JP5316394B2 - ハードコート層を有する樹脂基板の製造方法 - Google Patents
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Description
水酸基を有するオルガノポリシロキサンを含むハードコート剤組成物を前記樹脂基板の少なくとも一方の面上に塗布し前記組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に熱処理を施すことにより前記オルガノポリシロキサンを縮合硬化させおよびマイクロ波照射処理を施すことにより前記オルガノポリシロキサンを縮合硬化させてハードコート層とする縮合硬化工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の製造方法が対象とするハードコート層を有する樹脂基板は、樹脂基板の少なくとも一方の面上にオルガノポリシロキサンを含むハードコート剤組成物の硬化物からなるハードコート層を有する樹脂基板である。なお、本明細書において「樹脂基板の面上にハードコート層を有する」とは、樹脂基板の面上に直接ハードコート層を有する場合に加えて、樹脂基板の面上に後述するプライマー層のような機能層を介してハードコート層を有する場合も含むものである。すなわち、樹脂基板上に、プライマー層等の機能層、ハードコート層が順に積層された構成のハードコート層を有する樹脂基板も本発明の製造方法が適用可能である。
このようなハードコート層を有する樹脂基板の製造において、本発明の製造方法は、以下に説明する(1)塗膜形成工程および(2)縮合硬化工程を有することを特徴とする。
本発明の製造方法における塗膜形成工程は、水酸基を有するオルガノポリシロキサンを含むハードコート剤組成物を樹脂基板の少なくとも一方の面上に塗布し前記組成物からなる塗膜を形成する工程である。
本発明に用いる樹脂基板の材料である樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。
これらのなかでも芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、樹脂基板は、上記のような熱可塑性樹脂を2種以上含んでもよいし、これらの樹脂を用いて、2層以上積層された積層基板であってもよい。また、樹脂基板の形状は、特に限定されず、平板であってもよいし、湾曲していてもよい。さらに、樹脂基板の色調は無色透明または着色透明であることが好ましい。
本発明の製造方法に用いるハードコート剤組成物は、必須成分として水酸基を有するオルガノポリシロキサンを含有し、さらに必要に応じて添加される任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で含有する。なお、後述の(2)縮合硬化工程におけるマイクロ波照射処理によるオルガノポリシロキサンの縮合硬化を効果的に行うために、任意成分として、アルコールおよび水を含有することが好ましい。また、同様にマイクロ波照射処理の観点から、任意成分として、マイクロ波の照射により放電現象を起こす金属粉や昇温により突沸する危険性のある溶剤を多量に含むことは好ましくない。以下、ハードコート剤組成物が含有する各成分について説明する。
本発明の製造方法に用いるハードコート剤組成物が含むオルガノポリシロキサンとしては、水酸基を有する硬化性のオルガノポリシロキサンであれば、特に制限なく用いることができる。なお、本発明の製造方法においては、オルガノポリシロキサンの有する水酸基が後述のマイクロ波照射処理により脱水縮合されて、その縮合硬化が著しく促進される。
本発明の製造方法においては、オルガノポリシロキサンの有する水酸基がマイクロ波照射処理により脱水縮合されて、その縮合硬化が著しく促進される。硬化性オルガノポリシロキサンの質量平均分子量にもよるが、硬化収縮による初期クラックが発生しない範囲で、硬化性オルガノポリシロキサンの水酸基含有量は多いほうがよい。さらに、Zがアルコキシ基である場合、硬化性オルガノポリシロキサン中に含まれる反応性の比較的低いアルコキシ基は加水分解反応により水酸基に変換され、その後のマイクロ波照射処理により脱水縮合し、縮合硬化が起こる。しかしながら、未反応で残った場合、ハードコート層の耐擦傷性の低下をまねくおそれがあり、後硬化が進行すればマイクロクラックの原因ともなるため、アルコキシ基に比べて水酸基の割合が多いほどよい。一般的に硬化性オルガノポリシロキサンで構成されるハードコート剤組成物は塗工液の貯蔵安定性の観点からpHを3.0〜6.0に調整しているため、Z基はアルコキシ基としてほぼ存在せず、水酸基として存在することが多い。
すなわち、本発明においては、これら硬化性のオルガノポリシロキサンのうちでも、T単位とQ単位のみで構成され、その個数の割合がT:Q=90〜100:10〜0であるオルガノポリシロキサンが特に好ましく用いられる。
なお、オルガノポリシロキサンにおけるM単位、D単位、T単位、Q単位の数の割合は、29Si−NMRによるピーク面積比の値から計算できる。
本発明に用いるハードコート剤組成物には、上記オルガノポリシロキサンの他に、種々の添加剤が含まれていてもよい。たとえば、本発明のハードコート層を有する樹脂基板のハードコート層の耐擦傷性をさらに向上させるためには、シリカ微粒子が含まれるハードコート剤組成物が好ましい。このために、ハードコート剤組成物にコロイダルシリカを配合することが好ましい。なお、コロイダルシリカとは、シリカ微粒子が、水またはメタノール、エタノール、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒中に分散されたものをいう。
本発明に用いるハードコート剤組成物は、上記説明した各種成分を通常の方法で、均一に混合することで得られる。
本発明の製造方法の(1)塗膜形成工程においては、上記のようにして調製したハードコート剤組成物を上記の樹脂基板上に塗布してハードコート剤組成物の塗膜を形成する。なお、ハードコート層を有する樹脂基板が、樹脂基板とハードコート層の間にプライマー層等の各種機能層を有する場合は、プライマー層等の上にハードコート剤組成物を塗布する。
ハードコート剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等の通常の塗工方法が挙げられる。塗工方法によってハードコート剤組成物の粘度、固形分濃度等を適宜調整することが好ましい。
縮合硬化工程は、上記樹脂基板上に形成されたハードコート剤組成物の塗膜に熱処理およびマイクロ波照射処理を施すことにより上記オルガノポリシロキサンを縮合硬化させてハードコート層とする工程である。なお、本明細書において、「ハードコート剤組成物が縮合硬化する」という場合があるが、これはハードコート剤組成物に含まれるオルガノポリシロキサンが縮合硬化することをいう。以下に(2−1)熱処理と(2−2)マイクロ波照射処理を具体的に説明するが、本発明の製造方法において、これらの両処理が施される限りにおいて、両処理の順番は問われず、どちらの処理を先に行ってもよい。また、これらの処理に先立って、必要に応じて乾燥の操作を設けてもよい。
上記(1)塗膜形成工程において樹脂基板上に形成されたハードコート剤組成物塗膜は、以下の熱処理およびマイクロ波照射処理(以下、両処理を合わせて「縮合硬化処理」ということもある)の前に、通常、常温〜樹脂基板の熱変形温度未満の温度条件下で乾燥することで、溶媒の除去が行われる。本発明においては、塗膜中の水およびアルコールの存在は、以下のマイクロ波照射処理においては有利に作用するため、乾燥を行わずに縮合硬化処理を行う方法をとってもよい。
上記(1)塗膜形成工程で得られた塗膜に対して行う熱処理は、樹脂基板の耐熱性に問題がない範囲において高い温度で行う方がより早く硬化を完了させることができ好ましい。しかし、例えば、1価の有機基としてメチル基を有するオルガノポリシロキサンを用いた場合、加熱硬化時の温度が250℃以上では、熱分解によりメチル基が脱離するため、好ましくない。よって、硬化温度としては、50〜200℃が好ましく、80〜160℃が特に好ましく、100℃〜140℃がとりわけ好ましい。また、加熱手段としては、自然対流型恒温器、定温型乾燥器、熱風循環式乾燥器、送風型乾燥器、真空乾燥装置で加熱する方法等が挙げられる。また、電気炉等も使用できる。さらに赤外線ランプを用いた加熱手段も適宜用いることが可能である。これらの加熱手段は、1種を使用してもよく2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
本縮合硬化工程においては、上記(1)塗膜形成工程で得られた塗膜に対して、上記熱処理のほかにマイクロ波照射処理が行われる。マイクロ波照射処理は上記熱処理の後に行われてもよく、熱処理の前に行われてもよい。
マイクロ波とは、周波数が300MHz〜300GHzの電磁波を指す。通常、溶液または固体等のマイクロ波吸収帯は10GHz以下の領域にある。したがって、本発明で使用するマイクロ波の周波数も、原理的には300MHz〜10GHzの範囲であればよいが、実際上、周波数が2.45GHzのマイクロ波が用いられる。これは、電波法により、ISMバンドと呼ばれる通信以外の目的で電波を利用する用途のために周波数帯が、例えば433.92(±0.87)MHz、896(±10)MHz、915(±13)MHz、2375(±50)MHz、2450(±50)MHz、5800(±75)MHz、24125(±125)MHz等に定められていることによる。この周波数帯のマイクロ波であれば、2.45GHzに限らず、被照射物に応じて適宜選択されて使用することが可能である。
マイクロ波照射処理により、ハードコート剤組成物中のオルガノポリシロキサンの水酸基や、水・アルコールの水酸基が振動し発熱して温度上昇が起こる。これにより主に塗膜内部のハードコート剤組成物の縮合硬化を均一に行うことができる。
具体的には、熱処理により縮合度を好ましくは50〜90%程度、より好ましくは60〜90%とした後、マイクロ波照射処理により縮合度を好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上とする方法、マイクロ波照射処理により縮合度を好ましくは、50〜90%程度、より好ましくは60〜90%とした後、熱処理により縮合度を好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上とする方法等が挙げられる。
ここで、熱処理による縮合硬化では、上記好ましい温度条件において時間を長く処理することでのハードコート層を有する樹脂基板の物性に与える弊害は殆どない。すなわち、本発明の製造方法において、熱処理の操作においては、処理温度が一定であれば処理時間と縮合度の関係を把握しておくことで、上記縮合度を指標として処理時間の管理を行うことが可能である。
具体的には、本発明の製造方法により得られるハードコート層を有する樹脂基板のハードコート層は、マルテンス硬さと、押込み硬さから求められる押込み弾性率の比(HM/Eiη)が0.06〜0.1の範囲を概ね満足できるものである。
本発明の製造方法が適用されるハードコート層を有する樹脂基板においては、樹脂基板と上記ハードコート層の間にプライマー層を有していてもよく、樹脂基板とハードコート層との密着性向上のためには、プライマー層を有していることが好ましい。プライマー層は、特に限定されないが、本発明においては、アクリル系ポリマー、紫外線吸収剤、および溶媒を含むプライマー組成物を樹脂基板上に塗布し乾燥させることによって形成することが好ましい。
ハードコート剤組成物のケイ素原子の結合状態、具体的には、M単位、D単位、T単位、Q単位の存在の割合、およびT0〜T3の存在比を、核磁気共鳴分析装置(29Si−NMR:日本電子株式会社製、ECP400)を用いて、29Si−NMRのピーク面積比からそれぞれ求めた。測定条件はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製10mmφ試料管使用、プローブ:T10、共鳴周波数79.42MHz、パルス幅10μsec、待ち時間20sec、積算回数1500回、緩和試薬:Cr(acac)3を0.1質量%、外部標準試料:テトラメチルシランである。また、各構造に由来する29Si−NMRの化学シフトは、メチル系オルガノポリシロキサンの場合、以下のとおりである。
M単位:15〜5ppm、
D単位:−15〜−25ppm、
T単位:−35〜−75ppm、
Q単位:−90〜−130ppm。
T0:−40〜−41ppm、
T1:−49〜−50ppm、
T2:−57〜−59ppm、
T3:−66〜−70ppm。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、Waters社製のWaters2695、RI検出、カラム:Styragel ガードカラム+HR1+HR4+HR5E、溶離液:クロロホルム)によって求めた。
1リットルのフラスコに、約15nmの平均粒子径をもつ水分散コロイダルシリカ(pH3.1,固形分35質量%)200gと酢酸0.2gを仕込み、メチルトリメトキシシラン138gを添加した。1時間撹拌した後、組成物のpHは4.5で安定化した。この組成物を25℃で4日間熟成してシリカ・メタノール−水分散液中で部分加水分解縮合を確実に形成させた。この組成物は不揮発成分が40質量%(150℃、45分)で、得られたオルガノポリシロキサンはT単位を主とした結合構造(T単位の個数:M単位とD単位とQ単位のそれぞれの個数の総量=100:0)をもち、29Si−NMRの化学シフトから求めたT体の存在比は、T0:T1:T2:T3=ND:2:54:44であった。数平均分子量はMn=400、質量平均分子量Mw=670、分散度Mw/Mn=1.68であった。得られたオルガノポリシロキサンには、モノマー状のT0体[R−Si(OH)3](Rは1価有機基)がほぼ存在せず、原料のメチルトリメトキシシランはオリゴマー状シリコーン化合物にほぼ完全に転換されていることが確認された。
上記[1]で得られたオルガノポリシロキサン100質量部に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤4質量部を加え、25℃で24時間以上熟成した。希釈溶媒として1−ブタノール、イソプロパノールを用いて、不揮発成分が25質量%(150℃、45分)、粘度が4.4mPa・sのハードコート剤組成物であるオルガノポリシロキサン組成物溶液PSi−1(PSi−1濃度:16.8質量%)を調製した。
上記[2]で得られたハードコート剤組成物を用いて、以下のようにして各例のハードコート層を有する樹脂基板サンプルを作製した。ハードコート剤組成物の硬化手段として、加熱手段は、熱風循環式乾燥器(三洋電機社製、CONVECTION OVEN、 MOV−202F)を使用した。マイクロ波照射手段は、電子レンジ(シャープ社製、電子レンジ、RE−TD1−W5P)を使用して、ハードコート層を有する樹脂基板サンプルを作製した。
厚さ3mmのポリカーボネート板(カーボグラス(登録商標)ポリッシュ クリヤー(商品名、旭硝子社製))に、プライマーSHP470(商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、固形分10質量%溶液)をディップ方式で、乾燥後の膜厚が4〜5μmになるように塗工し、120℃に設定した熱風循環式乾燥器を用いて30分間の加熱乾燥を行いプライマー層を形成させた。。つぎに、得られたプライマー層上に、上記[2]で調整したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、25℃で20分間保持後、120℃に設定した熱風循環式乾燥器を用いて15分間の熱処理をした後、周波数2.45GHz、発振出力750Wに設定した電子レンジで、5分間のマイクロ波照射処理を行い、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。このサンプルは、ポリカーボネート板の両面にプライマー層とハードコート層が形成されたものである。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、25℃で20分間保持後、120℃で15分間の熱処理を施した、さらにその後、周波数2.45GHz、出力750Wに設定した電子レンジで10分間のマイクロ波照射処理を行い、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、25℃で20分間保持後、120℃で5分間の熱処理を施し、さらにその後、周波数2.45GHz、出力750Wに設定した電子レンジで5分間のマイクロ波照射処理を行い、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、25℃で20分間保持後、周波数2.45GHz、出力750Wに設定した電子レンジで5分間のマイクロ波照射処理を行い、さらにその後、120℃で15分間の熱処理を施して、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、120℃で60分間の熱処理を施して、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
後述のハードコート剤組成物の縮合度の算出のために、硬化条件を120℃、120分間の熱処理としてハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。すなわち例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、120℃で120分間の熱処理を施して、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、120℃、5分間の熱処理(例7)、120℃、15分間の熱処理(例8)、120℃、30分間の熱処理(例9)を行い、ハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
例1と同様にプライマー層を形成させたポリカーボネート板に、上記[2]で調製したハードコート剤組成物PSi−1をディップ方式でコーティングし、熱硬化は併用せずに、周波数2.45GHz、出力750Wの電子レンジでマイクロ波照射時間を5分間(例10)、10分間(例11)としてマイクロ波照射を行い、ハードコート剤組成物PSi−1を硬化させてハードコート層を有する樹脂基板のサンプルを作製した。ハードコート層の膜厚は4〜5μmであった。
上記[3]の各例で得られたハードコート層を有する樹脂基板サンプルについて、下記項目の評価を行った。
硬化に伴うオルガノポリシロキサン(ハードコート剤組成物)の縮合度については、硬化前の溶媒をほぼ除去した膜、上記[3]の各例において種々の条件で硬化させたハードコート層のそれぞれについて、Si−OHの量とSi−CH3の量を、赤外吸光分析装置(FT−IR、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、型式:Avatar/Nicolet FT−IR360)、測定方法は全反射法(ATR法)を用いて測定して以下の式(2)より両者の量比を算出し、これを式(1)に挿入して求めたものである。
<2−1>初期外観
上記[3]で得られた初期の状態のハードコート層を目視で観察し、異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:ハードコート層にクラックあり
各サンプルにおけるハードコート層の膜厚を干渉膜厚測定装置(スペクトラ・コープ社製、Solid Lambda Thickness)を用いて測定した。このとき、屈折率はn=1.46の値を用いた。
JIS K5600(5.9)に準拠し、テーバー磨耗試験機(東洋精機製作所社製、型式:ROTARY ABRASION TESTER)に磨耗輪 CALIBRASE(登録商標)CS−10F(TABER社製)を装着し、荷重500g下での500回転後のヘーズ(曇価)を測定し、試験後と試験前の曇価差ΔH500を耐擦傷性とした。ヘーズはJIS K7105(6.4)に準拠し、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型式:HGM−2)にて測定した。ΔH500≦10であれば合格とし、「○」と表記した。一方、ΔH500>10であれば不合格とし、「×」と表記した。
微小硬さ試験機(フィッシャーインスツルメンツ社製、ピコデンター HM500)にビッカース角錐圧子を装着し、負荷−除荷試験を行い、荷重/進入深さ曲線を測定した。ここで、負荷速度F=0.5mN/5s、クリープC=5s、除荷速度F=0.5mN/5sである。測定データはWIN−HCU(フィッシャーインスツルメンツ社製)により処理され、引っかき硬さであるマルテンス硬さHM(N/mm2)および押込み硬さから求めた押込み弾性率Eiη(GPa)を測定した。さらにHM/Eiηの値を求めた。
<3−1>耐候性試験
光源にメタルハライドランプを用いた促進耐候性試験機(ダイプラ・ウインテス製;ダイプラ・メタルウェザー KU−R4)を用い、光の照射、結露、暗黒の3条件を連続で負荷した後、目視により492時間経過後のクラックの有無および剥離について評価した。なお、前記光の照射の条件は、照度90mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度70%の条件下で4時間光を照射するものであり、前記結露の条件は、光を照射せずに相対湿度98%の条件下でブラックパネル温度を70℃から30℃に自然冷却させて4時間保持するものであり、前記暗黒の条件は光を照射せずにブラックパネル温度70℃、相対湿度90%の条件下で4時間保持するものである。
上記耐候性試験後のハードコート層の外観を下記基準で目視で観察し、異常の有無を判定した。
○:異常なし
×:ハードコート層にクラックまたは剥離あり
上記<2−1>初期外観、<2−3>耐擦傷性、および<3−2>耐候クラック性での判定のうち全ての判定で合格であれば、総合評価において合格とし、「○」と表記した。一方、全ての判定で合格でない場合は、総合評価において不合格とし、「×」と表記した。
縮合硬化工程の条件が本発明の範囲外(比較例)である例7〜9では、縮合度が91%以下であるため耐擦傷性判定が「×」となり、不合格である。熱硬化のみ短時間硬化では、耐擦傷性付与が困難であることが分かる。同様に比較例である例10では、耐擦傷性判定および耐候クラック性試験が「×」となり、不合格である。マイクロ波照射のみの硬化では、耐擦傷性付与が困難であることが分かる。また、同様に比較例である例11では、ポリカーボネート板が変形してしまい、初期外観が「×」となり、不合格である。熱処理を行う前に、一定時間以上マイクロ波を照射すると基板が変形してしまうことが分かる。
Claims (11)
- 樹脂基板の少なくとも一方の面上にオルガノポリシロキサンを含むハードコート剤組成物の硬化物からなるハードコート層を有する樹脂基板の製造方法であって、
水酸基を有するオルガノポリシロキサンを含むハードコート剤組成物を前記樹脂基板の少なくとも一方の面上に塗布し前記組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜に熱処理を施すことにより前記オルガノポリシロキサンを縮合硬化させおよびマイクロ波照射処理を施すことにより前記オルガノポリシロキサンを縮合硬化させてハードコート層とする縮合硬化工程と、
を有することを特徴とする、ハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。 - 前記縮合硬化工程において、前記塗膜に対して熱処理を施した後にマイクロ波照射処理を行う、請求項1に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記縮合硬化工程において、前記塗膜に対してマイクロ波照射処理を施した後に熱処理を行う、請求項1に記載の製造方法。
- 前記熱処理が、50〜200℃の温度に前記塗膜を5〜30分間保持する処理である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記マイクロ波照射処理が、周波数300MHz〜300GHz、発振出力0.05〜20kWのマイクロ波を前記塗膜に5〜30分間照射する処理である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 下記式(1)で示される、前記オルガノポリシロキサンの120℃、120分間の熱処理後の縮合度を100%とした際の、前記縮合硬化工程後のハードコート層における前記オルガノポリシロキサンの縮合度が93%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記縮合硬化工程後のハードコート層について、測定条件:負荷速度F=0.5mN/5s、クリープC=5s、除荷速度F=0.5mN/5sにおける、マルテンス硬さHM(N/mm2)と押込み硬さから求めた押込み弾性率Eiη(GPa)との比(HM/Eiη)が、0.06〜0.1である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記オルガノポリシロキサンが、T単位とQ単位のみで構成されその個数の割合がT:Q=90〜100:10〜0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記ハードコート剤組成物がアルコールおよび水を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記塗膜形成工程の前に、さらに、プライマー組成物を前記樹脂基板の少なくとも一方の面上に塗布し乾燥させてプライマー層を形成する工程を有し、前記塗膜形成工程において前記ハードコート剤組成物を前記プライマー層上に塗布する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
- 前記樹脂基板の材料がポリカーボネート樹脂である請求項1〜10のいずれか1項に記載のハードコート層を有する樹脂基板の製造方法。
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