以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、椅子を例示するものであって、本発明は、椅子を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
図1〜図4は、実施の形態にかかる椅子が変形する様子を示す説明図である。また図5は、図1の椅子の分解図である。図の椅子100は、使用者が着席する際に、臀部を載置させる座部フレーム体20と、背中を接面できる背もたれフレーム体10と、足を載置できる足置きフレーム体30を備える。またこれらの部材は、ベース50に可動自在に連結されている。具体的には、ベース50と背もたれフレーム体10とは第1の定点xで回動自在に連結されている。またベース50は座部フレーム体20、足置きフレーム体30とは直接連結されておらず、それぞれ座部連動リンク1、足置き開閉リンク2を介して回動自在に連結されている。このベース50は、椅子を床面に載置した状態で変位しない、不動部位となる。
なお図において、座部フレーム体20に対する足置きフレーム体30側(図の左方向)を「前」、背もたれフレーム体10側(図の右方向)を「後」とし、また座部フレーム体20において臀部を載置する座面21側(図の上方向)を「上」、座面21の裏面側(図の下方向)を「下」とそれぞれ定義する。なお、本明細書中の「固定」とは、特に指定しない限り、配置位置が変位しない意味で用いており、その場で回転する形態も包含する。
椅子100は、椅子100を載置する床面に対して略水平で、かつ傾斜可能な座部フレーム体20の前後に、足置きフレーム体30と背もたれフレーム体10とがそれぞれ回動自在に連結されている。座部フレーム体20と背もたれフレーム体10、及び座部フレーム体20と足置きフレーム体30とは、互いに連動する。すなわち椅子100に着席した使用者が背もたれフレーム体10にもたれかかると、背もたれフレーム体10の傾斜に従い自動的に座部フレーム体20が奥へと移動しながら後方側が沈み、前方が持ち上がるように座部フレーム体20が傾斜する。これと同時に足置きフレーム体30が回動し、前端が跳ね上がる。また逆に使用者が席から立つように背もたれフレーム体10に対する押圧力を弱めると、背もたれフレーム体10が手前に起きあがり、これと略同時に座部フレーム体20が略水平に変位して、足置きフレーム体30は座部フレーム体20の下方へと収納される。このように、椅子100は外力の無い状態では背もたれフレーム体10が起き上がり、座部フレーム体20が略水平に、足置きフレーム体30が収納されるよう、スプリングやシリンダなどの付勢手段によって付勢されている。付勢手段は単一あるいは複数とでき、複数で構成する場合は同一あるいは異種の付勢手段を組合せることができる。
以下、図1〜図4、図5を用いて、座部フレーム体20と背もたれフレーム体10及び足置きフレーム体30が互いに連動する様子を説明する。まず図1〜図4の椅子100において、図1の状態が、背もたれフレーム体10を最も起立させた姿勢であり、本明細書中では椅子の「基本姿勢」と呼ぶ。そして図2、図3、図4と図面番号が増加するにつれて、背もたれフレーム体10の後方への倒れ具合が大きくなり、図4では、座部フレーム体20に対する背もたれフレーム体10の傾斜角度Aが最も大きくなっている。
図の椅子100は、座部を構成する座部フレーム体20の前後に、足を載置可能な足置きフレーム体30と、背をもたせかけられる背もたれフレーム体10とをそれぞれ傾斜自在に連結している。図1に示す椅子の基本姿勢において、座部フレーム体20は椅子100が載置される床面に対して略水平な姿勢、あるいは若干前方が持ち上がった傾斜姿勢をとる。この座部フレーム体20の後端には、上方向に略直立した背もたれフレーム体10が連結されている。なお直立とは鉛直方向という意味でなく、使用者が着席時に快適となるよう、若干の傾斜角度を付した意味で使用している。すなわち、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20とが成す傾斜角度Aは、基本姿勢では鈍角とすることが好ましい。また背もたれフレーム体10の傾斜角度Aの変化幅は30°〜35°とすることが好ましい。一方、座部フレーム体20の前端には下垂した足置きフレーム体30が連結されており、この足置きフレーム体30は、その後端を座部フレーム体20と回動自在に連結し、その先端(図1において下端)は鉛直方向よりも使用者の手前側(図1において後方)に傾斜した姿勢で座部フレーム体20の下に潜り込むように収納されている。この足置きフレーム体30の収納位置においては、足置きフレーム体30と座部フレーム体20とが成す開閉角度Bは鋭角とする。これにより、基本姿勢においては足置きフレーム体30が使用者の邪魔にならず、また足置きフレーム体30の全長を、座部フレーム体20の先端から床面までの高さよりも長くできる。図の椅子100は、互いに回動する座部フレーム体20と背もたれフレーム体10とで構成する傾斜角度Aが最も小さい状態で、足置きフレーム体30の先端が垂直方向よりも手前側に位置されて、足置きフレーム体30は座部フレーム体20の下部に収納されている。
椅子100は、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20、足置きフレーム体30が互いに連動するリンク機構を備えている。つまり、背もたれフレーム体10、座部フレーム体20、足置きフレーム体30のいずれも独立して動作するのでなく、一のフレーム体の動きに他のフレーム体が連動するよう互いに相関している。以下、背もたれフレーム体10、座部フレーム体20、足置きフレーム体30を連動させるリンク機構について説明する。なお本明細書ではリンク機構の説明を分かり易くするために、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20の連動に関連した第1のリンク機構7と、座部フレーム体20と足置きフレーム体30の連動に関連した第2のリンク機構8とに分けて説明する。ただし、それぞれのリンク機構7、8を構成する部材は一部重複している。具体的には、座部連動リンク1が共通しており、また座部フレーム体20の動きも共通となる。この結果、第1のリンク機構7と第2のリンク機構8とを相関させることができ、これらの動きは互いに連動することになる。第1のリンク機構7と第2のリンク機構8が連動することで、座部フレーム体20は、第1のリンク機構7と第2のリンク機構8を介して、背もたれフレーム体10及び足置きフレーム体30の傾斜を協動させる。また、座部フレーム体20そのものをリンクとして機能させることで、従来必要であった背もたれフレーム体10と足置きフレーム体30とを繋ぐ長いリンクを不要にでき、連動機構を簡素化できる利点が得られる。
また図において、第1の定点x、第2の定点yなど、×印を中に嵌め込んだ○印で表記した点は固定された中心軸であり、したがってその場で回転することはあっても、配置位置を変動しない定点を意味する。一方、第1の変位点a、第2の変位点bなど、◎で表記した点は、配置位置を変更可能な移動点を意味する。また図の破線は、実際の部品を示すものではなく、リンク機構を構成するリンク片を理解しやすいように付記した補助線である。
第1のリンク機構7と第2のリンク機構8は、椅子100の各部材の動きと位置を決定する。椅子100の各部材は、第1のリンク機構7と第2のリンク機構8を介して回動自在に連結しており、この連結点に相当するリンク機構の節について、図5を用いて説明する。まずベース50は、各々回動軸を構成する第1の定点x、第2の定点y、第3の定点zを定位置に支持する。背もたれフレーム体10は、第1の定点xと、第1の定点xとは異なる点である第1の変位点aとを定位置に支持する。座部連動リンク1は、第2の定点yと、第2の定点yとは異なる点である第2の変位点bとを定位置に支持する。足置き開閉リンク2は、第3の定点zと、第3の定点zとは異なる点である第4の変位点dとを定位置に支持する。足置きフレーム体30は、第4の変位点dと、第4の変位点dとは異なる点である第3の変位点cを定位置に支持する。座部フレーム体20は、第1の変位点aと、第2の変位点bと、第3の変位点cとを定位置に支持する。
またリンク機構の節に注目すると、第1の変位点aは、座部フレーム体20と背もたれフレーム体10とを回動自在に連結する。第2の変位点bは、座部フレーム体20と座部連動リンク1とを回動自在に連結する。第3の変位点cは、座部フレーム体20と足置きフレーム体30とを回動自在に連結する。第4の変位点dは、座部フレーム体20と足置き開閉リンク2とを回動自在に連結する。また第1の定点xは、ベース50と背もたれフレーム体10とを固定する。第2の定点yは、ベース50と座部フレーム体20とを固定する。第3の定点zは、ベース50と足置き開閉リンク2とを固定する。
(第1のリンク機構)
まず、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20とを連動させる第1のリンク機構7について説明する。第1のリンク機構7は、図1の破線に示すように、ベース50と、座部連動リンク1と、座部フレーム体20と、背もたれフレーム体10とで、第1の定点xと第2の定点yと第2の変位点bと第1の変位点aとを節として回動自在に連結して構成される。すなわち第1のリンク機構7を実際に構成するのは、ベース50の一部、第1の定点xと第2の定点yとの間(x−y)、座部連動リンク1の第2の定点yと第2の変位点bとの間(y−b)、座部フレーム体20の第2の変位点bと第1の変位点aとの間(b−a)、及び背もたれフレーム体10の第1の変位点aと第1の定点xとの間(a−x)となる。また、第1のリンク機構7が変形することで、これらリンク片を含むベース50、座部連動リンク1、座部フレーム体20、背もたれフレーム体10が連動して相対的に変位することになる。第1の変位点aは、第1の定点xよりも後方に配置され、第1の定点xを回転軸として半径(x−a)で回転する軌跡となる。また第2の定点yは、座部フレーム体20が回動する際の中心軸であり、第2の変位点bは、この第2の定点yを回転軸として半径(y−b)で回転移動する軌跡となる。
使用者が椅子100に腰掛けて、座部フレーム体20に座った状態で倒れ込む、すなわち背中を背もたれフレーム体10に押し当て、後方へ押圧すると、図1の矢印f1に示すように背もたれフレーム体10は、背もたれフレーム体10の略下端に設けられた第1の定点xを中心として、時計回りに回転する。つまり背もたれフレーム体10の上端が後方側へ回転しながら下降して、背もたれフレーム体10が傾倒する。背もたれフレーム体10が傾倒すると、背もたれフレーム体10の下方に設けられた第1の変位点aが連動する。すなわち矢印f2に示すように第1の変位点aは、第1の定点xを中心にして時計回りに回転し、下方に移動する。この第1の変位点aは、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20とを回動自在に連結しており、図1の例では背もたれフレーム体10の下方と座部フレーム体20の後方を連結している。したがって、第1の変位点aが回転移動すると、座部フレーム体20の後方も連動して下降する。
また座部フレーム体20の中央域には、座部連動リンク1の一端に回動自在に連結された第2の変位点bを備える。この座部連動リンク1の他端側には第2の定点yを設けており、座部連動リンク1の一端が回転移動する際の中心軸を担う。したがって第1の変位点aが下降すると、その力が座部フレーム体20を介して第2の変位点bへと伝わり、第2の変位点bは第2の定点yを中心に時計回りに回転移動する。つまり、背もたれフレーム体10が第1の定点xを中心に回転移動すると、第1の変位点a及び第2の変位点bが連動し、第1の変位点a及び第2の変位点bは、第1の定点xと第2の定点yをそれぞれ中心として回転移動する。この結果、背もたれフレーム体10が後に傾動するにつれて、矢印f3で示すように座部フレーム体20の後方が沈み、一方座部フレーム体20の前方が上昇する。つまり座部フレーム体20は、重心を後方に移動させながら後端を下降させて、後方下がりに傾倒する。
このように背もたれフレーム体10が傾動するにつれて座部フレーム体20が傾倒する椅子100は、使用者が後方に傾倒する際の、腰の相対的な位置ずれを吸収する。したがって、背もたれフレーム体10が傾動する際に、使用者の背面と背もたれフレーム体10との接触面が擦れることを回避して、つまり背面と背もたれフレーム体10との位置が実質上ずれることを解消できるため、使用者は自然にリクライニングできる。また、傾倒した背もたれフレーム体10を前方に傾動させると、この背もたれフレーム体10に連動して座部フレーム体20の後方が上昇し、一方座部フレーム体20の前方は下降する。背もたれフレーム体10の前方への傾動による、座部フレーム体20及び足置きフレーム体30の連動は、背もたれフレーム体10の後方への傾動による連動との逆動作であり、詳しい説明を省略する。
椅子100は、背もたれフレーム体10や座部フレーム体20など、回動自在に連結される各フレーム体が、それぞれのフレーム体の連結点と、回動の中心点とを離間して別個に設けていることを特長としている。これにより、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20とをそれぞれ連動させることができる。具体的に、背もたれフレーム体10は、回転移動する際の中心軸である第1の定点xと、座部フレーム体20との連結点である第1の変位点aとを離間して設けている。同様に、座部フレーム体20においても、座部連動リンク1との連結点である第2の変位点bと、回転移動する際の中心軸である第2の定点yとが離間して配置される。
そして、これらの第1の定点x、第2の定点y、第1の変位点a、第2の変位点bが第1のリンク機構7を構成しており、この第1のリンク機構7によって背もたれフレーム体10と座部フレーム体20との相対的な位置関係が決定される。具体的に第1のリンク機構7は、第1の定点xと第2の定点yの位置を固定しており、したがって第1の定点xと第2の定点yとを結んだ基準ラインlは実質上不動であって離間距離も一定である。一方、第1の変位点aと第2の変位点bは、離間距離を一定としながら互いに移動可能であって、したがって、どちらか一方の変位点の位置を変位させて、互いに連動させながら離間距離を略一定に維持する。図1に示す椅子100の基本姿勢では、第1の変位点aと第2の変位点bが座部フレーム体20の座面21と略水平をなす。さらに第1の定点xと第2の定点yが、第1の変位点aと第2の変位点bより下方にあって、略水平に位置している。つまり椅子100の基本姿勢の第1のリンク機構7は、図1の破線で示すように、第1の定点x、第2の定点y、第2の変位点b、第1の変位点aとの結線が矩形状であって、詳しくは台形状を構成している。
この第1のリンク機構7によって、背もたれフレーム体10が倒れると、第1の定点xは中心軸として第1の変位点aを回転移動し、これと同時に第2の変位点bは、第2の定点yを中心軸として回転移動する。そして背もたれフレーム体10の傾倒が進むにつれて、図2〜図4に示すように、第1の移動軸aの移動距離は大きくなり、図4の状態では、第1の変位点aは基準ラインlよりも下方に位置する。このように、2点の定点と、2点の互いに連動する移動点から構成される第1のリンク機構7は、これら4点の初期の配置位置を調節することで、背もたれフレーム体10と座部フレーム体20との相対的な傾倒速度を自在に変更できる。つまり4点の離間距離を調節することで、例えば背もたれフレーム体10の傾き度合いに対して、座部フレーム体20の傾斜度合いをゆるやかとして、背もたれフレーム体10の傾斜角度Aを徐々に大きくする形態とできる。そして、第1のリンク機構7の初期状態を、それぞれのフレーム体10、20、30の所定の傾斜角度に対応するよう一度設定すると、その後の使用に際しては、使用者が背もたれフレーム体10にもたれかかるだけで、自動的に座部と背もたれ部の傾斜角度を適切に調整しながら展開していくため、リクライニングする度に開閉の具合を設定する必要がなく便利である。また、傾倒状態において、背もたれフレーム体10に対する押圧力を低減すると、第1のリンク機構7が初期状態に復元されるため、自動的に背もたれフレーム体10が前方へ起きあがると同時に、座部フレーム体20が略水平となる。このように、第1のリンク機構7の作用で、背もたれの傾斜に連動して座面も自動的に傾斜させることができるため、使用者に快適な姿勢が実現される。特に背もたれを倒した姿勢では脚側を持ち上げることで、使用者に快適な姿勢となる。さらに第2のリンク機構によって、座面の傾斜と共に足置きフレーム体30の傾斜も連動させることができる。
(第2のリンク機構)
また、座部フレーム体20と足置きフレーム体30は、第2のリンク機構8によって協動する。この第2のリンク機構8について図6〜図9を用いて説明する。図6〜図9はそれぞれ図1〜図4と同じ説明図であり、図1〜図4と同一の部材については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
第2のリンク機構8は、図6の破線で示すように、ベース50と、座部連動リンク1と、座部フレーム体20と、足置きフレーム体30と、足置き開閉リンク2とで、第3の定点zと第2の定点yと第2の変位点bと第3の変位点cと第4の変位点dとを節として回動自在に構成される。すなわち第2のリンク機構8を実際に構成するのは、ベース50の一部、第3の定点zと第2の定点yとの間(z−y)、座部連動リンク1の第2の定点yと第2の変位点bとの間(y−b)、座部フレーム体20の第2の変位点bと第3の変位点cとの間(b−c)、足置きフレーム体30の第3の変位点cと第4の変位点dとの間(c−d)、足置き開閉リンク2の第4の変位点dと第3の定点zとの間(dーz)となる。また、第2のリンク機構8が変形することで、これらリンク片を含むベース50、座部連動リンク1、座部フレーム体20、足置きフレーム体30、足置き開閉リンク2が連動して相対的に変位することになる。
第2の定点y、第3の定点zは、それぞれ第2の変位点b、第4の変位点dの中心軸であって、変位しない。一方、第2の変位点b、第3の変位点c、第4の変位点dは移動点である。したがって第2のリンク機構8は、2点の定点と、互いに連動する3点の変位点とから構成される。
また第4の変位点dは、第3の変位点cよりも後方に設けられる。詳しくは、線状の足置き開閉リンク2の両端に設けられた第4の変位点d及び第3の定点zは、座部フレーム体20の上下にまたがって配置される。言い換えると、座部フレーム体20の中央部と前端に設けられた第2の変位点b及び第3の変位点cの結線が、第4の変位点d及び第3の定点zの結線と交差している。また図6の基本姿勢では、第4の変位点dが第3の変位点cよりも上方に位置する。
上記の構成を備える椅子100に着座した使用者は、背もたれフレーム体10を後方に押圧すると、図6の矢印f3に示すように、座部フレーム体20の後方側が沈み、一方座部フレーム体20の前方が上昇する。そして座部フレーム体20の前端が上昇すると、この座部フレーム体20の前端に連結された第3の変位点cを介して、矢印f4に示すように足置きフレーム体30全体が上昇する。これと略同時に、足置きフレーム体30の下端は、図7の矢印f5に示すように前方へと回転移動して座部フレーム体20の前方に現れる。以下、足置きフレーム体30の動きについて詳細に説明する。
まず座部フレーム体20は、図6の矢印f3に示すように、その前端が上昇すると、足置きフレーム体30と連結した第3の変位点cを介して、足置きフレーム体30を上昇させる(矢印f4)。そして図7に示すように、足置きフレーム体30は第4の変位点dを介して、足置き開閉リンク2を上方に引っ張る。足置き開閉リンク2は、第3の定点zで一端を固定されているため、この上方への引っ張りに対して下方への反作用が働く。つまり足置き開閉リンク2は、第4の変位点dを介して足置きフレーム体30の上端後方を、第3の定点z方向に引っ張る(矢印f6)。上端後方を下方に引っ張られた足置きフレーム体30は、第3の変位点cを中心軸として回転し、この結果、足置きフレーム体30の下端を前方へ回転移動させる(矢印f5)。
つまり第3の変位点cは、矢印f7に示すように第4の変位点dを中心軸として時計回りに回転する。上端に第3の変位点cを有する足置きフレーム体30は、この第3の変位点cの上昇と、上述の第4の変位点dにおける下方への引っ張り力によって、上端が後方へと傾動する結果、足置きフレーム体30の下端は、第3の変位点cを回転軸として矢印f5に示すように前方へと回動する。足置きフレーム体30は座部フレーム体20の傾動に連動して上昇すると同時に、その下端を前方へ跳ね上げて、座部フレーム体20より出現させる。
さらに図8に示すように、座部フレーム体20の傾斜が大きくなると、すなわち座部フレーム体20の前端の上昇度が大きくなると、これにつられて上昇する足置きフレーム体30は、足置き開閉リンク2を牽引する力が増す。足置き開閉リンク2は、一端が第3の定点zで固定されており、したがって矢印f6に示すように、反作用でもって第3の定点z方向への引っ張り力が強まる。これにより第3の変位点cは、第4の変位点によって下方に引っ張られる結果、相対的に上昇し、第4の変位点dを中心に回動する。第3の変位点cの上昇につれて、足置きフレーム体30の下端が、第3の変位点cを中心に大きく回転移動して前方へ進出する。さらに図9の椅子100では、足置きフレーム体30を水平な姿勢に近づけて、椅子100の裏面側における座部フレーム体20と足置きフレーム体30とで構成する開閉角度Bを一層大きくしている。
図6〜図9における椅子100の一連の傾倒動作において、第2にリンク機構8に注目すると、第3の定点zは、足置きフレーム体30から離間し、第3の変位点cと第2の定点yとの間に配置される。一方、第4の変位点dは、第3の変位点cと第2の変位点bとの間に配置される。すなわち足置き開閉リンク2の軸方向であり、第3の定点zと第4の変位点dを結ぶリンクラインmが、第2の変位点bと第3の変位点c間に配置される。また図6の基本姿勢において第3の変位点cは、相対的に第4の変位点dよりも下方に位置するが、座部フレーム体20と足置きフレーム体30の開閉角度Bが大きくなるにつれて、第3の変位点cは上昇し、図9の状態では、相対的に第4の変位点dよりも上方に位置する。
また椅子100は、図9の座部フレーム体20が傾倒した状態から、図6の基本姿勢に変形するにつれて、足置きフレーム体30の開閉角度Bを小さくする。すなわち足置きフレーム体30は、略水平状態から垂直姿勢を経て、さらに基本姿勢では足置きフレーム体30の開閉角度Bを鋭角として座部フレーム体20の下方に配置された収納状態をとる。この足置きフレーム体30の収納については、上述の展開機構の逆動作であり、詳細な説明を省略する。このように第2のリンク機構8によって、足置きの回動と座面の傾斜とを連動させることができる。すなわち、座面が水平に近い基本姿勢では、使用者は脚を床面に設置させた安定姿勢をとることができる。この場合は足置きは不要であるため、座面の下で手前側に引き込んだ収納位置とさせる。一方、傾斜姿勢においては座面を先端から、すなわち脚側を持ち上げるよう傾斜させるため、脚が床面から浮くことになる。このように脚が自由な姿勢は使用者に快適でないため、足置きが必要となる。そこで座面の傾斜と共に足置きを展開することで、使用者の脚を足置きに載置して支持し、快適な状態が実現できる。
第1のリンク機構7及び第2のリンク機構8は、連動する。これは、第1のリンク機構7及び第2のリンク機構8が、互いに共通のリンク片として座部連動リンク1及び座部フレーム体20を利用しているからである。座部連動リンク1は、第1のリンク機構7と第2のリンク機構8をそれぞれ構成する共通の節となる第2の定点y、第2の変位点bを備えており、リンク機構7、8の共通辺を担う。また座部連動リンク1は、背もたれフレーム体10と足置きフレーム体30の間に連結された座部フレーム体20と、第2の変位点bで回動自在に連結される。そして座部フレーム体20が、第1の変位点a及び第3の変位点cを含んでいるため、座部フレーム体20の動きは、第1のリンク機構7を構成するリンク片(b−a)と、第2のリンク機構8を構成するリンク片(b−c)の動きと一致する。この結果、座部フレーム体20を介して、第1のリンク機構7を構成する背もたれフレーム体10の動きと、第2のリンク機構8を構成する足置きフレーム体30の動きが連動されることになる。したがって、第1のリンク機構7または第2のリンク機構8のいずれか一方に印加された力は、座部フレーム体20及び座部連動リンク1を介して他方のリンク機構7、8に伝搬される。この結果、どのフレーム体10、20、30を操作しても、これに連動して他のフレーム体10、20、30を操作することができる。このように全てのフレーム体10、20、30の動きを連鎖させることができる椅子100は、例えば使用者が背もたれフレーム体10にもたれるだけで、座部フレーム体20及び足置きフレーム体30が適切な姿勢を構成しながら、自然にリクライニングすることができる。
また使用者が足置きフレーム体30を畳むように膝や脚で足置きフレーム体30を押圧すると、この力によって第2のリンク機構8が作用し、座部フレーム体20が水平姿勢に近付くよう変位すると共に、これにより第1のリンク機構7が作用して背もたれフレーム体10も起立姿勢となるよう傾斜される。このように使用者は、操作レバーなどを一々手で操作することなく、脚や背中の力の加減、あるいは体重移動によって椅子の姿勢を操作できるため、極めて操作性に優れた快適な椅子が提供される。また手による操作を不要とすることで、手の不自由な身体障害者や高齢者などにも利用可能な安楽椅子を提供することもできる。
また、背もたれフレーム体10の傾斜角度A、及び足置きフレーム体30の開閉角度Bは、第1のリンク機構7及び第2のリンク機構8の配置バランスによって自在に決定できる。例えば背もたれフレーム体10の傾動速度と足置きフレーム体30の展開速度を、リンク機構7、8でもって調整することで、背もたれフレーム体10の傾倒具合に対して、足置きフレーム体30の展開速度を鈍らせることもできる。好ましくは、背もたれフレーム体10の傾斜角度Aが増加する比率よりも、足置きフレーム体30の開閉角度Bが増加する比率を大きくする。これにより、背もたれフレーム体10を傾斜させる際に足置きフレーム体30を大きく回動させて、傾斜姿勢において使用者が足置きを使用可能な状態とできる。また傾斜姿勢から基本姿勢に戻す際は、足置きフレーム体30を速やかに収納位置に移動させ、足置きが邪魔にならないようにできる。
第1のリンク機構7及び第2のリンク機構8を備える椅子100は、座部フレーム体20、背もたれフレーム体10、足置きフレーム体30がそれぞれ連動するため、使用者は最初に変動させるフレーム体10、20、30を限定しない。例えば使用者が、基本姿勢の椅子に着座し、背中を後方に倒して背もたれフレーム体10を押圧すると、背もたれフレーム体10の傾動に連動して、自ずと座部フレーム体20の後方が沈みだし、かつ足置きフレーム体30の先端が上方に持ち上がる。つまりフレーム体10、20、30によって骨組みが折れ線状に形成された椅子100は、いずれかのフレーム体10、20、30を変動させることで骨組みが徐々に展開し、最終的な展開状態では直線状に近づく。ただ、椅子の展開状態は直線状のみを意図するものでなく、例えば図4、図9に示すように、骨組みが折れ線状態を維持する形状としてもよい。すなわち傾倒した状態であっても、使用者の頭が腰よりも上にくるようにし、さらに膝を少し曲げた状態を維持できる。つまり椅子の上面を、使用者の仰向け状態における背面側の起伏に沿うようにでき、使用者は自然で無理のない姿勢を保てる。このような山形姿勢は、使用者にとって快適な姿勢となる。また、座部フレーム体20、背もたれフレーム体10、足置きフレーム体30がそれぞれが連動する椅子100は、傾倒状態の椅子100を基本姿勢に変動させる際に駆動させるフレーム体10を限定しない。すなわち仰向け状態の使用者が、作動させやすいフレーム体10を変動させることで、自動的に他のフレーム体10も連動する。例えば、膝を屈折させて略水平状態の足置きフレーム体30へ下方に押圧してやると、これに連動して背もたれフレーム体10及び座部フレーム体20が基本姿勢に変形する。
第1のリンク機構7と第2のリンク機構8とを共通のリンク辺で連結する椅子100は、リンク機構7、8を構成する節が互いに相関しあう。例えば座部連動リンク1の設置位置は、その前後に設けられる第2のリンク機構8及び第1のリンク機構7のバランスを決定する。座部フレーム体20の奥行きに対して、座部連動リンク1を奥側に変位させると、すなわち第2の変位点bを、第1の変位点aと第3の変位点cの中点よりも後方に設置させると、後方側に位置する第1のリンク機構7に印加された応力は、前方側の第2のリンク機構8に大きく伝わる。この結果、背もたれフレーム体10の変位量よりも足置きフレーム体30の変位量を大きくする。つまり背もたれフレーム体10の傾斜速度よりも、足置きフレーム体30の展開速度を大きくできる。一方、座部連動リンク1を座部フレーム体20の前方に配置させると、背もたれフレーム体10と足置きフレーム体30の相対的な展開速度を逆とできる。
また座部フレーム体20の回転位置となる第2の定点yを設ける位置は、使用者が着座時に臀部の下部に位置するよう配置することが好ましい。これによって使用者は自身の体重移動によって背もたれを倒したり起こしたりし易くなり、従来のようにレバーを操作して背もたれ位置を変更する必要がなく、操作性が容易となる。具体的には、座部フレーム体20と背もたれフレーム体10との交点Oからの距離Dが180mm〜250mm、より好ましくは200〜230mmとする(図10参照)。また、クッションなどの外装部材を装着した基本姿勢の椅子(図27参照)では、座部連動リンク1から座面へ下ろした垂線の足を基準として、この足から背もたれフレーム体10の傾斜面までの距離Eを140〜180mmとすることが好ましい。
また基本姿勢の椅子において、座部連動リンク1は、軸方向を略鉛直方向にして支持されることが好ましい。つまり第2の定点yと第2の変位点bとの間(y−b)で構成されるリンク片を略鉛直方向として、使用者の重心方向と略一致させることができる。この結果、使用者が基本姿勢の椅子に着座した際の第1のリンク機構7と第2のリンク機構8のバランスを、一時的に初期状態に維持でき、座部フレーム体120の急な変形を回避できる。
実施例1の椅子101を図10〜図22に示す。図10〜図15は、椅子101の側面図であり、椅子の基本姿勢から背もたれ部を後方へ徐々に倒した際の、一連の椅子の姿勢を示す。図16は図10の分解図であり、リンク機構の節の支持位置を、分解状態の部材毎に示している。図17は椅子101の基本姿勢を斜め下方から見た斜視図であり、図18は図17の状態から背もたれ部をリクライニングした際の斜視図である。図19は椅子101を斜め上方から見た斜視図であり、図20は図19の状態から背もたれ部をリクライニングした際の斜視図である。また、図21は椅子101を下方から見た斜視図であり、図22は図21の状態から背もたれ部をリクライニングした際の斜視図である。なお、図10〜図22の椅子101は、実施の形態の椅子100と同様の機能を備える部材については同一の符号を付しており、詳細な説明を省略する。
実施例1の椅子101は、上述の実施の形態の椅子100におけるリンク機構7、8を備えた椅子である。椅子101は、椅子の部材を連動させる駆動機構としてリンク機構70、80を採用し、これを基本のフレームとして、さらにクッションなどの外装部材を装着しやすいように、外装部材を固定可能なシート固定枠23を連結している。また椅子101は、固定されたベース50と、リンク機構70、80によって変位する可動部51とを備える。ベース50は、リンク機構70、80の定点を固定する不動の部材であって、床面に載置される椅子101を支持する支持基台54に固定される。また可動部51は、背もたれフレーム体10、座部フレーム体120、足置きフレーム体30から構成される。この座部フレーム体120は、座部連動リンク1を備えるシート駆動部22と、このシート駆動部22の上方に固定されたシート固定枠23とを備える。図10〜図15では、不動の部材と可動部51とをわかりやすく対比させるために、不動のベース50にクロスハッチングを付してる。また図16の分解状態の椅子101は、それぞれの部材に付された同じ符号同士が重なる位置で連結されることで図10に示す状態となる。
図10〜図15に示す実施例1の椅子101において、椅子101のフレーム体10、120、30を互いに連動させるリンク機構は、破線で示す第1のリンク機構70と第2のリンク機構80から構成される。第1のリンク機構70は、座部フレーム体120を構成するシート駆動部22と、背もたれフレーム体10とを連動させる。一方、第2のリンク機構80は、座部フレーム体120を構成するシート固定枠23と、足置きフレーム体30とを連動させる。この第1のリンク機構70と第2のリンク機構80は、座部連動リンク1を共有する。つまり実施の形態のリンク機構7、8と同様に、第1のリンク機構70と第2のリンク機構80は、座部連動リンク1を介して互いに連動する。また、第1のリンク機構70及び第2のリンク機構80を構成し、定点である第1の定点x、第2の定点y、第3の定点zは、共通のベース50に連結されて固定されている。以下、第1のリンク機構70及び第2のリンク機構80について説明する。
まず第1のリンク機構70は、ベース50とシート駆動部22とを連結する座部連動リンク1と、シート駆動部22の後端で背もたれフレーム体10を回動自在に連結する第1の変位点aと、背もたれフレーム体10の回動の中心軸であり、ベース50に固定された第1の定点xとから構成される。座部連動リンク1は、一端に、ベース50に固定された第2の定点yを有し、一方他端には、シート駆動部22の中央部に設けられ、この座部連動リンク1をシート駆動部22と回動自在に連結する第2の変位点bとを有する。第1のリンク機構70の動作は、実施の形態における第1のリンク機構7と同様であり、つまり第1のリンク機構70によって、シート駆動部22と背もたれフレーム体10が連動する。したがって、このシート駆動部22の上部に固定され、シート駆動部22と一体に連動するシート固定枠23は、背もたれフレーム体10に連動し、この結果シート固定枠23と背もたれフレーム体10との開閉具合を自在に変更できる。つまりシート駆動部22は、第1のリンク機構7に関与する部材であり、図1の椅子100における座部フレーム体20に相当する。
また、第2のリンク機構80は、シート固定枠23の前端と足置きフレーム体30とを回動自在に連結する第3の変位点cと、ベース50と足置きフレーム体30とを連結する足置き開閉リンク2と、ベース50とシート駆動部22とを連結する座部連動リンク1とを備える(図12、図13参照)。また第2のリンク機構80は、ベース50に固定され、かつ第3の変位点cと第2の定点yとの間に配置された第3の定点zを備える。さらに第2のリンク機構80は、足置き開閉リンク2と足置きフレーム体30とを回動自在に連結する第4の変位点dを有している。この足置き開閉リンク2は、下端を第3の定点zに固定し、他端を第4の変位点dに連結する。つまり第2のリンク機構80は、第2の定点y及び第3の定点zからなる2つの定点と、第2の変位点b、第3の変位点c、第4の変位点dからなる3つの変位点から構成される。ただ、リンク機構70、80は、定点や移動点からなる節の数を少なくとも上記の通り備えていればよく、リンク機構70、80を構成する節と節との間に、1以上の接合点を有する連結材を設けて、基本の節の数に加えて接合点を増設してもよい。隣接する節同士がそれぞれ設けられた別個の部材を、連結材を介して連結する椅子は、後述する一部の部材の脱着を容易に実現できる。具体的に、図10〜図15の例では、ベース50に設けた第3の定点zと、足置きフレーム体30に設けた第4の変位点dとを、足置き開閉リンク2で直接連結する形態ではなく、足置きリンク2に連結材を連結して間接的につなぐ形態としている。足置きリンク2は、図15に示すように、両端に連結材を固定をして、この連結材を介してベース50や足置きフレーム体30にそれぞれ連結される。すなわち足置き開閉リンク2の下端は、連結材である固定フォルダ6を介して第3の定点zを備えるベース50に連結される。一方足置き開閉リンク2の上端は、連結材である第1の連結材4を介して第4の変位点dを備える足置きフレーム体30に連結される。
また足置きフレーム体30は、その一端に固定された第2の連結材5を備えており、この第2の連結材5によって、第3の変位点cと第4の変位点dとを定位置に支持する。具体的に足置きフレーム体30は、図15に示すように、その一端が第2の連結材5の一端と第3の変位点cで固定されて、第2の連結材5と一体に連動する。一方、第2の連結材5は、その他端に第4の変位点dを設けており、この第4の変位点dを介して第1の連結材4と連結される。
つまり、第2のリンク機構80の節を構成する第3の定点z及び第4の変位点dは、固定フォルダ6と足置き開閉リンク2と第1の連結材4とを介して連結される。この結果、第3の定点z及び第4の変位点dを連結して構成するリンクの辺は、折曲状に構成される。このようにリンク機構の節を備える部材同士を連結し、リンク片を構成する足置き開閉リンク2に対して、さらに連結材を連結し、折曲状のリンク片を構成する椅子は、節の支持位置と、さらに節とこの節に応力を印加する足置き開閉リンク2との相対位置を適切に調節できる。また所定の位置に配置された節と節との間を、足置き開閉リンク2に加えて連結材4、5でもって連結する椅子は、節を備える部材と、足置き開閉リンク2とを、この連結材を介して容易に連結できるため、効率良く椅子を組み立てられる。
またリンク機構を構成する定点と、この固定点を中心軸として回転する移動点は、同一のフレーム体に設けても良いし、それぞれ別個の部材に設けてもよい。例えば図1の椅子100では、第1の定点xと、この第1の定点xを中心軸として回転する第1の変位点aとの双方が、背もたれフレーム体10に設けられている。このように、一のフレーム体に複数の節を設ける椅子は、フレーム体自体がリンク機構を構成するため、リンク用の部材を別個に設ける必要がなく構造を簡易とできる。
一方、実施例1の椅子101では、図16に示すように、背もたれフレーム体10が、その下端に固定された第3の連結材9を備える。背もたれフレーム体10は、この第3の連結部材9を介してベース50とシート駆動部22とにそれぞれ連結される。具体的に第3の連結部材9は、その前端に第1の定点xを設け、一方後端に第1の変位点aを設けている。この第1の定点xはベース50に固定され、一方第1の変位点aはシート駆動部22の後端に連結される。上述の通り、第1の変位点aは第1の定点xを回転軸として回転する。したがって背もたれフレーム体10は、後方へ押されると、第3の連結材9を介して設けられた第1の定点xを中心に回転移動する。これと同時に、変位する第1の変位点aを介してシート駆動部22が後方下がりに傾斜する。
このように、リンク機構を構成する節を第3の連結材9に設け、この第3の連結材9を背もたれフレーム体10と一体に固定する椅子は、節の設置位置を固定した連結材を、背もたれフレーム体10と別個に製造することができる。つまりリンク機構専用の連結材を設け、この連結材を背もたれフレーム体10に固定できるため、背もたれフレーム体10の形状に依存することなく一定したリンク機構を構成することができ、歩留まりが向上する。
以下、実施例1の椅子101の変形について説明する。図10に示す基本姿勢の椅子101に着席した使用者が、背もたれフレーム体10を後方に押圧すると、図11〜図15に示すように、背もたれフレーム体10は、第1の定点xを中心に後方へ回動する。この背もたれフレーム体10の傾動に伴って、シート駆動部22との連結点である第1の変位点aが第1の定点xを中心軸として回動する。第1の変位点aの回動により、第2の変位点bは、第1のリンク機構7を介して、第2の定点yを中心に回動する。この第2の変位点bは、第2の定点yを中心軸として、シート駆動部22の前後の比重をバランスしている。したがって第2の変位点bが後方に回動することで、シート駆動部22は後ろに移動しながら後端を下方に傾倒し、一方、前端は上昇する姿勢に傾斜する。この結果、背もたれフレーム体10が後方に傾動するにつれて、背もたれフレーム体10と座部20との連結位置が時計回りに回動すると同時に、背もたれフレーム体10の傾斜角度Aが徐々に大きくなる。
またシート駆動部22は、前端と後端でその上方にシート固定枠23を固定しており、さらにこのシート固定枠23は、第3の変位点cを介して足置きフレーム体30と回動自在に連結している。したがって、シート駆動部22の前方が上昇するにつれて、シート固定枠23が連動し、さらにこのシート固定枠23に連結された足置きフレーム体30全体が上昇する。また足置きフレーム体30の上昇に伴い、足置き開閉リンク2が第4の変位点dでもって、足置きフレーム体30の上端を足置き開閉リンク2の軸方向に引っ張る。この結果、足置きフレーム体30の下端が上昇して、足置きフレーム体30が座部フレーム体21より出現する。さらに背もたれフレーム体10を後方へ傾倒させると、第1のリンク機構70及び第2のリンク機構80を介して、足置きフレーム体30の下端の上昇度が大きくなる。例えば図15に示すように、足置きフレーム体30の主面を略水平状態とできる。
一方、背もたれフレーム体10が前方に回動すると、第1のリンク機構70は、背もたれフレーム体10が後方へ回動する際と反対に作用し、座部フレーム体120が略水平姿勢へと変動する。第2のリンク機構80は、第1のリンク機構70に連動して、すなわち略水平姿勢の足置きフレーム体30が垂直姿勢を経て、さらに座部フレーム体120の裏側へと折り畳まれる。あるいは、図15のリクライニング状態において、略水平状態の足置きフレーム体30を下方に押圧すると、第2のリンク機構80を介して座部フレーム体120の前端が下降して座部フレーム体120が水平姿勢に近づくと同時に、連動する第1のリンク機構70によって背もたれフレーム体10が前方に起きあがる。
このように第1のリンク機構7と第2のリンク機構8が連動する椅子101は、背もたれフレーム体10、座部フレーム体120、足置きフレーム体30のそれぞれの部材が互いに連動する。したがって、いずれか一の部材が変位すると他の部材が連動し、かつ、各部材が自動的に適切な角度を構成しながら変動する。
つまり使用者が、背もたれフレーム体10にもたれて背もたれフレーム体10を後方に押すと、ゆっくりと傾倒しながら着座の重心が後ななめ下方向に沈むと略同時に、足置きフレーム体30によってふくらはぎを支持される仰向け姿勢となる。あるいは、座部フレーム体120の後方に重心をかけるか、場合によっては足置きフレーム体30を上昇させることで、第1及び第2のリンク機構70、80を相関させ、椅子101を傾倒させることもできる。一方、椅子の傾倒姿勢から、背もたれフレーム体10への押圧を低減させると、あるいは座部フレーム体120への着座の中心を前方に移動させると、または足置きフレーム体30を下方に押圧すると、背もたれフレーム体10が手前に起きあがると同時に、座部フレーム体120の傾斜角度がゆるやかとなって、足置きフレーム体30が座部フレーム体120の下方に収納される。
また安楽椅子において使用者にリラックスさせるためには、背もたれを倒すことに加えて、足を上げる姿勢をとらせることが有効である。このため従来の椅子では、座部の前端を回転軸として、後端が沈むように回動させる構成が知られていた。しかしながらこの方法では、足置きの長さを長くできないという欠点があった。すなわち、足置きは収納位置である垂直姿勢から前方に回転させるため、垂直姿勢では座部と床面との距離以内に納める必要があり、このため座部の高さにより制約を受けるという問題があった。
これに対して本願発明では、足置きの収納位置を傾斜姿勢、具体的には垂直位置よりも手前側に傾けた姿勢とし、これにより座部の高さよりも長い足置きの収納を可能としている。さらに座部を傾斜させる際には、単に座部の後端を沈めるのでなく、座部の前端を持ち上げるようにして座部を傾斜させているため、足置きの回動時には座部と床面との距離が大きくなり、足置きの回転を妨げない。この結果、足置きの長さを基本姿勢における床面から座部までの高さよりも大きくできるという優れた利点が得られる。
(姿勢制御機構)
また椅子101は、背もたれフレーム体10、座部フレーム体120、足置きフレーム体30の相対的な構成角度を所定に維持できる姿勢制御機構52を備える。これは、姿勢制御機構52が第1のリンク機構7及び第2のリンク機構8を固定して、つまり座部連動リンク1及び足置き開閉リンク2を不動状態に制御することで達成できる。姿勢制御機構52は、往復運動できるものであれば特に限定しない。例えば伸縮性のある弾性体、あるいはシリンダなどが挙げられ、ゴムやバネ、あるいはガス式、油圧式等のシリンダが利用できる。また電動式あるいは手動式のものが利用できる。ただ手動式とすることで制御機構を簡便とでき好ましい。姿勢制御機構52は、初期状態で所定の方向に付勢しており、この付勢力に抗することで反対方向に移動する。
図10〜図22の例では、姿勢制御機構52として手動式のガスシリンダを使用した。ガスシリンダ52は、伸縮方向をガスシリンダ52の軸方向に相当する椅子101の前後方向として、座部フレーム体120の下方に設けられる。このガスシリンダ52は図16に示すように、前端をベース50に固定し、後端を折曲ロッド53を介して背もたれフレーム体10に連結する。具体的に、ガスシリンダ52の前端は第3の定点zを介してベース50の先端に固定される。一方ガスシリンダ52の後端は、折曲して形成された折曲ロッド53を介して背もたれフレーム体10の連結点0に連結される。この折曲ロッド53は、略直角に折曲された折曲部に孔53bを設け、この孔53bに第1の定点xを回動可能に挿通している。
またガスシリンダ52は、筒体52aとこの筒体52aの内部を相対的に往復移動するピストン52cとを備えており、筒体52aの後端52bがピストン52の先端に対して離間したり近接したりすることでガスシリンダ52が伸縮する。ガスシリンダ52は、椅子101の基本姿勢において伸長状態とする。つまりガスシリンダ52は、基本姿勢の椅子101に対して後方側へ付勢しており、座部フレーム体20に対する足置きフレーム体30及び背もたれフレーム体10のそれぞれの構成角度が最も小さくなる姿勢に維持する。この状態をガスシリンダ52の初期状態としている。図11の矢印f8に示すように背もたれフレーム体10を後方に押圧すると、背もたれフレーム体10の下端が前方に変位する。この結果、背もたれフレーム体10に固定された折曲ロッド53は、折曲部の開口孔53bに挿通された第1の定点xを回転軸として回転し、下端を上昇させる。折曲ロッド53の下端に連結したガスシリンダ52の後端52bは、ガスシリンダ52の付勢に抗して前方方向(矢印のf9)へ印加される。前方へ印加されたガスシリンダ52の後端52bは、中空の外筒を前方へ押し出し、ガスシリンダ52を収縮させる。したがって、背もたれフレーム体10を後方に傾動させる際には、ガスシリンダ52の付勢に反して押圧するため、背もたれフレーム体10にかかる全ての押圧力がそのままリンク機構に伝わることを回避できる。ガスシリンダ52を有する椅子101は、背もたれフレーム体10への押圧力を分散してリンク機構に伝導させる結果、リンク機構に伝導する力を低減して、リクライニングの動作をゆるやかとできる。
また、背もたれフレーム体10への押圧力をゆるめると、ガスシリンダ52は復元し、すなわち伸長する。収縮状態から伸長状態に復元するガスシリンダ52は、ガスシリンダ52が後方へ進出するため(図15の矢印f10)、折曲ロッド53の後端53bが後方に押される。この結果、折曲ロッド53は第1の定点xを中心軸として反時計回りに回動し、矢印f11に示すように、折曲ロッド53の後端に位置する連結点Oを前方に変位させる。連結点Oの変位により、背もたれフレーム体10が前方に起きあがるとともに、シート駆動部22の後端も連動して上昇する。一方、第1のリンク機構7を介してシート駆動部22の前端は下降し、シート駆動部22が略水平になる。また第1のリンク機構7に連動して第2のリンク機構8が作動し、足置きフレーム体30が略垂直へと姿勢を変える。つまり使用者が、傾倒した姿勢の背もたれフレーム体10から背中を浮かすと、背もたれフレーム体10が自動的に起きあがるとともに、足置きフレーム体30が下降する。最終的にガスシリンダ52が初期状態に復元されると、背もたれフレーム体10が略直立し、足置きフレーム体30は座部フレーム体120の下方へと収納される。
また姿勢制御機構52は、椅子101の一連の動作において、所定の姿勢に固定することができる。これは、ガスシリンダ52を所定の長さにロックすることで、ガスシリンダ52に連結したベース50及び背もたれフレーム体10が固定されるからである。変位しない背もたれフレーム体10は、第1のリンク機構70及び第2のリンク機構80を構成する節を変位させないため、座部フレーム体120及び足置きフレーム体30を固定する。したがって、椅子を構成する座部フレーム体120に対する背もたれフレーム体10及び足置きフレーム体30のそれぞれの傾斜角度を一定として、椅子の姿勢を固定できる。一方ガスシリンダ52の固定を開放すると、ガスシリンダ52が伸縮可能となる。伸縮できるガスシリンダ52は、初期状態に復元されて椅子の基本姿勢をとる。あるいはガスシリンダ52を伸縮可能な状態として、いずれかのフレーム体10、120、30の押圧により、椅子を自在な姿勢とできることは上述の通りである。
実施例1の椅子101は、ベース50とシート固定枠23との間にシート駆動部22を設けている。そして、第1のリンク機構70と第2のリンク機構80において、固定点である第1の定点x、第2の定点y、第3の定点zを、共通のベース50に固定している。また座部連動リンク1を、第1のリンク機構70と第2のリンク機構80で共有する。またシート駆動部22は、背もたれフレーム体10と足置きフレーム体30とに回動自在に連結されており、すなわちシート駆動部22自体が背もたれフレーム体10と足置きフレーム体30のリンクを担う。これにより、椅子に設けるリンクの数を低減して部品点数を少なくできる。また露出するリンクを低減でき、つまり可動部品の低減された安全性の高い椅子とできる。
(脱着)
また実施例1の椅子101は、部材の一部を脱着可能に構成している。図23は椅子101の分解斜視図である。この図23に示すように、座部フレーム体120はシート駆動部22とシート固定枠23とを分解することができる。具体的に椅子101は、第1のリンク機構70を構成する座部フレーム体120のシート駆動部22を、背もたれフレーム体10側に残したまま、シート固定枠23を脱着することができる。シート駆動部22に対して脱着可能に連結されるシート固定枠23は、詳しくは後述するが、後工程で装着される座部のクッションなど、外装部材を連結して固定するための支持枠として用いられる。したがってシート固定枠23に固定される外装部材のサイズや形状を自在に変更することで、座部フレーム体120の座面の大きさやサイズを自在に変更することができる。
シート固定枠23を脱着可能とした椅子101は、背もたれフレーム体10と座部フレーム体120との傾動を司る第1のリンク機構70を変更せずに、座部の外装を自在とできる。これは、取り外したシート固定枠23に外装部材を装着し、この状態で再びシート固定枠23をシート駆動部22に連結して、座部フレーム体120として組み立てることができるからである。つまり実施例1の椅子101は、自由に変更可能な外装部材の固定部を、共通のシート固定枠23に固定する形態としており、さらにこのシート固定枠23は、シート駆動部22を介して座部フレーム体120に連結可能としている。このようにシート固定枠23を脱着可能とした椅子は、外装部材の種類に応じてシート駆動部22のサイズを変更する必要がない。したがって座面の大きさや形状、クッションの材質など、外装部材のバリエーションを自在としても、容易に椅子101に装着することができる。
また、脱着する部材は単独に限らず、複数でもよい。また複数の部材を一体として脱着できる構造としてもよい。部材を一体にして脱着可能な椅子は、一体として取りはずした部材に、連続して外装部材を装着することができる。つまり、複数の部材にわたって装着する外装部材を一体に成形して、この外装を複数のパーツに連続して装着することができるため、効率良く外装を装着できる。例えば図23に示す椅子101の分解状態では、シート固定枠23と足置きフレーム体30とが連結状態のまま、シート駆動部22や背もたれフレーム体10、あるいはベース50から一体にして取り外される。これは、図18に示すように、椅子の固定フォルダ6における足置き開閉リンク2とベース50の係止め部を取り外すことにより達成される。以下に外装部材を椅子101に装着する方法について説明する。
図24は、椅子101を下方から見た際の分解斜視図である。また図25は、図24に示す分解状態のシート固定枠23及び足置きフレーム体30が、外装部に装着される様子を説明する説明図である。さらに図26は、背もたれフレーム体10が外装部に装着される様子を説明する説明図であり、図27は外装部材を装着した椅子を示す断面図である。
図24に示すように、シート固定枠23は、足置きフレーム体30及び足置き開閉リンク2を一体に連結した状態で、椅子101の他の部材から取り外される。この一体に取り外されたシート固定枠23、足置きフレーム体30及び足置き開閉リンク2を便宜上、上部フレーム体3と呼称する。上部フレーム体3は、図25(a)、図25(b)に示すように第1の外装部材60によって被覆される。図25に示す第1の外装部材60は、裏面側から見た際の斜視図である。
具体的に第1の外装部材60は、シート固定枠23及び足置きフレーム体30を連続して被覆する上部フレーム体3用の外装部材である。この上部フレーム体3用の外装部材60は、シート固定枠23を被覆するシート被覆部61と、足置きフレーム体30を被覆する足置き被覆部62とが連続して構成されている。
また、第1の外装部材60は、足置きフレーム体30とシート固定枠23の外面を被覆する外装基台63と、この外装基台63の表面に固着される緩衝体64とを備える。外装基台63は、第1の外装部材60の構造枠であり、シート被覆部61に配置される面状のシート外装基台65と、足置き被覆部62に配置される面状の足置き外装基台66とから構成される。また緩衝体64は、使用者が椅子101に接触する際の衝撃力を低減するものである。衝撃体64の材質は特に限定されないが、例えば弾性体が挙げられ、具体的には合成樹脂、合成ゴム、合成繊維、ばね、綿、エアクッション、ウレタン、ポリエステルなどの単一部材、あるいはこれらを組み合わせた部材とできる。
シート外装基台65と足置き外装基台66は、図25(a)に示すように、離間して配置される。この離間して配置されたシート外装基台65と足置き外装基台66の外面を、一の連続した衝撃体64が連続して略全面を被覆している。つまり第1の外装部材60の裏面側において、衝撃体64は、被覆部外装基台65と足置き外装基台66の離間部を埋めるようにして、被覆部外装基台65と足置き外装基台66とを連結している。したがって、被覆部外装基台65と足置き外装基台66の離間部は、衝撃体64によって係合しており、この外装基台63の係合部67においては衝撃体64が露出している。
上部フレーム体3に第1の外装部材60を装着させる際には、第1の外装部材60の足置き被覆部62を、上部フレーム体3の足置きフレーム体30に装着させるとともに、シート固定枠23上にシート外装基台65を固定させる。具体的に第1の外装部材60は、足置き被覆部62の前端に袋状のポケット68を備える。ポケット68は先端側を閉塞して他端側の少なくとも一部を開口している。さらに第1の外装部材60は、筒状の挿通バンド69を備える。この挿通バンド69は、筒状の中空によって前後方向に開通する姿勢に設けられる。図の例では足置き被覆部62の幅方向の両端にそれぞれ2つずつ設けて、合計4つの挿通バンド69を設けている。
一方、上部フレーム体3の足置きフレーム体30は、先端に配置した一の水平フレーム31の両端に、略垂直に連結された2本の垂直フレーム32によって、U字状に形成されている。この垂直フレーム32が足置きフレーム体30の幅方向の両端を構成する。足置きフレーム体30は、図25(b)に示すように水平フレーム31を含む先端側を、第1の外装部材60のポケット68に収納した状態で、足置きフレーム体30の垂直フレーム32をそれぞれ挿通バンド69に通す。また第1の外装部材60のシート外装基台65を、上部フレーム体3のシート固定枠23に固定することにより、第1の外装部材60を上部フレーム体3に装着させることができる。この結果、上部フレーム体3の上面に外装基台63が固定され、さらに外装基台63の表面に緩衝体64が装着された形態とできる。
また足置きフレーム体30は、挿通方向である前後方向に遊びのある状態で、挿通バンド69に挿通されるとともに、ポケット68に収納されている。つまり、第1の外装部材60の足置き被覆部62は、上部フレーム体3の足置きフレーム体30に固着されておらず、挿通方向の動きに余裕のある状態で装着される。一方、第1の外装部材60のシート被覆部61は、上部フレーム体3のシート固定枠23に固定される。このように、第1の外装部材60の足置き被覆部62と上部フレーム体3の足置きフレーム体30とが、多少可動する状態で連結した椅子は、シート固定枠23と足置きフレーム体30とが連動する際に、第1の外装部材60の係合部67のしわ寄せや***を回避できる。これについて以下に説明する。
まず、緩衝体64で構成される第1の外装部材60の係合部67は、図25(b)に示すように、シート固定枠23と足置きフレーム体30との連結領域33に配置される。上部フレーム体3のシート固定枠23と足置きフレーム体30は上述の通り、互いに変位してその開閉角度を変化させる。ここで、上部フレーム体3の連結領域33が曲げ伸ばしすると、シート固定枠23と足置きフレーム体30とが近づいたり離れたりして、その離間距離が変化する。したがって上部フレーム体3に第1の外装部材60が密着されている場合、この連結領域33に配置される第1の外装部材60の係合部67は、一定の長さであるため連結領域33の離間距離の変動に従うことができず、例えば***したり、引っ張られたりする。第1の外装部材60の係合部67の変形は破損を誘発する虞があり好ましくない。一方、第1の外装部材60と上部フレーム体3の装着において、一端を固定し他端を自由端とした実施例1の椅子101であれば、上部フレーム体3の部材間の離間距離が変動しても、第1の外装部材60が過度に収縮したり伸長したりすることを防止できる。これは、椅子101の前後方向において、足置き被覆部62が、足置きフレーム体30の移動方向と反対方向にずれるように構成しているからである。つまり足置きフレーム体30の動きにともなって、垂直フレーム32は挿通バンド69の中空を前後に移動できる。この結果、足置きフレーム体30が第1の外装部材60を引き連れることがなく独立して変位するため、第1の外装部材60は応力を印加されない。ただ、図の例では、ポケット68と挿通バンド69により、足置きフレーム体30を移動可能としたが、双方の部材が相対的に反対方向に移動可能であれば、特に手段は限定されない。
また背もたれフレーム体10は、上部フレーム体3を取り外した状態で、第2の外装部材70に連結される。以下、背もたれフレーム体10に外装部材を装着する方法について図26を用いて説明する。背もたれフレーム体10の上端には、図26(a)に示すように、上方に突出した突起部11を設けている。一方、第2の外装部材70は、背もたれフレーム体10を被覆する外装部材である。具体的に第2の外装部材70は、背もたれフレーム体10を上下方向に挿入可能に成形した背もたれ外装基台71と、この背もたれ外装基台71の表面を被覆した背もたれ緩衝体72から構成される。この背もたれ外装基台71には、背もたれフレーム体10の突起部11を嵌着可能な穴75を設けている。また第2の外装部材70は、図26(a)に示すように、下端を開口した袋状に構成されている。背もたれフレーム体10は、この開口部74を介して第2の外装部材70の内部に挿入され、背もたれフレーム体10の突起部11を背もたれ外装基台71の穴75に嵌合する。さらに背もたれフレーム体10の下方と、背もたれ外装基台71の下端とを係止め部12を介して固定することで、図26(b)の状態を得られる。
このように実施例1の椅子101は、上部フレーム体3に第1の外装部材60を装着し、一方背もたれフレーム体10に第2の外装部材70を装着した状態で、上部フレーム体3をシート駆動部22、ベース50、背もたれフレーム体10に連結できる。これにより図27に示す状態とできる。
また第1の外装部材60及び第2の外装部材70は、さらにその最表面を上張り73で被覆することもできる。上張りとしては、皮革材、繊維材など種々のものが利用でき、例えば、皮、革、合成皮革、綿、麻、帆布、不織布等が挙げられる。
シート固定枠23と足置きフレーム体30とを連続して被覆する外装部材は、座部フレーム体120と足置きフレーム体30の連結領域を被覆するため、機械的に変動するリンク機構がむきだしになることを回避できる。個々のフレーム体10、120、30毎に外装部材を被覆する形態では、フレーム体の連結領域における相対的な変動によって、連結領域の離間距離が変化するため、この連結領域に指や足を挟む虞がある。一方、連続して外装を被覆する実施例1の椅子101では、連結領域を外装部材で包含するためリンク機構が露出することがなく、使用者の負傷を回避できる。
また従来であれば、個々のフレームにクッション等の外装部材を装着した後に、それぞれの部材を組み立てていた。つまり最終的な組立工程までに、フレームと外装部材とを一体にしておく必要があった。一方、実施例1のフレームであれば、フレーム体を組み立てる際に外装部材を装着すればよく、したがってフレーム体の製作工程と、外装部材の製作工程とを分業することができるため製造の効率がよい。また、外装部材を装着した状態で、フレーム体を脱着可能としているため、組み立て後であっても外装部材のみの交換が容易に行える。また、実施例1の椅子であれば、外装部材を装着する前に、椅子の駆動部材であるフレーム体10、120、30のみを組み立てて、動作確認することができるため歩留まりを高められる。