JP5343035B2 - 表面性状に優れた高Si含有鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2≦
10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1)
A=(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2 …(2)
但し、T:巻取り温度(℃)を示す。
B=1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(3)
但し、T:巻取り温度(℃)を示す。
(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2≦
10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1)
但し、a:比[Si]/[Mn]の値、b:水蒸気濃度、T:巻取り温度(℃)
鋼板中のSiの含有量およびMnの含有量は、鋼板としての基本的な特性を発揮するために、所定の範囲内に設定されるが、これらの比([Si]/[Mn])の値aは、拡散阻害性を有するFe2SiO4と拡散阻害性の少ないMn2SiO4の生成量に影響する。その値aが0.5未満の場合は、鋼板内部から表面に拡散するSi量より、表層スケールを介して鋼板内部に拡散する酸素量が圧倒的に多くなるため、Siは鋼板内部で酸化して粒状酸化物(即ち、Mn2SiO4)を形成する。そのため、この値aが0.5未満の場合には、そもそも粒界酸化は生じないことから、本発明ではこのような組成の鋼板は対象としない。一方、値aが2.0を超える場合は、拡散阻害能の高いFe2SiO4が厚く生成するため、粒界酸化は抑制されるものの、酸洗性が極めて悪くなる。尚、この値aの好ましい下限は0.7(より好ましくは0.8)であり、好ましい上限は1.5(より好ましくは1.2)である。
巻取り温度が550℃未満の場合は、表層スケールに酸溶解性の低いヘマタイトが生成し易くなり、酸洗を行っても粒界酸化が除去できない。一方、巻取り温度が750℃以上の場合は、表層スケールが厚くなり、酸洗を行っても表層スケール自体も十分に除去できず、粒界酸化が残ってしまうことになる。こうした観点から、巻取り温度は550℃以上、750℃未満とする。好ましくは、570℃以上(より好ましくは600℃以上)、730℃以下(より好ましくは700℃以下)である。
巻取り後に冷却する条件(冷却終了温度、冷却雰囲気)を適切に制御する必要がある。冷却停止温度に関しては、粒界酸化が生成しなくなる温度が500℃程度であるため、500℃以下まで水蒸気添加雰囲気中で冷却を行って、粒界酸化を抑制する必要がある。また、雰囲気中の水蒸気濃度は、内方酸化を進行させるという観点から、10〜40体積%とする必要がある。この水蒸気濃度は好ましくは、15体積%以上(より好ましくは20体積%以上)、38体積%以下(より好ましくは35体積%以下)であるが、少なくとも前記(1)式の関係を満足する必要がある。尚、上記雰囲気の制御に関しては、その制御のし易さからして、大気に対して水蒸気を添加して制御することが好ましい。
Cは鋼材(即ち、鋼板)の強度を高めるのに有効な元素であり、また低温変態生成物の量や変態を変えることで伸びや伸びフランジ性に影響を与える元素である。Cの含有量が0.02%未満では、自動車用の高強度のニーズに応えることができなくなり、一方、C含有量が0.30%を超えて過剰になると、溶接性の低下を招くことになる。好ましいC含有量は、0.04%以上(より好ましくは0.06%以上)、0.25%以下(より好ましくは0.2%以下)である。
Siは鋼材の強度を確保する上で重要な元素である。本発明で対象とする鋼板では、強度確保に最低限必要なSi量としてその含有量は1.0%とした。しかしながら、Si含有量が過剰となると、延性が劣化する恐れがあり、3.0%以下とした。好ましいSi含有量は、1.2%以上(より好ましくは1.5%以上)、2.8%以下(より好ましくは2.6%以下)である。
Mnは鋼材の強度を確保するために有用な元素であり、また加工性の非常に優れた高強度鋼板としての特性を得るためには、少なくとも1.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、伸びの低下や炭素当量の増大を招き、また溶接性が劣化するので3.5%以下とする必要がある。好ましいMn含有量は、1.2%以上(より好ましくは1.5%以上)、3.0%以下(より好ましくは2.5%以下)である。
Pは高強度鋼板を得るために有効な元素であるが、0.03%を超えて過剰になると、めっきムラが生じやすくなり、また合金化処理が困難になるので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.03%に止める必要がある。P含有量は、好ましくは0.01%以下にするのが良い。尚、工業生産上、鋼材中のP含有量を0%にすることは困難である。
Sは熱間圧延時の熱間割れの原因となる他、スポット溶接性を著しく損なう元素である。鋼材中では、析出物として固定されるが、その量が増大すると、伸びや伸びフランジ性の劣化を招くので、不可避的不純物として混入する場合、その上限を0.03%に止める必要がある。S含有量は、好ましくは0.01%以下(より好ましくは0.008%以下)である。尚、工業生産上、鋼材中のS量を0%にすることは困難である。
Alは製鋼段階での脱酸剤として有用な元素である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、製造コストの上昇を招くだけでなく、表面性状を悪化させるので0.15%を上限とする。好ましくは0.1%以下(より好ましくは0.05%以下)にするのが良い。上記効果を発揮させるためのAl含有量の好ましい下限は0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)である。
Crは鋼板の焼入れ性を高め、組織強化を図る上で有効な元素である。また、Crはオーステナイト中にCを濃化させ、安定度を高め、マルテンサイトを生成させ易くするだけでなく、酸化物を鋼板表面に形成すことによって、めっき性にも影響を与える。しかしながら、Crの含有量が1.0%を超えると、効果が飽和するばかりでなく、コスト面も不利になる。より好ましくは0.8%以下にするのが良い。尚上記効果を発揮させるためのCr含有量のより好ましい下限は0.03%以上(更に好ましくは0.05%以上)である。
CuおよびNiは、鋼材自体の強度を向上させる上で有効な元素である。特に、Feよりも酸化し難いCu、Niが表面に均一に濃化することによって、鋼材内部に拡散する酸素量を更に低減することができる。しかしながら、過剰に含有させることは、経済的に見合わず、加工性も劣化するので、Cuで0.5%以下、Niで1.0%以下とすべきである。尚、これらの元素を含有させるときの好ましい含有量は、いずれも0.003%以上である。また、より好ましい上限はCuで0.3%以下、Niで0.7%以下である。
Ti、VおよびNbは、いずれも炭化物を形成し、鋼材を高強度化するために有効な元素である。また、TiはC、Nを固定し、鋼板の加工性(例えばr値)を上昇させる効果も発揮する。しかしながら、これらの含有量は、いずれも1.0%を超えて過剰になると、コスト高となる上、加工性の劣化をもたらすことになる。これらのより好ましい上限は0.8%以下である。尚、上記の効果を発揮させるためには、いずれも0.003%以上含有させることが好ましい(より好ましくは0.005%以上)。
Moは鋼材の固溶強化を図る上で有効な元素である。しかしながらMo含有量が1.0%を超えて過剰になると、製造コストを上昇させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、Moは0.003%以上(より好ましくは0.01%以上)含有させることが好ましい。尚、Mo含有量のより好ましい上限は0.7%以下である。
Bは鋼材の溶接性を向上させ、また焼入れ性を高める作用のある元素である。しかしながらB含有量が0.1%を超えて過剰になると、これらの効果が飽和するだけでなく、延性を劣化させ、加工性を低下させることになる。尚、こうした効果を発揮させるためには、Bは0.0002%以上(より好ましくは0.0005%以上)含有させることが好ましい。尚、B含有量のより好ましい上限は0.07%以下である。
CaおよびMgは、介在物の形態を制御して、延性を高め、加工性を向上させる作用がある。しかしながら、これらの含有量がCaで0.005%、Mgで0.01%を超えて過剰になると、鋼材中の介在物が増加して延性が劣化し、加工性が悪くなる。尚、こうした効果を発揮させるためには、いずれも0.0005%以上(より好ましくは0.0007%以上)含有させることが好ましい。尚、これらの含有量のより好ましい上限は、Caで0.003%以下、Mgで0.007%以下である。
下記表1に示す化学成分組成の鋼材スラブ(鋼種A〜V)を溶製し、1250℃に加熱し(温度管理は、熱電対を埋め込んだ測定用スラブを一般スラブを同時に加熱して実測する方法による)、仕上げ温度:870〜900℃で厚さ:2.6mmまで熱間圧延し、次いで、平均冷却速度:40℃/秒で冷却した後、下記表2、3に示す種々の巻取り温度で巻取り、その後、雰囲気中の水蒸気濃度を変えて(大気中に水蒸気を添加することによって雰囲気制御)500℃以下まで冷却した。
Claims (9)
- C:0.02〜0.30%(質量%の意味。鋼の化学成分において以下同じ。)、Si:1.0〜3.0%、Mn:1.0〜3.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)およびAl:0.15%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、Siの含有量[Si]とMnの含有量の比([Si]/[Mn])が0.5〜2.0であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる高Si含有鋼板を熱間圧延する際に、巻取り温度を550℃以上、750℃未満として巻取った後、雰囲気中水蒸気濃度をb(体積%:但し、10≦b≦40)、前記比([Si]/[Mn])の値をa、巻取り温度をT(℃)としたときに、下記(1)式の関係を満たす雰囲気中で500℃以下まで冷却することを特徴とする表面性状に優れた高Si含有熱延鋼板の製造方法。
(0.075×T−38)×(−1.5a+3.75)2/(2.45)2≦
10+1.92×106×exp{−15462/(T+273)}×
(0.1566b+0.506)×600.5/3.6 …(1) - 前記雰囲気は、大気に水蒸気を添加することによって制御されたものである請求項1に記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にCr:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にCu:0.5%以下(0%を含まない)および/またはNi:1.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にTi:1.0%以下(0%を含まない)、V:1.0%以下(0%を含まない)およびNb:1.0%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にB:0.1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にMo:1.0%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、更にCa:0.005%以下(0%を含まない)および/またはMg:0.01%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の高Si含有熱延鋼板の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって得られた熱延鋼板を、冷間圧延することによって得られたものである表面性状に優れた高Si含有冷延鋼板。
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