JP5304084B2 - 抄紙基材の製造方法 - Google Patents
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Description
(式)スラリー流速(m/s)=0.01/(S×T)
輸送部の断面形状は特に限定はないが、スラリーを工程(IV)に輸送する工程(III)での強化繊維の再凝集防止の観点から、円形、または多角形(3〜10角形)であるとよく、例えば、図1、図2に示すような断面形状などがある。また、輸送部の断面形状は図3、図4に示すような開放系の通路であってもよい。ここで、図1〜図4は輸送部の断面形状を模式的に示す図である。輸送部における異物混入なお観点から、輸送部の断面形状が円形、または多角形であるとさらに好ましい。
(式)Re=ρLU/η
輸送部において、スラリーを層流状態または層流から乱流への遷移域の状態で輸送する方法は特に限定されないが、例えば分散槽を抄紙槽より高い位置に配置することで、位置エネルギーを利用して、分散槽から輸送部を介して抄紙槽へスラリーを輸送する方法や、スラリーの入った分散槽内に気体を注入し分散槽内の内圧を高くすることで、分散槽から輸送部を介して抄紙槽へスラリーを輸送する方法などを挙げることができる。このような送液ポンプを使わない輸送方法は、輸送部における乱流発生を少なくでき、強化繊維の再凝集を防ぎ、スラリー中の分散性を保つことができ好ましい。
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数12,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換し、次いで窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成した。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行い、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥しPAN系炭素繊維A1を得た。
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm3
引張強度(注1):4.2GPa
引張弾性率(注2):230GPa
O/C(注3):0.10
サイジング種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング付着量(注4):1.5質量%。
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数12,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換し、次いで窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成した。さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥しPAN系炭素繊維A2を得た。
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm3
引張強度(注1):4.2GPa
引張弾性率(注2):230GPa
O/C(注3):0.05
サイジング種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング付着量(注4):1.5質量%。
三井化学(株)製の酸変性ポリプロピレン樹脂“アドマー”(登録商標)QE510を温度200℃、圧力20MPaで1分間プレス成形し、厚み50μmの酸変性ポリプロピレン樹脂フィルムFを作製した。
日本工業規格(JIS)−R−7601「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により、求められる。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、“BAKELITE”(登録商標)ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成する。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とする。
X線光電子分光法により次の手順に従って求めた。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着物などを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた。X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×108Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202cVに合わせた。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
試料として、サイジング剤が付着している炭素繊維約5gを採取し、耐熱性の容器に投入した。次のこのよう器を120℃で3時間乾燥した。吸湿しないようにデシケーター中で注意しながら室温まで冷却後、秤量した重量をW1(g)とした。続いて、容器ごと、窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱後、同様にデシケーター中で吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した重量をW2(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤の付着量を次の式により求めた。
(式)付着量(質量%)=100×{(W1−W2)/W2}
なお、測定は3回行い、その平均値を付着量として採用した。
ビーカーを分散媒体で満たし、密閉し、恒温槽内で25℃に調整した。合わせNO.1ローターを恒温槽内で予め25℃に調整した。続いてB型粘度計(型式:B8L、東京計器製)を用い、JIS K7117−1(1999)の付属書1に記載の方法に従い、ローター回転数60rpmで、分散媒体の粘度を測定した。
分散槽から輸送部を介して抄紙槽にスラリーを輸送するときに、0.01m3のスラリーを輸送するのにかかった時間T(秒)を測定した。スラリーの輸送量(0.01m3)と、輸送するのにかかった時間Tおよび、輸送部内径の断面積S(m2)を用い、次の式から輸送部のスラリー流速を求めた。
(式)スラリー流速(m/s)=0.01/(S×T)
なお、測定は5回行い、その平均値をスラリー流速として採用した。
抄紙により得られた炭素繊維ウェブの任意の部位より、50mm×50mmの正方形状にウェブを切り出して顕微鏡にて観察した。10本以上の炭素繊維の単繊維が束状になった状態、すなわち分散が不十分な炭素繊維の束の個数を測定した。この手順で20回の測定をおこない、その平均値をもって、分散が不十分な炭素繊維の束が1個未満を◎、分散が不十分な炭素繊維の束が1個以上5個未満を○、分散が不十分な炭素繊維の束が5個以上10個未満を△、分散が不十分な炭素繊維の束が10個以上を×で評価した。
抄紙により得られた炭素繊維ウェブを200mm×200mmに切り出して、120℃で1時間乾燥させた。乾燥後の炭素繊維ウェブと、酸変性ポリプロピレン樹脂フィルムFを、樹脂フィルムF/炭素繊維ウェブ/樹脂フィルムFとなるように3層積層した。この積層物を温度200℃、圧力30MPaで5分間プレス成形し、圧力を保持したまま50℃まで冷却して厚み0.12mmの炭素繊維強化樹脂シートを作製した。この樹脂シートを8枚積層し、温度200℃、圧力30MPaで5分間プレス成形し、圧力を保持したまま50℃まで冷却して厚み1.0mmの炭素繊維強化樹脂成形品を得た。得られた成形品を用いて、ISO178法(1993)に従い、曲げ強度をn=10で評価した。なお、曲げ強度の評価結果は実施例1を100として相対値で記載した。また、評価結果のばらつきを変動係数(CV値)で記載した。
図5の抄紙基材の製造装置01を用いて、抄紙基材を製造した。製造装置01は、分散槽11としての容器下部に開口コック15を有する直径300mmの円筒形状の容器、抄紙槽12としての大型角型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製、No.2553−I(商品名))、分散槽11と抄紙槽12とを接続する直線状の輸送部13(傾斜角r:88°)を備えている。輸送部13の断面形状は直径0.01mの円形である。分散11の上面の開口部には撹拌機16が付属し、開口部から炭素繊維束17および分散液(分散媒体)18を投入可能である。抄紙槽12の底部は長さ400mm×幅400mmの抄紙面(メッシュシート製)19を有し、抄紙面19上に炭素繊維ウェブ20が得られる。
実施例1において、図5の製造装置01において傾斜角rが65°であるほかは同様の製造装置(図示せず)を用いた点のほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、水と水溶性高分子(住友精化(株)製、PEO−8Z(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を20リットル作成し、分散槽に移したほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、水と水溶性高分子(住友精化(株)製、PEO−8Z(商品名))からなる濃度1質量%の分散液を20リットル作成し、分散槽に移したほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、輸送部13の断面形状は一辺0.01mの正方形であるほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、A2(炭素繊維)をカートリッジカッターで6.4mmにカットし、チョップド炭素繊維(A2−1)を得て、工程(I)で、分散液にA2−1(チョップド炭素繊維)9.6gを投入したほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、図5の製造装置01において傾斜角rが0°であるほかは同様の製造装置(図示せず)を用いた点のほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
実施例1において、図5の製造装置01において輸送部に送液ポンプを備えるほかは同様の製造装置(図示せず)を用いた点のほかは、実施例1と同様に行った。得られた炭素繊維ウェブの目付は60g/m2であった。各工程における実施条件および得られた炭素繊維ウェブの評価結果を、表1に示した。
11 分散槽
12 抄紙槽
13 輸送部
14 輸送部と分散槽との接続部
15 開口コック
16 撹拌機
17 チョップド炭素繊維(炭素繊維束)
18 分散液(分散媒体)
19 抄紙面
20 炭素繊維ウェブ(抄紙基材)
p 重力方向と平行な線
q 輸送部の中心線(管軸)
r pとqとが鉛直下方側に形成する角度
Claims (11)
- 分散媒体に強化繊維束を投入する工程(I)、前記強化繊維束を構成する強化繊維が前記分散媒体中に分散したスラリーを調製する工程(II)、前記スラリーを工程(IV)に輸送する工程(III)及び前記スラリーより分散媒体を除去して強化繊維を含む抄紙基材を得る工程(IV)を少なくとも有し、前記工程(I)および工程(II)は分散槽で行われ、前記工程(IV)は抄紙槽で行われ、前記工程(III)は前記分散槽と前記抄紙槽とを接続する輸送部で行われ、前記輸送部において前記スラリーが層流状態または層流から乱流への遷移域の状態で輸送される、強化繊維基材を含む抄紙基材の製造方法。
- 前記工程(III)において、分散槽を抄紙槽より高い位置に配置して抄紙槽へスラリーを輸送する、または、スラリーの入った分散槽内の内圧を高くして抄紙槽へスラリーを輸送する、請求項1に記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記輸送部が複数の輸送部からなる、請求項1または2に記載の抄紙基材の製造方法。
- B型粘度計で測定される前記分散媒体の粘度が2〜100mPa・sである、請求項1〜3のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記輸送部における前記スラリーの流速が0.01〜10m/sである、請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記輸送部の断面形状が円形または多角形である、請求項1〜5のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記スラリー中の強化繊維の質量含有量が0.01〜1質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記強化繊維束の長さが1〜50mmである、請求項1〜7のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記強化繊維が炭素繊維であり、かつ、前記炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cが0.05〜0.50である、請求項1〜8のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記スラリーが水系スラリーである、請求項1〜9のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
- 前記抄紙基材の目付が10〜500g/m2である、請求項1〜10のいずれかに記載の抄紙基材の製造方法。
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