図15は、本発明の実施形態に係わる基地局20の主要部の一例を示すブロック図である。基地局20は、通信手段22と、変更手段24とを備える。通信手段22は、移動局と通信を行う。変更手段24は、所定の条件に応じて基地局20の状態を変更する。この変更手段24は、移動局と通信可能なアクティブ状態、移動局と通信を行わない電波送受信停止状態、および、移動局から他の基地局への送信信号を受信して該送信信号の受信状況を測定する電波受信測定状態の間で、基地局の状態を遷移させる。
具体的には、例えば、アクティブ状態にある基地局20は、自基地局および他の基地局における負荷が低い場合、アクティブ状態から電波送受信停止状態に遷移する。一方、自基地局における負荷が低く、且つ他の基地局の負荷が高い場合、基地局20は、アクティブ状態から電波受信測定状態に遷移する。また、他の基地局における負荷が高い場合、基地局20は、電波送受信停止状態から電波受信測定状態に遷移する。また、他の基地局における負荷が低い場合、基地局20は、電波受信測定状態から電波送受信停止状態に遷移する。また、他の基地局における負荷が高く、さらに、移動局の他の基地局への送信信号の基地局20における受信電力が閾値よりも高い場合、基地局20は、アクティブ状態へ遷移する。
以上説明したように、基地局20は、自己の状態を上記3つの状態の間できめ細かに遷移させるので、基地局20における電力消費を抑制し、且つ基地局間の電波干渉を回避することが可能となる。
以下、本発明の他の複数の実施形態について具体的に説明する。尚、以下の各実施形態では、制御信号の一例として所定パターンの信号を継続的に繰返し送信する共通制御信号であるパイロット信号を用いた場合について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの一例を示す構成図である。この無線通信システムは、基地局1(第1の基地局、または他の基地局とも言う)と、基地局2(第2の基地局)と、移動局100〜102と、無線ネットワーク制御装置(以下、RNC(Radio Network Controller)と言う)200とを備える。基地局1は、セル11内の移動局に対してパイロット信号の送信を行い、パイロット信号を受信した移動局100〜102はそれぞれ受信したパイロット信号を基に基地局1と各々に無線リンク1100〜1102にて通信を行う。基地局2は、セル12内において、移動局(例えば、図1における移動局100)と通信を行うことができる。ここで、セル11およびセル12は、各々の少なくとも一部がオーバーラップしている。RNC200は、回線2001を通じて基地局1と接続されるとともに、回線2002を通じて基地局2と接続される。RNC200は、基地局1および基地局2を管理する。ここで、回線2001および2002は、有線回線でも無線回線でもよく、以下の説明では有線回線として説明する。
図2は、図1に示す第1の基地局としての基地局1の一例を示すブロック図である。基地局1は、ネットワーク通信部300と、RF(RadioFrequency)部302と、受信信号処理部304と、送信信号処理部306と、アンテナ308と負荷管理部400を備える。ネットワーク通信部300は、回線2001によりRNC200と通信を行う。RF部302は、無線リンク1100〜1102により各移動局100〜102と通信を行う。受信信号処理部304は、RF部302が移動局100〜102から受信した信号を処理する。送信信号処理部306は、移動局100〜102へ送信する為の信号を処理し、処理した信号をRF部302へ出力する。アンテナ308は、移動局100〜102と無線通信を行う為に空間に電波を放射し、あるいは、空間を伝わって来た電波を捕捉する。負荷管理部400は、基地局1がサポートする移動局の通信トラフィックや移動局の数を、受信信号処理部304と送信信号処理部306から負荷情報として取得する。
図3は、図1に示す第2の基地局としての基地局2の一例を示すブロック図である。基地局2は、ネットワーク通信部350と、RF部352と、受信信号処理部354と、送信信号処理部356と、状態遷移制御部358と、電力制御部360と、アンテナ362と、移動局信号推定部364と、負荷管理制御部369で構成される。
ここで、上述した変更手段24は、所定条件を認知する条件認知手段(例えば、移動局信号推定部364および負荷管理制御部369)と、認知された所定条件に応じて基地局2の状態を上記各状態の内の一方の状態から他方の状態へ遷移させる状態遷移制御手段(例えば、状態遷移制御部358および電力制御部360)とを備える。
ネットワーク通信部350は、回線2002によりRNC200と通信を行う。RF部352は、無線リンクにより移動局100〜102と通信を行う。受信信号処理部354は、RF部352が移動局100〜102から受信した信号を処理する。送信信号処理部356は、移動局100〜102へ送信する為の信号を処理し、処理した信号をRF部352へ出力する。アンテナ362は、移動局100〜102と無線通信を行う為に空間に電波を放射し、あるいは、空間を伝わって来た電波を捕捉する。
状態遷移制御部358は、ネットワーク通信部350、移動局信号推定部364、または負荷管理制御部369からの情報または指示に基づいて、基地局2の状態遷移を制御する。電力制御部360は、状態遷移制御部358からの命令に基づいて、受信信号処理部354と送信信号処理部356と移動局信号推定部364の電源のオンオフとRF部352における送信電力の制御とその電源のオンオフ制御を実行する。
移動局信号推定部364は、基地局2が後述するようにアクティブ状態において電波送受信停止状態または電波受信測定状態へ移行する手順を行う場合、および電波受信測定状態の場合に、RF部352から受信した信号(例えば、電波)から、周辺の移動局100〜102の送信信号の検出を行う。送信信号の検出方法の一例として、例えば、受信電力から信号の検出を行う手法がある。
負荷管理制御部369は、基地局2のサポートする移動局の通信トラフィックやセル12内の移動局の数を、受信信号処理部354やネットワーク通信部350から負荷情報として取得する。さらに、負荷管理制御部369は、基地局1における負荷情報を、ネットワーク通信部350を介してRNC200あるいは基地局1から取得する。
図4は、第2の基地局としての基地局2の状態遷移についての説明図である。基地局2は、図4に示すように、3つの動作状態を有する。第1の状態は、基地局2がセル12内に在圏する移動局(例えば図1における移動局100)との間で無線信号の送受信することが可能なアクティブ状態St_1である。
第2の状態は、基地局2における無線送受信機能である、RF部352、送信信号処理部356、受信信号処理部354、移動局信号推定部364を停止し、基地局2からの電波送信、および移動局からの送信信号に対する電波受信を行わず、セル12内にある移動局と無線通信を行わない電波送受信停止状態St_2である。
第3の状態は、無線受信機能である、RF部352と移動局信号推定部364を用いて、周囲の雑音電力の測定を行う電波受信測定状態である。
例えば、基地局2は、以下に説明する条件Tr_12、Tr_23、Tr_32、Tr_13、Tr_31に基づき各状態間の遷移を行う。基地局2がアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ遷移する条件Tr_12は、例えば、基地局2における通信中の移動局(例えば、図1における移動局100)の通信が切断され、基地局2と接続する移動局が存在しなくなり、かつ他の基地局(例えば図1における基地局1)における負荷が閾値以下であった場合である。
基地局2が電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移する条件Tr_23は、例えば、他の基地局における負荷が閾値以上になった場合である。逆に、電波受信測定状態St_3から電波送受信停止状態St_2へ遷移する条件Tr_32は、例えば、他の基地局における負荷が閾値以下になった場合である。
基地局2が電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する条件Tr_31は、例えば、基地局2の移動局信号推定部364により、移動局(例えば、図1における移動局100)の他の基地局(例えば、図1における基地局1)への送信信号の基地局2における受信電力が所定の閾値より高いと判定された場合である。逆に、アクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3へ遷移する条件Tr_13は、例えば、基地局2における通信中の移動局(例えば、図1における移動局100)の通信が切断され、基地局2と接続する移動局が存在しなくなり、かつ他の基地局(例えば、図1における基地局1)における負荷が閾値以上であった場合である。
図5は、第2の基地局としての基地局2がアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ遷移する場合(条件Tr_12)の無線通信システムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。以下、必要に応じて図1〜図3を参照して、図5に記載のシーケンスについて説明する。
まず、基地局2は、セル12内において移動局100と通信中である(ステップS1)。ここで、何らかの理由により、移動局100は、基地局2に対して通信切断処理を実行する(ステップS2)。移動局100から通信切断要求を受信した基地局2は、自基地局のセル12内に移動局100以外に通信中の移動局が存在するか否かを確認する(ステップS3)。
移動局100以外に通信中の移動局が存在しないことが確認された場合、基地局2は、セル12近傍の移動局(例えば、図1における移動局101、102)から他の基地局1への送信信号の基地局2における受信電力の測定を行い、測定した受信電力と予め設定された閾値との比較処理を実行する(ステップS4)。該受信電力が閾値を超えずに一定時間(例えば5秒)経過した場合、基地局2は、送信電力を徐々に(例えば0.1秒ごとに1dB)低下させる(ステップS5)。
送信電力を低下させている間、基地局2は、自基地局のセル12内において移動局から新たな接続要求があるか否かを確認する(ステップS6)。また、送信電力を低下させている間、基地局2は、移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力が閾値を超えたか否かについて確認する(ステップS7)。新たな接続要求がなく且つ該受信電力が閾値を下回っている場合、基地局2は、送信電力が一定量(例えば20dB)下がるまで(すなわち、送信電力がアクティブ状態St_11における電力の100分の1になるまで)、ステップS5からステップS7までの処理を繰返し行う。送信電力が所定の閾値まで低下した場合(ステップS8)、基地局2は、RNC200に対して、自基地局における測定セルセットに登録されている他の基地局(例えば、図1における基地局1)における負荷情報を要求する(ステップS9)。ここで、測定セルセットとは、移動局がパイロット信号の受信電力の測定を行う対象のセル(基地局)のリストである。
基地局2から基地局1における負荷情報の要求を受けたRNC200は、基地局1に対して負荷の測定を命令する(ステップS10)。RNC200から負荷の測定を命令された基地局1は、自基地局における負荷を測定し(ステップS11)、その測定結果をRNC200へ報告する(ステップS12)。基地局1から負荷情報を受け取ったRNC200は、基地局2に対して、基地局1における負荷情報を送信する(ステップS13)。基地局1における負荷情報を受信した基地局2は、基地局1の負荷情報と所定の閾値とを比較し、比較結果に応じて基地局2の状態遷移の有無を判断する(ステップS14)。例えば、基地局1の負荷情報が所定の閾値よりも低い場合、基地局2は、RNC200に対して、基地局2が電波送受信停止状態St_2へ遷移する旨の報告を行う(ステップS15)。
そして、状態遷移報告を送信した基地局2は、前述の無線送受信機能を停止し、電波送受信停止状態St_2へ遷移する(ステップS16)。該報告を受信したRNC200は、基地局2の状態報告がRNC200によって受理された旨の通知を、基地局2へ送信する(ステップS17)。また、RNC200は、基地局2を測定セルセットから削除するように基地局1へ指示する(ステップS18)。そして、該指示を受信した基地局1は、基地局1における測定セルセットを更新し、基地局2を削除する(ステップS19)。
次に、基地局2がアクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3へ遷移する場合(条件Tr_13)の無線通信システムの動作の一例について説明する。アクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3への遷移は、図5におけるステップS15とS16を除いて共通である。よって、図5のステップS15およびS16以外のステップの説明については、基本的に省略する。ステップS14において基地局1における負荷情報が、所定の閾値よりも高い場合、基地局2は、RNC200に対して、基地局2が電波受信測定状態St_3へ遷移する旨の報告を行う(ステップS15’)。そして、状態遷移報告を送信した基地局2は、移動局に対する電波の送信を停止し(この場合、前述の無線受信機能は起動している)、電波受信測定状態へ遷移する(ステップS16’)。
図6は、アクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ遷移(条件Tr_12)、およびアクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3へ遷移(条件Tr_13)する場合の第2の基地局としての基地局2の動作の一例を説明するフローチャートである。概略的に説明すると、該フローに示す処理におけるアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2への遷移(あるいは、アクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3への遷移)は、次の2つの何れかの条件、すなわち、(1)セル12内において通信中の移動局100の通信が終了した時(換言すれば、基地局2と通信する移動局が存在しなくなった場合)、(2)移動局100がセル12から外に出る時に隣接基地局に通信をハンドオーバーした後に、基地局2における移動局100の他の基地局への送信信号の受信電力が閾値を下回り一定時間経過した時に実行される。
先ず、基地局2の負荷管理制御部369は、基地局2と通信中の移動局の有無(移動局の数が0か否か、または、通信トラフィックが0か否か)について判定する(ステップS20)。負荷管理制御部369によって基地局2と通信中の移動局が“有”と判定された場合(ステップS20においてNo判定の場合)、状態遷移制御部358は、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1に維持する(ステップS30)。これにより、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対し、送信電力を通常の動作状態に保つよう指示し、通常の通信状態であるアクティブ状態が保たれる。
通信中の移動局が“無”と判定された場合(ステップS20においてYes判定の場合)、移動局信号推定部364は、セル12周辺に存在する移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力を測定し、該受信電力と閾値の比較を行う(ステップS21)。該受信電力が閾値を超えている場合(ステップS21においてYes判定の場合)、移動局信号推定部364は、状態遷移制御部358に対してその旨を通知する。これにより、状態推移制御部358は、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1に維持する(ステップS30)。一方、該受信電力が閾値を下回っている場合(ステップS21においてNo判定の場合)、移動局信号推定部364は、状態遷移制御部358に対してその旨を通知する。これにより、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、パイロット信号を含む制御信号の送信電力を徐々に低下させる指示を発行する。送信電力を低下させる指示を受けた電力制御部360は、送信信号処理部356の送信電力を徐々に低下させる指示を出力する(ステップS22)。ここで、例えば、電力制御部360は、送信信号処理部356の送信電力を、例えば、0.1秒ごとに1dBずつ下げ、20dB下がるまで(すなわち、送信電力がアクティブ状態St_11における電力の100分の1になるまで)、送信電力の低下処理を停止する。
電力制御部360の制御により送信信号処理部356が送信電力を低下させている間、受信信号処理部354は、自基地局のセル12内において移動局から新たな接続要求があるか否かについて確認する(ステップS23)。また同時に、移動局信号推定部364は、移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力が閾値を超えているか否かについて確認する(ステップS24)。送信電力を低下させている間に、セル12内において移動局から新たな接続要求があるか(ステップS23においてYes判定の場合)、あるいは、移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力が閾値を超えた場合(ステップS24においてYes判定の場合)、受信信号処理部354および移動局信号推定部364の少なくとも一方は、状態遷移制御部358に対して、送信電力を規定値に上昇させる制御情報または指示を出力する。この制御情報または指示により状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、送信信号処理部356におけるパイロット信号を含む制御信号の送信電力を規定値に上昇させる指示を発行する。これにより電力制御部360は、送信信号処理部356を制御し、送信電力を上昇させ(ステップS29)、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1に維持する(ステップS30)。
一方、送信電力を低下させている間にセル12内において移動局から新たな接続要求がなく(ステップS23においてNo判定の場合)、且つ移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力が閾値を下回っている場合(ステップS24においてNo判定の場合)、電力制御部360は、送信電力が所定の閾値まで低下したかを判断する(ステップS25)。閾値まで低下した時点(ステップS25においてYes判定の場合)で、電力制御部360は、状態遷移制御部358にその旨を通知する。該通知を受けた状態遷移制御部358は、負荷管理制御部369に対して、他の基地局における負荷情報を、ネットワーク通信部350を介してRNC200に対し問い合わせるように指示する。負荷管理制御部369は、他の基地局の負荷情報と閾値とを比較する(ステップS26)。他の基地局の負荷情報が閾値よりも小さい場合(ステップS26においてYes判定の場合)、基地局2は、RNC200に対して、基地局2が電波送受信停止状態St_2へ遷移する旨を報告する(ステップS27)。RNC200に対して状態遷移の報告を行った後、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、前述の無線送受信機能を停止させる指示を発行する(ステップS28)。これにより、基地局2の動作状態は、電波送受信停止状態St_2となる。一方、ステップS26において、他の基地局の負荷情報が閾値よりも大きい場合(ステップS26においてNo判定の場合)、基地局2は、RNC200に対して電波受信測定状態St_3へ遷移する旨を報告する(ステップS27’)。RNC200に対して状態遷移の報告を行った後、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、送信信号処理部356を停止させる指示を発行する(ステップS28’)。これにより、基地局2の動作状態は、電波受信測定状態St_3となる。
尚、図6のステップS21およびステップS24の処理は、基地局2のパイロット信号の移動局における受信電力が所定の閾値よりも低いか否かを判定する処理に変更することもできる。具体的には、基地局2の負荷管理制御部369は、ネットワーク通信部350を介してRNC200に対して、セル12周辺に存在する移動局(例えば、図1における移動局101)における基地局2のパイロット信号の受信電力状況(該受信電力が閾値を超えているか否か)を問い合わせる。基地局2のパイロット信号の移動局における受信電力が閾値を下回っている場合、ネットワーク通信部350は、該旨の通知をRNC200から受信する。すなわち、通信中の移動局が“無し”と判定された場合(ステップS20においてYes判定の場合)、および、送信電力を低下させている間にセル12内において移動局から新たな接続要求がない場合(ステップS23においてNo判定の場合)、「セル12周辺に存在する移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力を測定し、該受信電力と閾値の比較を行う」処理に換えて、上記処理(基地局2のパイロット信号の移動局における受信電力が所定の閾値よりも低いか否かを判定する処理)を実行することもできる。
また、基地局2における送信電力低下処理は、上記に限定されない。例えば、基地局2の電力制御部360または送信信号処理部356は、送信電力を所定の値まで徐々にではなく一気に低下させることも可能である。その場合、図6における少なくともステップS23の処理、場合によっては、ステップS24の処理を省くこともできる。ここで、上記“所定の値”は、信号が全く出力されていない状態、すなわち、“0”出力(例えば、“0”ワット)を含む。
次に、基地局2が電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移する場合(条件Tr_23)の無線通信システムの動作の一例について説明する。基地局2が電波送受信停止状態St_2にある場合において、他の基地局(例えば、図1における基地局1)における負荷が所定の閾値を超えた場合、基地局1は、RNC200に対してその旨を報告する。基地局1における負荷が閾値を超えた報告を受けたRNC200は、基地局2に対して、電波受信測定状態St_3へ遷移するように指示を出す。RNC200から電波受信測定状態St_3へ遷移するように指示を受けた基地局2は、自己の状態を電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移させる。
次に、基地局2が電波受信測定状態St_3から電波送受信停止状態St_2へ遷移する場合(条件Tr_32)の無線通信システムの動作の一例について説明する。基地局2が電波受信測定状態St_3にある場合において、他の基地局(例えば、図1における基地局1)における負荷が所定の閾値を下回った場合、基地局1は、RNCに対してその旨を報告する。基地局1における負荷が閾値を下回った報告を受けたRNC200は、基地局2に対して、電波送受信停止状態St_2へ遷移するように指示を出す。RNC200から指示を受けた基地局2は、自己の状態を電波受信測定状態St_3から電波送受信停止状態St_2へ遷移させる。
次に、基地局2が電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する場合(条件Tr_31)の無線通信システムの動作の一例について説明する。電波受信測定状態St_3にある基地局2は、上り帯域(移動局から基地局に向けての信号送信で使用される帯域)における移動局100から他の基地局(例えば、図1において基地局1)への送信信号の基地局2における受信電力を測定することによって、通信中の移動局が基地局2の周囲に存在するか否かを判定し、該判定結果(例えば、移動局信号推定部364により上記受信電力が閾値を超えたと判定された場合)に応じて基地局2の状態を電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移させる。
ここで、再び図1を参照すると、基地局1と通信を行うために各移動局100〜102は、それぞれに基地局1のパイロット信号を受信し、それに基づき電波を送信し、各無線リンク1100〜1102を形成する。
図7(a)は、各移動局の基地局1からの距離と基地局1における各移動局から基地局1への送信信号の受信電力との関係を示すグラフである。この時、各移動局100〜102は、基地局1における受信電力が一律となるように、送信電力を調節している。例えば、基地局1から遠い位置にいる移動局100は、近くにいる移動局101や移動局102よりも大きな電力で信号を送信する。ところで、移動局から基地局へ向けて送信される信号は無指向性の信号である。従って、例えば、基地局2は、移動局100が本来基地局1と通信するために送信した信号(図1において、信号1100)を受信することができる。この場合、基地局2が受信できる信号は、移動局100からの送信信号に限らず、他の移動局101や移動局102からの送信信号も含む。電波受信測定状態St_3にある基地局2における周辺の移動局(図1の場合、移動局100、101、102)からの電波の受信は、基地局2の移動局信号推定部364において行われる。
図7(b)は、各移動局の基地局2からの距離と基地局2における各移動局から基地局1への送信信号の受信電力との関係を示すグラフである。この場合、図1および図7(b)から、例えば、基地局2において、基地局2に最も近い移動局100からの信号の受信電力が最も大きいことが諒解される。
基地局2の移動局信号推定部364は、周辺の移動局からの電波の受信電力を測定し、測定した受信電力値と所定の閾値との比較を行い、受信電力が閾値よりも大きい場合、通信中の移動局が基地局2の周囲に存在すると判断する。ここで、この閾値は、測定した受信電力値が、基地局2の近傍に通信中の移動局が存在すると認定できるレベルであるか否かを判断するための閾値である。移動局信号推定部364からの判断結果に基づいて、基地局2は、アクティブ状態St_1へ遷移する(換言すれば、所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する)。基地局2は、RNC200に対して、基地局2がアクティブ状態St_1へ遷移したことを報告する。該報告を受けたRNC200は基地局1に対して、基地局2を測定セルセットへ追加するように指示する。該追加指示を受けた基地局1は、接続中の移動局に対して、測定セルセットに追加されたセルを含めてパイロット信号の受信電力を測定するように指示し、移動局はその指示に従ってパイロット信号の受信電力の測定を行う。
図8は、電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する場合(条件Tr_31)の第2の基地局としての基地局2の動作の一例を示すフローチャートである。該フローに示す処理が呼び出されるのは、基地局2が電波受信測定状態St_3へ遷移した時である。
電波受信測定状態St_3にある基地局2の移動局信号推定部364は、RF部352からの信号に基づいて前述したように周辺の移動局からの電波の受信電力測定を行う(ステップS40)。移動局信号推定部364は、測定した受信電力値が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS41)。受信電力が閾値に満たない場合、移動局信号推定部364は、受信電力の測定を継続する。受信電力が閾値を超えた場合、移動局信号推定部364は、基地局2の周辺に通信中の移動局が存在すると判断する。移動局信号推定部364からの判断結果に基づいて、状態遷移制御部358は、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1へ遷移させる。具体的には、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、送信信号処理部356から所定の電力でのパイロット信号の送信開始を指示する(ステップS42)。また、状態遷移制御部358は、ネットワーク通信部350を介してRNC200に対して、基地局2がアクティブ状態St_1へ遷移したことを報告する(ステップS43)。
以上説明したように、第1の実施形態に関わる無線通信システムにおいて、第2の基地局としての基地局2は、所定の条件に応じて基地局2の状態を変更する変更手段を備える。そして、この変更手段は、移動局と通信可能なアクティブ状態St_1、移動局と通信を行わない電波送受信停止状態St_2、および、移動局から他の基地局への送信信号を受信して該送信信号の受信状況を測定する電波受信測定状態St_3の間で、基地局2の状態を遷移させる。
例えば、電波受信測定状態St_3において、基地局2は、移動局から他の基地局への送信信号を受信し、該送信信号の受信状況に応じて所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する。具体的には、基地局2の条件認知手段の1つである移動局信号推定部364は、受信電力を測定し、測定した受信電力値と所定の閾値との比較を行い、受信電力が閾値よりも大きい場合、通信中の移動局が基地局2の周囲に存在すると判断する。そして、基地局2の状態遷移制御手段の1つである状態遷移制御部358は、この判断結果に基づいて、アクティブ状態St_1へ遷移する(換言すれば、所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する)。すなわち、本無線通信システムの場合、基地局2は、現在他の基地局と通信中ではあるが、自基地局と確実に通信することが可能な移動局が存在する場合にはじめてアクティブ状態St_1へ遷移し、所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する。よって、特許文献1のように、通信可能な移動局がないにもかかわらず無駄に起動する基地局を無くすことができ、結果として、より確実に、基地局における電力の消費を抑え、且つ基地局間の電波干渉を回避することが可能となる。
さらに、第1の実施形態に係わる無線通信システムの基地局2において、アクティブ状態St_1に遷移した後に、所定の条件が成立した場合(例えば、基地局2と通信する移動局が存在しなくなった場合、基地局2のパイロット信号の移動局における受信電力が閾値より低い場合、あるいは、移動局の他の基地局への送信信号の基地局2における受信電力が閾値を下回っている場合等が条件認知手段(例えば、移動局信号推定部364や負荷管理制御部369)により認知された場合)、状態遷移制御手段(例えば、状態遷移制御部358や電力制御部360)は、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ戻す処理を実行することができる。すなわち、基地局2は、パイロット信号の送信を開始した後に、上記の所定の条件が成立した場合、パイロット信号の送信を停止する手段(例えば、状態遷移制御手段358と電力制御部360)を備える。
このように、基地局2は、自己の状態を上記3つの状態の間できめ細かに遷移させるので、より一層確実に、基地局における電力の消費を抑え、且つ基地局間の電波干渉を回避することが可能となる。
尚、上記の第1の実施形態では、基地局2が、測定した受信電力値と所定の閾値との比較を行い、受信電力が閾値よりも大きい場合、基地局2の動作状態をアクティブ状態St_1へ遷移させる、と説明した。ここで、この所定の閾値は、必ずしも固定閾値である必要は無く、変動閾値とすることができる。その場合、例えば、基地局1の負荷情報に応じて該閾値を変動させることができる。例えば、基地局1における負荷が高い場合に、該閾値を低く設定することにより、基地局2がアクティブ状態へ遷移しやすくなり、基地局1の負荷を低減することが可能となる。
尚、上記の第1の実施形態における、基地局2が電波受信測定状態St_3にある時に、測定を行う期間を限定し、インターバルを設け、周期的に測定を行ってもよい。周期的に測定を行うことによって、インターバル期間における測定処理にかかる負荷を低減することが可能となり、消費電力を削減することが可能となる。
また、基地局1における負荷情報に応じて、測定期間とその周期を変更することができる。例えば、基地局1における負荷情報が閾値を超えている場合、測定を行う期間を長くし、あるいは、インターバルを短くすることにより、移動局を検出し易くなる。これにより基地局2がより一層アクティブ状態へ遷移しやすくなり、基地局1の負荷を低減することが可能となる。
また、基地局2は、過去の受信電力測定結果を保持する記憶手段(不図示)を備え、過去の測定結果と現在の測定結果とを考慮して測定を行う期間、インターバル期間、および上記閾値の少なくとも1つを決定する(変化させる)こともできる。
尚、上記の第1の実施形態において、電波送受信停止状態St_2と電波受信測定状態St_3間の遷移に関し、基地局2の条件認知手段の1つである負荷管理制御部369は、他の基地局(例えば、図1における基地局1)の負荷情報を用いる、と説明した。しかしながら、上記遷移に関し、必ずしも基地局1の負荷情報を用いる必要は無い。例えば、条件認知手段が、基地局2が電波送受信停止状態St_2へ遷移した後一定時間(例えば、1分)経過したことを検出した場合、状態遷移制御手段は、基地局2の状態を、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ自動的に遷移させることもできる。あるいは、基地局2が電波受信測定状態St_3へ遷移してからアクティブ状態St_1へ遷移せずに一定時間(例えば、1分)が経過した場合、状態遷移制御手段は、基地局2の状態を、電波受信測定状態St_3から電波送受信停止状態St_2へ遷移させることもできる。
また、上記の第1の実施形態において、アクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2への遷移に関し、基地局2が基地局1の負荷情報を用いる、と説明した。しかしながら、上記遷移に関し、必ずしも基地局1の負荷情報を用いる必要は無い。例えば、条件認知手段が、アクティブ状態St_1において基地局2と通信する移動局が存在せずに一定時間(例えば1分)経過したことを検出した場合、状態遷移制御手段は、基地局2の状態を、アクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ自動的に遷移させることもできる。
尚、上記の第1の実施形態では、基地局1の負荷情報に基づいて受信電力測定を行うか否かの決定を基地局2で行うと説明したが、該決定は、必ずしも基地局2で行われる必要はない。例えば、該決定をRNC200において行い、その結果のみを基地局2側で受信することも可能である。
尚、上記第1の実施形態において、基地局2がアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ遷移する場合、および基地局2がアクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3へ遷移する場合、基地局2と通信中の移動局が存在しないことが条件となると説明した。この場合、基地局2と通信中の移動局が存在する場合でも上記遷移を行うことができる。例えば、基地局2における負荷情報が閾値以下である場合、これらの通信を他の基地局(例えば、図1における基地局1)へハンドオーバーすることにより基地局2と通信中の移動局が存在しない状況を意図的に作り出せばよい。これにより、基地局2は、アクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ、あるいはアクティブ状態St_1から電波受信測定状態St_3へ遷移することができる。
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係わる無線通信システムの一例を示す構成図である。本無線通信システムの全体構成は、図1に示す第1の実施形態の無線通信システムと同一である。第2の実施形態の第1の実施形態に対する差異は、第2の基地局の構成にある。以下、第2の実施形態の無線通信システムにおける第2の基地局としての基地局を、新たに基地局3とする。従って、本無線通信システムにおいて第1の基地局としての基地局は、第1の実施形態の基地局1(図2参照)のままである。
図10は、第2の実施形態に係わる無線通信システムの第2の基地局としての基地局3の一例を示すブロック図である。基地局3は、図3に示す基地局2(第1の実施形態における第2の基地局)の移動局信号推定部364に替えて発呼信号検出部500(条件認知手段)を設ける。基地局3におけるこれら発呼信号検出部500以外の構成については、基地局2の構成と同一であるため、それらの説明は省略する。
ここで、一般的に、移動局は発呼を行う際に、基地局のパイロット信号を受信することによって、基地局固有の識別情報と同期のタイミングを得る。同期を得た移動局は、パワーランピング方式を用いて基地局に接続要求を送信することで発呼を行う。ここで、パワーランピング方式とは、移動局が必要以上に強い電力を用いて、他の移動局の通信に干渉を与えないように、予め規定された低い電力から徐々に出力を上昇させて、基地局に対して接続要求が届くまで出力を上昇させる方法である。基地局は、移動局の接続要求を受信すると、移動局に対して、確認応答を送信し、移動局の送信電力の指示を行う。
発呼信号検出部500は、移動局(例えば、図9において移動局100)が他の基地局(例えば、図9における基地局1)に対して発呼する際の信号、例えばPRACH(Physical Random Access Channel)の信号を検出する。すなわち、発呼信号検出部500は、受信信号の中に基地局1固有の識別情報が含まれるか否かを確認することにより、基地局1に対する接続要求(換言すれば、基地局1に対する発呼)の有無を検出する。
ここで、基地局1固有の識別情報としては、例えば、非特許文献1に記載のW−CDMA方式におけるスクランブリングコードとシグネチャを挙げることができる。負荷管理制御部369は、RNC200から取得する基地局1の負荷情報に基づいて、発呼信号検出部500における発呼信号検出を行うか否かについて決定する。そして、発呼信号検出部500は、発呼信号検出に必要な情報である基地局1固有の識別情報を、RNC200あるいは基地局1から取得する。
尚、この第2の実施形態の無線通信システムにおいて、第2の基地局としての基地局3が電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1への遷移(条件Tr_31)以外の遷移(条件Tr_12、Tr_23、Tr_32、Tr_13)の無線通信システムの動作シーケンス、およびアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_2へ遷移する場合の第2の基地局の動作フローは、第1の実施形態における無線通信システムの動作シーケンス(図5参照)、および第2の基地局の動作フロー(図6参照)と同様であるため、それらについての説明は省略する。
以下、この第2の基地局としての基地局3が電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する場合(条件Tr_31)の本実施形態の無線通信システムの動作について説明する。
本無線通信システムにおいて、基地局3は、受信信号の中に基地局1固有の識別情報が含まれるか否かを確認することにより、基地局1に対する接続要求(換言すれば、基地局1に対する発呼)の有無を検出する。移動局100の基地局1に対する接続要求を検出した場合、基地局3は、基地局3の周辺で移動局100が発呼したと判断し、自基地局の状態をアクティブ状態St_1へ遷移させる。基地局3は、移動局100の基地局1に対する接続要求の信号を検出するために、基地局1が使用する識別情報のリストを、予め取得している。具体的には、発呼信号検出部500は、該リストを、RNC200または基地局1から取得する。
電波受信測定状態St_3にある基地局3は、受信信号の中に移動局100の発呼信号が含まれるかを、基地局1の識別情報を用いて検出する。基地局3が受信信号の中に移動局100の発呼を検出した場合、基地局3は、電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する(換言すれば、所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する)。基地局3は、RNC200に対して、基地局3がアクティブ状態St_1へ遷移したことを報告する。RNC200は、該報告に対する応答を基地局3へ送信する。基地局3のパイロット信号を受信した移動局100は、基地局3固有の識別情報を取得し、同期を取る。同期を取った移動局100は、基地局3に対して発呼をし、接続要求を行い、基地局3と通信を開始する。
図11は、電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移する場合の第2の基地局としての基地局3の動作の一例を示すフローチャートである。基地局3において該フローに示す処理が呼び出される条件は、基地局3が電波受信測定状態St_3へ遷移した時である。
電波受信測定状態St_3にある基地局3の発呼信号検出部500は、発呼信号検出を実行する。発呼信号検出部500は、発呼信号が検出できたか否かを判定する(ステップS50)。発呼を検出できない場合、ステップS50の処理が再度実行される。発呼信号検出部500により発呼信号が検出された場合、基地局3の周辺において移動局が発呼したと判断することができ、状態遷移制御部358は、基地局3の動作状態を電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移させる(ステップS51)。換言すれば、状態遷移制御部358は、電力制御部360に対して、送信信号処理部356から所定電力でのパイロット信号の送信を開始する指示を発行する。状態遷移制御部358は、基地局3がアクティブ状態St_1へ遷移したことを、ネットワーク通信部350を介してRNC200へ報告する(ステップS52)。
以上説明した第2の実施形態に係わる無線通信システムおいて、基地局3の発呼信号検出部500は、移動局100の基地局1に対する接続要求の信号を検出することにより、基地局3の周辺において移動局100が発呼したと判断し、基地局3の状態をアクティブ状態St_1へ遷移させる(換言すれば、所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する)。すなわち、本無線通信システムの場合、基地局3は、現在他の基地局と通信中ではあるが、自基地局と確実に通信することが可能な移動局が存在する場合にはじめてアクティブ状態St_1へ遷移する。よって、特許文献1のように、通信可能な移動局がないにもかかわらず無駄に起動する基地局を無くすことができ、結果として、より確実に、基地局における電力の消費を抑え、且つ基地局間の電波干渉を回避することが可能となる。
尚、以上説明した第2の実施形態では、基地局3のパイロット信号を受信した移動局100は、基地局1から基地局3へ同期を変更すると説明したが、同期を変更せずに基地局1へ一旦接続した後、基地局3へ接続をハンドオーバーすることもできる。このようにすることにより、通信開始までの時間を短縮することができる。
尚、以上説明した第2の実施形態において、基地局3は、基地局3と移動局の固有IDとを関連付けた関連テーブル(不図示)を備えることもできる。そして、基地局3の発呼信号検出部500により受信信号の中に移動局100の発呼が検出された場合、基地局3の、例えば、発呼信号検出部500は、移動局100の基地局1に対する接続要求信号から移動局100の固有IDを抽出する。発呼信号検出部500は、抽出した固有IDが上記関連テーブルに登録されているか否かを判定する。
移動局の固有IDが関連テーブルに登録されている場合(すなわち、該発呼を行った移動局が基地局3と関連付けられている場合)、基地局3の状態遷移制御部358は、電波受信測定状態St_3からアクティブ状態St_1へ遷移してもよい。この場合、基地局3は、無条件に(例えば、基地局1の負荷状態によらず)、アクティブ状態St_1へ遷移してもよい。また、この場合、基地局3は、所定の条件に応じて(例えば、基地局1が高負荷の場合)、アクティブ状態St_1へ遷移してもよい。
一方、移動局の固有IDが関連テーブルに登録されていない場合(すなわち、該発呼を行った移動局が基地局3と関連付けられていない場合)、基地局3は、アクティブ状態St_1への遷移を禁止することができる。この場合、基地局3は、たとえ基地局1が高負荷状態にあっても該発呼を行った移動局が基地局3と関連付けられていない場合は、アクティブ状態St_1への遷移を禁止してもよい。
以上説明した第1および第2の実施形態に係わる無線通信システムおいて、基地局(第2の基地局)は、電波受信測定状態St_3にあるときに、移動局から他の基地局(第1の基地局)への送信信号を受信し、該送信信号の受信状況に応じて所定の電力でのパイロット信号の送信を開始する(アクティブ状態へ遷移)、と説明した。すなわち、第1および第2の実施形態に係わる無線通信システムの場合、第2の基地局は、現在第1の基地局と通信中ではあるが、第2の基地局と確実に通信することが可能な移動局が存在する場合にはじめてアクティブ状態St_1へ遷移する。しかしながら、「現在第1の基地局と通信中ではあるが、第2の基地局と確実に通信することが可能な移動局」が1台存在したからといって、第2の基地局が常にアクティブ状態St_1へ遷移する必要は必ずしもない。例えば、第2の基地局は、上記移動局が所定の複数個以上存在する場合にはじめてアクティブ状態St_1へ遷移してもよい。
[第3の実施形態]
図12は、本発明の第3の実施形態に係わる無線通信システムの一例を示す構成図である。本無線通信システムの全体構成は、図1に示す第1の実施形態の無線通信システムと同一である。第3の実施形態の第1の実施形態に対する差異は、第1の基地局の構成にある。以下、第3の実施形態の無線通信システムにおける第1の基地局としての基地局を、新たに基地局4とする。従って、本無線通信システムにおいて第2の基地局としての基地局は、第1の実施形態の基地局2(図3参照)のままである。
図13は、第3の実施形態に係わる無線通信システムの第1の基地局としての基地局4の一例を示すブロック図である。基地局4は、図2に示す第1の実施形態における第1の基地局としての基地局1が備える構成に加えて、更に位置情報取得部450を備える。他の構成要素、すなわち、ネットワーク通信部300と、RF部302と、受信信号処理部304と、送信信号処理部306と、負荷管理部308と、アンテナ310の構成および動作は、基地局1と同じであるため、それらの説明を省略する。位置情報取得部450は、受信信号処理部304から得られる情報に基づいて、基地局4のセル11内に在圏する移動局の位置を取得または検出する。
尚、この第3の実施形態の無線通信システムにおいて、第2の基地局が電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3への遷移(条件Tr_23)以外の遷移(条件Tr_12、Tr_32、Tr_13、Tr_31)に係わる無線通信システムの動作シーケンス、およびアクティブ状態St_1から電波送受信停止状態St_3へ遷移する場合(条件Tr_13)の第2の基地局の動作フローは、第1の実施形態における無線通信システムの動作シーケンス(図5参照)または第2の実施形態における無線通信システムの動作、および第1の実施形態における第2の基地局の動作フロー(図6参照)、または、第2の実施形態における第2の基地局の動作フロー(図11)と同様であるため、それらについての説明は省略する。
以下、この第2の基地局としての基地局2が、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移する場合(条件Tr_23)の本実施形態の無線通信システムの動作について図14を用いて説明する。
図14は、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移する場合(条件Tr_23)の本実施形態の無線通信システムの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
本無線システムにおいて、基地局2は、第1の基地局である基地局4の負荷情報と、基地局4のサポートする移動局の位置情報とを利用することによって、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移を制御する。
具体的には、他の基地局(例えば、図12における基地局4)における負荷情報が閾値を超えた場合(ステップS100)、基地局4は、RNC200に対して基地局4の負荷情報を送信する(ステップS101)。RNC200は、基地局4の負荷情報と所定の閾値とを比較する(ステップS102)。一方、基地局4は、基地局4と通信中の移動局(例えば、図12における移動局100〜102)に対して、それぞれの位置情報を要求する(ステップS103)。基地局4から位置情報要求を受けた各移動局は、それぞれの位置情報を取得し(ステップS104)、取得した位置情報を基地局4に送信する(ステップS105)。移動局から位置情報を取得した基地局4は、RNC200へ移動局の位置情報を送信する(ステップS106)。基地局4の負荷情報と基地局4と通信中の移動局の位置情報とを取得したRNC200は、電波送受信停止状態St_2にある基地局2の位置と、取得した移動局のそれぞれの位置情報とを比較する(ステップS107)。基地局2の位置と基地局4と通信中の移動局の位置とを比較することによって、RNC200は、それらの移動局と通信可能な第2の基地局(すなわち、現在、電波送受信停止状態St_2にあり、電波受信測定状態St_3へ遷移させたほうがよい基地局)を選択する(ステップS108)。
RNC200は、選択された基地局2に対し、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へ遷移する指示を発行する(ステップS109)。RNC200から該指示を受けた基地局2の状態遷移制御手段(例えば、図3の状態遷移制御部358と電力制御部360)は、基地局2の状態を、電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3へと遷移させる。
以上説明したように、第3の実施形態において、第1の基地局(例えば、図12において基地局4)の負荷情報と、この第1の基地局と通信中の移動局の位置情報とを用いることにより、第2の基地局の電波送受信停止状態St_2から電波受信測定状態St_3への遷移は、無駄なく効率的に行われる。なぜならば、第2の基地局と移動局の距離が遠い場合(例えば、図12における基地局2と移動局102の位置関係)、基地局2が電波受信測定状態St_3へ遷移したとしても、この移動局102の送信信号を受信することは困難であり、その後アクティブ状態St_1へ遷移することができない。しかしながら、第2の基地局と移動局の距離が近い場合(例えば、図12における基地局2と移動局100の位置関係)、電波受信測定状態St_3へ遷移した後に、移動局100の基地局4(他の基地局)への送信信号の基地局2における受信電力が閾値以上となり、アクティブ状態St_1へ遷移することが容易となる。
すなわち、第3の実施形態の場合、基地局2の電波受信測定状態St_3への遷移が高精度に行われるので、基地局における電力消費が抑えられ、且つ基地局間の電波干渉も回避される。
尚、第1の基地局の位置情報取得部450における移動局の位置情報の取得および検出については、例えば、GPS(Global Positioning System)の情報や、GPSと基地局の情報により位置測定するAGPS(Assisted GPS)の情報や、AFLT(Advanced Forward Link Trilateration)の情報等を利用することができる。
また、以上説明した第3の実施形態において、第2の基地局を基地局2としたが、第2実施形態における基地局3としてもよい。
また、以上説明した第3の実施形態では、電波送受信停止状態St_2にある基地局2の位置と、移動局それぞれの位置情報とを比較する処理はRNC200で行われると説明した。しかしながら、上記比較処理は、第2の基地局で行うこともできる。具体的には、電波送受信停止状態St_2にある第2の基地局(例えば、基地局2)は、自己の記憶手段(不図示)内に自己のセルの範囲情報(基地局の位置情報といってもよい)を格納する。そして、第2の基地局は、第1の基地局(例えば、基地局4)と通信中の移動局(例えば、図12における移動局100〜102)の位置情報を、基地局4から直接、あるいはRNC200を介して受信する。そして、第2の基地局は、記憶手段から読み出した範囲情報と受信した移動局の位置情報とを比較する。これにより、第2の基地局は、自らが移動局と通信可能な第2の基地局(すなわち、現在、電波送受信停止状態St_2にあり、電波受信測定状態St_3へ遷移させたほうがよい基地局)であるか否かを自力で判断することができる。
[変形例]
上説明した第1〜第3の実施形態において、第1の基地局(例えば、基地局1および基地局4)および第2の基地局(例えば、基地局2および基地局3)の内部における各構成要素の機能配分は、必ずしも上記の実施形態(図2、図3、図10および図13参照)に限定されない。従って、現在の構成要素を任意に分割または統合してもよく、あるいは、構成要素間で機能を移管してもよい。例えば、図3に示す第2の基地局としての基地局2において、移動局信号推定部364と状態遷移制御部358とを統合することができる。すなわち、この統合部は、移動局信号推定部364の機能(RF部352から受信した信号から周辺の移動局の他の基地局への送信信号の検出を行う機能)と、状態遷移制御部358の機能(所定の情報または指示に基づいて、基地局2の状態遷移を制御する機能)とを実行する。すなわち、この統合部を備える基地局は、図3に示す基地局2と同等の性能を発揮する。繰り返しの説明となるが、上記各実施形態における各基地局の構成要素の機能配分およびそれらの名称は、あくまで一例であり、上記各実施形態に束縛されることなく任意に変更することが可能である。
以上説明した第1〜第3の実施形態において、制御信号としてパイロット信号を用いて説明を行ったが、パイロット信号に限られたわけではなく、セル固有の情報やシステム固有の情報を報知する信号を用いる形態でもよい。
また、以上説明した第1〜第3の実施形態において、基地局とセルは一対一に対応すると説明したが、1つの基地局が複数のセルを有することもできる。その場合、基地局は、セル毎に状態遷移制御を行うことができる。
また、以上説明した第1〜第3の実施形態において、第1の基地局(例えば、基地局1および基地局4)および第2の基地局(例えば、基地局2および基地局3)は、各々に専用の機能を搭載し、各々の目的に即した専用機であると説明した。しかしながら、一方の基地局が他方の基地局のみが搭載している機能を搭載することにより、第1の基地局および第2の基地局の機能が共有化される。従って、そのようにすることにより、上記説明した第1の基地局の役目を第2の基地局が担い、反対に、第2の基地局の役目を第1の基地局が担うことも可能である。
また、以上説明した第1〜第3の実施形態において、RNC200は、必ずしも必須の構成要素ではない。例えば、第1の基地局や第2の基地局の各々が、RNC200の機能を含む構成とすることもできる。その場合、第1の基地局と第2の基地局は、所定の通信網(例えば、有線通信網)を介して直接接続される。この場合、例えば、第2の基地局がアクティブ状態になった後、RNC200に報告する代わりに、直接、第1の基地局に通知して、測定セルセットの変更を行うこともできる。
また、以上説明した第1〜第3の実施形態において、第1の基地局および第2の基地局の各々は、専用のハードウェアで制御されると説明した。しかしながら、第1の基地局および第2の基地局は、制御プログラムに基づいて図示しないコンピュータ回路(例えば、CPU(CentralProcessing Unit))によって制御され、動作するようにすることもできる。
また、以上説明した第1〜第3の実施形態の無線通信システムの第1および第2の基地局のセル構成を、階層セル(重複セルとも言う)構成とすることができる。例えば、第1の基地局をマクロセルとし、第2の基地局を、そのカバーエリア全体がマクロセルのカバーエリア内に包含される小さなセル(例えば、マイクロセル、ミクロセル、ナノセル、フェムトセル等)とすることもできる。