[第1実施例]
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図を示している。なお、この図1のマイクロミラー装置を1次元的、あるいは2次元的に複数配設したものがミラーアレイである。本実施例のマイクロミラー装置は、ミラーが形成された第1の基板であるミラー基板200と、電極が形成された第2の基板である電極基板301とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板200は、従来のマイクロミラー装置のミラー基板とほぼ同様な構成である。ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部(不図示)により枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された可動部材である平面視略円形のミラー230とを有する。また、枠部210の上面には、可動枠220およびミラー230を取り囲むような枠状部材240が形成されている。可動枠220は、一対の可動枠連結部(不図示)を通る可動枠回動軸を軸として回動することができる。同様に、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を軸として回動することができる。可動枠回動軸とミラー回動軸とは互いに直交しており、結果として、ミラー230は直交する2軸で回動する。
電極基板301は、例えば単結晶シリコンからなる板状の基部310と、基部310の表面(上面)から突出し、対向するミラー基板200と接合するための凸部360a,360bとを有する。電極基板301の凸部360a,360bが設けられた面には、絶縁膜107が形成される。この絶縁膜107は、後述する駆動電極配線201、周辺電極配線202および下部電極103が、シリコンなどの半導体である基部310を介して電気的に短絡することを防止する働きをする。
電極基板301にシリコン基板を用いる場合、絶縁膜107には、シリコン酸化膜を使用するのが一般的である。加工されていないベアのシリコン基板を必要に応じて洗浄して表面を清浄にした後に、熱酸化炉内で熱酸化させることにより、絶縁膜107が形成される。シリコン酸化膜の形成方法のうち熱酸化法で形成された熱酸化膜は、気相化学成長法(CVD法)などを用いて堆積したシリコン酸化膜などに比べて品質が良く、耐電圧特性に優れていることが知られている。
絶縁膜107の上面には、駆動電極101に電圧を供給するための駆動電極配線201、周辺電極102に所定の電位を供給するための周辺電極配線202、および駆動安定化電極である下部電極103が形成されている。駆動電極配線201と周辺電極配線202と下部電極103は、電極基板301の同じ層上に作成されるので、同時に形成することができる。駆動電極配線201と周辺電極配線202は、図示していないボンディングパッドを介して、ミラーアレイを実装するパッケージの所定のピンに接続される。
さらに、絶縁膜107の上面には、駆動電極配線201と周辺電極配線202と下部電極103を覆うように誘電体からなる絶縁膜104が形成されている。絶縁膜104の上面には、対向するミラー基板200のミラー230を駆動するための駆動電極101が形成されている。駆動電極101の形状は、従来と同様に、ミラー230と同心の円を4つに分割した扇形であってもよい。また、駆動電極101は、従来と同様に、基部の上面に設けられた突出部の上面に形成されるようにしてもよい。また、金属材料からなる駆動電極101を厚く堆積して、駆動電極101自体が段丘状の突出部を形成するようにしてもよい。駆動電極101は、層間垂直配線108を介して駆動電極配線201と接続されている。
また、絶縁膜104上の駆動電極101と同じ層には、周辺電極102が形成されている。周辺電極102は、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる絶縁膜104の露出を避けるために設けられる。この周辺電極102には、層間垂直配線109を介して接続された周辺電極配線202から所定の電位が供給される。所定の電位とは、ミラー230と同電位であってもよく、より望ましくは、接地電位とすればよい。
上述したようなミラー基板200と電極基板301とは、ミラー230とこのミラー230に対応する駆動電極101とが対向配置されるように、枠部210の下面と凸部360a,360bの上面とを接合することにより、図1に示すようなマイクロミラー装置が構成される。
図1のマイクロミラー装置では、駆動電極配線201と周辺電極配線202は、駆動電極101と周辺電極102とが形成される層とは異なる層に形成されているが、駆動電極101および周辺電極102と同じ層に配置されていてもよい。ただし、駆動電極配線201や周辺電極配線202で発生する電界がミラー230の駆動に作用することを防ぐ点においては、駆動電極101と周辺電極102の下層で配線を引き回す構造のほうが望ましい。なお、ミラー230の駆動に与える影響力は、周辺電極配線202よりも駆動電極配線201の方が大きい。
図1のマイクロミラー装置のミラー230は、ミラー230と駆動電極101との間の電位差により発生する静電引力により回動する。例えば、ミラー230を接地し、駆動電極配線201を介して駆動電極101に所定の正の電圧(駆動電圧)を与えることにより、ミラー230を静電引力で吸引し、ミラー230を任意の方向へ回動させることができる。このとき、ミラー230を所望の方向へ回動させるには、4つの駆動電極101に別々に駆動電圧を印加し、4つの駆動電極101間に電位差を生じさせるようにすればよい。
ミラー230は、静電引力とミラー230を支持しているばね(ミラー連結部221a,221bと図示しない可動枠連結部)の復元力がつりあった状態で静止する。ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部のばね定数が一定とみなせる場合には、理論的には、駆動電極に与える駆動電圧が一定であれば、ミラー230の傾斜角度は一意に決定される。
静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置では、駆動電圧が印加される電極間の距離(ここでは、ミラー230と駆動電極101間の距離)は、一般的に数百ミクロンから数ミクロン程度であり、この隙間に数Vから数100Vの電圧が印加される。例えば、電極間距離が10ミクロンのデバイスに100Vの電圧を印加すると、105V/cmという大きな電界が発生する。このような大きな電界が与えられた領域近傍に、誘電体膜などの絶縁膜が配置されていると、この絶縁膜が帯電することがある。そして、この帯電によって新たな電界が発生し、帯電による電界によってミラー230の傾斜角度が時間と共に変動する現象が現れる。このような現象は「ドリフト」とも呼ばれ、静電駆動型MEMSデバイスを使用する際の大きな課題となっている。
絶縁膜が帯電する原因の詳細は明らかになっていない。しかし、製造時の影響で絶縁膜に電荷を蓄積できる電荷トラップセンタが形成され、ミラーの駆動時に電界が印加されることにより、絶縁膜の両電極からキャリアの注入が発生し、電荷トラップセンタに電荷が蓄積されるためである、と考えられている。一般に、絶縁膜に高い電界がかかるほど電荷が蓄積されやすくなるとされている。電荷の蓄積と電荷の放出はその部分に印加された電界強度で確率的に決定されることから、電荷の蓄積と放出との平衡状態は時間と共に変化し、電界強度は時間と共に変化する。その結果、ミラーと駆動電極間に形成された電界強度も時間と共に変化し、ミラー傾斜角度のドリフトとして観測される。
ミラー傾斜角度のドリフトの原因となるのは、絶縁膜104がミラー基板200と電極基板301との間の領域で剥き出しとなっている部分、特にミラー230の下部にある、駆動電極101と周辺電極102との間のギャップ105の部分である。図2は、図1の点線で囲んだ部分、すなわち駆動電極101、周辺電極102および下部電極103を含む部分を拡大した断面図である。図2に示したように、ギャップ105の部分で剥き出しとなっている絶縁膜104を電荷蓄積領域106と呼ぶこととする。なお、便宜上、電荷蓄積領域106を矩形で表しているが、実際の領域境界は図2で表したような明確なものではない。
電荷蓄積領域106に電荷が蓄積されると、ミラー230にとっては、駆動電極101の面積が増大したことと同じになる。この電荷蓄積領域106への電荷の蓄積によって発生する電界強度は、駆動電極101によって発生する電界に比して小さい。しかし、ミラー230の周辺部直下にある電荷蓄積領域106は、ミラー230を駆動する際の回転力(トルク)が最も大きく作用するので、ミラー230の傾斜角度の変動に大きな作用を及ぼす。
ところが、電荷蓄積領域106の基部寄りの直下に、下部電極103を配設することにより、電荷蓄積領域106の電荷蓄積が低減され、ミラー傾斜角度のドリフトが低減できることが分かった。その理由は、下記のようなものと考えられる。
下部電極103を駆動電極101と周辺電極102との間のギャップ105の下部に配設することにより、駆動電極101から周辺電極102への電気力線の一部を下部電極103に引き込むことが可能となる。すなわち、下部電極103の直上の電荷蓄積領域106の厚さがギャップ105の幅(駆動電極101と周辺電極102間の距離)よりも薄い場合には、駆動電極101と周辺電極102との間に形成される電界よりも大きな強度の電界が、駆動電極101と下部電極103との間に形成される。
駆動電極101の下部あるいは周辺電極102の下部の絶縁膜104に大きな電界が生じ、この部分に電荷が蓄積されても、駆動電極101あるいは周辺電極102の下の絶縁膜であり、空中に露出された部分ではないので、ミラー230に作用する電界を乱すことはない。よって、電荷蓄積領域106に蓄積される電荷量を低減することが可能となり、駆動電極101に一定の駆動電圧を印加しているにも拘わらず時間と共にミラー230の傾斜角度が変化する現象、すなわちドリフトを低減することが可能となる。
下部電極103は、駆動電極配線201および周辺電極配線202と同じ層に形成される。図3は駆動電極101および周辺電極102が形成される層の平面図、図4は下部電極103、駆動電極配線201および周辺電極配線202が形成される層の平面図、図5は駆動電極101および周辺電極102を透過してその下層にある下部電極103を眺めた平面図である。ただし、図4では、周辺電極配線202の記載は省略している。また、図5では、理解が容易に進むよう、駆動電極配線201および周辺電極配線202の記載は省略している。
図4に示すように、駆動電極配線201は、駆動電極101の真下に形成される配線201aと、配線201aと図示しないボンディングパッドとを接続するための配線201bとから構成される。ここでは、駆動電極配線201aは、駆動電極101と同様に、対向するミラー230と同心の円を4つに分割した扇形となるよう配置されるものとする。ただし、各駆動電極配線201aは、駆動電極101よりも面積は小さい。そして、各駆動電極配線201aからそれぞれ図示しないボンディングパッドと接続するための配線201bが伸びている。
下部電極103は、駆動電極配線201aの周囲に形成される電極103aと、駆動電極配線201a間に形成される電極103bとから構成される。下部電極103aは、4つの扇形の駆動電極配線201aの外側の領域において、駆動電極配線201aの外周と接しないように、ミラー230と同心の円環状に形成されている。ただし、下部電極103aは、駆動電極配線201bの領域は避けるように形成される。また、下部電極103bは、4つの扇形の駆動電極配線201aに挟まれた十字状の領域において、駆動電極配線201aと接しないように十字状に形成されている。
下部電極103aは、すでに述べたように、ミラー230を駆動する際の回転力(トルク)が最も大きく作用する領域に形成されるものであるから、下部電極103aの配設は重要である。一方、下部電極103bは、下部電極103aに比して、ミラー230を駆動する際の回転力にそれほど大きくは作用しない領域に形成されるものであるため、下部電極103bを形成しなくてもよい。ただし、下部電極103bがあった方がミラー傾斜角度のドリフトはより低減される。
下部電極103a,103bに与えられる電位は、駆動電極101と同電位であってもよいし、周辺電極102と同電位であってもよい。また、駆動電極101および周辺電極102と異なる電位に制御されていてもよい。ただし、周辺電極102とミラー230を接地電位とし、下部電極103a,103bも接地電位とする形態が、マイクロミラー装置全体の電位が安定するため、もっとも望ましい。
駆動電極101は、対向するミラー230と同心の円を4つに分割した扇形となるよう配置される。この4つの扇形を合わせた駆動電極101の面積は、駆動電極配線201aの4つの扇形を合わせた面積よりも大きく、ミラー230の面積よりも小さい。駆動電極101の面積をミラー230の面積よりも小さくしているのは、静電引力がばねの復元力よりも大きくなり、ミラー230の姿勢を制御できなくなる「プルイン」という現象が発生した際に、ミラー230の周縁部が駆動電極101と衝突して固着することを避けるためである。
図3に示すように、周辺電極102は、4つの扇形の駆動電極101の外側の領域において、駆動電極101の外周と接することなく、絶縁膜104の過度な露出を防ぐような形状に形成されている。駆動電極101と周辺電極102との間の領域が、電極101と102が電気的に短絡しないためのギャップ105である。
本実施例におけるマイクロミラー装置の電極構造を上面(ミラー基板が配される側の面)から望むと、図5に示すように、ギャップ105の下部の領域、駆動電極101の周縁の下部の領域、および周辺電極102の内側の周縁の下部の領域に、下部電極103が形成されている。ギャップ105の部分では、電荷蓄積領域106(絶縁膜104)が剥き出しになるが、電荷蓄積領域106の下に下部電極103があるので、電荷蓄積領域106の帯電の影響を減少させることができ、結果として、ミラー230の傾斜角度のドリフトを低減できる。
なお、図5に示したように、下部電極103は、ギャップ105よりも幅が広いことが望ましい。すなわち、図2から明らかなように、下部電極103の一端は駆動電極101の下部に配置され、かつ下部電極103の他端は周辺電極102の下部に配置されていなければならない。このような構成にすることにより、絶縁膜104が露出している電荷蓄積領域106の下部を下部電極103でカバーすることができ、いっそうのドリフト低減効果が期待できる。
図6は、実際に製造した図1〜図5のような構造のマイクロミラー装置を用い、ミラー230と周辺電極102と下部電極103に接地電位を与え、かつ駆動電極101に一定の駆動電圧を与えて、ミラー230の傾斜角度の経時変化を測定した結果である。横軸は経過時間(フルレンジで1時間)、縦軸はミラーの傾斜角度を任意のスケールで表している。θ0は下部電極103を備えていない従来のマイクロミラー装置の結果を示し、θ1は本実施例のマイクロミラー装置の結果を示している。
従来のマイクロミラー装置では、駆動電極に印加している電圧が一定であっても、ミラーの傾斜角度は徐々に変化(増加)している。これに対して、本実施例のマイクロミラー装置では、駆動電極101に印加された電圧が一定であれば、時間が経過してもミラー230の傾斜角度は変化していない。すなわち、ドリフトを低減できることが実証されている。
次に、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。なお、本発明は下記の製造方法に限定されるものでなく、代表的な製造方法を説明しているにすぎない。
まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。ミラー基板200は、SOI(Silicon on Insulator)の基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bを形成する。
最初に、スピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIE(Deep Reactive Ion Etching )エッチング技術を用いてSOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bなどを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄をする。
その後、ベース基板を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。SOI面に保護膜を形成した後に、ベース基板に感光性レジスト膜と塗布する。この感光性レジストの塗布の場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、保護膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。
感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いてSOI層にミラーを形成した部分の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄をする。そして、BOX(Buried Oxide)層を形成するシリコン酸化膜をエッチング除去する。
その後、SOI層パターンを保護している有機膜をエッチング除去して、可動可能な構造体を形成する。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、SOI層の保護膜をエッチング除去する。後者のようにウエハ上に複数のチップを形成する方が一般的である。
以上のようにしてミラーチップを形成した後に、ステンシルマスクを使用してミラー基板200のミラー面と接合面の所望の場所のみに金属を堆積する。マイクロミラー装置を通信用デバイスとして使用する場合には、使用する赤外線の反射率を大きくするために金あるいはアルミニウムなどの金属を堆積する。構造体の表面がシリコンの場合には、堆積する金やアルミニウムのシリコンヘの密着性を向上させるために、チタンあるいはクロムなどの密着性向上層を利用する場合がある。ダイシング加工の前にミラー上に公知のリソグラフィ技術を使用して金属パターンを形成しておいても良い。このような方法により、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が形成される。
次に、電極基板301の製造方法について説明する。まず、ベースとなる基板の表面に熱酸化膜を形成する。この熱酸化膜の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスのシード層として利用する。その後レジストを塗布して、公知のリソグラフィ技術を使用して駆動電極配線201と周辺電極配線202と下部電極103を形成するために必要なレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクに金属、例えば金をメッキ成長させる。
駆動電極配線201と周辺電極配線202と下部電極103の形成後、マスクとしたレジストを剥離して、洗浄後、CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより絶縁膜104として、例えばシリコン酸化膜を堆積する。この絶縁膜104に公知のリソグラフィ技術とエッチング技術を使用して層間垂直配線108,109を形成し、その後メッキプロセスで駆動電極101と周辺電極102を形成する。さらに周辺電極102上にミラー230と駆動電極101間のギャップを形成するための凸部360a,360bを形成する。不要な部分のシード層は適宜エッチング除去する工程で除去する。このような方法により、電極基板301が形成される。
最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行なったのち、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、390℃で加熱によりはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。なお、ここでの接合は、はんだを使用した接合に限るものではなく、Agペーストを使用した接合でもよいし、Au−Auを使用した超音波接合でもよいし、AuSnを使用した共晶接合でもよい。以上により、マイクロミラー装置が完成する。
本実施例に係るマイクロミラー装置では、駆動電極配線201、周辺電極配線202、駆動電極101、周辺電極102および下部電極103の材料に金(Au)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの電極の材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)などが使用できるし、またこれらの材料の化合物を使用してもよい。また、下部電極103に半導体を用いてもよい。
[第2実施例]
図7は、本発明の第2実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図であり、図1の点線で囲んだ部分に相当する領域を拡大した断面図である。なお、この図7のマイクロミラー装置を1次元的、あるいは2次元的に複数配設したものがミラーアレイである。
本実施例は、第1実施例に係るマイクロミラー装置のうち、ギャップ105の領域に露出している電荷蓄積領域である絶縁膜104の一部あるいはすべてを除去したものであり、それ以外の構成は第1実施例に記載したものと同じである。
このように、本実施例に係るマイクロミラー装置では、ギャップ105の領域の下部の絶縁膜104を除去し、下部電極103が空間に露出するようにした。このような構造にすることにより、空間に露出する絶縁膜104の面積をより低減できるため、第1実施例に比べてより効果的にミラー傾斜角度のドリフトを低減することができる。なお、絶縁膜104の一部を下部電極103上に残しておいてもよい。
本実施例に係るマイクロミラー装置においても、図6に示した特性が実験にて得られた(結果は不図示)。すなわち、下部電極を用いず、空間に露出した絶縁膜104(電荷蓄積領域106)を除去していない従来構造のマイクロミラー装置では、駆動電極に印加している電圧が一定であっても、ミラー230の傾斜角度は徐々に変化(増加)した。これに対して、本実施例に係るマイクロミラー装置では、駆動電極101に印加された電圧が一定であれば、時間が経過してもミラー230の傾斜角度は変化しなかった。すなわち、ドリフトを低減できることが実証できた。
[第3実施例]
図8は本発明の第3実施例に係るマイクロミラー装置の電極配置を示す平面図であり、駆動電極101および周辺電極102を透過してその下層にある下部電極103および駆動電極配線201を眺めた平面図である。ただし、図8では、周辺電極配線202の記載は省略している。
第1実施例では、下部電極103を円環状の下部電極103aと十字状の下部電極103bとから構成したが、本実施例では、下部電極103aを廃し、下部電極103bのみとしている。また、第1実施例において駆動電極101よりも小さくしていた駆動電極配線201aの面積を大きくし、下部電極103aがあった領域まで配置するようにしている。下部電極103bは、4つの扇形の駆動電極配線201aに挟まれた十字状の領域において、駆動電極配線201aと接しないように十字状に形成されている。
第1実施例で説明したとおり、下部電極103a,103bは接地電位とすることが望ましい。しかしながら、下部電極103aを接地電位にすると、ミラー230を駆動する際の回転力(トルク)を減少させる作用が大きくなるので、この回転力の減少分だけ、駆動電極101に与える駆動電圧を高くしなければならないという問題がある。そこで、本実施例では、このような問題を回避するために、下部電極103aを廃し、下部電極103bのみとしている。下部電極103bは、下部電極103aに比して、ミラー230を駆動する際の回転力にそれほど大きくは作用しないので、下部電極103bを接地電位にしても、回転力が大きく損なわれることはない。
[第4実施例]
次に、本発明の第4実施例について説明する。図9は、本発明の第4実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図を示している。なお、この図9のマイクロミラー装置を1次元的、あるいは2次元的に複数配設したものがミラーアレイである。本実施例のマイクロミラー装置は、ミラーが形成された第1の基板であるミラー基板200と、電極が形成された第2の基板である電極基板301とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板200は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置のミラー基板とほぼ同様な構成であり、好ましくはSOI(Silicon-On-Insulator)基板を用いて形成されるものである。ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部(不図示)により枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された可動部材である平面視略円形のミラー230とを有する。可動枠220は、一対の可動枠連結部(不図示)を通る可動枠回動軸を軸として回動することができる。同様に、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を軸として回動することができる。可動枠回動軸とミラー回動軸とは互いに直交しており、結果として、ミラー230は直交する2軸で回動する。
電極基板301は、例えば単結晶シリコンからなる板状の基部310と、基部310の表面(上面)から突出し、対向するミラー基板200と接合するための凸部360a,360bとを有する。電極基板301の凸部360a,360bが設けられた面には、絶縁膜107が形成される。この絶縁膜107は、後述する駆動電極配線201および周辺電極配線202のそれぞれが、シリコンなどの半導体からなる基部310を介して電気的に短絡することを防止する働きをする。
電極基板301にシリコン基板を用いる場合、絶縁膜107には、シリコン酸化膜を使用するのが一般的である。加工されていないベアのシリコン基板を必要に応じて洗浄して表面を清浄にした後に、熱酸化炉内で熱酸化させることにより、絶縁膜107が形成される。シリコン酸化膜の形成方法のうち熱酸化法で形成された熱酸化膜は、気相化学成長法(CVD法)などを用いて堆積したシリコン酸化膜などに比べて品質が良く、耐電圧特性に優れていることが知られている。
絶縁膜107の上面には、駆動電極101に電圧を供給するための駆動電極配線201と、周辺電極102に所定の電位を供給するための周辺電極配線202が形成されている。駆動電極配線201と周辺電極配線202は、電極基板301の同じ層上に作成されるので、同時に形成することができる。言い換えると、お互いに交差することはできない配置となっている。そのため、配線の引き回し方法に工夫が必要である。駆動電極配線201と周辺電極配線202は、図示していないボンディングパッドを介して、マイクロミラー装置あるいはミラーアレイを実装するパッケージの所定のピンに接続される。パッケージのピンに所定の直流電圧を印加すると、そのピンに一対一で対応する駆動電極101に電圧が印加されるため、ミラー230を回動させることができる。駆動電極配線201および周辺電極配線202を形成するには、例えば絶縁膜107上の金属薄膜を公知のエッチング技術を用いて加工すればよい。
さらに、絶縁膜107の上面には、駆動電極配線201と周辺電極配線202を覆うように誘電体からなる絶縁膜104が形成されている。絶縁膜104の上面には、対向するミラー基板200のミラー230側から見て、電極基板301の表面にシリコン酸化膜などの絶縁膜104が露出しないように、周辺電極102が形成されている。周辺電極102を形成するには、例えば絶縁膜104上の金属薄膜を公知のエッチング技術を用いて加工すればよい。
さらに、周辺電極102の上面には、周辺電極102の一部を覆うように誘電体からなる絶縁膜1001が形成されている。絶縁膜1001の上面には、対向するミラー基板200のミラー230を駆動するための駆動電極101が形成されている。絶縁膜1001は、対向するミラー基板200のミラー230側から見ると、駆動電極101にほぼ覆われており、一部を除いてミラー230側から見ることはできない。より望ましくは、図9に示すように駆動電極101の周縁部の下にある絶縁膜1001を取り除いておいた方がよい。
駆動電極101と駆動電極配線201とは、絶縁膜104および絶縁膜1001を貫通する層間垂直配線108を介して接続される。また、周辺電極102と周辺電極配線202とは、絶縁膜104を貫通する層間垂直配線109を介して接続される。なお、層間垂直配線のために形成した垂直孔をビアホール、この垂直孔に金属を充填してできた層間垂直配線をビアと呼ぶこともある。
上述したようなミラー基板200と電極基板301とは、ミラー230とこのミラー230に対応する駆動電極101とが対向配置されるように、枠部210の下面と凸部360a,360bの上面とを接合することにより、図9に示すようなマイクロミラー装置が構成される。
以上述べたように、駆動安定化電極である周辺電極102は、駆動電極101が設けられる駆動電極層(以下、第1の導電層と呼ぶ)と、駆動電極配線201および周辺電極配線202が設けられる電極配線層(以下、第3の導電層と呼ぶ)との中間の層(以下、第2の導電層と呼ぶ)に形成され、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる絶縁膜107あるいは絶縁膜104の露出を避ける役割を担っている。駆動電極101は、ミラー230の駆動という役割と共に、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる絶縁膜1001の露出を避ける役割をも担っている。
本実施例では、ミラー230側から電極基板301を眺めた場合、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる誘電体が殆ど露出していないので、絶縁膜104,107,1001が帯電したとしても、これらの帯電がミラー230と駆動電極101との間に形成される電界へ影響を及ぼすことはなく、ミラー傾斜角度のドリフトを抑制することができる。また、本実施例では、周辺電極102の下層に駆動電極配線201および周辺電極配線202を設けたので、これらの配線201,202から放射される電界がミラー230と駆動電極101との間に形成される電界へ影響を及ぼすことはなく、より正確なミラー傾斜角度の制御が可能になる。
図10は駆動電極101を上から見た平面図、図11は周辺電極102が形成される第2の導電層の平面図、図12は駆動電極配線201および周辺電極配線202が形成される第3の導電層の平面図、図13は絶縁膜1001が形成される層の平面図、図14は絶縁膜104が形成される層の平面図、図15は駆動電極101以下の各層を透過して眺めた平面図である。
図11に示すように、周辺電極102は、電極基板301の上面をほぼ覆い尽くすように形成されることが望ましい。このような構造にすることにより、絶縁膜104の露出を限りなく少なくすることができる。
また、層間垂直配線108を設けるために、層間垂直配線108と周辺電極102との間に絶縁のための間隙を設ける必要があるので、図11に示した第2の導電層のレベルにおいては、層間垂直配線108近傍の箇所で絶縁膜104が露出していることになる。しかしながら、層間垂直配線108は駆動電極101の直下に配置されるものであるから、第2の導電層のレベルで絶縁膜104が露出していたとしても、この絶縁膜104は駆動電極101で覆われることになり、ミラー230側から電極基板301を眺めたときに絶縁膜104が露出することはない。したがって、周辺電極102から露出した絶縁膜104がミラー傾斜角度のドリフトを誘起することはない。
これまでは、図9を参照して本実施例に係るマイクロミラー装置の構造を説明してきたが、以上の構造に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が認められることは言うまでもない。以下に、マイクロミラー装置に係る種々の応用例を説明する。
駆動電極101の形状は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置と同様に、ミラー230と同心の円を4つに分割した扇形であってもよい。また、駆動電極101は、従来と同様に、基部310の上面に設けられた突出部の上面に形成されるようにしてもよい。
周辺電極102は電極基板301の上面をほぼ覆い尽くすように形成されることが望ましいと述べたが、ミラー230のドリフトにほとんど影響を及ぼさない部分においては、削除されていても構わない。例えば、凸部360a,360b近傍であってミラー230から遠い位置については、周辺電極102が存在しなくても構わない。
周辺電極102には、層間垂直配線109を介して接続された周辺電極配線202から所定の電位が供給されるが、この所定の電位は、ミラー230と同電位であってもよい。複数の駆動電極101に異なる電圧を印加する場合があるので、周辺電極102には、より望ましくは接地電位を供給すればよい。
また、図9のマイクロミラー装置では、駆動電極配線201と周辺電極配線202は、駆動電極101と周辺電極102とが形成される層とは異なる層に形成されているが、周辺電極102と同じ層に配置される箇所があってもよい。ただし、駆動電極配線201や周辺電極配線202で発生する電界がミラー230の駆動に作用することを防ぐ点、および絶縁膜をもれなく覆い隠す点においては、駆動電極101と周辺電極102の下層で配線201,202を引き回す構造のほうが望ましい。なお、ミラー230の駆動に与える影響力は、周辺電極配線202よりも駆動電極配線201の方が大きい。
図9のマイクロミラー装置のミラー230は、ミラー230と駆動電極101との間の電位差により発生する静電引力により回動する。例えば、ミラー230を接地し、駆動電極配線201を介して駆動電極101に所定の正の電圧(駆動電圧)を与えることにより、ミラー230を静電引力で吸引し、ミラー230を任意の方向へ回動させることができる。このとき、ミラー230を所望の方向へ回動させるには、4つの駆動電極101に異なる駆動電圧を印加し、4つの駆動電極101間に電位差を生じさせるようにすればよい。
ミラー230は、この静電引力とミラー230を支持しているばね(ミラー連結部221a,221bと図示しない可動枠連結部)の復元力がつりあった状態で静止する。ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部のばね定数が一定とみなせる場合には、理論的には、駆動電極に与える駆動電圧が一定であれば、ミラー230の傾斜角度は一意に決定される。
静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置では、駆動電圧が印加される電極間の距離(ここでは、ミラー230と駆動電極101間の距離)は、一般的には数百ミクロンから数ミクロン程度であり、この隙間に数100Vの電圧が印加される。例えば、電極間距離が10ミクロンのデバイスに100Vの電圧を印加すると、105V/cmという大きな電界を発生する。このような大きな電界が与えられた領域近傍に、誘電体膜などの絶縁膜が配置されていると、この絶縁膜が帯電することがある。そして、この帯電によって新たな電界が発生し、帯電による電界によってミラー230の傾斜角度が時間と共に変動する現象が現れる。
絶縁膜が帯電する原因は詳細には明らかになっていない。しかし、製造時の影響で絶縁膜に電荷を蓄積できる電荷トラップセンタが形成され、ミラー230の駆動時に電界が印加されることにより、絶縁膜の両電極からキャリアの注入が発生し、電荷トラップセンタに電荷が蓄積されるためである、と考えられている。一般に、絶縁膜に高い電界がかかるほど電荷が蓄積されやすくなるとされている。電荷の蓄積と電荷の放出との平衡状態は時間と共に変化し、電界強度は時間と共に変化する。その結果、ミラー230と駆動電極101間に形成された電界強度も時間と共に変化し、ミラー傾斜角度のドリフトとして観測される。
ミラー傾斜角度のドリフトの原因となるのは、絶縁膜104がミラー基板200と電極基板301との間の領域で剥き出しとなっている部分、特にミラー230の下部に存在する部分である。本実施例では、駆動電極101とは別層で周辺電極102を配置して、周辺電極102を駆動電極101の下部に潜り込ませた構造を形成する。このような電極配置を採用することによって、駆動電極101と周辺電極102との間のギャップ部分が水平に広がらずに、鉛直に広がるようにすることが可能となる。さらには、駆動電極101をその下部の絶縁膜1001から少し張り出した形状に加工することで、絶縁膜1001をミラー230からより効果的に隠す構造を実現できる。
駆動電極101に駆動電圧を印加し、ミラー230と周辺電極102に接地電圧を印加すると、ミラー230は駆動電圧で発生する静電引力とばねの復元力がつりあった角度に維持される。駆動電極101と周辺電極102との間で絶縁膜1001に電荷の注入があったとしても、ミラー230と駆動電極101間に形成されている電界への影響は小さく抑制できているので、結果としてミラー傾斜角度のドリフトを低減できる。
次に、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。なお、本発明は下記の製造方法に限定されるものではなく、代表的な製造方法を説明しているに過ぎない。
まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。ミラー基板200は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bを形成する。
このミラー基板200の製造工程においては、最初にスピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIE(Deep Reactive Ion Etching )エッチング技術を用いてSOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bなどを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
その後、シリコンのベース基板を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。この有機膜としては、感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この有機膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。SOI面に保護膜を形成した後に、ベース基板に感光性レジストを塗布する。感光性レジストを塗布する場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、保護膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。
感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー230等を形成した部分の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄な表面を露出させるために洗浄する。そして、BOX(Buried Oxide)層を形成するシリコン酸化膜をエッチング除去する。
その後、SOI層パターンを保護している有機膜をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、SOI層の保護膜をエッチング除去する。ウエハ上にチップを1個だけ形成する場合よりも、ウエハ上に複数のチップを形成する場合の方が一般的である。
以上のようにしてミラーチップを形成した後に、ステンシルマスクを使用してミラー基板200のミラー面と接合面の所望の場所のみに金属を堆積する。マイクロミラー装置を通信用デバイスとして使用する場合には、使用する赤外線の反射率を大きくするために金あるいはアルミニウムなどの赤外線をよく反射する金属を堆積する。構造体の表面がシリコンの場合には、堆積する金やアルミニウムのシリコンヘの密着性を向上させるために、チタンあるいはクロムなどの密着性向上層を利用する場合がある。ダイシング加工の前にミラー上に公知のリソグラフィ技術を使用して金属パターンを形成しておいても良い。以上のような方法により、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が形成される。
次に、電極基板301の製造方法について説明する。まず、ベースとなる基部310の表面に熱酸化膜からなる絶縁膜107を形成する。この絶縁膜107の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第1シード層として利用する。その後レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、駆動電極配線201および周辺電極配線202を形成するために必要なレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクに金属、例えば金をメッキ成長させる。
メッキ成長によって絶縁膜107上に駆動電極配線201と周辺電極配線202を形成した後、マスクとしたレジストを剥離して、洗浄後、不要な第1シード層部分をエッチング除去する。続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜104を、絶縁膜107上の駆動電極配線201と周辺電極配線202を覆うように堆積する。このとき、絶縁膜104の表面の平坦性が悪い場合には絶縁膜104を堆積した後に平坦化工程を実施する。
絶縁膜104上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術を使用して、層間垂直配線108,109形成用のレジストパターンを形成する。このレジストをマスクにして、公知のエッチング技術を使用して絶縁膜104をエッチングし、駆動電極配線201に届く深さまで層間垂直配線108形成用の垂直孔を形成すると共に、周辺電極配線202に届く深さまで層間垂直配線109形成用の垂直孔を形成する。この垂直孔形成後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。
次に、絶縁膜104の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第2シード層として利用する。レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、周辺電極102と層間垂直配線108,109を形成するためのレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクにしてメッキ法により、周辺電極102と周辺電極配線202とを接続するための層間垂直配線109、周辺電極102、駆動電極101と駆動電極配線201とを接続するための層間垂直配線108を形成する。なお、ここでは、層間垂直配線108は絶縁膜104から突出する途中段階まで形成されたことになる。そして、レジストを剥離した後に、不要な第2シード層をエッチング除去し、再度洗浄して表面を清浄な状態にする。
次に、CVD法などにより、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜1001を試料表面全面に堆積する。絶縁膜1001の表面の平坦性が悪い場合には絶縁膜1001を堆積した後に平坦化工程を実施する。絶縁膜1001上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術で層間垂直配線108形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、公知のエッチング技術を使用して絶縁膜1001をエッチングし、途中段階の層間垂直配線108に届く深さまで層間垂直配線108形成用の垂直孔を形成する。この垂直孔形成後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。
次に、絶縁膜1001の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第3シード層として利用する。レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、駆動電極101を形成するためのレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクにしてメッキ法により、途中段階から駆動電極101に接続される高さまでの層間垂直配線108、および駆動電極101を形成する。そして、レジストを剥離した後に、不要な第3シード層をエッチング除去し、洗浄して表面を清浄な状態にする。
さらに、駆動電極101および絶縁膜1001上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術を使用して、絶縁膜1001をエッチング除去するためのレジストパターンを形成する。図16はこのときのレジストパターンを示す平面図である。1002は、レジストでマスクされる領域を示している。このようなレジストパターンをマスクにして、絶縁膜1001をエッチング除去すると、4つの扇形の駆動電極101の領域とこれらの駆動電極101に挟まれた十字状の領域とを除く部分の絶縁膜1001がエッチング除去される。
ドライエッチング法を用いる場合には、周辺電極102がエッチングされないか、あるいは周辺電極102が十分な厚さで残るようにエッチング条件を決定する。また、逆に、エッチング条件と実現したい周辺電極102の膜厚の関係から、メッキ法で形成する初期の周辺電極102の堆積厚さを厚めにしておいてもよい。
絶縁膜1001のエッチング除去によって周辺電極102が露出した後に、フッ酸あるいは緩衝フッ酸を用いたウェットプロセスで絶緑膜1001の一部をさらにエッチング除去する。この工程によって、駆動電極101の周縁部の下に存在する絶縁膜1001が、基板表面に沿った方向にエッチングされるので、駆動電極101が絶縁膜1001の端部からせり出した構造を実現できる。絶縁膜1001をドライエッチング法でエッチングしないで、最初からウェットエッチングしてもよいことは言うまでもない。絶縁膜1001のエッチング除去後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。
さらに、厚いレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術で凸部360a,360b形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、凸部360a,360bをメッキ法で形成し、その後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。以上の方法により、電極基板301が形成される。
電極基板301の形成例を上述したが、層間垂直配線の形成と電極構造の形成は別々の工程にしてもよい。また、電気的な導通状態を確実に確保できるのであれば、第2シード層と第3シード層は堆積しないで電極基板301を形成してもよい。また、駆動電極101上にメッキ法で金属を堆積して、テラス状の表面形状を持った駆動電極構造を形成してもよい。
最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行った後、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、加熱することによってはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。これにより、マイクロミラー装置が完成する。
[第5実施例]
次に、本発明の第5実施例について説明する。図17は本発明の第5実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図である。
第4実施例では、図15に示すように、4つの扇形の駆動電極101に挟まれた十字状の領域で絶縁膜1001が露出している。この露出している絶縁膜1001が帯電することによるミラー傾斜角度のドリフトへの影響は少ないが、ミラー230側から見て絶縁膜1001が完全に露出していない構造にした方がより望ましいことは言うまでもない。本実施例は、このように絶縁膜1001が完全に露出しない構造を実現するものである。
本実施例のマイクロミラー装置の製造方法は、第4実施例とほぼ同様であるが、絶縁膜1001をエッチング除去する際のレジストパターンの形状が異なる。図18は本実施例において絶縁膜1001をエッチング除去するためのレジストパターンを示す平面図である。1003は、レジストでマスクされる領域を示している。この1003の領域は、駆動電極101の領域と同じである。このようなレジストパターンをマスクにして、絶縁膜1001をエッチング除去すると、駆動電極101の領域を除く部分の絶縁膜1001がエッチング除去され、さらに駆動電極101のエッジの下に存在する絶縁膜1001がエッチング除去される。なお、駆動電極101をマスクにして絶縁膜1001をエッチングしてもよい。
図19は駆動電極101以下の各層を透過して眺めた平面図である。以上のようにして、本実施例では、駆動電極101が絶縁膜1001の端部からせり出した構造を実現することができ、ミラー230側から見て絶縁膜1001が完全に露出していない構造を実現することができる。
第4実施例、第5実施例に係るマイクロミラー装置では、駆動電極配線201、周辺電極配線202、駆動電極101、周辺電極102および凸部360a,360bの材料に金(Au)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの配線や電極、凸部に用いる導電性材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)などが使用できるし、またこれらの材料の化合物を使用してもよい。また、シリコンなどの半導体材料を用いてもよい。
また、第4実施例、第5実施例では、メッキ法を利用して導電性材料の構造を形成しているが、導電膜を所望の厚さで堆積できるのであれば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの公知の膜堆積技術を使用しても問題ない。
また、第4実施例、第5実施例では、直交する2軸に対して回動可能なミラーを備えるマイクロミラー装置について述べてきたが、それに限定されるものではなく、本発明は、可動部材(可動電極)と駆動電極(固定電極)とを備え、可動部材と駆動電極間の電位差により発生する静電引力によって可動部材を駆動可能とする静電駆動型MEMSデバイス全般に実施できることは言うまでもない。
[第6実施例]
次に、本発明の第6実施例について、図20および図21を用いて説明する。図20は、本発明の第6実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の構成を示す断面図である。また、図21は、本第6実施例におけるマイクロミラー装置の一部構成を示す斜視図である。本実施例では、1つの回動軸を備えて回動可能なミラー1030を備えたマイクロミラー装置を例に説明する。
このマイクロミラー装置は、ミラー1030が形成された第1の基板であるミラー基板1000と、ミラー1030を駆動する駆動電極が形成された第2の基板である電極基板1200とが、平行に配設された構造を有している。
ミラー基板1000は、平面視円形の開口を有する板状の支持枠1010を備える。また、一対のミラー連結部1020a,1020bにより支持枠1010の開口内に連結して配設された平面視円形のミラー1030を備える。支持枠1010、ミラー連結部1020a,1020b、およびミラー1030は、例えば、単結晶シリコンで一体形成されている。また、支持枠1010の上面には、支持枠1010およびミラー1030を取り囲むような補強枠1040が形成されている。補強枠1040は、絶縁層1050を介して支持枠1010に接続している。
一対のミラー連結部1020a,1020bは、例えばつづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、支持枠1010とミラー1030とを連結している。ミラー1030は、一対のミラー連結部1020a,1020bを通るミラー回動軸を軸として回動することができる。
電極基板1200は、板状の基部1210と、この周辺部に並設された凸部1220を備えている。また、凸部1220の内側の領域の基部1210の上には、対向するミラー1030と同心の円内に2つの駆動電極1230a,1230bが形成されている。また、基部1210の上面には、駆動電極1230a,1230bの周囲に、配線1240が形成されており、配線1240は、図示しない領域において、図示しない引き出し線を介して駆動電極1230a,1230bに接続されている。これらの駆動電極および配線は、絶縁層1250の上に形成されている。
以上のようなミラー基板1000および電極基板1200は、ミラー1030およびミラー1030に対応する駆動電極1230a,1230bが対向配置されるように、支持枠1010の下面および凸部1220の上面を接合することにより、一体のマイクロミラー装置を構成する。このようなマイクロミラー装置においては、例えば、ミラー1030を電気的に接地し、駆動電極1230a,1230bに正の電圧(駆動電圧)を印加し、かつ駆動電極1230a,1230bの間に非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー1030を静電引力で電極基板1200の側に吸引し、ミラー1030を、ミラー回動軸を軸として任意の角度に回動させることができる。
また、本実施例におけるマイクロミラー装置においては、ミラー1030の両面に、互いに同じ形状とされた金属膜1310および金属膜1320が形成されている。金属膜1310,1320は、例えば、アルミニウムやAuなどの金属から構成された膜である。本マイクロミラー装置が対象とする光が赤外線の場合、赤外線の反射率から考慮すると、Auを用いた方がよい。また、対象とする光が、例えば可視域の場合、アルミニウムであってもよい。
本実施例において、金属膜1310は、ミラー1030における反射面となる。また、金属膜1320は、金属膜1310を形成したことによるミラー1030の反りを抑制するために形成されている。
加えて、金属膜1310および金属膜1320は、ミラー1030より小さい相似形に形成され、ミラー1030と同心に配置されている。例えば、金属膜1310および金属膜1320は、ミラー1030と同じ円心とされてミラー1030より半径(直径)の小さい円形に形成されている。このため、ミラー1030は、周縁部に金属膜が形成されていない領域を備える状態となっている。
このように構成した本実施例におけるマイクロミラー装置によれば、ミラー1030の端部と駆動電極1230a,1230bとが接触した場合、駆動電極1230a,1230bと金属膜1320とが接触することがない。例えば、図22の断面図に示すように、一対のミラー連結部1020a,1020bを通るミラー回動軸1030aを軸とした回転により、駆動電極1230a側の部分のミラー1030の端部が駆動電極1230aに接触しても、金属膜1320が駆動電極1230aに接触することがない。このため、表面に駆動電極と同じ金属の膜が形成されたミラーおよび駆動電極において、制御不能になり、衝突前に印加電圧をゼロにしてミラーと駆動電極とを同電位にして衝突させた場合に、固着が防止できるようになる。
ここで、上述した金属膜1320と駆動電極1230a,1230bとの接触を防ぐという観点では、金属膜1320がミラー1030と相似形に形成されている必要はない。回動するミラー1030が駆動電極1230a,1230bと接触する箇所を考慮し、この接触する箇所からはじまる所定の領域以外の全域に、金属膜1320が形成されていてもよい。例えば、ミラー連結部1020a,1020bに連結する領域においては、ミラー1030の端部にまで金属膜1320が形成されていてもよい。
しかしながら、このように形成された金属膜1320は、ミラー1030の円心(中心)に対して360°の方向に、ミラー1030に対して均等な状態とはならず、金属膜1320が形成されることにより発生する応力が、均等に発生する状態とならない。このような状態では、ミラー1030の平坦性を維持することが容易ではなくなる。例えば、温度変化によるミラー1030と金属膜1310および金属膜1320との間における不均等な応力の発生により、ミラー1030がゆがむなどの問題が発生する。
これに対し、例えば円形のミラー1030に対し、相似形である円形の金属膜1320および金属膜1310とし、また、これらがミラー1030と同心とされているようにすることで、応力の発生が均等になり、ミラー1030の平坦性が容易に維持できるようになる。
次に、本実施例におけるマイクロミラー装置の製造について簡単に説明する。はじめに、ミラー基板1000の製造方法について簡単に説明する。まず、SOI基板を用意し、このSOI基板のSOI層を、公知のリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングし、支持枠1010、ミラー連結部1020a,1020b、およびミラー1030を形成する。
例えば、感光性レジストをSOI層の上にスピンコーティング法により塗布し、所望の層厚の感光性レジスト層を形成する。次に、上述したミラーやミラー連結部となるパターンに応じた形状の遮光体パターンを有するレチクル(フォトマスク)を、感光性レジスト層が形成されたSOI基板に位置合わせをして保持する。この状態で、感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射し、遮光体パターンの投影像が感光性レジスト層に投影されるようにする。所望のレジストパターンが所望の寸法に形成されるように、決定された照射時間で光を照射する。この露光により、遮光体パターンの潜像が、感光性レジスト層に形成される。
このようにして潜像が形成された後、所望のレジストパターンが所望の寸法に形成されるように、決定された時間で現像処理を行う。この現像処理により、例えば、露光部分が現像液に溶解して未露光部分がレジストパターンとして残る。この後、現像の停止などの液処理を施した後、SOI基板を乾燥させ、加えて加熱処理によりレジストパターンを硬化させる。
次に、上述したことにより形成したレジストパターンをマスクとし、SOI層を選択的にエッチング除去する。例えば、よく知られたシリコンの深掘加工技術であるDRIEエッチング技術により、上記レジストパターンをマスクとしてSOI層を、埋め込み絶縁層に到達する深さまでエッチングする。このエッチングにより、SOI層に、支持枠1010、ミラー連結部1020a,1020b、およびミラー1030が形成される。
このパターニングにおいて、無機材料よりなるエッチング中間膜を利用し、上記レジストパターンの形状を一度エッチング中間膜に転写してから、このエッチング中間膜に形成したパターンをマスクに、SOI層をエッチングしてもよい。なお、いずれにおいても、ミラーや連結部となるパターンをSOI層に形成した後、エッチングマスクに用いたマスク層は除去する。例えば、レジストパターンは、酸素プラズマなどを用いた灰化処理により除去することができる。また、このようにしてマスク層を除去した後、清浄なシリコン面を露出させるために洗浄を行う。
次に、SOI基板の基体部を加工することで、補強枠1040を形成する。例えば、まず、ミラーや連結部となるパターンが形成されたSOI層の表面に保護用の有機膜を形成する。この有機膜としては、感光性レジストを用いてもよく、また、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている材料を用いてもよい。この有機膜は、最終的に除去することになるため、剥離性に富み、また容易に除去可能な膜を利用することが望ましい。
以上のようにしてSOI層の表面に保護のための有機膜を形成した後、基体部の表面(SOI基板の裏面)に感光性レジストを塗布して感光性レジスト膜を形成する。この感光性レジスト膜の形成では、SOI層の側が塗布装置の基板台に対向配置されることになるが、保護のための有機膜が形成されているので、直接に接触することがなく、また、形成されている各部分が、破損することがない。
次に、補強枠1040の開口部となるパターンに応じた形状の遮光体パターンを有するレチクル(フォトマスク)を、感光性レジスト層が形成されたSOI基板に位置合わせをして保持する。この状態で、感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射し、遮光体パターンの投影像が感光性レジスト層に投影されるようにする。所望のレジストパターンが所望の寸法に形成されるように、決定された照射時間で光を照射する。この露光により、遮光体パターンの潜像が、感光性レジスト層に形成される。
このようにして潜像が形成された後、例えば枠状のレジストパターンが所望の寸法に形成されるように、決定された時間で現像処理を行う。この現像処理により、例えば、露光部分が現像液に溶解して未露光部分が枠状のレジストパターンとして残る。この後、現像の停止などの液処理を施した後、SOI基板を乾燥させ、加えて加熱処理によりレジストパターンを硬化させる。
以上のようにして、補強枠1040を形成するためのレジストパターンが形成された後、例えば、前述同様のDRIEエッチング技術により、基体部を選択的にエッチング除去する。このエッチングにおいても、上記レジストパターンをマスクとし、基体部を埋め込み絶縁層に到達する深さまでエッチングする。このエッチングにより、基体部に開口部が形成され、上述したミラーや可動枠などの部分に対応する領域に開口部を備える補強枠1040が形成される。また、選択的に埋め込み絶縁層をエッチング除去し、補強枠1040の側に支持枠1010の一部、ミラー連結部1020a,1020b、およびミラー1030などを露出させる。このエッチングは、例えば、よく知られた緩衝フッ酸(BHF)を用いたウエット処理や、公知のドライエッチングにより行えばよい。
これらのパターニングにおいて、無機材料よりなるエッチング中間膜を利用し、上記レジストパターンの形状を一度エッチング中間膜に転写してから、このエッチング中間膜に形成したパターンをマスクに、基体部(および埋め込み絶縁層)をエッチングしてもよい。なお、いずれにおいても、補強枠1040となるパターンを基体部に形成し、埋め込み絶縁層を除去した後、エッチングマスクに用いたマスク層は除去する。例えば、レジストパターンは、酸素プラズマなどを用いた灰化処理により除去することができる。また、このようにしてマスク層を除去した後、清浄なシリコン面を露出させるために洗浄を行う。
以上のように補強枠1040が形成された後、SOI層の表面を保護している有機膜を除去することで、ミラー1030が回動可能な状態とする。なお、SOI基板に複数のマイクロミラー装置を形成する場合、SOI基板に形成された各マイクロミラー装置の部分となるミラー基板チップを各々切り離すことになる。この場合、各チップに切り離した後、上述した有機膜(保護膜)を除去する。
以上のようにしてミラー基板1000を形成した後、ミラー1030の両面に金属膜1310および金属膜1320を形成する。これらは、例えば、収束イオンビームデポジション法により、選択的にミラー1030の中心部からミラー1030の半径よりも小さな距離の領域のみに、目的とする金属材料を堆積することで形成すればよい。例えば、通信用に用いる場合、用いる信号光(赤外線)の反射率を大きくするために、金属材料としてAuを用いればよい。なお、Auを用いる場合、シリコンとの密着性を向上させるために、チタンやクロムなどの密着性向上層を利用してもよい。
また、ステンシルマスクを用いた蒸着法により、所望とする領域に金属を堆積して金属膜1310,1320を形成してもよい。また、いわゆるリフトオフ法により選択的に金属膜を形成することで、金属膜1310,1320を形成することもできる。リフトオフ法の場合、レジストパターンの形成が先となり、レジストパターンを形成した後に金属膜の形成をする。この後、レジストパターンを除去してレジストパターン上の金属膜を除去し、所望とする領域に金属膜を残すことで、金属膜1310,1320が形成できる。また、金属膜を形成してから、レジストパターンを用いて選択エッチングを行い、金属膜1310,1320が形成されるようにしてもよい。
なお、形成される金属膜の応力などを考慮し、ミラー1030の両面に同じ厚さの金属膜を同一の製造方法を用いて形成し、両面に形成される金属膜の応力が釣り合った状態を実現し、ミラー1030の変形を抑制することが望ましい。
ところで、上述したように、ミラー1030の内側の領域に限定して金属膜1310および金属膜1320を形成するため、例えば、ミラー連結部1020a,1020bには、金属膜が形成されることがない。ミラー連結部1020a,1020bは、ミラー1030の回動にともない、大きく変形する微細な構造体である。このようなミラー連結部1020a,1020bに、金属膜が付着していると、駆動電極1230a,1230bなどに制御信号を印加してミラー1030の傾斜角度を一定にするように制御していても、時間の経過とともにミラー連結部1020a,1020bの状態が変化し、ミラー1030の角度が変化する場合がある。これに対し、本実施例によれば、上述したように、ミラー1030以外の領域には金属膜が形成されることが抑制され、ミラー連結部1020a,1020bに金属が付着することが防がれる。この結果、上述したようなミラー連結部1020a,1020bにおける経時的な変化が抑制され、ミラー1030の位置制御が正確に行えるようになる。
[第7実施例]
次に、本発明の第7実施例について図23および図24を用いて説明する。図23は、本実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の一部構成を示す斜視図である。また、図24は、本実施例におけるマイクロミラー装置の一部構成(ミラー基板)を示す断面図である。本実施例では、2つの回動軸を備えて回動可能なミラー1030を備えたマイクロミラー装置を例に説明する。
このマイクロミラー装置は、前述した第6実施例と同様に、回動可能とされたミラー1030が形成されたミラー基板1000と、ミラー1030を駆動する駆動電極が形成された電極基板1200とが、平行に配設された構造を有している。なお、図23および図24では、電極基板を省略して図示していない。
ミラー基板1000は、板状の支持枠1010とリング状の可動枠1130と円板状のミラー1030とを備える。支持枠1010は、平面視略円形の開口を備える。可動枠1130は、支持枠1010の開口内に配置され、一対の連結部1120a,1120bにより支持枠1010に連結されている。また、可動枠1130も、平面視略円形の開口を備えている。ミラー1030は、可動枠1130の開口内に配置され、一対のミラー連結部1020a,1020bにより可動枠1130に連結されている。
また、支持枠1010の周辺部には、可動枠1130およびミラー1030を取り囲むような補強枠1040が形成されている。補強枠1040は、ミラー基板1000の全体を補強している。なお、補強枠1040は、絶縁層1050を介して支持枠1010に固定されている。また、ミラー1030の上面および裏面には、例えば、金やアルミニウムなどの金属よりなる金属膜1310および金属膜1320が形成されている。
連結部1120a,1120bは、可動枠1130の切り欠き内に設けられており、例えばつづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、支持枠1010と可動枠1130とを連結している。このように支持枠1010に連結された可動枠1130は、連結部1120a,1120bによって、これらを通る回動軸(可動枠回動軸)を中心に、回動可能に支持されている。
また、ミラー連結部1020a,1020bは、可動枠1130の切り欠き内に設けられており、例えばつづら折りの形状を有するトーションバネから構成され、可動枠1130とミラー1030とを連結している。このように可動枠1130に連結されたミラー1030は、ミラー連結部1020a,1020bを通る回動軸(ミラー回動軸)を中心に回動可能に支持されている。
なお、本実施例において、可動枠回動軸とミラー回動軸とは、互いに直交している。なお、連結部1120a,1120bおよびミラー連結部1020a,1020bは、つづら折りの形状に限らず、可動枠1130およびミラー1030の回動に適した形状とされていればよい。
上述したミラー基板1000は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板から構成さすることが可能である。SOI基板の埋め込み絶縁層上に備えられる単結晶シリコンよりなるSOI層をパターニングすることで、支持枠1010,連結部1120a,1120b,可動枠1130、ミラー連結部1020a,1020b、およびミラー1030を形成することができる。また、埋め込み絶縁層の下の基体部を加工することで、補強枠1040とすることができる。本実施例においては、絶縁層1050がSOI基板の埋め込み絶縁層に対応する。
なお、電極基板は、板状の基部の上に、対向するミラー1030と同心の円内に4つの駆動電極を備えており、他は、第6実施例における電極基板1200と同様である。また、駆動電極基板は、図61および図62を用いて説明した電極基板300と同様の構成としてもよい。
以上のようなミラー基板1000および電極基板は、ミラー1030およびミラー1030に対応する4つの駆動電極が対向配置されるように、支持枠1010の下面および凸部1220の上面を接合することにより、一体のマイクロミラー装置を構成する。このようなマイクロミラー装置においては、例えば、ミラー1030を電気的に接地し、4つの駆動電極に正の電圧(駆動電圧)を印加し、かつ4つの駆動電極の間に非対称な電位差を生じさせることにより、ミラー1030を静電引力で電極基板1200の側に吸引し、ミラー1030を任意の方向へ回動させることができる。
また、本実施例においても、ミラー1030の反りを抑制するために両面に形成された金属膜1310および金属膜1320は、ミラー1030より小さい相似形に形成され、ミラー1030と同心に配置されている。このため、ミラー1030は、周縁部に金属膜が形成されていない領域を備えるものとなる。
このように構成した本実施例におけるマイクロミラー装置においても、ミラー1030の端部と、電極基板における駆動電極とが接触した場合、駆動電極と金属膜1320とが接触することがない。このため、表面に駆動電極と同じ金属の膜が形成されたミラーと駆動電極との固着が防げるようになる。
次に、金属膜1320の外周端とミラー1030の外周端との間の幅について、図25を用いて説明する。ここでは、前述した第6実施例におけるマイクロミラー装置(マイクロミラー装置)を例に説明する。この金属膜が形成されない領域の幅dは、次に示すように算出すればよい。なお、前提として、ミラー1030は、平面視円形の板であり、この中心を通りミラー基板1000に平行なミラー回動軸1030aを軸として回動可能とされているものとする。
まず、図25に示すように、ミラー1030の外周部の金属膜がない領域の幅をd、ミラー1030の半径をr、ミラー1030が回動(傾斜)していない状態でのミラー1030と駆動電極1230aとの距離をg、金属膜1320の膜厚をwとする。
ミラー1030を回動させ、ミラー1030の外周端が駆動電極1230aに接触したとき、ミラー1030と駆動電極1230aとのなす角θは、「θ=arcsin(g/r)」となる。よって、ミラー130の周縁部で金属膜が形成されていない領域の内、駆動電極と最も離れている箇所の距離は、「d・sinθ=dg/r」となる。ここで、図25示す変数「x」は、金属膜1320と駆動電極1230aとの接触を防ぐためには、「x<d・sinθ=dg/r・・・(1)」という関係が満たされていればよい。
また、「x=w・cosθ=(w/r)(r2−g2)1/2・・・(2)」となるので、式(1)と式(2)より、「d>(w/g)(r2−g2)1/2・・・(3)」となる。
式(3)を満たすように、ミラー1030の外周部の金属膜を堆積させない領域を設計することで、金属膜1320と駆動電極1230a(駆動電極1230b)との接触が防げるようになる。例えば、ミラー1030の半径=800μm、g=100μm,金属膜1320の膜厚w=1μmとすると、幅dは、7.9μm以上にすればよい。言い換えると、円形に形成されている金属膜1320の半径を、ミラー1030の半径より7.9μm以上小さいものとすればよい。
なお、本発明は、反射機能を実現するとともに平坦性が保てるように、ミラー1030の両面に同じ形状に形成する金属膜1310および金属膜1320を、ミラー1030より小さい相似形としてミラー1030と同心に配置したところに特徴がある。このようにすることで、ミラー1030の外周端に金属膜が形成されていない状態とし、ミラー1030の端部と駆動電極1230a(駆動電極1230b)とが接触しても、駆動電極1230a(駆動電極1230b)に金属膜1320が接触しないようにしたことが重要であり、他の構成は発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更してもよいことは言うまでもない。
例えば、ミラー1030および金属膜1310,1320の平面形状は、円形に限るものではなく、楕円形および矩形などの他の形状であってもよい。ただし、ミラー1030の平坦性を維持する観点では、ミラー1030の平面形状は応力が均等に働く円形とした方がよい。また、前述したように、ミラーの動作は、一対のミラー連結部による1軸動作をするものであってもよく、また、これに可動枠および一対の連結部を加えて2軸動作をするものとしてもよい。
また、ミラー1030(ミラー基板1000)は、シリコンに限らず、炭化シリコン、窒化シリコンなど、ミラー基板1000を構成するために必要な機械的強度が得られる材料であれば、他の材料を用いるようにしてもよい。例えば、単結晶シリコンおよび炭化シリコンなどの、共有結合による結晶材料を用いれば、反応性が低く化学的に安定であり、比較的高い機械強度が得られるため、好適である。
また、前述したように、金属膜1310,1320にAuを用いる場合、チタンなどの密着性を向上させる下地の層(密着性向上層)をミラー1030に形成しておくことで、金属膜1310,1320とミラー1030との密着性を向上させることができるが、これは、金属膜1310,1320に白金を用いる場合も同様である。また、密着性向上層は、ミラー1030の全域に形成されていてもよい。例えば、ミラー基板1000の全域に密着性向上層を形成した状態で、前述したように、ミラー1030に金属膜1310および金属膜1320を形成すればよい。
ところで、上述したように密着性向上層を形成する場合、ミラー1030の端部の駆動電極と衝突する領域では、密着性向上層が露出していることになる。従って、この状態では、ミラー1030の端部が駆動電極に衝突すると、密着性向上層と駆動電極とが接触することになる。しかしながら、Auから構成されている駆動電極に、チタンからなる層が接触しても、固着して動作不良を起こすことがないため、問題とならない。問題となる固着は、駆動電極および駆動電極に接触する可能性のある部品が、いずれも金や白金などの延性・展性に富んだ材料から構成されている場合に発生するものと考えられるため、駆動電極に接触する部分が、これらの材料ではなければ、固着による問題は発生しにくいものと考えられる。
上述したように、密着性向上層を用いる場合、金属膜1310,1320と同じ領域にする必要はなく、金属膜1310,1320が形成されていない領域に露出させるように形成することが可能である。言い換えると、密着性向上層は、形成する領域に制限があまりない。このため、金属膜1310,1320の形成とは異なり、密着性向上層は、形成が容易である。また、可動枠を用いる場合も、可動枠には、金属膜1310,1320が形成されないので、可動枠と駆動電極とが接触した場合においても、これらの間の固着による問題が、ミラー1030の場合と同様に、抑制できる。
[第8実施例]
次に、本発明の第8実施例について説明する。図26は、本発明の第8実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図を示している。なお、この図26のマイクロミラー装置を1次元的、あるいは2次元的に複数配設したものがミラーアレイである。本実施例のマイクロミラー装置は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板301とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板200は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置のミラー基板とほぼ同様な構成である。ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部(不図示)により枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された可動部材である平面視略円形のミラー230とを有する。可動枠220は、一対の可動枠連結部(不図示)を通る可動枠回動軸を軸として回動することができる。同様に、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を軸として回動することができる。可動枠回動軸とミラー回動軸とは互いに直交しており、結果として、ミラー230は直交する2軸で回動する。なお、後述のように、ミラー230の表面には金属膜が形成されるが、図26では金属膜の記載を省略している。
電極基板301は、例えば単結晶シリコンからなる板状の基部310と、基部310の表面(上面)から突出し、対向するミラー基板200と接合するための凸部360a,360bとを有する。電極基板301の凸部360a,360bが設けられた面には、絶縁膜107が形成される。この絶縁膜107は、後述する駆動電極配線201が、シリコンなどの半導体からなる基部310を介して電気的に短絡することを防止する働きをする。
電極基板301にシリコン基板を用いる場合、絶縁膜107には、シリコン酸化膜を使用するのが一般的である。加工されていないベアのシリコン基板を必要に応じて洗浄して表面を清浄にした後に、熱酸化炉内で熱酸化させることにより、絶縁膜107が形成される。シリコン酸化膜の形成方法のうち熱酸化法で形成された熱酸化膜は、気相化学成長法(CVD法)などを用いて堆積したシリコン酸化膜などに比べて品質が良く、耐電圧特性に優れていることが知られている。
絶縁膜107の上面には、駆動電極101に電圧を供給するための駆動電極配線201が形成されている。駆動電極配線201は、図示していないボンディングパッドを介して、マイクロミラー装置あるいはミラーアレイを実装するパッケージの所定のピンに接続される。パッケージのピンに所定の直流電圧を印加すると、そのピンに一対一で対応する駆動電極101に電圧が印加されるため、ミラー230を回動させることができる。駆動電極配線201を形成するには、例えば絶縁膜107上の金属薄膜を公知のエッチング技術を用いて加工すればよい。
さらに、絶縁膜107の上面には、駆動電極配線201を覆うように誘電体からなる絶縁膜104が形成されている。絶縁膜104の上面には、対向するミラー基板200のミラー230を駆動するための駆動電極101が形成されている。駆動電極101と駆動電極配線201とは、絶縁膜104を貫通する層間垂直配線108を介して接続される。なお、層間垂直配線のために形成した垂直孔をビアホール、この垂直孔に金属を充填してできた層間垂直配線をビアと呼ぶこともある。
上述したようなミラー基板200と電極基板301とは、ミラー230とこのミラー230に対応する駆動電極101とが対向配置されるように、枠部210の下面と凸部360a,360bの上面とを接合することにより、図26に示すようなマイクロミラー装置が構成される。
駆動電極101の形状は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置と同様に、ミラー230と同心の円を4つに分割した扇形であってもよい。また、駆動電極101は、従来と同様に、基部310の上面に設けられた突出部の上面に形成されるようにしてもよい。
図26のマイクロミラー装置のミラー230は、ミラー230と駆動電極101との間の電位差により発生する静電引力により回動する。例えば、ミラー230を接地し、駆動電極配線201を介して駆動電極101に所定の正の電圧(駆動電圧)を与えることにより、ミラー230を静電引力で吸引し、ミラー230を任意の方向へ回動させることができる。このとき、ミラー230を所望の方向へ回動させるには、4つの駆動電極101に別々に駆動電圧を印加し、4つの駆動電極101間に電位差を生じさせるようにすればよい。
ミラー230は、この静電引力とミラー230を支持しているばね(ミラー連結部221a,221bと図示しない可動枠連結部)の復元力がつりあった状態で静止する。ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部のばね定数が一定とみなせる場合には、理論的には、駆動電極に与える駆動電圧が一定であれば、ミラー230の傾斜角度は一意に決定される。
次に、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。ミラー基板200は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bを形成する。
このミラー基板200の製造工程においては、最初にスピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIE(Deep Reactive Ion Etching )エッチング技術を用いてSOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bなどを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。この有機膜としては、感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この有機膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。ただし、この保護膜がついている状態で裏面の加工にレジストを使用するので、その際に問題を発生させない材料を選択することが必須となる。
SOI面に有機膜を形成した後に、SOI面と反対側のベース基板裏面に感光性レジストを塗布する。感光性レジストを塗布する場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、有機膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー230等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図27A〜図27D、図28A〜図28Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図27Aに示すように、SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび図示しない可動枠連結部が形成されている。また、枠状部材240は、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)241をエッチング除去することにより形成される。243はSOI面側に形成された保護用の有機膜である。
次に、図27Bに示すように、レジスト244を再度塗布する。ここでは、シリコン基部241を掘り込んだ中にレジスト244を塗布したいので、レジスト244の膜厚をシリコン基部241の厚さよりも厚く塗布できるようにするか、あるいは近年利用され始めているスプレー式レジスト塗布装置を利用してレジスト244を塗布する。図27Bの例では、従来方式でレジスト244を厚く塗布した。
続いて、感光性のレジスト244を塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、レジスト244を塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。レジスト244の感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、レジスト244を塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジスト244を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト244を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面にレジストパターン245を形成できた(図27C)。図27Cに示すように、このレジストパターン245は、ミラー230と対向する領域が開口領域となっている。なお、単層レジストを用いたパターン形成技術ではなく、多層レジストを用いたパターン形成技術を利用して、より垂直で良好なパターンを形成することも可能である。
次に、レジストパターン245をマスクにしてシリコン酸化膜からなるBOX層242を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする。フッ酸系溶液でエッチングすると、等方的なエッチングとなるので、レジストパターン245の端部の下に存在するBOX層242も、BOX層242の垂直方向の厚さと同じ程度だけ横方向にエッチングされる。したがって、レジストパターン245の端部から横方向へとBOX層242のエッチングか進行して、図27Dに示すように、レジストパターン245がBOX層242から突き出た形状を作製することができる。このBOX層242の厚さは、ミラー表面に堆積したい金属膜よりも厚いことが望ましい。赤外線を反射させるために必要な金属膜の厚さは50nm以上できれば100nm以上を実現したいので、余裕を大きくとってBOX層242の厚さは1μm以上であることが望ましい。なお、BOX層242の厚さ以上に横方向にエッチングを進行させたい場合には、オーバーエッチングでエッチング量を制御することができる。
BOX層242をエッチングした後に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜246を堆積させる(図28A)。ミラー230はシリコンで形成されているので、金を直接的に堆積させるか、あるいは金とシリコンの密着力を向上させるために下地金属としてチタンあるいはクロムなどの金属を堆積させた後に金を堆積させる。異なる金属膜を堆積させる場合は、ウエハを真空装置内から取り出すことなく連続的に堆積させることが望ましい。
金属膜246を堆積させた後に、レジストパターン245に付着した金属膜246と共にレジストパターン245を剥離する(図28B)。ここでは、Nメチルピロドジンなどのレジスト剥離材を使用してレジストパターン245を剥離する。当然ながら使用するレジストによって剥離材の種類は自由に選択できる。また、レジストを厚く塗布した場合には、厚いレジストの応力で剥離が容易にできる。
次に、レジストパターン245を剥離した後に露出するBOX層242を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする(図28C)。これにより、ミラー230の所望の領域に金属膜246を局所的に堆積させることができた。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜243をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図28D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜243をエッチング除去する。なお、ダイシングの際に基板の両面に保護膜をつけておくと、ミラー連結部221a,221bや可動枠連結部などの構造体の破損を防止することができる。ウエハ上にチップを1個だけ形成する場合よりも、ウエハ上に複数のチップを形成する場合の方が一般的である。以上のようにして、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が作製される。
次に、電極基板301の製造方法について説明する。図29A〜図29G、図30A〜図30Fは電極基板301の製造工程を示す断面図である。
まず、シリコンからなる基部310の表面に熱酸化膜からなる絶縁膜107を形成する(図29A)。この絶縁膜107の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第1シード層361として利用する(図29B)。その後、レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、駆動電極配線201を形成するために必要なレジストパターン362を形成する(図29C)。
そして、このレジストパターン362をマスクにして例えば金からなる金属膜363をメッキ成長させる(図29D)。金属膜363の形成後、マスクとしたレジストパターン362を剥離して洗浄する(図29E)。そして、不要な第1シード層361をエッチング除去する(図29F)。こうして、絶縁膜107上に、第1シード層361と金属膜363とからなる駆動電極配線201を形成することができた。
続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜104を、絶縁膜107上の駆動電極配線201を覆うように堆積させる(図29G)。このとき、絶縁膜104の表面の平坦性が悪い場合には絶縁膜104を堆積させた後に平坦化工程を実施する。
絶縁膜104上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術を使用して、層間垂直配線108形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、公知のエッチング技術を使用して絶縁膜104をエッチングし、駆動電極配線201に届く深さまで層間垂直配線108形成用の垂直孔364を形成する(図30A)。この垂直孔364の形成後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。
次に、絶縁膜104の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第2シード層365として利用する(図30B)。レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、層間垂直配線108と駆動電極101を形成するためのレジストパターン366を形成する(図30C)。そして、このレジストパターン366をマスクにしてメッキ法により、例えば金からなる金属膜367を形成する(図30D)。そして、レジストパターン366を剥離した後に(図30E)、不要な第2シード層365をエッチング除去し(図30F)、再度洗浄して表面を清浄な状態にする。こうして、金属膜367と第2シード層365により、駆動電極101と駆動電極配線201とを接続するための層間垂直配線108、および駆動電極101を形成することができた。
さらに、厚いレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術で凸部360a,360b形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、凸部360a,360bをメッキ法で形成し、その後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。以上の方法により、電極基板301が作製される。
電極基板301の形成例を上述したが、層間垂直配線の形成と電極構造の形成は別々の工程にしてもよい。また、電気的な導通状態を確実に確保できるのであれば、第2シード層は堆積しないで電極基板301を形成してもよい。また、駆動電極101上にメッキ法で金属を堆積して、テラス状の表面形状を持った駆動電極構造を形成してもよい。
最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行った後、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、加熱することによってはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。これにより、マイクロミラー装置が完成する。
以上のように、本実施例では、ミラー230の表面に金属膜246を形成する工程において、レジストパターン245がBOX層242から突き出た形状を作製することにより、図28Aに示すように、レジストパターン245の側壁に付着した金属膜246とレジストパターン245の開口部に露出しているミラー230の表面に堆積された金属膜246とが分離した状態で金属膜246を形成できるので、レジストパターン245を剥離除去(リフトオフ)する際に、ミラー230の表面に堆積された金属膜246を傷めることがない。したがって、本実施例では、ミラー230の表面に堆積された金属膜246の端部にバリが発生することはなく、綺麗な面形状のミラー面を形成することができる。
図31A、図31Bは従来のマイクロミラー装置においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図である。ミラー230の表面に局所的に金属膜を形成する場合、シリコン基部241およびBOX層242をエッチング除去した後にレジストを塗布・露光して、図31Aのようにレジストパターン231を形成し、レジストパターン231が形成された基板面に金属膜232を堆積させた後、レジストパターン231を剥離除去(リフトオフ)することにより、図31Bに示すようにミラー230の表面のみに金属膜232が残るようにすることができる。
しかしながら、金属膜232は、図31Aに示すように、通常レジストパターン231の側面にも形成され、この側面の金属膜232はミラー230の表面に形成される金属膜232と分離されていないため、レジストパターン231を剥離除去する際に、図31Bに示すように、ミラー230の表面上に残る金属膜232の端部にバリ233が発生するという問題点があった。レジストパターンの側面に金属膜が付着しないようにするために、レジストパターンを逆テーパ構造にすることもあるが、SOI基板のシリコン基部程度の厚みを有するレジストパターンでは、多少の逆テーパ構造を採用したとしても、レジストパターンの側面への金属膜付着を阻止することはできなかった。
これに対して、本実施例によれば、上記のように綺麗な面形状のミラー面を形成することができる。
また、従来のマイクロミラー装置では、金属膜を、ミラーの表面のみならず、ミラーを支持しているミラー連結部や、可動枠を支持している可動枠連結部にも堆積していた。しかし、これらの連結部の表面に金属膜が形成されると、連結部のばね定数を経時的に変化させることから、ミラーの傾斜角度が徐々に変化するドリフトが発生する。
これに対して、本実施例では、ミラー連結部の表面および可動枠連結部の表面には金属膜を形成しないようにしたので、ミラーの傾斜角度のドリフトを抑制することができる。
[第9実施例]
次に、本発明の第9実施例について説明する。本実施例においてもマイクロミラー装置の構成は第8実施例と同様であるので、図26の符号を用いて説明する。
以下、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。SOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部を形成する工程までは第8実施例と同じである。
枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部を形成した後に、マスクに使用した感光性レジストを除去し、清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
次に、SOI面側に再度レジストを塗布する。そして、金属を堆積したいミラー230の表面のみレジストが除去されるように、公知のリソグラフィ技術を利用してレジストパターンを形成する。そして、例えば金などからなる金属膜を堆積させた後、レジストを不要な金属と共に剥離除去する。そして、表面が清浄になるように洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、第8実施例と同様に、SOI面側に保護用の有機膜を塗布した後、シリコン基部をエッチング除去するためのレジストパターンを形成する。
次に、形成したレジストパターンをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー230等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図32A〜図32D、図33A〜図33Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図32Aに示すように、SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび図示しない可動枠連結部が形成されている。また、枠状部材240は、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)241をエッチング除去することにより形成される。243はSOI面側に形成された保護用の有機膜、247はミラー230の表面に形成された金属膜である。
次に、図32Bに示すように、レジスト244を再度塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、ベース基板裏面にレジストパターン245を形成する(図32C)。次に、レジストパターン245をマスクにしてシリコン酸化膜からなるBOX層242を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする。第8実施例と同様に、ミラー230上のBOX層242のエッチングが完了した後に、多少のオーバーエッチングをする(図32D)。
BOX層242をエッチングした後に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜246を堆積させる(図33A)。金属膜246を堆積させた後に、レジストパターン245に付着した金属膜246と共にレジストパターン245を剥離する(図33B)。次に、レジストパターン245を剥離した後に露出するBOX層242を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする(図33C)。これにより、ミラー230の所望の領域に金属膜246を局所的に堆積させることができた。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜243をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図33D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜243をエッチング除去する。以上のようにして、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が作製される。
電極基板301の製造方法は第8実施例と同じなので、説明は省略する。最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行った後、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、加熱することによってはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。これにより、マイクロミラー装置が完成する。
以上のように、本実施例では、ミラー230の両面に金属膜246,247を形成するので、ミラー230の表面に形成する金属膜がミラー230に及ぼす応力を相殺することができる。その結果、本実施例では、ミラー230の反りの発生を抑制することができる。ミラー230の反りの発生を抑制するには、ミラー230の両面に、同じ条件で膜厚を制御して金属膜246,247を堆積させることが望ましい。ただし、最初に金属膜247を形成した後に、プロセスを経る最中に温度上昇などによる焼き入れ効果でミラー230の反りの状態が変化するので、その場合には必ずしも同じ条件で形成するのではなく、ミラー230の反り量を補償するように条件を決定して金属膜246を堆積させることが重要である。
なお、第8実施例、第9実施例に係るマイクロミラー装置では、駆動電極配線201、駆動電極101および凸部360a,360bの材料に金(Au)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの配線や電極、凸部に用いる導電性材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)などが使用できるし、またこれらの材料の化合物を使用してもよい。また、シリコンなどの半導体材料を用いてもよい。
また、第8実施例、第9実施例では、メッキ法を利用して導電性材料の構造を形成しているが、導電膜を所望の厚さで堆積できるのであれば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの公知の膜堆積技術を使用しても問題ない。
[第10実施例]
次に、本発明の第10実施例について説明する。図34は、本発明の第10実施例に係る静電駆動型MEMSデバイスであるマイクロミラー装置の断面図を示している。なお、この図34のマイクロミラー装置を1次元的、あるいは2次元的に複数配設したものがミラーアレイである。本実施例のマイクロミラー装置は、ミラーが形成されたミラー基板200と、電極が形成された電極基板301とが平行に配設された構造を有する。
ミラー基板200は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置のミラー基板とほぼ同様な構成である。ミラー基板200は、平面視略円形の開口を有する板状の枠部210と、平面視略円形の開口を有し、一対の可動枠連結部(不図示)により枠部210の開口内に配設された可動枠220と、一対のミラー連結部221a,221bにより可動枠220の開口内に配設された可動部材である平面視略円形のミラー230とを有する。可動枠220は、一対の可動枠連結部(不図示)を通る可動枠回動軸を軸として回動することができる。同様に、ミラー230は、一対のミラー連結部221a,221bを通るミラー回動軸を軸として回動することができる。可動枠回動軸とミラー回動軸とは互いに直交しており、結果として、ミラー230は直交する2軸で回動する。なお、後述のように、ミラー230の表面には金属膜が形成されるが、図34では金属膜の記載を省略している。
電極基板301は、例えば単結晶シリコンからなる板状の基部310と、基部310の表面(上面)から突出し、対向するミラー基板200と接合するための凸部360a,360bとを有する。電極基板301の凸部360a,360bが設けられた面には、絶縁膜107が形成される。この絶縁膜107は、後述する駆動電極配線201が、シリコンなどの半導体からなる基部310を介して電気的に短絡することを防止する働きをする。
電極基板301にシリコン基板を用いる場合、絶縁膜107には、シリコン酸化膜を使用するのが一般的である。加工されていないベアのシリコン基板を必要に応じて洗浄して表面を清浄にした後に、熱酸化炉内で熱酸化させることにより、絶縁膜107が形成される。シリコン酸化膜の形成方法のうち熱酸化法で形成された熱酸化膜は、気相化学成長法(CVD法)などを用いて堆積したシリコン酸化膜などに比べて品質が良く、耐電圧特性に優れていることが知られている。
絶縁膜107の上面には、駆動電極101に電圧を供給するための駆動電極配線201が形成されている。駆動電極配線201は、図示していないボンディングパッドを介して、マイクロミラー装置あるいはミラーアレイを実装するパッケージの所定のピンに接続される。パッケージのピンに所定の直流電圧を印加すると、そのピンに一対一で対応する駆動電極101に電圧が印加されるため、ミラー230を回動させることができる。駆動電極配線201を形成するには、例えば絶縁膜107上の金属薄膜を公知のエッチング技術を用いて加工すればよい。
さらに、絶縁膜107の上面には、駆動電極配線201を覆うように誘電体からなる絶縁膜104が形成されている。絶縁膜104の上面には、対向するミラー基板200のミラー230を駆動するための駆動電極101が形成されている。駆動電極101と駆動電極配線201とは、絶縁膜104を貫通する層間垂直配線108を介して接続される。なお、層間垂直配線のために形成した垂直孔をビアホール、この垂直孔に金属を充填してできた層間垂直配線をビアと呼ぶこともある。
上述したようなミラー基板200と電極基板301とは、ミラー230とこのミラー230に対応する駆動電極101とが対向配置されるように、枠部210の下面と凸部360a,360bの上面とを接合することにより、図34に示すようなマイクロミラー装置が構成される。
駆動電極101の形状は、図61、図62に示した従来のマイクロミラー装置と同様に、ミラー230と同心の円を4つに分割した扇形であってもよい。また、駆動電極101は、従来と同様に、基部310の上面に設けられた突出部の上面に形成されるようにしてもよい。
図34のマイクロミラー装置のミラー230は、ミラー230と駆動電極101との間の電位差により発生する静電引力により回動する。例えば、ミラー230を接地し、駆動電極配線201を介して駆動電極101に所定の正の電圧(駆動電圧)を与えることにより、ミラー230を静電引力で吸引し、ミラー230を任意の方向へ回動させることができる。このとき、ミラー230を所望の方向へ回動させるには、4つの駆動電極101に異なる駆動電圧を印加し、4つの駆動電極101間に電位差を生じさせるようにすればよい。
ミラー230は、この静電引力とミラー230を支持しているばね(ミラー連結部221a,221bと図示しない可動枠連結部)の復元力がつりあった状態で静止する。ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部のばね定数が一定とみなせる場合には、理論的には、駆動電極に与える駆動電圧が一定であれば、ミラー230の傾斜角度は一意に決定される。
次に、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。ミラー基板200は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bを形成する。
このミラー基板200の製造工程においては、最初にスピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIE(Deep Reactive Ion Etching )エッチング技術を用いてSOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、可動枠連結部ならびにミラー連結部221a,221bなどを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。この有機膜としては、感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この有機膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。ただし、この保護膜がついている状態で裏面の加工にレジストを使用するので、その際に問題を発生させない材料を選択することが必須となる。
SOI面に有機膜を形成した後に、SOI面と反対側のベース基板裏面に感光性レジストを塗布する。感光性レジストを塗布する場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、有機膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー230等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。
続いて、シリコン酸化膜からなるBOX層を希フッ酸などのフッ酸系溶液を使用してエッチング除去する。シリコン酸化膜の除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図35A〜図35D、図36A〜図36Cは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板とBOX層をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図35Aに示すように、SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび図示しない可動枠連結部が形成されている。また、枠状部材240は、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)241とBOX層242をエッチング除去することにより形成される。2430はSOI面側に形成された保護用の有機膜である。
次に、図35Bに示すように、スプレー式レジスト塗布装置を利用してネガ型レジスト2440を塗布する。このレジスト2440の膜厚は、シリコン基部241よりも薄く、かつ後に堆積する金属膜よりも厚くする必要がある。金属膜として金を用いる場合には,50nm〜200nm程度の膜厚の金を堆積させるので、レジスト2440の厚さは500nm以上あったほうがよい。最適な条件は、形成したレジストパターンの形状と金の堆積方法によって異なるが、剥離除去する場合に金属膜にバリなどを発生させない程度に、逆テーパ形状で、かつ金属膜よりも数割程度厚いレジストパターンが形成できればよい。
続いて、有機膜2430を塗布した面から感光性のネガ型レジスト2440を露光する(図35C)。図35Cにおける2450は露光された箇所を示している。SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等の構造体が形成されていて、充分な厚さのシリコンが光を遮断するので、これらの構造体の隙間から漏れた光がネガ型レジスト2440を露光することになる。ここで、構造体の隙間とは、具体的には、ミラー連結部221a,221bとミラー230との間、ミラー連結部221a,221bと可動枠220との間、可動枠連結部と可動枠220との間、可動枠連結部と枠部210との間、ミラー230と可動枠220との間、可動枠220と枠部210との間を指している。現像後に所望の形状のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。露光量を多くすれば、構造体のエッジでの回折などによってレジスト2440は広い領域が露光されることになる。
ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部はシリコンからなるため、その上部に存在するレジスト2440は露光されないはずであるが、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部は細線状の構造であるため、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部の上部に存在するレジスト2440は、構造体の隙間からの光によって露光される。
潜像が焼き付けられた状態のレジスト2440を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト2440を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面に、SOI層から離れるほど広くなる逆テーパ形状のレジストパターン2460を形成できた(図35D)。レジストパターン2460が逆テーパ形状になる理由は、構造体の隙間から漏れた光が広がってレジスト2440に照射されるためである。図35Dに示すように、このレジストパターン2460は、枠部210、可動枠220およびミラー230と対向する領域が開口領域となっている。上記のとおり、構造体の隙間からの光によってミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部の上部のレジスト2440が露光されるため、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部の上部にはレジストパターン2460が形成される。このため、後述する金属膜の堆積工程において、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部に金属膜が堆積されることはないので、ミラー230の傾斜角度のドリフトを抑制することができる。
次に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜2470を堆積させる(図36A)。枠部210、可動枠220およびミラー230はシリコンで形成されているので、金を直接的に堆積させるか、あるいは金とシリコンの密着力を向上させるために下地金属としてチタンあるいはクロムなどの金属を堆積させた後に金を堆積させる。異なる金属膜を堆積させる場合は、ウエハを真空装置内から取り出すことなく連続的に堆積させることが望ましい。
金属膜2470を堆積させた後に、レジストパターン2460に付着した金属膜2470と共にレジストパターン2460を剥離する(図36B)。ここでは、Nメチルピロドジンなどのレジスト剥離材を使用してレジストパターン2460を剥離する。当然ながら使用するレジストによって剥離材の種類は自由に選択できる。また、レジストを厚く塗布した場合には、厚いレジストの応力で剥離が容易にできる。レジストパターン2460の剥離後は清浄面を得るために洗浄する。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜2430をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図36C)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜2430をエッチング除去する。ウエハ上にチップを1個だけ形成する場合よりも、ウエハ上に複数のチップを形成する場合の方が一般的である。以上のようにして、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が作製される。
次に、電極基板301の製造方法について説明する。図37A〜図37G、図38A〜図38Fは電極基板301の製造工程を示す断面図である。
まず、シリコンからなる基部310の表面に熱酸化膜からなる絶縁膜107を形成する(図37A)。この絶縁膜107の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第1シード層361として利用する(図37B)。その後、レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、駆動電極配線201を形成するために必要なレジストパターン362を形成する(図37C)。
そして、このレジストパターン362をマスクにして例えば金からなる金属膜363をメッキ成長させる(図37D)。金属膜363の形成後、マスクとしたレジストパターン362を剥離して洗浄する(図37E)。そして、不要な第1シード層361をエッチング除去する(図37F)。こうして、絶縁膜107上に、第1シード層361と金属膜363とからなる駆動電極配線201を形成することができた。
続いて、CVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜104を、絶縁膜107上の駆動電極配線201を覆うように堆積させる(図37G)。このとき、絶縁膜104の表面の平坦性が悪い場合には絶縁膜104を堆積させた後に平坦化工程を実施する。
絶縁膜104上にレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術を使用して、層間垂直配線108形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、公知のエッチング技術を使用して絶縁膜104をエッチングし、駆動電極配線201に届く深さまで層間垂直配線108形成用の垂直孔364を形成する(図38A)。この垂直孔364の形成後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。
次に、絶縁膜104の表面に金属スパッタ膜を堆積して後続のメッキプロセスの第2シード層365として利用する(図38B)。レジストを塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、層間垂直配線108と駆動電極101を形成するためのレジストパターン366を形成する(図38C)。そして、このレジストパターン366をマスクにしてメッキ法により、例えば金からなる金属膜367を形成する(図38D)。そして、レジストパターン366を剥離した後に(図38E)、不要な第2シード層365をエッチング除去し(図38F)、再度洗浄して表面を清浄な状態にする。こうして、金属膜367と第2シード層365により、駆動電極101と駆動電極配線201とを接続するための層間垂直配線108、および駆動電極101を形成することができた。
さらに、厚いレジストをスピンコーティング法によって塗布し、続いて公知のリソグラフィ技術で凸部360a,360b形成用のレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして、凸部360a,360bをメッキ法で形成し、その後に表面を覆っているレジストを剥離し、表面が清浄になるように洗浄する。以上の方法により、電極基板301が作製される。
電極基板301の形成例を上述したが、層間垂直配線の形成と電極構造の形成は別々の工程にしてもよい。また、電気的な導通状態を確実に確保できるのであれば、第2シード層は堆積しないで電極基板301を形成してもよい。また、駆動電極101上にメッキ法で金属を堆積して、テラス状の表面形状を持った駆動電極構造を形成してもよい。
最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行った後、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、加熱することによってはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。これにより、マイクロミラー装置が完成する。
以上のように、本実施例では、シリコン基部241およびBOX層242をエッチングで除去した部分に薄いレジストパターン2460を形成することができる。そして、薄いレジストパターン2460の側面には金属膜2470が付着しにくいことから、図36Aに示すように、レジストパターン2460の表面に付着した金属膜2470とレジストパターン2460の開口部に露出しているSOI層表面に堆積された金属膜2470とが分離した状態で金属膜2470を形成できるので、レジストパターン2460を剥離除去(リフトオフ)する際に、SOI層上に堆積された金属膜2470を傷めることがない。したがって、本実施例では、ミラー230の表面に堆積された金属膜2470の端部にバリが発生することはなく、綺麗な面形状のミラー面を形成することができる。
また、本実施例では、レジスト2440をシリコン基部241と反対側のSOI層側から構造体の隙間を介して露光することにより、逆テーパ型のレジストパターン2460を容易に形成できるため、レジストパターン2460の側面に金属膜2470が付着しにくくなることから、綺麗な面形状のミラー面を形成することができる。
また、本実施例では、ミラー連結部の表面および可動枠連結部の表面には金属膜を形成しないようにしたので、ミラーの傾斜角度のドリフトを抑制することができる。
[第11実施例]
次に、本発明の第11実施例について説明する。本実施例においてもマイクロミラー装置の構成は第10実施例と同様であるので、図34の符号を用いて説明する。
以下、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板200の製造方法について説明する。SOI層に枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部を形成し、SOI層にミラー230等を形成した部分の裏側の不要なシリコン基部241およびBOX層242をエッチング除去する工程までは第10実施例と同じである。
図39A〜図39D、図40A〜図40Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なシリコン基部241およびBOX層242をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図39Aに示すように、SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび図示しない可動枠連結部が形成されている。また、枠状部材240は、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)241とBOX層242をエッチング除去することにより形成される。
次に、第10実施例と同様に、スプレー式レジスト塗布装置を利用してネガ型レジスト2440を塗布する(図39B)。
続いて、有機膜2430を塗布した面から感光性のネガ型レジスト2440を露光する(図39C)。図39Cにおける2450は露光された箇所を示している。第10実施例で説明したとおり、SOI層には、枠部210、可動枠220、ミラー230、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部等の構造体が形成されていて、充分な厚さのシリコンが光を遮断するので、これらの構造体の隙間から漏れた光がネガ型レジスト2440を露光する。また、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部は細線状の構造であるため、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部の上部に存在するレジスト2440は、構造体の隙間からの光によって露光される。
この露光の後に、レジスト2440を塗布した面にマスクを形成せずに、レジスト2440の上方から全面を露光する(図39D)。この際の露光量は、露光・現像後にレジストパターンが得られる最小の臨界露光量D0の1/10から1/2程度の露光量とする。図39Cの工程で有機膜2430側から照射されてレジスト2440が得た露光量と、図39Dの工程で上方から照射されたときにレジスト2440が得た露光量との合計が、前記臨界露光量D0を超えた領域だけレジストパターンとして得られることになり、そのレジストパターンの形状は断面がT字状のTトップ形状になる。このような形状のレジストパターンは逆テーパ状のレジストパターンと同様にリフトオフプロセスで必要とされるパターン形状を有する。露光量は、現像後に所望の形状のパターンが所望の寸法で得られるようそれぞれの条件を決定する。なお、図39Dの工程は、図39Cの工程の前に行ってもよい。
潜像が焼き付けられた状態のレジスト2440を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト2440を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面にTトップ形状のレジストパターン2480を形成できた(図40A)。図40Aに示すように、このレジストパターン2480は、枠部210、可動枠220およびミラー230と対向する領域が開口領域となっている。第10実施例と同様に、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部の上部にはレジストパターン2480が形成されるので、金属膜の堆積工程において、ミラー連結部221a,221bおよび可動枠連結部に金属膜が堆積されることはない。
次に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜2470を堆積させる(図40B)。金属膜2470を堆積させた後に、レジストパターン2480に付着した金属膜2470と共にレジストパターン2480を剥離する(図40C)。レジストパターン2480の剥離後は清浄面を得るために洗浄する。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜2430をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図40D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜2430をエッチング除去する。以上のようにして、回動可能なミラー230を備えるミラー基板200が作製される。
電極基板301の製造方法は第10実施例と同じなので、説明は省略する。最後に、ミラー基板200と電極基板301との位置合わせを行った後、電極基板301の凸部360a,360bの上面をはんだ付けし、加熱することによってはんだを溶融して電極基板301にミラー基板200を接合する。これにより、マイクロミラー装置が完成する。
以上のように、本実施例では、Tトップ形状のレジストパターン2480を形成できるので、レジストパターン2480の側面に金属膜2470がより付着しにくくなる。したがって、レジストパターン2480を剥離除去する際にSOI層上に堆積された金属膜2470を傷める可能性を更に低減することができるので、第10実施例に比べて、より綺麗な面形状のミラー面を形成することができる。
なお、第10実施例、第11実施例に係るマイクロミラー装置では、駆動電極配線201、駆動電極101および凸部360a,360bの材料に金(Au)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの配線や電極、凸部に用いる導電性材料としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、スズ(Sn)、銀(Ag)などが使用できるし、またこれらの材料の化合物を使用してもよい。また、シリコンなどの半導体材料を用いてもよい。
また、第10実施例、第11実施例では、メッキ法を利用して導電性材料の構造を形成しているが、導電膜を所望の厚さで堆積できるのであれば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの公知の膜堆積技術を使用しても問題ない。
また、第10実施例、第11実施例では図示していないが、シリコン基部241と反対側のSOI層の表面(金属膜2470が形成される面と対向する面)に公知のリソグラフィ技術を利用して金属膜を堆積してから、図35A、図39Aに示したように有機膜2430を形成するようにしてもよい。これにより、この金属膜の堆積に続いて金属膜2470が堆積されることになり、ミラー230の両面に金属膜を形成することになるので、ミラー230の表面に形成する金属膜がミラー230に及ぼす応力を相殺することができる。その結果、ミラー230の反りの発生を抑制することができる。
[第12実施例]
第1実施例〜第11実施例は、本発明を平面視略円形のミラーを有するマイクロミラー装置に適用した例であるが、平面視略矩形のミラーを有するマイクロミラー装置に適用することも可能である。図41は本発明の第12実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す平面図、図42は図41のマイクロミラー装置のA−A線断面図、図43は図41のマイクロミラー装置のB−B線断面図であり、図63と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第1実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。
図41〜図43において、601aは可動梁駆動電極、602a,602b,602cは壁電極、603a,603bはミラー駆動電極、611は平面視略矩形の可動部材であるミラー、612a,612bは支持部材である連結部、613a,613bは可動梁、614は第1の基板であるミラー基板、620は第2の基板である電極基板、621,622は絶縁膜、623はシリコンなどの半導体からなる基部、624a,624bはそれぞれミラー駆動電極603a,603bに電圧を供給するミラー駆動電極配線、625は壁電極602cに電圧を供給する壁電極配線、626a,626bは層間垂直配線、627は駆動安定化電極である下部電極である。
複数のマイクロミラー装置が配置されるミラーアレイ領域を囲うように設けられた支持構造体(不図示)により、電極基板620の上に所定距離離間してミラー基板614が固定されている。電極基板620とミラー基板614とは、互いに平行な関係で配置されている。なお、図63のようにミラー611を多数配置する場合、図42、図43のミラー基板614が存在する箇所には隣接するミラー611が配置されるが、ここではマイクロミラー装置の構成を理解し易くするためにミラー基板614を配置している。
ミラー基板側の構成は、図63に示した従来のマイクロミラー装置と同じなので、説明は省略する。
図44はミラー駆動電極603a,603bおよび可動梁駆動電極601a,601bが形成される層の平面図、図45はミラー駆動電極配線624a,624bおよび下部電極627が形成される層の平面図である。なお、図44、図45は複数のマイクロミラー装置を並べたミラーアレイの構成を表している。
電極基板620の基部623上には絶縁膜622が形成される。この絶縁膜622は、ミラー駆動電極配線624a,624bおよび下部電極627が、シリコンなどの半導体である基部623を介して電気的に短絡することを防止する働きをする。
絶縁膜622の上面には、ミラー駆動電極配線624a,624bおよび下部電極627が形成されている。ミラー駆動電極配線624a,624bと下部電極627は、電極基板620の同じ層上に作成されるので、同時に形成することができる。
さらに、絶縁膜622の上面には、ミラー駆動電極配線624a,624bと下部電極627を覆うように絶縁膜621が形成されている。絶縁膜621の上面には、ミラー駆動電極603a,603bおよび可動梁駆動電極601a,601bが形成されている。ミラー駆動電極603a,603bは、それぞれ層間垂直配線626a,626bを介してミラー駆動電極配線624a,624bと接続されている。
本実施例のマイクロミラー装置の動作は、図63で説明したとおりであるので、説明は省略する。
下部電極627に与えられる電位は、第1実施例の下部電極103の場合と同様に、ミラー611と同電位(例えば接地電位)でもよいし、ミラー駆動電極603a,603bと同電位でもよい。
本実施例のマイクロミラー装置の製造方法は、第1実施例と同様なので、説明は省略する。
こうして、第1実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
[第13実施例]
図46は本発明の第13実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図であり、図41〜図45、図63と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第4実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。図46は、本実施例のマイクロミラー装置を図41のA−A線で切断したときの断面図である。
図46において、602cは壁電極、603a,603bはミラー駆動電極、611は平面視略矩形のミラー、614はミラー基板、620は電極基板、621,622,629は絶縁膜、623は基部、624a,624bはミラー駆動電極配線、625は壁電極配線、626a,626bは層間垂直配線、628は駆動安定化電極である周辺電極である。
図63のようにミラー611を多数配置する場合、図46のミラー基板614が存在する箇所には隣接するミラー611が配置されるが、ここではマイクロミラー装置の構成を理解し易くするためにミラー基板614を配置している。
ミラー基板側の構成は、図63に示した従来のマイクロミラー装置と同じなので、説明は省略する。また、可動梁613a,613bおよび可動梁駆動電極601a,601bの箇所の構成は、図43に示したとおりなので、説明は省略する。
電極基板620の基部623上には絶縁膜622が形成される。絶縁膜622の上面には、ミラー駆動電極配線624a,624bが形成されている。さらに、絶縁膜622の上面には、ミラー駆動電極配線624a,624bを覆うように絶縁膜621が形成されている。絶縁膜621の上面には、対向するミラー基板614のミラー611側から見て、電極基板620の表面にシリコン酸化膜などの絶縁膜621が露出しないように、周辺電極628が形成されている。周辺電極628を形成するには、例えば絶縁膜621上の金属薄膜を公知のエッチング技術を用いて加工すればよい。
さらに、周辺電極628の上面には、周辺電極628の一部を覆うように誘電体からなる絶縁膜629が形成されている。絶縁膜629の上面には、対向するミラー基板614のミラー611を駆動するためのミラー駆動電極603a,603bが形成されている。絶縁膜629は、対向するミラー基板614のミラー611側から見ると、ミラー駆動電極603a,603bにほぼ覆われており、一部を除いてミラー611側から見ることはできない。より望ましくは、図46に示すようにミラー駆動電極603a,603bの周縁部の下にある絶縁膜629を取り除いておいた方がよい。
ミラー駆動電極603a,603bとミラー駆動電極配線624a,624bとは、絶縁膜621および絶縁膜629を貫通する層間垂直配線626a,626bを介して接続される。なお、層間垂直配線のために形成した垂直孔をビアホール、この垂直孔に金属を充填してできた層間垂直配線をビアと呼ぶこともある。
以上述べたように、周辺電極628は、ミラー駆動電極603a,603bが設けられる駆動電極層(以下、第1の導電層と呼ぶ)と、ミラー駆動電極配線624a,624bが設けられる電極配線層(以下、第3の導電層と呼ぶ)との中間の層(以下、第2の導電層と呼ぶ)に形成され、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる絶縁膜622あるいは絶縁膜621の露出を避ける役割を担っている。ミラー駆動電極603a,603bは、ミラー611の駆動という役割と共に、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる絶縁膜629の露出を避ける役割をも担っている。
本実施例では、ミラー611側から電極基板620を眺めた場合、ミラー傾斜角度のドリフトの原因となる誘電体が殆ど露出していないので、絶縁膜621,623,629が帯電したとしても、これらの帯電がミラー611とミラー駆動電極603a,603bとの間に形成される電界へ影響を及ぼすことはなく、ミラー傾斜角度のドリフトを抑制することができる。また、本実施例では、周辺電極628の下層にミラー駆動電極配線624a,624bを設けたので、これらの配線624a,624bから放射される電界がミラー611とミラー駆動電極603a,603bとの間に形成される電界へ影響を及ぼすことはなく、より正確なミラー傾斜角度の制御が可能になる。
周辺電極628は、電極基板620の上面をほぼ覆い尽くすように形成されることが望ましい。このような構造にすることにより、絶縁膜621の露出を限りなく少なくすることができる。
また、層間垂直配線626a,626bを設けるために、層間垂直配線626a,626bと周辺電極628との間に絶縁のための間隙を設ける必要があるので、第2の導電層のレベルにおいては、層間垂直配線626a,626b近傍の箇所で絶縁膜621が露出していることになる。しかしながら、層間垂直配線626a,626bはミラー駆動電極603a,603bの直下に配置されるものであるから、第2の導電層のレベルで絶縁膜621が露出していたとしても、この絶縁膜621はミラー駆動電極603a,603bで覆われることになり、ミラー611側から電極基板620を眺めたときに絶縁膜621が露出することはない。したがって、周辺電極628から露出した絶縁膜621がミラー傾斜角度のドリフトを誘起することはない。
本実施例のマイクロミラー装置の動作は、図63で説明したとおりであるので、説明は省略する。
周辺電極628には、所定の電位が供給されるが、この所定の電位は、ミラー611と同電位であってもよい。周辺電極628には、より望ましくは接地電位を供給すればよい。壁電極602cは、周辺電極628と同電位であることが好ましい。そこで、図46に示すように、壁電極602cに電圧を供給する壁電極配線625は、周辺電極628と接続されている。
本実施例のマイクロミラー装置の製造方法は、第4実施例と同様なので、説明は省略する。
こうして、第4実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第4実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施例では、周辺電極628に電圧を供給する周辺電極配線(不図示)を周辺電極628と同じ第2の導電層に配置することを想定しているが、周辺電極配線をミラー駆動電極配線624a,624bと同じ第3の導電層に配置してもよい。この場合は、ミラー駆動電極603a,603bと同様に、周辺電極配線から層間垂直配線を介して周辺電極628に電圧を供給することになる。
[第14実施例]
次に、本発明の第14実施例について説明する。図47は本発明の第14実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図であり、図41〜図46、図63と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第5実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。図47は、本実施例のマイクロミラー装置を図41のA−A線で切断したときの断面図である。
第13実施例では、図46に示すように、ミラー駆動電極603a,603bに挟まれた領域で絶縁膜629が露出している。この露出している絶縁膜629が帯電することによるミラー傾斜角度のドリフトへの影響は少ないが、ミラー611側から見て絶縁膜629が完全に露出していない構造にした方がより望ましいことは言うまでもない。本実施例は、このように絶縁膜629が完全に露出しない構造を実現するものである。
以上のようにして、本実施例では、ミラー駆動電極603a,603bが絶縁膜629の端部からせり出した構造を実現することができ、ミラー611側から見て絶縁膜629が完全に露出していない構造を実現することができる。
なお、第14実施例のマイクロミラー装置の製造方法は、第5実施例と同様なので、説明は省略する。
[第15実施例]
次に、本発明の第15実施例について説明する。図48は本発明の第15実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図であり、図41〜図47、図63と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第6実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。図48は、本実施例のマイクロミラー装置を図41のA−A線で切断したときの断面図である。
図48において、602cは壁電極、603a,603bはミラー駆動電極、611は平面視略矩形のミラー、614はミラー基板、620は電極基板、621,622は絶縁膜、623は基部、624a,624bはミラー駆動電極配線、625は壁電極配線、626a,626bは層間垂直配線、630,631は金属膜である。
図63のようにミラー611を多数配置する場合、図48のミラー基板614が存在する箇所には隣接するミラー611が配置されるが、ここではマイクロミラー装置の構成を理解し易くするためにミラー基板614を配置している。
電極基板側の構成は、下部電極627がない点を除けば、図42に示した第12実施例のマイクロミラー装置と同じなので、説明は省略する。
ミラー基板614は、ミラーアレイ領域が開口する枠部(不図示)を備え、枠部が支持構造体の上に接続している。また、ミラー基板の枠部の内側には、一端が枠部に固定された可動梁(図41の613a,613b)を備えている。また、可動梁613aと613bの間には、屈曲可能な一対の連結部(図41の612a,612b)により連結されてミラー611が配置されている。枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611は、例えば、単結晶シリコンで一体形成されている。可動梁613a,613bおよび連結部612a,612bの構成は、図63に示した従来のマイクロミラー装置と同じなので、詳細な説明は省略する。
本実施例におけるマイクロミラー装置においては、ミラー611の両面に、互いに同じ形状とされた金属膜630および金属膜631が形成されている。金属膜630,631は、例えば、アルミニウムやAuなどの金属から構成された膜である。本マイクロミラー装置が対象とする光が赤外線の場合、赤外線の反射率から考慮すると、Auを用いた方がよい。また、対象とする光が、例えば可視域の場合、アルミニウムであってもよい。
本実施例において、金属膜630は、ミラー611における反射面となる。また、金属膜631は、金属膜630を形成したことによるミラー611の反りを抑制するために形成されている。
加えて、金属膜630および金属膜631は、ミラー611より小さい相似形に形成され、ミラー611と同心、すなわちミラー611と中心位置が一致するように配置されている。例えば、金属膜630および金属膜631は、ミラー611と相似形で、ミラー611よりも小さい平面視略矩形に形成されている。このため、ミラー611は、周縁部に金属膜が形成されていない領域を備える状態となっている。
このように構成した本実施例におけるマイクロミラー装置によれば、ミラー611の端部とミラー駆動電極603a,603bとが接触した場合、ミラー駆動電極603a,603bと金属膜631とが接触することがない。例えば、一対の連結部612a,612bを通る回動軸を軸とした回転により、ミラー駆動電極603a側の部分のミラー611の端部がミラー駆動電極603aに接触しても、金属膜631がミラー駆動電極603aに接触することがない。このため、表面に駆動電極と同じ金属の膜が形成されたミラーおよび駆動電極において、制御不能になり、衝突前に印加電圧をゼロにしてミラーと駆動電極とを同電位にして衝突させた場合に、固着が防止できるようになる。
第6実施例と同様に、金属膜630および金属膜631は、例えば、収束イオンビームデポジション法により、ミラー611上に選択的に金属材料を堆積することで形成すればよい。例えば、通信用に用いる場合、用いる信号光(赤外線)の反射率を大きくするために、金属材料としてAuを用いればよい。なお、Auを用いる場合、シリコンとの密着性を向上させるために、チタンやクロムなどの密着性向上層を利用してもよい。
また、ステンシルマスクを用いた蒸着法により、所望とする領域に金属を堆積して金属膜630,631を形成してもよい。また、いわゆるリフトオフ法により選択的に金属膜を形成することで、金属膜630,631を形成することもできる。リフトオフ法の場合、レジストパターンの形成が先となり、レジストパターンを形成した後に金属膜の形成をする。この後、レジストパターンを除去してレジストパターン上の金属膜を除去し、所望とする領域に金属膜を残すことで、金属膜630,631が形成できる。また、金属膜を形成してから、レジストパターンを用いて選択エッチングを行い、金属膜630,631が形成されるようにしてもよい。
なお、形成される金属膜の応力などを考慮し、ミラー611の両面に同じ厚さの金属膜を同一の製造方法を用いて形成し、両面に形成される金属膜の応力が釣り合った状態を実現し、ミラー611の変形を抑制することが望ましい。
ところで、上述したように、ミラー611の内側の領域に限定して金属膜630および金属膜631を形成するため、例えば、連結部には、金属膜が形成されることがない。連結部は、ミラー611の回動にともない、大きく変形する微細な構造体である。このような連結部に、金属膜が付着していると、ミラー駆動電極603a,603bなどに電圧を印加してミラー611の傾斜角度を一定にするように制御していても、時間の経過とともに連結部の状態が変化し、ミラー611の角度が変化する場合がある。これに対し、本実施例によれば、上述したように、ミラー611以外の領域には金属膜が形成されることが抑制され、連結部に金属が付着することが防がれる。この結果、上述したような連結部における経時的な変化が抑制され、ミラー611の位置制御が正確に行えるようになる。
本実施例のマイクロミラー装置の動作は、図63で説明したとおりであるので、説明は省略する。
こうして、第6実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第6実施例と同様の効果を得ることができる。
[第16実施例]
次に、本発明の第16実施例について説明する。本実施例は、第8実施例の製造方法を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。マイクロミラー装置の構成は、下部電極627がない点を除けば、図41〜図45に示した第12実施例のマイクロミラー装置と同様なので、図41〜図45、図63の符号を用いて説明する。
まず、ミラー基板614の製造方法について説明する。ミラー基板614は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611を形成する。
このミラー基板614の製造工程においては、最初にスピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いてSOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611などを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。この有機膜としては、感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この有機膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。ただし、この保護膜がついている状態で裏面の加工にレジストを使用するので、その際に問題を発生させない材料を選択することが必須となる。
SOI面に有機膜を形成した後に、SOI面と反対側のベース基板裏面に感光性レジストを塗布する。感光性レジストを塗布する場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、有機膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー611等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図49A〜図49D、図50A〜図50Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図49Aに示すように、SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および図示しない枠部が形成されている。また、枠状部材640は、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)641をエッチング除去することにより形成される。643はSOI面側に形成された保護用の有機膜である。
次に、図49Bに示すように、レジスト644を再度塗布する。ここでは、シリコン基部641を掘り込んだ中にレジスト644を塗布したいので、レジスト644の膜厚をシリコン基部641の厚さよりも厚く塗布できるようにするか、あるいは近年利用され始めているスプレー式レジスト塗布装置を利用してレジスト644を塗布する。図49Bの例では、従来方式でレジスト644を厚く塗布した。
続いて、感光性のレジスト644を塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、レジスト644を塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。レジスト644の感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、レジスト644を塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジスト644を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト644を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面にレジストパターン645を形成できた(図49C)。図49Cに示すように、このレジストパターン645は、ミラー611と対向する領域が開口領域となっている。なお、単層レジストを用いたパターン形成技術ではなく、多層レジストを用いたパターン形成技術を利用して、より垂直で良好なパターンを形成することも可能である。
次に、レジストパターン645をマスクにしてシリコン酸化膜からなるBOX層642を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする。フッ酸系溶液でエッチングすると、等方的なエッチングとなるので、レジストパターン645の端部の下に存在するBOX層642も、BOX層642の垂直方向の厚さと同じ程度だけ横方向にエッチングされる。したがって、レジストパターン645の端部から横方向へとBOX層642のエッチングか進行して、図49Dに示すように、レジストパターン645がBOX層642から突き出た形状を作製することができる。このBOX層642の厚さは、ミラー表面に堆積したい金属膜よりも厚いことが望ましい。赤外線を反射させるために必要な金属膜の厚さは50nm以上できれば100nm以上を実現したいので、余裕を大きくとってBOX層642の厚さは1μm以上であることが望ましい。なお、BOX層642の厚さ以上に横方向にエッチングを進行させたい場合には、オーバーエッチングでエッチング量を制御することができる。
BOX層642をエッチングした後に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜646を堆積させる(図50A)。ミラー611はシリコンで形成されているので、金を直接的に堆積させるか、あるいは金とシリコンの密着力を向上させるために下地金属としてチタンあるいはクロムなどの金属を堆積させた後に金を堆積させる。異なる金属膜を堆積させる場合は、ウエハを真空装置内から取り出すことなく連続的に堆積させることが望ましい。
金属膜646を堆積させた後に、レジストパターン645に付着した金属膜646と共にレジストパターン645を剥離する(図50B)。ここでは、Nメチルピロドジンなどのレジスト剥離材を使用してレジストパターン645を剥離する。当然ながら使用するレジストによって剥離材の種類は自由に選択できる。また、レジストを厚く塗布した場合には、厚いレジストの応力で剥離が容易にできる。
次に、レジストパターン645を剥離した後に露出するBOX層642を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする(図50C)。これにより、ミラー611の所望の領域に金属膜646を局所的に堆積させることができた。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜643をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図50D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜643をエッチング除去する。なお、ダイシングの際に基板の両面に保護膜をつけておくと、連結部612a,612bなどの構造体の破損を防止することができる。ウエハ上にチップを1個だけ形成する場合よりも、ウエハ上に複数のチップを形成する場合の方が一般的である。こうして、回動可能なミラー611を備えるミラー基板614が作製される。
電極基板側の製造方法は、第8実施例と同様なので、説明は省略する。以上のようにして、第8実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第8実施例と同様の効果を得ることができる。
[第17実施例]
次に、本発明の第17実施例について説明する。本実施例は、第9実施例の製造方法を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。本実施例においてもマイクロミラー装置の構成は第16実施例と同様である。
以下、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板614の製造方法について説明する。SOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611を形成する工程までは第16実施例と同じである。
枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611を形成した後に、マスクに使用した感光性レジストを除去し、清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
次に、SOI面側に再度レジストを塗布する。そして、金属を堆積したいミラー611の表面のみレジストが除去されるように、公知のリソグラフィ技術を利用してレジストパターンを形成する。そして、例えば金などからなる金属膜を堆積させた後、レジストを不要な金属と共に剥離除去する。そして、表面が清浄になるように洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、第16実施例と同様に、SOI面側に保護用の有機膜を塗布した後、シリコン基部をエッチング除去するためのレジストパターンを形成する。
次に、形成したレジストパターンをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー611等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図51A〜図51D、図52A〜図52Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図51Aに示すように、SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および図示しない枠部が形成されている。また、枠状部材640は、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)641をエッチング除去することにより形成される。643はSOI面側に形成された保護用の有機膜、647はミラー611の表面に形成された金属膜である。
次に、図51Bに示すように、レジスト644を再度塗布し、公知のリソグラフィ技術を使用して、ベース基板裏面にレジストパターン645を形成する(図51C)。次に、レジストパターン645をマスクにしてシリコン酸化膜からなるBOX層642を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする。第16実施例と同様に、ミラー611上のBOX層642のエッチングが完了した後に、多少のオーバーエッチングをする(図51D)。
BOX層642をエッチングした後に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜646を堆積させる(図52A)。金属膜646を堆積させた後に、レジストパターン645に付着した金属膜646と共にレジストパターン645を剥離する(図52B)。次に、レジストパターン645を剥離した後に露出するBOX層642を希フッ酸などのフッ酸系溶液でエッチングする(図52C)。これにより、ミラー611の所望の領域に金属膜646を局所的に堆積させることができた。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜643をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図52D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜643をエッチング除去する。以上のようにして、回動可能なミラー611を備えるミラー基板614が作製される。
以上のようにして、第9実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第9実施例と同様の効果を得ることができる。
[第18実施例]
次に、本発明の第18実施例について説明する。本実施例は、第10実施例の製造方法を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。マイクロミラー装置の構成は、下部電極627がない点を除けば、図41〜図45に示した第12実施例のマイクロミラー装置と同様なので、図41〜図45、図63の符号を用いて説明する。
まず、ミラー基板614の製造方法について説明する。ミラー基板614は、SOIの基板を利用して作製する。SOI基板をスターティング基板として、公知のリソグラフィ技術を使用してSOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611を形成する。
このミラー基板614の製造工程においては、最初にスピンコーティング法を使用してSOI層面上に感光性レジストを所望の膜厚で塗布する。パターンに応じた形状の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、SOI基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いてSOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611などを形成する。その際に、エッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
その後、ベース基板(シリコン基部)を加工する。まず、SOI面側に保護用の有機膜を塗布する。この有機膜としては、感光性レジストを使用しても良いし、ポリイミドなどの加工性が明らかとなっている膜を利用しても良い。この有機膜は最終的に除去しなければならないので、剥離性、除去性に富んだ膜を利用することが望ましい。ただし、この保護膜がついている状態で裏面の加工にレジストを使用するので、その際に問題を発生させない材料を選択することが必須となる。
SOI面に有機膜を形成した後に、SOI面と反対側のベース基板裏面に感光性レジストを塗布する。感光性レジストを塗布する場合には、SOI面側が塗布装置の試料台に接触することになるが、有機膜が堆積されているので、SOI面に形成した構造が破損することはない。感光性レジストを塗布した後に、所望のパターンに応じた形伏の遮光体を有するレチクル(マスク)を、感光性レジストを塗布した基板に位置合わせ、特にSOI面の構造体との位置合わせをして保持する。感光性レジストの感光波長の光をレチクルに照射して、その遮光体の影を、感光性レジストを塗布したウエハ上で結像させる。そして、所望のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。潜像が焼き付けられた状態のレジストを現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジストを硬化させる。ここまでで、ベース基板上にレジストのパターンを形成できた。
次に、形成したレジストをマスクにして、シリコンの深堀加工技術であるDRIEエッチング技術を用いて、SOI層にミラー611等を形成した部分の裏側の不要なベース基板のシリコンをエッチング除去する。その際に、シリコン酸化膜などのエッチング中間膜を利用しても良いし、レジストをエッチングマスクとして直接的にシリコンを加工してもよい。シリコンのエッチング後にマスクに使用した感光性レジストを除去する。
続いて、シリコン酸化膜からなるBOX層を希フッ酸などのフッ酸系溶液を使用してエッチング除去する。シリコン酸化膜の除去後は清浄なシリコン面を露出させるために洗浄する。
図53A〜図53D、図54A〜図54Cは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なベース基板とBOX層をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図53Aに示すように、SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および図示しない枠部が形成されている。また、枠状部材640は、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)641とBOX層642をエッチング除去することにより形成される。6430はSOI面側に形成された保護用の有機膜である。
次に、図53Bに示すように、スプレー式レジスト塗布装置を利用してネガ型レジスト6440を塗布する。このレジスト6440の膜厚は、シリコン基部641よりも薄く、かつ後に堆積する金属膜よりも厚くする必要がある。金属膜として金を用いる場合には,50nm〜200nm程度の膜厚の金を堆積させるので、レジスト6440の厚さは500nm以上あったほうがよい。最適な条件は、形成したレジストパターンの形状と金の堆積方法によって異なるが、剥離除去する場合に金属膜にバリなどを発生させない程度に、逆テーパ形状で、かつ金属膜よりも数割程度厚いレジストパターンが形成できればよい。
続いて、有機膜6430を塗布した面から感光性のネガ型レジスト6440を露光する(図53C)。図53Cにおける6450は露光された箇所を示している。SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等の構造体が形成されていて、充分な厚さのシリコンが光を遮断するので、これらの構造体の隙間から漏れた光がネガ型レジスト6440を露光することになる。ここで、構造体の隙間とは、具体的には、連結部612a,612bとミラー611との間、連結部612a,612bと可動梁613a,613bとの間を指している。現像後に所望の形状のパターンが所望の寸法で得られるように、光を照射する時間を決定した後に照射する。露光量を多くすれば、構造体のエッジでの回折などによってレジスト6440は広い領域が露光されることになる。
連結部612a,612bはシリコンからなるため、その上部に存在するレジスト6440は露光されないはずであるが、連結部612a,612bは細線状の構造であるため、連結部612a,612bの上部に存在するレジスト6440は、構造体の隙間からの光によって露光される。
潜像が焼き付けられた状態のレジスト6440を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト6440を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面に、SOI層から離れるほど広くなる逆テーパ形状のレジストパターン6460を形成できた(図53D)。レジストパターン6460が逆テーパ形状になる理由は、構造体の隙間から漏れた光が広がってレジスト6440に照射されるためである。図53Dに示すように、このレジストパターン6460は、可動梁613a,613bおよびミラー611と対向する領域が開口領域となっている。上記のとおり、構造体の隙間からの光によって連結部612a,612bの上部のレジスト6440が露光されるため、連結部612a,612bの上部にはレジストパターン6460が形成される。このため、後述する金属膜の堆積工程において、連結部612a,612bに金属膜が堆積されることはないので、ミラー611の傾斜角度のドリフトを抑制することができる。
次に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜6470を堆積させる(図54A)。可動梁613a,613bおよびミラー611はシリコンで形成されているので、金を直接的に堆積させるか、あるいは金とシリコンの密着力を向上させるために下地金属としてチタンあるいはクロムなどの金属を堆積させた後に金を堆積させる。異なる金属膜を堆積させる場合は、ウエハを真空装置内から取り出すことなく連続的に堆積させることが望ましい。
金属膜6470を堆積させた後に、レジストパターン6460に付着した金属膜6470と共にレジストパターン6460を剥離する(図54B)。ここでは、Nメチルピロドジンなどのレジスト剥離材を使用してレジストパターン6460を剥離する。当然ながら使用するレジストによって剥離材の種類は自由に選択できる。また、レジストを厚く塗布した場合には、厚いレジストの応力で剥離が容易にできる。レジストパターン6460の剥離後は清浄面を得るために洗浄する。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜6430をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図54C)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜6430をエッチング除去する。ウエハ上にチップを1個だけ形成する場合よりも、ウエハ上に複数のチップを形成する場合の方が一般的である。以上のようにして、回動可能なミラー611を備えるミラー基板614が作製される。
電極基板側の製造方法は、第10実施例と同様なので、説明は省略する。以上のようにして、第10実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第10実施例と同様の効果を得ることができる。
[第19実施例]
次に、本発明の第19実施例について説明する。本実施例は、第11実施例の製造方法を図63に示したマイクロミラー装置に適用したものである。本実施例においてもマイクロミラー装置の構成は第18実施例と同様である。
以下、本実施例に係るマイクロミラー装置の製造方法について説明する。まず、ミラー基板614の製造方法について説明する。SOI層に枠部、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、およびミラー611を形成し、SOI層にミラー611等を形成した部分の裏側の不要なシリコン基部641およびBOX層642をエッチング除去する工程までは第18実施例と同じである。
図55A〜図55D、図56A〜図56Dは本実施例においてミラー表面に金属膜を堆積させる工程を示す断面図であり、不要なシリコン基部641およびBOX層642をエッチング除去して洗浄した後の工程を示す断面図である。
図55Aに示すように、SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および図示しない枠部が形成されている。また、枠状部材640は、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等を形成した部分の裏側の不要なベース基板(シリコン基部)641とBOX層642をエッチング除去することにより形成される。
次に、第18実施例と同様に、スプレー式レジスト塗布装置を利用してネガ型レジスト6440を塗布する(図55B)。
続いて、有機膜6430を塗布した面から感光性のネガ型レジスト6440を露光する(図55C)。図55Cにおける6450は露光された箇所を示している。第18実施例で説明したとおり、SOI層には、可動梁613a,613b、連結部612a,612b、ミラー611、および枠部等の構造体が形成されていて、充分な厚さのシリコンが光を遮断するので、これらの構造体の隙間から漏れた光がネガ型レジスト6440を露光する。また、連結部612a,612bは細線状の構造であるため、連結部612a,612bの上部に存在するレジスト6440は、構造体の隙間からの光によって露光される。
この露光の後に、レジスト6440を塗布した面にマスクを形成せずに、レジスト6440の上方から全面を露光する(図55D)。この際の露光量は、露光・現像後にレジストパターンが得られる最小の臨界露光量D0の1/10から1/2程度の露光量とする。図55Cの工程で有機膜6430側から照射されてレジスト6440が得た露光量と、図55Dの工程で上方から照射されたときにレジスト6440が得た露光量との合計が、前記臨界露光量D0を超えた領域だけレジストパターンとして得られることになり、そのレジストパターンの形状は断面がT字状のTトップ形状になる。このような形状のレジストパターンは逆テーパ状のレジストパターンと同様にリフトオフプロセスで必要とされるパターン形状を有する。露光量は、現像後に所望の形状のパターンが所望の寸法で得られるようそれぞれの条件を決定する。なお、図55Dの工程は、図55Cの工程の前に行ってもよい。
潜像が焼き付けられた状態のレジスト6440を現像液に浸し、所望のパターンが所望の寸法で形成できるように、現像液にレジスト付きウエハを浸す時間を決定し、その決定した時間の間だけ、ウエハを現像液に浸す。その後ウエハ全体を乾燥させてレジスト6440を硬化させる。ここまでで、ベース基板裏面にTトップ形状のレジストパターン2480を形成できた(図56A)。図56Aに示すように、このレジストパターン2480は、可動梁613a,613bおよびミラー611と対向する領域が開口領域となっている。第18実施例と同様に、連結部612a,612bの上部にはレジストパターン2480が形成されるので、金属膜の堆積工程において、連結部612a,612bに金属膜が堆積されることはない。
次に、スパッタ法あるいは蒸着法により金等からなる金属膜6470を堆積させる(図56B)。金属膜6470を堆積させた後に、レジストパターン2480に付着した金属膜6470と共にレジストパターン2480を剥離する(図56C)。レジストパターン2480の剥離後は清浄面を得るために洗浄する。
最後に、ミラー構造などを保護していた有機膜6430をエッチング除去して、回動可能な構造体を形成する(図56D)。ウエハ上に複数のチップが形成されている場合には、ダイシングと呼ばれる、ウエハを切断してチップごとに切り離す工程を経た後に、有機膜6430をエッチング除去する。以上のようにして、回動可能なミラー611を備えるミラー基板614が作製される。
以上のようにして、第11実施例の構成を図63に示したマイクロミラー装置に適用することができ、第11実施例と同様の効果を得ることができる。
[第20実施例]
次に、本発明の第20実施例について説明する。本実施例は、第1実施例と第7実施例を組み合わせたものである。図57は本発明の第20実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図である。図57において、1310,1320はミラー230の両面に形成された金属膜である。本実施例の構成は、第1実施例、第7実施例で説明したとおりであるので、説明は省略する。なお、第7実施例を第2実施例、第3実施例と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
[第21実施例]
次に、本発明の第21実施例について説明する。本実施例は、第4実施例と第7実施例を組み合わせたものである。図58は本発明の第21実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図である。本実施例の構成は、第4実施例、第7実施例で説明したとおりであるので、説明は省略する。なお、第7実施例を第5実施例と組み合わせてもよいことは言うまでもない。
[第22実施例]
次に、本発明の第22実施例について説明する。本実施例は、第12実施例と第15実施例を組み合わせたものである。図59は本発明の第22実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図である。本実施例の構成は、第12実施例、第15実施例で説明したとおりであるので、説明は省略する。
[第23実施例]
次に、本発明の第23実施例について説明する。本実施例は、第13実施例と第15実施例を組み合わせたものである。図60は本発明の第23実施例に係るマイクロミラー装置の構成を示す断面図である。本実施例の構成は、第13実施例、第15実施例で説明したとおりであるので、説明は省略する。なお、第15実施例を第14実施例と組み合わせてもよいことは言うまでもない。