JP5326610B2 - 使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法 - Google Patents
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Description
ニッケル水素電池は、機能的な部材として、正極、負極、電極端子及び電解液、さらに、構造的な部材として、電極基板、正負の電極間のセパレータ、ケース等から構成されている。ここで、各部材は、正極活物質としては微量添加元素を含む水酸化ニッケル、負極活物質としてはニッケル、コバルト、希土類元素(ミッシュメタル)等を含む水素吸蔵合金、電極基板としてはニッケル板、ニッケルメッキ鉄板等、セパレータとしてはプラスチック、電解液としては水酸化カリウム水溶液、電極端子材としては銅、鉄系金属等、ケースとしてはプラスチック、鋼等、と様々な素材や成分から構成されている。
また、その構造としては、電極は、正負の電極間にプラスチックをセパレータとして挟みながら正極と負極とを交互に積み重ねたものである。この電極本体を、プラスチックや鋼製のケースに入れ、銅又は鉄系金属の電極端子材を電極とケースとの間に接続し、最後に電極間に水酸化カリウム溶液を主成分とする電解液を満たして密封されている。
このような状況下、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、希土類元素等の有価金属をコスト上有利で、かつ電池用材料として再使用できる形態で回収することができる処理方法が求められている。
下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法が提供される。
(1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
(2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
(3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
(4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
(5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
(6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程
(7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
(8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程
(イ)前記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
(ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
(ハ)前記(ロ)の段階から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。
本発明の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法は、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法であって、下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする。
(1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
(2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
(3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
(4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、該還元液を希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
(5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
(6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程
(7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
(8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程
図1において、まず、前処理工程1において、使用済みニッケル水素電池10を、不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、失活化した後、解体し、正極及び負極活物質11を準備する。次に、洗浄工程2において、正極及び負極活物質11を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣13と洗浄後液12とを得る。ここで、洗浄後液12は、カリウムを含有するので排水処理で処分される。
また、洗浄後残渣13は、還元工程3へ移送され、後続の浸出工程4で得た浸出液16を混合して還元処理に付し、浸出液16中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液14と還元残渣15とを得る。前記浸出工程4においては、還元残渣15に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液16と浸出残渣17とを得る。
また、ニッケル及びコバルトを含有する濾液22は、酸化中和工程8へ移送され、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液24と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物25とを得る。ここで、酸化中和殿物25は、別途処理される。
また、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液24は、溶媒抽出工程9へ移送され、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液27とニッケルを含有する抽出残液26とを得る。
(1)前処理工程
上記前処理工程は、必要に応じて、洗浄工程に先立って、使用済みニッケル水素電池を不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、該使用済みニッケル水素電池を失活化し、次いで解体して正極活物質及び負極活物質を準備する工程である。したがって、既に失活化され解体された正極活物質及び負極活物質が入手されるとき、前処理工程は省くことができる。
ここで使用済みニッケル水素電池(以下、使用済み電池と呼称する場合がある。)を安全に失活化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、使用済み電池を不活性雰囲気下に焙焼処理する方法が好ましい。
なお、焙焼時の雰囲気としては、ニッケル、希土類元素等の金属状態で含有される有価金属が酸化されるのを抑制するため、コークス等の還元剤を添加して還元雰囲気下に行うことができるが、燃焼後のプラスチックは還元剤としても作用するので、不活性雰囲気下に焙焼処理すれば、還元雰囲気が形成されるので、コストを節約することができる。
上記洗浄工程は、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る工程である。
これによって、正極活物質及び負極活物質に付着する水酸化カリウムを主成分とする電解液成分を除去した洗浄後残渣を得る。すなわち、上記前処理工程で還元雰囲気下に焙焼処理に付しても、水酸化カリウムを主成分とする電解液成分は揮発又は分解することなく正極及び負極の活物質上に付着して残留している。残留した水酸化カリウムは、後続の浸出工程で難溶性の希土類硫酸複塩を生成し、希土類元素のロスを増加させる。
上記還元工程は、上記洗浄工程で得た洗浄後残渣と後続の浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る工程である。ここで、洗浄後残渣に含有されるニッケルの一部を浸出して還元後残渣を得るとともに、同時に浸出液中に3価の形態で含有されている鉄イオンを2価の形態に還元して還元液を得る。さらに、ニッケルが浸出される際に、コバルト、希土類元素等の有価金属と鉄、アルミ等の不純物元素もともに浸出される。
上記浸出工程は、上記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る工程である。ここで、上記還元工程で得た還元後残渣に硫酸水溶液を添加し浸出する際、ニッケルを効率的に浸出させるために、反応を促進するため加温及びスラリーの撹拌が行われ、空気吹込みにより、又は必要に応じて過酸化水素などの酸化剤を添加して酸化しながら、残存しているニッケルと大部分の希土類元素を浸出する。なお、浸出液は上記還元工程に移送して還元する。また、浸出残渣には一部の希土類元素が残留するので、後続の複分解工程に搬送し、希土類元素を回収する。
ここで、実用的な満足できる反応速度を得るには、強酸下に80℃以上の液温に維持して浸出することが好ましい。また、スラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、洗浄工程と同じ理由により、50〜300g/Lに調整することが好ましい。
上記複分解工程は、上記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素のうち、ランタンを例にすると、下記の式(1)に従って複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る工程である。ここで、浸出残渣中に含有する大部分の希土類元素を硫酸アルカリとして複分解液中に浸出する。なお、この工程は、浸出残渣中に希土類元素が多く残留するとき、さらなる回収率の向上を意図する際に用いられる。
上記希土類溶解工程は、上記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る工程である。なお、この工程は、複分解残渣中に多くの希土類元素が残留する際に行なわれる。これによって、上記複分解沈殿物に一部残留する希土類元素を溶解する。ここで、得られた溶解液は、系外に払い出し希土類元素が回収される。
ここで、反応は、室温においても実用的に満足できる反応速度を得ることができる。また、溶解時のスラリー濃度としては、特に限定されるものではないが、浸出工程と同様の理由により、50〜300g/Lが好ましい。
上記希土類回収工程は、上記還元工程で得た還元液に、硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩(例えば、La2(So4)3・Na2(SO4))からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る工程である。なお、ここで、上記複分解工程で得た希土類元素を含有する複分解後液を、硫酸アルカリとして用いることができる。これによって、希土類元素の大部分が希土類元素複塩として回収され、既存の希土類元素製錬工程を利用して処理することにより、容易に高純度の希土類元素化合物として回収される。
上記酸化中和工程は、上記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る工程である。これによって、濾液に含有される鉄及びアルミニウムを酸化すると共に中和して水酸化物の形態の中和澱物として液から分離する。
すなわち、酸化は、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、十分に酸化を進めるため、200mV以上を維持することが必要である。一方、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が600mVを超えると、反応効率が大きく向上することもなく、むしろ過剰な酸化となる。また、中和は、鉄及びアルミニウムを水酸化物として分離しながら、同時にニッケル及びコバルトが沈殿するのを防ぐため、前述したpH範囲が選ばれる。すなわち、そのpH3.5未満では、鉄が沈殿せずに分離できない。一方、そのpHが4.5を超えると、ニッケルが鉄とともにその一部が沈殿する
上記溶媒抽出工程は、上記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る工程である。ここで、前記酸化中和後液からなる水相中のニッケルとアルカリ金属を除く、金属成分を有機相中に抽出する。
(イ)上記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
(ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
(ハ)前記(ロ)から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。
(1)前処理工程
まず、使用済みニッケル水素電池(サイズ:100×260×20mm、重量:1kg)1個を坩堝に入れ、窒素ガスを流し不活性雰囲気を形成した炉内で、500〜600℃の温度で1時間保持して焙焼処理に付し、使用済みニッケル水素電池を失活化した。次いで、冷却後、使用済みニッケル水素電池を坩堝から取り出し、ハンマーで叩いて解体し、手で分けて、正極活物質及び負極活物質が主体の混合物(以下、活物質と呼称する場合がある。)を取り出した。なお、前記活物質2000gを準備した。
ここで、以下の条件により、前処理工程で得た活物質に付着する電解液成分を除去し、洗浄後残渣と洗浄後液とを得た。
前記活物質に水を添加し、濃度100g/Lのスラリーを形成し、室温で60分間撹拌混合して洗浄処理に付した。この結果、前記活物質中のカリウム品位は、2.9質量%から、洗浄終了後に0.6質量%に低下し、洗浄処理による活物質からのカリウム除去を確認した。
図1の工程図にしたがって、還元工程と浸出工程を行った。
まず、以下の条件により、洗浄工程で得た洗浄後活物質と浸出工程で得た浸出液を用いて還元処理に付し、浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得た。
前記洗浄後活物質1050gを還元槽としたビーカーに入れ、そこに浸出工程で得た浸出液を投入した。なお、浸出液がない初回のみは、濃度10質量%の硫酸水溶液7.0Lを投入した。次に、液中の鉄を2価に保持するため、空気が巻き込まれないように蓋をし、80℃の液温に維持しつつ4時間撹拌し、ニッケル、コバルト、希土類元素などの有価金属を溶出させた。4時間経過後、還元槽の内容物を濾過し、還元液と還元残渣とを得た。
前期還元残渣を前記還元槽と同じ構造の浸出槽に装入し、ここに濃度10質量%の硫酸水溶液7.0Lを添加し、液温を80℃に保持し、同時に1L/分の流量で空気を吹き込み、9時間撹拌して還元残渣中に残存した前記有価金属を浸出した。浸出終了後、浸出槽の内容物を濾別し、浸出液と浸出残渣とに分離した。その後、前記浸出液は、前記還元槽に移送し、次回の処理の際に別の新たな洗浄後活物質と接触させた。ここで、液中に前記有価金属の一部を溶出させるとともに浸出液は還元され、還元液として後続の希土類還元工程に払い出した。
図1の工程図にしたがって、複分解工程と希土類溶解工程を行った。
まず、以下の条件により、浸出工程で得た浸出残渣を用いて複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得た。
前記浸出残渣30gを採取してビーカーに入れ、これに濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH10に調整した。ここで、スラリー濃度は、150g/Lとした。次に、液温を30℃に調整し、60分間撹拌後、濾過して複分解沈殿物と複分解後液とに分離した。
前記複分解沈殿物に、濃度64質量%の硫酸水溶液を添加し、pH5に調整し、室温で60分間撹拌後、濾過して溶解残渣と溶解液とに分離した。
ここで得た溶解残渣を分析した結果、前記浸出残渣に含まれた希土類元素のうち、ランタンの88%、セリウムの80%、プラセオジムの82%、ネオジムの81%、及びイットリウムの75%を複分解後液と溶解液とに回収することができた。
ここで、以下の条件により、還元工程で得た還元液を用いて希土類元素複塩化処理に付し、還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得た。
前記還元液7.0Lを用い、これをビーカー中で70℃に加温し、次に、還元液中のナトリウム濃度が6g/Lを超えるように、無水硫酸ナトリウム177.1gを添加し、60分間撹拌して中和処理に付し、希土類複塩の沈殿物を生成させ、濾液と分離した。
また、得た希土類元素複塩の沈殿物の品位としては、質量基準で、ランタン21.6%、セリウム9.2%、プラセオジム0.8%、ネオジム3.2%、及びイットリウム0.5%であった。一方、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、マンガン及びアルミニウムは、いずれも0.1%以下とほとんど含有されていなかった。なお、ここで得た希土類元素複塩は、別工程に移送して、従来方法を用いて精製し、新たなニッケル水素電池の負極原料として使用したが、なんら問題なく使用できた。
ここで、以下の条件により、希土類回収工程で得た濾液を用いて酸化中和処理に付し、鉄とアルミニウムを沈殿させた。
前記濾液7.0Lをビーカーに入れ、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.57リットルを添加してpH4に調整し、70℃の温度に保持しながら空気を1L/分の流量で4時間吹き込み、さらに空気吹き込みの終了直前に濃度35質量%の過酸化水素水溶液12.9mLを添加し、濾液中の2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化した。なお、酸化中和処理の終了時の酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、380mVであった。その後、酸化中和殿物と酸化中和後液とに濾別し、酸化中和後液を分析した。
その結果、鉄は、ほぼ100%が沈殿し、濾液中の鉄濃度は0.01g/L以下となった。また、アルミニウムの沈殿率は90%であった。一方、ニッケル沈殿率は5%、及びコバルト沈殿率は2%と低く、鉄及びアルミニウムを沈殿させ、濾液中に残留するニッケル及びコバルトと分離することができることが分かった。
なお、pHを3又は5として空気を吹き込んだ場合、pH3では、鉄の沈殿が不十分であり、また、pH5では、ニッケルの一部が沈殿した。
ここで、以下の条件により、酸化中和工程で得た酸化中和後液を用いて溶媒抽出に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得た。
前記溶媒抽出は、ミキサーセトラーを用い、抽出3段及び逆抽出3段の構成とした。なお、有機相には、有機抽出剤としてPC−88Aを使用し、テクリーンN20で希釈して20容量%の組成としたものを用いた。
[抽出段]
・抽出始液及び有機相の各給液量:15mL/分
・水相と有機相の比(O/A比):1
・水相のpH:5
・液温:40℃
その結果、抽出段では、酸化中和後液中に含有される金属が有機相中に抽出された抽出率は、ニッケルが2.5%、及びコバルトが99.9%であり、マンガンがほぼ100%であった。一方、水相中の金属濃度は、コバルトが7mg/L、及びマンガンが1mg/L未満であり、コバルト及びマンガンとニッケルとが分離された。また、得た抽出残液中には、硫酸ニッケル水溶液以外に不純物はほとんど含有されていなかった。この得た硫酸ニッケルすい溶液を中和して水酸化ニッケルを製造して、この水酸化ニッケルを用いて、新たにニッケル水素電池を作製したところ、電池材料として再利用できることが確かめられた。
[逆抽出段]
・逆抽出始液及び有機相の各給液量:15mL/分
・水相と有機相の比(O/A比):1
・水相のpH:3段階の場合、第1段階:2.5、第2段階:0.5及び第3段階:0.03であり、1段階の場合、3.0、2.0、1.6、及び1.1であった。
・液温:40℃
結果を表2に示す。
(1)水相のpHを変えた3段階の分別逆抽出の場合、
(イ)まず、第1段階の逆抽出として、抽出後有機相をpH2.5に調整した水相(溶液1)で逆抽出すると、該有機相中のコバルトの90%以上、及びマンガンの約50%が水相中に分離された。一方、亜鉛及びイットリウムは逆抽出されず、この結果、コバルトとマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(ロ)引き続いて、第2段階の逆抽出として、第1段階の逆抽出後有機相をpH0.5に調整した水相(溶液2)で逆抽出すると、該有機相中の亜鉛と残留したマンガンが水相中に分離された。この結果、亜鉛とマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(ハ)さらに、第3段階の逆抽出として、第2段階の逆抽出後有機相をpH0.03に調整した水相(溶液3)で逆抽出すると、該有機相中のイットリウムの96%程度が水相中に分離された。この結果、亜鉛とマンガンを主成分とする水溶液を得ることができた。
(2)所定の水相のpHで1段階の逆抽出の場合
pHを3.0、2.0、1.6、及び1.1とした水相(それぞれ、溶液4、5、6、及び7)を用いて、それぞれ逆抽出したところ、3段階の分別逆抽出の場合と同様に、pHにより、コバルトとマンガン、亜鉛、及びイットリウムを分離することができた。
なお、その後、第1段階及び第3段階の逆抽出により得られた水溶液は、系外に移送し、精製して得たコバルトとイットリウムをニッケル水素電池の原料として再び利用した。
2 洗浄工程
3 還元工程
4 浸出工程
5 複分解工程
6 希土類溶解工程
7 希土類回収工程
8 酸化中和工程
9 溶媒抽出工程
10 使用済みニッケル水素電池
11 正極及び負極活物質
12 洗浄後液
13 洗浄後残渣
14 還元液
15 還元残渣
16 浸出液
17 浸出残渣
18 複分解後液
19 複分解沈殿物
20 溶解液
21 溶解残渣
22 濾液
23 希土類元素複塩沈殿物
24 酸化中和後液
25 酸化中和殿物
26 抽出残液
27 逆抽出液
Claims (12)
- 使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離して回収する方法であって、
下記の(1)〜(6)に示す工程を含むことを特徴とする使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
(1)使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質を、酸性水溶液を用いて洗浄処理に付し、該正極活物質及び負極活物質に付着する電解液成分を除去して、洗浄後残渣と洗浄後液とを得る洗浄工程、
(2)前記洗浄工程で得た洗浄後残渣と下記浸出工程で得た浸出液を混合し、該洗浄後残渣中の金属成分を還元剤として利用して該浸出液を還元処理に付し、該浸出液中の鉄を2価に保持して、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を含有する還元液と還元残渣とを得る還元工程、
(3)前記還元工程で得た還元残渣に硫酸水溶液を添加し、かつ酸化しながら浸出処理に付し、ニッケル及び希土類元素を含有する浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程、
(4)前記還元工程で得た還元液に硫酸アルカリ又は水酸化アルカリを混合し、希土類元素複塩化処理に付し、該還元液中の希土類元素とアルカリとの反応により生成する希土類元素複塩からなる沈殿物とニッケル及びコバルトを含有する濾液とを得る希土類回収工程、
(5)前記希土類回収工程で得た濾液に、酸化剤と中和剤を添加して酸化中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する酸化中和後液と鉄及びアルミニウムを含有する酸化中和殿物とを得る酸化中和工程、及び
(6)前記酸化中和工程で得た酸化中和後液を、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出処理に付し、コバルト、マンガン、亜鉛及びイットリウムを含有する逆抽出液とニッケルを含有する抽出残液とを得る溶媒抽出工程 - さらに、下記の(7)、(8)に示す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
(7)前記浸出工程で得た浸出残渣にアルカリ水溶液を添加し、該浸出残渣中の希土類元素を複分解処理に付し、希土類元素を含有する複分解後液と複分解沈殿物とを得る複分解工程、及び
(8)前記複分解工程で得た複分解残渣に酸性水溶液を添加し、該複分解残渣中に残留する希土類元素を溶解処理に付し、希土類元素を含有する溶解液と溶解残渣とを得る希土類溶解工程 - 前記洗浄工程に先立って、前記使用済みニッケル水素電池を不活性雰囲気下に焙焼処理に付し、該使用済みニッケル水素電池を失活化し、次いで解体して正極活物質及び負極活物質を準備する前処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記洗浄工程において、酸性水溶液のpHは5〜8に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記浸出工程において、浸出液のpHは0〜5に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記浸出工程において、浸出液の温度は80℃以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記希土類回収工程において、反応時のpHは1〜5であり、かつ濾液中のアルカリ濃度は5g/L以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記酸化中和工程において、酸化中和時のpHは3.5〜4.5に維持するとともに、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、200mV以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記溶媒抽出工程において、抽出段のpHは3〜7であり、一方逆抽出段のpHは0〜4であることを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記溶媒抽出工程において、逆抽出段は、下記の(イ)〜(ハ)の3段階を順次行なうことを特徴とする請求項1に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
(イ)前記抽出段から得られた有機相とpHを2〜4に調整した硫酸水溶液からなる水相とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、コバルト及びマンガンを逆抽出する。
(ロ)前記(イ)の段階から得られた逆抽出後有機相とpHを1以上2未満の硫酸水溶液からなる水相を混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、亜鉛を逆抽出する。
(ハ)前記(ロ)の段階から得られた有機相とpHが0以上1未満に調整した硫酸水溶液とを混合し、次いで逆抽出後有機相と逆抽出後水相とを分離して、イットリウムを逆抽出する。 - 前記複分解工程において、アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種からなる水溶液であり、かつ複分解時のpHは7〜10に維持することを特徴とする請求項2に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
- 前記希土類溶解工程において、溶解時のpHは3〜5に維持することを特徴とする請求項2に記載の使用済みニッケル水素電池からの金属の回収方法。
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