JP5348162B2 - 正孔注入輸送層形成用材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1においては、酸化性化合物すなわち電子受容性化合物として、トリフェニルアミン誘導体と6フッ化アンチモン等の対アニオンを含む化合物や7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等の炭素−炭素二重結合の炭素にシアノ基が結合した電子受容性が極めて高い化合物が用いられている。
特許文献2においては、酸化性ドーパントとして、一般的な酸化剤が挙げられ、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、及びアリールアミンとハロゲン化金属又はルイス酸との塩が挙げられている。
特許文献7においては、酸化性化合物すなわち電子受容性化合物として、オキソバナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシドを溶解させた溶液を用い、それと正孔輸送性高分子との混合塗膜の形成後に水蒸気中で加水分解させてバナジウム酸化物として、電荷移動錯体を形成させる作製方法が挙げられている。
特許文献8においては、三酸化モリブデンの塗膜形成の試みとして、三酸化モリブデンを物理的に粉砕して作製した微粒子を溶液に分散させてスラリーを作製し、それを塗工して正孔注入層を形成して長寿命な有機EL素子を作製することが記載されている。
成膜性や薄膜の安定性は素子の寿命特性と大きく関係する。一般的に有機EL素子の寿命とは、一定電流駆動などで連続駆動させたときの輝度半減時間とし、輝度半減時間が長い素子ほど長駆動寿命であるという。
すなわち、本発明の正孔注入輸送層形成用材料は、遷移金属錯体の反応生成物であり、当該遷移金属錯体の中心金属が、少なくともバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属を含むか、或いはバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属とモリブデンとの混合物であり、前記遷移金属錯体とカルボニル基及び/又は水酸基を有する有機溶媒とが酸化還元反応した遷移金属酸化物であることを特徴とする。
また、当該デバイスにおいては、前記遷移金属錯体の配位子の種類を選択したり配位子を修飾することにより、溶剤溶解性や親水性・疎水性、電荷輸送性、あるいは密着性などの機能性を付与するなど、多機能化することが容易である。
当該デバイスの正孔注入輸送層に用いられる前記遷移金属錯体は、適宜選択することにより合成ステップ数が少なく簡単に合成できるため、安価に高性能なデバイスを作製することができる。
本発明に係るデバイスの製造方法によれば、製造プロセスが容易でありながら、長寿命を達成可能なデバイスを提供することが可能である。
また、本発明に係る正孔注入輸送層形成用インクによれば、製造プロセスが容易でありながら、長寿命を達成可能なデバイスを提供することが可能である。
本発明のデバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された正孔注入輸送層を有するデバイスであって、前記正孔注入輸送層が、遷移金属錯体の反応生成物を含有し、当該遷移金属錯体の中心金属が、少なくともバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属を含むか、或いはバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属とモリブデンとの混合物であることを特徴とする。
また、本発明のデバイスによれば、上記遷移金属錯体において配位子の種類を選択したり配位子を修飾することにより、溶剤溶解性や親水性・疎水性、電荷輸送性、あるいは密着性などの機能性を付与するなど、多機能化することが容易である。
本発明のデバイスの正孔注入輸送層に用いられる上記遷移金属錯体は、適宜選択することにより合成ステップ数が少なく簡単に合成できるため、安価に高性能なデバイスを作製することができる。
本発明に係るデバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された正孔注入輸送層を有するデバイスである。
本発明に係るデバイスには、有機EL素子、有機トランジスタ、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、有機半導体を包含する有機デバイスのほか、正孔注入輸送層を有する量子ドット発光素子、酸化物系化合物太陽電池等も含まれる。
図1は本発明に係る有機デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。本発明のデバイスの基本的な層構成は、基板7上に対向する2つの電極(1及び6)と、その2つの電極(1及び6)間に配置され少なくとも正孔注入輸送層2を含む有機層3を有する。
基板7は、デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも電極1の表面に設けられる必要はなく、デバイスの最も外側の面に設けられていればよい。
有機層3は、正孔注入輸送されることにより、デバイスの種類によって様々な機能を発揮する層であり、単層からなる場合と多層からなる場合がある。有機層が多層からなる場合は、有機層は、正孔注入輸送層の他に更に、デバイスの機能の中心となる層(以下、機能層と称呼する。)や、当該機能層の補助的な層(以下、補助層と称呼する。)を含んでいる。例えば、有機EL素子の場合、正孔注入輸送層の表面に更に積層される正孔輸送層が補助層に該当し、当該正孔輸送層の表面に積層される発光層が機能層に該当する。
電極6は、対向する電極1との間に正孔注入輸送層2を含む有機層3が存在する場所に設けられる。また、必要に応じて、図示しない第三の電極を有していてもよい。これらの電極間に電場を印加することにより、デバイスの機能を発現させることができる。
図3は、本発明に係るデバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の別の一例を示す断面模式図である。本発明の有機EL素子は、電極1の表面に補助層として正孔注入層4bが形成され、当該正孔注入層4bの表面に正孔注入輸送層2、機能層として発光層5が積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な正孔注入輸送層を正孔輸送層の位置で用いる場合には、導電率の向上に加え、当該正孔注入輸送層は電荷移動錯体を形成して溶液塗布法に用いた溶媒に不溶になるので、上層の発光層を積層する際にも溶液塗布法を適用することが可能である。
図4は、本発明に係るデバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の別の一例を示す断面模式図である。本発明の有機EL素子は、電極1の表面に正孔注入輸送層2、機能層として発光層5が順次積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な正孔注入輸送層を1層で用いる場合には、工程数が削減されるというプロセス上のメリットがある。
なお、上記図2〜図4においては、正孔注入輸送層2、正孔輸送層4a、正孔注入層4bのそれぞれが、単層ではなく複数層から構成されているものであっても良い。
素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。また、発光層と電極6(陰極)の間には、必要に応じて電子輸送層及び/又は電子注入層が設けられていてもよい(図示せず)。
上記、有機トランジスタは、ゲート電極における電荷の蓄積を制御することにより、ソース電極−ドレイン電極間の電流を制御する機能を有する。
以下、本発明に係るデバイスの各層について詳細に説明する。
本発明のデバイスは、少なくとも正孔注入輸送層を含む。本発明のデバイスが有機デバイスであって、有機層が多層の場合には、有機層は、正孔注入輸送層の他に更に、デバイスの機能の中心となる層や、当該機能層を補助する役割を担う補助層を含んでいるが、それらの機能層や補助層は、後述するデバイスの具体例において、詳細に述べる。
また、本発明の効果を損なわない限り、芳香環及び/又は複素環を含む構造に置換基を有していても良い。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基の中では、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
なお、当該遷移金属酸化物には処理条件によって様々な価数の遷移金属原子や化合物、例えば炭化物や窒化物などが混在していても良い。
正孔輸送性化合物としては、低分子化合物の他、高分子化合物も好適に用いられる。正孔輸送性高分子化合物は、正孔輸送性を有し、且つ、ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算値による重量平均分子量が2000以上の高分子化合物をいう。本発明の正孔注入輸送層においては、溶液塗布法により安定な膜を形成することを目的として、正孔輸送性材料としては有機溶媒に溶解しやすく且つ化合物が凝集し難い安定な塗膜を形成可能な高分子化合物を用いることが好ましい。
また、正孔輸送性高分子化合物としては、例えばアリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を繰り返し単位に含む重合体を挙げることができる。
nの平均は、5〜5000であることが好ましく、更に10〜3000であることが好ましい。また、mの平均は、5〜5000であることが好ましく、更に10〜3000であることが好ましい。また、n+mの平均は、10〜10000であることが好ましく、更に20〜6000であることが好ましい。
正孔注入輸送層において、前記正孔輸送性化合物の含有量が少なすぎると、正孔輸送性化合物を混合した相乗効果が得られ難い。一方、前記正孔輸送性化合物の含有量が多すぎると、上記遷移金属錯体を用いる効果が得られ難くなる。
また、上記正孔注入輸送層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
溶液塗布法は、下記、デバイスの製造方法の項目において説明する。
基板は、本発明のデバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。
これらのうち、合成樹脂製の基板を使用する場合には、ガスバリア性を有することが望ましい。基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0mm程度である。
本発明のデバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極を有する。
本発明のデバイスにおいて、電極は、金属又は金属酸化物で形成されることが好ましく、公知の材料を適宜採用することができる。通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物により形成することができる。
本発明においては、電極上に、電荷注入材料との密着安定性を向上させるために、更に金属層を有していても良い。金属層は金属が含まれる層をいい、上述のような通常電極に用いられる金属や金属酸化物から形成される。
本発明のデバイスは、必要に応じて、電子注入電極と正孔注入輸送層の間に、従来公知の電子注入層及び/又は電子輸送層を有していてもよい。
本発明のデバイスの一実施形態として、少なくとも本発明の正孔注入輸送層及び発光層を含む有機層を含有する、有機EL素子が挙げられる。
以下、有機EL素子を構成する各層について、図2〜4を用いて順に説明する。
(基板)
基板7は、有機EL素子の支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、例えば、上記デバイスの基板の説明において挙げたものを用いることができる。
発光層5で発光した光が基板7側を透過して取り出される場合においては、少なくともその基板7が透明な材質である必要がある。
電極1および電極6は、発光層5で発光した光の取り出し方向により、どちらの電極に透明性が要求されるか否かが異なり、基板7側から光を取り出す場合には電極1を透明な材料で形成する必要があり、また電極6側から光を取り出す場合には電極6を透明な材料で形成する必要がある。
基板7の発光層側に設けられている電極1は、発光層に正孔を注入する陽極として作用し、基板7の発光層側に設けられている電極6は、発光層5に電子を注入する陰極として作用する。
本発明において、陽極及び陰極は、上記デバイスの電極の説明において列挙した金属又は金属酸化物で形成されることが好ましい。
正孔注入輸送層2、正孔輸送層4a、及び正孔注入層4bは、図2〜4に示すように、発光層5と電極1(陽極)の間に適宜形成される。図2のように、本発明に係る正孔注入輸送層2の上に更に正孔輸送層4aを積層し、その上に発光層を積層してもよいし、図3のように、正孔注入層4bの上に更に本発明に係る正孔注入輸送層2を積層し、その上に発光層を積層してもよいし、図4のように、電極1の上に、本発明に係る正孔注入輸送層2を積層しその上に発光層を積層してもよい。
正孔輸送層4aは、正孔輸送材料を用いて、後述の発光層と同様方法で形成することができる。正孔輸送層4aの膜厚は、通常0.1〜1μm、好ましくは1〜500nmである。
正孔注入層4bは、正孔注入材料を用いて、後述の発光層と同様方法で形成することができる。正孔注入層4bの膜厚は、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
このような層構成の場合、電極1(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)と発光層5(例えばHOMO5.7eV)の間の正孔注入の大きなエネルギー障壁を、HOMOの値が階段状になるように補完可能で、正孔注入効率に非常に優れた正孔注入輸送層が得られる。
発光層5は、図2〜4に示すように、電極1が形成された基板7と電極6との間に、発光材料により形成される。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料およびりん光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料等の材料を挙げることができ、低分子化合物または高分子化合物のいずれも用いることができる。
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体、)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。また、これらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(ppy)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層の膜厚は、通常、1〜1000nm、好ましくは20〜500nm程度である。本発明は、正孔注入輸送層を溶液塗布法で形成することが好適であるため、発光層も溶液塗布法で形成する場合はプロセスコストを下げることができるという利点がある。
本発明に係るデバイスの別の実施形態として、有機トランジスタが挙げられる。以下、有機トランジスタを構成する各層について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示されるような本発明の有機トランジスタは、電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2が形成されているため、それぞれの電極と有機半導体層との間の正孔注入輸送能力が高くなり、且つ本発明の正孔注入輸送層の膜安定性が高いため、長駆動寿命化に寄与する。
本発明の有機トランジスタは、図6に示されるような、本発明の正孔注入輸送層2が有機半導体層8として機能するものであっても良い。
また、本発明の有機トランジスタは、図5に示されるように電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2を形成し、更に有機半導体層8として電極表面に形成した正孔注入輸送層とは材料が異なる本発明の正孔注入輸送層2を形成してもよい。
上記有機半導体材料としては、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、ポリアセン誘導体、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、コロネン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水化物誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェンビニレン誘導体、ポリチオフェン−複素環芳香族共重合体とその誘導体、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ナフタレンのオリゴアセン誘導体、α−5−チオフェンのオリゴチオフェン誘導体、ピロメリト酸二無水物誘導体、ピロメリト酸ジイミド誘導体を用いることができる。具体的には、ポルフィリン誘導体としては例えばフタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができ、アリールアミン誘導体としては例えばm−TDATAを用いることができ、ポリアセン誘導体としては、例えばナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセンを挙げることができる。また、これらポルフィリン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などにルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、導電性を高くした層を用いることもできる。
また、有機半導体層は、上記有機EL素子の発光層と同様に、溶液塗布法またはドライプロセスにより形成することが可能である。
基板7は、本発明のデバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、上記有機EL素子の基板と同様のもの用いることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されないが、本発明に係る電荷輸送材料を用いて、金属イオンが配位している化合物が吸着してなる正孔注入輸送層2を形成する点からは、金属又は金属酸化物であることが好ましい。具体的には、上述の有機EL素子における電極と同様の金属又は金属酸化物を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。
本発明のデバイスの製造方法は、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された正孔注入輸送層を有するデバイスの製造方法であって、中心金属が、少なくともバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属を含むか、或いはバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属とモリブデンとの混合物である遷移金属錯体と、カルボニル基及び/又は水酸基を有する有機溶媒とを含有する正孔注入輸送層形成用インクを調製する工程と、前記正孔注入輸送層形成用インクを用いて、前記電極上のいずれかの層上に正孔注入輸送層を形成する工程と、前記遷移金属錯体の少なくとも一部を遷移金属酸化物とする酸化工程とを有することを特徴とする。
加熱工程を用いる場合には、加熱手段としては、ホットプレート上で加熱する方法やオーブン中で加熱する方法などが挙げられる。加熱温度としては、50〜250℃が好ましい。加熱温度により、前記遷移金属錯体の反応性や、当該遷移金属錯体同士の相互作用や、当該遷移金属錯体の正孔輸送性化合物に対する相互作用に違いが生じるため、適宜調節することが好ましい。
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入輸送層としてバナジウム(III)アセチルアセトナートの反応物(有機−無機複合体)を含有する層と正孔輸送性化合物を含有する層との積層体、正孔輸送層、発光層、電子注入層、陰極の順番に成膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入輸送層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
続いて、上記正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を、洗浄された陽極の上にスピンコート法により塗布して、バナジウム錯体を含有する正孔注入輸送層を形成した。正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液の塗布後、溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて200℃で30分乾燥させた。乾燥後の正孔注入輸送層(1)の厚みは5nm以下であった。
次に、成膜した正孔輸送層の上に、発光層としてトリス[2−(p−トリル)ピリジン)]イリジウム(III)(Ir(mppy)3)を発光性ドーパントとして含有し、4,4’−ビス(2、2−カルバゾル−9−イル)ビフェニル(CBP)をホストとして含有した混合薄膜を塗布形成した。溶媒であるトルエンにCBPを1質量%、Ir(mppy)3を0.05質量%の濃度で溶解させた溶液を、スピンコート法により塗布して成膜した。インクの塗布後、溶剤を蒸発させるためにホットプレートを用いて100℃で30分乾燥させた。
次に、上記発光層の上に、正孔ブロック層としてビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)薄膜を蒸着形成した。BAlq薄膜は、真空中(圧力:1×10−4Pa)で抵抗加熱法により膜厚が15nmになるように形成した。
次に、上記正孔ブロック層の上に、電子輸送層としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)薄膜を蒸着形成した。Alq3薄膜は、真空中(圧力:1×10−4Pa)で抵抗加熱法により膜厚が15nmになるように形成した。
次に、上記電子輸送層の上に、電子注入層としてLiF(厚み:0.5nm)、陰極としてAl(厚み:100nm)を順次成膜した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により成膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにペンタカルボニルクロロレニウム(I)(レニウム錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにスカンジウムアセチルアセトナート(スカンジウム錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりに白金(II)アセチルアセトナート(白金錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにペンタカルボニルクロロレニウム(I)(シグマ‐アルドリッチ社製)とモリブデンヘキサカルボニル(関東科学(株)製)の混合物(レニウム錯体とモリブデン錯体の混合物)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の有機EL素子を作製した。正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液はシクロヘキサノン中に上記2種の材料をそれぞれ0.2質量%の濃度で溶解させて調製した。
実施例1において、バナジウム錯体を溶解させる溶媒をシクロヘキサノンの代わりに芳香族系溶剤であるトルエンを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入輸送層としてバナジウム錯体薄膜を形成する代わりに、酸化バナジウム(V2O5)薄膜(厚み:5nm)を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機EL素子を作製した。
酸化バナジウム(V2O5)薄膜は、真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により成膜した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにコバルト(III)アセチルアセトナート(コバルト錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにニッケル(II)アセチルアセトナート(ニッケル錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりに銅(II)アセチルアセトナート(銅錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりに鉄(II)アセチルアセトナート(鉄錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりに亜鉛アセチルアセトナート(亜鉛錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例7の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにクロム(III)アセチルアセトナート(クロム錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例8の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにチタンイソプロポキシド(チタン錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例9の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入輸送層を、バナジウム(III)アセチルアセトナートの代わりにマンガン(III)アセチルアセトナート(マンガン錯体、シグマ‐アルドリッチ社製)を含む正孔注入輸送層(1)形成用塗布溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例10の有機EL素子を作製した。
シクロヘキサノン中の遷移金属錯体の状態を調べるために、1H−NMR測定及び13C−NMR測定をした。実施例1〜5および比較例1および3〜10で使用した正孔注入輸送層形成用塗布溶液を重クロロホルムに4倍に希釈し、核磁気共鳴装置(日本電子社製、JNU−LA400W 400 MHz)を用い測定した。
1H−NMR測定では1.5−1.7ppmと2.0−2.2ppmの範囲とにシクロヘキサノンおよび遷移金属錯体では観察されない、シクロヘキサノンのC=O結合が還元されてアルコールあるいはオリゴマーかポリマーを形成していることを示唆するスペクトルが得られた。このうち、1.7−2.2ppmに現れるシクロヘキサノン溶媒に起因するピークを100と規格化した場合の1.5−1.7ppmのピーク量を求め、表1中に示した。
また実施例1−5の溶液の13C−NMR測定で得られた結果から、いずれのサンプルからも元の遷移金属錯体を示すスペクトルは消失していることが確認された。一方、比較例1のトルエンに溶解させたバナジウム錯体では、バナジウム錯体が分解せずに溶解していることを示すスペクトルが得られた。
実施例1のバナジウム錯体を用いて形成された有機−無機複合体薄膜と、比較例1で得られたバナジウム錯体の薄膜と、比較例2で使用した酸化バナジウム(V2O5)薄膜について、光電子分光装置AC−1(理研計器製)を用いてHOMO(仕事関数)を測定した。バナジウム錯体から得られた有機−無機複合体で形成された薄膜のHOMOは5.2eVであり、バナジウム錯体のHOMOは5.0eVであり、酸化バナジウムのHOMOは5.4eVであった。
実施例1のバナジウム錯体を用いて形成された有機−無機複合体薄膜と、比較例1で得られたバナジウム錯体の薄膜と、比較例2で使用した酸化バナジウム(V2O5)薄膜について、X線光電子分光法にて価数を測定した。測定にはKratos社製ESCA−3400型を用いた。測定に用いたX線源としては、MgKα線を用いた。モノクロメーターは使用せず、加速電圧10kV、フィラメント電流20mAの条件で測定した。
比較例2の薄膜からはV2O5酸化数が+5であるバナジウムの2p3/2に帰属されるスペクトルが得られた(ピーク位置517eV)。一方、実施例1では、ピーク位置517eVに加えて、ショルダー上に516eV近辺にピークをもつスペクトルが得られた。この結果は、バナジウムの酸化数が+5と+4の複合体を形成している可能性を示している。また、比較例1のバナジウム錯体では、514−515eVにピークを持つバナジウムの酸化数が+3を示すスペクトルが得られた。
有機EL素子の寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。ここでは初期輝度2000cd/m2に対して保持率が50%の輝度に劣化するまでの時間(hr.)を寿命(LT50)とした。
実施例1〜5の正孔注入輸送層形成用塗布溶液のNMR測定結果をみると、いずれも1.5−1.7ppmのピーク量が基準ピークの3%以上と大きく、遷移金属錯体とシクロヘキサノンが高活性に反応して有機−無機複合体が形成されていることを示す結果が得られた。これら実施例1〜5においては、以下に示すとおり素子特性でも高特性が得られた。
実施例1と比較例1を比較すると、バナジウム錯体を塗布した比較例1の正孔注入輸送層よりもバナジウム錯体の反応物から得られた実施例1の正孔注入輸送層の素子の方が、はるかに低電圧化し、長寿命であり、素子性能が高かった。この結果は、本発明で得られた有機-無機複合体がバナジウム錯体とは異なる物質に変質し、正孔注入性が高く、駆動安定性に優れた正孔注入輸送層が形成されたことを示している。
実施例1と比較例2を比較すると、バナジウム酸化物の蒸着膜の比較例2の正孔注入輸送層よりもバナジウム錯体の反応物から得られた実施例1の正孔注入輸送層の素子の方が低電圧化し、長寿命であり、素子性能が高かった。この結果は、本発明で得られた有機−無機複合体である正孔注入輸送層の方がバナジウム酸化物の蒸着膜に比べて正孔注入性が高く、駆動安定性に優れていることを示している。
実施例1〜5と比較例1及び3〜10を比較すると、実施例1〜5の有機−無機複合体が形成されていることが示唆される正孔注入輸送層を持つ素子はいずれも高特性であり、比較例1及び3〜10の有機−無機複合体があまり形成されていない素子では特性が低く、有機−無機複合体の形成が素子特性に影響していることが示唆された。
2 正孔注入輸送層
3 有機層
4a 正孔輸送層
4b 正孔注入層
5 発光層
6 電極
7 基板
8 有機半導体層
9 電極
10 絶縁層
Claims (2)
- 遷移金属錯体の反応生成物であり、当該遷移金属錯体の中心金属が、少なくともバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属を含むか、或いはバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属とモリブデンとの混合物であり、前記遷移金属錯体とカルボニル基及び/又は水酸基を有する有機溶媒とが酸化還元反応した遷移金属酸化物である、正孔注入輸送層形成用材料。
- 中心金属が、少なくともバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属を含むか、或いはバナジウム、レニウム及び白金よりなる群から選択される1種以上の遷移金属とモリブデンとの混合物である遷移金属錯体と、カルボニル基及び/又は水酸基を有する有機溶媒とを含有する正孔注入輸送層形成用インクを調製する工程と、前記遷移金属錯体の少なくとも一部をカルボニル基及び水酸基の少なくとも1つを有する有機溶媒と酸化還元反応させて遷移金属酸化物とする酸化物化工程とを有することを特徴とする、正孔注入輸送層形成用材料の製造方法。
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