以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による燃料噴射装置100が用いられた燃料供給システム10を、図1に示す。尚、本実施形態の燃料噴射装置100は、内燃機関であるディーゼル機関20の燃焼室22内に向けて直接的に燃料を噴射する、所謂、直接噴射式燃料供給システムである。
燃料供給システム10は、フィードポンプ12、高圧燃料ポンプ13、コモンレール14、機関制御装置17、および燃料噴射装置100等から構成されている。
フィードポンプ12は、電動式のポンプであって、燃料タンク11内に収容されている。フィードポンプ12は、燃料タンク11内に貯留されている燃料に、この燃料の蒸気圧よりも高圧であるフィード圧を与える。このフィードポンプ12は、高圧燃料ポンプ13に燃料配管12aによって接続されており、所定のフィード圧を与えた液相状態の燃料をこの高圧燃料ポンプ13に供給する。尚、燃料配管12aには、調圧弁(図示しない)が設けられており、当該調圧弁によって高圧燃料ポンプ13に供給される燃料の圧力は所定値に保たれる。
高圧燃料ポンプ13は、ディーゼル機関に取り付けられて、当該ディーゼル機関の出力軸からの動力によって駆動される。高圧燃料ポンプ13は、コモンレール14に燃料配管13aによって接続されており、フィードポンプ12によって供給された燃料にさらに圧力を加えて、当該コモンレール14に供給する高圧燃料をつくり出す。加えて、高圧燃料ポンプ13は、機関制御装置17と電気的に接続された電磁弁(図示しない)を有している。この電磁弁の機関制御装置17による開閉の制御によって、高圧燃料ポンプ13からコモンレール14に供給される燃料の圧力は所定の圧力に制御される。
コモンレール14は、クロム・モリブデン鋼等の金属材料からなる管状の部材であり、ディーゼル機関のバンクあたりの気筒数に応じた複数の分岐部14aが形成されている。これら複数の分岐部14aは、供給流路14dを形成する燃料配管によって、それぞれ燃料噴射装置100に接続されている。また、燃料噴射装置100と高圧燃料ポンプ13とは、戻り流路14fを形成する燃料配管によって接続されている。以上の構成によりコモンレール14は、高圧燃料ポンプ13によって高圧な状態で供給された燃料を一時的に蓄え、圧力を保持したまま複数の燃料噴射装置100に供給流路14dを介して分配する。加えて、コモンレール14は、軸方向の両端部のうち、一方の端部にコモンレールセンサ14bを、他方の端部に圧力レギュレータ14cを有している。コモンレールセンサ14bは、機関制御装置17に電気的に接続されており、燃料の圧力および温度を検出して当該機関制御装置17に出力する。圧力レギュレータ14cは、コモンレール14内の燃料の圧力を一定に保持するとともに、余剰分の燃料を減圧して低圧側に排出する。この圧力レギュレータ14cを通過した余剰分の燃料は、コモンレール14と燃料タンク11との間を接続する燃料配管14e内の流路を介して、当該燃料タンク11へ戻される。
燃料噴射装置100は、コモンレール14の分岐部14aを通じて供給される圧力の高められた高圧燃料を噴孔44から噴射する装置である。具体的に、燃料噴射装置100は、供給流路14dを介して高圧燃料ポンプ13から供給される高圧燃料の噴孔44からの噴射を、機関制御装置17からの制御信号に応じて制御する弁部50を備えている。加えて、この燃料噴射装置100において、供給流路14dから供給された高圧燃料の一部であって、噴孔44からの噴射されなかった余剰分の燃料は、燃料噴射装置100と高圧燃料ポンプ13との間を連通する戻り流路14fに排出され、高圧燃料ポンプ13へと戻される。この燃料噴射装置100は、ディーゼル機関20の燃焼室22の一部であるヘッド部材21の挿入孔に挿入されて、取り付けられている。燃料噴射装置100は、ディーゼル機関20の燃焼室22毎に複数配置され、当該燃焼室22内に向け直接的に燃料を、具体的には160から220メガパスカル(MPa)程度の噴射圧力で噴射する。
機関制御装置17は、マイクロコンピュータ等によって構成されている。この機関制御装置17は、上述したコモンレールセンサ14bに加えて、ディーゼル機関20の回転速度を検出する回転速度センサ、スロットル開度を検出するスロットルセンサ、吸入吸気量を検出エアフローセンサ、過給圧を検出する過給圧センサ、冷却水温を検出する水温センサ、および潤滑油の油温を検出する油温センサ等、種々のセンサと電気的に接続されている。機関制御装置17は、これらの各センサからの情報に基づいて、高圧燃料ポンプ13の電磁弁および各燃料噴射装置100の弁部50の開閉を制御するための電気信号を、高圧燃料ポンプ13の電磁弁および各燃料噴射装置100に出力する。
次に、燃料噴射装置100の構成について、図2および図3に基づいて説明する。
燃料噴射装置100は、制御弁駆動部30、制御ボディ40、ノズルニードル60、およびフローティングプレート70を備えている。
制御弁駆動部30は、制御ボディ40内に収容されている。この制御弁駆動部30は、ターミナル32、ソレノイド31、固定子36、可動子35、スプリング34、およびバルブシート部材33を有している。ターミナル32は、導電性を備える金属材料によって形成され、延伸方向の両端部のうち、一方の端部を制御ボディ40から外部に露出させているとともに、他方の端部をソレノイド31と接続させている。ソレノイド31は、螺旋状に巻設されており、ターミナル32を介して機関制御装置17からのパルス電流の供給を受ける。ソレノイド31は、この電流の供給を受けることで、軸方向に沿って周回する磁界を発生させる。固定子36は、磁性材料によって形成された円筒状の部材であって、ソレノイド31によって発生された磁界内で帯磁する。可動子35は、磁性材料によって形成される二段円柱状の部材であって、固定子36の軸方向先端側に配置されている。可動子35は、帯磁した固定子36によって軸方向基端側に吸引される。スプリング34は、金属製の線材を周回状に巻設したコイルスプリングであって、可動子35を固定子36から離間させる方向に付勢している。バルブシート部材33は、制御ボディ40の後述する制御弁座部47aとともに圧力制御弁80を形成している。バルブシート部材33は、可動子35の軸方向において固定子36とは反対側に設けられて、制御弁座部47aに着座する。ソレノイド31による磁界の形成の無い場合、バルブシート部材33は、スプリング34の付勢力によって制御弁座部47aに着座している。ソレノイド31によって磁界が形成された場合、バルブシート部材33は、制御弁座部47aから離座する。
制御ボディ40は、ノズルボディ41、シリンダ56、オリフィスプレート46、ホルダ48、リテーニングナット49を有する長手形状であって、高圧燃料の通路が内部に形成されている。これらノズルボディ41、オリフィスプレート46、およびホルダ48は、噴孔44が形成されるヘッド部材21(図1参照)への軸方向の先端部側から、この順で並んでいる。また、高圧燃料をディーゼル機関20の燃焼室22(図1参照)内に噴射する噴孔44が先端部に形成されている。
この制御ボディ40には、流入通路52、流出通路54、圧力制御室53、および圧力制御室53に露出する開口壁面90が形成されている。流入通路52は、一方の流路端が高圧燃料ポンプ13およびコモンレール14等と繋がる供給流路14d(図1参照)に、他方の流路端が圧力制御室53に、それぞれ連通している。この流入通路52は、他方の流路端である流入口52aを開口壁面90に開口させており、圧力制御室53内に高圧燃料を導入する。また、流出通路54は、一方の流路端が高圧燃料ポンプ13と繋がる戻り流路14f(図1参照)に、他方の流路端が圧力制御室53に、それぞれ連通している。この流出通路54は、他方の流路端である流出口54aを開口壁面90に開口させており、圧力制御室53内の燃料を低圧側に流出させる。圧力制御室53は、オリフィスプレート46およびシリンダ56等によって区画されている。この圧力制御室53は、制御ボディ40の内部においてノズルニードル60を挟んで噴孔44と反対側に形成され、高圧燃料を流入通路52から導入し、流出通路54を経由して排出する。
ノズルボディ41は、クロム・モリブデン鋼等の金属材料よりなる有底円筒状の部材である。このノズルボディ41は、ノズルニードル収容部43、弁座部45、および噴孔44を有している。ノズルニードル収容部43は、ノズルボディ41の軸方向に沿って形成され、ノズルニードル60を収容する円筒穴である。このノズルニードル収容部43には、高圧燃料ポンプ13およびコモンレール14(図1参照)から高圧な燃料が供給される。弁座部45は、ノズルニードル収容部43の底壁に形成されて、ノズルニードル60の先端と接触する。噴孔44は、弁座部45を挟んでオリフィスプレート46とは反対側に位置し、ノズルボディ41の内側から外側に向けて放射状に複数形成されている。この噴孔44を通過することで、高圧な燃料は、微粒化および拡散して空気と混合し易い状態となる。
シリンダ56は、金属材料よりなり、オリフィスプレート46およびノズルニードル60とともに圧力制御室53を区画する円筒状の部材である。シリンダ56は、ノズルニードル収容部43内に、当該ノズルニードル収容部43と同軸となるように配置されている。このシリンダ56において、オリフィスプレート46側となる軸方向の端面がオリフィスプレート46に保持されている。
このシリンダ56は、内壁面によって、制御壁面部57、シリンダ摺動部59、プレートストッパ部58a、およびニードルストッパ部58bを形成している。制御壁面部57は、シリンダ56の軸方向においてオリフィスプレート46側に位置し、開口壁面90を囲っている。シリンダ摺動部59は、シリンダ56の軸方向においてオリフィスプレート46とは反対側に位置し、ノズルニードル60をその軸方向に沿って摺動させる。このシリンダ摺動部59の内径は、制御壁面部57の内径に対して縮径されている。プレートストッパ部58aは、シリンダ摺動部59と制御壁面部57との内径の差によって形成される段差部であって、フローティングプレート70と当該プレート70の変位軸方向において対向している。このプレートストッパ部58aは、ノズルニードル60に近接する方向へのフローティングプレート70の変位を規制する。ニードルストッパ部58bは、変位軸方向において、シリンダ摺動部59に対して制御壁面部57とは反対側に形成されている。このニードルストッパ部58bは、変位軸方向においてプレートストッパ部58aとは反対方向を向いており、フローティングプレート70に近接する方向へのノズルニードル60の変位を規制する。
オリフィスプレート46は、クロム・モリブデン鋼等の金属材料よりなり、ノズルボディ41とホルダ48との間で保持されている円柱状の部材である。このオリフィスプレート46は、制御弁座部47a、開口壁面90、流出通路54、および流入通路52を形成している。制御弁座部47aは、オリフィスプレート46の軸方向の両端面のうち、ホルダ48側の端面に形成され、制御弁駆動部30のバルブシート部材33等とともに圧力制御弁80を構成している。また、開口壁面90は、オリフィスプレート46のノズルボディ41側の端面の径方向中央部に形成された平坦な面である。この開口壁面90は、円筒状のシリンダ56によって囲まれて円形をなしている。流出通路54は、この開口壁面90の径方向中央部から、制御弁座部47aに向って延びている。この流出通路54は、オリフィスプレート46の軸方向に対して傾斜している。流入通路52は、開口壁面90において流出通路54の径方向外側から、制御弁座部47aを形成する端面に向って延びている。この流入通路52は、オリフィスプレート46の軸方向に対して傾斜している。
ホルダ48は、クロム・モリブデン鋼等の金属材料よりなる筒状の部材であって、軸方向に沿って形成される縦孔48a,48b、およびソケット部48cを有している。縦孔48aは、供給流路14d(図1参照)と流入通路52とを連通する燃料流路である。一方、縦孔48bのオリフィスプレート46側には制御弁駆動部30が収容されている。加えて、縦孔48bのオリフィスプレート46とは反対側には、縦孔48bの開口を閉塞するようソケット部48cが形成されている。このソケット部48cは、内部に制御弁駆動部30のターミナル32の一端が突出しており、機関制御装置17と接続されたプラグ部(図示しない)と嵌合自在である。このソケット部48cと図示しないプラグ部との接続によれば、機関制御装置17から制御弁駆動部30へのパルス電流の供給が可能となる。
リテーニングナット49は、金属材料よりなる二段円筒状の部材である。リテーニングナット49は、ノズルボディ41の一部およびオリフィスプレート46を収容しつつ、ホルダ48のオリフィスプレート46側に螺合されている。加えて、リテーニングナット49は、内周壁部で段差部49aを形成している。この段差部49aは、リテーニングナット49のホルダ48への取り付けによって、ノズルボディ41およびオリフィスプレート46をホルダ48側に押し付ける。これにより、リテーニングナット49は、ノズルボディ41およびオリフィスプレート46を、ホルダ48とともに挟持している。
ノズルニードル60は、高速度工具鋼等の金属材料よって全体として円柱状に形成されており、制御ボディ40の内部において当該制御ボディ40の軸方向に沿って移動する。シート部65、弁受圧面61、ニードル摺動部63、ニードル係止部68、リターンスプリング66、および鍔部材67を有している。シート部65は、ノズルニードル60の軸方向の両端部のうち、圧力制御室53とは反対側となる端部に形成されて、制御ボディ40の弁座部45に着座する。このシート部65は、ノズルニードル収容部43内に供給される高圧な燃料の噴孔44を開閉するための弁部50を弁座部45とともに構成している。弁受圧面61は、ノズルニードル60の軸方向の両端部のうち、シート部65とは反対側となる、圧力制御室53側の端部によって形成されている。この弁受圧面61は、開口壁面90および制御壁面部57とともに圧力制御室53を区画しており、当該圧力制御室53内の燃料の圧力を受ける。これによりノズルニードル60は、移動を圧力制御室53内の燃料の圧力によって制御される。
ニードル摺動部63は、ノズルニードル60の円柱状の外周壁のうち、制御壁面部57よりも弁受圧面61側に位置する部分である。このニードル摺動部63は、シリンダ56の内周壁によって形成されるシリンダ摺動部59に対して摺動自在に支持されている。鍔部材67は、ノズルニードル60の外周壁部に外嵌され、当該ノズルニードル60に保持される環状の部材である。ニードル係止部68は、ニードル摺動面63よりも軸方向シート部65側に形成されており、ノズルニードル60の外径を拡大することによって形成される段差部である。このニードル係止部68は、ノズルニードル60の移動軸方向において、シリンダ56のニードルストッパ部58bと対向する面を形成する。ニードル係止部68がニードルストッパ部58bに係止されることによって、フローティングプレート70に近接する方向へのノズルニードル60の移動は規制される。
このノズルニードル60は、リターンスプリング66によって弁部50側に付勢されている。リターンスプリング66は、金属製の線材を周回状に巻設したコイルスプリングである。リターンスプリング66は、軸方向の一端を鍔部材67の圧力制御室53側の面に、他端をシリンダ56の弁部側の端面に、それぞれ着座させている。以上の構成によるノズルニードル60は、弁受圧面61の受ける圧力制御室53内の燃料の圧力に応じてシリンダ56に対してシリンダ56の軸方向に直線状に往復移動することで、シート部65を弁座部45に着座および離座させ、弁部50を開閉する。
フローティングプレート70は、金属材料よりなる円盤状の部材であって、流入通路52を閉じるために開口壁面90を押圧する。このフローティングプレート70は、押圧面73、押圧受圧面77、プレート係止部78、外周壁面74、制限孔71を有している。フローティングプレート70は、圧力制御室53内において、制御ボディ40のシリンダ56の軸方向に沿って配置され、当該軸方向に往復変位可能である。フローティングプレート70の往復変位する変位軸の方向は、ノズルニードル60の変位軸の方向に沿っている。このフローティングプレート70の変位軸方向の両端面のうち、開口壁面90と当該変位軸方向において対向する端面は、押圧面73を形成している。押圧面73は、円形であって、フローティングプレート70の往復変位によって開口壁面90に当接する。この押圧面73と変位軸方向において反対側となるフローティングプレート70の端面は、変位軸方向において弁受圧面61と対向する押圧受圧面77を形成している。この押圧受圧面77は、圧力制御室53内の燃料によって、開口壁面90に向かう方向に力を受ける。また、押圧受圧面77の外縁には、シリンダ56のプレートストッパ部58aと変位軸方向において対向するプレート係止部78が形成されている。このプレート係止部78は、プレートストッパ部58aに係止されることにより、ノズルニードル60に近接する方向へのフローティングプレート70の変位を規制する。
以上の両端面間を連続させている外周壁面74は、フローティングプレート70の変位軸まわりに位置し、当該プレート70の変位軸方向に沿っている。この外周壁面74は、変位軸と直交する方向において制御壁面部57と対向している。シリンダ56に対してフローティングプレート70が同軸に位置した状態では、外周壁面74は、制御壁面部57との間に燃料の流通可能な隙間を形成している。これら外周壁面74および制御壁面部57間の隙間を通して、フローティングプレート70に対して開口壁面90側となる圧力制御室53の空間に流入した燃料は、当該プレート70に対して弁受圧面61側となる圧力制御室53の空間に流通する。尚、圧力制御室53において、フローティングプレート70を挟んで押圧面73側となる空間を、開口空間53aとする。また、フローティングプレート70を挟んで押圧面73とは反対側の、押圧受圧面77側となる空間を、背圧空間53bとする。
制限孔71は、フローティングプレート70の押圧受圧面77の径方向の中央部から、流出口54aに向かって延伸している。この制限孔71の延伸方向は、当該フローティングプレート70の変位軸方向に沿っている。制限孔71は、流出口54aと対向している押圧面73の径方向の中央部に、その一端を開口させている。制限孔71は、フローティングプレート70の押圧面73が開口壁面90に当接した状態下で、圧力制御室53と流出口54aとを連通し、且つ圧力制御室53から流出口54aへの燃料の流通量を制限する。
この制限孔71は、絞り部71aおよび凹部72を具備している。絞り部71aは、制限孔71における最小の流路面積を規定し、当該制限孔71を流れる燃料の流通量を定める。この絞り部71aの流路面積は、流出口54aの開口面積よりも小さくされている。また、絞り部71aは、フローティングプレート70の軸方向の両端面のうち、押圧受圧面77を形成するよりも、押圧面73を形成する端面に近接している。凹部72は、フローティングプレート70と同軸上に位置する円筒穴であって、弁受圧面61とは反対側に押圧受圧面77から窪み、制限孔71の流路面積を部分的に拡大している。凹部72によって、押圧受圧面77における制限孔71の開口は拡大されている。
(特徴部分)
次に、燃料噴射装置100の特徴部分について、図4〜図6に基づいてさらに詳細に説明する。
図4に示すように、オリフィスプレート46は、流出凹部97および流入凹部94を有している。これら流出凹部97および流入凹部94は、開口壁面90を、フローティングプレート70の軸方向において対向する押圧面73とは反対側に窪ませることによって形成されている。流出凹部97は、円形の開口壁面90において、流入凹部94の内周側に位置し、当該開口壁面90の中心と同心の円形である。この流出凹部97の底面部97aには、流出口54aが円形に開口している。一方、流入凹部94は、流出凹部97の径方向外側に位置し、当該流出凹部97の外縁に沿って円環状に延伸する溝である。この流入凹部94は、開口壁面90の中心と同心である。流入凹部94の底面部94aには、流入口52aが円形に開口している。
さらに、流入凹部94は、開口壁面90の平面方向に沿って流入口52aから離れた位置ほど深くなっている。以下、流入凹部94における、流入口52aからの距離に対する流入凹部94の深さの変化について説明する。尚、図6は、図5に示すような流入凹部94の周方向に規定したプロファイル走査線PSL1に沿って、当該流入凹部94を切断した場合における、流入口52aからの距離と深さとの相関を示すものである。
流入凹部94の底面部94aにおいて、流入口52aに最も近い位置をa1およびe1とする。これら位置a1および位置e1は、流入凹部94の周方向において流入口52aを挟んで対向している。上述したプロファイル走査線PSL1は、位置a1から始まり、流入凹部94を反時計まわりに周回し、位置e1に到達している。これら位置a1から位置e1までをほぼ90度間隔で区切る点を、位置b1、c1、d1とする。流入凹部94の深さは、当該流入凹部94において流入口52aに近い位置a1で最も浅くされている。そして、この位置a1における流入凹部94の深さをf1(図4参照)とする。
プロファイル走査線PSL1に沿って、位置b1を通過し、位置a1と流出口54aを挟んで対向する位置c1に至るまで、流入凹部94の深さは、流入口52aから離れるにしたがって漸増する。流入口52aから最も離れた位置c1では、流入凹部94の深さが最も深くなる。この位置c1における流入凹部94の深さをg1(図4参照)とする。この位置c1から、プロファイル走査線PSL1に沿って、位置d1を通過し、位置e1に至るまで、流入凹部94の深さは、流入口52aに近づくにしたがって漸減する。この位置e1における流入凹部94の深さは、位置a1と同様にf1となっている。尚、流入凹部94において最も深い位置c1における深さg1は、最も浅い位置a1,e1における深さf1の、例えば2倍程度とされるのが望ましい。ただし、流入凹部94における最も深い部分と最も浅い部分との深さの比は、何ら限定されるものではない。
以上のような流入凹部94の底面部94aの形状によって、流入凹部94において高圧燃料が蓄積可能な蓄積容量は、流入口52aに近い位置a1、e1よりも、流入口52aから離れた位置c1が多くなる。
以上の構成による燃料噴射装置100が、機関制御装置17からの制御信号に応じて弁部50を開閉させ燃料の噴射を行う動作について、図2〜図5に基づいて以下説明する。
圧力制御弁80が流出口54aと戻り流路14f(図1参照)とを遮断した状態では、フローティングプレート70は、プレート係止部78をプレートストッパ部58aに着座させている。この状態から、圧力制御弁80の作動によって流出口54aと戻り流路14fとが連通すると、流出通路54を経由して圧力制御室53から燃料が流出する。これにより生じる流出口54a付近の減圧によって、フローティングプレート70は、開口壁面90に向かって吸引され、プレート係止部78をプレートストッパ部58aから離間させる方向に変位する。この変位によって開口壁面90に押圧面73を当接させたフローティングプレート70は、当該押圧面73で開口壁面90を押圧することによって、当該開口壁面90に開口する流入口52aを閉じる。
流入通路52を閉じるために、流入口52aの開口する開口壁面90がフローティングプレート70によって押圧された状態では、流入凹部94は、開口壁面90に当接している押圧面73とともに、円環状の空間を形成する。このとき流入凹部94内には、流入口52aから高圧燃料ポンプ13(図1参照)によって加圧された高圧燃料が流入口52aを通じて導入される。上述したように流入凹部94は、流入口52aから遠い位置ほど、高圧燃料の蓄積容量が大きくされている。故に、流入口52aから離れた位置c1には、流入口52aに近い位置a1,e1よりも多くの高圧燃料が蓄積される。
一方、圧力制御室53内の燃料は、制限孔71および流出凹部97内を経由して、流出口54aから排出される。この燃料の排出が継続されると、当該圧力制御室53内の燃料圧力は所定の圧力まで下降する。圧力制御室53内の圧力がこの所定の圧力をさらに下回ると、ノズルニードル60は、圧力制御室53側に押し上げられ、シート部65を弁座部45から離座させ、弁部50を開弁させる。その後、ノズルニードル60の圧力制御室53側への移動は、ニードル係止部68のニードルストッパ部58bへの当接によって規制される。この当接によって、弁部50の開度は最大となる。
圧力制御弁80の閉弁により、流出口54aと戻り流路14f(図1参照)とが遮断されると、フローティングプレート70は、流入口52aから導入されている高圧燃料の圧力によって弁受圧面61側へと押され、変位を開始する。このように流入通路52を開けるためにフローティングプレート70が開口壁面90から離間するよう圧力制御室53内を軸方向に変位すると、流入凹部94内に蓄積されていた高圧燃料は、圧力制御室53内に放出され始める。
このとき、流入凹部94において流入口52aに近い位置a1、e1には、当該流入口52aから導入される高圧燃料が、新たに供給され易い。故に、流入凹部94において流入口52aに近い位置a1、e1の近傍では、高圧燃料の蓄積容量が少なくても、当該流入口52aから高圧燃料が新たに供給されるので、燃料の放出が継続される。一方、流入凹部94において流入口52aから離れた位置c1には、流入口52aから導入される高圧燃料が新たに供給され難い。しかし、高圧燃料の蓄積容量が多いので、流入凹部94において流入口52aから離れた位置からも、この蓄積されていた燃料の放出が継続される。以上により、フローティングプレート70の変位が開始された後、流入凹部94から圧力制御室53への高圧燃料の継続的な放出が、円環状の流入凹部94の全域に亘って行われ得る。また、円環状の流入凹部94から円環状に高圧燃料が放出されるので、放出された高圧燃料は、フローティングプレート70を周方向の全域に亘って押し、圧力制御室53内で素早く変位させる。
そして、流入凹部94の全域から圧力制御室53の開口空間53aに放出された燃料は、制限孔71と、外周壁面74および制御壁面部57間の隙間とを流通し、背圧空間53bに到達する。背圧空間53bの圧力回復によって、ノズルニードル60は弁部50側に押し下げられる。ノズルニードル60は、シート部65を弁座部45に着座させることで、噴孔44を閉じるため弁部50を閉弁状態とする。
ここまで説明した第一実施形態では、フローティングプレート70の変位が開始された後、高圧燃料の継続的な放出が流入凹部94の全体に亘って行われるので、流入凹部94から圧力制御室53に放出される燃料の流量ばらつきは低減される。これにより、短い時間で多量の燃料を圧力制御室53内に供給できるので、当該圧力制御室53内の圧力回復はすみやかに生じ得る。故に、噴孔44を閉じるノズルニードル60の動作が早められる。したがって、ノズルニードル60の応答性を向上させた燃料噴射装置100を実現することができる。
加えて第一実施形態では、流入凹部94の深さは、流入口52aから離れるにしたがって漸増しているので(図6参照)、流入口52aからの遠ざかるほど高圧燃料の蓄積容量が増加する。このように、流入口52aから導入される高圧燃料の供給され難い位置c1ほど、高圧燃料の蓄積容量を多くできるので、流入凹部94から放出される燃料の流量ばらつきは確実に低減される。以上により、圧力制御室内の圧力回復をさらにすみやかに生じさせられ得るので、いっそうのノズルニードル60の応答性向上を果たすことができる。
また第一実施形態では、円環状の流入凹部94の全域から放出され燃料によって、フローティングプレート70はその周方向の全域に亘って押されるので、圧力制御室53内を素早く変位できる。加えて、流入凹部94が円環状であることにより、放出された燃料に押されたフローティングプレート70が傾く事態は生じ難い。このように、フローティングプレート70の移動を円滑に生じさせることで、圧力制御室53内の圧力回復を早めることができる。故に、閉弁時におけるノズルニードル60の応答性向上がさらに確実なものとなる。
さらに第一実施形態では、流出口54aを流入凹部94の内周側であって、開口壁面90の径方向の中央部に形成することで、当該流入凹部94は、開口壁面90において流出口54aに妨げられることなく、径方向に拡大され得る。拡大された流入凹部94には、より多くの高圧燃料が流入口52aから導入される。故に、フローティングプレート70が開口壁面90からの離間した後、当該流入凹部94から圧力制御室53に放出される燃料の量を増加させられるので、当該圧力制御室53内における圧力回復はさらにすみやかに生じる。したがって、閉弁時におけるノズルニードル60の応答性はさらに向上し得る。
尚、第一実施形態において、制御ボディ40が請求項に記載の「弁本体」に、ノズルニードル60が請求項に記載の「弁部材」に、フローティングプレート70が請求項に記載の「制御部材」に、それぞれ相当する。
(第二実施形態)
図7〜図10に示す本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。この第二実施形態による燃料噴射装置200では、第一オリフィスプレート246および第二オリフィスプレート247が第一実施形態のオリフィスプレート46に相当する構成となっている。また、第二実施形態の燃料噴射装置200は、フローティングプレート270を第一オリフィスプレート246側に向かって付勢するプレートスプリング276を備えている。以下、第二実施形態による燃料噴射装置200の構成を詳細に説明する。
第一オリフィスプレート246および第二オリフィスプレート247は、ともにクロム・モリブデン鋼等の金属材料よりなる円柱状の部材である。これら第一オリフィスプレート246および第二オリフィスプレート247には、流出通路254および流入通路252が形成されている。第一オリフィスプレート246において、流出通路254は、開口壁面290の中心から、当該第一オリフィスプレート246の軸方向に沿って第二オリフィスプレート247側の端面まで延伸している。流入通路252は、流出通路254と同様に、第一オリフィスプレート246の軸方向に沿って当該プレート246を軸方向に貫通している。流入通路252は、流出通路254の径方向外側に位置し、当該流出通路254の周方向に等間隔で四つ形成されている。
加えて、第一オリフィスプレート246は、流出凹部297および流入凹部294を有している。流出凹部297は、円形の開口壁面290において、流入凹部294の内周側に位置し、当該開口壁面290の中心と同心の円形である。この流出凹部297の底面部297aには、流出口254aが円形に開口している。一方、流入凹部294は、流出凹部297の径方向外側に位置し、当該流出凹部297の外縁に沿って円環状に延伸する溝である。また、流入凹部294は、開口壁面290の中心と同心である。この流入凹部294の底面部294aには、円形の流入口252aが、当該流入凹部294の周方向に等間隔で四つ開口している。
さらに、流入凹部294は、隣接する流入口252aの各々から、それら流入口252aの間に向かうほど深くなっている。以下、流入凹部294における、流入口252aからの距離に対する深さの変化について説明する。尚、図10は、図9に示すような流入凹部294の周方向に規定したプロファイル走査線PSL2に沿って、当該流入凹部294を切断した場合における、流入口252aからの距離と深さとの相関を示すものである。
四つの流入口252aのうち、隣接する一対の流入口252aの各々に最も近い位置をa2およびc2とする。上述したプロファイル走査線PSL2は、位置a2から始まり、流入凹部294を反時計まわりに周回し、位置c2に到達している。流入凹部294の周方向において、これら位置a2と位置c2との中間となる位置をb2とする。流入凹部294の深さは、当該流入凹部294において各流入口252aに近い位置a2およびc2で最も浅くされている。そして、この位置a2およびc2における流入凹部294の深さをf2(図10参照)とする。
プロファイル走査線PSL2に沿って、位置b2に至るまで、流入凹部294の深さは、流入口252aから離れるにしたがって漸増する。即ち、流入凹部294の周方向において隣接する流入口252a同士の当該周方向中間位置b2に向かうほど、流入凹部294は深くなっていく。このように、隣接する流入口252aの各々から、それら流入口252aの間に向うほど深くなることで、流入凹部294の深さは、中間である位置b2で最も深くなる。この位置b2における流入凹部294の深さをg2(図10参照)とする。この位置b2から、プロファイル走査線PSL2に沿って、位置c2に至るまで、流入凹部294の深さは漸減する。尚、第二実施形態では、流入口252a同士の中間位置として、一対の流入口252aから等しい距離にある位置b2について、その深さを説明した。しかし、流入凹部の最も深くなる流入口252a同士の中間位置は、一対の流入口252aの間において、いずれか一方の流入口252aに他方の流入口252aよりも近接していてもよい。
第二実施形態では、以上のような流入凹部294の深さの変化が、全ての隣接する流入口252aの間の領域に形成されている。このような流入凹部294の底面部294aの形状によって、流入凹部294において高圧燃料が蓄積可能な蓄積容量は、流入口に近い位置a2、c2よりも、流入口252aから離れた中間の位置b2の方が多くなる。
ここまで説明した第二実施形態でも、フローティングプレート270の変位が開始された後、高圧燃料の継続的な放出が流入凹部294の全域に亘って行われるので、流入凹部294から圧力制御室53に放出される燃料の流量ばらつきは低減される。これにより、短い時間で多量の燃料を圧力制御室53内に供給できるので、当該圧力制御室53内の圧力回復はすみやかに生じ得る。故に、噴孔44(図2参照)を閉じるノズルニードル60の動作が早められる。したがって、ノズルニードル60の応答性を向上させた燃料噴射装置200を実現することができる。
加えて、流入凹部294の底面部294aに複数の流入口252aを開口させた第二実施形態では、隣接する流入口252aの中間となる位置b2が、高圧燃料の供給され難い箇所となる。故に、隣接する流入口252aの各々から、それら流入口252aの間に向かうほど深くなる流入凹部294とすることで、この中間となる位置b2の高圧燃料の蓄積容量を多くできる。これにより、流入凹部294から放出される燃料の流量ばらつきの低減を図り、圧力制御室53内の圧力回復をすみやかに生じさせることができる。したがって、流入口252aが複数開口する形態であっても、ノズルニードル60の応答性向上の効果は確実に獲得され得る。
また第二実施形態のように、複数の流入口252aを開口壁面290に開口する場合、これら流入口252aを開口壁面290の中心まわりに等間隔に開口させることで、環状の流入凹部294の各位置における高圧燃料の供給され難さの不均衡を是正できる。故に、流入凹部294から放出される燃料の流量ばらつきを抑制する作用が、さらに確実なものとなる。したがって、閉弁時におけるノズルニードル60の応答性は確実に向上し得る。
尚、第二実施形態では、フローティングプレート270が請求項に記載の「制御部材」に相当する。
(第三実施形態)
図11〜図13に示す本発明の第三実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。この第三実施形態による燃料噴射装置300は、第一実施形態のオリフィスプレート46に相当するオリフィスプレート346を備えている。以下、第三実施形態による燃料噴射装置300の構成を詳細に説明する。
オリフィスプレート346には、流出通路354および流入通路352が形成されている。流出通路354は、開口壁面390の径方向中央部から偏心した位置から、制御弁座部47aに向って延びている。この流出通路354は、オリフィスプレート346の軸方向に対して傾斜している。流入通路352は、開口壁面390において流出通路354と隣接して形成されており、オリフィスプレート346の軸方向に対して、流出通路354とは異なる方向に傾斜している。
さらに、オリフィスプレート346は、流出凹部397および流入凹部394を有している。これら流出凹部397および流入凹部394は、開口壁面390を、フローティングプレート70の軸方向において対向する押圧面373とは反対側に窪ませることによって形成されている。流出凹部397は、円形の開口壁面390において、当該開口壁面390の中心から偏心して位置する円形の窪みである。この流出凹部397の底面部397aには、流出口354aが円形に開口している。この流出口354aは、開口壁面390の中心から偏心して形成された開口であり、流出凹部397の径方向中央部に位置している。一方、流入凹部394は、流出凹部397および流出口354aの外縁に沿って延伸している。この流入凹部394は、その延伸方向の両端部394bから流入口352aの開口する中央部394cに向かうにしたがい漸増する幅をもった溝である。
さらに、流入凹部394は、延伸方向に沿って流入口52aから離れた位置ほど深くなっている。以下、流入凹部394における、流入口352aからの距離に対する流入凹部394の深さの変化について説明する。尚、図13は、図12に示すような流入凹部394の延伸方向に倣って規定したプロファイル走査線PSL3に沿って、当該流入凹部394を切断した場合における、流入口352aからの距離と深さとの相関を示すものである。
流入凹部394の底面部394aにおいて、流入口352aに最も近い位置をa3とする。上述したプロファイル走査線PSL3は、位置a3から始まり、流入凹部394を反時計まわりに周回し、両端部394bのうち一方である位置c2に到達している。流入凹部394の延伸方向において、これら位置a2と位置c2との中間となる位置をb3とする。流入凹部394の深さは、当該流入凹部394において各流入口352aに近い位置a3で最も浅くされている。そして、この位置a3における流入凹部394の深さをf3とする。
プロファイル走査線PSL3に沿って、位置b3を通過し、位置c3に至るまで、流入凹部394の深さは、流入口352aから離れるにしたがって漸増する。流入口352aから最も離れた位置c3では、流入凹部394の深さが最も深くなる。この位置c3における流入凹部394の深さをg3とする。
以上のような流入凹部394の底面部394aの形状によって、流入口352aから離れた位置c3の近傍に高圧燃料を蓄積する蓄積容量を確保することができる。
ここまで説明した第三実施形態のように、中央部394cから両端部394bに向かうにしたがい幅の漸増する流入凹部394であっても、中央部394cから両端部394bに向かうほど深くなる流入凹部394とするのがよい。これにより、両端部394bに蓄積できる高圧燃料の蓄積容量を増加させられるので、当該両端部394bからの継続的な燃料の放出が可能になる。故に、流入凹部から圧力制御室53への流量ばらつきを抑制する作用が顕著に発揮される。したがって、両端部394bに近づくほど幅の狭くなる溝状の流入凹部394においても、流入口352aから離れた位置ほどその窪みを深くすることは、圧力制御室53内の圧力回復を早め、閉弁時におけるノズルニードル60の応答性向上に貢献し得る。
(第四〜第七実施形態)
図14(a)〜(d)に示す本発明の第四〜第七実施形態は、それぞれ第一実施形態のさらに別の変形例である。第一実施形態では、流入凹部94の深さは、プロファイル走査線PSL1に沿って流入口52aから離れるにしたがって漸増していた。しかし、流入凹部において流入口52aからの距離と深さとの相関は、第一実施形態で規定したようなものに限定されず、以下、図14および図5に基づいて説明する第四〜第七実施形態のようなものであってもよい。
図14(a)および図5に示す第四実施形態では、流入凹部494は、プロファイル走査線PSL1に沿って、位置a1と位置b1との中間から、位置d1と位置e1との中間までの領域に亘って、最も深くなっている。加えて、流入凹部494には、位置b1および位置d1に、補強部が形成されている。この補強部は、流入凹部494の径方向に沿って、当該流入凹部494の内周側の壁面と外周側の壁面とを繋いでいる。これら補強部は、開口壁面90の剛性を高め、フローティングプレート70(図4参照)の押圧力に起因した変形を抑制する。このような補強部が形成されているため、流入凹部494の深さは、位置b1および位置d1で一旦浅くなっている。このように、部分的に流入凹部494を浅くする補強が形成されていても、全体として、流入口52aから離れるにしたがって深くなる流入凹部494であれば、流入凹部494から放出される燃料の流量ばらつきの不均衡を是正できる。したがって、第四実施形態による流入凹部494は、閉弁時におけるノズルニードル60(図4参照)の応答性向上に貢献し得る。
図14(b)および図5に示す第五実施形態では、流入凹部594の深さは、プロファイル走査線PSL1に沿って位置a1から位置b1までの範囲で、最も浅い深さf1で一定となっている。そして、位置b1と位置c1との間に形成された段差によって、流入凹部594の深さは、位置c1近傍で最も深くなっている。また、位置c1と位置d1との間に形成された段差によって、流入凹部594の深さは、最も浅い深さf1に戻されている。そして、位置d1と位置e1との間では、流入凹部94の深さは、最も浅い深さf1で一定となっている。
また、図14(c)および図5に示す第六実施形態では、流入凹部694は、プロファイル走査線PSL1に沿って位置a1から離れるにしたがって、段階的に深くなる。プロファイル走査線PSL1に沿って位置a1から位置b1までの間に形成された段差によって、位置b1近傍では、流入凹部694は、f1とg1の中間の深さとなっている。加えて、位置b1と位置c1との間にも段差が形成されており、流入凹部694は位置c1の近傍で最も深くなっている。そして、位置c1と位置d1との間、および位置d1と位置e1との間にそれぞれ形成された段差によって、位置c1から位置e1に近づくにつれて、流入凹部694は段階的に浅くなる。
以上の第五および第六実施形態のように、流入凹部は、流入口52aから離れるにしたがって段階的に深くなっていてもよい。このような形状の流入凹部であっても、流入口52aから導入される高圧燃料の供給され難い位置における高圧燃料の蓄積容量を多くすることができる。故に、流入凹部から放出される燃料の流量ばらつきは確実に低減される。したがって、ノズルニードル60(図4参照)の応答性向上が果たされ得る。
図14(d)および図5に示す第七実施形態では、流入凹部794の深さは、プロファイル走査線PSL1に沿って位置a1から位置c1までの範囲で、流入口52aからの距離に比例して、深さf1から深さg1まで変化している。また、位置c1から位置e1までの範囲では、プロファイル走査線PSL1に沿って、流入口52aからの距離に比例して、深さg1から深さf1まで変化している。これらのように、流入凹部794の深さは、流入口52aからの距離に比例して規定されていてもよい。
(第八〜第十実施形態)
図15(a)〜(c)に示す本発明の第八〜第十実施形態は、それぞれ第二実施形態の変形例である。第二実施形態では、流入凹部294の深さは、プロファイル走査線PSL2に沿って、隣接する一対の流入口252aのうちの一方から離れるにしたがって漸増し、当該一対の流入口252aの中間で最も深くなっていた。しかし、流入凹部において流入口252aからの距離と深さとの相関は、第二実施形態で規定したようなものに限定されず、以下、図15および図9に基づいて説明する第八〜第十実施形態のようなものであってもよい。
図15(a)および図9に示す第八実施形態では、流入凹部894は、位置b2の近傍に一対の段差を有している。プロファイル走査線PSL2に沿って、位置a2と位置b2との中間に形成された段差によって、流入凹部894の深さは、最も浅い深さf2から、最も深い深さg2に変化している。また、位置b2と位置c2との中間に形成された段差によって、流入凹部894の深さは、最も深い深さg2から、最も浅い深さf2に変化している。
また、図15(b)および図9に示す第九実施形態では、プロファイル走査線PSL2に沿って、位置a2と位置b2との間に、二つの段差が形成されている。これらの段差によって、位置a2から位置b2に至るまでに、流入凹部994の深さは、最も浅い深さf2から、最も深い深さg2に段階的に変化している。同様に、位置b2と位置c2との間にも、二つの段差が形成されている。これらによって、位置b2から位置c2に至るまでに、流入凹部994の深さは、最も深い深さg2から、最も深い深さf2に段階的に変化している。
以上のように、流入凹部の深さが段差によって変化する形態であっても、流入口252aから導入される高圧燃料の供給され難い位置における高圧燃料の蓄積容量を多くすることができる。故に、流入凹部から放出される燃料の流量ばらつきは確実に低減される。したがって、ノズルニードル60(図8参照)の応答性向上が果たされ得る。
図15(c)および図9に示す第十実施形態では、流入凹部1094の深さは、プロファイル走査線PSL2に沿って位置a2から位置b2までの範囲で、特定の流入口252aからの距離に比例して、深さf2から深さg2まで変化している。また、位置b2から位置c2までの範囲では、プロファイル走査線PSL2に沿って、当該流入口252aからの距離に比例して、深さg2から深さf2まで変化している。これらのように、複数の流入口252aが開口壁面290に開口する形態であっても、流入凹部1094の深さは、流入口252aからの距離に比例して規定されてよい。
(第十一、第十二実施形態)
図16(a)および(b)に示す本発明の第十一および第十二実施形態は、それぞれ第三実施形態の変形例である。第三実施形態では、流入凹部394の深さは、プロファイル走査線PSL3に沿って、流入口352aの開口する中央部394cから両端部394bのうちいずれかにむかうにしたがって漸増していた。しかし、流入凹部において流入口352aからの距離と深さとの相関は、第三実施形態で規定したようなものに限定されず、以下、図16および図12に基づいて説明する第十一および第十二実施形態のようなものであってもよい。
図16(a)および図12に示す第十一実施形態では、位置a3と位置b3との間に形成された段差によって、流入凹部1194の深さは、最も浅い深さf3から、最も深い深さg3に変化している。このように、流入凹部1194の底面部1197aに段差を形成する形態であっても、流入口352aから離れた位置c3の近傍に高圧燃料を蓄積する蓄積容量を確保することができる。
また、図16(b)および図12に示す第十二実施形態では、プロファイル走査線PSL3に沿って、位置a3の近傍から位置c3にかけて、流入凹部1294の底面部1297aは、傾斜している。加えて、位置a3の近傍から位置b3の近傍までの傾斜は、位置b3から位置c3までの傾斜に比べて、大きくされている。このように、流入口352aからの距離と深さとが比例関係にある形態の流入凹部1294において、その底面部1297aは、位置c3の深さを最も深くすることができれば、途中で傾斜の角度を変更されていてもよい。流入口352aから離れた位置c3における深さが最も深くなる流入凹部1294であれば、当該位置c3の近傍に高圧燃料を蓄積する蓄積容量を確保することができる。
以上説明した第十一および第十二実施形態のように、両端部394bに蓄積できる高圧燃料の蓄積容量を増加させられる形態では、当該両端部394bからの継続的な燃料の放出が可能になる。故に、流入凹部から圧力制御室53への流量ばらつきを抑制する作用が顕著に発揮される。したがって、両端部394bに近づくほど幅の狭くなる溝状の流入凹部394においても、流入口352aから離れた位置ほどその窪みを深くすることは、圧力制御室53内の圧力回復を早め、閉弁時におけるノズルニードル60(図11参照)の応答性向上に貢献し得る。
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
上記実施形態では、流入凹部の形状が円環状又は三日月形状である燃料噴射装置に、本発明を適用した例を説明した。しかし、流入凹部の形状は、上記実施形態にて説明した形状に限定されることはない。また、上記第一および第三実施形態等では、流入口は、流入凹部の底面部に一つだけ開口していた。また、上記第二実施形態等では、流入口は、流入口部の底面部に、等間隔で四つ形成されていた。このように、開口壁面において流入口の開口する数は限定されない。加えて、流入口は、流入凹部の底面部に限らず、当該流入凹部の内周側又は外周側の周壁面部に、その開口が及んでいてもよい。
上記実施形態においては、圧力制御室53内の燃料の圧力を制御する圧力制御弁80を開閉する駆動部として、ソレノイド31の電磁力で可動子35を駆動する機構を用いていた。しかし、機関制御装置17からの制御信号に応じて可動し、圧力制御弁80を開閉できる駆動部であれば、ソレノイドを用いた形態以外の、例えばピエゾ素子を用いる形態であってもよい。
以上、燃料を燃焼室22に直接的に噴射するディーゼル機関20に用いられる燃料噴射装置に、本発明を適用した例を説明した。しかし、本発明は、ディーゼル機関20に限らず、オットーサイクル機関等の内燃機関に用いられる燃料噴射装置に適用されてもよい。加えて、燃料噴射装置によって噴射される燃料は、軽油に限らず、ガソリン、および液化石油ガス等であってもよい。さらには、外燃機関等の燃料を燃焼させる機関の燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射装置に本発明を適用してもよい。