以下、本発明に係る実施形態について図1ないし図12を参照して説明する。なお、以下では、第1実施形態を第1参考形態として説明する。また、以下に示す車両用ブレーキシステム10A〜10Cは、エンジンルームR内に動力装置3を搭載した車両Vを例に挙げて説明するが、これに限定されず、動力装置3が車室(キャビン)Cの後方に搭載される車両に適用してもよい。また、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」については、特に断り書きのない限り、車両Vの車体を基準とした方向を示すものとする。
本実施形態の車両用ブレーキシステム10A〜10Cは、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
(第1実施形態)
図1に示すように、車両用ブレーキシステム10Aは、基本的に、運転者(操作者)によってブレーキ操作が入力される入力装置14と、少なくともブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)16と、このモータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づいて車両挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置18(車両挙動安定化装置、以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを備え、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18が、車両Vのエンジンルーム(構造物搭載室)R内に配置されて構成されている。
なお、モータシリンダ装置16は、運転者のブレーキ操作に応じた電気信号だけではなく、他の物理量に応じた電気信号に基づいて液圧を発生させる手段を備えていてもよい。他の物理量に応じた電気信号とは、例えば、自動ブレーキシステムのような、運転者のブレーキ操作によらずに、ECU(Electronic Control Unit)が車両Vの周囲の状況をセンサ等で判断して、車両Vの衝突等を回避するための信号などである。
エンジンルームRは、ダッシュボード2の前方において区画され、車幅方向の左右両側に車体の前後方向に沿って延在する一対のフロントサイドフレーム1a、1b、前記一対のフロントサイドフレーム1a、1bの上方に所定間隔離間して車体の前後方向に沿って延在する一対のアッパメンバ1c、1d、前記一対のフロントサイドフレーム1a、1bの前端部に連結されて複数の部材によって略矩形状の枠体からなるバルクヘッド連結体1e、前記一対のアッパメンバ1c、1dの前後方向の後ろ寄りに図示しないストラットを支持するダンパハウジング1f、1gなどで囲まれて構成されている。なお、図示しないストラットは、例えばショックを吸収するコイルスプリングと振動を低減するショックアブソーバとによって前輪ダンパとして構成されている。
また、エンジンルームRには、車両用ブレーキシステム10Aとともに、動力装置3などの構造物が搭載されている。動力装置3としては、例えばエンジンと電動機(走行モータ)とトランスミッションとを組み合わせたハイブリッド自動車用のものであり、エンジンルームR内の空間の略中央部に配置されている。なお、エンジンおよび電動機による動力は、図示しない動力伝達機構を介して左右の前輪を駆動するように構成されている。また、車両Vの車室Cの床下や車室Cの後方には、電動機に電力を供給し、電動機から電力(回生電力)を充電する高圧バッテリ(リチウムイオン電池など)が搭載されている。なお、車両用ブレーキシステム10A(10B、10C)は、前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動のいずれにも適用可能である。
なお、詳細には図示していないが、エンジンルームR内に搭載された動力装置3の周囲には、後記する車両用ブレーキシステム10Aの他に、ランプ類などに電力を供給する低圧バッテリを含む電気系、吸気系、排気系、冷却系など各種の構造物(補機)が取り付けられている。
入力装置14は、ここでは右ハンドル車に適用するものであり、ダッシュボード2の車幅方向の右側にボルトなどを介して固定され、ブレーキペダル(図2参照)と連結されるプッシュロッド42がダッシュボード2を貫通して車室C側に突出するように構成されている。
モータシリンダ装置16は、入力装置14とは逆側の車幅方向の左側に配置され、例えば左側のフロントサイドフレーム1aに図示しないブラケットを介して取り付けられている。具体的には、モータシリンダ装置16は、ブラケットに対して弾性(フローティング)支持され、ブラケットがフロントサイドフレーム1aに対してボルトなどの締結部材を介して締結され、またはブラケットがフロントサイドフレーム1aに溶接により固定されている。これにより、モータシリンダ装置16の作動時に発生する振動等を吸収できるようになっている。
VSA装置18は、例えば、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能などを備えて構成され、車幅方向の右端の前側に、例えばブラケットを介して車体に取り付けられている。なお、車両挙動安定化装置としては、VSA装置18に限定されるものではなく、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能のみを有するABS装置であってもよい。
これら入力装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18は、例えば、金属製の管材で形成された液圧路によって接続されていると共に、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスでECU(不図示)と電気的に接続されている。
すなわち、入力装置14とVSA装置18とは、第1液圧系統70a(図2参照)として、第1配管チューブ22a、ジョイント(三方路)23a、第3配管チューブ22cを介して互いに接続され、第2液圧系統70b(図2参照)として、第4配管チューブ22d、ジョイント(三方路)23b、第6配管チューブ22fを介して互いに接続されている。
また、モータシリンダ装置16は、第1液圧系統70a(図2参照)として、第2配管チューブ22bを介してジョイント23aと接続され、第2液圧系統70b(図2参照)として、第5配管チューブ22eを介してジョイント23bと接続されている。
図2を参照して液圧路について説明すると、図2中の連結点A1(ジョイント23a)を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
また、図2中の他の連結点A2(ジョイント23b)を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
なお、車両用ブレーキシステム10Aは、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する2つのピストン40a、40bが摺動自在に配設される。一方のピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、他方のピストン40bは、一方のピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この一方及び他方のピストン40a、40bの外周面には、環状段部を介して一対のピストンパッキン44a、44bがそれぞれ装着される。一対のピストンパッキン44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、一方及び他方のピストン40a、40bとの間には、ばね部材50aが配設され、他方のピストン40bとシリンダチューブ38の側端部との間には、他のばね部材50bが配設される。なお、ピストン40a、40bの外周面にピストンパッキン44a、44bを設ける代わりに、シリンダチューブ38の内周面にパッキンを配設してもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。なお、第1リザーバ36が特許請求の範囲に記載のリザーバに相当する。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を制御する第1圧力室56a及び第2圧力室56bが設けられる。第1圧力室56aは、第1液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第2圧力室56bは、第2液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第1液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第1液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第1液圧路58a上において、第1遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第2液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60bが設けられると共に、第2液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第2液圧路58b上において、第2遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側の下流側の液圧を検知するものである。
この第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(非通電時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第1遮断弁60aおよび第2遮断弁60bは、通電時(励磁時)の状態を示している(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第2遮断弁60bとの間の第2液圧路58bには、前記第2液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(非通電時の弁体の位置)が閉位置の状態となるように構成されたバルブをいう。
このストロークシミュレータ64は、第2液圧路58b上であって、第2遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第2圧力室56bから導出されるブレーキ液(ブレーキフルード)が吸収可能に設けられる。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第1圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第1液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第2圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第2液圧系統70bとから構成される。
第1液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第1液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第2液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第2液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
この結果、液圧路が第1液圧系統70aと第2液圧系統70bとによって構成されることにより、各ホイールシリンダ32FR、32RLと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ独立して作動させ、相互に独立した制動力を発生させることができる。
モータシリンダ装置16は、電動モータ72を含むアクチュエータ機構74と、前記アクチュエータ機構74によって付勢されるシリンダ機構76とを有する。
アクチュエータ機構74は、電動モータ72の出力軸側に設けられ、複数のギヤが噛合して電動モータ72の回転駆動力を伝達するギヤ機構(減速機構)78と、前記ギヤ機構78を介して前記回転駆動力が伝達されることにより軸方向に沿って進退動作するボールねじ軸80a及びボール80bを含むボールねじ構造体80とを有する。
シリンダ機構76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第1スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの一端部に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第2スレーブピストン88bは、第1スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
この第1及び第2スレーブピストン88a、88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブピストンパッキン90a、90bの間には、それぞれ、後記するリザーバポート92a、92bとそれぞれ連通する第1背室94a及び第2背室94bが形成される。また、第1及び第2スレーブピストン88a、88bとの間には、第1リターンスプリング96aが配設され、第2スレーブピストン88bとシリンダ本体82の側端部と間には、第2リターンスプリング96bが配設される。
シリンダ機構76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第1液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を制御する第2液圧室98bが設けられる。
なお、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bとの間には、第1スレーブピストン88aと第2スレーブピストン88bの最大距離と最小距離とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第2スレーブピストン88bには、前記第2スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第1スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特に、マスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するバックアップ時において、1系統の失陥時に他系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第1液圧系統70aを制御する第1ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第2液圧系統70bを制御する第2ブレーキ系110bとを有する。なお、第1ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第1ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第2ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第1ブレーキ系110a及び第2ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第1ブレーキ系110aと第2ブレーキ系110bで対応するものには同一の参照符号を付していると共に、第1ブレーキ系110aの説明を中心にして、第2ブレーキ系110bの説明を括弧書きで付記する。
第1ブレーキ系110a(第2ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられ第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されるサクションバルブ142とを備える。
なお、第1ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第1液圧室98aで制御されたブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPs、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10Aは、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
車両用ブレーキシステム10Aが正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる。従って、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bによって第1液圧系統70a及び第2液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第2圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がリターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力を発生させてブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させてアクチュエータ機構74を付勢し、第1リターンスプリング96a及び第2リターンスプリング96bのばね力に抗して第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの変位によって第1液圧室98a及び第2液圧室98b内のブレーキ液圧がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第1液圧室98a及び第2液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10Aでは、動力液圧源として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両Vに好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
図3に示すように、入力装置14は、マスタシリンダ34が車両の前後方向を向くように配置され、その前面に接続ポート20a、20bが互いの近傍に配置されている。また、入力装置14は、一体に形成されたジョイント23a、23bと第1配管チューブ22a、第4配管チューブ22dを介して接続されている。さらに、ジョイント23a、23bは、第3配管チューブ22c、第6配管チューブ22fを介してVSA装置18と接続されている。なお、ジョイント23a、23bは、一体に形成することにより車体への締結が容易になるが、この構成に限定されるものではなく、ジョイント23a、23bが別体であってもよい。
モータシリンダ装置16は、シリンダ機構76が車両の前後方向を向くように配置され、シリンダ機構76の側面に形成された出力ポート24a、24bが第2配管チューブ22b、第5配管チューブ22eを介してジョイント23a、23bと接続されている。第2配管チューブ22bおよび第5配管チューブ22eは、例えば、ダッシュボード2(図1参照)の近くを通り、かつ、互いに近傍に位置しながら配設されている。
図4(a)に示すように、モータシリンダ装置16は、入力装置14よりも下方に配置されている。詳述すると、モータシリンダ装置16に設けられた第2リザーバ84(図2参照)は、入力装置14に設けられた第1リザーバ36(図2参照)よりも下方に設けられている。またこのとき、第1リザーバ36と第2リザーバ84とを接続する配管チューブ86(図2参照)は、例えば、第1リザーバ36と第2リザーバ84との間において、第2リザーバ84よりも下方に位置しないように配設される。
また、モータシリンダ装置16は、VSA装置18よりも後方に配置されている。ただし、モータシリンダ装置16の位置は本実施形態に限定されるものではなく、VSA装置18よりも前方に配置されていてもよい。また、VSA装置18は、モータシリンダ装置16と上下方向(鉛直方向)において同じ高さに配置されていてもよく、またはモータシリンダ装置16よりも下方に配置されていてもよく、エンジンルームR内の空スペースに応じて適宜変更できる。また、VSA装置18は、入力装置14と上下方向(鉛直方向)において同じ高さに配置されていてもよく、または入力装置14よりも下方に配置されていてもよく、エンジンルームR内の空スペースに応じて適宜変更できる。
図4(b)に示すように、モータシリンダ装置16は、動力装置3とフロントサイドフレーム1aとの間に配置されている。詳述すると、モータシリンダ装置16は、例えば、フロントサイドフレーム1aの車幅方向内側の壁面にブラケット(不図示)を介して取り付けられ、衝突時に動力装置3が後方に後退したとしても、動力装置3がモータシリンダ装置16と接触しない位置に配置されている。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用ブレーキシステム10Aによれば、入力装置14とモータシリンダ装置(電動ブレーキアクチュエータ)16とVSA装置(車両挙動安定化装置)18とを、エンジンルーム(構造物搭載室)R内において互いに分離して構成して配置したので、入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18のそれぞれのサイズを小型化することができ、レイアウトの自由度を高めることができる。
ところで、エンジンルームR内には、動力装置3の他に、電気系、吸気系、排気系、冷却系などの構造物(電気自動車であれば、モータルーム内の電気系、冷却系などの構造物)が搭載されるため、必然的に大きな空スペース(設置スペース)を確保することが難しくなる。そこで、本実施形態のように、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18をそれぞれ分離して構成することで、個々の装置(入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18)のサイズをそれぞれ小さく構成することができ、エンジンルームR内(モータルーム内)に大きな空スペースを確保する必要がなくなる。これにより、エンジンルームR内(モータルーム内)の狭い空スペースであっても前記各装置(14、16、18)を搭載することが可能になり、レイアウトが容易になる。
また、第1実施形態によれば、入力装置14とモータシリンダ装置16とVSA装置18とをそれぞれ分離して構成することで、各装置(入力装置14、モータシリンダ装置16、VSA装置18)の汎用性を向上して異なる車種に適用し易くなる。
ところで、モータシリンダ装置16は、電気信号に応じてブレーキ液圧を発生させるためのアクチュエータ機構74を備えているため、アクチュエータ機構74が動作することで音や振動の発生源となる。本実施形態によれば、モータシリンダ装置16をエンジンルームRの左側、入力装置14をエンジンルームRの右側にして、モータシリンダ装置16を入力装置14から離間して配置することにより、音や振動の発生源となるモータシリンダ装置16を運転者から離して配置することが可能になるため、運転者に音や振動による違和感(不快感)を与えるのを防止できる。
また、第1実施形態によれば、モータシリンダ装置16が入力装置14よりも下方に配置されることで、ブレーキ液が重力の作用によって、圧送手段(ポンプなど)を用いることなく、第1リザーバ36からモータシリンダ装置16に供給することが可能になる。また、入力装置14からモータシリンダ装置16に空気が混入するのを防止できる。
また、エンジンルームR内においては車幅方向の右側または左側に偏って空スペースが形成されることは少ないので、第1実施形態のように、モータシリンダ装置16とVSA装置18を車幅方向において互いに逆側に配置することで、これらモータシリンダ装置16とVSA装置18を設置するための空スペースが確保し易くなり、レイアウトが容易になる。
(第2実施形態)
図5は第2実施形態に係る車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図、図6は第2実施形態に係る車両用ブレーキシステムの配置を模式的に示した図であり、(a)は車両の右側方から見た状態、(b)は車両の前方から見た状態である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する(以下に示す実施形態についても同様)。
図5に示すように、車両用ブレーキシステム10Bは、入力装置14とVSA装置18とが、第1実施形態と同様に、第1配管チューブ22a、第4配管チューブ22d、ジョイント23a、23b、および第3配管チューブ22c、第6配管チューブ22fを介して接続されている。なお、この図5に示す第1配管チューブ22aおよび第3配管チューブ22cが特許請求の範囲に記載の第1配管に相当し、同様に、第4配管チューブ22dおよび第6配管チューブ22fが特許請求の範囲に記載の第1配管に相当する。
また、モータシリンダ装置16は、それぞれの前記第1配管の近傍に配置されるとともに、第2配管チューブ22b´、第5配管チューブ22e´を介してジョイント23a、23bと接続されている。なお、この図5に示す第2配管チューブ22b´、第5配管チューブ22e´が、それぞれ特許請求の範囲に記載の第2配管に相当する。
図6に示すように、モータシリンダ装置16は、例えば、右側のフロントサイドフレーム1bにブラケット(不図示)を介して取り付けられる。すなわち、例えば、第1実施形態と同様に、モータシリンダ装置16がブラケット(不図示)に弾性支持(フローティング支持)され、前記ブラケットがフロントサイドフレーム1bにボルト締結または溶接などで固定されている。
また、モータシリンダ装置16は、例えば、フロントサイドフレーム1bと動力装置3との間に配置され(図6参照)、衝突時に動力装置3が後方に後退したとしても、動力装置3がモータシリンダ装置16と接触しない位置に配置されている。
このような第2実施形態に係る車両用ブレーキシステム10Bでは、図5に示すように、入力装置14とVSA装置18とが第1配管を介して接続されるとともに、モータシリンダ装置16が第1配管に対してジョイント23a、23b(3方路)を介して接続されている構成において、モータシリンダ装置16が、入力装置14とVSA装置18とを接続する第1配管の近傍に第2配管を介して接続されている。この第2実施形態によれば、第2配管(第2配管チューブ22b´、第5配管チューブ22e´)の長さを短くすることができ、モータシリンダ装置16からVSA装置18への液圧路の大部分を第1配管(第3配管チューブ22c、第6配管チューブ22f)と共有できるので、全体の配管長(第1配管+第2配管)を短くすることが可能になる。
また、第2実施形態では、入力装置14とモータシリンダ装置16とVSA装置18のすべてが車幅方向において同じ側(本実施形態では右側)に配置されている。これによれば、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18を互いに近づけて配置できるので、図5に示す配管接続の構成だけではなく、後記する図8および図10に示す配管接続の構成においてモータシリンダ装置16を右側に配置した場合であっても、入力装置14とモータシリンダ装置16とVSA装置18とを接続する際の配管の長さ(全体の配管長)を短縮することが可能になる。
なお、第2実施形態では、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18のすべてが車幅方向の右側に配置されているが、これに限定されず、例えば、入力装置14、モータシリンダ装置16およびVSA装置18が車幅方向に沿って配置されていてもよい。例えば、入力装置14がダッシュボード2の車幅方向の右側に固定され、VSA装置18がダッシュボート2の車幅方向の左側に固定され、モータシリンダ装置16がダッシュボード2の入力装置14とVSA装置18の間に固定されるようにしてもよい。
(第3実施形態)
図7は第3実施形態に係る車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図である。第3実施形態の車両用ブレーキシステム10Cは、第1実施形態における入力装置14の配置を変更したものである。
図7に示すように、第3実施形態の車両用ブレーキシステム10Cは、入力装置14がエンジンルームR内の右側のダンパハウジング1gに対して車両Vの前後方向において重なるように配置されている。
このような第3実施形態の車両用ブレーキシステム10Cによれば、ダンパハウジング1g(1f)はショックアブソーバ(不図示)が支持されて剛性が高く形成されている部分であるため、入力装置14がダンパハウジング1gと前後方向において重なるように配置されることで、衝突時などにおいて前方からダンパハウジング1gに衝撃が加わったとしてもダンパハウジング1gは変形に耐えることができる。その結果、入力装置14が後退するなどしてダッシュボード2の後方の車室C内に入力装置14が侵入するのを防止できる。
なお、第3実施形態では、ダンパハウジング1gに対して入力装置14のほぼ全体が前後方向において重なる状態を示しているが、衝突時等における入力装置14の車室C内への侵入を防止できるものであれば、入力装置14の一部が前後方向において重なるものであってもよい。
(第1実施形態の変形例)
図8は第1実施形態に係る車両用ブレーキシステムの変形例における配置構成を示す図、図9は第1実施形態の変形例に係る車両用ブレーキシステムを示す概略構成図である。この第1実施形態の変形例に係る車両用ブレーキシステム10Aは、2ポート(接続ポート20a、20b、図2、図3参照)を備えた入力装置14に替えて4ポート(接続ポート20a、20b、20c、20d)を備えた入力装置14Aとしたものである。
図8に示すように、入力装置14Aに形成された2つの接続ポート20a、20b(図9参照)は、第11配管チューブ22kおよび第12配管チューブ22lを介してモータシリンダ装置16と接続されている。また、入力装置14Aの残りの2つの接続ポート20c、20d(図9参照)は、第13配管チューブ22mおよび第14配管チューブ22nを介してVSA装置18と接続されている。なお、入力装置14A、モータシリンダ装置16およびVSA装置18の位置は、第1実施形態と同様である。
図9に示すように、入力装置14Aは、第1液圧路58aが接続ポート20aと第1遮断弁60aとの間において分岐する分岐路58dが形成され、この分岐路58dと第13配管チューブ22mとを接続する接続ポート20cを備えている。また、入力装置14Aは、第2液圧路58bが接続ポート20bと第2遮断弁60bとの間において分岐する分岐路58eが形成され、この分岐路58eと第14配管チューブ22nとを接続する接続ポート20dを備えている。すなわち、図9に示す車両用ブレーキシステム10Aでは、第1実施形態での連結点A1、A2に相当する部分が、入力装置14A内に設けられた構成となっている。
このように構成された車両用ブレーキシステム10Aによれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、入力装置14A、モータシリンダ装置16およびVSA装置18のすべてを、エンジンルームR内において車幅方向の同じ側に配置することにより、入力装置14Aとモータシリンダ装置16とを車幅方向の逆側に互いに配置した場合と比べて、全体の配管長を短く構成することが可能になる。
(第1実施形態の他の変形例)
図10は第1実施形態に係る車両用ブレーキシステムの他の変形例における配置構成を示す図、図11は第1実施形態の他の変形例に係る車両用ブレーキシステムを示す概略構成図である。この第1実施形態の他の変形例に係る車両用ブレーキシステム10Aは、2ポート(出力ポート24a、24b)を備えたモータシリンダ装置16に替えて4ポート(入力ポート24c、24dおよび出力ポート24a、24b)を備えたモータシリンダ装置16Aとしたものである。
図10に示すように、モータシリンダ装置16Aの入力ポート24c、24d(図11参照)は、第15配管チューブ22oおよび第16配管チューブ22pを介して入力装置14と接続されている。また、モータシリンダ装置16Aの出力ポート24a、24bは、第17配管チューブ22qおよび第18配管チューブ22rを介してVSA装置18と接続されている。なお、入力装置14A、モータシリンダ装置16およびVSA装置18の位置は、第1実施形態と同様である。
図11に示すように、モータシリンダ装置16Aは、シリンダ機構76に、出力ポート24a、24bとともに、前記出力ポート24aに対応する入力ポート24c、および、前記出力ポート24bに対応する入力ポート24dが形成されている。入力ポート24cは、第15配管チューブ22oを介して接続ポート20aと接続され、入力ポート24dは、第16配管チューブ22pを介して接続ポート20bと接続されている。また、出力ポート24aは、第17配管チューブ22qを介してVSA装置18の導入ポート26aと接続され、出力ポート24bは、第18配管チューブ22rを介して導入ポート26bと接続されている。
このように構成された車両用ブレーキシステム10Aによれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、図示していないが、図10において、入力装置14、モータシリンダ装置16A、VSA装置18のすべてを、エンジンルームR内において車幅方向の同じ側に配置することにより、入力装置14とモータシリンダ装置16Aとを車幅方向の逆側に互いに配置した場合と比べて、全体の配管長を短く構成することが可能になる。さらに、この車両用ブレーキシステム10Aでは、前記したように入力装置14、モータシリンダ装置16A、VSA装置18のすべてを同じ側に配置した場合において、入力装置14とモータシリンダ装置16Aとを接続する長さ分の配管と、モータシリンダ装置16AとVSA装置18とを接続する長さ分の配管とを備えればよいので、換言すると、入力装置14とVSA装置18とを接続するほぼ長さ分の配管を備えればよいので、図7および図8に示す実施形態での配管長よりもさらに短くすることが可能になる。
なお、図11に示すように、モータシリンダ装置16Aのシリンダ機構76に各ポート(入力ポート24c、24d、出力ポート24a、24b)毎に別個にポートを設ける構成に限定されるものではなく、図12(a)に示すように、単一のボス(突起部)86bに入力ポート24c(24d)と出力ポート24a(24b)とを備えたモータシリンダ装置16Bとしてもよい。
すなわち、図12(b)に示すように、モータシリンダ装置16Bは、シリンダ機構76の第1液圧室98a(第2液圧室98b)と連通するボス86bに、第15配管チューブ22o(第16配管チューブ22p)と第17配管チューブ22q(第18配管チューブ22r)とが接続されたコネクタ87が挿入されて接続されている。コネクタ87は、例えば、ポート24a(24b)に螺合することによって着脱自在に取り付けられる。すなわち、図12に示す実施形態では、第1液圧室98a、第2液圧室98bが第1実施形態での連結点A1、A2に相当する。
図12に示す実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。また、入力装置14、モータシリンダ装置16B、VSA装置18のすべてを、エンジンルームR内において車幅方向の同じ側に配置することにより、図10および図11に示す実施形態と同様に、全体の配管長を短くすることが可能になる。
このように、本実施形態では、入力装置14、14A、モータシリンダ装置16、16A、16B、VSA装置18を分離して配置することで、配管チューブの接続パターンにバリエーションを持たせることが可能になり、この点においてもレイアウトの自由度を高めることができる。
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。本実施形態では、入力装置14を右ハンドル車に適用した場合を例に挙げて説明したが、右ハンドル車に限定されるものではなく、入力装置14を左ハンドル車にも適用することができる。この場合、例えば、入力装置14がダッシュボード2の車幅方向の左側にボルトなどで取り付けられ、モータシリンダ装置16が前記入力装置14とは車幅方向の右側のフロントサイドフレーム1bに同様にして取り付けられ、VSA装置18が入力装置14の前方またはモータシリンダ装置16の前方に取り付けられる。
また、モータシリンダ装置16の位置は、フロントサイドフレーム1aの後側に限定されるものではなく、前側であってもよく、またフロントサイドフレーム1aの内側面に限定されるものではなく、フロントサイドフレーム1aの上面側、下面側などであってもよい。また、モータシリンダ装置16は、ダッシュボード2、ダンパハウジング1fなどに取り付けるようにしてもよい。また、モータシリンダ装置16の向きは、シリンダ機構16が前後方向を向く構成に限定されるものではなく、車幅方向に向く構成であってもよい。