JP5346428B2 - 超高圧水銀ランプ - Google Patents
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超高圧水銀ランプ100は、内部空間Sが形成された略球状の発光部11と、発光部11の両端に連続する柱状の封止部12とを有するバルブ10を備えている。内部空間Sには、一対の電極13,14が対向配置されるとともに、発光物質として0.15mg/mm3以上の水銀と、ハロゲンサイクルを行なうためのハロゲンガスが封入されている。電極13,14は、一部が封止部12に埋設されるとともに、基端部が給電用の金属箔15の一端に接続されている。金属箔14の他端には、封止部12から外方に突出する外部リード16が接続されている。
この原因としては、高温で石英ガラスを焼き込む際に、封止部12の温度が一気に上昇すると、電極13,14を構成するタングステンと封止部12を構成する石英ガラスとの膨張係数の違いによって、電極13,14と封止部12との間で相対的な膨張量が異なるため、封止部12の電極13,14と当接する部位にクラックが発生するからである。このクラックは、極めて小さなものであるが、ランプ点灯時に内部空間Sが150気圧以上の超高圧状態となることに伴って成長し、やがては封止部12を破損に導く原因となる。
このような理由から、封止部12と当接する部分における電極13,14の径は、例えば1.5mm以上とすることはできない。
内部空間を有する発光部と、発光部の両端に連続する封止部とを有する発光管を備え、前記内部空間内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm3以上の水銀が封入された超高圧水銀ランプにおいて、
前記電極は、最小径部の径をdとし、当該最小径部を電極中心軸を含む平面で切断した断面において、電極中心軸と直交する直線が横切る電極構成物質の結晶粒界の個数をnとしたとき、d3×n2≧1.73の関係を満たすことにより、上記の課題を解決する。
すなわち、最も電極折れの発生し易い部位である最小径部が太い場合には、結晶粒界の個数は少なくても電極折れが抑制される。当然のことながら、最小径部が太い場合において、結晶粒界の個数が多ければ、さらに確実に電極折れを抑制することができる。但し、前述したように、電極径は、例えば1.5mmよりも太くできないことから、最小径部を大きくするには限界がある。
一方、超高圧水銀ランプの設計により最小径部が小さくならざるを得ない場合であっても、結晶粒界の個数が多ければ、電極折れを抑制することができる。
従って、超高圧水銀ランプ、特に電極の仕様に応じて、最小径部の大きさと、結晶粒界の個数との関係を最適に規定することにより、電極折れの発生を確実に抑制することができる。最小径部の径dと結晶粒界の個数nとの関係をd3×n2≧1.73と規定しているのは、本発明者らが後述の実験結果を検証したところ、電極折れが生じなかった電極サンプルは全てd3×n2≧1.73の関係を満たしていたからである。
電極の内部空間に突出する電極前方部を高いタングステン純度を有する材料で構成するのが望ましいことは、上記したとおりである。しかしながら、電極全体を99.99%以上もの高い純度を有するタングステン材で構成すると、次のような点で好ましくない。
タングステン材の熱処理は、タングステン材中に含まれる不純物を予め除去する目的でなされるが、通常は、タングステン材を加熱炉中に配置して行うため、タングステン材の全体が加熱されることになる。そして、99.99%以上もの高純度を有するタングステン材は、純度の低い(不純物の含有量の多い)タングステン材よりも熱処理時に結晶粒界が成長し易い。そのため、電極全体を高い純度を有するタングステン材で構成した場合は、電極全体に渡って結晶粒界が成長して結晶粒界の個数が少なくなる。従って、電極前方部に含有される不純物の量が少なくなるという点では良いのであるが、電極の最小径部の結晶粒界が成長して最小径部に存在する結晶粒界の個数が少ないものとなり、前述した電極折れの問題を解決することができない。
このような理由から、別々に用意した電極前方部と電極後方部とを接合することにより、電極の最小径部に存在する結晶粒界の個数が多いものでありながら、突出部に含有される不純物の量を少なくすることができる。
99.99%以上の高純度を有する電極前方部については、熱処理を施して結晶粒界を成長させることにより、電極前方部に含有される不純物を予め放出させ、不純物の含有量を少ないものとする。
一方、電極後方部については、結晶粒界が成長しにくいように純度が低めのタングステン材を用いる、或いは、高純度のタングステン材を用いても結晶粒界が成長しにくい条件で熱処理を施す。
このように、別々に熱処理が施された電極前方部と電極後方部とを対接させた状態で、電極前方部と電極後方部との接合されるべき箇所をレーザーにより溶融させて、電極前方部と電極後方部とを接合するため、電極後方部に存在する結晶粒界の個数が多いものでありながら、電極前方部に含有される不純物の量の少ない電極を容易に製造することができる。
超高圧水銀ランプ1は、石英ガラスからなり、略球状の発光部11と、発光部11の両端に連続する円柱状の封止部12とからなるバルブ10を備えている。発光部11の内部空間Sには、発光物質として0.15mg/mm3以上の水銀と、主としてハロゲンサイクルを行なうための、例えば2×10−4μmol/mm3〜7×10−3μmol/mm3の臭素などのハロゲンガスと、始動性改善のための、5kPa以上のアルゴンなどの希ガスが封入されている。また、発光部11の内部空間Sには、タングステンからなる一対の電極13および14が各々の先端が対向して配置されている。電極13および14の基端部は、封止部12に埋設されモリブデンからなる給電用の金属箔15の一端に接続されている。金属箔15の他端には、モリブデンからなり、一部が封止部12から外方に突出する外部リード16の一端が接続されている。
このような超高圧水銀ランプ1は、両端の外部リード16に不図示の給電装置が接続され、電極13および14に給電されることによって、電極13および14間で絶縁破壊して電極間に放電アークが形成され、発光部11から可視光を含む光線が発光部11の外方に放射される。
大径の電極前方部131は、他方の電極14からの電子衝突を受ける部分であって、発光部11の内部空間Sに、他方の電極14に対向して配置されている。電極前方部131に接合された円柱状の電極後方部132は、バルブの中心軸と概ね一致するよう封止部12に埋設され、封止部12に埋設された金属箔15にその基端部が、例えばスポット溶接により接続されている。
以下において、「埋設」とは、電極後方部132が封止部12の内周面に当接している状態、および、電極後方部132と封止部12の内周面との間に微小空隙が介在している状態の両方を意味する。
バルブ10は、全長が10.8mm、発光部11の最大外径が12.0mm、封止部12の最大外径が7.6mmである。一方の電極13は、全長が13.5mm、電極前方部131の最大外径が3.0mm、電極後方部132の最大外径が0.8mm、電極後方部132の封止部12への埋設長が6.0mmである。他方の電極14は、全長が11.0mm、軸部142の最大外径が1.3mm、軸部142の封止部12への埋設長が5.0mmである。金属箔15は、全長が14.0mm、厚みが20μmである。ランプ点灯電力は270W〜300Wである。
(イ)
電極前方部となる、99.99%以上の純度を有するタングステン材131´を用意する。このタングステン材を加熱炉内に配置し、所定の処理条件で熱処理を行う。これにより、タングステン材中に存在する結晶粒界が成長して、結晶粒界の個数が少ないものとなるため、元々タングステン材中に含有されている不純物が少ないものとなる。
熱処理条件の一例を挙げると、昇温速度40℃/分で2200℃まで昇温させ、この状態で、2時間保持した。
(ロ)
電極後方部となる、99.0%程度の純度を有するタングステン材132´を用意する。このタングステン材を加熱炉内に配置して所定の処理条件で熱処理を行うことにより、タングステン材中に含有される不純物をタングステン材中からある程度放出させつつ、電極後方部に存在する結晶粒界の個数を最適に制御する。
熱処理条件の一例を挙げると、昇温速度40℃/分で2200℃まで昇温させ、この状態で、2時間保持した。
(ハ)
上記の熱処理を経た電極前方部となるタングステン材131´および電極後方部となるタングステン材132´の各々の端面を対接させた状態で、電極前方部となるタングステン材と電極後方部となるタングステン材との接合されるべき箇所に対し、レーザーを照射する。これにより、両タングステン材131´,132´が溶融して接合部133が形成され、電極13が形成される。
レーザーの照射条件の一例を挙げると、YAGレーザーを用いる場合には、レーザー光の照射照度が72J、照射時間が90msecである。
しかも、発光部11の内部空間Sに突出している電極前方部131に含有される不純物が極めて少ないものであるため、内部空間Sに不純物が放出されて内部空間Sでのハロゲンサイクルが阻害されることにより、発光部11の内壁に黒化が生じる、という問題の発生を確実に防止することができる。
図5に示す実線部分で囲まれた領域Xが1つの結晶粒界を示す。結晶粒界の個数は、電極の最小径部における断面を研磨して結晶面を露出させて写真に撮り、写真上で断面での電極中心軸Lに直交する直線Mを引いて、この直線Mと交わる実線Xで示す結晶粒界の個数nを数えた。なお、図5に示すように、電極の稜線Rと実線Xで囲まれた領域Yも1つの結晶粒界としてカウントした。
図5において、直線M上の数字は、直線Mが横切る結晶粒界Xの個数を示しており、図5に示す例では結晶粒界の個数を9個とカウントする。
そして、最小径部132´の径dと結晶粒界の個数nとの関係で表されるd3×n2が1.73以上である場合には、電極折れが生じないことが確認された。一方、d3×n2が1.73未満である場合には、10個のサンプル電極中の少なくとも1個に電極折れが生じることが確認された。
従って、d3×n2が1.73以上となるような電極を用いることで、超高圧水銀ランプの製造時、或いは超高圧水銀ランプの点灯使用時において、電極折れが生じることを確実に防止することができる。
10 バルブ
11 発光部
12 封止部
13 一方の電極
131 電極前方部
132 電極後方部
14 他方の電極
141 始動補助部
142 軸部
15 金属箔
16 外部リード
S 内部空間
Claims (4)
- 内部空間を有する発光部と、発光部の両端に連続する封止部とを有するバルブを備え、前記内部空間内に一対の電極が対向配置されるとともに0.15mg/mm3以上の水銀が封入された超高圧水銀ランプにおいて、
前記電極は、電極前方部と、該電極前方部よりも小径であって前記封止部内まで伸びる電極後方部とより構成され、
前記電極後方部の最小径部の径をd(mm)とし、当該最小径部を電極中心軸を含む平面で切断した断面において、電極中心軸と直交する直線が横切る電極構成物質の結晶粒界の個数をnとしたとき、d3×n2≧1.94の関係を満たすことを特徴とする超高圧水銀ランプ。 - 前記電極は、前記内部空間に突出する電極前方部が、99.99%以上の純度を有するタングステン材からなることを特徴とする請求項1に記載の超高圧水銀ランプ。
- 前記電極は、前記電極前方部と、電極後方部と、が接合されてなることを特徴とする請求項2に記載の超高圧水銀ランプ。
- 前記電極前方部と、前記電極後方部とが、レーザーにより接合されてなることを特徴とする請求項3に記載の超高圧水銀ランプ。
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