JP5282185B2 - 心室患部補綴具および心室患部補綴具治療セット - Google Patents

心室患部補綴具および心室患部補綴具治療セット Download PDF

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Description

本発明は、心停止を伴わず、かつ心筋を切開することなく心室患部に開いた孔を処置することを可能とする、心室患部補綴具および心室患部補綴具治療セットおよびその留置方法に関するものである。
ここで、心室患部に開いた孔とは、代表的には心室中隔穿孔や心室自由壁破裂による破裂孔などが挙げられる。
心室中隔穿孔とは、壊死に陥った心室中隔が穿孔し、左心室と右心室の短絡路が生じている疾病である。早期に心室中隔穿孔の閉鎖術を必要とする重篤な疾病とされている。
心室自由壁破裂とは、心室中隔穿孔と並び、急性心筋梗塞症の重篤な合併症の一つであり、左心室または右心室の心室壁が破裂することをいう。主に心筋梗塞により心筋壊死が起こり、壊死部分に亀裂が生じやがて破裂する。心室自由壁破裂が起こると、破裂部分から血液が漏れ、血圧が急速に低下し、死亡することがある。
本発明の心室患部補綴具とは、上記の心室中隔穿孔や心室自由壁破裂による破裂孔を塞ぐための補綴具である。
従来技術において、急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔(Ventricular septal perforation)または心室中隔破裂(Ventricular septal rupture)の手術術式として、壊死心筋を切除した後に、切除部位をパッチによって再建する、いわゆるDagett法が基本術式としてひろく施行されてきた(非特許文献1、2参照)。また、最近では、壊死心筋を切除しない、いわゆるKomeda−David法として心膜パッチを用いた左室形成術(Endocardial patch repair with infarct exclusion)がよく行われる(非特許文献3)。
上記従来のDagett法、Komeda−David法のいずれの術式においても、胸骨正中切開にて縦隔開胸を行い、人工心肺装置を用いて血液を体外循環させ、心停止を伴う術式である。心室壁に縦方向に切開を加え、前乳頭筋、後乳頭筋を確認しつつ中隔後壁側の健常と思われる部分から心膜パッチを連続縫合して行く。
従来施行されてきたDagett法は壊死心筋を切除した後、切除部位をパッチにて再建するものである。
これに対してKomeda−David法は壊死心筋を切除しない術式であり、右室心筋が温存されることにより右室機能が保たれ、また左室心筋が温存されることにより左室容積が保たれるとされている。
Dagett ら、Ann Surg、196 : 269、1982 Dagett ら、J Thorac Cardiovasc Surg 84、306、1982 Komedaら、Circulation 82 (Supple IV)242、1990
上記の従来技術におけるDagett法による術式では、壊死心筋の切除を伴うため、本来は切除すべきでない正常心筋組織まで誤って切除されるおそれがあるという問題があった。また、左室切開部が高圧の左心系に曝されているため、出血の制御に注意が必要である、という問題もあった。
これに対しKomeda−David法は壊死心筋を切除しないため、右室心筋が温存され右室機能が保たれ、心筋を切除しないため機能回復による壁運動の改善が期待できる。また左室心筋も切除しないため左室容積が保たれるメリットがある。また、Dagett法の問題点とされていた出血についてもKomeda−David法では左室切開部の内側にパッチがあたり、低圧の右心系となるため出血が軽減できるメリットがある。
しかし、Komeda−David法においても、心配停止装置を用いた血液の体外循環および心筋の切開を伴うため患者への侵襲度が高いという問題があった。心筋の切開は左室長軸全長の2/3程度に及ぶとされている。この侵襲度が高いという点はDagett法であってもKomeda−David法であっても患者負荷を考えれば大きな問題であることには変わりはない。手術後の死亡率が高い傾向にあると言われている。
また、Dagett法であってもKomeda−David法であっても、壊死心筋組織は正常組織に比べ構造が不安定になっているため、心膜パッチを縫い付ける作業は熟練を必要とする非常に難しい手技であるという問題があった。
上記問題点に鑑み、本発明は、心配停止装置を用いた血液の体外循環および心筋の切開を伴わない低侵襲な方法にて心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔を補綴することができる心室患部補綴具を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の心室患部補綴具を低侵襲かつ簡単な手技により心臓の心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔を塞ぐように心室患部補綴具を留置せしめる心室患部補綴具治療セットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の心室患部補綴具は、
心臓の心室内に収まる略椀状の心室患部補綴具であって、
収縮・弛緩が可能であるスプリング材で形成され、心臓の収縮・弛緩に従動して少なくとも椀内径方向に収縮・弛緩が可能である椀状部材と、
前記スプリング材の外壁面の少なくとも一部を覆い、前記スプリング材の収縮・弛緩に従動して収縮・弛緩が可能である布状部材と、
前記椀状部材を前記心臓の心室内に固定する複数の固定部材と、
前記椀状部材における前記固定部材の挿通のための複数の小孔を備え、
前記固定部材の少なくとも1つが糸状部材であり、その一端を前記椀状部材の外壁面に固定し、他端を前記椀状部材の外壁面に沿わせつつ1つの前記小孔を挿通させて前記椀状部材の内部に導き入れ、さらに、他の前記小孔から再び外部に導き出して前記心臓の心室に固定せしめ、前記複数の固定部材の固定によって前記椀状部材の姿勢を整えて前記心臓の心室に留置し、前記心臓の心室の患部を塞ぐように留置せしめる心室患部補綴具である。
上記構成により、当該布状部材によって心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔などの患部をより確実に塞ぐことができる。本発明の心室患部補綴具は、従来の心膜パッチのようなものを患部に縫合して心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔を閉鎖するという術式ではなく、椀状部材の外壁面にて心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔などの患部を塞ぐように留置せしめて固定することができ、低侵襲な方法にて患部を補綴することができる。なお、本発明の心室患部補綴具は、疾病に合わせて右心室、左心室のどちらの心室でも留置可能である。自由壁破壊は左心室に留置するケースも右心室に留置するケースもあるが、心室中隔穿孔は主に左心室に留置することが多く想定される。
本発明の心室患部補綴具を用いた術式は、従来にはまったくない新しい概念の低侵襲の補綴術式であり、このような補綴具を開示した例はない。
なお、前記固定部材の少なくとも1つは糸状部材であることが好ましい。
心室患部補綴具を固定する固定部材はアンカーやフックなどの機械的な機構部品のほか、人体に負荷の小さい糸状部材を固定部材として使用することにより心室内に留置することができる。
次に、本発明の心室患部補綴具治療セットは、
上記した本発明の心室患部補綴具と前記心臓の心室内への貫通路を確保する管状補助具を備え、
前記椀状部材が前記管状補助具の内腔を通過する大きさにまで椀内径方向に収縮可能であり、
前記管状補助具を、開口の一端が前記心臓の外側、他端が心室内となるように前記心臓に対して挿通または穿通し、
前記椀状部材を前記管状補助具の内腔を通過しうる大きさにまで椀内径方向に収縮させつつ、前記管状補助具の開口の一端より通し入れることにより通過させて前記椀状部材を前記心室内へ導き、前記開口の他端を通過後に前記椀状部材を前記心臓の心室内に収まる略椀状に復元し、前記心臓の心室内に留置せしめるものである。
なお、前記管状補助具が、逆流防止弁を備え、前記心臓の心室内へ貫通しても血液が前記心臓の心室内から逆流しないものであることが好ましい。
上記構成により、本発明の心室患部補綴具を、管状補助具を用いつつ、低侵襲かつ簡単な手技により心臓の心室中隔穿孔を塞ぐように留置せしめることが可能となる。
次に、本発明の心室患部補綴具の第1の留置方法は、
上記した本発明の心室患部補綴具を、前記椀状部材の外壁面で前記心臓の心室壁を覆って前記心臓の心室に開いた孔を塞ぐように前記心臓の心室内に留置せしめる方法であって、
前記管状補助具を、開口の一端が前記心臓の外側、開口の他端が心室内となるように前記心臓に対して挿通または穿通し、
前記椀状部材を前記管状補助具の内腔を通過しうる大きさにまで椀内径方向に収縮させつつ、前記管状補助具の開口の一端より通し入れることにより通過させて前記椀状部材を前記心室内へ導き、前記開口の他端を通過後に前記椀状部材を前記心臓の心室内に収まる略椀状に復元し、前記心臓の心室内に留置せしめる手順による方法である。
ここで、前記管状補助具の開口の他端を前記心臓の心室内へ挿通する手順が、前記心臓の心尖部の外壁からガイドワイヤーを心室内部に通し入れて行き、前記ガイドワイヤーの先端を上行大動脈に設けたポートから外部に導き出す手順と、前記ガイドワイヤーの先端を前記管状補助具の開口の他端から通し入れ、前記管状補助具の開口の他端を前記ガイドワイヤーに沿わせつつ前記ポートを介して前記心臓の内部に導き前記心尖部付近に位置するように導く手順とすることが好ましい。
また、前記椀状部材を前記心臓の心室内へ導く手順が、前記ガイドワイヤーの先端を前記固定具に結びつけ、前記ガイドワイヤーを前記心尖部側から引き抜いて行くことにより、前記ガイドワイヤーの先端に結び付けられている前記固定具と前記固定具が取り付けられている前記椀状部材を引っ張って前記心室内へ導く手順であることが好ましい。
上記手順により、本発明の心室患部補綴具を低侵襲な方法にて心室内に留置することができる。
次に、本発明の心室患部補綴具の第2の留置方法は、
上記した本発明の心室患部補綴具を、前記椀状部材の外壁面で前記心臓の心室壁を覆って前記心臓の心室に開いた孔を塞ぐように前記心臓の心室内に留置せしめる方法であって、
管状の管状補助具に対して、前記椀状部材を前記管状補助具の内腔を通過しうる大きさにまで椀内径方向に収縮させつつ、前記管状補助具の開口の一端より他端まで通し入れておき、
前記管状補助具を、開口の一端が前記心臓の外側、開口の他端が心室内となるように前記心臓に対して挿通または穿通し、
前記管状補助具の一端に位置している前記椀状部材を前記管状補助具から前記心室内へ導き入れ、前記椀状部材を前記心臓の心室内に収まる略椀状に復元し、前記複数の固定部材を用いて前記心臓の心室内に留置せしめる手順による方法である。
なお、上記心室患部補綴具の第2の留置方法において、前記椀状部材を含む前記管状補助具を前記心臓の左心室内へ挿通する手順が、前記心臓の左室心尖部の外壁からガイドワイヤーを左心室内部に通し入れて行き、前記ガイドワイヤーの先端を上行大動脈に設けたポートから外部に導き出す手順と、椀状部材10に取り付けられている固定部材と前記ガイドワイヤーを結びつける手順と、前記ガイドワイヤーを前記左室心尖部側から引き抜いて行くことにより、前記ポートを介して前記ガイドワイヤーが結び付けられている前記固定具と前記固定具が取り付けられている前記椀状部材を引っ張って前記左心室内へ導く手順であることが好ましい。
上記手順によっても本発明の心室患部補綴具を低侵襲な方法にて心室内に留置することができる。
本発明にかかる心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔を塞ぐための補綴具およびその患部への導入のための管状補助具は、従来の手術方法に比べ、侵襲度が低く、簡単な手技にて、かつ手術後の高い生存率を示す手術方法を提供することができる。
以下、本発明の心室患部補綴具および補綴具セットを添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1にかかる心室患部補綴具として、心室内に留置する心室患部補綴具の構成を一例として添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
実施例1にかかる本発明の心室患部補綴具は、心臓の心室内に収まる略椀状の椀状部材と、椀状部材を前記心臓の心室内に固定する固定部材を備え、椀状部材の固定状態において椀状部材の外壁面で前記心臓の心室壁を覆うことにより心臓の心室中隔穿孔や心室自由壁破裂孔などの患部を塞ぐように留置せしめたものである。
心室中隔穿孔とは、壊死に陥った心室中隔が穿孔し、左心室と右心室の短絡路が生じている疾病である。心室自由壁破裂とは、心室中隔穿孔と並び、急性心筋梗塞症の重篤な合併症の一つであり、左心室または右心室の心室壁が破裂することをいう。本発明の心室患部補綴具とは、上記の心室中隔穿孔や心室自由壁破裂による破裂孔を塞ぐための補綴具である。
以下、心室患部として心室中隔穿孔を例に説明する。なお、心室自由壁破裂孔の場合にも同様に本発明を適用することができる。
図1は、本発明の実施例1にかかる心室患部補綴具の構成例を示す図である。図1(a)は側面図、図1(b)は正面図を示している。
図1に示すように、本発明の心室患部補綴具は、椀状部材10と、椀状部材10に取り付けられた固定部材20を備えている。
以下、図1において椀状部材10の左側、つまり椀の閉塞している底側を「底部」、椀状部材10の右側、つまり椀の開放している縁側を「上部」と呼ぶ。
椀状部材10の上部の直径は限定されないが、患者の心室に収まる補綴具であるので、例えば50〜90mm程度が好ましい。また、上部から底部までの長さも限定されないが、患者の心室に収まる補綴具であるので、例えば、30〜70mm程度が好ましい。
図2は、左右対称形ではない椀状部材10aの構成例を示した図である。図2(a)は側面図、図2(b)は正面図となっている。図2に示すように椀状部材の形状はかならずしも左右対称形でなくとも良い。つまり、底部から上縁までの距離は特に揃える必要はなく、椀状部材10の留置位置の周囲の状況に応じて決めれば良い。心室中隔穿孔を補綴するべく心室内に留置する際にその留置位置周囲の心室中隔穿孔と乳頭筋との位置関係によっては椀状部材10aが乳頭筋に接触し留置が困難な場合もありうる。そのような場合においては、椀状部材10aの形状として乳頭筋の近傍に位置する辺の距離を短くすれば、椀状部材10aと乳頭筋との接触を回避することができる。
椀状部材10の底部から上縁までの距離は、心室中隔穿孔を塞ぐことができる長さであればよい。心室中隔穿孔は心室中隔の任意の箇所において生じうる。また、椀状部材10はその底部がほぼ心尖部に位置するよう留置される。したがって、少なくとも椀状部材10の底部から上縁までの距離のうち最長のものが、心尖部より心室中隔の上端までの距離と等しければ、全ての症例において心室中隔穿孔を塞ぎうる。心尖部より心室中隔の上端までの距離は成人の場合およそ40mm〜60mmである。なお、椀状部材10の底部から上縁までの距離のうち最長のものが異なっている複数種類の本発明に係る心室患部補綴具をあらかじめ用意しておき、心室中隔穿孔の位置によってこれらを適宜取捨選択し使い分けてもよい。
椀状部材10の素材は限定されないが、例えば人工血管に一般的に用いられるものが好ましい。例えば、飽和ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET、ダクロンまたはテトロン等)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、延伸ポリ四フッ化エチレン(ePTFE:expanded polytetrafluoroethylene)およびポリウレタン等の各種樹脂材料、さらには、これらのうちの2種以上を組合せたもの等が挙げられる。
椀状部材10の構造は、椀状形状を形成できる構造であれば良いが、例えば、人工血管に一般的に用いられるものが好適である。例えば、繊維状の素材をメリヤス編もしくは平織したもの、または多孔質構造が挙げられる。
固定部材20は、椀状部材10を心室壁へ固定することができれば良いが、例えば、糸状部材が挙げられる。糸状部材の本数は、特に限定されず、例えば1〜4本程度で良い。糸状部材の素材は特に限定されないが、例えば、手術用に一般的に使用されるものが好適である。例えば、ナイロン等が挙げられる。糸状部材を使用する場合、椀状部材10の心室壁への固定は、通常手術の際に行われる手段を用い、心室壁へと糸状部材を結びつけることによって行われる。椀状部材の異なる位置に取り付けられた糸状の固定部材20が複数本あれば、当該糸状部材をそれぞれ適宜引っ張ることにより椀状部材10の形状を適宜整えることができ、心室内への留置をより確実にできる。椀状部材の水平断面上の均一に離間した4点に配設された糸状部材が4本あると、必要に応じて水平4方向それぞれにおいて椀状部材の形状を整えることができる。
固定部材20の配設位置は、椀状部材10のどの部分であっても良いが、図1の例では、椀状部材10の底部に4本の糸状の固定部材20が配設されている。椀状部材10の底部から外側に向けて延びている4本の糸状の固定部材20は、椀状部材10が心室内に留置された状態で心室壁に結わえ付けて椀状部材10を固定する。
なお、この構成例では4本の糸状の固定部材20は、椀状部材10の底部近傍に設けられた2つの開口部を2度貫通して椀状部材の外表面に沿って椀外の上縁やや下まで延設されている。これは糸状の固定部材20をそれぞれ適宜引っ張ることにより椀状部材10の形状を適宜整えることができるようにする工夫である。
なお、椀状部材10において、底部に固定部材20を挿通しうる小孔14が設けられていてもよい。このような小孔14が設けられていると、固定部材20による椀状部材10の姿勢制御を行いやすく心室壁への固定がより容易となる。
図3は、図1に示した椀状部材10の底部に固定部材20を挿通しうる小孔14が設けられている構成例を示す図である。図3の構成例では小孔14は最底部に設けられた1つの小孔とその回りに十字型に配された4つの小孔の合計5つが設けられた例となっている。糸状部材である固定部材20の一端は椀状部材10の外壁面に固定されており、他端を椀状部材10の外側壁を沿わせつつ底面に導き、小孔14を挿通させて一旦椀状部材10の内部に導き入れ、さらに、最底部の小孔14から再び外部に導き出している。糸状部材によって椀状部材10の外壁面と2箇所の小孔14を介して椀状部材10の姿勢を制御して固定するため椀状部材10を確実に固定することができる。図3の例では4つの糸状部材で4方向から固定しているためさらに確実に固定することができる。
図4は、図2に示した左右対称形ではない椀状部材10aの底部に固定部材20を挿通しうる小孔が設けられている構成例を示す図である。図3と同様,糸状部材によって椀状部材10aの外壁面と2箇所の小孔14を介して椀状部材10aの姿勢を制御して固定するため椀状部材10aを確実に固定することができる。
次に、椀状部材10の収縮・伸張の動きについて述べる。
椀状部材10は、心臓の心拍の収縮・伸張に従動して、椀状部材10も椀内径方向さらには椀軸方向に収縮・伸張が可能なものとなっている。
椀状部材10がまったく収縮・伸張しないものであれば、術式後に心拍が十分に復調した後、心室が収縮・伸張するが、留置した心室患部補綴具が変形しないものであるので、心室の収縮・伸張とは調和せず、心臓の動きに影響を与えるおそれがある。
一方、椀状部材10が心臓の収縮・伸張に従動して収縮・伸張するものとすれば、術式後に心拍が十分に復調した後、留置した心室患部補綴具が心臓の動きに従動して変形するので、退院後の生活における心臓の動きに対して影響を与えることはない。
次に、本発明の心室患部補綴具を心室へ留置する際の工夫について述べる。
心室内に本発明の心室患部補綴具の留置方法としては、例えば、心配停止装置を用いた血液の体外循環および心筋の切開を伴う侵襲度の高い留置方法を採る事も可能ではある。しかし、本発明の目的の一つは、心配停止装置を用いた血液の体外循環および心筋の切開を伴わない低侵襲な方法にて心室中隔穿孔を補綴することができる心室患部補綴具を提供することにある。そこで、本願発明者は、心室患部補綴具を低侵襲かつ簡単な手技により心臓の心室中隔穿孔を塞ぐように心室患部補綴具を留置せしめる工夫を新たに開発した。この工夫は従来にはない斬新なものであって、低侵襲かつ簡単な手技による留置を実現したものである。
本発明の心室患部補綴具の留置における工夫は、椀状部材10の構造上の工夫と、管状補助具30という治具を利用する工夫である。
まず、椀状部材構造の工夫であるが、本発明の椀状部材10は椀内径方向に管状補助具30の内腔を通過しうる大きさにまで収縮可能となっている。
図5(a)は、管状補助具30と、椀状部材10が管状補助具30の内腔を通過しうる大きさにまで内径方向に収縮・伸張する様子を示す図である。図5(b)は椀状部材10が収縮して管状補助具30の内腔を通過する様子を示した図である。
本発明の椀状部材10が収縮するサイズは管状補助具30の内腔に相当することとなる。
管状補助具30は、心室に挿通し、心室壁の外側と内側をつなぐ通路を形成する。
管状補助具30の外径は、心筋を大きく傷つけずに心室壁に穿つ挿入孔に通すため3〜20mm程度が好ましい。管状補助具30の内腔の径はさらに管壁の厚み分小さくなる。そのため椀状部材10は図5に示したように元のサイズ30〜70mm程度に比べて大幅に収縮するものとなっている。
管状補助具30は、椀状部材10を挿通し得る構造的強度があり、椀状部材10や心筋を傷つけない平滑性あるチューブ状のものであれば良い。例えば、カテーテルなどで用いられているポリエチレンテレフタレート(PET、ダクロンまたはテトロン等)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、延伸ポリ四フッ化エチレン(ePTFE:expanded polytetrafluoroethylene)およびポリウレタン等の各種樹脂材料、さらには、これらのうちの2種以上を組合せたもの等、柔軟性チューブと同様のものが好ましい。
管状補助具30は、心室壁の外側と内側をつなぐ通路を形成するので、逆流防止弁を備える構造とすることが好ましい。逆流防支弁の働きにより血液が心臓の心室内から逆流しないものとなる。
次に、本発明に係る心室患部補綴具の留置の手順について詳細に説明する。
本発明に係る心室患部補綴具の留置手順は、管状補助具30を、開口の一端が心臓1の外側、開口の他端が心室内3となるように心臓1に対して挿通し、椀状部材10を管状補助具30の内腔を通過しうる大きさにまで椀内径方向に収縮させつつ、管状補助具30の開口の一端より通し入れることにより通過させて椀状部材10を心室内3へ導き、開口の他端を通過後に椀状部材10を心臓の心室内3に収まる略椀状に復元し、心臓の心室内3に留置せしめる手順となる。
本発明ではさらに上記留置手順に工夫を施して低侵襲な留置方法を実現せしめている。
上記手順を段階を追って図を参照しつつ詳しく説明する。
図6〜図15は、それぞれ、本発明に係る心室患部補綴具の左心室への留置手順を説明するための図である。なお、説明を分かりやすくするために、図に示す種々の要素は、一定の縮尺では描かれていない。なお、心臓1の心室中隔には心室中隔穿孔2が模式的に示されている。各手順は、必要に応じて、X線透視装置を単独で、またはX線透視装置および心エコー(心臓超音波)装置を組み合わせて用いる手段等により各機器同士または各機器および各器官との位置関係を視覚的に確認しつつ行う。
(手順1)
上行大動脈の動脈壁5に、ポート60を設置する(図6参照)。この手順により、上行大動脈の動脈側から心臓1内への通路が確保される。
(手順2)
左室心尖部の左心室外壁4に逆流防止弁付のシース40を刺通し、左心室内3に挿通する。この手順により、左心室4の底面側から左心室内3への通路が確保される(図7参照)。
(手順3)
逆流防止弁付のシース40の開口を介して心臓の左室心尖部の外壁4からガイドワイヤー50を左心室内部3に通し入れて行き、ガイドワイヤー50の先端を上行大動脈に設けたポート60付近に導く(図8参照)。
(手順4)
ポート60の開口から上行大動脈内にバスケットカテーテル70を挿入し、バスケットカテーテル70でガイドワイヤー50の先端付近を捕獲し、ポート60を介してガイドワイヤー50の先端を動脈外に引っ張り出す(図9、図10参照)。
上記手順3および手順4により、左心室底面から上行大動脈にかけてガイドワイヤー50をわたすことができる。
なお、上記手順4ではバスケットカテーテル70を用いてガイドワイヤー50を動脈外に引っ張り出す手順としたが、バスケットカテーテル70を用いる方法に限られず、その他、ガイドワイヤー50を動脈外に引っ張り出せる方法であれば採用することができる。ただし、できるだけ低侵襲な方法であることが好ましい。
(手順5)
次に、逆流防止弁付の管状補助具30を以下の手順で上行大動脈から左心室内へ通して行く(図11参照)。
管状補助具30の開口の他端に対してガイドワイヤー50の先端を通し入れて行き、管状補助具30をガイドワイヤー50に沿わせつつ進めて行き、ポート60を介して上行大動脈から心臓内部に導き、左心室内部3に導く。管状補助具30の先端が逆流防止弁付のシース40が穿たれている左心室内壁に当たるまで進入させる(図12参照)。
(手順6)
次に、椀状部材10の挿入の準備を行う。まず、ガイドワイヤー50の先端を椀状部材10に取り付けられている固定部材20に対して結びつける。
この例では、固定部材20の長さを長くとり、入口となるポート60の開口から出口となる逆流防止弁付シース40の開口よりも長い長さとする(図13参照)。
(手順7)
次に、ガイドワイヤー50を左心室心尖部の外壁4側から引っ張ることにより、ガイドワイヤー50の先端に固定された固定部材20を引っ張る。
固定部材20がポート60から管状補助具30を通過して逆流防止弁付シース40を介して左心室外に出るまでガイドワイヤー50を引っ張る。
ここで、固定部材20の長さが短いと、この手順7におけるガイドワイヤー50の牽引段階で椀状部材10が固定部材20に従動して引っ張られることとなる。この場合、椀状部材10がガイドワイヤー50と固定部材20を介して引っ張られることとなる。そこで、固定部材20の長さを十分にとりポート60の開口から逆流防止弁付シース40の開口までわたる長さとしている(図13参照)。
(手順8)
次に、ガイドワイヤー50と糸状部材12との固定を解く。さらに、左心室外壁から逆流防止弁付シース40を抜去する(図14参照)。
(手順9)
左心室外壁4側から固定部材20を引っ張りながら、椀状部材10を内径方向に収縮させつつ底部を進行方向側に向け、管状補助具30の開口から内部に引っ張り込んで行く。なお、上部の方向からも椀状部材10を棒13などで押し込むと椀状部材10が管状補助具30の内部を移動しやすい。
管状補助具30はその底部が左心室内壁に到達する位置まで移動させる(図14参照)。
(手順10)
左心室外側から固定部材20を引っ張って椀状部材10の底部を左心室内壁に適度に固定した状態で管状補助具30を引っ張り抜去する。ここで、管状補助具30は抜去されるものの椀状部材10は固定部材20により引っ張られているので椀状部材10のみが左心室内3に留まる。椀状部材10は、管状補助具30の内部に納まっている場合にはその径が収縮した状態であったが、管状補助具30が除去されたため椀状部材10は伸張して元の径に戻る(図15参照)。
(手順11)
最後に椀状部材10により心室中隔穿孔を適切に塞ぐように椀状部材10を位置決めして留置する。左心室外側から固定部材20を適宜引っ張ってテンションを与えつつ、左心室壁に結んで固定し、椀状部材10の底部が左心室壁に密着するように調整する(図15参照)。
椀状部材10の位置決めの際に、必要に応じて椀状部材10を心筋により密着するよう調整することもできる。機構部品である固定部材20bを用いて固定を調整することができ、例えば、心筋外部からフックを心筋に刺通し、フックの先端部を椀状部材10の外表面に引っ掛けて当該フックを引っ張ることで心室中隔穿孔に密着させるように調整する。
なお、図15において、固定部材の取り付け例として、糸状部材の固定部材を固定部材20a、他の機械的な機構部品であるアンカーやフックなどの固定部材を固定部材20bとして示している。
(手順12)
ポート60を生体から抜去し、ポート60の刺通しにより開いた大動脈壁の穴を縫合する(図15参照)。
上記の手順5から手順9までの手順に代え、次の手順5−2から手順9−2までの手順とすることもできる。上記の手順5から手順9までの手順であれば管状補助具30が上行大動脈から心室まで導入された状態にて椀状部材10を収縮させつつ管状補助具30の一端から他端まで移動させることとなるが、次の手順5−2から手順9−2の手順であれば、施術者の手元で先に椀状部材10を管状補助具30の一端から他端まで移動させておくことができるので、椀状部材10の管状補助具30内での移動が困難な場合には、有利である。
(手順5−2)
椀状部材10の挿入の準備を行う。まず、施術者の手元において、椀状部材10を、内径方向に収縮させつつ底部が管状補助具30の開口の一端の近傍に位置するように、逆流防止弁付の管状補助具30の内部に挿入する(図16参照)。
(手順6−2)
次に、固定部材20を左室心尖部に導入する準備を行う。管状補助具30の開口の当該一端に対してガイドワイヤー50の先端を通し入れて行き、椀状部材10の底部に設けられた小孔を通して管状補助具30の開口他端に到達するまでガイドワイヤー50を通す。通し終わった時点において、ガイドワイヤー50のうち、椀状部材10の底部近傍に位置する部分と、椀状部材10に取り付けられている固定部材20とを結びつけることにより固定する(図17参照)。
この例では、固定部材20の長さを長くとり、ともにポート60の開口から逆流防止弁付シース40の開口よりも長い長さとする。
(手順7−2)
次に、ガイドワイヤー50を左心室心尖部の外壁4側から引っ張ることにより、ガイドワイヤー50に固定された固定部材20を引っ張る。
ガイドワイヤー50のうち、固定部材20が固定された部分がポート60を通り左心室外に出るまでガイドワイヤー50を引っ張る。
ここで、固定部材20の長さが短いと、この手順6−2におけるガイドワイヤー50の牽引段階で椀状部材10が固定部材20に従動して引っ張られることとなる。この場合、椀状部材10がガイドワイヤー50と固定部材20を介して引っ張られることとなる。そこで、固定部材20の長さを十分にとりポート60の開口から逆流防止弁付シース40の開口までわたる長さとしている(図18参照)。
(手順8−2)
次に、ガイドワイヤー50と糸状部材12との固定を解く。
(手順9−2)
次に、管状補助具30を上行大動脈から左心室内へ通して行く(図19参照)。左心室外壁4から固定部材20を引っ張りながら管状部材30をガイドワイヤー50に沿わせつつ進めて行き、ポート60を介して上行大動脈から心臓内部に導き、左心室内部3に導く。管状補助具30の先端が逆流防止弁付のシース40が穿たれている左心室内壁に当たるまで進入させる(図19参照)。ガイドワイヤー50を引っ張り抜き去る。さらに、左心室外壁から逆流防止弁付シース40を抜去する。
以上の手順に従えば、椀状部材10を、その底部を体内側に向けて管状部材3の内腔に挿通したまま体外から体内へ導入することによって、体内への導入を低侵襲的に行うことができる。
なお、上記手順は左心室への椀状部材10の導入手順として示したが、本発明の心室患部補綴具および補綴具セットは、椀状部材10の右心室への導入も可能である。右心室への椀状部材10の導入手順は、上記した左心室への椀状部材10の導入手順1から手順12において、「左心室」を「右心室」と読み替え、「上行大動脈」を「上行大静脈」と適宜読み替えて、同じ要領で導入し、右心室に留置すれば良い。
以上、本発明に係る心室患部補綴具および補綴具セットの構成例ならびに使用方法について、図面に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものと置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や機能が付加されていてもよい。
実施例2にかかる心室患部補綴具として、椀状部材10bがスプリング材11と膜12で形成された構成例を説明する。
椀状部材10bの形状は、実施例1と同様、かならずしも左右対称形でなくとも良い。
椀状部材10bのスプリング材11は収縮・伸張を行うため様々な構造があり得る。
第1の構造例は、図20に示すように椀状部材10の外側または内側に沿って蛇行状のパターンを形成する複数の円状部材を配置させたものである。図20の構造例では椀状部材10bの外形に沿って波状のスプリングの円状部材11aを配置させた構成となっている。同様に、円状部材11aが、波状、ジグザグ状又は鋸歯状のパターンを形成した構造もあり得る。
円状部材11aが内径方向に収縮・伸張するスプリング材であれば、椀状部材10b全体が内径方向に収縮・伸張する構造となる。形状記憶機能を有し、超弾性である材料を用いて円状部材11aを形成した場合、図22に示すように椀状部材10bはスプリング材11として内径方向に収縮・伸張を行うものとなり伸縮機能を発揮しうる。
第2の構造例は、図21に示すように椀状部材10の外側または内側に沿ってジグザグ状のパターンを形成する複数の円状部材を配置させ、かつ左右対称形ではない形状としたものである。
ここで、スプリング材11の材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、チタン(Ti)、タンタル(Ta)およびニチノール(Ni−Ti合金)等が挙げられる。
第2の構造例は、図23(a)および図23(b)に示すように上下左右に伸縮できるようにワイヤを折り曲げてメッシュ状に編み上げて椀状部材10bのスプリング材11bを形成したものである。図23(a)は側面図、図23(b)は正面図を示している。
メッシュ状に編み上げたワイヤが伸縮しやすいように、ワイヤの素材として形状記憶機能を有し、超弾性である材料を使用することが好ましい。このように上下左右に伸縮できる構造とすることにより、内径方向に収縮させた場合に図24(a)および図24(b)に示したように伸縮機能を発揮しうる。
上記の第1の構造例、第2の構造例に示したような伸縮機能を備えたスプリング材11で椀状部材10bを形成することにより、本実施例2にかかる心室患部補綴具の伸縮機能が得られる。
円状部材やワイヤメッシュなどのスプリング材11で椀状部材10bを構成した場合は、そのままでは血液が浸透してしまうので心室中隔穿孔の補綴具として使用できない。そのため血液が浸透しないように表面処理を施す必要がある。本実施例2の心室患部補綴具はスプリング材11の外側表面または内側表面の少なくとも一部を覆う布状部材12を備えている。
図25は、第2のワイヤメッシュを採用した場合の椀状部材10bのスプリング材11bの外側表面を布状部材12により覆った心室患部補綴具の構成例を示した図である。なお、図25においては、内部のワイヤメッシュ構造が分かりやすいように布状部材12の一部を省略して示してある。
布状部材12の素材は特に限定されず、例えば、人工血管に一般的に用いられるものが好適である。例えば、飽和ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET、ダクロンまたはテトロン等)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、延伸ポリ四フッ化エチレン(ePTFE:expanded polytetrafluoroethylene)およびポリウレタン等の各種樹脂材料、さらには、これらのうちの2種以上を組合せたもの等が挙げられる。
次に、固定部材20について述べる。
本実施例2の構成の場合、固定部材20はスプリング材11または布状部材12のいずれかまたは両方に取り付けることができる。固定部材20として糸状部材を用いた場合は、糸状部材である固定部材20はスプリング材11と布状部材12とが重なり合う領域においてスプリング材11または布状部材12のいずれかまたは両方に取り付けられる。椀状部材10bをスプリング材11及びその外側表面の少なくとも一部を覆う布状部材12からなる構成とした場合においては、例えば、スプリング材11の外径側または布状部材12の内径側に取り付けられ、スプリング材11の底部近傍付近に設けられた2つの開口部を2度通し、さらに布状部材12のうち、スプリング材11の底部近傍付近に設けられた開口部を通して布状部材12の遠位端に向かって伸ばすことができる。
なお、図25に示した構成例では4本の糸状の固定部材20は、スプリング材11の外径側であって、椀内の上縁やや下に取り付けられ、スプリング材11の底部近傍付近に設けられた2つの開口部を2度通し、布状部材12のうち、スプリング材11の底部を覆う領域に設けられた開口部を通して布状部材12の遠位端に向かって伸ばされている。これは、本実施例2にかかる心室患部補綴具を、実施例1と同様の留置手順により留置する場合、留置手順11の際に糸状の固定部材20を心室外側から引っ張ることにより、椀状部材10の姿勢を制御することを可能にする工夫である。
本実施例2にかかる心室患部補綴具の留置手順は、実施例1に示した留置手順と同様で良い。
なお、椀状部材10bの留置手順において、スプリング材11はスプリング構造により収縮・伸張するので、布状部材12も合わせて収縮・伸張するものであることが好ましい。
実施例3にかかる心室患部補綴具として、椀状部材10cの上縁近くにいわゆる「かえし」を設けた例である。
ここで「かえし」とは、椀状部材10cの上縁近くに設けられた突起状の構造物であり、心室の内壁に食い込んで椀状部材10cが動かないように抵抗するものである。
図26は椀状部材10cの上縁近くに棘状の「かえし」構造13aを設けた構成例を示す図である。図26に示すように、椀状部材10cの上部の近傍には遠位方向に延びる複数の棘状の「かえし」構造13aが取り付けられている。椀状部材10cが心室に留置されると「かえし」構造13aが心室内壁に食い込んで椀状部材が安定して留置される。
図27は「かえし」構造13の別の好適な構造例を示す図であって、椀状部材10cの上縁近くに山の尖った箇所を「かえし」構造13bとした構成例を示す図である。図27に示す「かえし」構造13bは山の尖った箇所がかえし構造となっている。
本実施例3にかかる心室患部補綴具の留置手順は、実施例1に示した留置手順と同様で良い。
なお、椀状部材10cの留置手順において、椀状部材10cは管状補助具30内を通過させる必要があるので、「かえし」構造13が管状補助具30の内部に引っ掛かって通過できない、または、通過しにくいものであれば、椀状部材10cの留置手順を阻害するものとなるので好ましくない。そこで、「かえし」構造13が椀状部材10cの収縮状態において管状補助具30の内壁に引っ掛からないような状態に折り畳めるように設計しておくことが好ましい。
以上、本発明の心室患部補綴具の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明の心室患部補綴具は、心室中隔穿孔を有する患者に対して心室中隔穿孔を補綴する治具として適用することができる。
本発明の実施例1にかかる心室患部補綴具の構成例を示す図 左右対称形ではない椀状部材10aの構成例を示した図 図1に示した椀状部材10の底部に固定部材20を挿通しうる小孔14が設けられている構成例を示す図 図2に示した左右対称形ではない椀状部材10aの底部に固定部材20を挿通しうる小孔が設けられている構成例を示す図 (a)は管状補助具30と椀状部材10が管状補助具30の内腔を通過しうる大きさにまで内径方向に収縮・伸張する様子を示す図、(b)は椀状部材10が収縮して管状補助具30の内腔を通過する様子を示した図 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順1) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順2) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順3) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順4その1) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順4その2) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順5その1) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順5その2) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順6、手順7) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順8、手順9) 本発明に係る心室患部補綴具の留置手順を説明する図(手順10、手順11、手順12) 施術者の手元において椀状部材10を管状補助具30の内部に通しておく様子を示す図 ガイドワイヤー50と椀状部材10に取り付けられている固定部材20とを結びつけて固定する様子を示す図 ガイドワイヤー50に固定された固定部材20を引っ張る様子を示す図 管状補助具30をその底部が左心室内壁に到達する位置まで移動させる様子を示す図 本発明の実施例2にかかる、外側または内側に沿って蛇行状のパターンを形成する複数の円状部材を配置させたスプリング材11aの構造例を示す図 左右対称形でないスプリング材11aの構造例を示す図 図20にかかるスプリング材11aを収縮させた様子を示す図 本発明の実施例2にかかる、上下左右に伸縮できるようにワイヤを折り曲げてメッシュ状に編み上げてスプリング材11bの構造例を示す図 図23にかかるスプリング材11bを収縮させた様子を示す図 第2のワイヤメッシュを採用した場合の椀状部材10bのスプリング材11bの表面を布状部材12により覆った心室患部補綴具の構成例を示した図 椀状部材10cの上縁近くに棘状の「かえし」構造13aを設けた構成例を示す図 椀状部材10cの上縁近くに山の尖った箇所を「かえし」構造13bとした構成例を示す図
符号の説明
10,10a,10b,10c 椀状部材
11a,11b スプリング材
12 布状部材
13a,13b かえし構造
20 固定部材
30 管状補助具
40 逆流防止弁付のシース
50 ガイドワイヤー
60 ポート
70 バスケットカテーテル

Claims (3)

  1. 心臓の心室内に収まる略椀状の心室患部補綴具であって、
    収縮・弛緩が可能であるスプリング材で形成され、心臓の収縮・弛緩に従動して少なくとも椀内径方向に収縮・弛緩が可能である椀状部材と、
    前記スプリング材の外壁面の少なくとも一部を覆い、前記スプリング材の収縮・弛緩に従動して収縮・弛緩が可能である布状部材と、
    前記椀状部材を前記心臓の心室内に固定する複数の固定部材と、
    前記椀状部材における前記固定部材の挿通のための複数の小孔を備え、
    前記固定部材の少なくとも1つが糸状部材であり、その一端を前記椀状部材の外壁面に固定し、他端を前記椀状部材の外壁面に沿わせつつ1つの前記小孔を挿通させて前記椀状部材の内部に導き入れ、さらに、他の前記小孔から再び外部に導き出して前記心臓の心室に固定せしめ、前記複数の固定部材の固定によって前記椀状部材の姿勢を整えて前記心臓の心室に留置し、前記心臓の心室の患部を塞ぐように留置せしめる心室患部補綴具。
  2. 請求項1に記載の心室患部補綴具と、
    前記心臓の心室内への貫通路を確保する管状補助具を備え、
    前記椀状部材が前記管状補助具の内腔を通過する大きさにまで椀内径方向に収縮可能であり、
    前記管状補助具を、開口の一端が前記心臓の外側、他端が心室内となるように前記心臓に対して挿通または穿通し、
    前記椀状部材を前記管状補助具の内腔を通過しうる大きさにまで椀内径方向に収縮させつつ、前記管状補助具の開口の一端より通し入れることにより通過させて前記椀状部材を前記心室内へ導き、前記開口の他端を通過後に前記椀状部材を前記心臓の心室内に収まる略椀状に復元し、前記心臓の心室内に留置せしめることを特徴とする心室患部補綴具治療セット。
  3. 前記管状補助具が、逆流防止弁を備え、前記心臓の心室内へ貫通しても血液が前記心臓の心室内から逆流しないものとした、請求項2に記載の心室患部補綴具治療セット。
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