泳動現象を利用しているものである。電気泳動とは、粒子の表面に存在する電荷に働く静電引力により移動させるもので、正に荷電している粒子は負電場に、負に荷電している粒子は正電場に泳動する。粒子の電荷は、分散媒が水等のイオン解離性を有する溶媒である場合には、粒子の表面に親和性の高いイオンが特異吸着し、吸着したイオンの電荷を粒子が帯びることになる。また、吸着したイオンと逆の電荷を持つイオンは、粒子の周囲に対イオン層を形成する。分散媒が有機溶媒等のイオン解離性を有さない溶媒である場合には、電解質等の電荷制御物質を添加することにより、前述したような特異吸着がおこり、粒子は、電荷を帯びる。イオン解離性を有する溶媒中にも電荷制御物質を加えることで、電荷を制御することができる。
本実施形態で使用する分散媒として、イオン解離性の溶媒を使用する場合、その基本的構成は、分散媒及び粒子のみで構成することが可能である。しかしながら、この場合には、電荷を決定する成分及び電荷量は、粒子の材質と分散媒の組み合わせで一義的に決定され、制御することが困難である。このため、電荷量や符号を自由に制御するためには、電荷制御物質を添加することが好ましい。ここで使用される電荷制御物質は、無機塩、有機塩等、特に制限はないが、粒子の表面の性質及び荷電させたい符号により、適宜選択することが好ましく、少ない添加量で、より大きい表面電荷を有するものが好ましい。また、粒子とイオン解離性を有する溶媒のみで構成される系、又は、さらに電荷制御物質を添加した系では、粒子径を小さくしないと、分散液の安定性が低下し、凝集が起こることがあるため、分散液の安定性を高める目的で界面活性剤を添加することもできる。この場合には、イオン性の界面活性剤を用いる場合は、それ自体が粒子に電荷をあたえる役割を担うことにもなる。ここで使用される界面活性剤としては、非イオン性(ポリエチレングリコール型、多価アルコール型)、カチオン性(アミン塩型、アンモニウム塩型)、アニオン性(カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型)、両性(アミノ酸型、ベタイン型)が挙げられる。特に、少ない添加量で粒子に電荷を付与するためには、カチオン性又はアニオン性の界面活性剤を使用することが好ましい。なお、イオン解離性を有さない溶媒を使用する場合には、電荷制御物質が必須となる。界面活性を有さない電荷制御物質を用いる場合は、電荷を制御することができるが、分散液の安定性が悪いため、界面活性剤を使用することが好ましい。
分散液は、分散媒に不溶な粒子及び、必要に応じて、結着性樹脂、導電剤、電荷制御剤等を加えたものを各種の分散方法により、微細化及び混合することにより、作製される。分散方法としては、回転刃による粒子の微細化及び混合を行うホモジナイザー、回転する3本のロールが有するギャップにより粒子の微細化及び混合を行う三本ロールミル、ビーズを混合し攪拌することにより粒子の微細化及び混合を行うサンドミル、超音波振動により粒子を微細化及び混合する超音波分散等の分散方法が用いられる。
本実施形態で使用される結着樹脂は、分散媒中で安定であって、電解質体や粒子を結着させる特性を有する樹脂である。具体的には、ポリフルオロエチレン、ポリエチレン、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレンブタジエンゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロプレン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは、単独で用いられたり、混合、共重合等により、化学的安定性を強化して用いられたりする。
本実施形態で使用される電解質体は、自己保持性を有しているものである。その材質は、有機材料、無機材料、単一材料、複合材料等であり、少なくとも分散媒に対して化学的に安定であり、膜厚方向にイオン伝導性を有するものでなくてはならない。このような電解質体としては、分子内にイオン解離基を有する高分子化合物が好ましい。イオン解離基としては、イオン化可能な官能基(水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等)又は電解質塩等のイオン解離性物質を解離することが可能な基(アルキレンオキシド基、アルキレンイミン基等)が挙げられる。より具体的には、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの誘導体及び架橋体等が挙げられる。単独で自己保持性膜を形成できない場合には、例えば、多孔質体に保持して使用することもできる。
本実施形態で使用される多孔質体とは、分散媒に対して安定であれば使用可能であるが、イオン伝導性物質を保持できるものでなくてはならない。多孔質体を使用する場合、イオン伝導性物質は、液体状、ゲル状、固体状等の形態のイオン伝導性物質の使用が可能となる。イオン伝導性物質の多孔質体への保持は、本実施形態で使用する粒子を積層した後に行われてもよいし、予め、多孔質体にイオン伝導性物質を保持させた後、粒子を積層しても良い。より具体的には、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の高分子繊維からなる多孔質体、ガラス繊維、高分子繊維を混用した繊維、高分子の発泡体等を使用することができる。
本実施形態の積層体を電気化学素子として応用する場合、結着樹脂としては、イオン伝導性高分子を使用することが好ましい。これは、結着性とイオン伝導性の両立が可能となるためである。このような結着樹脂としては、上記と同様に、分子内にイオン解離基を有する高分子化合物が使用でき、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの誘導体等を使用することができる。また、このような高分子化合物は、電荷制御物質として用いることもできる。また、材料の酸化還元に対する安定性(電気化学的安定性)及び熱安定性等の化学的安定性の観点から、結着樹脂は、フッ素系高分子であることが好ましい。具体的には、ポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等を使用することができる。
本実施形態で使用する分散媒中に含まれる高分子材料の最も好ましい形態としては、電荷制御物質としての機能、イオン伝導体としての機能、結着樹脂としての機能及び(電気)化学的安定性を併せ持つ材料が、小型、軽量、安価及び積層体の電気化学的性能向上の面で好ましい。具体的には、フルオロカーボン構造を主鎖や側鎖に有し、イオン解離基を分子鎖中に含む高分子材料が好ましい。具体的には、パーフルオロエチレン構造を有し、イオン解離基を含む構造が好ましい。イオン解離基としては、伝導させるイオン種で適宜設定させるものであるが、プロトンであれば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のブレンステッド酸基である。
本実施形態で使用する導電剤は、分散媒中で安定であって、電極中の粒子近傍で発生する電子の伝播を補助する機能を担うものである。導電剤を使用する場合については、分散媒中で安定、電極の動作環境下において安定である電子伝導性物質であれば構わない。特に、酸化還元に対する安定性、軽量である点、分散媒中での分散性が良好である点、イオン伝導性高分子を電荷制御物質として吸着できる点から、炭素系の材料が好ましい。このような材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。
本実施形態で使用される粒子としては、少なくとも触媒を使用することにより、本実施形態の電極において、電気化学的な触媒反応を実施することが可能となる。粒子の形態としては、触媒は、担体上に担持されている状態になっていることが触媒活性、耐久性及び利用効率の面から好ましい。また、本実施形態の電極の形成方法では、粒子は、帯電していることが必要であるが、帯電は、前述したように電荷制御物質により調整することができる。このとき、触媒上に電荷制御物質を被覆又は吸着させると、触媒活性が低下するため、好ましくない。このため、電荷制御物質を被覆又は吸着させた担体上に触媒を担持することにより、触媒作用を低下させることなく、本実施形態の電極の形成方法を実施することができる。
触媒としては、特に制限はないが、本発明の実施形態が電解質体上への触媒の積層であることから、触媒反応にイオンが関与することが好ましい。具体的には、触媒として、白金等の貴金属単体又は貴金属と貴金属を含む第2元素、第3元素等の合金や複合物が使用できる。また、担体としては、使用される触媒作用を有する物質及び電極が機能する条件で適宜選択されるものであるが、カーボン、炭化ケイ素等が使用できる。触媒としては、水素や有機物の酸化のため、白金を主体とする触媒が好ましい。特に、アルコール、中でもメタノールの酸化には、白金−ルテニウム触媒又は白金−イリジウム触媒が好ましく、エタノールの酸化には、白金及びルテニウムを含有すると共にイリジウム、タングステン、モリブデン及びスズの少なくとも一つをさらに含有する触媒が好ましい。
本実施形態の電極の形成方法は、図7を例に説明すると、電解質体1の両側にアノード部2及びカソード部3が設けられた構成に適用されるものである。燃料電池においては、電解質体1の両側にアノード部2及びカソード部3を積層することが必要である。これは、本実施形態の電極の形成方法を電解質体1の表裏で最低2回繰り返すことにより作製することが可能である。この場合には、アノード部2側及びカソード部3側に異なる粒子を積層させることも可能である。また、アノード部2側及びカソード部3側で同一の粒子が存在する場合には、光半導体上にフォトマスク、レーザー描画等の方法で2箇所の部位に光照射することにより、電解質体1の片面の2個所にアノード部2及びカソード部3を積層することができるため、電解質体1を内側、アノード部2及びカソード部3を外側にして、折り畳むことによっても燃料電池の機能部材として使用することが可能である。
また、本実施形態の電極の形成方法、特に光半導体を用いる方法においては、前述したように、電解質体(又は多孔質体)の同一平面内に、一段階で複数の領域にアノード及びカソードを形成すること、すなわち、複数の燃料電池の要素を形成することが可能であることから、生産性が高い方法である。また、このような手法で電解質体の表裏複数の領域にアノード及びカソードを形成した部分を燃料電池の要素として、並列及び/又は直列接続することにより、高電圧/高出力の薄型の燃料電池を作製することができる。したがって、本実施形態の電極の形成方法は、薄型の燃料電池用の電極の形成方法に適しているものである。また、レーザー光による描画、LEDアレイによる描画等は、解像度が高い点、複雑形状も可能な点、版(マスク)が不要で形状変化への対応性が高いことから、特に効果を発揮する。
本発明の燃料電池は、触媒の種類により適正があるが、液体燃料の種類は、特に限定されない。しかしながら、液体燃料は、体積及び重量エネルギー密度に優れるものを使用することが好ましい。液体燃料は、通常、容器等の有限な空間に収められているため、体積及び重量エネルギー密度に優れた液体燃料を使用することが好ましい。特に、体積エネルギー密度に優れた液体燃料が好ましい。具体的には、ガソリン、液体状炭化水素、液体状アルコール等の液体燃料が使用できるが、燃料電池の小型化が可能な点、体積エネルギー密度に優れる点より、アルコール燃料を使用することが好ましい。アルコール燃料を使用することにより、駆動時間を向上させた小型の燃料電池を形成することができる。中でも、炭素数4以下のアルコールを使用することが好ましく、特に、安全性が高く、生合成が可能である点から、エタノールを使用することが好ましい。このような形態の燃料電池は、体積エネルギー密度、重量エネルギー密度に優れることから、比較的小型の機器に使用する場合に、特に好ましいものである。
本実施形態によれば、メタノールの酸化には、白金−ルテニウム触媒又は白金−イリジウム触媒が好ましく、エタノールの酸化には、白金及びルテニウムを含有すると共にイリジウム、タングステン、モリブデン及びスズの少なくとも一つをさらに含有する触媒を使用することが好ましい。これらの触媒が好適な理由は、メタノール、エタノールの複雑な反応素過程の進行促進に寄与しているためである。また、エタノールは、人体に無害な点、生物由来の原料より生合成が可能な点から炭酸ガス負荷を低減できる液体燃料として、好ましい。
本発明の実施形態を図18、図19、図20及び図21に基づいて説明する。本実施形態では、燃料電池を有する電子機器について説明する。なお、本実施形態の電子機器の一例として、携帯可能なパーソナルコンピュータ等の情報処理装置について説明する。
図18は、パーソナルコンピュータへの電源部51の搭載イメージを示したものである。図19は、本実施形態の情報処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。図20は、電源システムの概要図、図21は、ブロック概要図である。
図19に示すように、情報処理装置は、各種演算を行って各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)52、BIOS等を記憶しているROM(Read Only Memory)53及びCPU52の作業エリアとなるRAM(Random Access Memory)54がバス55により接続されて構成されている。バス55には、大容量記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)56、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置57、キーボード、マウス等の入力装置58、CD、DVD等の記憶媒体59からデータを読み取る光ディスク装置等のデータ読取装置60及び電力を供給する電源部51等が各種のコントローラ(図示せず)等を介して接続されている。
記憶媒体59には、各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、データ読取装置60で読み取られ、HDD56にインストールされる。なお、記憶媒体59としては、CD、DVD等の光ディスク、光磁気ディスク、フレキシブルディスク等の各種方式のメディアを用いることができる。データ読取装置60も記憶媒体59の方式に応じて、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、FDD等が用いられる。また、各種のプログラムは、記憶媒体59から読み取るのではなく、ネットワーク(図示せず)からダウンロードしてHDD56にインストールされるものであっても良い。
図21は、電源部51の構成を概略的に示すブロック図である。なお、図19では、矢印は燃料等の流れを示す。
図21に示すように、電源部51は、燃料電池61、液体燃料を収容する液体燃料カートリッジ71、液体燃料カートリッジ71に接続された混合器72、液体燃料カートリッジ71と混合器72との間に設けられたバルブ73、液体燃料を燃料電池61に供給するための液体燃料ポンプ74、液体燃料の濃度を検知する濃度センサー75、発電後の燃料を気体と液体とに分離する気液分離器76、温度センサー77と冷却素子78とを有する熱交換器79、空気を燃料電池61に供給するための空気ポンプ80、温度センサー81と冷却素子82とを有する水分凝縮器83、水分凝縮器83からの水分を収容する水タンク84、水タンク84と混合器72との間に設けられたバルブ85、これらの各部を制御するための制御回路86及び燃料電池61の正負極が接続されたDCDCコンバーター87等から構成されている。なお、液体燃料等が通過する各部は、チューブ等の流路により接続されている。
このような電源部51では、混合器72を通過した燃料は、液体燃料ポンプ74を経て、濃度センサー75に導かれる。濃度センサー75により検知された液体燃料の濃度が所定の濃度より低い場合には、制御回路86は、液体燃料カートリッジ71のバルブ73を開ける。液体燃料は、燃料電池61に導かれる。発電後の液体燃料は、気液分離器76により気体成分(炭酸ガス)と液体成分とに分けられ、液体成分は熱交換器79に導かれる。温度センサー77により検知された液体温度が所定の温度より低い場合には、制御回路86は、冷却素子78により液体を冷却せず、液体温度が所定の温度より高い場合には、制御回路86は、冷却素子78により液体を冷却する。熱交換器79を通過した液体燃料は、再び混合器72に戻される。このような流れが燃料ラインとして機能する。
空気ポンプ80からの空気は、燃料電池61に導かれる。燃料電池61を通過した気液混合ガスは水分凝縮器83に導かれる。温度センサー81により検知されたガス温度が所定の温度より低い場合には、制御回路86は、冷却素子82により気液混合ガスを冷却せず、ガス温度が所定の温度より高い場合には、制御回路86は、冷却素子82により気液混合ガスを冷却する。なお、排ガスは、電源部51の外部に排出される。ここで、排ガスを排出するための排出口(図示せず)は、情報処理装置に対する電源部51の装着位置により異なるが、情報処理装置の外部に面した位置に設けることが好ましい。水分凝縮器83により凝縮された水分は、水タンク84を介して混合器72に戻される。このような流れが酸化剤ライン(空気ライン)として機能する。
このようにして、液体燃料及び空気が燃料電池61に供給されることで、燃料電池61は、発電し、所定の電力(起電力)をDCDCコンバーター87に付与する。なお、本実施形態においては、蓄電素子を用いていないが、これに限るものではなく、例えば、蓄電素子を電源部61の内部や外部等に設けて用いても良い。
(参考例1)
100mm×150mmのAl基板上にアモルファスセレン層を真空蒸着することにより、光半導体基板37を作製した。Alを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた(図17(a))。
セレン/アルミ基板を一定速度で走査しながら解像度600dot/inchのLEDアレイを用いて、セレン上に光照射し、照射部の帯電電位を減衰させた。なお、電位残留部は、50mm×50mmとなるように光照射した(図17(b))。
アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金−ルテニウム触媒(アノード用触媒)を40重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)(デュポン社製)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を、負に帯電した帯電ローラ43(導電性ゴムローラー)を介して、先の光照射した光半導体上に塗布した(図17(c))。この後、正に帯電した帯電ローラ44(導電性ゴムローラー)で、Nafion(商標)からなる電解質体45(90mm×130mm)をセレン上に接触させながら、ほぼ同時に電解質体45をセレン上から剥離させることにより、白金−ルテニウム触媒を担持したカーボンを主体とする粒子を電解質体45に転写した(図17(d))。光半導体基板37をクリーングした後、同一の光半導体基板37を用いて、この操作を数回繰り返し、アノードを形成した。
別に、アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金触媒(カソード用触媒)を50重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を用いて、上記と同様の操作をすることにより、電解質体45のアノードが形成されていない面に、白金を担持したカーボンを主体とする粒子を転写し、カソードを形成した。
表裏にアノード及びカソードを形成した電解質体を蒸留水中で保存した。
アノード及びカソードの形状は、50mm×50mmであり、白金換算で0.92mg/cm2の白金−ルテニウム触媒及び白金換算で0.99mg/cm2の白金触媒を積層した電解質体を得た。
この積層体を用いて、図22のような燃料電池を構成した。この燃料電池は、テフロン(登録商標)製のシール部材9、(厚さ200μm、外寸80mm×80mm、内径54mm×54mm)、カーボンペーパーからなる拡散層4(厚さ200μm、53mm×53mm)、樹脂含浸高密度人造黒鉛からなる液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5b(厚さ10mm、80mm×80mm、流路形状:サーペンタイン、流路外寸50mm×50mm)、銅に金メッキを施した集電板6、絶縁板7(厚さ500μm、80mm×80mm)、エンドプレート8(SUS304、厚さ12mm、120mm×120mm)を有する。
2枚のエンドプレート8を固定して締め付ける機構としては、図6の機構を用いた。1辺に対して3個所(全体で12箇所)固定した。液体燃料供給口12及び酸化剤供給口14は、エンドプレートの側面に設けると共に、絶縁板7、液体燃料供給部5a及び酸化剤供給部5bは、液体燃料及び酸化剤を導くための穴を設けてあると共に、集電板6面にはOリングを設けて(図示せず)、漏れを防止した。
アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置し、0.93mol/lのメタノール水溶液(液体燃料)の流束を1500μl/mm2・分、空気(酸化剤)の流速を1l/mm2・分として、燃料電池に供給し、80℃で発電した電流電圧曲線を図23(a)に示す。
アノード部及びカソード部を鉛直方向に対して垂直な方向に設置して発電した燃料電池及びアノード部をカソード部に対して鉛直方向の下側に設置した燃料電池の電流電圧曲線を、それぞれ図23(b)及び(c)に示す。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(参考例2)
70℃で発電したこと以外は、参考例1と同様に発電した電流電圧曲線を図24(a)、(b)及び(c)に示した。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(参考例3)
0.93mol/lのメタノール水溶液の流束を1300μl/mm2・分にしたこと以外は、参考例2と同様に発電した電流電圧曲線を図25(a)、(b)および(c)に示す。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(参考例4)
60℃で発電したこと以外は、参考例1と同様に発電した電流電圧曲線を図26(a)、(b)及び(c)に示した。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(参考例5)
0.93mol/lのメタノール水溶液の流束を3000μl/mm2・分、空気の流速を120ml/mm2・分にしたこと以外は、参考例2と同様に発電した電流電圧曲線を図27(a)、(b)および(c)に示す。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(参考例6)
0.93mol/lのメタノール水溶液の流束を3000μl/mm2・分、空気の流速を100ml/mm2・分にしたこと以外は、参考例2と同様に発電した電流電圧曲線を図28(a)、(b)および(c)に示す。これより、アノード部をカソード部に対して鉛直方向の上側に設置した時に優れた電気化学特性を示すことがわかる。
(実施例7)
100mm×150mmのAl基板上にアモルファスセレン層を真空蒸着することにより、光半導体基板37を作製した。Alを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた(図17(a))。図29(a)のガラス性フォトマスク(点線は、液体燃料供給部との接触境界を示す)を介して、セレン上にハロゲンランプ光を照射し、照射部の帯電電位を減衰させた(図17(b))。
アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金−ルテニウム触媒(アノード用触媒)を40重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を、負に帯電した帯電ローラ43(導電性ゴムローラー)を介して、先の光照射した光半導体上に塗布した(図17(c))。この後、正に帯電した帯電ローラ44(導電性ゴムローラー)で、ポリプロピレン製多孔質膜にNafion(商標)を充填した電解質体45をセレン上に接触させながら、ほぼ同時に電解質体45をセレン上から剥離させることにより、白金−ルテニウム触媒を担持したカーボンを主体とする粒子を電解質体45に転写した(図17(d))。光半導体基板37をクリーングした後、同一の光半導体基板37を用いて、この操作を数回繰り返し、アノードを形成した。
光半導体基板37のAlを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた。図29(b)のガラス性フォトマスク(点線は、酸化剤供給部との接触境界を示す)を介して、セレン上にハロゲンランプ光を照射し、照射部の帯電電位を減衰させた。
アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金触媒(カソード用触媒)を50重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を用いて、上記と同様な操作をすることにより、電解質体45のアノードが形成されていない面に、白金触媒を担持したカーボンを主体とする粒子を転写し、カソードを形成した。
光半導体基板37のAlを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた。図30(a)のガラス製フォトマスクを介して、セレン上にハロゲンランプ光を照射することにより、照射部の帯電電位を減衰させた。
アイソパーにカーボンを20重量%、電荷制御剤を微量、フッ素系結着樹脂を2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を、負に帯電した帯電ローラ43(導電性ゴムローラー)を介して、上記の光照射した光半導体上に塗布した。この後、正に帯電した帯電ローラ44(導電性ゴムローラー)で、電解質体45のアノード側をセレン上に接触させながら、ほぼ同時に電解質体45をセレン上から剥離させることにより、カーボンを主体とする粒子を電解質体45に転写した。光半導体基板37をクリーングした後、同一の光半導体基板37を用いて、この操作を数回繰り返し、電子伝導体を形成した。
図30(b)のガラス製フォトマスクを用いたこと以外は、上記と同様な操作をすることにより、電解質体45のカソード側に、カーボンを主体とする粒子を転写し、電子伝導体を形成した。
表裏にアノード、カソード及び電子伝導体を形成した電解質体を蒸留水中で保存した。
図31及び図32の樹脂製の厚さ5mmの液体燃料供給部及び酸化剤供給部を用いて、電極が流路92と重なるように、上記の電解質体を挟み、集電板、絶縁板を用いずに、参考例1で使用したエンドプレート間に設置し、12個所で締め付けた。
これを鉛直方向に対してアノード部が上側、カソード部が下側となるように配置した後、液体燃料供給部に0.93mol/lのエタノール水溶液を流束3000μl/mm2・分で、酸化剤供給部に空気を流束1000ml/mm2・分で送ったところ、電解質体の表裏に形成した炭素層間に0.62Vの起電力が得られた。
エタノールにおいても電気化学デバイスとして機能することを確認すると共に、軽量で、加工性の良い樹脂製の液体燃料供給部及び酸化剤供給部を使用して、より軽く薄い形態とした本デバイスが電気化学デバイスとして機能することを確認した。また、空気を流した場合の圧力損失も拡散層がある場合より小さかった。
(参考例8)
アノード及びカソードの形成を参考例1の方法に変更した以外は、実施例7と同様に燃料電池を作製した。起電力は0.61Vであった。
(参考例9)
アノード用触媒として、白金−ルテニウム−タングステンの3元触媒を用い、アノード燃料として、0.93mol/lのエタノール水溶液を用いた以外は、参考例1と同様に燃料電池を作製した。起電力は、0.65Vであった。
(参考例10)
アノード用触媒として、白金−ルテニウム−モリブデンの3元触媒を用い、アノード燃料として、0.93mol/lのエタノール水溶液を用いた以外は、参考例1と同様に燃料電池を作製した。起電力は、0.65Vであった。
(参考例11)
アノード用触媒として、白金−ルテニウム−タングステン−スズの4元触媒を用い、アノード燃料として、0.93mol/lのエタノール水溶液を用いた以外は、参考例1と同様に燃料電池を作製した。起電力は、0.66Vであった。
(実施例12)
100mm×150mmのAl基板上にアモルファスセレン層を真空蒸着することにより、光半導体基板37を作製した。Alを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた(図17(a))。図33のガラス性フォトマスク(点線は、液体燃料供給部又は酸化剤供給部との接触境界を示す)を介して、セレン上にハロゲンランプ光を照射し、照射部の帯電電位を減衰させた(図17(b))。
アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金−ルテニウム触媒(アノード用触媒)を40重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を、負に帯電した帯電ローラ43(導電性ゴムローラー)を介して、先の光照射した光半導体上に塗布した(図17(c))。この後、正に帯電した帯電ローラ44(導電性ゴムローラー)で、ポリプロピレン製多孔質膜にNafion(商標)を充填した電解質体45をセレン上に接触させながら、ほぼ同時に電解質体45をセレン上から剥離させることにより、白金−ルテニウム触媒を担持したカーボンを主体とする粒子を電解質体に転写した(図17(d))。光半導体基板37をクリーングした後、同一の光半導体基板37を用いて、この操作を数回繰り返し、アノードを形成した。
アイソパーとイソプロピルアルコールの混合溶媒に、白金触媒(カソード用触媒)を50重量%担持したカーボンを5.45重量%、5重量%のNafion(商標)液をNafion(商標)の固形分率で2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を用いて、上記と同様な操作をすることにより、電解質体45のアノードが形成されていない面に、白金触媒を担持したカーボンを主体とする粒子を転写し、カソードを形成した。
光半導体基板37のAlを接地し、セレン上に帯電器38(スコロトロン)により、帯電電位約1kVで正に帯電させた。図34のガラス製フォトマスク(点線は、液体燃料供給部又は酸化剤供給部との接触境界を示す)を介して、セレン上にハロゲンランプ光を照射することにより、照射部の帯電電位を減衰させた。
アイソパーにカーボンを20重量%、電荷制御剤を微量、フッ素系結着樹脂を2重量%となるように添加し、分散処理を行った。
この液を、負に帯電した帯電ローラ43(導電性ゴムローラー)を介して、上記の光照射した光半導体上に塗布した。この後、正に帯電した帯電ローラ44(導電性ゴムローラー)で、電解質体45のアノード側をセレン上に接触させながら、ほぼ同時に電解質体45をセレン上から剥離させることにより、カーボンを主体とする粒子を電解質体45に転写した。光半導体基板37をクリーングした後、同一の光半導体基板37を用いて、この操作を数回繰り返し、電子伝導体を形成した。
上記と同様な操作をすることにより、電解質体45のカソード側に、カーボンを主体とする粒子を転写し、電子伝導体を形成した。
表裏にアノード、カソード及び電子伝導体を形成した電解質体を蒸留水中で保存した。
電解質体上に形成した表裏8箇所の電極に、カーボンペーパーからなる拡散層(厚さ200μm、28mm×28mm)を設置し、電解質体の表裏をテフロン(登録商標)製のシール部材(厚さ200μm、外寸80mm×80mm、内径4箇所29mm×29mm)で挟み、図31及び図32の樹脂製の厚さ5mmの液体燃料供給部及び酸化剤供給部で挟み、集電板、絶縁板を用いずに、参考例1で使用したエンドプレート間に設置し、12個所で締め付けた。電解質体の表裏に存在する8箇所の電子伝導体(カーボン層)を直列に接続した。
これを鉛直方向に対して、アノード部が上側、カソード部が下側となるように配置した後、液体燃料供給部に0.93mol/lのメタノール水溶液を流束3000μl/mm2・分で、酸化剤供給部に空気を流束1000ml/mm2・分で送ったところ、直列接続した端子間に2.69Vの起電力が得られ、高電圧化が可能であることを確認した。また、軽量で、加工性の良い樹脂製の液体燃料供給部及び酸化剤供給部を使用して、軽く薄い形態とした本デバイスが電気化学デバイスとして機能することを確認した。