JP5358371B2 - 全方向移動車両 - Google Patents

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Description

本発明は、全方向移動車両に関する。
床面上を全方向(2次元的な全方向)に移動可能な全方向移動車両としては、例えば、特許文献1、2に見られるものが本願出願人により提案されている。これらの特許文献1、2に見られる全方向移動車両にあっては、床面に接地しながら該床面上を全方向に移動可能な、球体状又は車輪状又はクローラ状の移動動作部と、該移動動作部を駆動する電動モータ等を有するアクチュエータ装置とが車両の基体に組付けられている。そして、この車両は、アクチュエータ装置により移動動作部を駆動することによって、床面上を移動する。
また、この種の全方向移動車両の移動動作を制御する技術としては、例えば特許文献3に見られる技術が本願出願人により提案されている。この技術では、車両の基体が球体状の移動動作部に対して前後・左右に傾動自在に設けられている。そして、基体の傾き角を計測し、この傾き角を所要の角度に保つように、移動動作部を駆動する電動モータのトルクを制御することによって、基体の傾動動作に応じて車両を移動させるようにしている。
国際公開第2008/132778号 国際公開第2008/132779号 特許第3070015号
上記特許文献1〜3に記載された全方向移動車両は、いずれも利用者が搭乗して移動することを前提として構成されているため、例えば、シートによって利用者の尻部を支えながら移動することで利用者の歩行を補助するような用途に使用することはできない。近年では、社会福祉の観点から高齢者や障害者などの歩行を補助する機械の開発が求められており、上記特許文献1〜3の技術はそのような要望に応えることはできなかった。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、利用者の歩行を補助することの可能な全方向移動車両を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、基体(例えば、実施形態による基体9)と、前記基体に接続され、床面上の互いに直交する二方向を含む全方向に駆動力を発生する駆動機構(例えば、実施形態による移動動作部5及びアクチュエータ装置7)と、前記基体を伸縮させる伸縮機構(例えば、実施形態による直動アクチュエータ14)と、前記基体に接続され、利用者の荷重を受ける荷重受け部(例えば、実施形態によるシート3)と、前記荷重受け部に作用する荷重を検出する荷重検出部(例えば、実施形態による荷重センサ54)と、前記基体の傾斜角を検出する傾斜角検出部(例えば、実施形態による傾斜センサ52)と、前記荷重検出部にて検出された前記荷重が一定値となるように前記伸縮機構を制御することで前記荷重受け部の高さ制御を行うと共に、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が一定値となるように前記駆動機構を制御することで前記基体の姿勢制御を行う制御部(例えば、実施形態による制御ユニット50)と、を備えることを特徴とする全方向移動車両(例えば、実施形態による全方向移動車両1)である。
これにより、利用者が歩行する際に、荷重受け部を利用者の尻部等の所定部位に押し付けて体重を支えながら、歩行に合わせて移動可能な全方向移動車両とすることができる。また、利用者の歩行時における姿勢や振動などに関わらず、利用者と全方向移動車両との位置関係を一定に保持することができる。
請求項2に記載した発明は、前記制御部は、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が0度となるように前記基体の姿勢制御を行う搭乗モードと、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が所定の設定値となるように前記基体の姿勢制御を行う補助モードとの2つの動作モードを選択的に使用することを特徴とする。
これにより、利用者が全方向移動車両に搭乗して移動することもでき、また、利用者の歩行を補助するために全方向移動車両を利用することもできる。
請求項3に記載した発明は、前記制御部は、前記荷重検出部にて検出された前記荷重に応じて前記搭乗モードと前記補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択することを特徴とする。
これにより、前記搭乗モードと前記補助モードとの2つの動作モードの一方を自動選択できるようになる。
請求項4に記載した発明は、動作モード切替用のスイッチ(例えば、実施形態によるスイッチ16)を備え、前記制御部は、前記スイッチの状態に応じて前記搭乗モードと前記補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択することを特徴とする。
これにより、前記搭乗モードと前記補助モードとの2つの動作モードの一方を手動選択できるようになる。
請求項1に記載した発明によれば、利用者が歩行する際に、荷重受け部を利用者の尻部等の所定部位に押し付けて体重を支えながら、歩行に合わせて移動可能な全方向移動車両とすることができるため、利用者の歩行を補助することの可能な全方向移動車両を提供することができる。また、利用者の歩行時における姿勢や振動などに関わらず、利用者と全方向移動車両との位置関係を一定に保持することができるため、安全且つ安定した補助動作を利用者に提供することができる。
請求項2に記載した発明によれば、利用者が全方向移動車両に搭乗して移動することもでき、また、利用者の歩行を補助するために全方向移動車両を利用することもできるため、利便性の向上を図ることができる。
請求項3に記載した発明によれば、前記搭乗モードと前記補助モードとの2つの動作モードの一方を自動選択できるようになるため、利用者にモード選択のための余計な操作を強制することなく、利便性の向上に寄与することができる。
請求項4に記載した発明によれば、前記搭乗モードと前記補助モードとの2つの動作モードの一方を手動選択できるようになるため、利用者が自分の好みの動作モードに固定して全方向移動車両を使用できる。
実施形態の全方向移動車両1の正面図。 実施形態の全方向移動車両1の側面図。 実施形態の全方向移動車両1の下部を拡大して示す図。 実施形態の全方向移動車両1の下部の斜視図。 実施形態の全方向移動車両1の移動動作部5(車輪体)の斜視図。 実施形態の全方向移動車両1の移動動作部5(車輪体)とフリーローラとの配置関係を示す図。 実施形態の全方向移動車両1の制御ユニットの処理を示すフローチャート。 実施形態の全方向移動車両1における搭乗モード時と補助モード時の使用状態を示す図。 実施形態の全方向移動車両1の動力学的挙動を表現する倒立振子モデルを示す図。 図7のステップS8の処理に係わる処理機能を示すブロック図。 図10に示すゲイン調整部78の処理機能を示すブロック図。 図11に示すリミット処理部86(又は図13に示すリミット処理部100)の処理機能を示すブロック図。 図10に示す重心速度制限部76の処理機能を示すブロック図。 図10に示す姿勢制御演算部80の処理機能を示すブロック図。 図7のステップS12の処理に係わる処理機能を示すブロック図。 図15に示す姿勢制御演算部80’の処理機能を示すブロック図。 実施形態の全方向移動車両1における直動アクチュエータ14の変形例を示す図。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
まず、図1〜図6を参照して、本実施形態における全方向移動車両1の構造について説明する。なお、以下では、図中に示すXYZ直交座標系を用いて、全方向移動車両1の各部の構造を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態における全方向移動車両1は、利用者の荷重を受ける荷重受け部となるシート3と、床面に接地しながら該床面上を全方向(前後方向及び左右方向を含む2次元的な全方向)に移動可能な移動動作部5と、この移動動作部5を駆動する動力を該移動動作部5に付与するアクチュエータ装置7と、これらのシート3、移動動作部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた基体9とを備える。
なお、上記移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、本発明における駆動機構を構成するものである。
ここで、本実施形態の説明では、「前後方向」、「左右方向」は、それぞれ、シート3に標準的な姿勢で搭乗した利用者の上体の前後方向、左右方向に一致もしくはほぼ一致する方向を意味する。なお、「標準的な姿勢」は、シート3に関して設計的に想定されている姿勢であり、利用者の上体の体幹軸を概ね上下方向に向け、且つ、上体を捻ったりしていない姿勢である。この場合、図1においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面に垂直な方向、紙面の左右方向であり、図2においては、「前後方向」、「左右方向」はそれぞれ、紙面の左右方向、紙面に垂直な方向である。また、本実施形態の説明では、参照符号に付する添え字「R」、「L」は、それぞれ全方向移動車両1の右側、左側に対応するものという意味で使用する。
基体9は、移動動作部5及びアクチュエータ装置7が組付けられた下部フレーム11と、下部フレーム11の上端から上方(Z軸方向)に延設され、後述の制御ユニット50及び傾斜センサ52を収納する第1支柱フレーム13aと、シート3を支持する第2支柱フレーム13bとを備えており、さらに、第1支柱フレーム13aの上端と第2支柱フレーム13bの下端との間には、基体9を伸縮させる伸縮機構である直動アクチュエータ14が取り付けられている。
この直動アクチュエータ14は、第1支柱フレーム13aの上端と第2支柱フレーム13bの下端との間の距離(Z軸方向の距離)、ひいてはシート3と移動動作部5との間の距離を伸縮可能とするものであり、本実施形態ではボールネジ機構を用いた場合を例示する。つまり、本実施形態における直動アクチュエータ14は、回転軸がZ軸方向と平行になるように第1支柱フレーム13aの上端に設置された伸縮用モータ14aと、この伸縮用モータ14aの上方に延設され、一端(下端側)が伸縮用モータ14aの回転軸と接続され、他端(上端側)が第2支柱フレーム13bの下端と接続されたボールネジ14bとを備えている。
上記のように構成された直動アクチュエータ14においては、伸縮用モータ14aによってボールネジ14bが回転駆動されることにより、第2支柱フレーム13bがZ軸方向に上下動し、その結果、基体9(具体的にはシート3と移動動作部5との間の距離)が伸縮して、シート3の高さ制御が可能となる。なお、詳細は後述するが、この伸縮用モータ14aは、制御ユニット50によってその回転動作が制御されている。
第2支柱フレーム13bの上部には、該第2支柱フレーム13bから前方側に張り出したシートフレーム15が固定されている。そして、このシートフレーム15上に、利用者が着座するシート3が装着されている。また、シート3の左右には、シート3に着座した利用者が必要に応じて把持するためのグリップ17R、17Lが配置され、これらのグリップ17R、17Lがそれぞれ、第2支柱フレーム13b(又はシートフレーム15)から延設されたブラケット19R、19Lの先端部に固定されている。
また、第1支柱フレーム13aの右側面には、制御ユニット50の動作モードを手動で選択するための動作モード切替用のスイッチ16が外部に露出するように配置されている。
下部フレーム11は、左右方向に間隔を存して二股状に対向するように配置された一対のカバー部材21R、21Lを備える。これらのカバー部材21R、21Lの上端部(二股の分岐部分)は、前後方向の軸心を有するヒンジ軸23を介して連結され、カバー部材21R、21Lの一方が他方に対して相対的にヒンジ軸23の周りに揺動可能となっている。この場合、カバー部材21R、21Lは、図示を省略するバネによって、カバー部材21R、21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。
また、カバー部材21R、21Lのそれぞれの外面部には、前記シート3に着座した利用者の右足を載せるステップ25Rと左足を載せるステップ25Lとが各々、右向き、左向きに張り出すように突設されている。
移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、下部フレーム11のカバー部材21R、21Lの間に配置されている。これらの移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構造を図3〜図6を参照して説明する。なお、本実施形態で例示する移動動作部5及びアクチュエータ装置7は、例えば前記特許文献2の図1に開示されているものと同じ構造のものである。従って、本実施形態の説明においては、移動動作部5及びアクチュエータ装置7の構成に関して、前記特許文献2に記載された事項については、簡略的な説明に留める。
本実施形態では、移動動作部5は、ゴム状弾性材により円環状に形成された車輪体であり、ほぼ円形の横断面形状を有する。この移動動作部5(以降、車輪体5という)は、その弾性変形によって、図5及び図6の矢印Y1で示す如く、円形の横断面の中心C1(より詳しくは、円形の横断面中心C1を通って、車輪体5の軸心と同心となる円周線)の周りに回転可能となっている。この車輪体5は、その軸心C2(車輪体5全体の直径方向に直交する軸心C2)を左右方向に向けた状態で、カバー部材21R,21Lの間に配置され、該車輪体5の外周面の下端部にて床面に接地する。
そして、車輪体5は、アクチュエータ装置7による駆動(詳細は後述する)によって、図5の矢印Y2で示す如く車輪体5の軸心C2の周りに回転する動作(床面上を輪転する動作)と、車輪体5の横断面中心C1の周りに回転する動作とを行なうことが可能である。その結果、車輪体5は、それらの回転動作の複合動作によって、床面上を全方向に移動することが可能となっている。
アクチュエータ装置7は、車輪体5と右側のカバー部材21Rとの間に介装される回転部材27R及びフリーローラ29Rと、車輪体5と左側のカバー部材21Lとの間に介装される回転部材27L及びフリーローラ29Lと、回転部材27R及びフリーローラ29Rの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Rと、回転部材27L及びフリーローラ29Lの上方に配置されたアクチュエータとしての電動モータ31Lとを備える。
電動モータ31R、31Lは、それぞれのハウジングがカバー部材21R、21Lに各々取付けられている。なお、図示は省略するが、電動モータ31R、31Lの電源(蓄電器)は、第1支柱フレーム13a等、基体9の適所に搭載されている。
回転部材27Rは、左右方向の軸心を有する支軸33Rを介してカバー部材21Rに回転可能に支持されている。同様に、回転部材27Lは、左右方向の軸心を有する支軸33Lを介してカバー部材21Lに回転可能に支持されている。この場合、回転部材27Rの回転軸心(支軸33Rの軸心)と、回転部材27Lの回転軸心(支軸33Lの軸心)とは同軸心である。
回転部材27R、27Lは、それぞれ電動モータ31R、31Lの出力軸に、減速機としての機能を含む動力伝達機構を介して接続されており、電動モータ31R、31Lからそれぞれ伝達される動力(トルク)によって回転駆動される。各動力伝達機構は、例えばプーリ・ベルト式のものである。すなわち、図3に示す如く、回転部材27Rは、プーリ35Rとベルト37Rとを介して電動モータ31Rの出力軸に接続されている。同様に、回転部材27Lは、プーリ35Lとベルト37Lとを介して電動モータ31Lの出力軸に接続されている。
なお、上記動力伝達機構は、例えば、スプロケットとリンクチェーンとにより構成されるもの、あるいは、複数のギヤにより構成されるものであってもよい。また、例えば、電動モータ31R、31Lを、それぞれの出力軸が各回転部材27R,27Lと同軸心になるように各回転部材27R、27Lに対向させて配置し、電動モータ31R、31Lのそれぞれの出力軸を回転部材27R、27Lに各々、減速機(遊星歯車装置等)を介して連結するようにしてもよい。
各回転部材27R,27Lは、車輪体5側に向かって縮径する円錐台と同様の形状に形成されており、その外周面がテーパ外周面39R,39Lとなっている。
回転部材27Rのテーパ外周面39Rの周囲には、回転部材27Rと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数のフリーローラ29Rが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Rは、それぞれ、ブラケット41Rを介してテーパ外周面39Rに取付けられ、該ブラケット41Rに回転自在に支承されている。
同様に、回転部材27Lのテーパ外周面39Lの周囲には、回転部材27Lと同心の円周上に等間隔で並ぶようにして、複数(フリーローラ29Rと同数)のフリーローラ29Lが配列されている。そして、これらのフリーローラ29Lは、それぞれ、ブラケット41Lを介してにテーパ外周面39Lに取付けられ、該ブラケット41Lに回転自在に支承されている。
前記車輪体5は、回転部材27R側のフリーローラ29Rと、回転部材27L側のフリーローラ29Lとの間に挟まれるようにして、回転部材27R,27Lと同軸心に配置されている。
この場合、図1及び図6に示すように、各フリーローラ29R,29Lは、その軸心C3が車輪体5の軸心C2に対して傾斜すると共に、車輪体5の直径方向(車輪体5をその軸心C2の方向で見たときに、該軸心C2と各フリーローラ29R,29Lとを結ぶ径方向)に対して傾斜する姿勢で配置されている。そして、このような姿勢で、各フリーローラ29R,29Lのそれぞれの外周面が車輪体5の内周面に斜め方向に圧接されている。
より一般的に言えば、右側のフリーローラ29Rは、回転部材27Rが軸心C2の周りに回転駆動されたときに、車輪体5との接触面で、軸心C2周りの方向の摩擦力成分(車輪体5の内周の接線方向の摩擦力成分)と、車輪体5の前記横断面中心C1の周り方向の摩擦力成分(円形の横断面の接線方向の摩擦力成分)とを車輪体5に作用させ得るような姿勢で、車輪体5の内周面に圧接されている。左側のフリーローラ29Lについても同様である。
この場合、前記したように、カバー部材21R,21Lは、図示しないバネによって、カバー部材21R,21Lの下端部側(二股の先端側)が狭まる方向に付勢されている。このため、この付勢力によって、右側のフリーローラ29Rと左側のフリーローラ29Lとの間に車輪体5が挟持されると共に、車輪体5に対する各フリーローラ29R,29Lの圧接状態(より詳しくはフリーローラ29R,29Lと車輪体5との間で摩擦力が作用し得る圧接状態)が維持される。
以上説明した構造を有する全方向移動車両1においては、電動モータ31R,31Lによりそれぞれ、回転部材27R,27Lを同方向に等速度で回転駆動した場合には、車輪体5が回転部材27R,27Lと同方向に軸心C2の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5が床面上を前後方向に輪転して、車両1の全体が前後方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その横断面中心C1の周りには回転しない。
また、例えば、回転部材27R,27Lを互いに逆方向に同じ大きさの速度で回転駆動した場合には、車輪体5は、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。これにより、車輪体5がその軸心C2の方向(すなわち左右方向)に移動し、ひいては、全方向移動車両1の全体が左右方向に移動することとなる。なお、この場合は、車輪体5は、その軸心C2の周りには回転しない。
さらに、回転部材27R,27Lを、互いに異なる速度(方向を含めた速度)で、同方向又は逆方向に回転駆動した場合には、車輪体5は、その軸心C2の周りに回転すると同時に、その横断面中心C1の周りに回転することとなる。
この時、これらの回転動作の複合動作(合成動作)によって、前後方向及び左右方向に対して傾斜した方向に車輪体5が移動し、ひいては、全方向移動車両1の全体が車輪体5と同方向に移動することとなる。この場合の車輪体5の移動方向は、回転部材27R,27Lの回転方向を含めた回転速度(回転方向に応じて極性が定義された回転速度ベクトル)の差に依存して変化するものとなる。
以上のように車輪体5の移動動作が行なわれるので、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転速度(回転方向を含む)を制御し、ひいては回転部材27R,27Lの回転速度を制御することによって、車両1の移動速度及び移動方向を制御できることとなる。
次に、本実施形態の全方向移動車両1の動作制御のための構成を説明する。なお、以降の説明では、図1及び図2に示すように、前後方向の水平軸をX軸、左右方向の水平軸をY軸、鉛直方向をZ軸とするXYZ座標系を想定し、前後方向、左右方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向と言うことがある。
まず、全方向移動車両1の概略的な動作制御を説明すると、本実施形態では、基本的には、シート3に着座した利用者がその上体を傾けた場合(詳しくは、利用者と全方向移動車両1とを合わせた全体の重心点の位置(水平面に投影した位置)を動かすように上体を傾けた場合)に、該上体を傾けた側に基体9がシート3と共に傾動する。そして、この時、基体9が傾いた側に全方向移動車両1が移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。例えば、利用者が上体を前傾させ、ひいては、基体9をシート3と共に前傾させると、全方向移動車両1が前方に移動するように、車輪体5の移動動作が制御される。
すなわち、本実施形態では、利用者が上体を動かし、ひいては、シート3と共に基体9を傾動させるという動作が、全方向移動車両1に対する1つの基本的な操縦操作(全方向移動車両1の動作要求)とされ、その操縦操作に応じて車輪体5の移動動作がアクチュエータ装置7を介して制御される。
ここで、本実施形態の全方向移動車両1は、その全体の接地面としての車輪体5の接地面が、全方向移動車両1とこれに搭乗する利用者との全体を床面に投影した領域に比して面積が小さい単一の局所領域となり、その単一の局所領域だけに床反力が作用する。このため、基体9が傾倒しないようにするためには、利用者及び車両1の全体の重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置するように、車輪体5を動かす必要がある。
そこで、本実施形態では、利用者及び車両1の全体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(より正確には当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、基本的には、基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させるように、車輪体5の移動動作が制御される。
また、車両1を発進させる場合等において、アクチュエータ装置7による推進力とは別に、例えば利用者が必要に応じて自身の足により床を蹴り、それにより車両1の移動速度を増速させる推進力(乗員の足平と床との摩擦力による推進力)を、付加的な外力として車両1に作用させた場合には、それに応じて車両1の移動速度(より正確には、利用者及び車両の全体の重心点の移動速度)が増速するように、車輪体5の移動動作が制御される。なお、当該推進力の付加が停止された状態では、車両1の移動速度が一旦、一定速度に保持された後、減衰して、該車両1が停止するように、車輪体5の移動動作が制御される(車輪体5の制動制御が行なわれる)。
さらに、車両1に利用者が搭乗していない状態では、車両1の単体の重心点が、車輪体5の中心点(軸心C2上の中心点)のほぼ真上に位置する状態(より正確には当該重心点が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態)での基体9の姿勢を目標姿勢とし、該基体9の実際の姿勢を目標姿勢に収束させ、ひいては、基体9が傾倒することなく車両1が自立するように、車輪体5の移動動作が制御される。
本実施形態では、以上の如き車両1の動作制御を行なうために、図1及び図2に示すように、マイクロコンピュータや電動モータ31R,31Lのドライブ回路ユニットなどを含む電子回路ユニットにより構成された制御ユニット50と、基体9の所定の部位の鉛直方向(重力方向)に対する傾斜角θb及びその変化速度(=dθb/dt)を計測するための傾斜センサ52と、シート3に作用する荷重を検出する荷重センサ54と、電動モータ31R,31Lのそれぞれの出力軸の回転角度及び回転角速度を検出するための角度センサとしてのロータリーエンコーダ56R,56Lがそれぞれ、車両1の適所に搭載されている。
この場合、制御ユニット50及び傾斜センサ52は、例えば、基体9の第1支柱フレーム13aの内部に収容された状態で該第1支柱フレーム13aに取付けられている。また、荷重センサ54は、シート3に内蔵されている。また、ロータリーエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、電動モータ31R,31Lと一体に設けられている。なお、ロータリーエンコーダ56R,56Lは、それぞれ、回転部材27R,27Lに装着してもよい。上記傾斜センサ52は、より詳しくは、加速度センサとジャイロセンサ等のレートセンサ(角速度センサ)とから構成され、これらのセンサの検出信号を制御ユニット50に出力する。
そして、制御ユニット50が、傾斜センサ52の加速度センサ及びレートセンサの出力を基に、所定の計測演算処理(これは公知の演算処理でよい)を実行することによって、傾斜センサ52を搭載した部位(本実施形態では支柱フレーム13)の、鉛直方向に対する傾斜角度θbの計測値とその変化速度(微分値)である傾斜角速度θbdotの計測値とを算出する。
この場合、計測する傾斜角度θb(以降、基体傾斜角度θbということがある)は、より詳しくは、それぞれ、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θb_xと、X軸周り方向(ロール方向)の成分θb_yとから成る。同様に、計測する傾斜角速度θbdot(以降、基体傾斜角速度θbdotということがある)も、Y軸周り方向(ピッチ方向)の成分θbdot_x(=dθb_x/dt)と、X軸周り方向(ロール方向)の成分θbdot_y(=dθb_y/dt)とから成る。
なお、本実施形態の説明では、上記基体傾斜角度θbなど、X軸及びY軸の各方向(又は各軸周り方向)の成分を有する運動状態量等の変数、あるいは、該運動状態量に関連する係数等の変数に関しては、その各成分を区別して表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_x”又は“_y”を付加する。
この場合において、並進速度等の並進運動に係わる変数については、そのX軸方向の成分に添え字“_x”を付加し、Y軸方向の成分に添え字“_y”を付加する。
一方、角度、回転速度(角速度)、角加速度など、回転運動に係わる変数については、並進運動に係わる変数と添え字を揃えるために、便宜上、Y軸周り方向の成分に添え字“_x”を付加し、X軸周り方向の成分に添え字“_y”を付加する。
さらに、X軸方向の成分(又はY軸周り方向の成分)と、Y軸方向の成分(又はX軸周り方向の成分)との組として変数を表記する場合には、該変数の参照符号に添え字“_xy”を付加する。例えば、上記基体傾斜角度θbを、Y軸周り方向の成分θb_xとX軸周り方向の成分θb_yの組として表現する場合には、「基体傾斜角度θb_xy」というように表記する。
前記荷重センサ54は、利用者の重量による荷重を受けるようにシート3に内蔵され、その荷重に応じた検出信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、この荷重センサ54の出力により示される荷重の計測値に基づいて、車両1に利用者が搭乗しているか否かを判断すると共に、シート3に作用する荷重が一定となるように直動アクチュエータ14を制御する。言い換えれば、制御ユニット50は、シート3に作用する荷重が一定となるようにシート3の高さ制御を行う。
ロータリーエンコーダ56Rは、電動モータ31Rの出力軸が所定角度回転する毎にパルス信号を発生し、このパルス信号を制御ユニット50に出力する。そして、制御ユニット50が、そのパルス信号を基に、電動モータ53Rの出力軸の回転角度を計測し、さらにその回転角度の計測値の時間的変化率(微分値)を電動モータ53Rの回転角速度として計測する。電動モータ31L側のロータリーエンコーダ56Lについても同様である。
制御ユニット50は、上記の各計測値を用いて所定の演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の目標値である速度指令値を決定し、その速度指令値に従って、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度をフィードバック制御する。
なお、電動モータ31Rの出力軸の回転角速度と、回転部材27Rの回転角速度との間の関係は、該出力軸と回転部材27Rとの間の一定値の減速比に応じた比例関係になるので、本実施形態の説明では、便宜上、電動モータ31Rの回転角速度は、回転部材27Rの回転角速度を意味するものとする。同様に、電動モータ31Lの回転角速度は、回転部材27Lの回転角速度を意味するものとする。
以下に、制御ユニット50の制御処理をさらに詳細に説明する。
制御ユニット50は、所定の制御処理周期で図7のフローチャートに示す処理(メインルーチン処理)を実行する。
まず、ステップS1において、制御ユニット50は、傾斜センサ52の出力を取得する。
次いで、ステップS2に進んで、制御ユニット50は、取得した傾斜センサ52の出力を基に、基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sと、基体傾斜角速度θbdotの計測値θbdot_xy_sとを算出する。
なお、以降の説明では、上記計測値θb_xy_sなど、変数(状態量)の実際の値の観測値(計測値又は推定値)を参照符号により表記する場合に、該変数の参照符号に、添え字“_s”を付加する。
次いで、制御ユニット50は、ステップS3において、荷重センサ54の出力を取得した後、ステップS4の判断処理を実行する。この判断処理においては、制御ユニット50は、取得した荷重センサ54の出力が示す荷重計測値があらかじめ設定された所定値よりも大きいか否かによって、車両1に乗員が搭乗しているか否か(シート3に乗員が着座しているか否か)を判断する。
そして、制御ユニット50は、ステップS4の判断結果が肯定的である場合には、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータ(各種ゲインの基本値など)の値を設定する処理とを、それぞれステップS5、S6で実行する。
ステップS5においては、制御ユニット50は、基体傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた搭乗モード用の目標値を設定する。
ここで、「搭乗モード」は、図8(a)に示すように、車両1に利用者が搭乗している場合での車両1の動作モードを意味する。この搭乗モード用の目標値θb_xy_objは、車両1とシート3に着座した利用者との全体の重心点(以降、車両・乗員全体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。
また、ステップS6においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた搭乗モード用の値を設定する。なお、定数パラメータは、後述するhx,hy,Ki_a_x,Ki_b_x,Ki_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)等である。
以上の如くステップS5,S6の処理を実行した後、制御ユニット50は、次にステップS7において、搭乗モード時のシートアシスト力演算処理を実行することにより、シート3に作用する荷重が一定となるように、直動アクチュエータ14の伸縮速度(具体的には第2支柱フレーム13b、ひいてはシート3の上下動の速度)の速度指令値を決定する。なお、この搭乗モード時のシートアシスト力演算処理の詳細は後述する。
そして、制御ユニット50は、次のステップS8において、搭乗モード時の車両制御演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令値を決定する。この搭乗モード時の車両制御演算処理の詳細は後述する。
一方、上記ステップS4の判断結果が否定的である場合には、制御ユニット50は、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objを設定する処理と、車両1の動作制御用の定数パラメータの値を設定する処理とを、ステップS9、S10で実行する。
ステップS9においては、制御ユニット50は、傾斜角度θbの目標値θb_xy_objとして、あらかじめ定められた補助モード用の目標値を設定する。
ここで、「補助モード」は、図8(b)に示すように、車両1に利用者が搭乗していないが、シート3によって利用者の尻部を支えることにより、利用者の歩行を補助する場合での車両1の動作モードを意味する。この補助モード用の目標値θb_xy_objは、車両1単体の重心点(以降、車両単体重心点という)が車輪体5の接地面のほぼ真上に位置する状態となる基体9の姿勢において、傾斜センサ52の出力に基づき計測される基体傾斜角度θbの計測値θb_xy_sに一致又はほぼ一致するようにあらかじめ設定されている。この補助モード用の目標値θb_xy_objは、搭乗モード用の目標値θb_xy_objと一般的には異なる。
また、ステップS10においては、制御ユニット50は、車両1の動作制御用の定数パラメータの値として、あらかじめ定められた補助モード用の値を設定する。この補助モード用の定数パラメータの値は、搭乗モード用の定数パラメータの値と異なる。
搭乗モードと補助モードとで、上記定数パラメータの値を異ならせるのは、それぞれのモードで上記重心点の高さや、全体質量等が異なることに起因して、制御入力に対する車両1の動作の応答特性が互いに異なるからである。
以上の如くステップS9,S10の処理を実行した後、制御ユニット50は、次にステップS11において、補助モード時のシートアシスト力演算処理を実行することにより、シート3に作用する荷重が一定となるように、直動アクチュエータ14の伸縮速度の速度指令値を決定する。なお、この補助モード時のシートアシスト力演算処理の詳細は後述する。そして、制御ユニット50は、次のステップS12において、補助モード時の車両制御演算処理を実行することによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令値を決定する。この補助モード時の車両制御演算処理の詳細は後述する。
以上のステップS5、S6、S9、S10の処理によって、搭乗モード及び補助モードの動作モード毎に個別に、基体傾斜角度θb_xyの目標値θb_xy_objと定数パラメータの値とが設定される。なお、これらステップS5、S6、S9、S10の処理は、制御処理周期毎に実行することは必須ではなく、ステップS4の判断結果が変化した場合にだけ実行するようにしてもよい。
補足すると、搭乗モード及び補助モードのいずれにおいても、基体傾斜角速度θbdotのY軸周り方向の成分θbdot_xの目標値とX軸周り方向の成分θbdot_yの目標値とは、いずれも“0”である。このため、基体傾斜角速度θbdot_xyの目標値を設定する処理は不要である。
次いで、ステップS13に進んで、制御ユニット50は、搭乗モード時においては、ステップS7及びS8で決定した速度指令値に応じて、伸縮用モータ14a、電動モータ31R,31Lの動作制御処理を実行する一方、補助モード時においては、ステップS9及びS10で決定した速度指令値に応じて、伸縮用モータ14a、電動モータ31R,31Lの動作制御処理を実行する。
この動作制御処理において、制御ユニット50は、ステップS7またはS11で決定した伸縮速度(シート3の上下動の速度)の速度指令値と、伸縮用モータ14aの回転軸に設置されたロータリーエンコーダ(図示省略)の出力に基づき計測した伸縮用モータ14aの回転速度の計測値との偏差に応じて、該偏差を“0”に収束させるように伸縮用モータ14aの出力トルクの目標値(目標トルク)を決定する。そして、制御ユニット50は、その目標トルクの出力トルクを伸縮用モータ14aに出力させるように該伸縮用モータ14aの通電電流を制御する。
また、この動作制御処理において、制御ユニット50は、ステップS8またはS12で決定した電動モータ31Rの速度指令値と、ロータリーエンコーダ56Rの出力に基づき計測した電動モータ31Rの回転速度の計測値との偏差に応じて、該偏差を“0”に収束させるように電動モータ31Rの出力トルクの目標値(目標トルク)を決定する。そして、制御ユニット50は、その目標トルクの出力トルクを電動モータ31Rに出力させるように該電動モータ31Rの通電電流を制御する。左側の電動モータ31Lの動作制御についても同様である。
以上が、制御ユニット50が実行する全体的な制御処理である。
次に、上記ステップS7について、つまり搭乗モード時のシートアシスト力演算処理の詳細について説明する。
制御ユニット50は、荷重センサ54の出力信号に基づいて、シート3に作用するZ軸方向の荷重計測値Fzactを取得すると、その取得した荷重計測値Fzactと、荷重目標値Fzcmd(一定値)と、比例ゲイン係数Kpとからなる下記(1)式を用いて伸縮方向の速度指令値vzcmdを決定する。
vzcmd=Kp・(Fzact−Fzcmd) ・・・(1)
これにより、搭乗モード時において、シート3に作用する荷重が一定となるような、直動アクチュエータ14の伸縮速度の速度指令値vzcmdが決定されることになる。
次に、上記ステップS11について、つまり補助モード時のシートアシスト力演算処理の詳細について説明する。
制御ユニット50は、荷重センサ54の出力信号に基づいて、シート3に作用するZ軸方向の荷重計測値Fzactを取得すると、この荷重計測値Fzactを微分して荷重計測微分値Fzact_dotを算出し、これら荷重計測値Fzactと、荷重計測微分値Fzact_dotと、荷重目標値Fzcmd(一定値)と、比例ゲイン係数Kpと、微分ゲイン係数Kdからなる下記(2)式を用いて伸縮方向の速度指令値vzcmdを決定する。
vzcmd=Kp・(Fzact−Fzcmd)+Kd・Fzcmd_dot ・・・(2)
これにより、補助モード時において、シート3に作用する荷重が一定となるような、直動アクチュエータ14の伸縮速度の速度指令値vzcmdが決定されることになる。
なお、上記(1)式に示すように、搭乗モード時では、シート3の荷重変動が小さいので(利用者はシート3に着座しているため)比例制御のみで対応可能であるが、上記(2)式に示すように、補助モード時では、シート3の荷重変動が大きいので(利用者はシート3に体重を預けつつ歩行しているため)微分制御を加えて追従性を良くしている。
次に、上記ステップS8について、つまり搭乗モード時の車両制御演算処理の詳細について説明する。
なお、以降の説明においては、前記搭乗モードにおける車両・乗員全体重心点と、前記自立モードにおける車両単体重心点とを総称的に、車両系重心点という。該車両系重心点は、車両1の動作モードが搭乗モードである場合には、車両・乗員全体重心点を意味し、自立モードである場合には、車両単体重心点を意味する。
また、以降の説明では、制御ユニット50が各制御処理周期で決定する値(更新する値)に関し、現在の(最新の)制御処理周期で決定する値を今回値、その1つ前の制御処理周期で決定した値を前回値ということがある。そして、今回値、前回値を特にことわらない値は、今回値を意味する。
また、X軸方向の速度及び加速度に関しては、前方向きを正の向きとし、Y軸方向の速度及び加速度に関しては、左向きを正の向きとする。
本実施形態では、前記車両系重心点の動力学的な挙動(詳しくは、Y軸方向からこれに直交する面(XZ平面)に投影して見た挙動と、X軸方向からこれに直交する面(YZ平面)に投影して見た挙動)が、近似的に、図9に示すような、倒立振子モデルの挙動(倒立振子の動力学的挙動)によって表現されるものとして、ステップS8の車両制御演算処理が行なわれる。
なお、図9において、括弧を付していない参照符号は、Y軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号であり、括弧付きの参照符号は、X軸方向から見た倒立振子モデルに対応する参照符号である。
この場合、Y軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデルは、車両系重心点に位置する質点60_xと、Y軸方向に平行な回転軸62a_xを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_x(以降、仮想車輪62_xという)とを備える。そして、質点60_xが、仮想車輪62_xの回転軸62a_xに直線状のロッド64_xを介して支持され、該回転軸62a_xを支点として該回転軸62a_xの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_xの運動が、Y軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_xの傾斜角度θbe_xがY軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_x_sと基体傾斜角度目標値θb_x_objとの偏差θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_xの傾斜角度θbe_xの変化速度(=dθbe_x/dt)がY軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_xの移動速度Vw_x(X軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のX軸方向の移動速度に一致するものとされる。
同様に、X軸方向から見た挙動を表現する倒立振子モデル(図9の括弧付きの符号を参照)は、車両系重心点に位置する質点60_yと、X軸方向に平行な回転軸62a_yを有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪62_y(以降、仮想車輪62_yという)とを備える。そして、質点60_yが、仮想車輪62_yの回転軸62a_yに直線状のロッド64_yを介して支持され、該回転軸62a_yを支点として該回転軸62a_yの周りに揺動自在とされている。
この倒立振子モデルでは、質点60_yの運動が、X軸方向から見た車両系重心点の運動に相当する。また、鉛直方向に対するロッド64_yの傾斜角度θbe_yがX軸周り方向での基体傾斜角度計測値θb_y_sと基体傾斜角度目標値θb_y_objとの偏差θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)に一致するものとされる。また、ロッド64_yの傾斜角度θbe_yの変化速度(=dθbe_y/dt)がX軸周り方向の基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに一致するものとされる。また、仮想車輪62_yの移動速度Vw_y(Y軸方向の並進移動速度)は、車両1の車輪体5のY軸方向の移動速度に一致するものとされる。
なお、仮想車輪62_x,62_yは、それぞれ、あらかじめ定められた所定値Rw_x,Rw_yの半径を有するものとされる。
また、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yと、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L(より正確には、回転部材27R,27Lのそれぞれの回転角速度ω_R,ω_L)との間には、下記(3)式、(4)式の関係が成立するものとされる。
ωw_x=(ω_R+ω_L)/2 ・・・(3)
ωw_y=C・(ω_R−ω_L)/2 ・・・(4)
なお、上記(4)式における“C”は、前記フリーローラ29R,29Lと車輪体5との間の機構的な関係や滑りに依存する所定値の係数である。
ここで、図9に示す倒立振子モデルの動力学は、下記(5)式、(6)式により表現される。なお、下記(5)式は、Y軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式であり、下記(6)式は、X軸方向から見た倒立振子モデルの動力学を表現する式である。
2θbe_x/dt2=α_x・θbe_x+β_x・ωwdot_x ・・・(5)
2θbe_y/dt2=α_y・θbe_y+β_y・ωwdot_y ・・・(6)
上記(5)式におけるωwdot_xは、仮想車輪62_xの回転角加速度(回転角速度ωw_xの1階微分値)、α_xは、質点60_xの質量や高さh_xに依存する係数、β_xは、仮想車輪62_xのイナーシャ(慣性モーメント)や半径Rw_xに依存する係数である。上記(6)式におけるωwdot_y、α_y、β_yについても上記と同様である。
これら(5)式、(6)式から判るように、倒立振子の質点60_x,60_yの運動(ひいては車両系重心点の運動)は、それぞれ、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_x、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yに依存して規定される。
そこで、本実施形態では、Y軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_xの回転角加速度ωwdot_xを用いると共に、X軸方向から見た車両系重心点の運動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_yの回転角加速度ωwdot_yを用いる。
そして、ステップS8の車両制御演算処理を概略的に説明すると、制御ユニット50は、X軸方向で見た質点60_xの運動と、Y軸方向で見た質点60_yの運動とが、車両系重心点の所望の運動に対応する運動となるように、操作量としての上記回転角加速度ωwdot_x,ωwdot_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdを決定する。さらに、制御ユニット50は、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdをそれぞれ積分してなる値を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x,ωw_yの指令値(目標値)である仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdとして決定する。
そして、制御ユニット50は、仮想車輪回転角速度指令ωw_x_cmdに対応する仮想車輪62_xの移動速度(=Rw_x・ωw_x_cmd)と、仮想車輪回転角速度指令ωw_y_cmdに対応する仮想車輪62_yの移動速度(=Rw_y・ωw_y_cmd)とを、それぞれ、車両1の車輪体5のX軸方向の目標移動速度、Y軸方向の目標移動速度とし、それらの目標移動速度を実現するように、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_cmd,ω_L_cmdを決定する。
なお、本実施形態では、操作量(制御入力)としての上記仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmd,ωwdot_y_cmdは、それぞれ、後述する(9)式,(10)式に示す如く、3個の操作量成分を加え合わせることによって決定される。
制御ユニット50は、上記の如き、ステップS8の車両制御演算処理を実行するための機能として、図10のブロック図で示す機能を備えている。
すなわち、制御ユニット50は、基体傾斜角度計測値θb_xy_sと基体傾斜角度目標値θb_xy_objとの偏差である基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sを算出する偏差演算部70と、前記車両系重心点の移動速度である重心速度Vb_xyの観測値としての重心速度推定値Vb_xy_sを算出する重心速度算出部72と、利用者等による車両1の操縦操作(車両1に推進力を付加する操作)によって要求されていると推定される上記重心速度Vb_xyの要求値としての要求重心速度Vb_xy_aimを生成する要求重心速度生成部74と、これらの重心速度推定値Vb_xy_s及び要求重心速度Vb_xy_aimから、電動モータ31R,31Lの回転角速度の許容範囲に応じた制限を加味して、重心速度Vb_xyの目標値としての制御用目標重心速度Vb_xy_mdfdを決定する重心速度制限部76と、後述する(9)式,(10)式のゲイン係数の値を調整するためのゲイン調整パラメータKr_xyを決定するゲイン調整部78とを備える。
制御ユニット50は、さらに、前記仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを算出する姿勢制御演算部80と、この仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを、右側の電動モータ31Rの速度指令ω_R_cmd(回転角速度の指令値)と左側の電動モータ31Lの速度指令ω_L_cmd(回転角速度の指令値)との組に変換するモータ指令演算部82とを備える。
なお、図10中の参照符号84を付したものは、姿勢制御演算部80が制御処理周期毎に算出する仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdを入力する遅延要素を示している。該遅延要素84は、各制御処理周期において、仮想車輪回転角速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_pを出力する。
前記ステップS8の車両制御演算処理では、これらの上記の各処理部の処理が以下に説明するように実行される。
すなわち、制御ユニット50は、まず、偏差演算部70の処理と重心速度算出部72の処理を実行する。
偏差演算部70には、前記ステップS2で算出された基体傾斜角度計測値θb_xy_s(θb_x_s及びθb_y_s)と、前記ステップS5で設定された目標値θb_xy_obj(θb_x_obj及びθb_y_obj)とが入力される。そして、偏差演算部70は、θb_x_sからθb_x_objを減算することによって、Y軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s(=θb_x_s−θb_x_obj)を算出すると共に、θb_y_sからθb_y_objを減算することによって、X軸周り方向の基体傾斜角度偏差計測値θbe_y_s(=θb_y_s−θb_y_obj)を算出する。
ここで、搭乗モード時では、目標値θb_xy_objは0度に設定されており、結局、基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_s=基体傾斜角度計測値θb_xy_sとなる。
前記重心速度算出部72には、前記ステップS2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_s(θbdot_x_s及びθbdot_y_s)の今回値が入力されると共に、仮想車輪速度指令ωw_xy_cmdの前回値ωw_xy_cmd_p(ωw_x_cmd_p及びωw_y_cmd_p)が遅延要素84から入力される。そして、重心速度算出部72は、これらの入力値から、前記倒立振子モデルに基づく所定の演算式によって、重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を算出する。
具体的には、重心速度算出部72は、下記(7)式、(8)式により、Vb_x_s及びVb_y_sをそれぞれ算出する。
Vb_x_s=Rw_x・ωw_x_cmd_p+h_x・θbdot_x_s ・・・(7)
Vb_y_s=Rw_y・ωw_y_cmd_p+h_y・θbdot_y_s ・・・(8)
これら(7)式、(8)式において、Rw_x,Rw_yは、前記したように、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの半径であり、これらの値は、あらかじめ設定された所定値である。また、h_x,h_yは、それぞれ倒立振子モデルの質点60_x,60_yの高さである。この場合、本実施形態では、車両系重心点の高さは、ほぼ一定に維持されるものとされる。そこで、h_x,h_yの値としては、それぞれ、あらかじめ設定された所定値が用いられる。補足すると、高さh_x,h_yは、前記ステップS6において値を設定する定数パラメータに含まれるものである。
上記(7)式の右辺の第1項は、仮想車輪62_xの速度指令の前回値ωw_x_cmd_pに対応する該仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度であり、この移動速度は、車輪体5のX軸方向の実際の移動速度の現在値に相当するものである。また、(7)式の右辺の第2項は、基体9がY軸周り方向にθbdot_x_sの傾斜角速度で傾動することに起因して生じる車両系重心点のX軸方向の移動速度(車輪体5に対する相対的な移動速度)の現在値に相当するものである。これらのことは、(8)式についても同様である。
なお、前記ロータリーエンコーダ56R,56Lの出力を基に計測される電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の計測値(今回値)の組を、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度の組に変換し、それらの回転角速度を、式05x、05yのωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pの代わりに用いてもよい。ただし、回転角速度の計測値に含まれるノイズの影響を排除する上では、目標値であるωw_x_cmd_p、ωw_y_cmd_pを使用することが有利である。
次に、制御ユニット50は、要求重心速度生成部74の処理とゲイン調整部78の処理とを実行する。この場合、要求重心速度生成部74及びゲイン調整部78には、それぞれ、重心速度算出部72で上記の如く算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)が入力される。
そして、要求重心速度生成部74は、詳細は後述するが、車両1の動作モードが搭乗モードである場合に、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、要求重心速度V_xy_aim(V_x_aim,V_y_aim)を決定する。なお、本実施形態では、車両1の動作モードが補助モードである場合には、要求重心速度生成部74は、要求重心速度V_x_aim及びV_y_aimをいずれも“0”とする。
また、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)を基に、前記ゲイン調整パラメータKr_xy(Kr_x及びKr_y)を決定する。
このゲイン調整部78の処理を図11及び図12を参照して以下に説明する。
図11に示すように、ゲイン調整部78は、入力された重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをリミット処理部86に入力する。このリミット処理部86では、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度の許容範囲に応じた制限を適宜、加えることによって、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1を生成する。出力値Vw_x_lim1は、前記仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xの制限後の値、出力値Vw_y_lim1は、前記仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yの制限後の値としての意味を持つ。
このリミット処理部86の処理を、図12を参照してさらに詳細に説明する。なお、図12中の括弧付きの参照符号は、後述する重心速度制限部76のリミット処理部104の処理を示すものであり、リミット処理部86の処理に関する説明では無視してよい。
リミット処理部86は、まず、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sをそれぞれ処理部86a_x,86a_yに入力する。処理部86a_xは、Vb_x_sを仮想車輪62_xの半径Rw_xで除算することによって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度をVb_x_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_xの回転角速度ωw_x_sを算出する。同様に、処理部86a_yは、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度をVb_y_sに一致させたと仮定した場合の該仮想車輪62_yの回転角速度ωw_y_s(=Vb_y_s/Rw_y)を算出する。
次いで、リミット処理部86は、ωw_x_s,ωw_y_sの組を、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31Rの回転角速度ω_R_sと電動モータ31Lの回転角速度ω_L_sとの組に変換する。
この変換は、本実施形態では、上記(2)式,(3)式のωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_s,ωw_y_s,ω_R_s,ω_L_sに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_s,ω_L_sを未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、XY−RL変換部86bの出力値ω_R_s,ω_L_sをそれぞれ、リミッタ86c_R,86c_Lに入力する。このとき、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する右モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_R_sをそのまま出力値ω_R_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Rは、ω_R_sが、右モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該右モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_R_sに近い方の境界値を出力値ω_R_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Rの出力値ω_R_lim1は、右モータ用許容範囲内の値に制限される。
同様に、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、あらかじめ設定された所定値の上限値(>0)と下限値(<0)とを有する左モータ用許容範囲内に収まっている場合には、ω_L_sをそのまま出力値ω_L_lim1として出力する。また、リミッタ86c_Lは、ω_L_sが、左モータ用許容範囲から逸脱している場合には、該左モータ用許容範囲の上限値と下限値とのうちのω_L_sに近い方の境界値を出力値ω_L_lim1として出力する。これにより、リミッタ86c_Lの出力値ω_L_lim1は、左モータ用許容範囲内の値に制限される。
上記右モータ用許容範囲は右側の電動モータ31Rの回転角速度(絶対値)が高くなり過ぎないようにし、ひいては、電動モータ31Rが出力可能なトルクの最大値が低下するのを防止するために設定された許容範囲である。このことは、左モータ用許容範囲についても同様である。
次いで、リミット処理部86は、リミッタ86c_R,86c_Lのそれぞれの出力値ω_R_lim1,ω_L_lim1の組を、RL−XY変換部86dにより、仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの回転角速度ωw_x_lim1,ωw_y_lim1の組に変換する。
この変換は、前記XY−RL変換部86bの変換処理の逆変換の処理である。この処理は、前記(2)式、(3)式のωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1,ω_R_lim1,ω_L_lim1に置き換えて得られる連立方程式を、ωw_x_lim1,ωw_y_lim1を未知数として解くことにより行なわれる。
次いで、リミット処理部86は、RL−XY変換部86dの出力値ωw_x_lim1,ωw_y_lim1をそれぞれ処理部86e_x,86e_yに入力する。処理部86e_xは、ωw_x_lim1に仮想車輪62_xの半径Rw_xを乗じることによって、ωw_x_lim1を仮想車輪62_xの移動速度Vw_x_lim1に変換する。同様に、処理部86e_yは、ωw_y_lim1を仮想車輪62_yの移動速度Vw_y_lim1(=ωw_y_lim1・Rw_y)に変換する。
以上のリミット処理部86の処理によって、仮想車輪62_xのX軸方向の移動速度Vw_xと、仮想車輪62_yのY軸方向の移動速度Vw_yとをそれぞれ重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合(換言すれば、車輪体5のX軸方向の移動速度とY軸方向の移動速度とをそれぞれ、Vb_x_s,Vb_y_sに一致させたと仮定した場合)に、それらの移動速度を実現するために必要な電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sが、両方とも、許容範囲内に収まっている場合には、Vb_x_s,Vb_y_sにそれぞれ一致する出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
一方、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_s,ω_L_sの両方又は一方が許容範囲から逸脱している場合には、その両方又は一方の回転角速度が強制的に許容範囲内に制限された上で、その制限後の電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度ω_R_lim1,ω_L_lim1の組に対応する、X軸方向及びY軸方向の移動速度Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組がリミット処理部86から出力される。
従って、リミット処理部86は、その出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1をそれぞれVb_x_s,Vb_y_sに一致させるように、出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の組を生成する。
図11の説明に戻って、ゲイン調整部78は、次に、演算部88_x,88_yの処理を実行する。演算部88_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sと、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1とが入力される。そして、演算部88_xは、Vw_x_lim1からVb_x_sを減算してなる値Vover_xを算出して出力する。また、演算部88_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sと、リミット処理部86の出力値Vw_y_lim1とが入力される。そして、演算部88_yは、Vw_y_lim1からVb_y_sを減算してなる値Vover_yを算出して出力する。
この場合、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合には、Vw_x_lim1=Vb_x_s、Vw_y_lim1=Vb_y_sとなるので、演算部88_x,88_yのそれぞれの出力値Vover_x,Vover_yはいずれも“0”となる。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合には、Vw_x_lim1のVb_x_sからの修正量(=Vw_x_lim1−Vb_x_s)と、Vw_y_lim1のVb_y_sからの修正量(=Vw_y_lim1−Vb_y_s)とがそれぞれ、演算部88_x,88_yから出力される。
次いで、ゲイン調整部78は、演算部88_xの出力値Vover_xを処理部90_x,92_xに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_xを決定する。また、ゲイン調整部78は、演算部88_yの出力値Vover_yを処理部90_y,92_yに順番に通すことによって、ゲイン調整パラメータKr_yを決定する。なお、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yは、いずれも“0”から“1”までの範囲内の値である。
上記処理部90_xは、入力されるVover_xの絶対値を算出して出力する。また、処理部92_xは、その出力値Kr_xが入力値|Vover_x|に対して単調に増加し、且つ、飽和特性を有するようにKr_xを生成する。該飽和特性は、入力値がある程度大きくなると、入力値の増加に対する出力値の変化量が“0”になるか、もしくは、“0”に近づく特性である。
この場合、本実施形態では、処理部92_xは、入力値|Vover_x|があらかじめ設定された所定値以下である場合には、該入力値|Vover_x|に所定値の比例係数を乗じてなる値をKr_xとして出力する。また、処理部92_xは、入力値|Vover_x|が所定値よりも大きい場合には、“1”をKr_xとして出力する。なお、上記比例係数は、|Vover_x|が所定値に一致するときに、|Vover_x|と比例係数との積が“1”になるように設定されている。
また、処理部90_y,92_yの処理は、それぞれ上記した処理部90_x,92_xの処理と同様である。
以上説明したゲイン調整部78の処理によって、リミット処理部86での出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yはいずれも“0”に決定される。
一方、リミット処理部86の出力値Vw_x_lim1,Vw_y_lim1が、入力値Vb_x_s,Vb_y_sに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、それぞれ、重心速度推定値Vb_x_s,Vb_y_sに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、前記修正量Vover_x,Vover_yのそれぞれの絶対値に応じて、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yの値がそれぞれ決定される。この場合、Kr_xは、“1”を上限値して、修正量Vx_overの絶対値が大きいほど、大きな値になるように決定される。このことは、Kr_yについても同様である。
図10の説明に戻って、制御ユニット50は、重心速度算出部72及び要求重心速度生成部74の処理を前記した如く実行した後、次に、重心速度制限部76の処理を実行する。
この重心速度制限部76には、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_s(Vb_x_s及びVb_y_s)と、要求重心速度生成部74で決定された要求重心速度Vb_xy_aim(Vb_x_aim及びVb_y_aim)とが入力される。そして、重心速度制限部76は、これらの入力値を使用して、図13のブロック図で示す処理を実行することによって、制御用目標重心速度Vb_xy_mdfd(Vb_x_mdfd及びVb_y_mdfd)を決定する。
具体的には、重心速度制限部76は、まず、定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行する。
この場合、定常偏差算出部94_xには、X軸方向の重心速度推定値Vb_x_sが入力されると共に、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdの前回値Vb_x_mdfd_pが遅延要素96_xを介して入力される。そして、定常偏差算出部94_xは、まず、入力されるVb_x_sが比例・微分補償要素(PD補償要素)94a_xに入力する。この比例・微分補償要素94_xは、その伝達関数が1+Kd・Sにより表される補償要素であり、入力されるVb_x_sと、その微分値(時間的変化率)に所定値の係数Kdを乗じてなる値とを加算し、その加算結果の値を出力する。
次いで、定常偏差算出部94_xは、入力されるVb_x_mdfd_pを、比例・微分補償要素94_xの出力値から減算してなる値を演算部94b_xにより算出した後、この演算部94b_xの出力値を、位相補償機能を有するローパスフィルタ94c_xに入力する。このローパスフィルタ94c_xは、伝達関数が(1+T2・S)/(1+T1・S)により表されるフィルタである。そして、定常偏差算出部94_xは、このローパスフィルタ94c_xの出力値Vb_x_prdを出力する。
また、定常偏差算出部94_yには、Y軸方向の重心速度推定値Vb_y_sが入力されると共に、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdの前回値Vb_y_mdfd_pが遅延要素96_yを介して入力される。
そして、定常偏差算出部94_yは、上記した定常偏差算出部94_xと同様に、比例・微分補償要素94a_y、演算部94b_y及びローパスフィルタ94c_yの処理を順次実行し、ローパスフィルタ94c_yの出力値Vb_y_prdを出力する。
ここで、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdは、Y軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればY軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動状態)から推測される、将来のX軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。同様に、定常偏差算出部94_y出力値Vb_y_prdは、X軸方向から見た車両系重心点の現在の運動状態(換言すればX軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動状態)から推測される、将来のY軸方向の重心速度推定値の収束予測値の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdに対する定常偏差としての意味を持つものである。以降、定常偏差算出部94_x,94_yのそれぞれの出力値Vb_x_prd,Vb_y_prdを重心速度定常偏差予測値という。
重心速度制限部76は、上記の如く定常偏差算出部94_x,94_yの処理を実行した後、定常偏差算出部94_xの出力値Vb_x_prdに要求重心速度Vb_x_aimを加算する処理と、定常偏差算出部94_yの出力値Vb_y_prdに要求重心速度Vb_y_aimを加算する処理とをそれぞれ、演算部98_x,98_yにより実行する。
従って、演算部98_xの出力値Vb_x_tは、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdに、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimを付加した速度となる。同様に、演算部98_yの出力値Vb_y_tは、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdに、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimを付加した速度となる。
なお、車両1の動作モードが補助モードである場合等、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdがそのまま、演算部98_xの出力値Vb_x_tとなる。同様に、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”である場合には、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdがそのまま、演算部98_yの出力値Vb_y_tとなる。
次いで、重心速度制限部76は、演算部98_x,98_yのそれぞれの出力値Vb_x_t,Vb_y_tを、リミット処理部100に入力する。このリミット処理部100の処理は、前記したゲイン調整部78のリミット処理部86の処理と同じである。この場合、図12に括弧付きに参照符号で示す如く、リミット処理部100の各処理部の入力値及び出力値だけがリミット処理部86と相違する。
具体的には、リミット処理部100では、前記仮想車輪62_x,62_yのそれぞれの移動速度Vw_x,Vw_yを、Vb_x_t,Vb_y_tにそれぞれ一致させたと仮定した場合の各仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tがそれぞれ処理部86a_x,86a_yにより算出される。そして、この回転角速度ωw_x_t,ωw_y_tの組が、XY−RL変換部86bにより、電動モータ31R,31Lの回転角速度ω_R_t,ω_L_tの組に変換される。
さらに、これらの回転角速度ω_R_t,ω_L_tが、リミッタ86c_R,86c_Lによって、それぞれ、右モータ用許容範囲内の値と左モータ用許容範囲内の値とに制限される。そして、この制限処理後の値ω_R_lim2,ω_L_lim2が、RL−XY変換部86dによって、仮想車輪62_x,62_yの回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に変換される。
次いで、この各回転角速度ωw_x_lim2,ωw_y_lim2に対応する各仮想車輪62_x,62_yの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がそれぞれ処理部86e_x,86e_yによって算出され、これらの移動速度Vw_x_lim2,Vw_y_lim2がリミット処理部100から出力される。
以上のリミット処理部100の処理によって、リミット処理部100は、リミット処理部86と同様に、その出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組に対応する電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲を逸脱しないことを必須の必要条件として、その必要条件下で可能な限り、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2をそれぞれVb_x_t,Vb_y_tに一致させるように、出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の組を生成する。
なお、リミット処理部100における右モータ用及び左モータ用の各許容範囲は、リミット処理部86における各許容範囲と同一である必要はなく、互いに異なる許容範囲に設定されていてもよい。
図13の説明に戻って、重心速度制限部76は、次に、演算部102_x,102_yの処理を実行することによって、それぞれ制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdを算出する。この場合、演算部102_xは、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2から、X軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdを減算してなる値をX軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして算出する。同様に、演算部102_yは、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2から、Y軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_y_prdを減算してなる値をY軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして算出する。
以上のようにして決定される制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdは、リミット処理部100での出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2の強制的な制限が行なわれなかった場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させても、電動モータ31R,31Lのそれぞれの回転角速度が許容範囲内に収まるような場合には、要求重心速度Vb_x_aim,Vb_y_aimがそれぞれ、そのまま、制御用目標重心速度Vb_x_mdfd,Vb_y_mdfdとして決定される。
なお、この場合、X軸方向の要求重心速度Vb_x_aimが“0”であれば、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdも“0”となり、Y軸方向の要求重心速度Vb_y_aimが“0”であれば、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdも“0”となる。
一方、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2,Vw_y_lim2が、入力値Vb_x_t,Vb_y_tに対して強制的な制限を施して生成された場合、すなわち、車輪体5のX軸方向及びY軸方向のそれぞれの移動速度を、それぞれ、演算部98_xの出力値Vb_x_tと演算部98_yの出力値Vb_y_tとに一致させるように電動モータ31R,31Lを動作させると、電動モータ31R,31Lのいずれかの回転角速度が許容範囲を逸脱してしまう場合(いずれかの回転角速度の絶対値が高くなり過ぎる場合)には、X軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_x_lim2の入力値Vb_x_tからの修正量(=Vw_x_lim2−Vb_x_t)だけ、要求重心速度Vb_x_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_x_aimに加算した値)が、X軸方向の制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとして決定される。
また、Y軸方向については、リミット処理部100の出力値Vw_y_lim2の入力値Vb_y_tからの修正量(=Vw_y_lim2−Vb_y_t)だけ、要求重心速度Vb_y_aimを補正してなる値(当該修正量をVb_y_aimに加算した値)が、Y軸方向の制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとして決定される。
この場合において、例えばX軸方向の速度に関し、要求重心速度Vb_x_aimが“0”でない場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、要求重心速度Vb_x_aimよりも“0”に近づくか、もしくは、要求重心速度Vb_x_aimと逆向きの速度となる。また、要求重心速度Vb_x_aimが“0”である場合には、制御用目標重心速度Vb_x_mdfdは、定常偏差算出部94_xが出力するX軸方向の重心速度定常偏差予測値Vb_x_prdと逆向きの速度となる。これらのことは、Y軸方向の速度に関しても同様である。
以上が、重心速度制限部76の処理である。
図10の説明に戻って、制御ユニット50は、以上の如く偏差演算部70、重心速度算出部72、重心速度制限部76、ゲイン調整部78の処理を実行した後、次に、姿勢制御演算部80の処理を実行する。
この姿勢制御演算部80の処理を、以下に図14を参照して説明する。なお、図14において、括弧を付していない参照符号は、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_x_comを決定する処理に係わる参照符号であり、括弧付きの参照符合は、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yの回転角速度の目標値である前記仮想車輪回転角速度指令ωw_y_comを決定する処理に係わる参照符号である。
姿勢制御演算部80には、基体傾斜角度目標値θb_xy_obj(=0)と、前記ステップS2で算出された基体傾斜角度計測値θb_xy_s(θb_x_s及びθb_y_s)と前記ステップS2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_sと、前記ステップS3で取得されたシート3に作用するX軸方向の荷重計測値(X軸荷重計測値)Fx1と、バイアス定数biasと、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_sと、重心速度制限部76で算出された目標重心速度Vb_xy_cmdと、ゲイン調整部78で算出されたゲイン調整パラメータKr_xyとが入力される。
そして、姿勢制御演算部80は、まず、これらの入力値を用いて、下記(9)式,(10)式により、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comを算出する。
ωwdot_x_cmd=K1_x・θb_x_s+K2_x・θbdot_x_s+K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd)
+W1・Fx1/(1+TS)+bias ・・・(9)
ωwdot_y_cmd=K1_y・θb_y_s+K2_y・θbdot_y_s
+K3_y・(Vb_y_s−Vb_y_mdfd) ・・・(10)
従って、本実施形態では、Y軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_xの運動(ひいては、Y軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_comと、X軸方向から見た倒立振子モデルの質点60_yの運動(ひいては、X軸方向から見た車両系重心点の運動)を制御するための操作量(制御入力)としての仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_y_comとは、それぞれ、3つの操作量成分((9)式,(10)式の右辺の3つの項)を加え合わせることによって決定される。
この場合、(9)式における各操作量成分に係わるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xは、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて可変的に設定され、(10)式における各操作量成分に係わるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yは、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて可変的に設定される。以降、(9)式におけるゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xのそれぞれを第1ゲイン係数K1_x、第2ゲイン係数K2_x、第3ゲイン係数K3_xということがある。このことは、(10)式におけるゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yについても同様とする。
(9)式における第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)と、(10)式における第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)とは、図14中にただし書きで示した如く、下記(11)式、(12)式により、ゲイン調整パラメータKr_x,Kr_yに応じて決定される。
Ki_x=(1−Kr_x)・Ki_a_x+Kr_x・Ki_b_x ・・・(11)
Ki_y=(1−Kr_y)・Ki_a_y+Kr_y・Ki_b_y ・・・(12)
(i=1,2,3)
ここで、(11)式におけるKi_a_x、Ki_b_xは、それぞれ、第iゲイン係数Ki_xの最小側(“0”に近い側)のゲイン係数値、最大側(“0”から離れる側)のゲイン係数値としてあらかじめ設定された定数値である。このことは、(12)式におけるKi_a_y、Ki_b_yについても同様である。
従って、(9)式の演算に用いる各第iゲイン係数Ki_x(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_x、Ki_b_xの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_x、Ki_b_xにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_xに応じて変化させられる。このため、Kr_x=0である場合には、Ki_x=Ki_a_xとなり、Kr_x=1である場合には、Ki_x=Ki_b_xとなる。そして、Kr_xが“0”から“1”に近づくに伴い、第iゲイン係数Ki_xはKi_a_xからKi_b_x近づいていく。
同様に、(10)式の演算に用いる各第iゲイン係数Ki_y(i=1,2,3)は、それぞれに対応する定数値Ki_a_y、Ki_b_yの重み付き平均値として決定される。そして、この場合、Ki_a_y、Ki_b_yにそれぞれ掛かる重みが、ゲイン調整パラメータKr_yに応じて変化させられる。このため、Ki_xの場合と同様に、Kr_yの値が“0”から“1”の間で変化するに伴い、第iゲイン係数Ki_yの値が、Ki_a_yとKi_b_yとの間で変化する。
補足すると、上記定数値Ki_a_x、Ki_b_x及びKi_a_y,Ki_b_y(i=1,2,3)は、前記ステップS6において値が設定される定数パラメータに含まれるものである。
姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_x,K2_x,K3_xを用いて前記(9)式の演算を行なうことで、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出する。
さらに詳細には、図14を参照して、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s(=基体傾斜角度計測値θb_x_s)に第1ゲイン係数K1_xを乗じてなる操作量成分u1_xと、基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに第2ゲイン係数K2_xを乗じてなる操作量成分u2_xとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_x_sと制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差(=Vb_x_s−Vb_x_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_xを乗じてなる操作量成分u3_xを処理部80cで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、X軸荷重計測値Fx1に伝達関数W1/(1+TS)を乗じてなる操作量成分u4_xを処理部80gで算出する。
そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_x,u2_x,u3_x、u4_xとバイアス定数biasを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_comを算出する。
同様に、姿勢制御演算部80は、上記の如く決定した第1〜第3ゲイン係数K1_y,K2_y,K3_yを用いて前記(10)式の演算を行なうことで、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出する。
この場合には、姿勢制御演算部80は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_s(=基体傾斜角度計測値θb_x_s)に第1ゲイン係数K1_yを乗じてなる操作量成分u1_yと、基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに第2ゲイン係数K2_yを乗じてなる操作量成分u2_yとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、重心速度推定値Vb_y_sと制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとの偏差(=Vb_y_s−Vb_y_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_yを乗じてなる操作量成分u3_yを処理部80cで算出する。
そして、姿勢制御演算部80は、これらの操作量成分u1_y,u2_y,u3_yを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_comを算出する。
ここで、(9)式の右辺の第1項(=第1操作量成分u1_x)及び第2項(=第2操作量成分u2_x)は、Y軸周り方向での基体傾斜角度偏差計測値θbe_x_sを、フィードバック制御則としてのPD則(比例・微分則)により“0”に収束させる(基体傾斜角度計測値θb_x_sを目標値θb_x_objに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
また、(9)式の右辺の第3項(=第3操作量成分u3_x)は、重心速度推定値Vb_x_sと目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差をフィードバック制御則としての比例則により“0”に収束させる(Vb_x_sをVb_x_mdfdに収束させる)ためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
これらのことは、(10)式の右辺の第1〜第3項(第1〜第3操作量成分u1_y,u2_y,u3_y)についても同様である。
姿勢制御演算部80は、上記の如く、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_com,ωwdot_y_comを算出した後、次に、これらのωwdot_x_com,ωwdot_y_comをそれぞれ積分器80fにより積分することによって、前記仮想車輪回転速度指令ωw_x_com,ωw_y_comを決定する。
以上が姿勢制御演算部80の処理の詳細である。
補足すると、(9)式の右辺の第3項を、Vb_x_sに応じた操作量成分(=K3_x・Vb_x_s)と、Vb_x_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_x・Vb_x_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_x_comを算出するようにしてよい。同様に、(10)式の右辺の第3項を、Vb_y_sに応じた操作量成分(=K3_y・Vb_y_s)と、Vb_y_mdfdに応じた操作量成分(=−K3_y・Vb_y_mdfd)とに分離した式によって、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_y_comを算出するようにしてよい。
また、本実施形態では、車両系重心点の挙動を制御するための操作量(制御入力)として、仮想車輪62_x,62_yの回転角加速度指令ωw_x_cmd,ωw_y_cmdを用いるようにしたが、例えば、仮想車輪62_x,62_yの駆動トルク、あるいは、この駆動トルクに各仮想車輪62_x,62_yの半径Rw_x,Rw_yを乗じてなる並進力(すなわち仮想車輪62_x,62_yと床面との間の摩擦力)を操作量として用いるようにしてもよい。
図10の説明に戻って、制御ユニット50は、次に、姿勢制御演算部80で上記の如く決定した仮想車輪回転速度指令ωw_x_com,ωw_y_comをモータ指令演算部82に入力し、該モータ指令演算部82の処理を実行することによって、電動モータ31Rの速度指令ω_R_comと電動モータ31Lの速度指令ω_L_comとを決定する。このモータ指令演算部82の処理は、前記リミット処理部86(図12参照)のXY−RL変換部86bの処理と同じである。
具体的には、モータ指令演算部82は、前記(3)式,(4)式のωw_x,ωw_y,ω_R,ω_Lをそれぞれ、ωw_x_com,ωw_y_com,ω_R_cmd,ω_L_cmdに置き換えて得られる連立方程式を、ω_R_cmd,ω_L_cmdを未知数として解くことによって、電動モータ31R,31Lのそれぞれの速度指令ω_R_com,ω_L_comを決定する。
以上により前記ステップS8、つまり搭乗モード時の車両制御演算処理が完了する。
次に、上記ステップS12について、つまり補助モード時の車両制御演算処理の詳細について説明する。なお、搭乗モード時の車両制御演算処理と、補助モード時の車両制御演算処理とでは一部重複する部分があるため、以下では、搭乗モード時の車両制御演算処理とは異なる点に着目して補助モード時の車両制御演算処理を説明する。
制御ユニット50は、上記の如き、ステップS12の車両制御演算処理を実行するための機能として、図15のブロック図で示す機能を備えている。この図15に示すように、補助モード時の制御ブロックは、図10で示した搭乗モード時の制御ブロックと比較して、姿勢制御演算部80に対して、基体傾斜角度計測値θb_xy_が新たに追加入力されている。また、図15では、搭乗モードと区別するために、補助モード時における姿勢制御演算部の符号を80’とする。その他の構成は搭乗モード時の制御ブロックと同様である。
この補助モード時における姿勢制御演算部80’の処理を、図16を参照して説明する。 姿勢制御演算部80’には、偏差演算部70で算出された基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sと、前記ステップS2で算出された基体傾斜角度計測値θb_xy_s(θb_x_s及びθb_y_s)と、前記ステップS2で算出された基体傾斜角速度計測値θbdot_xy_sと、前記ステップS3で取得されたX軸荷重計測値Fx1と、バイアス定数biasと、重心速度算出部72で算出された重心速度推定値Vb_xy_sと、重心速度制限部76で算出された目標重心速度Vb_xy_cmdと、ゲイン調整部78で算出されたゲイン調整パラメータKr_xyとが入力される。
そして、姿勢制御演算部80’は、まず、これらの入力値を用いて、下記(13)式,(14)式により、仮想車輪回転角加速度指令ωdotw_xy_comを算出する。なお、(13)式は、搭乗モードで使用される(9)式と同じ式である。
ωwdot_x_cmd=K1_x・θb_x_s+K2_x・θbdot_x_s+K3_x・(Vb_x_s−Vb_x_mdfd)
+W1・Fx1/(1+TS)+bias ・・・(13)
ωwdot_y_cmd=K1_y・θb_y_s+K2_y・θbdot_y_s+K3_y・(Vb_y_s−Vb_y_mdfd)
+ Wo・θbe_xy_s+Wo・θbdot_y_s ・・・(14)
姿勢制御演算部80’は、前記(13)式の演算を行なうことで、X軸方向に輪転する仮想車輪62_xに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_cmdを算出する。
さらに詳細には、姿勢制御演算部80‘は、基体傾斜角度計測値θb_x_sに第1ゲイン係数K1_xを乗じてなる操作量成分u1_xと、基体傾斜角速度計測値θbdot_x_sに第2ゲイン係数K2_xを乗じてなる操作量成分u2_xとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。さらに、姿勢制御演算部80’は、重心速度推定値Vb_x_sと制御用目標重心速度Vb_x_mdfdとの偏差(=Vb_x_s−Vb_x_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_xを乗じてなる操作量成分u3_xを処理部80cで算出する。さらに、姿勢制御演算部80は、X軸荷重計測値Fx1に伝達関数W1/(1+TS)を乗じてなる操作量成分u4_xを処理部80gで算出する。
そして、姿勢制御演算部80’は、これらの操作量成分u1_x,u2_x,u3_x、u4_xとバイアス定数biasを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_x_comを算出する。
また、姿勢制御演算部80’は、前記(14)式の演算を行なうことで、Y軸方向に輪転する仮想車輪62_yに係わる仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_cmdを算出する。
この場合には、姿勢制御演算部80’は、基体傾斜角度計測値θb_y_sに第1ゲイン係数K1_yを乗じてなる操作量成分u1_yと、基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sに第2ゲイン係数K2_yを乗じてなる操作量成分u2_yとをそれぞれ、処理部80a,80bで算出する。また、姿勢制御演算部80’は、重心速度推定値Vb_y_sと制御用目標重心速度Vb_y_mdfdとの偏差(=Vb_y_s−Vb_y_mdfd)を演算部80dで算出し、この偏差に第3ゲイン係数K3_yを乗じてなる操作量成分u3_yを処理部80cで算出する。
さらに、姿勢制御演算部80’は、基体傾斜角度偏差計測値θbe_xy_sにゲイン係数W0を乗じてなる操作量成分u5_yを処理部80hで算出し、基体傾斜角速度計測値θbdot_y_sにゲイン係数W0を乗じてなる操作量成分u6_yを処理部80iで算出する。
そして、姿勢制御演算部80’は、これらの操作量成分u1_y,u2_y,u3_y、u5_y、u6_yを演算部80eにて加え合わせることにより、仮想車輪回転角加速度指令ωwdot_y_comを算出する。
以上が補助モード時における姿勢制御演算部80’の処理の詳細である。
以上説明したように、本実施形態によると、上述した補助モード時におけるシート3の高さ制御(ステップS11)及び基体9の姿勢制御(ステップS12)を行うことにより、利用者が歩行する際に、図8(b)に示すように、シート3を利用者の尻部等の所定部位に押し付けて体重を支えながら、歩行に合わせて移動可能であるため、利用者の歩行を補助することの可能な全方向移動車両1を提供することができる。
また、本実施形態によれば、荷重センサ54にて検出された荷重計測値Fzactが一定値(Fzcmd)となるようにシート3の高さ制御を行うと共に、傾斜センサ52にて検出された基体傾斜角度計測値θb_xy_sが一定値(目標値θb_xy_obj)となるように基体9の姿勢制御を行うため、利用者の歩行時における姿勢や振動などに関わらず、利用者と全方向移動車両1との位置関係を一定に保持することができるため、安全且つ安定した補助動作を利用者に提供することができる。
また、本実施形態によれば、傾斜センサ52にて検出された基体傾斜角度計測値θb_xy_sが0度(目標値θb_xy_obj=0)となるように基体9の姿勢制御を行う搭乗モードと、傾斜センサ52にて検出された基体傾斜角度計測値θb_xy_sが一定値(目標値θb_xy_obj)となるように基体9の姿勢制御を行う補助モードとの2つの動作モードを選択的に使用することができる。その結果、図8(a)に示すように、利用者が全方向移動車両1に搭乗して移動することもでき、また、図8(b)に示すように、利用者の歩行を補助するために全方向移動車両1を利用することもできるため、利便性の向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、荷重センサ54にて検出された荷重に応じて搭乗モードと補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択するため、2つの動作モードの一方を自動選択できるようになる。その結果、利用者にモード選択のための余計な操作を強制することなく、利便性の向上に寄与することができる。
なお、上記実施形態では、荷重センサ54にて検出された荷重に応じて搭乗モードと補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択する機能を制御ユニット50に設けたが、これに限らず、図1に示すモード切替用のスイッチ16の状態に応じて搭乗モードと補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択する機能を制御ユニット50に設けても良い。
これによると、搭乗モードと補助モードとの2つの動作モードの一方を手動選択できるため、利用者が自分の好みの動作モードに固定して全方向移動車両1を使用できるようになる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
上記実施形態では、伸縮機構である直動アクチュエータ14としてボールネジ機構を例示して説明したが、これに限らず、基体9を伸縮させることが可能であれば、どのような機構を用いても良い。例えば、図17(a)に示すように、マジックハンド構造の伸縮機構14−1を用いても良く、また、図17(b)に示すように、はしご構造の伸縮機構14−2を用いても良い。
また、上記実施形態では、図1及び図2に示した構造の車両1を例示したが、本発明における全方向移動車両1は、本実施形態で例示した車両に限られるものではない。
具体的には、本実施形態の車両1の移動動作部としての車輪体5は一体構造のものであるが、例えば、前記特許文献2の図10に記載されているような構造のものであってもよい。すなわち、剛性を有する円環状の軸体に、複数のローラをその軸心が該軸体の接線方向に向くようにして回転自在に外挿し、これらの複数のローラを軸体に沿って円周方向に配列させることによって、車輪体を構成してもよい。
さらに移動動作部は、例えば、特許文献1の図3に記載されているようなクローラ状の構造のものであってもよい。
あるいは、例えば、前記特許文献1の図5、特許文献2の図7、もしくは特許文献3の図1に記載されているように、移動動作部を球体により構成し、この球体を、アクチュエータ装置(例えば前記車輪体5を有するアクチュエータ装置)によりX軸周り方向及びY軸周り方向に回転駆動するように車両を構成してもよい。
このように本発明は、前記特許文献1〜3等に見られる如き、各種の構造の全方向移動車両に適用することが可能である。
さらには、本発明における全方向移動車両は、床面上を全方向に移動可能な移動動作部を複数(例えば、左右方向に2つ、あるいは、前後方向に2つ、あるいは、3つ以上)備えていてもよい。この場合、例えば、移動動作部を3つ以上備えた場合には、基体が傾動しないようにして、該基体の傾斜角度の制御を省略してもよい。
また、上記実施形態では、シート3に作用する荷重が一定となるようにシート3の高さ制御を行った場合を例示したが、これに限らず、シート3の高さが一定となるように制御するようにしても良い。具体的には、例えば、基体9の基準高さをL、基体9の傾斜角をθbとすると、直動アクチュエータ14の伸縮量を、L・(1−cosθb)/cosθbとすることで、シート3の高さを一定に制御することが可能となる。
1…全方向移動車両、3…シート(荷重受け部)、5…移動動作部(駆動機構)、7…アクチュエータ装置(駆動機構)、9…基体、14…直動アクチュエータ(伸縮機構)、52…傾斜センサ(傾斜検出部)、54…荷重センサ(荷重検出部)、50…制御ユニット(制御部)

Claims (4)

  1. 基体と、
    前記基体に接続され、床面上の互いに直交する二方向を含む全方向に駆動力を発生する駆動機構と、
    前記基体を伸縮させる伸縮機構と、
    前記基体に接続され、利用者の荷重を受ける荷重受け部と、
    前記荷重受け部に作用する荷重を検出する荷重検出部と、
    前記基体の傾斜角を検出する傾斜角検出部と、
    前記荷重検出部にて検出された前記荷重が一定値となるように前記伸縮機構を制御することで前記荷重受け部の高さ制御を行うと共に、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が一定値となるように前記駆動機構を制御することで前記基体の姿勢制御を行う制御部と、
    を備えることを特徴とする全方向移動車両。
  2. 前記制御部は、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が0度となるように前記基体の姿勢制御を行う搭乗モードと、前記傾斜角検出部にて検出された前記傾斜角が所定の設定値となるように前記基体の姿勢制御を行う補助モードとの2つの動作モードを選択的に使用することを特徴とする請求項1記載の全方向移動車両。
  3. 前記制御部は、前記荷重検出部にて検出された前記荷重に応じて前記搭乗モードと前記補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択することを特徴とする請求項2記載の全方向移動車両。
  4. 動作モード切替用のスイッチを備え、
    前記制御部は、前記スイッチの状態に応じて前記搭乗モードと前記補助モードとのいずれか一方の動作モードを選択することを特徴とする請求項2記載の全方向移動車両。
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