本発明は、電解質膜−電極接合体(MEA)、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体およびその製造方法に関するものである。特に、本発明は、起動停止/連続運転におけるカソード触媒の腐食、及びアイドル停止運転を想定したOCV(Open Circuit Voltage)保持時の電解質膜の分解が抑制される電解質膜−電極接合体(MEA)およびその製造方法に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体を、ガス拡散層さらにはセパレータで挟持した構造となっている。電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜が一対の電極触媒層により挟持されてなるものである。
上記したようなMEAを有する固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応が進行する。まず、アノード側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒成分により酸化され、プロトンおよび電子となる(2H2→4H++4e−)。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している高分子電解質膜を通り、カソード側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する(O2+4H++4e−→2H2O)。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
このようなMEAでは、従来膜にかなり機械的ストレスがかかることによる膜の破損が生じ、電池の寿命が十分でないという問題があった。この問題を解決するために、MEAのエッジ領域をシールして膜を補強することが考えられている(特許文献1〜4)。これらのうち、特許文献1には、固体高分子電解質膜外縁部の機械的強度を高めて固体高分子電解質膜の破損を防止する目的で、固体高分子電解質膜の電極周縁部と電極の配置されない固体高分子電解質膜の外縁部とを補強膜で被覆し、さらにガスシール部を固体高分子電解質膜の外縁部に配置することが記載されている。また、特許文献2には、固体高分子電解質膜に加わる反応ガスの差圧や機械的ストレスによる固体高分子電解質膜の破損を防止する目的で、額縁状の保護膜を、ガスシール材及び電極周縁部双方を被覆するように固体高分子電解質膜の周縁部分に形成することが記載されている。特許文献3には、燃料極及び酸化剤極の膜と接する面積を、額縁状補強シートの配置によって変える(請求項4〜6)ことにより、膜を挟んで各触媒層が重合することを防止し、膜の破損を防止することが記載されている。当該方法によると、膜にかかる機械的ストレスによる膜の破損を防止し、また、生成水を良好に排出させることにより、電池寿命を向上できることが記載される。また、特許文献4には、電極を構成する多孔質カーボン部材のへたりを阻止することを目的として、触媒層の面積を変えた触媒層の外周縁部とセパレータとの間にシールを介装し、かつ当該触媒層の外周縁部には、シールの当接面に対応して予め圧縮処理を施すことが記載される。
また、酸を電解質とする燃料電池、特にリン酸型の燃料電池では、触媒層の劣化を抑制するために、カソード触媒層のエッジ領域に耐水性材料からなる層を配置したり、アノード触媒層の塗布面積をカソード触媒層の塗布面積より大きくすることによって、カソード触媒層のカーボンの腐食を抑制することが記載されている(特許文献5)。具体的には、当該公報には、電解質マトリクス上に、フルオロエチレンプロピレン(FEP)等の弗素系樹脂の粉末を単位体積当たり0.2g/cc担持させて、カソード触媒層側のエッジ領域に接するように層を形成することが記載されている(段落「0024」及び図1参照)。
特開平5−242897号公報
特開平5−21077号公報
特開平10−172587号公報
特開2004−39385号公報
特開平5−21077号公報
上述したような固体高分子型燃料電池では、従来様々な問題があった。代表的かつ重要な問題としては、アイドル停止(OCV:Open Circuit Voltage)状態における電解質膜の劣化の問題がある。この劣化メカニズムを図2を参照しながら説明する。すなわち、電解質膜は完全にガスを遮断(不透過状態)するものではないため、酸素や水素ガスの濃度勾配(分圧)によっては、アノード側からカソード側に向かって水素が、カソード側からアノード側に向かって酸素や窒素が、僅かながら透過(溶解拡散)している(このような現象を「クロスリーク」とも称する)。特にOCV時は、カソードと電解質膜の界面における酸素濃度は、発電時に比べて高いため、電解質膜を介してカソード側からアノード側へ溶解拡散する酸素量も、発電時に比べて多くなる。このため、クロスリークにより酸素がカソード側からアノード側へ移行して、酸素がアノード側で水素と直接反応して、H2+O2→H2O2の反応が起こって、過酸化水素(H2O2)が生成し、また、水素がアノード側からカソード側へ移行して、水素がカソード側で酸素と直接反応して、同様にして過酸化水素が生成する。この過酸化水素は、電解質膜またはアノード若しくはカソードに含まれる電解質成分(アイオノマー)を分解して、電解質膜を化学的に劣化させることが知られている。ここで、アノード触媒層とカソード触媒層の電位と過酸化水素の分解反応との関係を考慮すると、電解質電位に対して電位が比較的高い(0.6〜1V程度)カソード側では、カソード近傍の酸素と、アノード触媒層よりクロスリークしてきた水素が直接反応するため、生成する過酸化水素は、H2O2→O2+2H++2e−の反応によって、比較的速やかに酸素とプロトンとに分解する。これに対して、アノード側では、電位が低いために上記したような過酸化水素の分解反応は生じにくい。このため、アノード側で多く発生する過酸化水素が、濃度拡散により電解質膜中に移動して、電解質膜を酸化劣化させたり、あるいは電解質膜中のカチオン(例えば、Fe2+、Cu2+)の存在により加速的に電解質膜成分を劣化させる。特にアノード触媒層とカソード触媒層の形成位置が完全に一致せずに位置ずれが生じている場合には、カソード触媒層が存在せずアノード触媒層のみ存在する領域では、カソード触媒層側に供給される酸素が直接アノード触媒層側に移動するため、酸素のクロスリーク量が多く、このような領域での過酸化水素が相対的に多くなるため、当該周囲部では、アノード触媒層が存在する領域(中央部)に比べて、電解質膜の劣化がさらに進んでしまう。
上記問題は、比較的最近提起されたものであり、現在、解決手段が強く望まれているものの、有効な解決手段が見出されていない。実際、これらの問題に関しては、上記特許文献1〜4では、全く開示または示唆されていない。事実、特許文献1,2では、固体高分子電解質膜外縁部の機械的強度の向上を目的としており、特許文献1,2に記載されるような構造では、上記したような電解質膜の分解の抑制については考慮に入れていないため、触媒層がMEAの厚み方向に対して位置ずれがある場合には、上述の酸素のクロスリークに起因する電解質膜の劣化のみならず、特許文献5に記載の触媒の腐食も起こり、MEAの耐久性が低下するという問題は解消できない。また、特許文献3には、触媒層の面積を燃料極(アノード)及び酸化剤極(カソード)で変えることは記載されているものの、段落[0036]、並びに図6,7,12〜14をみると、触媒層の面積が燃料極(アノード)<酸化剤極(カソード)となっており、このような触媒層を有するMEAでは、上記したカソード触媒層でのカーボン担体の腐食の問題及びアイドル停止状態における電解質膜の劣化の問題は解消できない。さらに、特許文献4には、アノード触媒層の面積をカソード触媒層の面積より大きくすること(段落[0018])が記載されているものの、当該構成はMEAとセパレータとのシール性の向上であり、さらにアノード触媒層の面積とカソード触媒層の面積との面積比については何ら記載されていない。
また、特許文献5には、確かに触媒層でのカーボン担体の腐食に関しては記載されているものの、燃料電池の中でも、特にリン酸のような酸を電解質として使用する燃料電池を対象としているため、電解質の劣化についてはなんら考慮されていない。このため、弗素系樹脂粉末をそのまま担持させて層を形成しているが、この層はガス透過性であり、ガスケットとして機能していないため、これを固体高分子型燃料電池の電解質膜−電極接合体に適用しても、OCV時に、カソード近傍からクロスリークした酸素が、アノード側に拡散して、アノード近傍の水素と直接反応して過酸化水素が多量に生成して、電解質膜の酸化劣化を誘発してしまう。つまり、当該担持層の存在によってカソード側からの酸素のクロスリークを十分抑制することができないため、過酸化水素の形成による電解質膜の酸化劣化も十分抑制・防止することはできない。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、OCV保持時の電解質膜の分解を有効に抑制できる電解質膜−電極接合体を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、所望の大きさのカソード触媒層及びアノード触媒層を、それぞれ、高分子電解質膜の所望の位置に容易にかつ正確に配置できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供するである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、カソード触媒層の端部、好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層の端部にガスケット層を形成することによって、アノード触媒層及びカソード触媒層の大きさを容易に制御できると共に各触媒層の位置合わせが容易であることを見出した。また、このように触媒層の端部を、アノード触媒層のサイズがカソード触媒層より大きくなるように、ガス不透過性のガスケット層でシールすることによって、触媒として有効に働く、即ち、運転(発電)時にO2+4H++4e−→2H2Oの反応が起こるカソード触媒層(有効カソード触媒層)面積を、触媒として有効に働く、即ち、運転(発電)時に2H2→4H++4e−の反応が起こるアノード触媒層(有効アノード触媒層)面積より小さく規定し、さらに電解質膜の酸化劣化要因となるカソード触媒層側からアノード触媒層側への酸素のクロスリークが特に生じ易いカソード触媒層の端部領域をガス不透過性のガスケット層で覆うことによって、前記クロスリークが生じる領域を最小限の大きさにすることができ、全体の酸素クロスリーク量を最小限に抑制できるので、電解質膜の酸化劣化を有効に抑制することができることをも見出した。より具体的には、図3Aに示されるように、有効カソード触媒層のサイズが25cm2でかつ有効アノード触媒層のサイズが26cm2であるMEA(図3Aの上段)、及び有効カソード触媒層のサイズが26cm2でかつ有効アノード触媒層のサイズが25cm2であるMEA(図3Aの下段)は、双方とも、燃料電池スタックに組み込んだ場合の有効触媒層面積は、小さいほうの面積、即ち、上記場合では、25cm2となる。これに対して、酸素のクロスリークに関しては、酸素はカソード触媒層側からアノード触媒層側にクロスリークするので、酸素が供給される有効カソード触媒層の面積に依存する。すなわち、図3Bに示されるように、有効カソード触媒層のサイズが25cm2でかつ有効アノード触媒層のサイズが26cm2であるMEA(図3Bの上段)では酸素のクロスオーバー領域は25cm2であるが、有効カソード触媒層のサイズが26cm2でかつ有効アノード触媒層のサイズが25cm2であるMEA(図3Bの下段)では酸素のクロスオーバー領域は26cm2となる。このため、有効触媒層面積と酸素のクロスオーバー領域の面積とが同じである図3A,B上段のMEAは、有効触媒層面積が酸素のクロスオーバー領域の面積よりも小さい図3A,B下段のMEAに比して、カソード触媒層側からアノード触媒層側への酸素のクロスリーク、ゆえに電解質膜の酸化劣化を有意に抑制することができる。
さらに、本発明者らは、上記構成をとることによって、カソード触媒層が存在せずアノード触媒層のみが存在する周囲部をガス不透過性のガスケット層でシールして、特にカソード触媒層端部で顕著に起こっていたカソードからアノードへの酸素のクロスリークを抑制して、当該領域でのアノード側での過酸化水素の生成を有意に抑えることができ、これにより電解質膜の劣化を効果的に防止/抑制することができることをも見出した。
上記知見に加えて、本発明者らは、触媒層の端部または周囲部にガスケット層を形成する際に、接着剤(特に、ホットメルト系接着剤)を用いることによってガスケット層によるシールとガスケット層の形成がより高精度に行われうることを見出した。
これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に配置された、カソード触媒層と、前記高分子電解質膜の他方の側に配置された、アノード触媒層と、前記有効アノード触媒層の面積が前記有効カソード触媒層の面積よりも大きくなるように、前記カソード触媒層の端部に形成された、第一のガスケット層と、を有する、電解質膜−電極接合体によって達成される。
また、上記目的は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の面に配置された、カソード触媒層と、前記高分子電解質膜の他方の側に形成された、アノード触媒層と、前記カソード触媒層の端部または周囲部の少なくとも一部に形成された、第一のガス不透過層に第一の接着剤層が形成されてなる第一のガスケット層と、を有し、かつアノード触媒層の面積がカソード触媒層の面積よりも大きい、電解質膜−電極接合体によっても達成される。
本発明の電解質膜−電極接合体は、起動停止/連続運転中のカソード触媒のカーボン腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有効に防止/抑制できる。
また、本発明の製造方法によれば、上記のような効果を奏する電解質膜−電極接合体を容易にかつ正確に製造しうる。
本発明の第一は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の一方の側に配置された、カソード触媒層と、前記高分子電解質膜の他方の側に配置された、アノード触媒層と、前記有効アノード触媒層の面積が前記有効カソード触媒層の面積よりも大きくなるように、前記カソード触媒層の端部に形成された、第一のガスケット層と、を有する、電解質膜−電極接合体に関する。なお、本明細書では、カソード触媒層の端部に形成・配置されるガスケット層を、単に「第一のガスケット層」と称する。
本明細書において、「有効アノード触媒層」とは、アノード触媒層のうち、運転(発電)時に2H2→4H++4e−の反応が起こる領域を意味し、具体的には、ガスケット層と重複しないアノード触媒層領域であり、単に「アノード触媒層」と称する場合には、高分子電解質膜上に形成されたすべてのアノード触媒層を意味し、即ち、上記有効アノード触媒層に加えて、以下で詳述するが第二のガスケット層との重複部分をも含む。また、アノード触媒層については、第二のガスケット層とアノード触媒層が重ならない場合も存在し、その場合は、「有効アノード触媒層」と「アノード触媒層」は等しくなる。このような例としては、例えば、図10に示されるような例が挙げられる。より詳細には、図10に示されるように、電解質膜上に、アノード触媒層及び第二のガスケット層が、対向する端部が離れた状態で配置される。このような場合には、電解質膜上に形成されたアノード触媒層がそのまま有効アノード触媒層となる。
また、本明細書において、「有効カソード触媒層」とは、カソード触媒層のうち、運転(発電)時にO2+4H++4e−→2H2Oの反応が起こる領域を意味し、具体的には、ガスケット層と重複しないカソード触媒層領域であり、単に「カソード触媒層」と称する場合には、高分子電解質膜上に形成されたすべてのカソード触媒層を意味し、即ち、上記有効カソード触媒層に加えて、第一のガスケット層との重複部分をも含む。
本発明の電解質膜−電極接合体(以下、単に「MEA」とも記載する。)は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように、少なくともカソード触媒層の端部、好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層双方の端部がガス不透過性のガスケット層でシールされることを特徴とするものである。なお、本明細書では、面積とは幾何学的な面積を意味し、触媒等の表面積を意味するわけではない。このような構成により、アノード下流の空気存在部に対向するカソード触媒層領域の面積を低減できる、即ち、カソード電位と電解質電位との差が大きい部分を有意に低減できるため、カソード触媒層のカーボンの腐食が効果的に防止/抑制できる。また、少なくともカソード触媒層の端部(好ましくはカソード触媒層及びアノード触媒層双方の端部)をガス不透過性のガスケット層でシールしているため、酸素のクロスリークが特に顕著に起こるカソード触媒層が存在しないあるいはこのようなカソード触媒層領域を有意に低減できる。したがって、本発明のMEAは、カソード触媒層のみが存在する周囲部がほとんどまたは全く存在せず、カソード触媒層端部でのカソードからアノードへの酸素のクロスリークがほとんどまたは全く起こらない構造をとることができる。したがって、従来重大な問題となっていた電解質膜の劣化をも効果的に防止/抑制することができる。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池は、起動停止/連続運転時及びOCV時の性能を長期間維持でき、また、燃費も向上できる。さらに、本発明のMEAは、ガスケット層が、ガス不透過性のガス不透過層に接着剤層が形成されてなる構成を有することを特徴とする。このような接着剤の採用によって、後述の製造方法の欄において詳細に説明するように、触媒層の端部とガスケット層との間がきっちり(低いガス透過率で)シールされうる。よって本発明によれば、信頼性の高いMEAが提供されうる。
本発明において、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積よりも大きくなることが必須の要件であるが、この際、有効アノード触媒層と有効カソード触媒層との位置関係は、特に制限されないが、図32(a)のように、MEAの厚み方向に対して、有効アノード触媒層内に有効カソード触媒層が完全に含まれる場合;または図32(b)のように、MEAの厚み方向に対して、有効カソード触媒層が部分的に有効アノード触媒層内に含まれる場合のいずれであってもよいが、前者の場合がより好ましい。同様にして、各触媒層の位置関係に関しても、特に制限されないが、図32(a)のように、MEAの厚み方向に対して、アノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合;図32(b)のように、MEAの厚み方向に対して、カソード触媒層が部分的にアノード触媒層内に含まれる場合;または図32(c)のように、MEAの厚み方向に対して、カソード触媒層がアノード触媒層と同位置に配置される場合のいずれであってもよいが、カソード触媒層がアノード触媒層と同位置に配置される場合及びアノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合がより好ましく、アノード触媒層内にカソード触媒層が完全に含まれる場合が特に好ましい。
本発明において、第一のガスケット層は、カソード触媒層の周辺部と重複するまたは接するように、カソード触媒層の周辺部から外側に向かって高分子電解質膜上に形成される。このような構成により、高分子電解質膜の劣化を有効に防止/抑制することができる。また、カソード触媒層の端部と第一のガスケット層との位置関係は、カソード触媒層の端部でのガス、特に酸素ガスの透過を十分抑制できるような関係であれば特に制限されない。例えば、第一のガスケット層を、第一のガスケット層の端部がカソード触媒層の端部で被覆されるように、カソード触媒層と高分子電解質膜との間に挿入する、及び第一のガスケット層を、カソード触媒層の端部を被覆するように形成するなどの位置関係が好ましく使用できる。なお、本発明において、第一のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるが、アノード触媒層の端部での水素のクロスリーク抑制に伴う燃費向上の観点から、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、従って、第一のガスケット層は、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されることが好ましい。
本発明では、第一のガスケット層をカソード触媒層の端部に形成することを必須の構成要件とするが、アノード触媒層側の端部または周囲部にもガスケット層をさらに形成することが好ましい。ここで、「端部にガスケット層を形成する」とは、カソード/アノード触媒層と第一/第二のガスケット層が厚み方向に対して重なることまたはカソード/アノード触媒層の端部と第一/第二のガスケット層の端部とが隣接することを意味し、触媒層の内端部とガスケット層の端部との間には間隙を生じさせない。このような構造をとることによって、高分子電解質膜の劣化の防止/抑制効果が有効に達成できる。他方、「周囲部にガスケット層を形成する」とは、アノード触媒層と第二のガスケット層が厚み方向に対して重ならないことを意味する。すなわち、本発明のMEAの好ましい形態としては、カソード触媒層、高分子電解質膜及びアノード触媒層を有する電解質膜−電極接合体において、カソード触媒層の少なくとも一部に第一のガスケット層が形成されかつアノード触媒層の端部の少なくとも一部に第二のガスケット層が形成され、該第一及び第二のガスケット層は、第二のガスケット層が形成されないアノード触媒層領域の面積が第一のガスケット層が形成されないカソード触媒層領域の面積より大きくなるように、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部に形成されることを特徴とする電解質膜−電極接合体がある。このように、アノード触媒層側の端部にもガスケット層を形成することで、有効カソード触媒層と有効アノード触媒層との位置合わせが正確にかつ容易に行なえ、起動停止/連続運転中のカソード触媒のカーボン腐食やOCV保持時の電解質膜の分解が有効に防止/抑制できるからである。なお、本明細書では、このアノード触媒層の端部に形成されるガスケット層を、単に「第二のガスケット層」と称する。
この際、第二のガスケット層は、アノード触媒層の端部のうち、少なくとも一部と重複するように、アノード触媒層の周辺部から外側に向かって高分子電解質膜上に形成することが望ましい。しかしながら、カソード触媒層とアノード触媒層との位置合わせの容易さやガス(水素や酸素)のシール性などを考慮すると、アノード触媒層の端部全域にわたって形成されることがより好ましい。また、アノード触媒層の端部と第二のガスケット層との位置関係は、アノード触媒層の端部でのガスの透過を十分抑制できるような関係であれば特に制限されない。例えば、第二のガスケット層を、第二のガスケット層の端部がアノード触媒層の端部で被覆されるように、アノード触媒層と高分子電解質膜との間に挿入する、及び第二のガスケット層を、アノード触媒層の端部を被覆するように形成するなどの位置関係が好ましく使用できる。なお、本発明において、第二のガスケット層は、電解質膜の周辺部の少なくとも一部を被覆して形成されるが、アノード触媒層の端部での水素のクロスリーク抑制に伴う燃費向上の観点から、周辺部のガスシール性が保たれていることが好ましく、したがって、第二のガスケット層もまた、第一のガスケット層の場合と同様、アノード触媒層の端部に形成される、すなわち、電解質膜の全周辺部にわたって額縁状に形成されることが好ましい。
上記第一及び第二のガスケット層の形成の組み合わせは、特に制限されないが、上記好ましい例示のいずれの組み合わせであってもよい。好ましくは、(1)第一のガスケット層がカソード触媒層の端部で被覆されるようにカソード触媒層と高分子電解質膜との間に形成され、かつ第二のガスケット層がアノード触媒層の端部で被覆されるようにアノード触媒層と高分子電解質膜との間に形成される;(2)第一のガスケット層がカソード触媒層の端部を被覆するように形成され、かつ第二のガスケット層がアノード触媒層の端部を被覆するように形成される;または(3)第一のガスケット層がカソード触媒層の端部で被覆されるようにカソード触媒層と高分子電解質膜との間に形成され、かつ第二のガスケット層がアノード触媒層の端部を被覆するように形成される組み合わせが好ましい。上記組み合わせのうち、短絡(アノード/カソード両触媒層の接触)を有効に防止できる及びカーボンの腐食が起こり難いという意味では、アノード触媒層および/またはカソード触媒層と電解質膜との間に、第一または第二のガスケット層の少なくとも一方が挿入されていることが好ましい。この点では、(1)及び(3)の組み合わせが好ましい。また、カーボンの腐食の抑制効果はやや劣るものの、製造は容易であるという点では、上記(2)の組み合わせが好ましく使用される。
また、本発明では、カソード触媒層の端部に第一のガスケット層、及び好ましくはアノード触媒層の端部に第二のガスケット層を形成することによって有効アノード触媒層及び有効カソード触媒層を容易にかつ正確に調節できる。このため、各触媒層の端部が電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して同位置で終結するように、各触媒層を予め正確に位置合わせしなければいけない必要がないため、工業的な大量生産を考慮すると非常に望ましい。即ち、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部は、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結していてもよいが、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置がずれていてもよい。このような場合であっても、ガスケット層を、各触媒層が所望の大きさ及び位置関係にあるように、触媒層端部に適宜形成すればよいからである。この際、アノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、カソード触媒層の端部を越えて終結することが好ましい。上述したように、本発明では、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きいことが必須であるため、このようにカソード触媒層を予めアノード触媒層の大きさより小さくしておくことにより、使用する触媒や電解質の量を少なく抑えられ、また、ガスケット層部分との重複も少なくできるため、経済的に好ましい。
本発明の電解質膜−電極接合体においては、触媒層の端部とガスケット層、特に以下に詳述するガス不透過層の端部とがぴったり一致している必要はなく、ある程度の間隙が存在してもよい。かような場合であっても、ガス不透過性を示す接着剤層によって当該間隙が埋められれば、同様にガスケット層として機能し、本発明の作用効果が充分に発揮されうるためである。すなわち、本発明の電解質膜−電極接合体の好ましい形態においては、第一または第二のガス不透過層の内端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して触媒層の端部よりも外側に位置し、ガス不透過層の内端部と触媒層の外端部との間に接着剤層が配置される(請求項9)。
また、本発明において、第二のガスケット層がさらにアノード触媒層の端部に形成されることが好ましい。これにより、アノード触媒層及びカソード触媒層の大きさを容易に制御できる;各触媒層の位置合わせが容易である;触媒層の端部をガスケット層でシールするため、起動時におけるアノード触媒層下流の空気存在部に対向するカソード触媒層領域、並びに連続運転時においてアノード触媒層がなく水素が酸化されない領域に対向するカソード触媒層領域を低減でき、カソード電位と電解質電位との差が大きくなる部分を少なくすることができるため、カソード触媒層のカーボンの腐食を効果的に防止/抑制することができる;およびカソード触媒層が存在せずアノード触媒層のみが存在する周囲部をガスケット層でシールして、カソード触媒層端部で顕著に起こりやすいカソードからアノードへの酸素のクロスリークを抑制して、当該領域でのアノード側での過酸化水素の生成を有意に抑えることができるため、電解質膜の劣化を効果的に防止/抑制することができる;などの利点が達成できる。この際、触媒層の端部とガスケット層の端部は重複していることが好ましく、この場合のカソード触媒層側に関しては、カソード触媒層の端部と第一のガスケット層との重複部分の長さ[図7中のA(mm)]は0超である(A>0)ことが好ましい。より好ましくは、当該長さAは、0.2〜2.0mm、最も好ましくは0.5〜1.5mmである。また、アノード触媒層側に関しては、アノード触媒層の端部と第二のガスケット層との重複部分の長さ[図7中のB(mm)]は0を超えかつ2mm以下である(0<B≦2)ことが好ましい。より好ましくは、当該長さBは、0.2〜2.0mm、最も好ましくは0.5〜1.5mmである。さらに、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対する、カソード触媒層の外端部とカソード触媒層の外端部を越えて終結するアノード触媒層の外端部との距離[図7中のC(mm)]は、前記Bより大きい(B<C)ことが好ましい。より好ましくは、当該長さCは、2.1〜4.0mm、最も好ましくは2.5〜3.5mmである。上記A及びBが上記範囲にあれば、触媒層端部のシール性が十分確保できる。
本発明の電解質膜−電極接合体において、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対する、カソード触媒層の外端部と第二のガスケット層の内端部との距離[図7中のX(mm)]は0超である(X>0)ことが好ましい。より好ましくは、当該長さXは、0.1〜3.8mm、最も好ましくは1.0〜3.0mmである。このような範囲にあれば、後に詳述するように、MEA各層を接合する際のホットプレスや電池を組み立てる際の締結圧(MEAをセパレータで挟持する際にかかる圧縮圧力)などによる電解質膜の経時的な劣化を有効に抑制・防止でき、また、圧縮応力により膜がつぶれてカソード触媒層とアノード触媒層が接触して短絡する現象をも有効に抑制・防止できる。
さらに、本発明の電解質膜−電極接合体において、第一のガスケット層および/または第二のガスケット層は、カソード/アノード触媒層の端部と重複する部分またはカソード/アノード触媒層の端部と接する部分は少なくともガス透過性を抑制する機能を有することが好ましい。このようにガスケット層にガス透過抑制/阻害機能を付与することによって、ガスケット層端部と触媒層端部との重複部分でのガスシール性(特に、カソード側での酸素ガスに対するシール性)をより向上することができる。ガスケット層へのガス透過抑制/阻害機能の付与方法は、特に制限されないが、例えば、下記に詳述するように、ガスケット層をガス不透過層及び接着剤層から構成する方法において、(1)触媒層及び電解質膜をホットプレスにより接合する際に、触媒層端部とガスケット層との重複部分に選択的に所定の厚みを有するシートを配置した後、熱圧着を行ない、当該重複部分にかかる熱圧着による圧力によって重複部分に接着剤層の接着剤を十分しみこませる方法;(2)当該重複部分において、接着剤層の厚さ若しくは接着剤層中に含まれる接着剤の量を適宜設定することにより、重複部分に接着剤層の接着剤がしみこむ量を制御する方法;(3)当該重複部分のガスケット層(ガス不透過層および/または接着剤層)に予め樹脂を含浸させておく方法;(4)当該重複部分の触媒層を予め密に形成する方法などが好ましく使用される。しかしながら、ガスケット層へのガス透過抑制/阻害機能の付与方法は上記方法に限定されるものではなく、他の公知の方法を適用してもよい。
本発明の電解質膜−電極接合体は、公知の方法と同様にしてあるいは適宜修飾した方法を使用することにより製造できる。具体的には、高分子電解質膜上に、カソード触媒層、アノード触媒層及び第一のガスケット層、ならびに必要であれば第二のガスケット層を、適当な配列、例えば、上記したような配列で順次形成する方法が使用できる。
したがって、本発明の第二は、高分子電解質膜のカソード触媒層側表面に、第一のガスケット層を形成した後、該ガスケット層の端部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに形成する工程;および高分子電解質膜のアノード触媒層側表面に、第二のガスケット層を形成した後、該ガスケット層の端部とアノード触媒層の端部とが重なるように、アノード触媒層をさらに形成する工程を有し、かつ第一のガスケット層及び第二のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、本発明のMEAの製造方法に関するものである。
また、本発明の第三は、高分子電解質膜のカソード触媒層側表面に、カソード触媒層を形成した後、該カソード触媒層の端部を被覆するように第一のガスケット層をさらに形成する工程;および高分子電解質膜のアノード触媒層側表面に、アノード触媒層を形成した後、該アノード触媒層の端部を被覆するように第二のガスケット層をさらに形成する工程を有し、かつ第一のガスケット層及び第二のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、本発明のMEAの製造方法に関するものである。
さらに、本発明の第四は、高分子電解質膜のカソード触媒層側表面に、第一のガスケット層を形成した後、該ガスケット層の端部とカソード触媒層の端部とが重なるように、カソード触媒層をさらに形成する工程;および高分子電解質膜のアノード触媒層側表面に、アノード触媒層を形成した後、該アノード触媒層の端部を被覆するように第二のガスケット層をさらに形成する工程を有し、かつ第一のガスケット層及び第二のガスケット層は、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きくなるように形成されることを特徴とする、本発明のMEAの製造方法に関するものである。
本発明の方法によると、カソード触媒層、第一のガスケット層、アノード触媒層、及び必要であれば第二のガスケット層を、所望の順番で正確にかつ容易に配置できる。また、第一のガスケット層及び第二のガスケット層を、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部にそれぞれ配置することによって、有効カソード触媒層及び有効アノード触媒層が所望の面積になるように正確に規定することができる。
本発明の方法において、カソード触媒層の端部に第一のガスケット層、及び好ましくはアノード触媒層の端部に第二のガスケット層を形成するため、各触媒層の位置合わせが正確である必要は必ずしもない。即ち、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結していてもよいが、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置がずれていてもよい。このような場合であっても、ガスケット層を、各触媒層が所望の大きさ及び位置にあるように、触媒層端部に適宜形成すればよいからである。この際、アノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、カソード触媒層の端部を越えて終結することが好ましい。上述したように、本発明では、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きいことが必須であるため、このようにカソード触媒層を予めアノード触媒層の大きさより小さくしておくことにより、使用する触媒や電解質の量を少なく抑えられ、また、ガスケット層部分との重複も少なくできるため、経済的に好ましい。
例えば、上記本発明の第二の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結した場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図4に示されるような構造となる。このような場合には、カソード及びアノード触媒層間にガスケット層が存在するため、後にガス拡散層などをプレスする際や、燃料電池スタックとして積層する際に触媒層の端部同士が接触してエッジ部の短絡が起こることを防止できるという利点がさらにある。また、上記本発明の第三の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結した場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図5に示されるような構造となる。このような方法は、触媒層を形成した後にガスケット層を設けているため、上記図4の方法に比べて製造工程が簡便であり、また、有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層の周囲部をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点がある。さらに、上記本発明の第四の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ほぼ同位置で終結した場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図6に示されるような構造となる。上記したような構造は、上記本発明の第二及び第三で示された構造を組み合わせたものであり、即ち、カソード及びアノード触媒層間にガスケット層が存在するため、後にガス拡散層などをプレスする際のエッジ部の短絡が防止できる上、さらにアノード触媒層側をガスケット層でシールしているため、アノード触媒層側の有効触媒層面積を容易に制御できるため有効アノード触媒層の面積をより確実に有効カソード触媒層の面積より大きく設定することができる。なお、上記図6の逆のパターン、即ち、第一のガスケット層をカソード触媒層の端部を被覆するように形成し、かつ第二のガスケット層をアノード触媒層の端部で被覆されるようにアノード触媒層と高分子電解質膜との間に形成する方法も可能ではある。しかしながら、このような方法では、第二のガスケット層とアノード触媒層との重複部分に対向しかつ電解質膜と接触するカソード触媒層部分が存在することになる。このため、カソード電位と電解質電位との差が大きくなり、カーボン腐食反応が起こり、カソード触媒層における導電性担体であるカーボンブラックの腐食が進行し、触媒活性が低下してしまうおそれがあるため、このような方法はあまり好ましくない。
また、上記本発明の第二の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ずれている場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図7に示されるような構造となる。このような場合には、各触媒層の端部が正確に位置合わせされていない場合にも、ガスケット層の配置によって各有効触媒層の面積を自由に設定でき、製造工程がより簡便になるという利点がある上、カソード及びアノード触媒層間にガスケット層が存在するため、後にガス拡散層などをプレスする際や、燃料電池スタックとして積層する際のエッジ部の短絡が防止できるという利点がさらにある。また、上記本発明の第三の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ずれている場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図8に示されるような構造となる。このような方法は、上記第二の方法で述べたのと同様、製造工程の簡便化の利点に加えて、触媒層を形成した後にガスケット層を設けているため、上記図4の方法に比べて製造工程が簡便であり、また、有効触媒層領域の制御が正確にかつ容易に行なうことができ、さらに、ガスケット層で触媒層をきっちり(低いガス透過率で)シールすることができるという利点がある。さらに、上記本発明の第四の方法において、カソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ずれている場合には、カソード触媒層及びアノード触媒層の端部は、図9に示されるような構造となる。上記したような構造は、上記第二の方法で述べたのと同様、製造工程の簡便化の利点に加えて、カソード及びアノード触媒層間にガスケット層が存在するため、後にガス拡散層などをプレスする際や、燃料電池スタックとして積層する際のエッジ部の短絡が防止できる上、さらにアノード触媒層側をガスケット層でシールしているため、アノード触媒層側の有効触媒層面積を容易に制御できるため有効アノード触媒層の面積をより確実に有効カソード触媒層の面積より大きく設定することができる。
本発明の方法、特にカソード触媒層の端部とアノード触媒層の端部の位置が、電解質膜−電極接合体の厚み方向に対して、ずれている場合の本発明の第二〜第四の方法において、カソード触媒層の端部と有効アノード触媒層の端部との間のギャップは可能な限り存在しない(例えば、図7において、「X」が0に近い)ことが好ましい。これは、このようなギャップ部分が存在すると、この部分で発生した電子(e−)とプロトン(H+)がカソード触媒層側に移行しても、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積より大きいので、このプロトンおよび電子はカソード側で酸素と効率よく反応することができずに、有効に触媒作用が働かないためである。このようなことを考慮すると、カソード触媒層の端部と有効アノード触媒層の端部との間のギャップ部分の幅(X)は、1cm以下、より好ましくは3mm以下であることが好ましい。
本発明において、カソード触媒層に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒成分及びアノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒インクに用いられる触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明において、上述した触媒粒子は導電性担体に担持された電極触媒として触媒インクに含まれる。
前記導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m2/g、より好ましくは80〜1200m2/gとするのがよい。前記比表面積が、20m2/g未満であると前記導電性担体への触媒成分および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m2/gを超えると触媒成分および高分子電解質の有効利用率が却って低下する恐れがある。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性担体上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。前記高分子電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる高分子電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明の方法では、上記したような電極触媒、高分子電解質及び溶剤からなる触媒インクを、高分子電解質膜表面(あるいはガスケット層を部分的に被覆するような状態で高分子電解質膜表面)に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できるが、触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。これらのうち、プロピレングリコール(PG)が好ましく使用される。これは、プロピレングリコール(PG)を使用することにより、触媒インクの沸点が高まり溶媒蒸発速度が小さくなる。このため、例えば、転写法で電解質膜に触媒層を形成する上で、まず膜とは別の転写用台紙上にスクリーンプリンターなどを使用して触媒インクを塗布、乾燥する際に、触媒インク中にPGを添加することにより、塗布された触媒インク中の溶媒蒸発速度が抑制され、前記乾燥過程後の触媒層にひび割れ(クラック)が生じることを抑制・防止できる(図33参照)。このようにひび割れの少ない触媒層を膜に転写することで、OCV耐久性試験における膜への機械的応力集中が緩和され、その結果、MEAの耐久性が向上することができる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは5〜65質量%である。特に増粘剤としてPGを使用する際のPGの添加量は、触媒インクの全質量に対して、10〜30質量%とすることが好ましい。
本発明の触媒インクは、電極触媒、電解質及び溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、高分子電解質膜上に、あるいはガスケット層の一部を被覆しながら高分子電解質膜上に、塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
また、本発明において、ガスケット層は、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、高分子電解質膜やカソード/アノード触媒層の端部との接着を目的とする接着剤層及びガス不透過材料からなる不透過層から構成される。
この際、不透過層を構成する材料は、膜にした際に酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
また、接着剤層に使用できる材料もまた、高分子電解質膜やカソード/アノード触媒層と、ガスケット層を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、この接着剤層もまたガス透過性が低いことが好ましい。かような接着剤層を採用すれば、製造されたMEAにおいては接着剤層もガス不透過層として機能しうるため好ましい。具体的には、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。これらのうち、接着剤層を構成する材料としては、ホットメルト型接着剤が好ましい。ホットメルト型接着剤は常温にて軟化しないことから、製造時のガスケット層配置工程における位置合わせが簡便であるという利点を有する。また、熱硬化型接着剤と比較して、短時間で容易に製造可能という利点をも有する。さらに、触媒層の端部にガスケット層を接着させるための接着剤層の種類によっては、ガスケット層のシール時に触媒層とガスケット層との間に隙間が生じる場合がある。例えばカソード側でかような隙間が生じると、この隙間から酸素ガスのクロスリークが起こり、過酸化水素の形成による電解質膜の酸化劣化が引き起こされてしまい、ガスケット層を設けた意味が薄れてしまう虞がある。これに対し、接着剤としてホットメルト型接着剤層を採用すると、シール時のホットプレス処理により軟化した当該接着剤層によって触媒層の端部が密封されうる。従って、ガスケット層による触媒層の端部のシール時に隙間が生じる虞が低減され、信頼性の高いMEAの製造が可能となる。この際、ホットメルト系接着剤の軟化点は、特に制限されず不透過層や触媒層に使用する材質などを考慮して適宜選択できる。好ましくは、ホットメルト系接着剤は、運転温度より高くかつ製造時に電解質膜や触媒層を損傷しない程度の温度範囲の軟化点を有する。これにより、実際に燃料電池に組み込んで運転を行なっても接着剤は軟化せず、触媒層の端部とガスケット層との間のきっちりしたシール性(低いガス透過率)を維持し、かつ下記に詳述するように、膜及び電解質膜などを組み込んでMEAを製造する際に熱をかけても、電解質膜や触媒層を損傷することなく(性能を低下させたり、破壊したりすることなく)MEAを製造できる。具体的には、ホットメルト系接着剤の融点は、50〜170℃、最も好ましくは90〜150℃である。
ガスケット層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、高分子電解質膜上に、あるいは触媒層の端部を被覆しながら高分子電解質膜上に、上記接着剤を、5〜30μmの厚みになるように塗布した後、上記したようなガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように塗布し、これを50〜170℃で、10秒〜10分間加熱することによって硬化させる方法が使用できる。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過膜に接着剤を塗布して、ガスケット層を形成した後、これを高分子電解質膜上に、あるいはガスケット層の一部を被覆しながら高分子電解質膜上に、貼り合わせてもよい。この際、不透過層の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましく、また、接着剤層もまた、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。
本発明のMEAに用いられる高分子電解質膜としては、特に限定されず、電極触媒層に用いたものと同様の高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている固体高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各電極触媒層と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜100μmである。製膜時の強度やMEA作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、MEA作動時の出力特性の観点から300μm以下であることが好ましい。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
本発明では、上述したように、第一のガスケット層、さらには好ましくは第二のガスケット層は、ガス不透過層に接着剤層が形成されるものであることが好ましいが、このような場合に特に好ましく使用できるMEAの製造方法としては、カソード触媒層およびアノード触媒層を、アノード触媒層の面積がカソード触媒層の面積よりも大きくなるように、高分子電解質膜のそれぞれの面に形成する触媒層形成工程;第一のガス不透過層に第一の接着剤層が形成されてなる第一のガスケット層を、前記第一の接着剤層と前記高分子電解質膜とが向かい合うように前記高分子電解質膜の周縁部の少なくとも一部に配置し、第二のガス不透過層に第二の接着剤層が形成されてなる第二のガスケット層を、前記第二の接着剤層と前記高分子電解質膜とが向かい合うように前記高分子電解質膜の端部または周囲部の少なくとも一部に配置するガスケット層配置工程;並びに、前記触媒層形成工程および前記ガスケット層配置工程により得られた積層体をプレスすることにより、前記第一のガスケット層および前記第二のガスケット層と前記高分子電解質膜とを接着させる接着工程、を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法があり、当該方法は、本発明の第五の態様を構成する。
以下、上記本発明の第五の態様を説明する。
まず、カソード触媒層およびアノード触媒層を、アノード触媒層の面積がカソード触媒層の面積よりも大きくなるように、高分子電解質膜のそれぞれの面に形成する(触媒層形成工程)。当該工程において、各触媒層に使用される触媒インク(触媒成分、導電性担体及び高分子電解質など)、電解質膜、並びに電解質膜への触媒方法については、上記第二及び第三の態様と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本発明の製造方法では、次いで、ガスケット層を配置するガスケット層配置工程を行う。
なお、触媒層を形成する触媒層形成工程と、ガスケット層を配置するガスケット層配置工程とは、いずれが先に行われてもよい。場合によっては、触媒層形成工程およびガスケット層配置工程が同時に行われてもよい。
上記の本発明の製造方法の配置工程において、カソード触媒層の周囲部への第一のガスケット層の配置、およびアノード触媒層の周囲部への第二のガスケット層の配置は、どのような配置により行われてもよい。すなわち、当該配置工程において、ガスケット層の配置は、例えば、第一のガスケット層の端部とカソード触媒層の端部とが略一致し、かつ第二のガスケット層の端部とアノード触媒層の端部とが略一致するように行われてもよい(図11に示すパターン)。このような配置によれば、触媒層とガスケット層との間のシールが最も高精度に行われ、これらの間に生じる隙間が最小限に抑制されうる。なお、このように触媒層の端部とガスケット層の端部とが略一致するようにガスケット層を配置する場合には、ガスケット層に形成される接着剤層において、少なくとも一部に、厚さを他の部分よりも薄くした薄部を設けるとよい(図12に示すパターン)。かような形態によれば、接着剤層のガスケット層からのはみ出しが抑制され、MEA製造時の歩留まりが向上しうる。また、上述したような接着剤層のはみ出し抑制効果をより一層発揮させたい場合には、ガスケット層の少なくとも一部に、接着剤層が存在しない露出部を設けるとよい(図13に示すパターン)。
一方、ガスケット層の配置は、触媒層の端部との間にある程度の隙間をあけて行われてもよい。このように触媒層の端部との間にある程度の距離をおいてガスケット層を配置する場合には、例えば、ガスケット層に形成される接着剤層において、一部(特に、内端部(触媒層側))の厚さを他の部分と比較して厚くするとよい(図14に示すパターン)。かような形態によれば、配置工程においてガスケット層と触媒層の端部との間にある程度の隙間があったとしても、厚く形成された接着剤層が、接着工程においてこの隙間を塞ぐための接着剤層として確保され、ガスケット層と触媒層の端部との間の密封がより確実に行われうる。このような形態は、接着剤としてホットメルト型接着剤を採用した場合に特に効果的である。
あるいは、接着剤層を、ガスケット層の外端部(MEAの外側)から内端部(触媒層側)へ向かう方向に凸状に複数形成してもよい(図15に示すパターン)。このような複数のホットメルト型接着剤層は、接着工程におけるホットプレス処理によって溶融し、一体化する。かような形態によってもまた、配置工程においてガスケット層と触媒層の端部との間にある程度の隙間があったとしても、ガスケット層と触媒層の端部との間の密封がより確実に行われうる。
このように、たとえガスケット層配置工程において触媒層の端部とガスケット層との間に隙間があったとしても、この隙間は、接着工程でのプレス処理により接着剤(特に、ホットメルト型接着剤)によって塞がれ、触媒層の端部とガスケット層との間は密封されうる(図16を参照)。よって、かような製造方法によれば、ガスケット層と触媒層の端部とがきっちり一致するようにガスケット層を配置する必要がないため、より簡便な製造が可能となる。
触媒層形成工程後にガスケット層配置工程を行う場合には、図17に示すように、触媒層形成工程とガスケット層配置工程との間に、ガスケット層配置工程におけるガスケット層の配置位置を合わせるためのガイド部材を配置するガイド部材配置工程をさらに行ってもよい。かようなガイド部材配置工程をさらに行うことにより、ガスケット層の配置がより精度よく行われ、信頼性の高いMEAが製造されうる。なお、ガイド部材配置工程において配置されたガイド部材は、ガスケット層配置工程においてガスケット層が配置された後、接着工程の前に除去される。
ガイド部材の構成材料などの具体的な形態は特に制限されない。ただし、高分子電解質膜や触媒層を被毒する虞が低い材料が採用されることが好ましく、かような材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル、ガラス、木材、金属などが例示されうる。その他の材料によりガイド部材が構成されてもよいことは勿論である。
ガイド部材の厚みについても特に制限はなく、ガスケット層の配置のガイドが効率的に行われうる厚みが適宜設定されうる。一例を挙げると、ガイド部材の厚みは、好ましくは100μm〜2cm程度、より好ましくは100μm〜3mm程度である。ただし、場合によってはこの範囲を外れる厚みのガイド部材が用いられてもよい。
本発明の製造方法においては、触媒層形成工程およびガスケット層配置工程の後に、接着工程が行われる。当該接着工程においては、触媒層形成工程および配置工程により得られた積層体をプレスする。これにより、ガスケット層の接着剤層を介して、ガスケット層と高分子電解質膜とを接着させる。
接着工程におけるプレス条件についても特に制限はなく、用いられる接着剤の種類等に応じて、従来公知の知見が適宜参照されうる。ただし、好ましい条件の一例を挙げると、プレス圧力は好ましくは0.05〜4.0MPa、より好ましくは0.1〜2.0MPaであり、プレス時間は好ましくは1秒〜10分間、より好ましくは10秒〜1分間である。また、接着剤としてホットプレス型接着剤を採用する場合には、接着工程においてホットプレスを行うことが好ましく、この際のプレス温度は好ましくは50〜170℃、より好ましくは90〜150℃である。
なお、上記では、触媒インクを直接塗布することにより、高分子電解質膜に、直接アノード/カソード触媒層またはガスケット層を形成する方法について述べてきたが、本発明のMEAは、転写法などの他の方法によって製造されてもよい。このような場合の製造方法は、特に制限されず、公知の転写方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できるが、例えば、以下のような方法が使用できる。すなわち、上記で調製したような触媒インクを転写用台紙上に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成する。この際、転写用台紙としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート等の、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、転写用台紙は、使用する触媒インク(特にインク中のカーボン等の導電性担体)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、電極触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、電極触媒層の厚みは、1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。また、転写用台紙上への触媒インクの塗布方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された電極触媒層の乾燥条件もまた、電極触媒層から極性溶媒を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒インクの塗布層(電極触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。次に、このようにして作製された電極触媒層で高分子電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、電極触媒層及び高分子電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより高分子電解質膜と電極触媒層との接合性を高めることができる。ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、電極触媒層と高分子電解質膜とからなるMEAを得ることができる。
上記の転写法により触媒層を形成する際に、転写用台紙に形成された触媒層の周囲部に上述のガス不透過層を配置し、さらに当該ガス不透過層上に接着剤を塗布することによって、触媒層と同時にガスケット層を転写用台紙に配置してもよい。かような形態によれば、触媒層の転写と同時に、ガスケット層が高分子電解質膜へと転写されうる。そして転写時のプレスが本発明の製造方法における接着工程を兼ねることができ、ガスケット層と触媒層の端部との間が密着された状態で、ガスケット層および触媒層が高分子電解質膜へと転写されうる。
なお、本発明によるMEAは、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有してもよく、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、電極触媒層と高分子電解質膜との接合後にさらに各電極触媒層に接合することが好ましい。または、電極触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して電極触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記したのと同様にして、この電極触媒層−ガス拡散層接合体で高分子電解質膜をホットプレスにより挟持・接合することもまた好ましい。
この際、MEAに用いられるガス拡散層としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られない恐れがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
電極触媒層をガス拡散層表面上に形成する方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、スプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、電極触媒層のガス拡散層表面上への形成条件は、特に制限されず、上記したような具体的な形成方法によって従来と同様の条件が適用できる。
前記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記カーボン粒子層における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られない恐れがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られない恐れがある。これらを考慮して、カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60程度とするのがよい。
前記カーボン粒子層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ガス拡散層に撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
ガス拡散層において基材上にカーボン粒子層を形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、前記スラリーを基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
なお、電極触媒層と電解質膜と、及び好ましくはガス拡散層を含む接合体の製造方法は、上述した方法に限定されない。すなわち、触媒インクを電解質膜上に塗布・乾燥させた後ホットプレスして、電極触媒層を固体高分子電解質膜と接合し、得られた接合体をガス拡散層で挟持して、MEAとする方法;触媒インクを、前記ガス拡散層上に塗布・乾燥させて電極触媒層を形成し、これを電解質膜とホットプレスにより接合する方法、などであってもよく各種公知技術を適宜用いて行えばよい。
本発明の電解質膜−電極接合体及び本発明の方法によって製造される電解質膜−電極接合体は、上述した通り、電解質膜−電極接合体に含まれる電解質成分の劣化を抑制することが可能となる。また、ガスケット層を設けることにより、触媒層の面積および配置を容易に決定することが可能となり、各触媒層を予め正確に位置合わせしなければいけない必要がないため、工業的な大量生産を考慮すると非常に望ましい。従って、かような電解質膜−電極接合体を用いることにより、製造工程が容易であり、耐久性にも優れる信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。なお、本発明のMEAは、アイドル停止(OCV)状態における電解質膜の劣化に特に効果を発揮できるため、当該電解質膜の劣化が問題となる高分子電解質型燃料電池、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池で有意な効果を発揮する。このため、このような電解質膜の劣化が問題視されないリン酸型燃料電池への適用は含まない。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
以下のようにして、図18に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.2cm×5.2cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を含まないフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚25μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は27cm2であった。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.2cm×5.2cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置し、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを作製した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.0cm×5.0cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmである開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.0cm×5.0cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着して、ガスケット層と重なる触媒層端部には、ガスが入らないように触媒層の気孔が十分に埋まる構造とした。
比較例1
以下のようにして、図19に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.0cm×5.0cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を含まないフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚25μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は25cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。
比較例2
以下のようにして、図20に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.0cm×5.0cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を含まないフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚25μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は25cm2であった。
比較例3
以下のようにして、図21に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して4倍量の精製水を加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE520)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.08mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.2cm×5.2cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.4mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を含まないフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚25μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は27cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.0cm×5.0cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmである開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.0cm×5.0cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置し、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを作製した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.2cm×5.2cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着した。
比較例4
以下のようにして、図22に示されるMEAを作製した。
まず、比較例1に記載の方法と同様にして、アノード触媒層及びカソード触媒層を作製した後、膜電極接合体(MEA)を作製した。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.2cm×5.2cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.0cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.2cm×5.2cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.2cm×5.2cmである開口部を打ち抜いて、1.0cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲から均等(0.5mm)にはみ出るように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.2cm×5.2cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.0cm×5.0cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲から均等(0.5mm)にはみ出るように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着した。
実施例2:OCV耐久試験
実施例1及び比較例1〜4で得られた膜電極接合体について、以下のようにしてそれぞれの性能を評価した。
[評価方法]
膜電極接合体の両面側に、ガス拡散層としてカーボンペーパ(大きさ6.0cm×5.5cm、厚さ200μm)と、ガス流路付きガスセパレータとを各々配設し、さらに金メッキしたステンレス製集電板により挟持して、評価用単位セルとした。
評価用単位セルのアノード側に燃料として水素ガスを供給すると共に、カソード側に酸化剤として酸素を供給した。水素及び酸素の両ガスともに背圧は大気圧とし、セル温度は90℃に設定した。また、水素ガス流量500cm3/分の温度61.2℃(対湿度30%@90℃)、酸素ガス流量500cm3/分の温度61.2℃(相対湿度30%@90℃)に設定した。このような条件下で上記単位セルを運転した場合の、OCV(Open Circuit Voltage)の経時的な変化を測定し、その結果を図23に示す。なお、図23中、横軸は耐久時間(時間)、縦軸は開路電圧(OCV)(V)をそれぞれ表す。また、図中でOCVが急落した点は、MEAの電解質膜に孔が空いた時点であると考える。
図23から、ガスケット層を設けていない比較例1及び比較例2のMEAを有する単位セルは、28時間の耐久試験時間でOCVが急落した。一方、ガスケット層を設け触媒層端部とガスケット層を重ねた仕様で、有効カソード触媒層に対して有効アノード触媒層を大きくした実施例1のMEAを有する単位セルは、96時間でOCVが急落した。これから、触媒層端部にガスケット層を設けることによって、本発明のMEAは、ガスケット層を触媒層端部に設けないものに比して、OCV保持時の電解質膜の分解を有効に抑制できることが示される。また、同じくガスケット層を設け触媒層端部とガスケット層を重ねた仕様で、有効アノード触媒層に対して有効カソード触媒層を大きくした比較例3のMEAを有する単位セルは、60時間でOCVが急落した。これから、有効触媒層面積をアノード触媒層側を大きくすることによって、OCV耐久保持性を有意に向上できることが示される。さらに、有効カソード触媒層に対して有効アノード触媒層を大きくし、ガスケット層を設ける際にガスケット層の開口部側の内端部と触媒層の端部の間に隙間を設けた比較例4のMEAを有する単位セルについては、37時間でOCVが急落した。これから、本発明によるように、触媒層端部をガスが侵入しないよう構造としない場合には、単に有効触媒層面積をアノード触媒層側を大きくしただけではOCVが短時間で急落してしまい、優れたOCV耐久保持性が達成できないことが分かる。
上記結果及び考察に加えて、上記OCV耐久試験後、単位セルを分解してガス流路付きガスセパレータの片方を取り外し、代わりに所定形状のアクリルプレートを装着してMEAを固定し、残っているガスセパレータ側からヘリウムガスを供給して加圧(〜10kPa程度)して可視化リーク試験を行ない、電解質膜の孔あき個所を観察した。その結果、比較例1、比較例2、比較例4のMEAに関しては、触媒層の端部付近から比較的多くのヘリウムガスの気泡が発生したが、実施例1及び比較例3のMEAに関しては、端部ではなく触媒層の全般においてヘリウムガスの気泡の発生が確認された。
以上の結果から、実施例1のMEAは、OCV耐久性が他のMEAに比して有意に向上したことが確認された。
実施例3
以下のようにして、図24に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して3倍量の精製水と3倍量のプロピレングリコールを加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE2020)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.2mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.05mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して3倍量の精製水と3倍量のプロピレングリコールを加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE2020)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.2mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.0cm×5.0cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.35mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を有するフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚30μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は25cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲と重なるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置し、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを作製した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.0cm×5.0cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmである開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.0cm×5.0cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲と重なるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.0cm×5.0cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着して、ガスケット層と接する触媒層端部には、ガスが入らないように、ガスケット層端部と触媒層端部が十分に密着しあう構造とした。
実施例4
以下のようにして、図25に示されるMEAを作製した。
[アノード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して3倍量の精製水と3倍量のプロピレングリコールを加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE2020)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.2mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたアノード触媒層のサイズは、5.2cm×5.2cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.05mg/cm2となるように調整した。
[カソード触媒層の作製]
Pt粒子をPt担持濃度50質量%として担持させた炭素担体(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)社製ケッチェンブラックEC、BET表面積=800m2/g)を用い、Pt粒子を担持させた炭素担体の質量に対して3倍量の精製水と3倍量のプロピレングリコールを加えて、5分間減圧脱泡操作をした後、0.5倍量のn−プロピルアルコールを加えた後、さらに、電解質となる20wt%Nafion(登録商標)を含有した溶液(DuPont(株)社製、DE2020)を加えた。溶液中の電解質は、炭素担体の質量に対する固形分質量比(Carbon(炭素)/Ionomer(電解質))を1.0/0.9としたものを用いた。
得られた混合スラリを超音波ホモジナイザによって分散させて、減圧脱泡操作をして触媒スラリを作製した。作製した触媒スラリをポリテトラフルオロエチレンシート(7.5cm×7.5cm、厚さ0.2mm)の片面にスクリーン印刷法によって、所望の厚さに応じた量を印刷し、60℃で24時間乾燥させた。スクリーン印刷法から製造されたカソード触媒層のサイズは、5.1cm×5.1cmとした。また、ポリテトラフルオロエチレンシート上の塗布層は、Pt量が0.35mg/cm2となるように調整した。
[膜電極接合体(MEA)の作製]
固体高分子電解質膜として補強層を有するフッ素系電解質膜(7.5cm×7.5cm、膜厚30μm)を用いて、ポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたアノード触媒層の上に、この固体高分子電解質膜を重ね、さらにポリテトラフルオロエチレンシート上に形成されたカソード触媒層を重ねて積層した。その後、130℃、2.0MPaで10分間ホットプレスをした後、ポリテトラフルオロエチレンシートを剥がして膜電極接合体とした。
固体高分子電解質膜上に転写されたカソード触媒層では、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は25cm2であった。アノード触媒層は、Pt担持量は見かけの電極面積1cm2あたり0.4mg、電極面積は26cm2であった。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.2cm×5.2cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置し、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを作製した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.0cm×5.0cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmである開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.0cm×5.0cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつハイパーシートの外周部に沿うように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着して、ガスケット層と重なる触媒層端部には、ガスが入らないように触媒層の気孔が十分に埋まる構造とした。
実施例5:OCV耐久試験
実施例3,4で得られた膜電極接合体について、実施例2と同様の方法に従って、評価用単位セルを作製し、当該単位セルについて性能を評価した。その結果を図26に示す。
図23及び図26の結果を比べると、実施例3,4で得られたMEAを有する単位セルは、実施例1で得られたMEAを有する単位セルや比較例1〜4で得られたMEAを有する単位セルに比べて、より長いOCV保持時間を示している。これは、実施例3,4では、補強層を有する電解質膜を使用しているため、当該補強層が電解質膜での孔の形成を有効に抑制・防止するためであると考察される。また、図27に示されるように、ガスケット層を設ける際にガスケット層の内端部と触媒層の端部との間に隙間や重複部分を設けずに隣接させた構造を有する、実施例3のMEAを有する単位セルは、およそ395時間でOCVが不安定となり始めた(即ち、孔あき)。一方、図28に示されるように、ガスケット層を設ける際にガスケット層の内端部が触媒層の端部に重なるように配置した、実施例4のMEAを有する単位セルは、およそ480時間でOCVが急落した。これらの結果から、触媒層の端部にはガスケット層の内端部との重複部分が存在することにより、OCV保持時間を有意に延長できることが示される。
以上の結果から、実施例3,4のMEAは、OCV耐久性をさらに有意に向上できることが確認された。
実施例6
実施例4と同様にして、アノード及びカソード触媒層を作製し、さらに膜電極接合体(MEA)を作製した。
[アノード触媒層端部への第二のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状の第二のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.1cm×5.1cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.2cm×5.2cmである開口部を打ち抜いて、1.0cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
ここで、上記で作製したMEAを、アノード触媒層(5.2cm×5.2cm)が上となるようにセットした。次に、このアノード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.1cm×5.1cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第二のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第二のガスケット層を配置した。第二のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状ハイパーシートを第二のガスケット層の上に重なるように、かつ正方形のハイパーシートの外周部に均等(0.5mm)に隙間があくように配置した。
[カソード触媒層端部への第一のガスケット層の形成]
ウレタン系ホットメルト接着層付PENフィルム(帝人デュポン製、PEN厚さ25μm、接着層25μm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のフィルムの中央部に、寸法が5.0cm×5.0cmとなるような開口部を打ち抜いて、1.1cm幅の額縁状の第一のガスケット層を用意した。続いて、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を外形寸法が5.0cm×5.0cmとなるように打ち抜き、正方形のハイパーシートを用意した。また、ハイパーシート(ジャパンゴアテックス社製、厚さ1.5mm)を、外形寸法が7.2cm×7.2cmとなるように打ち抜いた後、この正方形のシートの中央部に、寸法が5.1cm×5.1cmである開口部を打ち抜いて、1.05cm幅の額縁状のハイパーシートを用意した。
上記アノード触媒層への第二のガスケット層の形成で作製された、CCM−ガスケット層−ハイパーシートを、ユニットとして裏返して、カソード触媒層(5.1cm×5.1cm)が上となるようにセットした。次に、上記「アノード触媒層への第二のガスケット層の形成」工程と同様にして、カソード触媒層の端部周囲が均等(0.5mm)に見えるように、上記で用意した正方形のハイパーシート(5.0cm×5.0cm)をその中心にセットした。この状態で、上記で用意した第一のガスケット層の開口部がハイパーシートの外周部に沿うように、接着層が下を向くように第一のガスケット層を配置した。第一のガスケット層の配置後、上記で用意した額縁状のハイパーシートを第一のガスケット層の上に重なるように、かつ正方形のハイパーシートの外周部に均等(0.5mm)に隙間があくように配置した。このようにして、MEAのアノード及びカソード側両方にガスケット層及び額縁状のハイパーシートが配置されたら、このユニットから各触媒層上に配置した正方形のハイパーシートを取り外し、残りのユニットをSUS板(寸法:7.4cm×7.4cm、厚さ1mm)で両側から挟持し、ホットプレス機を用いて、130℃、0.4MPa、1分間、熱圧着した。当該工程では、触媒層端部とガスケット層が重なる領域には熱圧着時に圧力がかからないため、ガスケット層と重なる触媒層端部では、気孔内部まで完全に接着剤が入り込まない構造となり、ガスが入る余地が残るような触媒層の気孔が完全に埋まらない構造となった。
実施例7:OCV耐久試験
実施例4,6で得られた膜電極接合体について、実施例2と同様の方法に従って、評価用単位セルを作製し、当該単位セルについて性能を評価した。その結果を図29に示す。
図23及び図29の結果を比べると、実施例4,6で得られたMEAを有する単位セルは、実施例1で得られたMEAを有する単位セルや比較例1〜4で得られたMEAを有する単位セルに比べて、より長いOCV保持時間を示している。これは、実施例4,6では、電解質膜内に補強層を配置したものを使用しているため、当該補強層が電解質膜での孔の形成を有効に抑制・防止するためであると考察される。また、図29からは、図30に示されるように、ガスケット層を設ける際にガスケット層の内端部が触媒層の端部に重なるように配置し、かつ重なる領域の触媒層の気孔が接着剤により十分埋められている構造を有する、実施例4のMEAを有する単位セルは、およそ480時間でOCVが急落した。一方、図31に示されるように、重なる領域の触媒層の気孔が接着剤により完全に埋められていない構造を有する、実施例6のMEAを有する単位セルは、およそ400時間と、実施例4のものに比して短い時間で、OCVが急落した。以上の結果から、ガスケット層の内端部と触媒層の端部との重複部分における触媒層の気孔は接着剤層の接着剤により十分埋められていることが、OCV保持の点で好ましいことが示される。
以上の結果から、実施例4,6のMEAは、OCV耐久性をさらに有意に向上できることが確認された。
上記試験に加えて、上記OCV耐久試験後、カソード触媒層側の第一のガスケット層の内端部とカソード触媒層端部とが重なる領域(接着剤の含浸度が異なる領域)の膜厚(図30及び31における「X」)を測定し、その結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、初期品とは、OCV耐久試験前の相当する領域の膜厚である。
上記表1から、カソード触媒層の端部とガスケット層の内端部とが重なる領域で、該領域のカソード触媒層に接着剤層の接着剤を意図的に含浸させた実施例4のMEAと、意図的に含浸させない実施例6のMEAとについて、耐久試験後の膜厚(それぞれ、図31及び32の「X」)を比較したところ、OCV保持(耐久)時間のより長い実施例4の方が膜厚は22μmと、実施例6に比して、より厚かった。これは、実施例6のMEAについては、該領域の触媒層にまでガス(酸素)が行き届いてしまうため、該領域のアノード触媒層で過酸化水素(H2O2)が生成し、膜の劣化が起こり、薄膜化が進む。一方、実施例4のMEAについては、該領域は接着剤が浸透してガス不透過になっているため、該領域にはガス(酸素)が行き届かないため、H2O2の生成反応が抑制され、薄膜化の領域を緩和できるものと考察される。
本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、耐久性に優れかつ燃費効率のよい燃料電池に適用できる。
長期放置後のアノード/カソードのガス雰囲気、ならびに長期放置後の起動時のアノード/カソードのガス雰囲気と局部電池状態、を示す説明図である。
OCV保持時の酸素のクロスリークを示す説明図である。
本発明によるOCV保持時の酸素のクロスリークの抑制効果を説明する図である。
本発明によるOCV保持時の酸素のクロスリークの抑制効果を説明する図である。
本発明の第一の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第二の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第三の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第四の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第五の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第六の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第七の実施態様によるMEAの構造を示す図である。
本発明の第五の態様における第一の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
本発明の第五の態様における第二の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
本発明の第五の態様における第三の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
本発明の第五の態様における第四の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
本発明の第五の態様における第五の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
図14または図15に示す製造方法により製造されるMEAを示す図である。
本発明の第六の実施態様によるMEAを製造する様子を示す図である。
実施例1のMEAの構造を示す図である。
比較例1のMEAの構造を示す図である。
比較例2のMEAの構造を示す図である。
比較例3のMEAの構造を示す図である。
比較例4のMEAの構造を示す図である。
実施例2におけるOCV耐久試験結果を示す。
実施例3のMEAの構造を示す図である。
実施例4のMEAの構造を示す図である。
実施例5におけるOCV耐久試験結果を示す。
実施例3のMEAの端部断面構造を示す図である。
実施例4のMEAの端部断面構造を示す図である。
実施例7におけるOCV耐久試験結果を示す。
実施例4のMEAの端部断面構造を示す図である。
実施例6のMEAの端部断面構造を示す図である。
本発明のMEAにおける有効カソード触媒層、有効アノード触媒層、カソード触媒層及びアノード触媒層の配置を示す図である。
本発明のMEAの触媒層にプロピレングリコールを含ませた場合のひび割れの抑制・防止効果を説明する図である。