以下、建物の窓構造の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の窓構造の上端付近および下端付近を示しており、図2は建物の屋内側から見た窓構造の右端付近を示している。窓構造の左端付近は右端付近と対称の構造を備えている。
図1,2に示すように、建物の外壁は複数の外壁パネル10からなる。外壁パネル10は、外面材11とその裏面側の下地フレーム21,22,23とを備える。外面材11はコンクリートやセラミックによって板状に形成されており、下地フレーム21,22,23は溝形鋼からなる。
建物の窓としての開口部90では、外壁パネル10の下地フレーム21,22,23が、開口部90の周縁を囲むように設けられている。下地フレーム21,22,23は、開口部90の中央側の端部にウェブ21a,22a,23aを備え、屋外側の端部にフランジ21b,22b,23bを備えている。窓の上枠および下枠において、フランジ21b,22bは外壁パネル10よりも開口部90の中央側へ突出している。窓の右枠において、ウェブ23aにサッシ枠下地材24及びブラケット25が取り付けられている。なお、ウェブ23a、サッシ枠下地材24及びブラケット25は、ボルト26及びナット27によって共締めされている。
外壁パネル10の下地フレーム21,22,23には、外壁断熱材12が取り付けられている。外壁断熱材12は、外壁パネル10の全面にわたって設けられている。なお、外壁断熱材12としては、グラスウールや板状に形成されたポリウレタン等を採用することができる。
外壁断熱材12の屋内側には、屋内の内壁を構成する石膏ボード等の内面材13が取り付けられている。内面材13は、角形の木材からなる下地材14に取り付けられている。内面材13の表面にはクロスが設けられている。
外壁断熱材12における開口部90の中央側の端部を覆うように額縁31,32が設けられている。額縁31,32は、板状の木材からなり、外壁断熱材12と接している。なお、額縁31,32を断熱部材とみなすこともできる。
建物には既設の窓サッシ枠の上枠部材41、下枠部材42、及び右枠部材45(図示しない左枠部材も同様)が残った状態とされている。すなわち、窓サッシ枠の改修前から建物に設置されていた窓サッシ枠(既設の窓サッシ枠)が、窓サッシ枠の改修後においても建物に残った状態とされている。このため、既設の窓サッシ枠を取り外す手間を省くことができる。既設の窓サッシ枠は、アルミ合金等からなる金属製の窓サッシ枠であり、断熱窓サッシ枠ではない通常の窓サッシ枠である。
既設の窓サッシ枠は、窓サッシ戸を水平方向に案内する窓サッシレール、又は窓サッシ戸の左右の端部に当接する窓サッシガイドを備え、外壁を構成する部材又は外壁を構成する部材に一体化された部材に取り付けられている。具体的には、上枠部材41,下枠部材42は窓サッシ戸を水平方向に案内する窓サッシレール41r,42rをそれぞれ備え、右枠部材45は窓サッシ戸の右端部に当接する窓サッシガイド45gを備えている。そして、開口部90の上部および下部において、外壁パネル10の下地フレーム21,22(外壁を構成する部材)に上枠部材41,下枠部材42がそれぞれ取り付けられ、開口部90の右部において、下地フレーム23に連結されたサッシ枠下地材24及びブラケット25(外壁を構成する部材に一体化された部材)に右枠部材45が取り付けられている。
上枠部材41,下枠部材42,右枠部材45は、それぞれ開口部90の周縁に沿って延びるように配置されている。上枠部材41,下枠部材42,右枠部材45は、下地フレーム21,22、又は下地フレーム23に連結されたサッシ枠下地材24及びブラケット25の形状に合わせて屈曲され、枠部材41,42,45の下地となるこれらの部材における開口部90の中央側および屋外側の2面に対向する部分を有している。具体的には、上枠部材41は、下地フレーム21のウェブ21aに対向する上面部41b及びサッシレール部分から屋内側への張出し部41cと、下地フレーム21のフランジ21bに対向する側面部41aとを備えている。下枠部材42は、下地フレーム22のウェブ22aに対向する下面部42b及びサッシレール部分から屋内側への張出し部42cと、下地フレーム22のフランジ22bに対向する側面部42aとを備えている。右枠部材45は、ブラケット25における開口部90の中央側の側面部25aに対向する側面部45bと、サッシ枠下地材24の屋外側の側面部24bに対向する側面部45aとを備えている。そして、これらの対向する部分がビスによって適宜締結されている。
なお、上枠部材41,下枠部材42,右枠部材45は窓サッシ枠を改修する前から建物に取り付けられており、これらを締結するビス43a,43b,44a,46bは改修に際して取り外されていない。また、窓サッシ枠の改修前において、上枠部材41の屋内側への張出し部41c,下枠部材42の屋内側への張出し部42c,右枠部材45の屋外側の側面部45a及び屋内側への張出し部45cにそれぞれビスがねじ込まれていたが、改修に際して取り外されてビス43c,44b,46a,46cがねじ込まれている。
窓サッシ枠の改修前には、このような構造を備える既設の窓サッシ枠に、アルミ合金等からなる金属製の窓サッシ障子及びシングルガラスを有する窓サッシ戸が設置されている。金属製の窓サッシ障子は、断熱窓サッシ障子ではない通常の窓サッシ障子である。
以上が窓サッシ枠の改修前の構造であり、窓サッシ枠の改修に伴って、既設の窓サッシ枠の窓サッシレール41r,42r又は窓サッシガイド45gを覆うように、断熱性のサッシカバーが設けられている。すなわち、窓サッシ枠の改修後に、これらの窓サッシレール41r,42r又は窓サッシガイド45gが露出しないようにサッシカバーが設けられている。断熱性のサッシカバーは、例えば樹脂の断熱層を有するものであり、樹脂製のサッシカバーを採用してもよく、金属性のサッシカバーに樹脂層を被覆してもよい。なお、右枠部材45を覆う断熱性のサッシカバーは、断熱性の新設の右枠部材75の一部として設けられている。
既設の窓サッシ枠の上枠部材41を覆う上サッシカバー51、下枠部材42を覆う下サッシカバー52、及び既設の右枠部材45を覆う新設の右枠部材75は、窓サッシレール41r,42r又は窓サッシガイド45gを覆う部分の他に、これらの枠部材41,42,45を取り付けるための張出し部41c,42c,45cをそれぞれ覆うように屋内側
へ延長された延長部51b,52b,75eを備えている。また、上サッシカバー51、下サッシカバー52、及び新設の右枠部材75は、これらの枠部材41,42,45の屋外側の側面部41a,42a,45aをそれぞれ覆う屋外側の側面部51c,52c,75fを備えている。延長部51b,52b,75eは、それぞれ額縁31又は額縁32を挟んで外壁断熱材12と対向している。このため、建物の屋内外方向において、断熱性のサッシカバー51,52及び右枠部材75と外壁断熱材12とが重なる部分が形成されており、開口部90の中央側と周縁側とを結ぶ方向(屋内外方向に直交する方向)での熱の流入出を抑制することができる。
サッシカバー51,52の屋外側の側面部51c,52cからは、建物の屋内側へ延びるように上面部51d,下面部52dが設けられている。これらの上面部51d,下面部52dによって、上枠部材41の上端,下枠部材42の下端がそれぞれ覆われている。サッシカバー51,52の上面部51d,下面部52dは、外壁パネル10の外面材11と枠部材41,42との隙間にそれぞれ挿入されている。このため、サッシカバー51,52に開口部90の中央側へ押す力が作用した場合には、枠部材41,42によって受け止めることができる。
枠部材41,42とサッシカバー51,52とのそれぞれの間、及び既設の右枠部材45と新設の右枠部材75との間に、閉じた空間がそれぞれ形成されている。サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75には、これらの閉じた空間に通じる貫通孔59がそれぞれ形成されている。貫通孔59は、サッシカバー51,52及び右枠部材75内にそれぞれ柔軟性の断熱材としての発泡ウレタン樹脂を注入するための注入口として用いられる。このため、貫通孔59は発泡ウレタン樹脂を注入可能な大きさで形成されており、それぞれの内部に発泡ウレタン樹脂を偏りなく充填することのできる位置に形成されている。
サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75内には、圧力を受けたときに上記発泡ウレタン樹脂よりも収縮する収縮部材が設けられている。具体的には、サッシカバー51,52内にはゴム製のチューブ63が設けられ、右枠部材75内には発泡樹脂材料からなるシート64が設けられている。チューブ63は円筒状に形成されており、サッシカバー51,52の長手方向に沿って延びるように配置されている。シート64は矩形板状に形成されており、右枠部材75の長手方向に沿って延びるように配置されている。シート64は既設の右枠部材45に接着されている。
サッシカバー51,52及び右枠部材75内には貫通孔59を通じて注入された発泡ウレタン樹脂からなるカバー内断熱材61,62,65がそれぞれ充填されている。このような柔軟性の断熱材によれば、枠部材41,42,45を断熱材によってそれぞれ覆う場合に、これらの枠部材41,42,45が窓サッシレール41r,42r又は窓サッシガイド45g等を含んで入り組んだ形状になっていても、隙間が生じないようにカバー内断熱材61,62,65を設けることができる。枠部材41,42内の断熱材61,62は、枠部材41,42の張出し部41c,42cをそれぞれ覆っている。そして、断熱材61,62は、それぞれ額縁31,32を挟んで外壁断熱材12と対向している。このため、建物の屋内外方向において、外壁断熱材12と断熱材61,62とが重なる部分が形成されており、開口部90の中央側と周縁側とを結ぶ方向(屋内外方向に直交する方向)での熱の流入出を抑制することができる。
サッシカバー51,52,及び新設の右枠部材75内に充填される断熱材61,62,65の体積が増加するに伴ってこれらの断熱材61,62,65が膨張した場合には、チューブ63,シート64が収縮することにより断熱材61,62,65の膨張が吸収される。また、気温の上昇によりこれらの断熱材61,62,65が膨張した場合にも、チューブ63,シート64が収縮することにより断熱材61,62,65の膨張が吸収される。
なお、窓サッシ枠の改修前において枠部材41,42,45の張出し部41c,42c,45cに形成されていたねじ孔にビス43c,44b,46cがそれぞれ挿入されている。このため、これらのビスを挿入するためのねじ孔を、枠部材41,42,45に新たに形成する必要がないとともに、既設の窓サッシ枠と同様に張出し部41c,42c,45cを固定することができる。
そして、既設の窓サッシ枠の内周に新設の窓サッシ枠を配置する必要をなくすために、既設の窓サッシ枠よりも屋外側に、樹脂の断熱層を有する新設の窓サッシ枠(窓サッシ枠の改修後に設置された窓サッシ枠)が配置されている。このため、新設の窓サッシ枠の開口が既設の窓サッシ枠の開口よりも小さくなることを抑制することができる。
具体的には、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45よりも屋外側に、新設の窓サッシ枠の上枠部材71と、下枠部材72と、右枠部材75のうちサッシカバーに相当する部分以外の部分とがそれぞれ配置されている。換言すれば、既設の枠部材41,42の窓サッシレール41r,42r、右枠部材45の窓サッシガイド45gよりも屋外側に、新設の枠部材71,72の窓サッシレール71r,72r、右枠部材75の窓サッシガイド75gがそれぞれ配置されている。これらの新設の枠部材71,72,75は、既設の枠部材41,42,45の長手方向と同一方向にそれぞれ延びるように配置されている。
さらに、新設の窓サッシ枠の外周に外壁が存在しないようにするために、外壁パネル10の外面材11よりも屋外側に、新設の枠部材71,72の窓サッシレール71r,72r、右枠部材75の窓サッシガイド75gがそれぞれ配置されている。そして、新設の上枠部材71が既設の上枠部材41よりも上方に配置され、新設の下枠部材72が既設の下枠部材42よりも下方に配置されることにより、新設の窓サッシ枠の開口が既設の窓サッシ枠の開口よりも大きくされている。なお、この場合には、既設の枠部材41,42の窓サッシレール71r,72rが新設の枠部材71,72によって覆われないため、上述したように既設の枠部材41,42を覆うサッシカバー51,52やカバー内断熱材61,62が設けられている。
ここでは、新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1が既設の窓サッシ枠における開口の縦幅h2よりも広くされ、新設の窓サッシ枠における開口の横幅は既設の窓サッシ枠における開口の横幅と等しくされている。開口の幅は、窓サッシ枠の互いに対向する枠部材において、窓サッシレール及び窓サッシガイドを除く対向する面間の距離を基準としている。なお、新設の上枠部材71と既設の上枠部材41、及び新設の下枠部材72と既設の下枠部材42は、屋内外方向および上下方向で一部重なっているが、互いに干渉しないように上下方向および屋内外方向にずらすことにより両者を配置可能である。
新設の窓サッシ枠は、外壁を構成する部材、又は外壁を構成する部材に一体化された部材に取り付けられている。このため、新設の窓サッシ枠が既設の窓サッシ枠に取り付けられる構造と比較して取り付け部の強度を高くすることができる。具体的には、上枠部材71,下枠部材72はビス43d,44dによって外壁パネル10の下地フレーム21,22(外壁を構成する部材)にそれぞれ取り付けられ、右枠部材75は外壁パネル10の下地フレーム23に連結されたサッシ枠下地材24(外壁を構成する部材に一体化された部材)にビス46aによって取り付けられている。ここで、下地フレーム21,22及びサッシ枠下地材24は既設の窓サッシ枠が取り付けられている部材のため、取り付け部の強度を既設の窓サッシ枠と同等に維持することができる。すなわち、既設の枠部材41,42,45及び新設の枠部材71,72,75は、建物において同一の部材にそれぞれ取り付けられている。
新設の枠部材71,72は、既設の枠部材41,42の屋外側の側面部41a,42aを覆うサッシカバー51,52の側面部51c,52cにそれぞれ当接している。換言すれば、これらのサッシカバー51,52の側面部51c,52cは、新設の枠部材71,72に当接するように延長されている。このため、新設の枠部材71,72には、断熱部材としてのサッシカバー51,52が繋がっている。また、新設の右枠部材75は、窓サッシガイド75gを含む部分とサッシカバーに相当する部分とが一体に形成されている。これらの構造により、既設の枠部材41,42,45を覆う断熱部材としてのサッシカバー51,52及び右枠部材75のうちサッシカバーに相当する部分は、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分とそれぞれ繋がっていることとなる。
上述したように、サッシカバー51,52及び右枠部材75は、外壁断熱材12と対向する延長部51b,52b,75eをそれぞれ備えている。このため、屋内外方向において、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分から外壁断熱材12まで断熱材が連続することとなる。換言すれば、サッシカバー51,52及び右枠部材75は、額縁31,32を介して外壁断熱材12と連続している。なお、額縁31,32も断熱部材とみなすことができるならば、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分から外壁断熱材12まで断熱材が繋がっているとみなすことができる。その場合には、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分から外壁断熱材12までを連続的に断熱することができる。また、サッシカバー51,52及び右枠部材75と外壁断熱材12とのそれぞれの間部分において熱が流入出することを抑制することができる。
さらに、サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75内には、カバー内断熱材61,62,65がそれぞれ充填されている。このため、サッシカバー51,52及び右枠部材75のうちサッシカバーに相当する部分の内部ではカバー内断熱材61,62,65が繋がっている。このため、既設の枠部材41,42,45を覆うカバー内断熱材61,62,65は、サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75を介して、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分とそれぞれ繋がっていることとなる。
断熱材61,62は、外壁断熱材12と対向する部分をそれぞれ備えている。このため、屋内外方向において、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分から外壁断熱材12まで断熱材が連続することとなる。換言すれば、断熱材61,62は、額縁31,32を介して外壁断熱材12と連続している。なお、額縁31,32も断熱部材とみなすことができるならば、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分から外壁断熱材12まで、カバー内断熱材61,62,65を含む断熱材がそれぞれ繋がっているとみなすことができる。
枠部材71,72,75の屋外側の端部には開口71d,72d,75dがそれぞれ設けられている。これらの開口71d,72d,75dからビス43d,44d,46aがそれぞれ挿入されてねじ込まれた後に、これらの開口71d,72d,75dにはキャップ73,74,76がそれぞれ設けられている。なお、ビス43d,44d,46aは、開口71d,72d,75dからそれぞれ離間した位置においてねじ込まれているため、防犯性の点からビス43d,44d,46aを取り外しにくくすることもできる。
新設の上枠部材71の上端には、上枠部材71と外壁パネル10の外面材11との間をシールするシール部材81が設けられている。シール部材81は、上枠部材71の長手方向に延びるように設けられている。このため、外面材11を伝う雨水が上枠部材71と外面材11との隙間から浸入することを抑制することができる。
また、窓構造の左端付近は右端付近と対称の構造を備えている。
このような構造を備える新設の窓サッシ枠に、ペアガラス及び樹脂サッシ障子を有する断熱性の窓サッシ戸92,94が設置される。このため、新設の枠部材71,72及び右枠部材75に繋がるように、断熱性の窓サッシ戸92,94が設けられている。したがって、建物の壁面において窓を含めたその周辺の断熱性を高くすることができる。
以上詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
既設の窓サッシ枠の内周に新設の窓サッシ枠を配置する必要をなくすために、建物において既設の窓サッシ枠の枠部材41,42及び右枠部材45のうち窓サッシガイド45gを含む部分よりも屋外側に、断熱性の新設の窓サッシ枠における枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分をそれぞれ配置している。このため、新設の窓サッシ枠の大きさが既設の窓サッシ枠によって制限されることを抑制することができる。具体的には、新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1を、既設の窓サッシ枠における開口の縦幅h2よりも広くすることができる。
新設の窓サッシ枠の外周に建物の外壁が存在する場合には、この外壁によって新設の窓サッシ枠の大きさが制限されることがある。
この点、新設の窓サッシ枠の上枠部材71,下枠部材72が建物の外壁パネル10の表面よりも屋外側に配置される構造であるため、新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1を自由に広くすることができる。
ここで、外壁パネル10の外面材11よりも屋外側に断熱性の新設の窓サッシ枠における枠部材71,72をそれぞれ配置する構造においては、既設の枠部材41,42の窓サッシレール41r,42rが新設の枠部材71,72によって覆われないため、既設の枠部材41,42の窓サッシレール41r,42rの周辺における断熱が問題となる。
この点、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42をそれぞれ覆う断熱性のサッシカバー51,52がそれぞれ設けられ、サッシカバー51,52は断熱性の新設の窓サッシ枠における枠部材71,72とそれぞれ繋がっているため、既設の枠部材41,42をそれぞれ覆うサッシカバー51,52によって新設の枠部材71,72まで連続的に断熱することができる。その結果、既設の窓サッシ枠における開口の縦幅h2よりも新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1が狭くなることを抑制しつつ、改修後の窓サッシ枠の断熱性を向上させることができる。このように窓サッシ枠の断熱性が向上することにより結露が生じることを抑制することができる。また、断熱性の新設の右枠部材75は、窓サッシガイド75gを含む部分とサッシカバーに相当する部分とが一体に形成されているため、同様にして窓サッシ枠の断熱性を向上させることができる。
さらに、サッシカバー51,52及び右枠部材75のうちサッシカバーに相当する部分の内部にカバー内断熱材61,62,65がそれぞれ充填され、サッシカバー51,52及び右枠部材75のうちサッシカバーに相当する部分の内部ではカバー内断熱材61,62,65が繋がっている。このため、これらのカバー内断熱材61,62,65によっても、新設の枠部材71,72及び右枠部材75のうち窓サッシガイド75gを含む部分まで連続的に断熱することができる。
ところで、新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1が既設の窓サッシ枠における開口の縦幅h2よりも広くなるように配置したため、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42における屋外側の側面部41a,42aが新設の枠部材71,72によって覆われなくなる。このように既設の枠部材41,42の露出した部分が残った場合には、その部分で断熱材が途切れて窓サッシ枠の断熱性が低下するおそれがある。
この点、サッシカバー51,52が、既設の枠部材41,42の屋外側の側面部41a,42aを覆う側面部51c,52cをそれぞれ有することにより、新設の枠部材71,72まで断熱部材としてのサッシカバー51,52が繋がるようにすることができる。また、カバー内断熱材61,62が、既設の枠部材41,42における屋外側の側面部41a,42aを覆う部分をそれぞれ有することにより、カバー内断熱材61,62がサッシカバー51,52を介して新設の枠部材71,72まで繋がるようにすることができる。
建物の外壁内には外壁断熱材12が設けられており、サッシカバー51,52及びカバー内断熱材61,62は、屋内外方向において外壁断熱材12と重なる部分を有しているため、屋内外方向に直交する方向での熱の流入出を抑制することができる。
既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45は窓サッシレール41r,42r又は窓サッシガイド45gを有するため、入り組んだ形状となっている。このため、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45を断熱材で覆う場合に、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45との間に隙間が生じないように断熱材を設けることは容易ではない。
この点、既設の窓サッシ枠を覆うサッシカバー51,52及び新設の右枠部材75と、これらの内部に設けられた柔軟性のカバー内断熱材61,62,65とを備えるため、これらの断熱材61,62,65を既設の窓サッシ枠の形状に合わせて設けることができる。その結果、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45との間に隙間が生じないように断熱材を設けることが容易となる。さらに、柔軟性のカバー内断熱材61,62,65はサッシカバー51,52及び新設の右枠部材75の内部に設けられているため、サッシカバー51,52及び右枠部材75によって外形を整えることかできる。
サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75の内部に柔軟性のカバー内断熱材61,62,65が充填された構造では、これらの内部に断熱材61,62,65を充填する際や気温の上昇によって断熱材61,62,65が膨張した際に、サッシカバー51,52及び右枠部材75が変形したり損傷したりするおそれがある。
この点、圧力を受けたときに柔軟性のカバー内断熱材61,62,65よりも収縮するチューブ63,シート64がサッシカバー51,52及び新設の右枠部材75の内部にそれぞれ設けられているため、サッシカバー51,52及び右枠部材75の内部でカバー内断熱材61,62,65が膨張したときにチューブ63,シート64が収縮して断熱材61,62,65の膨張を吸収することができる。その結果、サッシカバー51,52及び新設の右枠部材75が変形したり損傷したりすることを抑制することができる。
新設の窓サッシ枠が既設の窓サッシ枠に取り付けられる構造では、既設の窓サッシ枠自体の剛性がそれほど高くないため、新設の窓サッシ枠が取り付けられた部分の強度が低くなるおそれがある。
この点、既設の窓サッシ枠の枠部材41,42,45及び新設の窓サッシ枠の枠部材71,72,75が建物においてそれぞれ同一の部材に取り付けられているため、新設の窓サッシ枠が取り付けられている部分の強度を既設の窓サッシ枠と同等に維持することができる。これにより、新設の窓サッシ枠の防犯性が低下することを抑制することができるため、CP(crime prevention)対応製品の認定を受けることも可能となる。
上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
上記実施形態では、上枠部材71と外壁パネル10の外面材11との間をシールするシール部材81を設けるようした。
ここで、建物において既設の窓サッシ枠の上枠部材41よりも屋外側に新設の窓サッシ枠の上枠部材71を配置して、外壁パネル10の外面材11よりも屋外側へ新設の上枠部材71が張り出した場合には、外面材11を伝う雨水が新設の上枠部材71の上部へ流れ落ちることとなる。これに対して、外面材11と上枠部材71との間をシールしようとすると、外面材11の表面が平坦でない場合には、これらの間をシールすることは必ずしも容易ではない。したがって、新設の上枠部材71の上部へ流れ落ちる雨水の排出が問題となる。
この点、図3に示すように、新設の窓サッシ枠の上枠部材171には、上面部171aの屋内側の端部から内部に雨水を流入させる流入口71eと、内部の雨水を下面部171bの屋外側の端部から流出させる流出口71fと、流入口71eから流出口71fに雨水を導く導水板71gとが設けられている。流入口71e及び流出口71fは、上枠部材171の長手方向に延びるように設けられている。導水板71gは上枠部材171の長手方向に延びる板状に形成されている。導水板71gは、流入口71eの下方に位置する屋内側の端部が、流出口71fよりも屋内側且つ上方に位置する屋外側の端部よりも高くなるように配置されている。
このため、新設の窓サッシ枠の上枠部材171の内部に流入口71eから流入した雨水を導水板71gによって流出口71fに導くことができる。その結果、外壁パネル10の外面材11の表面が平坦でない場合であっても、新設の窓サッシ枠の上枠部材171上部へ流れ落ちる雨水を円滑に排出することができる、なお、導水板71gが水平に設けられる構造や、導水板71gを省略して下面部171bによって雨水を導く構造であっても、流入口71eから流入した雨水を流出口71fに導くことができる。上枠部材171の上面部171aにおいて屋内外方向の中間部に流入口71eを設けてもよい。また、上枠部材171と外壁パネル10の外面材11との間に更にシール部材を設けてもよい。
上記実施形態では、サッシカバー51,52及び右枠部材75内に発泡ウレタン樹脂からなる柔軟性の断熱材61,62,65を注入するようにしたが、綿状の断熱材を既設の窓サッシ枠の形状に合わせて配置した後に、サッシカバー51,52及び右枠部材75を取り付けるようにしてもよい。このような綿状の断熱材は柔軟性を有しているため、既設の窓サッシ枠との間に隙間が生じないように断熱材を設けることができる。また、サッシカバー51,52及び右枠部材75内に柔軟性の断熱材61,62,65を設けるようにしたが、柔軟性を有していない断熱材をサッシカバー51,52及び右枠部材75内に設けることもできる。この場合は、断熱材を適宜分割して既設の窓サッシ枠との間に隙間が生じないように設けることが望ましい。なお、建物において結露が生じにくい位置の窓であれば、このような断熱材を省略することもできる。また、既設の窓サッシ枠を覆う断熱材の外形を整えることによって、サッシカバー51,52を省略することもできる。
さらに、サッシカバー51,52、カバー内断熱材61,62、及びチューブ63を省略することもできる。このように既設の窓サッシ枠の枠部材41,42を覆わないようにすることにより、これらの枠部材41,42に和室用の紙障子を設置することもできる。こうした構造によれば、既設の窓サッシ枠を利用して容易に和室に改修することができる。この場合に、窓サッシ枠の左右の枠に関しては、既設の窓サッシ枠の右枠部材45を覆う新設の右枠部材75を設けるとともに、右枠部材において開口部90の中央側の側面75aに紙障子を当接させて閉めるようにすればよい。また、窓構造の左端付近は右端付近と対称の構造を備えるようにすればよい。なお、既設の窓サッシ枠に紙障子を設けるのではなく、既設の窓サッシ戸を残しておくことにより二重窓構造とすることもできる。このような構造によれば、窓構造の防音性を高くすることができる。
上記実施形態では、建物の外壁パネル10の外面材11よりも屋外側に新設の窓サッシ枠を配置するようにしたが、既設の窓サッシ枠が開口部90において屋内寄りに配置されている場合には、既設の窓サッシ枠よりも屋外側で外面材11よりも屋内側に新設の窓サッシ枠を配置することもできる。この場合には、新設の窓サッシ枠の外周に建物の外壁パネル10が存在することとなるが、既設の窓サッシ枠の内周に新設の窓サッシ枠を設ける構造と比較して、既設の窓サッシ枠の開口よりも新設の窓サッシ枠の開口が小さくなることを抑制することができる。
上記実施形態では、既設の窓サッシ枠における開口の縦幅h2よりも新設の窓サッシ枠における開口の縦幅h1を広くして、新設の窓サッシ枠における開口の横幅を既設の窓サッシ枠における開口の横幅に等しくした。これに対して、既設の窓サッシ枠における開口の横幅よりも新設の窓サッシ枠における開口の横幅を広くすることもできる。要するに、既設の窓サッシ枠の開口よりも新設の窓サッシ枠の開口が小さくなることを抑制することのできる構造であればよい。