JP5349223B2 - エンジン油組成物 - Google Patents
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植物油脂やそのエステル交換物を燃料として用いるエンジンに適したエンジン油についての検討がなされつつある(例えば特許文献1、2等)。
<1> 100℃動粘度が7.0〜10.0mm2/sであり、粘度指数が125以上である基油、
下記式(1)で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン換算で0.08〜0.12質量%、
塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートとを合わせたカルシウム系清浄剤であって、前記塩基性カルシウムサリシレートと前記塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める前記塩基性カルシウムサリシレートの配合量が塩基価換算で70〜90%であるカルシウム系清浄剤を、カルシウム換算で0.08〜0.25質量%、
ホウ素含有コハク酸イミドを4.0〜10.0質量%、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤を1.0〜2.0質量%
それぞれ含有し、かつ硫酸灰分量が1.1質量%以下である天然油脂又は天然油脂のエステル交換物を用いた燃料用エンジン油組成物。
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数4〜8の第1級アルキル基であって、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
本発明者は、植物油脂又はFAMEを使用するエンジンに対応したエンジン油について、実用性能を考慮し、より耐熱性が良好なエンジン油の開発を検討した。具体的には、ホットチューブ試験の測定温度条件を実際のエンジン使用時のピストントップリング溝温度に近い300℃とし、植物油脂又はFAMEの混合割合も実用上想定される最大の割合である10質量%という厳しい条件においても、評点が「6」以上(ほとんど黒色の堆積物がない状態)であるエンジン油を開発することを目的として検討を行った。
なお、本発明者の事前検討によれば、通常のエンジン油(JASO DH−2)について耐熱性を評価するホットチューブ試験を300℃で行うと評点は「7〜9」を示し、ほとんど汚れのない状態であるのに対し、同じエンジン油にFAMEを5質量%加えたものでは評点が「0」となり、ガラス管が黒色となることを観察している。
すなわち、本発明のエンジン油組成物は、
100℃動粘度が7.0〜12.0mm2/sであり、粘度指数が125以上である基油、
下記式(1)で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン換算で0.08〜0.12質量%、
塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートとを合わせたカルシウム系清浄剤であって、前記塩基性カルシウムサリシレートと前記塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める前記塩基性カルシウムサリシレートの配合量が塩基価換算で70〜90%であるカルシウム系清浄剤を、カルシウム換算で0.08〜0.25質量%、
ホウ素含有コハク酸イミドを2.0〜12.0質量%、
フェノール系酸化防止剤を0.05〜5.0質量%
それぞれ含有し、かつ硫酸灰分量が1.1質量%以下であるエンジン油組成物である。
但し、本発明においては、基油として、100℃動粘度が7.0〜10.0mm 2 /sであり、粘度指数が125以上である基油を適用し、下記式(1)で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン換算で0.08〜0.12質量%とし、ホウ素含有コハク酸イミドを4.0〜10.0質量%とし、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を1.0〜2.0質量%、とする。
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数4〜8の第1級アルキル基であって、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
本発明のエンジン油組成物に用いられる基油は、100℃動粘度が7.0〜12.0mm2/sであり、好ましくは7.0〜10.0m2/sである。上記動粘度が7.0mm2/s未満の基油では十分な耐熱性が得られず、12.0mm2/sを超える基油では低温性能の確保が困難になりマルチグレードのエンジン油が成立しにくくなる。
粘度指数の上限値に制限はないが、入手性を考慮した場合には、鉱油系基油、合成系基油とも150程度が実質的な上限値である。
合成系潤滑油基油としては、例えば、メタン等の天然ガスを原料として合成されるイソパラフィンやα−オレフィンオリゴマーなどの炭化水素系合成油等が好ましいものとして挙げられる。
本発明のエンジン油組成物は、下記式(1)で表される、炭素数4〜8の第1級アルキル基を分子中に有するジアルキルジチオリン酸亜鉛(適宜、単に「ジアルキルジチオリン酸亜鉛」と記す。)を含有する。
本発明のエンジン油組成物における上記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の配合量は、エンジン油組成物全量に対し、リン換算で0.08〜0.12質量%である。上記ジアルキルジチオリン酸亜鉛を上記配合量とすることでエンジンの摩耗を効果的に防止することができる。なお、ジアルキルジチオリン酸亜鉛が有するもう一方の性能である酸化防止性能の観点から、上記ジアルキルジチオリン酸亜鉛の配合量はリン換算で0.10〜0.12質量%であることが好ましい。
本発明のエンジン油組成物は、カルシウム系清浄剤として、塩基性(好ましくは過塩素酸法塩基価150〜300mgKOH/g)カルシウムサリシレートと塩基性(好ましくは塩基価200〜300mgKOH/g)カルシウムフェネートの両方を合わせて、エンジン組成物全量に対しカルシウム換算として0.08〜0.25質量%含有し、かつ塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める塩基性カルシウムサリシレートの配合量が塩基価換算で70〜90%である。
塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートの配合比を上記範囲内とする理由は以下の通りである。塩基性カルシウムサリシレートは、耐熱性に優れているため、塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める塩基性カルシウムサリシレートの配合量を塩基価換算で70%以上とすることで、長期にわたって耐熱性を維持することができる。一方、塩基性カルシウムサリシレートの上記配合比を90%以下とすることで、すなわち、塩基性カルシウムフェネートの配合比を塩基価換算で10%以上とすることで、すすの分散性に優れる塩基性カルシウムフェネートの効果で、フィルタ閉塞を効果的に抑制することができる。
なお、耐熱性を維持するとともにすすの分散性をより向上させる観点から、塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める塩基性カルシウムサリシレートの配合量は塩基価換算で80〜90%であることが好ましい。
油中に混入する燃焼生成物の分散のために分散剤としてコハク酸イミド系の分散剤が配合される場合があるが、本発明のエンジン油には、耐熱性の観点からホウ素含有コハク酸イミドを配合する。
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の配合量は、エンジン油組成物全量に対し2.0〜12.0質量%である。ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤のより好ましい配合量はエンジン油組成物全量に対し4.0〜10.0質量%である。ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の配合量を2.0質量%以上とすることで、エンジン油中の劣化物の良好な分散性を確保でき長寿命化を図ることができる。一方、上記配合量を12.0質量%以下とすることでジアルキルジチオリン酸亜鉛との相互作用を抑制しやすく、摩耗防止性能をより良好に保つことができる。
本発明のエンジン油組成物は、さらにフェノール系酸化防止剤を含有する。フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、その例としてはイソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましいものとして挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の配合量は、エンジン油組成物全量に対し、0.05〜5.0質量%である。より好ましい配合量はエンジン油組成物全量に対し1.0〜2.0質量%である。
本発明のエンジン油組成物には、さらに所望により各種添加剤を配合することができる。具体的には、摩擦調整剤、金属不活性化剤、さび止め剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、泡消剤など、エンジン油性能を付与するのに効果的な添加剤を必要に応じて配合することができる。
本発明のエンジン油組成物中の硫酸灰分量は特に限定はないが、硫酸灰分の多くは金属型清浄剤や摩耗防止剤であるジアルキルジチオリン酸亜鉛等の金属分に由来するものであるため硫酸灰分量が多すぎると、ディーゼルパティキュレートフィルタに堆積物が生成し、ディーゼルパティキュレートフィルタの寿命が短くなる場合がある。このような観点から、本発明のエンジン油組成物の硫酸灰分量は1.1質量%以下とする。
なお、本発明のエンジン油組成物における硫酸灰分量とはJIS−K2272による試験方法によって測定された灰分量を意味する。
本発明のエンジン油は、自動車等のエンジン(内燃機関)であれば特に限定されずに使用できるが、特に天然油脂や天然油脂のエステル交換体やこれらを通常のエンジンに用いられる燃料油に配合したものを使用するエンジンに適したエンジン油である。ここで、天然油脂としては、天然に存在する動物性油脂や植物性油脂等が挙げられ、例えば、パーム油、菜種油、大豆油、ひまわり油等のグリセリンの脂肪酸のエステルを主成分とする油脂が挙げられる。また、天然油脂のエステル交換体(FAME)としては、上記油脂を原料として、エステル交換反応によって上記油脂を構成するグリセリンを外してメチル基に導入した、脂肪酸メチルエステルが挙げられる。
本発明のエンジン油組成物は、上記のような天然油脂及び天然油脂のエステル交換物の中から選ばれる少なくとも1種を含む燃料を用いるエンジン内で用いることでピストンリングの膠着や軸受の焼付きなどエンジンの不具合が効果的に防止される。
表1〜4に示す評価・実施例・比較例で用いた基油と試薬(添加物)は下記の通りである。
1)基油A:
水素化分解鉱油系基油(グループIII)、100℃動粘度7.6mm2/s、粘度指数130。
2)基油B:
合成基油(ポリαオレフィン)(グループIV)、100℃動粘度7.8mm2/s、粘度指数135。
3)基油C:
水素化分解鉱油系基油(グループIII)、100℃動粘度6.3mm2/s、粘度指数130。
4)基油D:
合成基油(ポリαオレフィン)(グループIV)、100℃動粘度5.7mm2/s、粘度指数135。
5)基油E:
溶剤精製鉱油系基油(グループI)、100℃動粘度8.5mm2/s、粘度指数105。
6)サリシレート:
塩基価225mgKOH/gカルシウムサリシレート、カルシウム含有量が8質量%。
7)フェネート:
塩基価250mgKOH/gカルシウムフェネート、カルシウム含有量が9質量%。
8)スルホネート:
塩基価300mgKOH/gカルシウムスルホネート、カルシウム含有量が11.5質量%。
9)ホウ素含有コハク酸イミド:
数平均分子量(ポリスチレン換算)が4380であって、窒素含有量が1.4質量%、ホウ素含有量が0.5質量%である。
10)コハク酸イミド:
数平均分子量(ポリスチレン換算)が4910であって、窒素含有量が1.7質量%であり、ホウ素は含有しない。
11)フェノール系酸化防止剤:
イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
12)アミン系酸化防止剤:
ジアルキルジフェニルアミン
13)ジアルキルジチオリン酸亜鉛A:
炭素数8の第1級アルキル基(10モル%)、炭素数4の第1級アルキル基(65モル%)、炭素数5の第1級アルキル基(25モル%)含有。リン含有量が8.3質量%。ここで( )内のモル%は全アルキル基に占める各アルキル基のモル比。以下同じ。
14)ジアルキルジチオリン酸亜鉛B:
全て炭素数8の第1級アルキル基含有。リン含有量が7.4質量%。
15)ジアルキルジチオリン酸亜鉛C:
全て炭素数12の第1級アルキル基含有。リン含有量が5.5質量%。
16)ジアルキルジチオリン酸亜鉛D:
炭素数3の第2級アルキル基(30モル%)、炭素数4の第1級アルキル基(30モル%)、炭素数5の第1級アルキル基(40モル%)を含有。リン含有量が8.7質量%。
17)ジアルキルジチオリン酸亜鉛E:
炭素数4の第2級アルキル基(60モル%)、炭素数5の第2級アルキル基(40モル%)含有。リン含有量が8.0質量%。
18)その他の添加剤:
流動点降下剤、粘度指数向上剤、泡消剤
JPI−5S−55−99により測定した。
評価は高温の電気炉内のガラス管の中を試料と空気を通過させ、ガラス管の汚れを求める。全く汚れの無いものを10点とし、強い黒色になったものを0点とし、汚れ度合いにより採点する。点数の高いものほど汚れが少なく、耐熱性が良好であるといえる。
ホットチューブ試験においては、電気炉の温度つまり試験温度が300℃で、評点6以上のエンジン油は、実際のエンジン試験でも良好な清浄性を示す。そこで、本発明においても、試験温度を300℃とし、評点6以上を合格とした。
また、エンジン油へはFAMEとしてパーム油のメチルエステルを添加し、試験を実施した。FAMEのエンジン油への添加量は、5質量%と10質量%の2水準とした。
JIS K2272にて測定した。
結果を表1〜表4に示す。
Claims (1)
- 100℃動粘度が7.0〜10.0mm2/sであり、粘度指数が125以上である基油、
下記式(1)で示されるジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン換算で0.08〜0.12質量%、
塩基性カルシウムサリシレートと塩基性カルシウムフェネートとを合わせたカルシウム系清浄剤であって、前記塩基性カルシウムサリシレートと前記塩基性カルシウムフェネートの合計量に占める前記塩基性カルシウムサリシレートの配合量が塩基価換算で70〜90%であるカルシウム系清浄剤を、カルシウム換算で0.08〜0.25質量%、
ホウ素含有コハク酸イミドを4.0〜10.0質量%、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤を1.0〜2.0質量%
それぞれ含有し、かつ硫酸灰分量が1.1質量%以下である天然油脂又は天然油脂のエステル交換物を用いた燃料用エンジン油組成物。
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数4〜8の第1級アルキル基であって、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
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