JP5288902B2 - キチン結合ドメインを用いる細胞表層提示方法 - Google Patents

キチン結合ドメインを用いる細胞表層提示方法 Download PDF

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本発明は、細胞の表層に分子を提示させる方法に関する。
酵素などの目的タンパク質と、固定化するための足場となるアンカータンパク質とを遺伝子的に融合し、発現させることで、酵母などの生物の細胞表層にタンパク質を提示させることができる。
酵素を含む種々のタンパク質を細胞表層に提示した微生物が作出されている(例えば、酵母について特許文献1〜21、細菌については、例えば、大腸菌について特許文献22、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌について特許文献23、乳酸菌について特許文献24)。微生物が酵母の場合は、細胞表層局在タンパク質のGPIアンカー付着認識シグナル配列、または細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインが利用され得る(特許文献1〜21)。細菌(例えば、大腸菌、コリネバクテリウム属細菌、乳酸菌など)の場合は、外膜局在タンパク質の一部が利用され得る。例えば、ポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素のPgsAは、細胞表層に局在するタンパク質であり、そのC末端側に目的タンパク質を融合して表層に提示することができる(特許文献22〜24)。
目的とするタンパク質を酵母細胞表層に提示させることにより、タンパク質の取り扱いが容易になる。酵素を表層提示した微生物は、培養するだけで酵素を表層に固定するので、固定化酵素剤として利用できる。そして反応後に回収して再利用することができる。
麹菌(例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))は、微生物の中で最大級のタンパク質生産能を保持し、GRAS(Generally Recognized As Safe)と呼ばれる安全性の認められた有用微生物である。このようなタンパク質生産能のために、麹菌による有用タンパク質の生産法の開発が盛んである。例えば、特許文献25には、タンパク質を効率的に分泌生産する方法が記載されている。有用タンパク質の生産および利用のために、麹菌に対しても、上記のように有用な表層提示技術の応用が望まれている。
特開平11−290078号公報 特開2002−17368号公報 特開2002−176979号公報 特開2002−253267号公報 特開2003−235579号公報 特開2004−49014号公報 特開2004−194559号公報 特開2004−305096号公報 特開2004−305097号公報 特開2005−58010号公報 特開2005−176605号公報 特開2005−245334号公報 特開2005−245335号公報 特開2005−312426号公報 特開2006−136223号公報 特開2006−174767号公報 特開2006−262724号公報 特開2007−20539号公報 特開2007−89506号公報 特開2007−300914号公報 国際特許出願公開第02/085935号公報 特開2005−312426号公報 特開2007−89506号公報 特開2006−262724号公報 特開2007−174962号公報
本発明は、アスペルギルス・オリゼのような麹菌においても好適に利用され得る表層提示技術を提供することを目的とする。
本発明は、微生物の細胞表層にタンパク質を提示させる方法を提供し、この方法は、
分泌シグナル、キチン結合ドメイン、および提示されるべき該タンパク質をそれぞれコードするDNAを含む発現ユニットDNAを微生物に導入する工程;および
該発現ユニットDNAが導入された微生物を培養して、該タンパク質を該微生物の細胞表層に発現させる工程
を含む。
本発明は、また、微生物の細胞表層にタンパク質を提示させるための組換えベクターを提供し、この組換えベクターは、分泌シグナル、キチン結合ドメイン、および提示されるべき該タンパク質をそれぞれコードするDNAを含む発現ユニットDNAを含む。
1つの実施態様では、上記タンパク質は、上記キチン結合ドメインのN末端側に融合されている。
別の実施態様では、上記タンパク質は、上記キチン結合ドメインのC末端側に融合されている。
なお別の実施態様では、上記キチン結合ドメインのN末端側およびC末端側の両方に、提示されるべきタンパク質がそれぞれ融合されている。
1つの実施態様では、上記キチン結合ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド領域である。
本発明はさらに、上記方法で作製された、または上記組換えベクターが導入されて得られる、細胞表層に提示されたタンパク質を有する微生物を提供する。
1つの実施態様では、上記微生物はアスペルギルス・オリゼである。
本発明によれば、アスペルギルス・オリゼのような麹菌においても好適に利用され得る表層提示技術が提供される。
本発明においては、キチン結合ドメイン(本明細書中では「CBD」ともいう)が、アンカータンパク質として利用され得る。アンカータンパク質とは、細胞の細胞壁に結合して細胞の表層から細胞外に配向させる役割を有するタンパク質である。「キチン結合ドメイン(CBD)」とは、細胞表層に存在するキチンと結合可能な任意のドメインをいう。
キチン結合ドメインは、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド領域である。配列番号1に記載のアミノ酸配列は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisie)のキチナーゼ(CTS1;DDBJアクセッション番号U17243−9)のアミノ酸481位から562位までの領域のキチン結合ドメインに由来する配列であるが、本発明における使用については、その由来を問わない。上記の「配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド領域」とは、キチン結合能を失わない限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列にさらにアミノ酸の付加、削除、および/または置換がされているものも含む。この付加、削除、置換などがされる残基の数は、1または複数(例えば、1から10残基までのいずれか)であり得る。
キチン結合ドメインに、細胞表層に提示されるべき目的のタンパク質(以下、単に「目的のタンパク質」ともいう)を融合させる。目的のタンパク質は、キチン結合ドメインのN末端側またはC末端側のどちら側に融合してもよい。キチン結合ドメインのN末端側およびC末端側の両方に、同一または異なる種類の目的のタンパク質を融合してもよい。目的のタンパク質は、キチン結合ドメインに直接結合されていてもよいし、リンカーを介して結合されていてもよい。
細胞表層に提示することを目的とするタンパク質は、種類を問わない。ここで、目的のタンパク質とは、分子量の大きさに関わらず、アミノ酸からなるいかなる分子も包含し、より少ないアミノ酸で構成されるペプチドを除外するものではない。本来であれば微生物の細胞表層に局在しないが、該微生物の細胞表層に固定することを目的として配置されるタンパク質が好ましい。例えば、酵素(例えば、リパーゼ類、アミラーゼ類(例えば、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼなど)、セルラーゼ類(例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼなど))、抗体、リガンド、蛍光タンパク質、プロテインAおよびその誘導体などが挙げられる。
目的のタンパク質は、その特性に応じて、キチン結合ドメインのN末端側に融合させるか、C末端側に融合させるかを決定すればよい。例えば、リパーゼのようにC末端側に活性中心を有するタンパク質は、キチン結合ドメインのC末端側に融合されることが好ましい。
上で説明したようなキチン結合ドメインと目的のタンパク質との融合物のさらにN末端側に、分泌シグナルが連結される。ここで、分泌シグナルとは、一般に細胞外(ペリプラズムも含む)に分泌されるタンパク質(分泌性タンパク質)のN末端に結合している、疎水性に富んだアミノ酸を多く含むアミノ酸領域をいい、通常、分泌性タンパク質が細胞内から細胞膜を通過して細胞外へ分泌される際に除去される。分泌シグナルをコードする遺伝子としては、タンパク質を発現させる宿主細胞で有効に働く任意の分泌シグナルが利用可能である。目的のタンパク質が本来分泌性である場合は、そのタンパク質由来の分泌シグナルを使用し得る。例えば、分泌能力の高いグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)由来の分泌シグナルが、好ましく用いられる。宿主細胞が麹菌(例えば、アスペルギルス・オリゼ)の場合、例えば、アスペルギルス・オリゼのトリアシルグリセロールリパーゼ由来分泌シグナル(tglA)が好ましく使用される。酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)のα−アグルチニンまたはa−アグルチニンのシグナル配列なども用いられ得る。
特許文献25に記載のような、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来リパーゼ(ROL)の97個のアミノ酸配列からなるプロ配列のC末端側から数えて28アミノ酸までの領域(本明細書中では「N28領域」ともいう)を、細胞外分泌の補助のために用いてもよい。N28領域は、分泌シグナル配列と、キチン結合ドメインと目的のタンパク質との融合物との間に配置され得る。N28領域は、特に、糸状菌(例えば、アスペルギルス・オリゼ)において好適に用いられ得る。
宿主細胞で目的のタンパク質を発現させるためには、キチン結合ドメイン、目的のタンパク質、および分泌シグナル、ならびに必要に応じてN28領域を含む発現ユニットをコードするDNA(本明細書中では「発現ユニットDNA」ともいう)を細胞に導入する。
発現ユニットDNAは、キチン結合ドメイン、目的のタンパク質、および分泌シグナル、ならびに必要に応じてN28領域をそれぞれコードするDNAを、当業者が通常用い得る技術で合成および結合して調製され得る。発現ユニットDNAを作製するために、本明細書中に記載の配列情報と公知の配列情報(分泌シグナルおよび目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列について)とに基づいてプライマーを作製し、染色体DNAもしくはcDNAを鋳型として用いるPCRによって目的の断片を得ることができる。結合は、適切な制限酵素、リンカーなどを用いて行うことができる。
DNAの導入とは、細胞の中にDNAを導入し、発現させることを意味する。DNAの導入の方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクション、エレクトロポレーションなどの方法がある。導入されるDNAは、プラスミドの形態であってもよく、あるいは宿主の遺伝子に挿入して、または宿主の遺伝子と相同組換えを起こして染色体に取り込まれてもよい。
宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる。組換えベクターのためのプラスミドは、宿主に適合した任意のプラスミドが用いられ得る。
表層提示発現のための宿主には、細菌、真菌、植物細胞など、細胞壁を有する細胞であれば、特に限定されない。細胞表層(または細胞壁)にキチンを豊富に含む微生物が好ましい。このようなキチンを豊富に含む好ましい微生物としては、麹菌(例えば、アスペルギルス・オリゼ)、酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)などが挙げられるが、これに限定されない。
組換えベクターは、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを上記発現ユニットDNAの5’側上流に、より好ましくはターミネーターを3’側下流に、それぞれ組み込み得る。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られている任意のプロモーターおよびターミネーターが用いられる。宿主細胞が糸状菌(例えば、アスペルギルス・オリゼ)である場合、このプロモーターは、好ましくは、高発現糸状菌遺伝子に由来する。多数の好ましい高発現真菌遺伝子は、例えば以下の例によって提供される:アスペルギルス属(Aspergilli)またはトリコデルマ属(Trichoderma)に由来するアミラーゼ、グルコアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、グリセルアルデヒド−ホスフェートデヒドロゲナーゼまたはセロビオヒドラーゼ遺伝子。これらの目的のための最も好ましい高発現遺伝子は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)のグルコアミラーゼ遺伝子、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のTAKA−アミラーゼ遺伝子、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)のgpdA遺伝子またはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のセロビオヒドラーゼ遺伝子である。宿主細胞がアスペルギルス・オリゼの場合、好ましくは、P-glaA142またはP-No8142(これらはそれぞれ、glaA(Hata, Y.ら、Gene, 1992年, 108巻, pp.145-150)遺伝子およびNo. 8AN(Ozeki, K.ら、Biosci. Biotechnol. Biochem., 1996年, 60巻, pp.383-389)遺伝子の改良プロモーター領域である)が用いられる。ターミネーターとしては、α−グルコシダーゼをコードする遺伝子由来のターミネーター、グルコアミラーゼ遺伝子(glaAまたはglaB)由来のターミネーターなどが挙げられる。酵母に関しては、例えば、グリセルアルデヒド3’−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)のプロモーターおよびターミネーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーターおよびターミネーターなどが挙げられる。このような出発材料のプラスミドの例としては、GAPDH(グリセルアルデヒド3’-リン酸デヒドロゲナーゼ)プロモーター配列およびGAPDHターミネーター配列を含むプラスミドpYGA2270またはpYE22m、あるいはUPR-ICL(イソクエン酸リアーゼ上流領域)配列とTerm-ICL(イソクエン酸リアーゼのターミネーター領域)配列とを含むプラスミドpWI3、PGKプロモーターおよびターミネーター配列を含むプラスミドpGK404などが挙げられる。
組換えベクターはさらに、選択マーカー遺伝子を含み得る。選択マーカー遺伝子は、例えば、糸状菌(例えば、アスペルギルス・オリゼのような麹菌)の形質転換で有用な多数のマーカー遺伝子から選択できる。これらのマーカーには、例えば、amnS(アセトアミド)遺伝子、栄養要求マーカー遺伝子(例えばargB、trpCまたはpyrG)、および抗生物質耐性遺伝子(例えばブレオマイシン、ハイグロマイシンBまたはG418に対する抵抗性を提供する)が含まれるが、これらに限定されない。好ましいマーカー遺伝子としては、アスペルギルス属糸状菌由来のマーカー遺伝子であって、niaD、argB、sC、ptrA、pyrG、amdS、オーレオバシジン耐性遺伝子、ベノミル耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。宿主染色体DNA中への目的遺伝子の挿入効率の点で、特に、niaDが好ましい。酵母に関しては、DNAの取得の簡易化の点からは、大腸菌とのシャトルベクターであることが好ましい。ベクター作製の出発材料としては、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製開始点(Ori)とColE1の複製開始点とを有しており、酵母選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、HIS3、LEU2、URA3、LYS2など)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有することがさらに好ましい。
宿主の形質転換は、当業者が通常用いる方法で行うことができる。形質転換体の作製のための手順は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる。糸状菌(例えば、アスペルギルス・オリゼのような麹菌)の場合、好適には、アスペルギルス属のために開発された形質転換プロトコル、プロトプラスト−ポリエチレングリコール(PEG)法を用いて形質転換され得る。酵母については、例えば、酢酸リチウムを用いる方法、プロトプラスト法などがある。
形質転換体の培養は、当業者が通常用いる方法に従って、当該形質転換体の生育または所望のタンパク質の生産に適した培地および培養条件を適宜選択することにより行うことができる。
上述したようなキチン結合ドメインを利用した表層提示技術は、従来の表層提示技術(例えば、細胞表層局在タンパク質のGPIアンカー付着認識シグナル配列の利用、細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインの利用など)と組み合わせて用いてもよい。
タンパク質を細胞表層に提示する微生物は、細胞表層に発現したタンパク質を基質と接触させ、この基質を結合するか、またはこの基質を他の物質に変換させる目的で使用され得る。例えば、タンパク質が酵素である場合、酵素を発現する細胞を含む酵素剤として、提供されてもよい。このような酵素剤としては、酵素を細胞表層に提示した細胞および細胞を維持し得る培地を含む懸濁液、および酵素を細胞表層に提示した細胞が凍結保存あるいは凍結乾燥、さらには低温乾燥されたものが挙げられる。
また、ランダムに変異を導入した種々のタンパク質をそれぞれ別の細胞の表層に提示させたコンビナトリアルライブラリーを作製することもできる。このようなライブラリーから、目的に応じた最適な性質を有するクローンを迅速かつ簡便に選択することも可能である。ここでいうコンビナトリアルライブラリーとは、遺伝子レベルでランダムに変異を導入し、タンパク質の多様性を人為的に拡大した種々の変異体の集合をいう。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:EGFP−CBD融合発現株の作製)
サッカロマイセス・セレビシエW303-1B株(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より入手)のゲノムDNAを鋳型として、配列表の配列番号2(forward)および配列番号3(reverse)に示されるプライマー対を用いてPCRを行うことにより、キチン結合ドメイン(CBD)を増幅した。
他方、アスペルギルス・オリゼのトリアシルグリセロールリパーゼ由来分泌シグナル(tglA)、N28領域、および改変型緑色蛍光タンパク質(EGFP)のそれぞれをコードする遺伝子を含むプラスミドである、pIS1-ss-N28-EGFPベクターを用意した(月桂冠株式会社より入手)。
PCR増幅により得られたCBDを制限酵素NotIとSwaIで切断し、同様に制限酵素NotIとSwaIで切断したpIS1-ss-N28-EGFPベクターに連結し、プラスミドpIS1-sN-EGFP-L-CBDを得た。このプラスミドは、発現目的タンパク質であるEGFPのC末端側にリンカーを挟んで連結したCBDをコードする遺伝子を含む。
プロトプラスト−PEG法を用いて、プラスミドpIS1-sN-EGFP-L-CBDをアスペルギルス・オリゼIF4 niaD-株(月桂冠株式会社より入手)に導入した。得られた形質転換体を、Czapek-Dox培地(CD培地)のNaNO2をNaNOに代えたCD−NO培地にて約7日間培養した。次いで、100mlのデキストリン−ペプトン−酵母エキス液体培地(DPY液体培地)に植菌し、30℃、150rpmにて10日間振盪培養した。
(比較例1:EGFP分泌発現株の作製)
アスペルギルス・オリゼIF4 niaD-株の形質転換にpIS1-ss-N28-EGFPベクターを用いたこと以外は、実施例1に記載の方法と同様にして形質転換株を作製した。この形質転換により、EGFP分泌発現株を得た。
(実施例2:ウェスタンブロッティングによるEGFP−CBD融合蛋白質の発現の確認)
まず、実施例1のEGFP−CBD融合発現株および比較例1のEGFP分泌発現株のそれぞれの培養液からの細胞を超音波処理によって細胞破砕し、14000rpmにて4℃で5分間遠心分離し、培養上清画分、可溶性画分および細胞壁画分を得た。これらの画分を、一次抗体として抗EGFP抗体および二次抗体として抗マウスIgG抗体を用いるウェスタンブロッティングに供し、EGFP−CBD融合蛋白質の発現について分析した。対照として、アスペルギルス・オリゼIF4 niaD-未形質転換株もまた用いた。
図1に、その結果の電気泳動写真を示す。この電気泳動写真において、レーン1〜3は培養上清、レーン4〜6は可溶性画分、レーン7〜9は細胞壁画分を表し、またレーン1、4、7はEGFP−CBD融合発現株(実施例1)、レーン2、5、8はEGFP分泌発現株(比較例1)、レーン3、6、9はアスペルギルス・オリゼIF4 niaD-未形質転換株の結果を表す。図1に示されるように、EGFP分泌発現株では、EGFPの分子量に対応する約30kDaの位置のバンドが、培養上清であるレーン2においてのみ現れ、細胞壁画分であるレーン8では現れなかったのに対し、EGFP−CBD融合発現株では、細胞壁画分であるレーン7において約150kDaの位置にバンドが現れた。これにより、EGFP−CBD融合発現株が、EGFP−CBD融合タンパク質を細胞壁に発現していることが確認された。
(実施例3:蛍光顕微鏡観察による蛋白質の表層提示の確認)
実施例1のEGFP−CBD融合発現株および比較例1のEGFP分泌発現株、ならびに対照として用いたアスペルギルス・オリゼIF4 niaD-未形質転換株の培養液を、1×PBS溶液で30℃にて24時間処理した後、蛍光顕微鏡下で観察した。微分干渉顕微鏡下の観察との比較により、EGFP−CBD融合発現株では、細胞表層にEGFP由来の緑色蛍光が局在していることが分かった。EGFP分泌発現株および未形質転換株では、そのような蛍光分布は示さなかった。これにより、EGFP−CBD融合発現株では、EGFP−CBDが細胞表層に提示されていることが示された。
さらに、菌体をプロテイナーゼKで30℃にて24時間処理した後、再度、蛍光顕微鏡下の観察を行った。図2は、プロテイナーゼK処理および未処理のEGFP−CBD融合発現株およびEGFP分泌発現株の蛍光顕微鏡写真を示す。図2の左側の列にEGFP分泌発現株、右側の列にEGFP−CBD融合発現株を、そして上段に未処理株(1×PBS溶液処理)、下段にプロテイナーゼK処理株を示す。EGFP分泌発現株では、プロテイナーゼK処理による蛍光の変化はあまり見られなかったのに対し、EGFP−CBD融合発現株では、未処理株では表層にEGFP由来の蛍光が存在しているのに対し、プロテイナーゼK処理後は、存在していた蛍光が消失した。これにより、EGFP−CBD融合発現株では、EGFP−CBDが細胞表層に提示されていることがさらに確認できた。
本発明による新しいアンカータンパク質および表層提示技術は、菌体触媒に応用できる。また、既往の技術と組み合わせて用いることが可能であり、表層に提示するタンパク質の量の増加が期待できる。
EGFP−CBD融合発現株およびEGFP分泌発現株のEGFP−CBDまたはEGFPの発現を調べるウェスタンブロットの電気泳動写真である。 プロテイナーゼK処理および未処理のEGFP−CBD融合発現株およびEGFP分泌発現株のそれぞれの蛍光顕微鏡写真である。

Claims (1)

  1. 糸状菌の細胞表層にタンパク質を提示させる方法であって、
    分泌シグナル、キチン結合ドメイン、および提示されるべき該タンパク質をそれぞれコードするDNAを含む発現ユニットDNAを糸状菌に導入する工程;および
    該発現ユニットDNAが導入された糸状菌を培養して、該タンパク質を該糸状菌の細胞表層に発現させる工程
    を含み、
    該キチン結合ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド領域であり、
    該タンパク質が、該キチン結合ドメインのN末端側およびC末端側からなる群より選択される少なくとも1つの末端側に融合されている
    方法。
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