JP5343035B2 - 表面性状に優れた高Si含有鋼板およびその製造方法 - Google Patents

表面性状に優れた高Si含有鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼板表層部の粒界酸化を極力抑制することによって、酸洗性に優れたものとすると共に、表面性状が良好となるような高Si含有鋼板、およびそのような高Si含有鋼板を製造するための有用な方法に関するものである。
熱間圧延によって薄鋼板を製造するには、スラブを加熱炉で加熱した後、粗圧延および仕上げ圧延によって所定の板厚まで圧延し、更に水冷帯(水冷ゾーン)が配置されたホットランテーブル上で所定温度まで水冷し、コイル状に巻取る。
近年、自動車用途を中心に広く使用されている高強度鋼板では、強度を確保するためにSiが比較的多く添加されるのが一般的である。Siを多く含む鋼板に対して通常の熱間圧延を施すと、表層部に粒界酸化が生じることが知られている。この粒界酸化は、数μm〜数十μmの深さで生じるが、通常の酸洗によっては除去できず、酸洗後の冷間圧延において鋼板の粒界酸化部が剥離し、剥離した鋼片によって押し疵が発生し、鋼板の表面性状を悪化させる。また、粒界酸化層でのミクロクラックに起因して、加工性が劣化する等の問題も生じる。
粒界酸化は、コイルの冷却中に発生、若しくは助長されることが多く、易酸化性のSiが大気中或はスケール中の酸素で酸化されるものである。粒界酸化は、高温になればなるほど発生しやすくなり、巻取り温度が高い場合や、冷却速度が遅い場合等、長時間高温で保持されたときに粒界酸化が著しく発生することになる。
こうしたことから、粒界酸化を抑制するために、これまでにも様々の技術が提案されている。こうした技術として、例えば特許文献1には、C,Si,Mnの含有量を規定した鋼片を、仕上げ圧延から巻取りまでの間に変態を完了させ、所定の温度で巻取りを行なうことによって、粒界割れのない表面性状に優れた熱延鋼板を製造することが開示されている。また、特許文献2には、鋼材加熱時に、鋼材表面または近傍に固体炭素を配置し、特定温度にて加熱することにより、鋼材の表面酸化、粒界酸化を抑制して熱延鋼板の歩留まりと品質を向上させる技術が提案されている。
特許文献3には、鋼片表面への酸化防止剤塗布と、鋼板表面への被覆との組み合わせによって、粒界酸化の発生を防止し、鋼板加工時の耳割れの発生を防止する技術が提案されている。また、特許文献4には、熱延後に30℃/秒以上の冷却速度で冷却し、且つ450〜580℃で巻取って熱延鋼板の粒界酸化深さを5μm以下にする技術も提案されている。更に、特許文献5には、CrやMoを所定量含有する合金鋼素材を加熱し、粗圧延を施し、次で、加熱、粗圧延の条件から熱延鋼板における粒界酸化層深さを推定し、その粒界酸化層深さを熱延鋼板における必要スケール厚さとし、この必要スケール厚さが仕上げ圧延終了温度とで所定の関係を満足するように熱間圧延を施し、その後、巻取るような技術も提案されている。
これまで提案されている各種技術は、特定の冷却速度や巻取り温度で鋼板を製造することや、或は酸化防止剤を塗布する等の手段を採用するものである。しかしながら、Siに起因する粒界酸化を抑制する技術としては、こうした手段では、必ずしも十分なものとは言えない状況である。
特開平01−087716号公報 特開昭62−013520号公報 特許第1571951号公報 特開2008−231493号公報 特開2005−060768号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、鋼板表層部の粒界酸化を極力抑制することによって、酸洗性に優れたものとすると共に、表面性状が良好となる高Si含有鋼板、およびそのような高Si含有鋼板を製造するための有用な方法を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明の高Si含有熱延鋼板の製造方法とは、C:0.02〜0.30%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)、Si:1.0〜3.0%、Mn:1.0〜3.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)およびAl:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、Siの含有量[Si]とMnの含有量の比([Si]/[Mn])が0.5〜2.0であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる高Si含有鋼板を熱間圧延する際に、巻取り温度を550℃以上、750℃未満として巻取った後、雰囲気中水蒸気濃度をb(体積%:但し、10≦b≦40)、前記比([Si]/[Mn])の値をa、巻取り温度をT(℃)としたときに、下記(1)式の関係を満たす雰囲気中で500℃以下まで冷却する点に要旨を有する。
(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2
10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1)
本発明の製造方法において、前記雰囲気は、大気に水蒸気を添加することによって制御されたものであることが好ましい。
本発明では、対象とする鋼板は上記基本成分を有するものであるが、必要によって更に(a)Cr:1.0%以下(0%を含まない)、(b)Cu:0.5%以下(0%を含まない)および/またはNi:1.0%以下(0%を含まない)、(c)Ti:1.0%以下(0%を含まない)、V:1.0%以下(0%を含まない)およびNb:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(d)B:0.1%以下(0%を含まない)、(e)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、(f)Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)等を含有させてもよく、含有される成分に応じて鋼板の特性が更に改善される。
本発明の製造方法は、基本的に熱間圧延までの段階を規定したものであるが、この方法によって得られた高Si含有熱延鋼板を、更に冷間圧延することによって表面性状に優れた冷延鋼板が得られることになる。
本発明によれば、巻取り温度、および巻取り後の冷却雰囲気を適切に制御することによって、高Si含有鋼板表面に形成される酸化スケール層の形態を適正なものとすると共に、粒界酸化を極力低減でき、このような鋼板は表面性状に優れたものとなる。
熱延鋼板表面におけるスケールの構造を模式的に示した説明図である。 比([Si]/[Mn])の値と粒界酸化深さの関係を示すグラフである。 巻取り温度と粒界酸化深さの関係を示すグラフである。 巻取り温度と内方酸化層厚さの関係を示すグラフである。 水蒸気濃度と内方酸化層厚さの関係を示すグラフである。
本発明者らは、高Si含有鋼板表面で生じる粒界酸化の発生機構について、様々な角度から検討した。熱延(熱間圧延)工程においては、熱延鋼板表面には、図1(模式図)に示すような構造のスケールが形成される。鉄系酸化物であるヘマタイト(Fe23)、マグネタイト(Fe34)およびウスタイト(FeO)から構成される外方酸化層と、Si含有酸化物であるファイアライト(Fe2SiO4)を主体とする内方酸化層によって、表層スケールが鋼板表面に形成されることになる。
本発明者らが、熱延冷却工程を模擬した実験を行なった結果、外方酸化層および内方酸化層を介して、大気中の酸素が鋼板内に向かって拡散(内方拡散)し、鋼板表面の粒界に拡散したSiを酸化してSiO2からなる粒界酸化層(前記図1参照)が形成されることが明らかとなった。また、内方酸化層を介した酸素の内方拡散は、内方酸化層の性状に依存し、内方酸化層中のファイアライト(Fe2SiO4)量によって酸素の内方拡散の程度が変わり、酸素の拡散阻害能のあるファイアライトの生成量が少ない場合は、酸素の鋼板内部への内方拡散が増加し、粒界酸化層が厚くなることが分かった。
また本発明者らの検討によれば、ファイアライトの生成量は、Siの含有量[Si]とMnの含有量の比([Si]/[Mn])の値が大きいほど増加し、この比([Si]/[Mn])の値を大きくすると、ファイアライト(Fe2SiO4)の比率が増加し、比([Si]/[Mn])の値を減少させると、Mn2SiO4の比率が増加することになることも分かった。
ファイアライト(Fe2SiO4)は、鋼板とスケールの界面付近に密の状態で膜状に存在し、酸素の拡散を阻害するが、Mn2SiO4は粒状に形成されるため、拡散阻害能は低いものとなる。従って、(比[Si]/[Mn])の値が減少すると、粒状のMn2SiO4が多く生成し、ファイアライト(Fe2SiO4)による拡散阻害性を損なう結果、酸素が多く拡散してきて粒界酸化が深くなるものと考えられる。
上記のような知見に基づき、比([Si]/[Mn])の値を様々に設定した各種鋼板について、巻取り温度を550℃以上、750℃未満で、大気中にて生成する粒界酸化深さと比([Si]/[Mn])の値との関係について実験予測式を求めた。その結果、比([Si]/[Mn])の値が0.5以上、2.0以下の範囲内で、この比([Si]/[Mn])の値aと、粒界酸化に影響を及ぼす内方酸化層の厚さも含めた粒界酸化深さ(=内方酸化層厚さ+粒界酸化層厚さ)A(μm)は下記(2)式で表されることが分かった。
A=(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2 …(2)
但し、T:巻取り温度(℃)を示す。
上記(2)式の関係を導くに至った実験結果の一例を図2、3に示す。この実験では、酸化処理前の種々のSi含有鋼のサンプル表面に、スパッタ法によりPtマーカー層を形成し、種々の温度で夫々酸化したサンプル断面の光学顕微鏡観察より当該Ptマーカー部分(内方酸化層の最表面)から粒界酸化層先端(粒界酸化層の最深部)までの距離を「粒界酸化深さ」として定義し、各々の酸化条件に対しプロットを行ったものである。
図2は、比([Si]/[Mn])の値aと粒界酸化深さの関係を示すグラフであり、図3は巻取り温度と粒界酸化深さの関係を示すグラフである。
これらの結果から明らかなように、粒界酸化深さは、比([Si]/[Mn])の値aや巻取り温度等の要因に決定されることになる。そこで、本発明者らは、比([Si]/[Mn])の値aや巻取り温度によって決定される粒界酸化深さを低減するべく、大気に水蒸気を添加して雰囲気を制御し、鋼板内部を酸化することによって内方酸化層を形成させ、粒界酸化部をスケール化することについて更に検討した。
種々の比([Si]/[Mn])の値aの各種高Si含有鋼板について、大気中への水蒸気添加による雰囲気制御と内方酸化層の厚みを測定した結果、550℃以上、750℃未満の巻取り温度範囲においては、内方酸化層厚さB(μm)は、水蒸気濃度b(体積%)としたとき、下記(3)式で表せることが分かった。
B=1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(3)
但し、T:巻取り温度(℃)を示す。
上記(3)式の関係を導くに至った実験結果の一例(図4、5)を示す。この実験では、酸化処理前の種々のSi含有鋼のサンプル表面に、スパッタ法によりPtマーカー層を形成し、種々の温度で夫々酸化したサンプル断面の光学顕微鏡観察より内方酸化層厚さを各々の酸化条件に対しプロットを行ったものである。
図4は、巻取り温度と内方酸化層厚さの関係を示すグラフであり、図5は水蒸気濃度と内方酸化層厚さの関係を示すグラフである。
次に、酸洗不良となる粒界酸化層厚さについて検討したところ、粒界酸化層厚さが10μm以上となれば酸洗不良となることが判明した。従って、前記(2)式で表される粒界酸化深さが、前記(3)式で表される内方酸化層厚さに10μmを足した厚みよりも小さくなれば、即ち、下記(1)式で規定される関係を満足すれば、粒界酸化層厚さは10μm以下にできることを見出し、本発明を完成した。
(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2
10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1)
但し、a:比[Si]/[Mn]の値、b:水蒸気濃度、T:巻取り温度(℃)
次に、本発明で規定する要件について説明する。
[比([Si]/[Mn])の値a:0.5〜2.0]
鋼板中のSiの含有量およびMnの含有量は、鋼板としての基本的な特性を発揮するために、所定の範囲内に設定されるが、これらの比([Si]/[Mn])の値aは、拡散阻害性を有するFe2SiO4と拡散阻害性の少ないMn2SiO4の生成量に影響する。その値aが0.5未満の場合は、鋼板内部から表面に拡散するSi量より、表層スケールを介して鋼板内部に拡散する酸素量が圧倒的に多くなるため、Siは鋼板内部で酸化して粒状酸化物(即ち、Mn2SiO4)を形成する。そのため、この値aが0.5未満の場合には、そもそも粒界酸化は生じないことから、本発明ではこのような組成の鋼板は対象としない。一方、値aが2.0を超える場合は、拡散阻害能の高いFe2SiO4が厚く生成するため、粒界酸化は抑制されるものの、酸洗性が極めて悪くなる。尚、この値aの好ましい下限は0.7(より好ましくは0.8)であり、好ましい上限は1.5(より好ましくは1.2)である。
本発明方法を実施するに当り、熱間圧延は常法に従って行えばよいが、鋼片(スラブ)を加熱するときの加熱温度は、仕上げ温度確保の観点から1000〜1300℃とすることが好ましい。また、熱間圧延の仕上げ温度は加工性を阻害する集合組織が形成されないように800〜950℃の温度範囲とし、仕上げ圧延後の冷却速度はパーライトの生成を抑制するため30〜120℃/秒とすることが好ましい(より好ましくは50〜100℃/秒程度)。但し、巻取り温度については、酸化物層の形態に影響を与えるので、厳密に制御する必要がある。
[巻取り温度:550℃以上、750℃未満]
巻取り温度が550℃未満の場合は、表層スケールに酸溶解性の低いヘマタイトが生成し易くなり、酸洗を行っても粒界酸化が除去できない。一方、巻取り温度が750℃以上の場合は、表層スケールが厚くなり、酸洗を行っても表層スケール自体も十分に除去できず、粒界酸化が残ってしまうことになる。こうした観点から、巻取り温度は550℃以上、750℃未満とする。好ましくは、570℃以上(より好ましくは600℃以上)、730℃以下(より好ましくは700℃以下)である。
[冷却雰囲気の制御]
巻取り後に冷却する条件(冷却終了温度、冷却雰囲気)を適切に制御する必要がある。冷却停止温度に関しては、粒界酸化が生成しなくなる温度が500℃程度であるため、500℃以下まで水蒸気添加雰囲気中で冷却を行って、粒界酸化を抑制する必要がある。また、雰囲気中の水蒸気濃度は、内方酸化を進行させるという観点から、10〜40体積%とする必要がある。この水蒸気濃度は好ましくは、15体積%以上(より好ましくは20体積%以上)、38体積%以下(より好ましくは35体積%以下)であるが、少なくとも前記(1)式の関係を満足する必要がある。尚、上記雰囲気の制御に関しては、その制御のし易さからして、大気に対して水蒸気を添加して制御することが好ましい。
本発明では、上記比([Si]/[Mn])の値a、および製造条件を適切に制御することによって、表面性状に優れた鋼板を得るものであり、この鋼板の化学成分組成については、高強度鋼板としての特性を満足するものであればよい。こうした観点から、Si、Mnを含めた基本成分として、C:0.02〜0.30%、Si:1.0〜3.0、Mn:1.0〜3.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)およびAl:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有するものが挙げられる。各元素の添加理由は、以下の通りである。
[C:0.02〜0.30%]
Cは鋼材(即ち、鋼板)の強度を高めるのに有効な元素であり、また低温変態生成物の量や変態を変えることで伸びや伸びフランジ性に影響を与える元素である。Cの含有量が0.02%未満では、自動車用の高強度のニーズに応えることができなくなり、一方、C含有量が0.30%を超えて過剰になると、溶接性の低下を招くことになる。好ましいC含有量は、0.04%以上(より好ましくは0.06%以上)、0.25%以下(より好ましくは0.2%以下)である。
[Si:1.0〜3.0%]
Siは鋼材の強度を確保する上で重要な元素である。本発明で対象とする鋼板では、強度確保に最低限必要なSi量としてその含有量は1.0%とした。しかしながら、Si含有量が過剰となると、延性が劣化する恐れがあり、3.0%以下とした。好ましいSi含有量は、1.2%以上(より好ましくは1.5%以上)、2.8%以下(より好ましくは2.6%以下)である。
[Mn:1.0〜3.5%]
Mnは鋼材の強度を確保するために有用な元素であり、また加工性の非常に優れた高強度鋼板としての特性を得るためには、少なくとも1.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、伸びの低下や炭素当量の増大を招き、また溶接性が劣化するので3.5%以下とする必要がある。好ましいMn含有量は、1.2%以上(より好ましくは1.5%以上)、3.0%以下(より好ましくは2.5%以下)である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは高強度鋼板を得るために有効な元素であるが、0.03%を超えて過剰になると、めっきムラが生じやすくなり、また合金化処理が困難になるので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.03%に止める必要がある。P含有量は、好ましくは0.01%以下にするのが良い。尚、工業生産上、鋼材中のP含有量を0%にすることは困難である。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sは熱間圧延時の熱間割れの原因となる他、スポット溶接性を著しく損なう元素である。鋼材中では、析出物として固定されるが、その量が増大すると、伸びや伸びフランジ性の劣化を招くので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.03%に止める必要がある。S含有量は、好ましくは0.01%以下(より好ましくは0.008%以下)である。尚、工業生産上、鋼材中のS量を0%にすることは困難である。
[Al:0.15%以下(0%を含まない)]
Alは製鋼段階での脱酸剤として有用な元素である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、製造コストの上昇を招くだけでなく、表面性状を悪化させるので0.15%を上限とする。好ましくは0.1%以下(より好ましくは0.05%以下)にするのが良い。上記効果を発揮させるためのAl含有量の好ましい下限は0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)である。
上記の成分組成以外の成分は、実質的に鉄である。残部が実質的に鉄の場合、不可避的不純物(例えば、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不純物(O、N等))が鋼板中に含まれることは、当然に許容される。本発明で対象とする鋼材には、必要に応じて種々の選択元素を含有させても良く、含有される元素の種類に応じて鋼材の特性が更に改善される。これらの元素を含有させるときの含有量および限定理由は以下の通りである。
[Cr:1.0%以下(0%を含まない)]
Crは鋼板の焼入れ性を高め、組織強化を図る上で有効な元素である。また、Crはオーステナイト中にCを濃化させ、安定度を高め、マルテンサイトを生成させ易くするだけでなく、酸化物を鋼板表面に形成すことによって、めっき性にも影響を与える。しかしながら、Crの含有量が1.0%を超えると、効果が飽和するばかりでなく、コスト面も不利になる。より好ましくは0.8%以下にするのが良い。尚上記効果を発揮させるためのCr含有量のより好ましい下限は0.03%以上(更に好ましくは0.05%以上)である。
[Cu:0.5%以下(0%を含まない)および/またはNi:1.0%以下(0%を含まない)]
CuおよびNiは、鋼材自体の強度を向上させる上で有効な元素である。特に、Feよりも酸化し難いCu、Niが表面に均一に濃化することによって、鋼材内部に拡散する酸素量を更に低減することができる。しかしながら、過剰に含有させることは、経済的に見合わず、加工性も劣化するので、Cuで0.5%以下、Niで1.0%以下とすべきである。尚、これらの元素を含有させるときの好ましい含有量は、いずれも0.003%以上である。また、より好ましい上限はCuで0.3%以下、Niで0.7%以下である。
[Ti:1.0%以下(0%を含まない)、V:1.0%以下(0%を含まない)およびNb:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Ti、VおよびNbは、いずれも炭化物を形成し、鋼材を高強度化するために有効な元素である。また、TiはC、Nを固定し、鋼板の加工性(例えばr値)を上昇させる効果も発揮する。しかしながら、これらの含有量は、いずれも1.0%を超えて過剰になると、コスト高となる上、加工性の劣化をもたらすことになる。これらのより好ましい上限は0.8%以下である。尚、上記の効果を発揮させるためには、いずれも0.003%以上含有させることが好ましい(より好ましくは0.005%以上)。
[Mo:1.0%以下(0%を含まない)]
Moは鋼材の固溶強化を図る上で有効な元素である。しかしながらMo含有量が1.0%を超えて過剰になると、製造コストを上昇させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、Moは0.003%以上(より好ましくは0.01%以上)含有させることが好ましい。尚、Mo含有量のより好ましい上限は0.7%以下である。
[B:0.1%以下(0%を含まない)]
Bは鋼材の溶接性を向上させ、また焼入れ性を高める作用のある元素である。しかしながらB含有量が0.1%を超えて過剰になると、これらの効果が飽和するだけでなく、延性を劣化させ、加工性を低下させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、Bは0.0002%以上(より好ましくは0.0005%以上)含有させることが好ましい。尚、B含有量のより好ましい上限は0.07%以下である。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)]
CaおよびMgは、介在物の形態を制御して、延性を高め、加工性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの含有量がCaで0.005%、Mgで0.01%を超えて過剰になると、鋼材中の介在物が増加して延性が劣化し、加工性が悪くなる。尚、こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.0005%以上(より好ましくは0.0007%以上)含有させることが好ましい。尚、これらの含有量のより好ましい上限は、Caで0.003%以下、Mgで0.007%以下である。
本発明方法によって得られる熱延鋼板は、酸洗性が良好なものとなり、また粒界酸化層厚さが薄いものとなっている。こうした熱延鋼板を冷間圧延すると、良好な冷延性が発揮されると共に、表面疵(押し疵)がない表面性状に優れた冷延鋼板となる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
下記表1に示す化学成分組成の鋼材スラブ(鋼種A〜V)を溶製し、1250℃に加熱し(温度管理は、熱電対を埋め込んだ測定用スラブを一般スラブを同時に加熱して実測する方法による)、仕上げ温度:870〜900℃で厚さ:2.6mmまで熱間圧延し、次いで、平均冷却速度:40℃/秒で冷却した後、下記表2、3に示す種々の巻取り温度で巻取り、その後、雰囲気中の水蒸気濃度を変えて(大気中に水蒸気を添加することによって雰囲気制御)500℃以下まで冷却した。
Figure 0005343035
Figure 0005343035
Figure 0005343035
得られた熱延鋼板(コイル)のスケール性状(粒界酸化深さ、内方酸化層厚さ、粒界酸化層厚さ)を光学顕微鏡によって測定した。これらについては、コイルの先端部、中央部および後端部の夫々からサンプルを採取し、各々のサンプルの任意の3箇所から断面試料を作製して光学顕微鏡によって測定し、全体の平均値を求めて各条件でのスケール性状(粒界酸化深さ、内方酸化層厚さ、粒界酸化層厚さ)とした。
次に、通常の酸洗(15%塩酸、70℃)を行なった後のコイルを、冷延率:46%で、厚さ:1.4mmまで冷間圧延して冷延鋼板を製造し、粒界酸化層厚さ、表面性状を評価した。このとき、粒界酸化層厚さについては、コイルの先端部、中央部および後端部の夫々からサンプルを採取し、各々のサンプルの任意の3箇所から断面試料を作製して光学顕微鏡によって測定し、全体の平均値を求めて粒界酸化層厚さとした。
また、表面性状の評価に関しては、冷延後の鋼板表面を目視観察し、粒界酸化部の脱落がない場合を「良好」とし、粒界酸化部の脱落が生じた場合を「不良」と評価した。その結果を、下記表4、5に示す。
Figure 0005343035
Figure 0005343035
この結果から次のように考察できる。まず本発明で規定する要件を満足するものは(試験No.1、5、7、9、11、1〜18、20、21、23、24、26、30、31、34)、熱延鋼板の酸洗性が良好になると共に、鋼板(熱延鋼板および冷延鋼板)における粒界酸化層深さを低減でき、優れた表面性状が得られていることが分かる。特に、冷延鋼板においては、いずれも粒界酸化層深さを5μm未満に低減でき、良好な表面性状が得られている。尚、試験No.2、13、19、22、25、27〜29、32、33のものは、本発明で規定する要件を満足しないが、得られた鋼板(熱延鋼板および冷延鋼板)における粒界酸化層深さを低減でき、優れた表面性状が得られている参考例である。
これに対し、本発明で規定する要件を満足しないもの(試験No.3、4、6、8、10、12、14)では、粒界酸化層厚さが厚くなっており(即ち、前記(1)式の関係を満足していない)、優れた表面性状が得られていないことが分かる。

Claims (9)

  1. C:0.02〜0.30%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)、Si:1.0〜3.0%、Mn:1.0〜3.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)およびAl:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、Siの含有量[Si]とMnの含有量の比([Si]/[Mn])が0.5〜2.0であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる高Si含有鋼板を熱間圧延する際に、巻取り温度を550℃以上、750℃未満として巻取った後、雰囲気中水蒸気濃度をb(体積%:但し、10≦b≦40)、前記比([Si]/[Mn])の値をa、巻取り温度をT(℃)としたときに、下記(1)式の関係を満たす雰囲気中で500℃以下まで冷却することを特徴とする表面性状に優れた高Si含有熱延鋼板の製造方法。
    (0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2
    10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
    (0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1)
  2. 前記雰囲気は、大気に水蒸気を添加することによって制御されたものである請求項1に記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼板は、更にCr:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼板は、更にCu:0.5%以下(0%を含まない)および/またはNi:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼板は、更にTi:1.0%以下(0%を含まない)、V:1.0%以下(0%を含まない)およびNb:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼板は、更にB:0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記鋼板は、更にMo:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  8. 前記鋼板は、更にCa:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって得られた熱延鋼板を、冷間圧延することによって得られたものである表面性状に優れた高Si含有冷延鋼板。
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