JP5326610B2 - 使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法 - Google Patents

使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法に関し、さらに詳しくは、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で回収することができる処理方法に関する。これによって、使用済みニッケル水素電池から、有価金属のリサイクルが効果的に行われる。なお、本発明の回収方法では、正極活物質と負極活物質を同時に処理することができるが、どちらか一方のみを処理することもできる。
近年、大気中に放出される窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性ガスに起因する酸性雨、炭酸ガス等による地球温暖化などの環境問題が、地球規模の課題としてクロ−ズアップされている。その原因の一つである自動車の排気ガスによる汚染を低減するため、ニッケル水素電池などの2次電池を搭載したハイブリッド自動車が注目されている。
ニッケル水素電池は、機能的な部材として、正極、負極、電極端子及び電解液、さらに、構造的な部材として、電極基板、正負の電極間のセパレータ、ケース等から構成されている。ここで、各部材は、正極活物質としては微量添加元素を含む水酸化ニッケル、負極活物質としてはニッケル、コバルト、希土類元素(ミッシュメタル)等を含む水素吸蔵合金、電極基板としてはニッケル板、ニッケルメッキ鉄板等、セパレータとしてはプラスチック、電解液としては水酸化カリウム水溶液、電極端子材としては銅、鉄系金属等、ケースとしてはプラスチック、鋼等、と様々な素材や成分から構成されている。
また、その構造としては、電極は、正負の電極間にプラスチックをセパレータとして挟みながら正極と負極とを交互に積み重ねたものである。この電極本体を、プラスチックや鋼製のケースに入れ、銅又は鉄系金属の電極端子材を電極とケースとの間に接続し、最後に電極間に水酸化カリウム溶液を主成分とする電解液を満たして密封されている。
ところで、ハイブリッド自動車に搭載されたニッケル水素電池は、使用に伴って劣化した際新品と交換され、或いは廃車の際取り外されるので、使用済みニッケル水素電池として排出される。この使用済みニッケル水素電池には、前述のように、ニッケル、コバルト、希土類元素など多種類の稀少な有価金属を含有するので、これらの有価金属を回収し再び利用することが検討されてきた。しかしながら、ニッケル水素電池は、前述したように、複雑かつ頑丈な構造であり、しかも構成する材料の多くが化学的に安定なものである。したがって、使用済みニッケル水素電池に含有されるニッケル、コバルト、希土類元素などの金属を分離して回収し、新たな電池の材料として再利用することは容易でなかった。
このための方策として、例えば、使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法として、使用済みニッケル水素電池を炉に入れて熔解し、電池を構成するプラスチック等を燃焼して除去し、さらに大部分の鉄をスラグ化して除去し、ニッケルを還元して鉄の一部と合金化したフェロニッケルとして回収する方法が提案されている。この方法では、既存の製錬所の設備をそのまま利用できるなど、投資が少なく処理に手間がかからないという特徴がある。しかしながら、回収されたフェロニッケルは、多量の不純物元素も含有するものであり、ステンレスの原料以外の用途には適さない。しかも、コバルトと、特に希土類元素は、ほとんどがスラグ中に分配されて廃棄されるため、再利用することが困難である。さらに、熔解処理及び還元処理に多量のエネルギーを要するというコスト上の問題もあるなど、この方法は、効率的なリサイクル方法とは言えなかった。
また、別の方法として、使用済みニッケル/金属水素化物蓄電池から金属を回収する方法において、蓄電池スクラップを酸で溶解させて水相を形成する工程、該水相から希土類金属を複硫酸塩として分離する工程、次いでpHを上昇させることによって水相から鉄を沈殿させる工程、鉄沈殿後の濾液を、有機抽出剤を用いて液/液抽出して、亜鉛、カドミウム、マンガン、アルミニウム、残留した鉄及び希土類元素を分離し、その際抽出剤及びpH値を、抽出後に実質的にニッケル及びコバルトのみが水相内に溶解されて残留し、かつ蓄電池スクラップ内で存在していたのと同じ原子比で残留するように選択する工程、その後、水相からニッケル/コバルト合金として析出させる工程、最後にニッケル/コバルト合金をマスター合金として水素貯蔵合金を製造するために使用する工程からなる方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
しかしながら、この方法では、ニッケルとコバルトを電池組成そのままの比率で正確に合金電析させることは容易でなく、液組成や電解条件によって電析する合金の組成が変わってしまう恐れがある。正確な合金組成を得るには、得た合金を都度分析し、不足成分を添加して再溶解するなどの手間が余計にかかる。なお、電池の特性は、合金成分で変化することが知られており、その合金組成は、電池の性能を向上するため新たな成分を添加するなどして変更し改良されるので、回収したニッケル/コバルト合金がそのまま利用されるものではないという問題があった。また、使用済みニッケル水素電池を酸で浸出するとき、電解液成分である水酸化カリウムは、中和されて硫酸塩などの塩を生成する。生成した塩は、電極活物質に含有された希土類元素の大部分を巻き込んで沈殿し、希土類元素がロスになる懸念があった。また、この方法では、磁性フラクション工程を設けて金属鉄を使用し、浸出液に含有される3価の鉄イオンを2価の鉄イオンに還元する処理を行なっている。しかしながら、浸出液には多量の硫酸が存在するので、3価の鉄イオンを還元する当量以上の鉄が過剰に溶解して、浸出液中の鉄濃度が過剰に上昇する恐れがある。このため、脱鉄工程における中和剤の使用量や発生する殿物量が増加し、コストを上昇させ、同時に鉄と共沈してロスになるニッケルが増加するという問題があった。
さらに、別の課題として、使用済みニッケル水素電池には、電荷が残留している場合がある。電荷が残留した使用済み電池の両極を不用意に短絡すると、両極間に過大な電流が流れる。また、このような使用済み電池を不用意に解体すると、電池内部で部分的に短絡が生じ、発熱し発火するなどの異常事態が生じることがある。そこで、使用済み電池の解体前には、電池の残留電荷を放電して除去する失活化処理が必要となる。この対策として、例えば、使用済み電池の失活化と正極活物質の粒度確保のため、使用済み電池を液体窒素に浸漬して凍らせた後、二軸せん断破砕機を用いて破砕し、これを孔径1mmのパンチングプレートを有する湿式分級装置を通過させ、次いで比重差を利用してセパレータ等のプラスチック類を除去し、さらに粒度差を利用して正、負極活物質を分離回収し、回収した活物質を精製して再利用する方法(例えば、非特許文献1参照。)が提案されている。この方法では、使用済み電池は短絡が生じる前に破砕され、発熱することなく安全に解体される。しかしながら、この方法は、液体窒素に要するコストがかかり、また正極と負極活物質を別々のフローで処理するための個別の設備を必要とし、かつ正極と負極を完全に分離することが難しいことから、負極粉と正極粉の双方に全元素が分配してしまい、それだけ精製工程が複雑化して設備点数が増加するなどの問題があった。
このような状況下、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、希土類元素等の有価金属をコスト上有利で、かつ電池用材料として再使用できる形態で回収することができる処理方法が求められている。
特表平10−510878号公報(第1頁、第2頁)
「ハイブリッドカー用電池のリサイクル技術開発」、資源素材学会誌、「製錬・リサイクリング大特集号」、2007年、239巻、p.803
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で回収することができる処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法について、鋭意研究を重ねた結果、特定の作用を有する洗浄工程、還元工程、浸出工程、希土類回収工程、酸化中和工程及び溶媒抽出工程を順次行い、さらに必要に応じて、特定の作用を有する複分解工程及び希土類溶解工程を追加して行ったところ、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特にニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で回収することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法であって、
下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
(1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
(2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
(3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
(4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
(5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
(6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、下記の(7)、(8)に示す工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
(7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
(8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記洗浄工程に先立って、前記使用済みニッケル水素電池を不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、該使用済みニッケル水素電池を失活化し、次いで解体して正極活物質及び負極活物質を準備する前処理工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記洗浄工程において、酸性水溶液のpHは5〜8に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記浸出工程において、浸出液のpHは0〜5に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、前記浸出工程において、浸出液の温度は80℃以上に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、前記希土類回収工程において、反応時のpHは1〜5であり、かつ濾液中のアルカリ濃度は5g/L以上に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、前記酸化中和工程において、酸化中和時のpHは3.5〜4.5に維持するとともに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、200mV以上に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1の発明において、前記溶媒抽出工程において、抽出段のpHは3〜7であり、一方逆抽出段のpHは0〜4であることを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、前記溶媒抽出工程において、逆抽出段は、下記の(イ)〜(ハ)の3段階を順次行なうことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
(イ)前記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
(ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
(ハ)前記(ロ)の段階から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。
また、本発明の第11の発明によれば、第2の発明において、前記複分解工程において、アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種からなる水溶液であり、かつ複分解時のpHは7〜10に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第2の発明において、前記希土類溶解工程において、溶解時のpHは3〜5に維持することを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法は、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で、かつ高収率で回収することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法の一例を表す工程図である。
以下、本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法を詳細に説明する。
本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法は、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法であって、下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする。
(1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
(2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
(3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
(4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、該還元液を希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
(5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
(6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程
さらに、上記回収方法において、必要に応じて、下記の(7)、(8)に示す工程を含むことを特徴とする。
(7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
(8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程
本発明において、上記特定の作用を有する洗浄工程、還元工程、浸出工程、希土類回収工程、酸化中和工程及び溶媒抽出工程を順次行い、さらに必要に応じて、特定の作用を有する複分解工程及び希土類溶解工程を追加して行なうことにより、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離することが重要である。これにより、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で回収することができる。
まず、上記回収方法を、図を用いて説明する。図1は、本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法の一例を表す工程図である。
図1において、まず、前処理工程1において、使用済みニッケル水素電池10を、不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、失活化した後、解体し、正極及び負極活物質11を準備する。次に、洗浄工程2において、正極及び負極活物質11を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣13と洗浄後液12とを得る。ここで、洗浄後液12は、カリウムを含有するので排水処理で処分される。
また、洗浄後残渣13は、還元工程3へ移送され、後続の浸出工程4で得た浸出液16を混合して還元処理に付し、浸出液16中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液14と還元残渣15とを得る。前記浸出工程4においては、還元残渣15に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液16と浸出残渣17とを得る。
次に、希土類元素のさらなる回収率の向上を意図する際には、複分解工程5において、浸出残渣17にアルカリ水溶液を添加し、浸出残渣17中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液18と複分解沈殿物19とを得る。ここで、複分解後液18は、希土類回収工程7へ移送し、複分解沈殿物19は、必要に応じて、希土類溶解工程6で処理する。希土類溶解工程6において、複分解沈殿物19に酸性水溶液を添加し、複分解残渣19中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、別途処理に付される、希土類元素を含有する溶解液20と溶解残渣21とを得る。
続いて、希土類回収工程7において、還元工程3で得た還元液14に複分解工程5で得た複分解後液18を混合し、希土類元素複塩化処理に付し、希土類元素複塩の沈殿物23とニッケル及びコバルトを含有する濾液22とを得る。ここで、希土類元素複塩の沈殿物23は、別途希土類元素の精製のため処理される。
また、ニッケル及びコバルトを含有する濾液22は、酸化中和工程8へ移送され、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液24と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物25とを得る。ここで、酸化中和殿物25は、別途処理される。
また、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液24は、溶媒抽出工程9へ移送され、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液27とニッケルを含有する抽出残液26とを得る。
次に、各工程の作用と条件を詳細に説明する
(1)前処理工程
上記前処理工程は、必要に応じて、洗浄工程に先立って、使用済みニッケル水素電池を不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、該使用済みニッケル水素電池を失活化し、次いで解体して正極活物質及び負極活物質を準備する工程である。したがって、既に失活化され解体された正極活物質及び負極活物質が入手されるとき、前処理工程は省くことができる。
ここで使用済みニッケル水素電池(以下、使用済み電池と呼称する場合がある。)を安全に失活化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、使用済み電池を不活性雰囲気下に焙焼処理する方法が好ましい。
前記焙焼処理としては、使用済み電池を炉内に入れ、不活性雰囲気下に500〜600℃の温度で焙焼する方法が用いられる。ここで、電池容器として使われているプラスチックごと焙焼することにより、多数の電池を短時間で一括して失活化することができ、しかも、その後の解体及び分級が容易になるなど処理の手間を省ける利点がある。また、容器のプラスチック自身も熱源として利用されるので、エネルギーコストも節約できる。
なお、焙焼時の雰囲気としては、ニッケル、希土類元素等の金属状態で含有される有価金属が酸化されるのを抑制するため、コークス等の還元剤を添加して還元雰囲気下に行うことができるが、燃焼後のプラスチックは還元剤としても作用するので、不活性雰囲気下に焙焼処理すれば、還元雰囲気が形成されるので、コストを節約することができる。
(2)洗浄工程
上記洗浄工程は、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る工程である。
これによって、正極活物質及び負極活物質に付着する水酸化カリウムを主成分とする電解液成分を除去した洗浄後残渣を得る。すなわち、上記前処理工程で還元雰囲気下に焙焼処理に付しても、水酸化カリウムを主成分とする電解液成分は揮発又は分解することなく正極及び負極の活物質上に付着して残留している。残留した水酸化カリウムは、後続の浸出工程で難溶性の希土類硫酸複塩を生成し、希土類元素のロスを増加させる。
上記洗浄工程において、酸性水溶液のpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜8、より好ましくは6〜8に維持する。すなわち、上記洗浄工程で用いる洗浄処理としては、レパルプ、かけ水等などの方法が用いられる。ここで、洗浄液として水を用いると、除去された水酸化カリウムによって洗浄液のpHが上昇するが、洗浄液のpHが8を超えると、活物質の洗浄効果が低下する。したがって、洗浄液を交換してpHを低く維持するか、又は酸を添加してpHを調整することが好ましい。一方、pHが5未満では、洗浄液中に活物質に含有される有価金属が浸出される恐れがある。
ここで、酸性水溶液としては、特に限定されるものではないが、硫酸、塩酸、硝酸等の水溶液を用いることができるが、電池原料としての再利用を考慮すると、洗浄後残渣中に残留しても影響が少ない硫酸を用いるのがもっとも好ましい。
上記洗浄工程において、洗浄時のスラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、50〜300g/Lが好ましい。すなわち、スラリー濃度が50g/L未満では、洗浄液量が増加して設備が大型化し、排水の発生量も増加する。一方、スラリー濃度が300g/Lを超えると、撹拌にムラが生じ洗浄が不均一になりやすい。また、洗浄時の温度は、特に限定されない。
(3)還元工程
上記還元工程は、上記洗浄工程で得た洗浄後残渣と後続の浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る工程である。ここで、洗浄後残渣に含有されるニッケルの一部を浸出して還元後残渣を得るとともに、同時に浸出液中に3価の形態で含有されている鉄イオンを2価の形態に還元して還元液を得る。さらに、ニッケルが浸出される際に、コバルト、希土類元素等の有価金属と鉄、アルミ等の不純物元素もともに浸出される。
これによって、後続の希土類回収工程の前に、後続の浸出工程で得た浸出液中の鉄イオンを2価に維持した還元液を得る。すなわち、浸出工程では、ニッケルを効率的に浸出させるために、反応を促進するため、加温及びスラリーの撹拌が行われる。こことき、酸化を促進するためには、空気吹込みのほか、過酸化水素水等の酸化剤を添加することも行なうことができる。しかしながら、浸出液を過剰に酸化させると、洗浄後残渣に含有される鉄の浸出も促進され、浸出液中の鉄濃度が上昇する。さらに、浸出液に含有された鉄イオンが、3価の鉄イオンに酸化されて希土類元素を共沈して沈殿しロスとなるなどの問題を生じる。
上記還元工程において、上記洗浄工程で得た洗浄後残渣中に含有される鉄、ニッケル等の金属成分を還元剤として利用することが重要である。すなわち、還元工程で用いる還元剤としては、亜硫酸ガス、或いはアルミニウム、鉄等の金属粉をはじめ、さまざまなものを用いることができる。ここで、上記洗浄後残渣中に含有される鉄、ニッケル等の金属成分を還元剤として利用することにより、還元剤として使われたニッケルが還元液中に浸出されるので、使用済み電池から見ると予備浸出されることになり、ニッケル回収率が向上する利点がある。また、外部から新たに持込まれるものがないので、工程内の不純物を増加させず、後工程への影響を最小限に抑えることができるという利点もある。さらに、浸出工程で添加された硫酸は、浸出と還元の2工程で有効に消費され、後工程で酸を中和するのに必要な中和剤が削減できるという利点もある。
(4)浸出工程
上記浸出工程は、上記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る工程である。ここで、上記還元工程で得た還元後残渣に硫酸水溶液を添加し浸出する際、ニッケルを効率的に浸出させるために、反応を促進するため加温及びスラリーの撹拌が行われ、空気吹込みにより、又は必要に応じて過酸化水素などの酸化剤を添加して酸化しながら、残存しているニッケルと大部分の希土類元素を浸出する。なお、浸出液は上記還元工程に移送して還元する。また、浸出残渣には一部の希土類元素が残留するので、後続の複分解工程に搬送し、希土類元素を回収する。
上記浸出工程において、浸出液のpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜1に維持する。すなわち、浸出液のpHが0未満では、後工程での必要な中和剤が増加する。一方、浸出液のpHが5を超えると、ニッケル、コバルト等の有価金属の浸出率が低下する。
ここで、実用的な満足できる反応速度を得るには、強酸下に80℃以上の液温に維持して浸出することが好ましい。また、スラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、洗浄工程と同じ理由により、50〜300g/Lに調整することが好ましい。
(5)複分解工程
上記複分解工程は、上記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素のうち、ランタンを例にすると、下記の式(1)に従って複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る工程である。ここで、浸出残渣中に含有する大部分の希土類元素を硫酸アルカリとして複分解液中に浸出する。なお、この工程は、浸出残渣中に希土類元素が多く残留するとき、さらなる回収率の向上を意図する際に用いられる。
式(1):La(So・Na(SO4)+6NaOH=2La(OH)+4NaSO
上記複分解工程において、アルカリ水溶液としては、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種からなる水溶液が好ましい。
上記複分解工程において、複分解時のpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは7〜10、より好ましくは9〜10である。すなわち、そのpHが7未満では、複分解沈殿物を得ることができない。しかしながら、実用的な反応速度を得るにはpHを9以上にすることがより好ましい。一方、pHが10を超えても、それ以上の効果はほとんど得られない。また、スラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、洗浄工程と同じ理由により、50〜300g/Lに調整することが好ましい。
(6)希土類溶解工程
上記希土類溶解工程は、上記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る工程である。なお、この工程は、複分解残渣中に多くの希土類元素が残留する際に行なわれる。これによって、上記複分解沈殿物に一部残留する希土類元素を溶解する。ここで、得られた溶解液は、系外に払い出し希土類元素が回収される。
上記希土類溶解工程において、溶解時のpHとしては、特に限定されるものではないが、3〜5に維持することが好ましい。すなわち、溶解時のpHは、7以下であればよいが、溶解処理の反応速度を上げて効率を向上するためには、pHは低い方が好ましく、5以下が選ばれる。一方、そのpHが3未満では、酸使用量が増加する。
ここで、反応は、室温においても実用的に満足できる反応速度を得ることができる。また、溶解時のスラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、浸出工程と同様の理由により、50〜300g/Lが好ましい。
上記希土類溶解工程において、溶解処理に用いる酸性水溶液としては、特に限定されるものではないが、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができるが、硫酸を用いると、溶解液中での希土類元素は、硫酸ランタン、硫酸セリウムなどの形態で固定されるのでその後の処理が容易であること、硫酸は硝酸や塩酸などよりも相対的に安価であること等の理由により、硫酸を用いるのがもっとも好ましい。
(7)希土類回収工程
上記希土類回収工程は、上記還元工程で得た還元液に、硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩(例えば、La(So・Na(SO4))からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る工程である。なお、ここで、上記複分解工程で得た希土類元素を含有する複分解後液を、硫酸アルカリとして用いることができる。これによって、希土類元素の大部分が希土類元素複塩として回収され、既存の希土類元素製錬工程を利用して処理することにより、容易に高純度の希土類元素化合物として回収される。
上記希土類回収工程で用いるアルカリ剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸アルカリ、或いは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水酸化アルカリを用いることができるが、前記複分解後液を用いると、複分解後液に含有された希土類元素を希土類回収工程で同時にまとめて回収することができるので、希土類元素の精製等の後処理を考慮すると好都合である。また、硫酸アルカリの代わりに、或いは併用して水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリを用いると、希土類元素の分離回収と同時に中和も行なえるので、後続の酸化中和工程の予備処理を兼ねることができるので好ましい。
上記希土類回収工程において、反応時のpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3であり、かつ濾液中のアルカリ濃度としては、特に限定されるものではないが、好ましくは5g/L、より好ましくは5〜10g/Lに維持する。すなわち、反応時のpHが1〜5であるとき、希土類元素を沈殿として分離することができる。しかしながら、pHが3を超えると、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属元素が希土類元素複塩とともに沈殿する場合があるので、pHは1〜3の範囲に維持しながら、終液(濾液)中のアルカリ濃度を5〜10g/Lに維持し、前記金属元素を還元液に残留させることが好ましい。
ここで、液温としては、特に限定されるものではないが、50〜70℃が好ましい。すなわち、液温が50℃未満では、実用的な満足できる反応速度が得られない。一方、水分蒸発量やエネルギー効率を考慮すると、70℃以下が好ましい。また、スラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、浸出工程と同じ理由により、50〜300g/Lに調整することが好ましい。
(8)酸化中和工程
上記酸化中和工程は、上記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る工程である。これによって、濾液に含有される鉄及びアルミニウムを酸化すると共に中和して水酸化物の形態の中和澱物として液から分離する。
上記酸化中和工程において、酸化中和時のpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは3.5〜4.5に維持するとともに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)としては、特に限定されるものではないが、好ましくは200mV以上、より好ましくは200〜600mVに維持する。
すなわち、酸化は、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、十分に酸化を進めるため、200mV以上を維持することが必要である。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が600mVを超えると、反応効率が大きく向上することもなく、むしろ過剰な酸化となる。また、中和は、鉄及びアルミニウムを水酸化物として分離しながら、同時にニッケル及びコバルトが沈殿するのを防ぐため、前述したpH範囲が選ばれる。すなわち、そのpH3.5未満では、鉄が沈殿せずに分離できない。一方、そのpHが4.5を超えると、ニッケルが鉄とともにその一部が沈殿する
上記酸化剤としては、空気、過酸化水素等を用いることができる。また。中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等を用いることができるが、カルシウムの混入の恐れがない水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムが好ましい。
ここで、液温としては、特に限定されるものではないが、60〜80℃が好ましい。すなわち、液温が60℃未満では、実用的な満足できる反応速度が得られない。一方、水分蒸発量やエネルギー効率を考慮すると、80℃以下が好ましい。また、スラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、浸出工程と同じ理由により、50〜300g/Lに調整することが好ましい。
(8)溶媒抽出工程
上記溶媒抽出工程は、上記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る工程である。ここで、前記酸化中和後液からなる水相中のニッケルとアルカリ金属を除く、金属成分を有機相中に抽出する。
そのため、ニッケルとコバルトが含有された溶液から、ニッケルとコバルトとを分離し、ニッケルを硫酸ニッケル水溶液として回収するため、有機抽出剤として、2・エチルヘキシルホスホン酸2・エチルヘキシルからなるリン酸系酸性抽出剤(大八化学(株)製、商品名PC88A)を用いる。この際、リン酸系酸性抽出剤に、希釈剤として、新日本石油(株)製、商品名テクリーンN20を混合して、20容量%程度に希釈したものが好ましい。
上記抽出段では、そのpHとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。すなわち、抽出時の水相のpHが3未満では、コバルト、マンガン及び亜鉛の有機相への抽出が不十分となる。一方、pHが7を超えると、ニッケルも有機抽出剤に抽出されるので分離効率が悪化する。
上記逆抽出段では、そのpHとしては、特に限定されるものではないが、0〜4が好ましい。また、上記逆抽出段としては、特に限定されるものではないが、多段階で行うことにより、逆抽出される元素を分離して回収することができる。例えば、下記の(イ)〜(ハ)で示す3段階を順次行なうことが好ましい。これによって、主として、コバルト及びマンガンを含有する水溶液、亜鉛を含有する水溶液及びイットリウムを含有する水溶液に分割して回収される。
(イ)上記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
(ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
(ハ)前記(ロ)から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。
上記溶媒抽出工程において、逆抽出の液温としては、室温〜60℃程度が好ましいが、有機溶媒の粘性及び揮発を考慮すると40℃付近がより好ましい。また、有機相と水相との容量比(O/A)は、概ね1〜5程度が適当である。
ここで、有機抽出剤で抽出されなかったニッケルを含有する抽出残液は、不純物元素の含有量が少ない高純度の塩化ニッケル水溶液であるので、水酸化ニッケル等のニッケル化合物の製造原料として好適である。また、上記(イ)の段階から得られたコバルト及びマンガンその他の不純物元素を含有する逆抽出液からは、既存のコバルト製錬工程を利用して処理することにより、コバルトを他の不純物元素と容易に分離し回収することができる。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた金属の分析は、ICP発光分析法で行った。
(実施例1)
(1)前処理工程
まず、使用済みニッケル水素電池(サイズ:100×260×20mm、重量:1kg)1個を坩堝に入れ、窒素ガスを流し不活性雰囲気を形成した炉内で、500〜600℃の温度で1時間保持して焙焼処理に付し、使用済みニッケル水素電池を失活化した。次いで、冷却後、使用済みニッケル水素電池を坩堝から取り出し、ハンマーで叩いて解体し、手で分けて、正極活物質及び負極活物質が主体の混合物(以下、活物質と呼称する場合がある。)を取り出した。なお、前記活物質2000gを準備した。
(2)洗浄工程
ここで、以下の条件により、前処理工程で得た活物質に付着する電解液成分を除去し、洗浄後残渣と洗浄後液とを得た。
前記活物質に水を添加し、濃度100g/Lのスラリーを形成し、室温で60分間撹拌混合して洗浄処理に付した。この結果、前記活物質中のカリウム品位は、2.9質量%から、洗浄終了後に0.6質量%に低下し、洗浄処理による活物質からのカリウム除去を確認した。
(3)還元工程、浸出工程
図1の工程図にしたがって、還元工程と浸出工程を行った。
まず、以下の条件により、洗浄工程で得た洗浄後活物質と浸出工程で得た浸出液を用いて還元処理に付し、浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得た。
前記洗浄後活物質1050gを還元槽としたビーカーに入れ、そこに浸出工程で得た浸出液を投入した。なお、浸出液がない初回のみは、濃度10質量%の硫酸水溶液7.0Lを投入した。次に、液中の鉄を2価に保持するため、空気が巻き込まれないように蓋をし、80℃の液温に維持しつつ4時間撹拌し、ニッケル、コバルト、希土類元素などの有価金属を溶出させた。4時間経過後、還元槽の内容物を濾過し、還元液と還元残渣とを得た。
次いで、以下の条件により、還元工程で得た還元残渣を用いて浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得た。
前期還元残渣を前記還元槽と同じ構造の浸出槽に装入し、ここに濃度10質量%の硫酸水溶液7.0Lを添加し、液温を80℃に保持し、同時に1L/分の流量で空気を吹き込み、9時間撹拌して還元残渣中に残存した前記有価金属を浸出した。浸出終了後、浸出槽の内容物を濾別し、浸出液と浸出残渣とに分離した。その後、前記浸出液は、前記還元槽に移送し、次回の処理の際に別の新たな洗浄後活物質と接触させた。ここで、液中に前記有価金属の一部を溶出させるとともに浸出液は還元され、還元液として後続の希土類還元工程に払い出した。
この還元工程と浸出工程を組み合わせた方法を3回繰り返した。その後、各回の浸出液と還元液の化学組成(Ni、Co、La、Ce、Pr、Nd、Y)と、各回の平均浸出率を求めた。結果を表1に示す。なお、ここで、浸出率とは、洗浄後活物質から液中に浸出された割合を表す。
Figure 0005326610
表1より、いずれの回でも浸出液よりも還元液に含有される金属元素の濃度が高く、洗浄後活物質から効果的に有価金属が溶解されることが分かる。これにより、同時に、金属濃度が上昇した分だけ還元液中に含まれる未反応の酸も減少したので、後工程で酸処理する手間とコストを減少することができる。また、平均浸出率としては、ニッケルが97%、及びコバルトが99%以上であり、希土類元素も、その大部分が浸出できることが分かる。
(3)複分解工程、希土類溶解工程
図1の工程図にしたがって、複分解工程と希土類溶解工程を行った。
まず、以下の条件により、浸出工程で得た浸出残渣を用いて複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得た。
前記浸出残渣30gを採取してビーカーに入れ、これに濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH10に調整した。ここで、スラリー濃度は、150g/Lとした。次に、液温を30℃に調整し、60分間撹拌後、濾過して複分解沈殿物と複分解後液とに分離した。
次いで、以下の条件により、複分解工程で得た複分解沈殿物を用いて溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得た。
前記複分解沈殿物に、濃度64質量%の硫酸水溶液を添加し、pH5に調整し、室温で60分間撹拌後、濾過して溶解残渣と溶解液とに分離した。
ここで得た溶解残渣を分析した結果、前記浸出残渣に含まれた希土類元素のうち、ランタンの88%、セリウムの80%、プラセオジムの82%、ネオジムの81%、及びイットリウムの75%を複分解後液と溶解液とに回収することができた。
(4)希土類回収工程
ここで、以下の条件により、還元工程で得た還元液を用いて希土類元素複塩化処理に付し、還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得た。
前記還元液7.0Lを用い、これをビーカー中で70℃に加温し、次に、還元液中のナトリウム濃度が6g/Lを超えるように、無水硫酸ナトリウム177.1gを添加し、60分間撹拌して中和処理に付し、希土類複塩の沈殿物を生成させ、濾液と分離した。
ここで、前記還元液と前記沈殿物との分析結果から、還元液中に含有されていたランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジムのいずれもの95%以上を沈殿させることができた。一方、還元液中のニッケル沈殿率は0.01%、コバルト沈殿率は0.01%以下とほとんど沈殿しておらず、ニッケル及びコバルトとランタン、セリウム、プラセオジム、及びネオジム等の希土類元素とを分離することができた。
また、得た希土類元素複塩の沈殿物の品位としては、質量基準で、ランタン21.6%、セリウム9.2%、プラセオジム0.8%、ネオジム3.2%、及びイットリウム0.5%であった。一方、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、マンガン及びアルミニウムは、いずれも0.1%以下とほとんど含有されていなかった。なお、ここで得た希土類元素複塩は、別工程に移送して、従来方法を用いて精製し、新たなニッケル水素電池の負極原料として使用したが、なんら問題なく使用できた。
なお、還元液中に硫酸ナトリウムを添加せず、ナトリウム濃度を4g/L以下として同じ操作を行った場合、希土類複塩の沈殿生成が不完全で希土類元素の一部が濾液中に残留した。また、硫酸ナトリウムを過剰に添加し、ナトリウム濃度を20g/Lとした場合、その他の不純物元素の一部も沈殿し、希土類元素の分離が不十分となった。
(5)酸化中和工程
ここで、以下の条件により、希土類回収工程で得た濾液を用いて酸化中和処理に付し、鉄とアルミニウムを沈殿させた。
前記濾液7.0Lをビーカーに入れ、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.57リットルを添加してpH4に調整し、70℃の温度に保持しながら空気を1L/分の流量で4時間吹き込み、さらに空気吹き込みの終了直前に濃度35質量%の過酸化水素水溶液12.9mLを添加し、濾液中の2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化した。なお、酸化中和処理の終了時の酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、380mVであった。その後、酸化中和殿物と酸化中和後液とに濾別し、酸化中和後液を分析した。
その結果、鉄は、ほぼ100%が沈殿し、濾液中の鉄濃度は0.01g/L以下となった。また、アルミニウムの沈殿率は90%であった。一方、ニッケル沈殿率は5%、及びコバルト沈殿率は2%と低く、鉄及びアルミニウムを沈殿させ、濾液中に残留するニッケル及びコバルトと分離することができることが分かった。
なお、pHを3又は5として空気を吹き込んだ場合、pH3では、鉄の沈殿が不十分であり、また、pH5では、ニッケルの一部が沈殿した。
(6)溶媒抽出工程
ここで、以下の条件により、酸化中和工程で得た酸化中和後液を用いて溶媒抽出に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得た。
前記溶媒抽出は、ミキサーセトラーを用い、抽出3段及び逆抽出3段の構成とした。なお、有機相には、有機抽出剤としてPC−88Aを使用し、テクリーンN20で希釈して20容量%の組成としたものを用いた。
抽出段は、次の条件で行い、各金属元素の挙動を求めた。
[抽出段]
・抽出始液及び有機相の各給液量:15mL/分
・水相と有機相の比(O/A比):1
・水相のpH:5
・液温:40℃
その結果、抽出段では、酸化中和後液中に含有される金属が有機相中に抽出された抽出率は、ニッケルが2.5%、及びコバルトが99.9%であり、マンガンがほぼ100%であった。一方、水相中の金属濃度は、コバルトが7mg/L、及びマンガンが1mg/L未満であり、コバルト及びマンガンとニッケルとが分離された。また、得た抽出残液中には、硫酸ニッケル水溶液以外に不純物はほとんど含有されていなかった。この得た硫酸ニッケルすい溶液を中和して水酸化ニッケルを製造して、この水酸化ニッケルを用いて、新たにニッケル水素電池を作製したところ、電池材料として再利用できることが確かめられた。
逆抽出段は、次の条件で行い、水相のpHを変えた3段階の分別逆抽出の場合と所定の水相のpHで1段階の逆抽出の場合との各金属元素の挙動を求めた。
[逆抽出段]
・逆抽出始液及び有機相の各給液量:15mL/分
・水相と有機相の比(O/A比):1
・水相のpH:3段階の場合、第1段階:2.5、第2段階:0.5及び第3段階:0.03であり、1段階の場合、3.0、2.0、1.6、及び1.1であった。
・液温:40℃
結果を表2に示す。
Figure 0005326610
表2より、次の(1)、(2)に記載事項が分かった。
(1)水相のpHを変えた3段階の分別逆抽出の場合、
(イ)まず、第1段階の逆抽出として、抽出後有機相をpH2.5に調整した水相(溶液1)で逆抽出すると、該有機相中のコバルトの90%以上、及びマンガンの約50%が水相中に分離された。一方、亜鉛及びイットリウムは逆抽出されず、この結果、コバルトとマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(ロ)引き続いて、第2段階の逆抽出として、第1段階の逆抽出後有機相をpH0.5に調整した水相(溶液2)で逆抽出すると、該有機相中の亜鉛と残留したマンガンが水相中に分離された。この結果、亜鉛とマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(ハ)さらに、第3段階の逆抽出として、第2段階の逆抽出後有機相をpH0.03に調整した水相(溶液3)で逆抽出すると、該有機相中のイットリウムの96%程度が水相中に分離された。この結果、亜鉛とマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(2)所定の水相のpHで1段階の逆抽出の場合
pHを3.0、2.0、1.6、及び1.1とした水相(それぞれ、溶液4、5、6、及び7)を用いて、それぞれ逆抽出したところ、3段階の分別逆抽出の場合と同様に、pHにより、コバルトとマンガン、亜鉛、及びイットリウムを分離することができた。
以上より、逆抽出段において、水相のpHを2以上とすることで亜鉛の含まれないコバルトとマンガンの溶液を回収でき、1以上2未満では希土類元素の含まれない亜鉛を選択的に回収できる。さらに1未満のpHでは希土類元素を選択的に逆抽出することができる。
なお、その後、第1段階及び第3段階の逆抽出により得られた水溶液は、系外に移送し、精製して得たコバルトとイットリウムをニッケル水素電池の原料として再び利用した。
以上より明らかなように、本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法は、使用済み電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で、かつ高収率で回収することができるので、使用済み電池のリサイクルの分野で利用されるニッケル等の有価金属の回収技術として好適である。
1 前処理工程
2 洗浄工程
3 還元工程
4 浸出工程
5 複分解工程
6 希土類溶解工程
7 希土類回収工程
8 酸化中和工程
9 溶媒抽出工程
10 使用済みニッケル水素電池
11 正極及び負極活物質
12 洗浄後液
13 洗浄後残渣
14 還元液
15 還元残渣
16 浸出液
17 浸出残渣
18 複分解後液
19 複分解沈殿物
20 溶解液
21 溶解残渣
22 濾液
23 希土類元素複塩沈殿物
24 酸化中和後液
25 酸化中和殿物
26 抽出残液
27 逆抽出液

Claims (12)

  1. 使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法であって、
    下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
    (1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
    (2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
    (3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
    (4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
    (5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
    (6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程
  2. さらに、下記の(7)、(8)に示す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
    (7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
    (8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程
  3. 前記洗浄工程に先立って、前記使用済みニッケル水素電池を不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、該使用済みニッケル水素電池を失活化し、次いで解体して正極活物質及び負極活物質を準備する前処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  4. 前記洗浄工程において、酸性水溶液のpHは5〜8に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  5. 前記浸出工程において、浸出液のpHは0〜5に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  6. 前記浸出工程において、浸出液の温度は80℃以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  7. 前記希土類回収工程において、反応時のpHは1〜5であり、かつ濾液中のアルカリ濃度は5g/L以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  8. 前記酸化中和工程において、酸化中和時のpHは3.5〜4.5に維持するとともに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、200mV以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  9. 前記溶媒抽出工程において、抽出段のpHは3〜7であり、一方逆抽出段のpHは0〜4であることを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  10. 前記溶媒抽出工程において、逆抽出段は、下記の(イ)〜(ハ)の3段階を順次行なうことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
    (イ)前記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
    (ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
    (ハ)前記(ロ)の段階から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。
  11. 前記複分解工程において、アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種からなる水溶液であり、かつ複分解時のpHは7〜10に維持することを特徴とする請求項2に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
  12. 前記希土類溶解工程において、溶解時のpHは3〜5に維持することを特徴とする請求項2に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
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