以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
<硫黄酸誘導体構造を有する化合物>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層中に、2乃至10個の硫黄酸誘導体構造を有する化合物を含有する。また、該硫黄酸誘導体構造を有する化合物を複数種含有することが、電気特性のバランスがよくなる点で好ましい。
本発明における硫黄酸誘導体構造を有する化合物は、例えば、硫黄酸エステル構造に代表されるような、硫黄酸を由来とする硫黄酸誘導体構造を有するものであって、しかも該硫黄酸誘導体構造の個数が2乃至10個のものである。ここで本発明における硫黄酸とは、硫黄から誘導される酸成分であり、例えば、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸等が挙げられ、発明の効果を高める意義から、スルホン酸から誘導される化合物が好ましい。本発明においては、無機硫黄酸誘導体構造は、電気特性の悪化を招く場合があるため、有機硫黄酸誘導体構造を有することが好ましい。
本発明における硫黄酸誘導体構造を有する化合物は、2乃至10個の硫黄酸誘導体構造を有するが、電気特性と相溶性を鑑みた場合、好ましくは8個以下であり、より好ましくは6個以下であり、特に好ましくは4個以下である。ここで、本発明における硫黄酸誘導体構造の個数とは、上記硫黄酸(スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸等)に該当する最小構造部位の個数を表す。すなわち、硫黄酸誘導体構造の個数は、硫黄酸を構成する硫黄原子の個数に等しい。例えば、スルホン酸の酸無水物の場合は2個となる。
硫黄酸誘導体構造中の2乃至10個の硫黄酸は全て同一でも異なっていてもよい。例えば、3個の硫黄酸誘導体構造を有する場合、スルホン酸2個とスルフィン酸1個でもよいし、スルホン酸3個であってもよい。好ましくは、全て同一の硫黄酸構造を分子内に2乃至10個有する化合物である。
また、本発明においては、該硫黄酸誘導体構造が、硫黄酸エステル構造であることが好ましい。本発明に用いる硫黄酸誘導体構造を有する化合物においては、他の硫黄酸誘導体構造に比べて硫黄酸エステル誘導体構造を有する方が、電気特性の観点から優れていることによる。
「2乃至10個の硫黄酸誘導体構造を有する化合物」の有する硫黄酸誘導体構造の全てが硫黄酸エステル誘導体構造であってもよいし、硫黄酸誘導体構造の一部が硫黄酸エステル誘導体構造であってもよい。例えば、3個のスルホン酸誘導体構造を有する化合物の場合、3個の全てがスルホン酸エステル構造であってもよいし、1個がスルホン酸エステル構造であり2個がスルホン酸の酸無水物構造であってもよい。好ましくは、硫黄酸誘導体構造の全てが硫黄酸エステル誘導体構造を有する化合物の場合である。
本発明の電子写真感光体は、感光層中に、「2乃至10個の硫黄酸誘導体構造を有する化合物」を1種類有していてもよいが、前述した通り、複数種有していることも好ましい。感光層中に複数種有している場合、その複数種の全てが硫黄酸誘導体構造として硫黄酸エステル構造を有する化合物であってもよく、また、その複数種の一部が、硫黄酸誘導体構造として硫黄酸エステル構造を有する化合物であり、他の一部が、硫黄酸エステル構造ではない硫黄酸誘導体構造を有する化合物である場合であってもよい。好ましくは、その複数種の全てが硫黄酸エステル構造を有する化合物の場合である。
また、該硫黄酸誘導体構造を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。
[式(1)中、A及びR
1は炭素数30以下の有機基を表し、n
1は、2〜10の整数を表す。]
式(1)において、R1は、好ましくは炭素数15以下の有機基であり、更に好ましくは炭素数10以下の有機基である。また、R1は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基、又は、置換基を有してもよい縮合多環基であることが好ましい。
R1におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ステアリル基等が挙げられる。
R1における芳香族基としては、ベンゼノイド芳香族基、非ベンゼノイド芳香族基、複素芳香環基等が挙げられ、そのうちベンゼノイド芳香族基又は複素芳香環基が好ましい。また、R1における芳香族基が有する環の数は5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。R1におけるベンゼノイド芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン等の一価基が挙げられ、ベンゼン又はナフタレンの一価基が好ましい。また、非ベンゼノイド芳香族基としては、アズレン、フェロセン等の一価基が挙げられる。また、複素芳香環基としては、ピリジン、チオフェン、ピロール、キノリン、インドール等の一価基が挙げられ、ピリジン又はキノリンの一価基が好ましい。
R1における縮合多環基としては、縮合している環の数が5以下のものが好ましく、3以下のものが特に好ましい。具体的には、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、テトラリン、カルバゾール、アントラキノン等の一価基が挙げられ、ナフタレン又はアントラキノンの一価基が好ましい。
上記式(1)におけるAは、好ましくは炭素数20以下の有機基であり、より好ましくは炭素数15以下の有機基である。Aは、置換基を有してもよい芳香族基若しくは縮合多環基、又はそれらの基を構成する環が4個以下で連結した環集合基であることが特に好ましい。
Aにおける芳香族基としては、ベンゼノイド芳香族基、非ベンゼノイド芳香族基、複素芳香環基等が挙げられ、そのうちベンゼノイド芳香族基又は複素芳香環基が好ましい。Aにおける芳香族基が有する環の数は5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。ベンゼノイド芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン等の多価基が挙げられ、ベンゼン又はナフタレンの多価基が好ましい。また、非ベンゼノイド芳香族基としては、アズレン、フェロセン等の多価基が挙げられる。また、複素芳香環基としては、ピリジン、チオフェン、ピロール、キノリン、インドール等の多価基が挙げられ、ピリジン又はキノリンの多価基が好ましい。
Aにおける縮合多環基としては、縮合している環の数が5以下のものが好ましく、3以下のものが特に好ましい。具体的には、例えば、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、テトラリン、カルバゾール、アントラキノン等の多価基が挙げられ、ナフタレン又はアントラキノンの多価基が好ましい。
Aにおける上記「それらの基(芳香族基又は縮合多環基)を構成する環が4個以下で連結した環集合基」としては、硫黄酸誘導体構造を有する化合物の感光層に対する溶解性を考えた場合、それらの基を構成する環が3個以下で連結した環集合基が好ましく、2個が連結した環集合基が特に好ましい。「連結」とは、環同士が単結合で結合している状態をいう。
連結される「それらの基(芳香族基又は縮合多環基)」の例示及び好ましい範囲は、上記「芳香族基」や「縮合多環基」の箇所に記載したものと同様である。連結される「それらの基(芳香族基又は縮合多環基)」のうち、より好ましいものとしては、ベンゼン又はナフタレンの二価基が挙げられる。更には、それらが2個連結した、ジフェニレン基又はジナフタレン基が特に好ましい。
また、R1及びAは、置換基を有していてもよい。置換基としては、原子数20以下の置換基が好ましく、更に好ましくは原子数15以下の置換基である。置換基としては、具体的には、例えば、
アルキル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;
フェノキシ基等のアリールオキシ基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
ホルミル基;
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;
アセトキシ基等のアシルオキシ基;
メトキシスルホニル、エトキシスルホニル等のアルコキシスルホニル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基、ベンゼンスルホニル基、メシル基等のアシル基;
フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;
ニトロ基;シアノ基;アゾ基;
等が挙げられる。
また、R1及びAの有する置換基は、直接又は公知の連結基を用いて結合し、環構造を形成してもよい。
更に、これらの置換基は、原子数10以下の置換基を更に有していてもよい。この場合に有してもよい置換基としては、具体的には、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;
フェノキシ基等のアリールオキシ基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
ホルミル基;
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;
アセトキシ基等のアシルオキシ基;
メトキシスルホニル、エトキシスルホニル等のアルコキシスルホニル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基、ベンゼンスルホニル基、メシル基等のアシル基;
フッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;
ニトロ基;シアノ基;アゾ基;
等が挙げられる。
更に、R1及びAが有してもよい置換基としては、ハメット則における置換基定数σpが0以上であるものが好ましく、σpの値が0.3以上である基がより好ましく、σpの値が0.4以上である基が特に好ましい。一方、σpの値が大きすぎると、光疲労特性が悪化する場合があるので、0.7以下である基が好ましく、0.6以下である基が特に好ましい。該置換基はヘテロ原子を有していてもよい。
ここで、ハメット則とは、芳香族化合物における置換基が、芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則であって、置換基の電子供与/吸引の程度を定量化した値といえる。具体的な理論及び具体的な基の数値は、日本化学会編、「化学便覧
基礎編II 改訂4版」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、p.364〜365等に記載されており、以下に示す。
また、上記式(1)におけるn1は、2乃至10の整数を表し、感光層に使用する電荷輸送物質との組合せ適合性を考えた場合、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
また、本発明に係る硫黄酸誘導体構造を有する化合物には、ニトロ基、シアノ基等の置換基導入は、毒性(特に、急性毒性及び変異原生等の観点から)、光疲労による電気特性の悪化等の点から好ましくない場合がある。
また、本発明に係る硫黄酸誘導体構造を有する化合物は、感光体感度向上のため、本発明の電子写真感光体を露光する露光光の波長領域に、実質的な光吸収を有さないことが好ましい。ここで「実質的な光吸収を有さない」とは、本発明に係る硫黄酸誘導体構造を有する化合物を含有する層の、本発明の電子写真感光体を露光する露光光に対する光透過率が90%以上であることをいう。
また、本発明に係る式(1)の化合物においては、連結基等を用いて、多量体を作成してもよい。また、式(1)におけるAは、1分子中に2個の硫黄酸を有する化合物と、ジオール化合物等の「硫黄酸と反応する基を1分子中に2個有する化合物」とが、例えばエステル結合等によって縮合した多量体構造をしていてもよい。このようなものとしては、下記の例示化合物71〜例示化合物74のような化合物が挙げられる。この場合、化合物中の硫黄酸誘導体構造の個数には、式(1)中に直接表わされている硫黄酸誘導体構造の個数以外に、A中に存在する硫黄酸誘導体構造の個数も含まれる。
以下に本発明に係る硫黄酸誘導体構造を有する化合物の具体的な例を挙げるが、本発明に係る硫黄酸誘導体構造を有する化合物は、以下に例示する化合物に限定されない。以下、これらの各化合物を適宜、「例示化合物1〜例示化合物110」と表記する。
<電子吸引性化合物>
本発明の電子写真感光体は、下記によって定義される電子吸引性化合物を有することが好ましい。更に好ましくは、電気特性のバランスがよくなる点から、電子吸引性化合物を複数種含有することである。ここで、本発明の電子写真感光体が電子吸引性化合物を複数種含有するとは、下記によって定義される電子吸引性化合物のみを複数種含有する場合、上記硫黄酸誘導体構造を有する化合物が下記によって定義される電子吸引性化合物に該当する場合には、該硫黄酸誘導体構造を有する化合物を含む電子吸引性化合物全体で複数種である場合の何れの場合をも意味する。
本発明における電子吸引性化合物とは、LUMOのエネルギーレベルの値が、−1.0eVから−3.0eVの範囲である化合物のことをいう。LUMOのエネルギーレベルの値は、PM3パラメーターを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化による(以下、これを単に「半経験的分子軌道計算による」と略記する)。LUMOのエネルギーレベルの絶対値が1.0eVよりも小さくなると、電子吸引性の効果が小さくなり、本発明の効果を充分に発揮することが困難になる場合がある。また、LUMOのエネルギーレベルの絶対値が3.0eVを超えると、電子写真感光体の帯電性能が低下する場合がある。LUMOのエネルギーレベルの絶対値は、より好ましくは1.5eV以上であり、更に好ましくは1.7eV以上であり、特に好ましくは1.9eV以上である。また、2.7eV以下がより好ましく、より好ましくは2.5eV以下である。
好適に用いられる電子吸引性化合物としては、具体的には、例えば、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、有機シアノ化合物、ニトロ化合物、芳香族ハロゲン誘導体が挙げられるが、より好ましくは、スルホン酸エステル化合物又は有機シアノ化合物であり、更にはスルホン酸エステル化合物が特に好ましい。また、スルホン酸エステル構造を分子内に1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましく、更に好ましくは3個以上であって、10個以下が好ましく、更に好ましくは5個以下である。
以下に、本発明における代表的な電子吸引性化合物の具体例と、当該化合物のLUMOのエネルギーレベルの値を挙げるが、本発明における電子吸引性化合物は、これらに限定されるものではない。
以下、本発明の電子写真感光体の構成について述べる。
<導電性支持体>
本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性、表面性等の制御のためや欠陥被覆のために、適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより陽極酸化被膜が形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100〜300g/L、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/L、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行なうことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3〜6g/Lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25〜40℃、好ましくは30〜35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液pHは、4.5〜6.5、好ましくは5.5〜6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5〜20g/Lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80〜100℃、好ましくは90〜98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0の範囲で処理するのが好ましい。
ここでpH調節剤としては、アンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム支持体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な支持体が得られるので好ましい。
<下引き層形成用塗布液>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性やブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層であっても、複数層を設けてもかまわない。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
これらの金属酸化物粒子の中でも、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。
酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。これらの処理は何れか1種でもよく、2種以上が施されていてもよい。
酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れを用いることができる。なお、酸化チタン粒子は、その結晶型が1種類のみであってもよく、2種以上の結晶型が任意の組み合わせ及び比率で含まれていてもよい。
金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも下引き層の原料であるバインダー樹脂等の特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。この平均一次粒径は、TEM写真から計測によって求められたもので定義される。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性及び塗布性を示し、好ましい。
下引き層に用いられるバインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の混合比は任意に選べるが、通常はバインダー樹脂100重量部に対して、10重量部以上500重量部以下の範囲で使用することが、塗布液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、及び繰り返し特性、並びに製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
<電荷発生物質>
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであっても、若しくは電荷発生物質がバインダー中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものの何れであってもよい。本発明においては、必要に応じて、電荷発生物質、染顔料を使用することが好ましい。この具体例としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にはフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
使用されるフタロシアニンとしては、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、IIS型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
また、該オキシチタニウム二ロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましい。
また、該オキシチタニウムフタロシアニンにおいては、結晶内の塩素含有量が1.5質量%以下であることが好ましい。該塩素含有量は元素分析から求められる。
また、該オキシチタニウムフタロシアニン結晶内においては、下記式(3)で表される塩素化オキシチタニウムフタロシアニンの割合が、下記式(4)で表される無置換オキシチタニウムフタロシアニンに対して、マススペクトル強度比で、0.070以下であるものである。また、好ましくはマススペクトル強度比が0.060以下であり、より好ましくは0.055以下である。製造の際、非晶質化に乾式摩砕法を用いる場合は、0.02以上が好ましく、非晶質化にアシッドペースト法を用いる場合は、0.03以下が好ましい。塩素置換量は、特開2001−115054号公報の手法に基づいて測定する。
これらオキシチタニルフタロシアニンの粒子径は製法、結晶変換方法によって大きく異なるが、分散性を考慮すると、1次粒子径として、500nm以下が好ましく、塗布成膜性の面からは300nm以下であることが好ましい。
また、該オキシチタニウムフタロシアニンは、塩素化オキシチタニウムフタロシアニン以外に、例えば、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基を含有していても構わない。又はスルホン基等の置換基で置換された、各種オキシチタニウムフタロシアニン誘導体を含有してもよい。
また、アゾ顔料を併用する場合には、各種公知のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。好ましいアゾ顔料の例を下記式(5)に示す。下記式(5)において、Cp
1乃至、Cp
3は、カップラーを表す。
上記式(5)において、カップラーCp
1乃至Cp
3としては、以下の構造が好ましい。
機能分離型感光体における電荷発生層に用いられる結着樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることができるが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
結着樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、
トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、
ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、
グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、
アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン等の鎖状、分岐及び環状ケトン系溶媒、
ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、
塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、
ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状及び環状エーテル系溶媒、
アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、
n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、
リグロイン等の鉱油、
水、
等が挙げられ、前述した下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、又は2種以上を併用しても用いることが可能である。
機能分離型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダー樹脂100重量部に対して10重量部〜1000重量部、好ましくは30重量部〜500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1μm〜4μm、好ましくは0.15μm〜0.6μmである。電荷発生物質の比率が高すぎる場合は電荷発生物質の凝集等の問題により塗布液の安定性が低下し、一方低すぎる場合は感光体としての感度の低下をまねくことから、前記範囲で使用するのが好ましい。前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法、超音波分散法等の公知の分散方法を用いることができる。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
<電荷輸送物質>
導電性支持体上に形成された感光層としては、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散された単層構造のものであっても、若しくは電荷発生物質がバインダー中に分散された電荷発生層と電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散された電荷輸送層とに機能分離された積層構造のものの何れであってもよいが、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。該電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける本発明は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
使用する電荷輸送物質としては、任意の公知の電荷輸送物質を使用できる。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
本発明においては、アリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物を使用する場合に、本発明の効果が大きく現れる点で好ましい。前記電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に示す。下記の化合物において、Rは同一でも、それぞれ異なっていても構わない。具体的には、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アリールアルキル等が好ましい。特に好ましくは、メチル基、エチル基又はベンジル基である。また、nは0乃至2の整数である。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りは如何なる公知の電荷輸送物質を用いてもよい。
<バインダー樹脂>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層及び単層型感光体の感光層形成の際は、膜強度確保のため、化合物を分散させるためバインダー樹脂が使用される。機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散してえられる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることができる。バインダー樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は珪素試薬等で修飾されていてもよい。上記バインダー樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂の中でも、下記構造式を有するビスフェノール、又はビフェノール成分が含有されるポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が感度、残留電位等の点から好ましく、なかでも移動度の点からポリカーボネート樹脂がより好ましい。ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂は、一般的に、ジオール成分の部分構造を有する。これらの構造を形成するジオール成分としては、ビスフェノール残基、ビフェノール残基等が挙げられる。
その具体例としては、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[フェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,6−ジメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビスメチレン]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビス−[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸ステアリルエステル、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタルレイン、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビスフェノール、4,4'−[1,4−フェニレンビス(1−メチルビニリデン)]ビス[2−メチルフェノール]、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等のビスフェノール成分、4,4’−ビフェノール、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ−(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェノール成分等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂に好適に用いることのできるビスフェノール、ビフェノールの構造を以下に例示する。本例示は、本発明の趣旨を明確にするために行うものであり、本発明の趣旨に反しない限りは例示される構造に限定されるものではない。
特に、本発明の効果を最大限に発揮するためには、以下構造を示すビスフェノール誘導体を含有するポリカーボネートが好ましい。
また、ポリエステル樹脂を形成する酸成分としては、以下の構造を有するものを用いることが好ましい。
特に好ましい酸成分は、電気特性、耐磨耗性等の観点から、以下の構造を有するものである。
また、ポリエステル樹脂に用いられるジオールとしては、前記したポリカーボネート樹脂に用いられるジオールが使用可能である。中でも特に、下記構造のジオールを繰り返し単位構造として有するポリアリレート樹脂であることが好ましい。
これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、複数種組み合わせて用いることも可能である。バインダー樹脂の分子量は、低すぎると機械的強度が不足し、逆に分子量が高すぎると感光層形成のための塗布液の粘度が高すぎて生産性が低下するといった不具合が生じる場合があるため、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリアリレート樹脂を含む)の場合、粘度平均分子量で10,000以上が好ましく、特に好ましくは20,000以上である。また、70,000以下が好ましく、特に好ましくは50,000以下である。粘度平均分子量は、実施例に記載されている測定方法で測定し、それによって定義される。
積層型感光体の電荷輸送層及び単層型感光体の感光層に使用されるバインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、単層型、積層型共に、通常、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質が20重量部以上であって、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、繰り返し使用時の安定性、電荷移動度の点から、40重量部以上がより好ましい。また、一方で感光層の熱安定性の点から、通常は150重量部以下、電荷輸送物質とバインダー樹脂の相溶性の点からは好ましくは120重量部以下、耐刷性の点からは100重量部以下がより好ましく、耐傷性の点からは80重量部以下が特に好ましい。
単層型感光体の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、更に前記の電荷発生物質が分散される。その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質は少なすぎると、充分な感度が得られない場合があったり、一方、多すぎると、帯電性の低下、感度の低下等の弊害が生じる場合がある。例えば、好ましくは0.1〜50質量%の範囲、特に好ましくは1〜20質量%の範囲で使用される。
単層型感光体の感光層の膜厚は、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲で使用され、順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲で用いられるが、長寿命、画像安定性の点からは、好ましくは10〜45μm、高解像度の点からは10〜30μmがより好ましい。
なお、感光層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加剤を含有させてもよい。また感光層には必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコ−ンオイル、フッ素系オイル等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−チオエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、1−[2−{(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−[3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペラジル、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を挙げることができる。
中でも、分子中のフェノール環にt−ブチル基を1個以上有するものが好ましく、特にその中でも、そのt−ブチル基がフェノール性水酸基の隣接した位置に結合したものがより好適である。その具体例を挙げると、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のポリフェノール系酸化防止剤等が好適である。
また、耐酸性ガス性を向上させるために、特開平3−172852や特開2007−52408に示されるような置換基を有してもよいアルキルアミン化合物を用いることが出来る。それらの中でも、例えば、トリベンジルアミンを好適に用いることができる。
感光体の最表面層には、感光層の損耗を防止したり、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。導電性材料としては、TPD(N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のような、トリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と、上記樹脂の共重合体を用いることもできる。上記保護層は電気抵抗が109〜1014Ω・cmとなるように構成することが好ましく。電気抵抗が1014Ω・cmより高くなると残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまい、一方109Ω・cmより低くなると画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等を含んでいてもよい。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいてもよい。
<層形成方法>
感光体を構成する各層は、各層を構成する材料を含有する塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。
層形成用の塗布液は、単層型感光体及び積層型感光体の電荷輸送層の場合には、固形分濃度を、通常5〜40質量%の範囲で用いられるが、10〜35質量%の範囲で使用するのが好ましい。また、該塗布液の粘度は、通常10〜500mPa・sの範囲で用いられるが、50〜400mPa・sの範囲とするのが好ましい。
積層型感光体の電荷発生層の場合には、固形分濃度を、通常0.1〜15質量%の範囲で使用されるが、1〜10質量%の範囲で使用することがより好ましい。塗布液の粘度は、通常0.01〜20mPa・sの範囲で使用されるが、0.1〜10mPa・sの範囲で使用されることがより好ましい。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は室温における指触乾燥後、30〜200℃の温度範囲で、1分から2時間の間、無風、又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また加熱温度は一定であっても、乾燥時に変更させながら行なってもよい。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが好ましい。
本発明においては、前記のように、帯電手段が前記電子写真感光体に接触配置した場合に、その効果が顕著に発揮される点で、この構成が好ましい。
そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜600nmの短波長の単色光等で露光を行なえばよい。これらの中でも波長380nm〜600nmの短波長の単色光等で露光することが好ましく、より好ましくは波長380nm〜500nmの単色光で露光することである。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44及び規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロール等からなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。ここでは、接触方式の例を示しているが、非接触の方式もあり、これにはジャンピング現像が挙げられる。
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅等の金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
また、本発明において、トナーは、特に乳化重合凝集法によるトナーが好ましい。好ましい物性値としては、特開2007−213050号公報に示された方法で測定し、平均円形度は0.940以上が好ましく、1.000以下が特に好ましく、体積平均粒径(Dv)を個数平均粒径(Dn)で除した値(Dv/Dn)は、1.00以上1.20以下が好ましい。例えば、上記公開公報の製造例に示された現像トナーAを好適に用いることができる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙,媒体)Pに転写するものである。本発明においては、転写装置55が転写材を介して感光体に接触配置される場合に効果的である。一旦、転写ベルト等の媒体を介した後に紙に転写する方式は、中間転写方式と呼ばれる。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くてもよい。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71、72は、ステンレス,アルミニウム等の金属素管にシリコーンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等が公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71、72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着等、任意の方式による定着装置を設けることができる。
<画像形成方法>
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させてもよく、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としてもよい。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程等の工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例及び参考例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
<製造例1:例示化合物1の製造>
フェノール7.5gをピリジン20mL中に溶解させた。4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリド10.5gを少しずつ添加し、50℃で、3時間攪拌した。放冷後、水100mLを添加して、析出した固体を濾過した。濾物をメタノール50mLで懸洗した後、減圧下乾燥した。得られた白色固体をカラムクロマトグラフィーにより精製した(固定相:シリカゲル、移動相:塩化メチレン)。減圧蒸留後の残渣を、塩化メチレン30mLに溶解させ、これをヘキサン100mL中に放出した。1時間攪拌後、析出した固体を濾過して、減圧下乾燥し、例示化合物1を得た。質量分析(m/z):M+=466(理論値:466)及び元素分析(C24H18O6S2):C,61.69;H,3.73;S,13.63(理論値:C,61.79;H,3.89;S,13.75)より構造を確認した。
<製造例2:例示化合物3の製造>
p−ヒドロキシ安息香酸メチル7.6g、トリエチルアミンン20mLをテトラヒドロフラン40mL中に溶解させた。4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリド7gを少しずつ添加し、40℃で、3時間攪拌した。放冷後、水100mLを添加して、析出した固体を濾過した。濾物をメタノール50mLで懸洗した後、減圧下乾燥した。得られた白色固体をカラムクロマトグラフィーにより精製した(固定相:シリカゲル、移動相:塩化メチレン)。減圧蒸留後の残渣を、塩化メチレン30mLに溶解させ、これをヘキサン100mL中に放出した。1時間攪拌後、析出した固体を濾過して、減圧下乾燥し、例示化合物3を得た。質量分析(m/z):M+=550(理論値:550)及び元素分析(C28H22O8S2):C,61.01;H,4.12;S,11.43(理論値:C,61.08;H,4.03;S,11.65)より構造を確認した。
<製造例3:例示化合物21の製造>
4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリドの代わりに、1,3−ベンゼンジスルホニルクロライドを使用する以外は、製造例1と同様にして、例示化合物21を得た。質量分析(m/z):M+=390(理論値:390)及び元素分析(C18H16O5S2):C,55.28;H,3.72;S,16.32(理論値:C,55.37;H,3.61;S,16.43)より構造を確認した。
<製造例4:例示化合物73の製造>
フェノール7g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン0.5gをピリジン20mL中に溶解させた。4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリド10.5gを少しずつ添加し、50℃で、3時間攪拌した。放冷後、水100mLを添加して、析出した固体を濾過した。濾物をメタノール50mLで懸洗した後、減圧下乾燥した。得られた白色固体をカラムクロマトグラフィーにより精製した(固定相:シリカゲル、移動相:塩化メチレン)。減圧蒸留後の残渣を、塩化メチレン30mLに溶解させ、これをヘキサン100mL中に放出した。1時間攪拌後、析出した固体を濾過して、減圧下乾燥し、例示化合物73を得た。TOF−MALDI法により分子量の測定をしたところ、n=0〜3の混合物であることを確認した。ピーク強度比は、85(n=0):9(n=1):4(n=2):1(n=3)であった。
実施例1
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの重量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒及び特開平4−31870号公報の実施例に記載された、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液Aを作製した。
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを支持体として用い、上記下引き層形成用分散液Aを、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、下引き層を設けた。
次に、電荷発生物質として、図2のX線回折スペクトルで示されるオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタンの255部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの85部の混合液に溶解させて得られたバインダー液及び230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液(電荷発生層用)を調製した。下引き層を設けたフィルムの上に、上記の電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布して乾燥し、電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として下記化合物CT−1を70部と、バインダー樹脂として下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(PC−1:粘度平均分子量約30,000;m:n=1:1)100部、
下記式で表される酸化防止剤16部、
製造例1で合成した例示化合物1を1部及びレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を、上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、積層型感光層を有する電子写真感光体E1を得た。
実施例2
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物2を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体E2を得た。
実施例3
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物21を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体E3を得た。
実施例4
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物73を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体E4を得た。
比較例1
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物1を使用しない以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P1を得た。
比較例2
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、下記比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P2を得た。
比較例3
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、下記比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P3を得た。
比較例4
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、下記重合物(Mv=10000)を用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体P4を得た。相溶性が悪く、感光体が白濁していた。
実施例5
実施例1と同様に形成した下引き層及び電荷発生層上に、下記に示す電荷輸送層塗布液を塗布して24μmの電荷輸送層を設け、積層型感光層を有する電子写真感光体E5を得た。
電荷輸送層塗布液:電荷輸送物質として下記化合物CT−2を40部とCT−3を30部、バインダー樹脂として下記構造を繰り返し単位として持つポリカーボネート(PC−2:粘度平均分子量約40,000)100部、
下記構造を有する酸化防止剤8部、
製造例2で合成した例示化合物3を2部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン=8/2(重量比)の混合溶媒640部に溶解させ、電荷輸送層塗布液を調製した。
実施例6
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を用いる代わりに、例示化合物21を用いる以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体E6を得た。
実施例7
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を用いる代わりに、例示化合物63を用いる以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体E7を得た。
比較例5
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物3を使用しない以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体P5を得た。
比較例6
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を用いる代わりに、比較例2で使用した比較化合物Aを用いる以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体P6を得た。
<電気特性と耐光性の評価−1>
実施例及び比較例において作製した電子写真感光体を、電子写真学会標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)に装着し、以下の手順に従って、帯電(マイナス極性)、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性の評価を行なった。
感光体の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器を用いて、それぞれの感光体を−700Vに帯電させ(V0=700)、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光とした露光光を照射して、表面電位が−350Vとなるのに要した照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として測定した(単位「μJ/cm2」)。また、該露光光を0.8μJ/cm2の強度として照射したときの100ms後の露光後表面電位(VL1)を測定した(単位「−V」)。また、初期表面電位を−700Vにした後、暗所で5秒間放置した後の表面電位を測定し、その差を暗減衰(DD)とした。これらの結果を下記表2にまとめて示す。
実施例1〜4及び実施例5〜7の電子写真感光体は、比較例1及び比較例5と比較するとわかるように、硫黄酸誘導体構造を有する化合物の添加により、電気特性は悪化していない。また、他の硫黄酸誘導体構造を有する化合物と比較して、電気特性は良好であり、好適な電子写真感光体であった。
<耐強光性能テスト−1>
続いて、得られた電子写真感光体に(電気特性が特に悪かったP4を除いた)、白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFK20SS・W/18)の光を、電子写真感光体表面での光強度が2000ルックス(lx)になるように調整して10分間照射した後(以下、「強光照射後」と略記する)、上記<電気特性と耐光性の評価−1>と同様にして、VL1(単位「−V」)の測定を行った。「VL1(強光照射後)−VL1(強光照射前)」の値を「ΔVL」(単位「−V」)とする。
また、得られた電子写真感光体に強光照射後、上記<電気特性と耐光性の評価−1>と同様に設定された帯電器(すなわち、強露光照射前の感光体の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器)を用いて、それぞれの感光体を帯電させた。強光照射後の感光体の初期表面電位(−V0)におけるV0を、「V0(強光照射後)」とするとき、「ΔV0」を以下のように定義する。
ΔV0=V0(強光照射後)−V0(強光照射前)
=V0(強光照射後)−700
例えば、下記表3の実施例3の場合、強光照射後の感光体の表面電位は、−699[V]になったので、V0(強光照射後)=699[V]であるから、
ΔV0=699−700
=−1[V]
となる。
また、強光照射後一日放置した後、上記装置で−700Vの帯電と約8μJ/cm2強度の除電サイクルを5000回繰り返した後に、同様にして表面電位(−VL1)の測定を行った。
[(強光照射、1日放置、繰り返し後のVL1)−VL1(強光照射前)] の値を、
「電気特性変化(強光照射、1日放置、繰り返し後)ΔVL」として、表3の最右欄に示す。
何れの値も、変化量の小さい電子写真感光体の方が、強い光に暴露された場合でも特性変化が小さいことを示し、感光体の電気特性として耐強光性能が優れていることを示す。
実施例8
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを支持体として用い、下記電荷発生層用分散液を、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、電荷発生層を設けた。次に下記の電荷輸送層用液を調製し、電荷発生層上に乾燥後の膜厚が19μmとなるように電荷輸送層を設け、電子写真感光体E8を得た。
電荷発生層用分散液:電荷発生物質として図3のX線回折スペクトルで示されるオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで4時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタンの255部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの85部の混合液に溶解させて得られたバインダー液及び230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液(電荷発生層用)を調製した。
電荷輸送層用液:電荷輸送物質として下記化合物CT−4を56部と、下記化合物CT−5を14部、バインダー樹脂として実施例1に記載のPC−1を100部、実施例5で使用した酸化防止剤8部、製造例2で合成した例示化合物3を3部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させて電荷輸送層用液を調製した。
実施例9
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を3部用いる代わりに、例示化合物49を0.1部用いる以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体E9を得た。
実施例10
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を用いる代わりに、例示化合物63/例示化合物83/例示化合物93(67.2/14.5/18.3)の混合物を用いる以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体E10を得た。
比較例7
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物3を使用しない以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体P7を得た。
比較例8
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物3の化合物を用いる代わりに、下記構造の比較化合物Cを3部用いる以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体P8を得た。
<電気特性と耐光性の評価−2>
上記の実施例及び比較例の電子写真感光体について、前記の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器を有する電子写真評価装置を使用し、以下の手順に従って電気特性と耐光性の評価を行った。
電子写真感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光とした露光光を照射し、表面電位が−350Vとなるのに要した照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として測定した(単位は「μJ/cm2」)。また、該露光光を4.8μJ/cm2の強度で照射したときの200ms後の露光後表面電位(VL1)を測定した(単位は「−V」)。また、初期表面電位を−700Vにした後、暗所で5秒間放置した後の表面電位を測定し、その差を暗減衰(DD)とした。これらの結果をまとめて下記表4に示す。何れの電子写真感光体も良好な電気特性を有していた。
<耐強光性能テスト−2>
続いて、白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFK20SS・W/18)の光を、電子写真感光体表面での光強度が2000ルックス(lx)になるように調整して10分間照射した後、上記<電気特性と耐光性の評価−2>と同様に設定された帯電器(すなわち、強光照射前の感光体の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器)を用いて感光体を帯電させた。前記の<耐強光性能テスト−1>と同様に測定し、「ΔV0」と「ΔVL」(単位「−V」)を定義した時の値を表5に示す。
また、強光照射後、更に当該電子写真感光体を、温度25℃相対湿度50%の暗所で1日放置後、上記装置で−700Vの帯電と約15μJ/cm2強度の除電のサイクルを5000回繰り返した後に、<耐強光性能テスト−2>と同様にして、表面電位(−VL1)の測定を行った。
[(強光照射、1日放置、繰り返し後のVL1)−VL1(強光照射前)] の値を、
「電気特性変化(強光照射、1日放置、繰り返し後)ΔVL」として、表5の最右欄に示す。
変化量の小さい電子写真感光体の方が、強い光に暴露された場合でも特性変化が小さいことを示し、電子写真感光体の電気特性として、耐強露光性能が優れたものであるといえる。
実施例8〜10の電子写真感光体は、繰り返しでの電位変動がよく抑えられていることが分かった。
実施例11
膜厚75μmのポリエステルフィルム上にアルミニウムを蒸着させたものを支持体として用い、この上に下記の電荷発生層塗布液を乾燥後の膜厚が0.4g/m2(約0.4μm)となるようにワイヤーバーで塗布して乾燥し、電荷発生層を形成した。その上に下記の電荷輸送層塗布液をアプリケーターで塗布し、室温で30分間、次いで125℃で20分間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を有する電子写真感光体E11を得た。
電荷発生層用塗布液;
下記式(CG−1)に示される電荷発生物質1.5部に、1,2−ジメトキシエタン30部を加え、サンドグラインドミルで8時間粉砕し、微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)0.75部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製品、PKHH)0.75部を1,2−ジメトキシエタン28.5部に溶解したバインダー溶液と混合し、最後に1,2−ジメトキシエタンと4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの任意混合液13.5部を加えて、固形分濃度4.0質量%の電荷発生層塗布液を調整した。
電荷輸送層用塗布液;
下記式(CT−6)で代表される幾何異性体の混合物からなる電荷輸送物質40部と、上記式(CT−4)で示される電荷輸送物質50部、上記式(PC−1)で示されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量約30,000;m:n=1:1)100部、実施例5で使用した酸化防止剤を8部、製造例1で合成した例示化合物1を2部、及びレベリング剤としてシリコーンオイル(商品名 KF96 信越化学工業(株))0.05部を、テトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させて電荷輸送層用液を調製した。
実施例12
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物23を用いる以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体E12を得た。
実施例13
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物63/例示化合物83/例示化合物93(67.2/14.5/18.3)の混合物を用いる以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体E13を得た。
比較例9
硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物1を使用しない以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体P9を得た。
比較例10
硫黄酸誘導体構造を有する化合物の例示化合物1を用いる代わりに、下記構造の比較化合物Dを1.5部用いる以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体P10を得た。
<電気特性と耐光性の評価−3>
上記の実施例及び比較例の電子写真感光体について、前記の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器を有する電子写真評価装置を使用し、以下の手順に従って電気特性と耐光性の評価を行った。
電子写真感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を照射し、表面電位が−350Vとなる時の照射エネルギー(半減露光エネルギー)を感度(E1/2)として求めた(lx・sec)。また、該露光光を6.1lx・secの強度で照射したときの70ms後の露光後表面電位(VL1)を測定した(−V)。また、初期表面電位を−700Vにした後、暗所で5秒間放置した後の表面電位を測定し、その差を暗減衰(DD)とした。これらの結果を表6にまとめた。実施例、比較例何れの感光体も良好な特性であった。
<耐強光性能テスト−3>
続いて、耐強光性能テストとして、白色蛍光灯(三菱オスラム社製ネオルミスーパーFK20SS・W/18)の光を、電子写真感光体表面での光強度が2000ルックスになるように調整して10分間照射した後、強光照射前の感光体の初期表面電位(−V0)が−700Vになるように設定された帯電器を用いて感光体を帯電させた。前記の<耐強光性能テスト−1>と同様に測定し、「ΔV0」と「ΔVL」(単位「−V」)を定義した時の値を表7に示す。
また、強光照射後、更に当該電子写真感光体を、一日放置後、上記装置で−700Vの帯電と約50lx・sec強度の除電サイクルを5000回繰り返した後に、<耐強光性能テスト−3>と同様にして、表面電位(−VL1)の測定を行った。
[(強光照射、1日放置、繰り返し後のVL1)−VL1(強光照射前)] の値を、
「電気特性変化(強光照射、1日放置、繰り返し後)ΔVL」として、表7の最右欄に示す。
変化量の小さい電子写真感光体の方が、強い光に暴露された場合でも特性変化が小さいことを示し、電子写真感光体の電気特性として、耐強露光性能が優れたものであるといえる。
以上のように、2乃至10個の硫黄酸誘導体構造を有する化合物、そのうちでも特に、下記式(1)で表される化合物を含有する感光層を有する感光体は、感度、VL1、DDに代表される電気特性がバランスよく良好であって、しかも強い光に暴露された場合でも比較例の感光体に比較して、ΔV0、ΔVL(強光照射直後)、ΔVL(強光照射後、1日放置、繰り返し後)の絶対値が小さく、バランスがよく良好であることが分かった。
[式(1)中、A及びR
1は炭素数30以下の有機基を表し、n
1は2〜10の整数を表す。]
<画像評価試験>
実施例14
表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径20mm、長さ251mmのアルミニウム円筒体上に、実施例1、2と同様にして作製した下引き層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、及び電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥して、下引き層の膜厚が1.5μm、電荷発生層の膜厚が0.3μm、電荷輸送層の膜厚が15μmの電子写真感光体ドラムを作製した。
これらの電子写真感光体ドラムを、富士ゼロックス社製タンデム型カラーレーザープリンターC1616に4本搭載し、画像形成試験を行ったところ、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次いで、1万枚連続プリントを行ったが、リーク、ゴースト、カブリ、濃度低下等の画像劣化は見られず、安定していた。上記と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作成し、画像形成試験を行ったところ、画像形成の初期には、画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られたが、1万枚連続プリントを行ったところ、画像の濃度低下が確認された。
実施例15
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行うことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。このシリンダーを、実施例8と同様に作製した電荷発生層用分散液を浸漬塗布法により塗布し、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように、電荷発生層を形成した。
次に、硫黄酸誘導体構造を有する化合物として、例示化合物1の化合物を用いる代わりに、例示化合物63/例示化合物83/例示化合物93(67.2/14.5/18.3)の混合物を3重量部用いる以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液を作製した。この液を、先に作製した電荷発生層上に浸漬塗布することにより、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を形成し、電子写真感光体ドラムを作製した。
作製した感光体ドラムを、エプソン社製カラーレーザープリンターLP2000C(4サイクル、スコロトロン帯電、レーザー露光、ジャンピング現像)に搭載し、初期及び6000枚画像形成を行ったところ、何れも画像欠陥やノイズの無い、良好な画像が得られた。次に、感光体ドラムに白色蛍光灯(HITACHIハイホワイトFL−15NG)の光を、電子写真感光体表面での光強度が1000ルックス(lx)になるように調整して10分間照射した後に画像形成したが、ゴースト、カブリ、濃度低下等の画像劣化のない良好な画像が得られた。
実施例16
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ285mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダー上に、実施例1と同様にして作製した下引き層形成用分散液を、浸漬塗布法により塗布し、乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように、下引き層を形成した。
次に、実施例15と同様の電荷発生層、電荷輸送層を形成し、同様の画像評価試験を行ったが、初期、繰返し画像形成後、白色蛍光灯による光照射後も画像劣化のない良好な画像が得られた。
比較例11
実施例15において、硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物63/例示化合物83/例示化合物93(67.2/14.5/18.3)の混合物を用いる代わりに、比較化合物Aを用いた以外は、実施例15と同様にして感光体ドラムを作製した。同様に画像評価を行ったところ、白色蛍光灯による光照射後のハーフトーン画像に著しい濃度上昇が見られた。
比較例12
実施例16において、硫黄酸誘導体構造を有する化合物として例示化合物63/例示化合物83/例示化合物93(67.2/14.5/18.3)の混合物を用いる代わりに、比較化合物Aを用いた以外は、実施例16と同様にして感光体ドラムを作製した。同様に画像評価を行ったところ、白色蛍光灯による光照射後のハーフトーン画像に著しい濃度上昇が見られた。