本発明に係る携帯端末の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明を適用する携帯端末として、複数の筐体がスライド自在に結合されたスライド型の携帯端末を例に挙げて説明する。
図1(A)は、携帯端末1の閉じた状態を示す外観構成図、(B)は、携帯端末1を縦長にして開いた状態を示す外観構成図、(C)は、携帯端末1を横長にして開いた状態を示す外観構成図である。
携帯端末1は、矩形の板状の上筐体10と、この上筐体10とほぼ同形状をした下筐体11とで構成される。携帯端末1は、図1(A)に示す閉じた状態では、上筐体10および下筐体11は相互に一表面を覆うように積層される。閉じた状態にあるこれらの上筐体10および下筐体11は、所定方向に相互に所定長さだけスライド可能なようになっている。携帯端末1は、上筐体10と下筐体11を相対的にスライドさせることにより、閉じた状態から、図1(B)および(C)に示す開いた状態に変形する。
上筐体10には、タッチスクリーン12、レシーバ13およびマイクロフォン14が設けられる。これらのタッチスクリーン12、レシーバ13、およびマイクロフォン14は、携帯端末1が閉じた状態であっても開いた状態であっても外部に露出するように設けられる。
タッチスクリーン12は、文字や画像などを含む表示データを表示するとともに、接触物の移動動作を検出することにより入力を受け付ける。タッチスクリーン12は、例えばディスプレイの上に、表面に接触を検知するための素子が複数配置され、さらにその上に透明なスクリーンが積層されることにより形成される。タッチスクリーン12上での接触物の移動動作を感知する方法は、圧力の変化を感知する感圧式、静電気による電気信号を感知する静電式その他の方法が適用される。タッチスクリーン12のディスプレイは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどで構成される。
なお、タッチスクリーン12上において接触物の移動動作を検出することにより入力を受け付ける領域は全面である必要はなく、一部に備えているものであってもよい。
携帯端末1が縦長の状態(図1(B))である場合には、タッチスクリーン12には縦長に構成された表示内容が表示される。一方、携帯端末1が横長の状態(図1(C))である場合には、タッチスクリーン12には横長に構成された表示内容が表示される。
携帯端末1が開いた状態となった場合に露出する下筐体11の表面には、操作キー15が配置される。この操作キー15は、ユーザにより押下されることにより指示を入力する複数のキーを有する。携帯端末1は、携帯端末1の姿勢により、方向キー16および四つのソフトキー17a、17b、17c、17d(ソフトキー17)を除く3行×15列で配置された操作キー15のキー配列のモード(キー配列モード)を切り替えるようになっている。
携帯端末1が縦長の状態(図1(B))である場合には、テンキー配列された操作キー15で入力を受け付けるキー配列モードであるテンキー配列モードが機能する。テンキー配列モード時には、操作キー15は「0」〜「9」の数字の入力を受け付ける数字キー、「#」キー、「*」キー、「発信」キー、「終話」キー、「クリア」キーとして機能する。
携帯端末1が横長の状態(図1(C))である場合には、QWERTYキー配列された操作キー15で入力を受け付けるキー配列モードであるQWERTYキー配列モードが機能する。QWERTYキー配列モード時には、操作キー15は主に「A」〜「Z」のアルファベットの入力を受け付けるアルファベットキー、「Shift(シフト)」キー、「Fn(ファンクション)」キーとして機能する。また、操作キー15はアルファベットの入力に加え、Fnキーの押下と組み合わせることにより「0」〜「9」の数字の入力を受け付ける数字キーと、「@」、「。」、「()」、「!」、「?」などの記号の入力を受け付ける記号キーとして機能する。
操作キー15は、例えば透明または半透明の樹脂で形成されるとともに、その背面に照明装置(キーライト)を備える。このキーライトは、キー配列モード毎に用意される。携帯端末1は、キー配列モードの変更に応じて使用するキーライトを変更することにより、ユーザに対して入力可能な文字記号を提示するようになっている。
操作キー15には、テンキー配列およびQWERTY配列に関係なく用いられる方向キー16、ソフトキー17も設けられる。方向キー16は、上下左右の方向を入力するためのキーである。また、ソフトキー17は、携帯端末1で実行されるアプリケーションに応じて必要な指示を受け付けるキーであり、例えばアドレス帳や電子メールソフト、インターネットブラウザなどのアプリケーションを起動させる指示や、サブメニューの起動、記号や絵文字、スペースの挿入指示など、種々の指示を受け付けるようになっている。
なお、ユーザは、携帯端末1が開いた状態のときには外部に露出した操作キー15を介した入力が可能であるが、閉じた状態のときには操作キー15を介した入力を行うことはできない。
図2は、本実施形態における携帯端末1の主な機能構成を示す概略的な機能ブロック図である。
携帯端末1は、主制御部30、電源回路部31、入力制御部32、表示制御部34、音声制御部36、通信制御部37、記憶部39、および加速度センサ40がバスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
主制御部30は、CPU(Central Processing Unit)を具備する。主制御部30は、記憶部39に記憶された各種プログラムに基づき動作して、携帯端末1の総括的な制御を行う。また、主制御部30は、後述する判定移動距離変更処理その他様々な演算処理や制御処理などを行う。
電源回路部31は、電力供給源(図示せず)を備える。電源回路部31は、電源をONする操作に基づいて携帯端末1の電源のON/OFF状態を切り替える。電源回路部31は、電源がON状態の場合に電力供給源から各部に対して電力を供給して、携帯端末1を動作可能にする。
入力制御部32は操作キー15およびタッチスクリーン12に対する入力インタフェースを備える。入力制御部32は、操作キー15およびタッチスクリーン12が入力を受け付けたことを検出すると、その入力を示す信号を生成して主制御部30に伝送する。また、入力制御部32は、所定時間毎にタッチスクリーン12からの検知信号を入力位置の座標を示す位置情報として受け取り、その入力を示す信号を生成して主制御部30に伝送する。
表示制御部34はタッチスクリーン12に対する表示インタフェースを備える。表示制御部34は、主制御部30の制御に基づいて、文書データや画像信号に基づいた画像をタッチスクリーン12に表示させる。
音声制御部36は、主制御部30の制御に基づいて、マイクロフォン14で集音された音声からアナログ音声信号を生成し、このアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換する。また音声制御部36は、デジタル音声信号を取得すると、主制御部30の制御に基づいて、このデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、レシーバ13から音声として出力する。
通信制御部37は、主制御部30の制御に基づいて、基地局からアンテナ38を介して受信した受信信号をスペクトラム逆拡散処理してデータを復元する。このデータは、主制御部30の指示により、音声制御部36に伝送されてレシーバ13から出力されたり、表示制御部34に伝送されてタッチスクリーン12に表示されたり、記憶部39に記録されたりする。また通信制御部37は、主制御部30の制御に基づいて、マイクロフォン14で集音された音声データや操作キー15およびタッチスクリーン12を介して入力されたデータや記憶部39に記憶されたデータを取得すると、これらのデータに対してスペクトラム拡散処理を行い、基地局に対してアンテナ38を介して送信する。
記憶部39は、主制御部30が行う処理についての処理プログラムや処理に必要なデータなどを格納するROM(ReadOnlyMemory)やハードディスク、不揮発性メモリ、データベース、主制御部30が処理を行う際に使用されるデータを一時的に記憶するRAM(RandomAccessMemory)などから構成される。
加速度センサ40は、主制御部30の制御に基づいて、または一定時間経過ごとに、検出された加速度(例えば三軸方向にそれぞれ加わる加速度)を取得する。検出された加速度は、検出値を示す信号を生成して主制御部30に伝送される。信号を受信した主制御部30は、携帯端末1に与えられた加速度に基づいて携帯端末1の姿勢を判断する。携帯端末1は、この姿勢に応じてタッチスクリーン12の画面の表示方向を設定したり、操作キー15のキー配列モードを設定したりする。
本実施形態における携帯端末1は、上述したようにタッチスクリーン12に表示された画像などに対する指示を、操作面に対する接触物の移動動作を検出することにより受け付けることができる。ユーザは、接触物としてのユーザの指などを介して、このタッチスクリーン12に入力を行うようになっている。なお、本実施形態においては、主に接触物としての指でタッチスクリーン12に入力を行う例を適用して説明するが、指以外の接触物であっても同様に適用することができる。
図3は、タッチスクリーン12が所定の処理を実行するための指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。
なお、タッチスクリーン12上で移動動作を検出可能な操作面は、例えば750dot×480dotで構成される。タッチスクリーン12上で検出した移動動作に基づく所定の処理を、表示内容の所定量(例えば一行分)のスクロール処理として説明する。このスクロール処理は、タッチスクリーン12の姿勢が縦長の状態で示されているが、横長の状態である場合にも同様の処理が行われる。また、タッチスクリーン12上での上下方向の移動動作が示されているが、左右方向の移動動作が行われた場合でも同様である。
携帯端末1は、スクロール処理を一回実行するための指示入力を、判定移動距離の移動動作の検出により受け付けるようになっている。「判定移動距離」は、スクロール処理一回分の指示入力を受け付けるために必要な移動操作の距離である。このタッチスクリーン12を介して受け付ける指示入力は、例えば操作キー15の方向キー16が一度押下されることにより受け付ける指示入力に相当する。
例えば図3に示すように、携帯端末1は、タッチスクリーン12で地点Aを始点として受け付けた指Fの移動動作より判定移動距離50dotの移動動作が検出されるとスクロール処理を一回実行し、さらに判定移動距離50dot検出された場合にスクロール処理を一回実行する。携帯端末1は、指Fの地点Bまでの移動動作で合計150dotの移動動作が検出されると、三回分のスクロール処理を実行する。
本実施形態における携帯端末1は、この判定移動距離を所定の条件下で変更することにより、よりユーザの操作性を向上させるようになっている。以下、第一〜第五の判定移動距離変更処理について説明する。第一〜第五の判定移動距離変更処理の開始時においては、第一の距離としてのデフォルト値(例えば50dot)が判定移動距離として設定されているものとする。
図4は、本実施形態における携帯端末1の主制御部30により実行される第一の判定移動距離変更処理を説明するフローチャートである。この第一の判定移動距離変更処理は、ユーザが一回のみ(または少ない回数)のスクロール処理の指示入力を行う場合の移動動作に対して有効な処理である。
ステップS11において、主制御部30は、入力制御部32からの検出信号の伝送の有無に基づいて、タッチスクリーン12上の指の移動動作の検出を開始したか否かの判定を行う。主制御部30は、移動動作の検出が開始していないと判定した場合(ステップS11のNO)、移動動作の検出が開始されるまで待機する。
一方、主制御部30は、移動動作の検出が開始したと判定した場合(ステップS11のYES)、ステップS12において、移動動作の検出の開始後、スクロール処理を実行する指示入力の一回目の検出に用いられる判定移動距離を変更する。主制御部30は、判定移動距離をデフォルト値から、第二の距離としてのデフォルト値より大きい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて大きい距離の動作が必要となる。
ステップS13において、主制御部30は、タッチスクリーン12上での判定移動距離の移動動作を検出することにより、スクロール処理一回分の指示入力を検出したか否かの判定を行う。主制御部30は、いまだ一回分の指示入力が検出されていないと判定した場合(ステップS13のNO)、移動動作が検出されるまで待機する。
一方、主制御部30は、スクロール処理一回分の指示入力が検出されたと判定した場合(ステップS13のYES)、ステップS14において、判定移動距離を再びデフォルト値に変更する。これに伴い、移動動作の検出開始後、一回目のスクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも大きい判定移動距離が要求され、二回目以降のスクロール処理の指示入力には、一回目よりも小さいデフォルト値の判定移動距離が要求される。
すなわち、判定移動距離f(n)(スクロール処理指示入力回数n=1、2、3、・・・)は、
図5は、第一の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。
主制御部30は、ユーザにより地点A1で開始された指Fの移動動作に基づく指示入力(一回目のスクロール処理の指示入力)には、100dotを判定移動距離として適用した。また、携帯端末1は、地点B1を始点とする二回目のスクロール処理の指示入力にはデフォルト値である50dotを判定移動距離として適用した。
携帯端末1は、第一の判定移動距離変更処理により一回目のスクロール処理の指示入力に適用される判定移動距離を大きい値にすることで、一回分のスクロール処理の指示入力を入力したいユーザにとっての操作性を向上させることができる。
すなわち、ユーザが移動動作を開始した直後は、移動動作の速度の感覚がつかみづらいといえる。このため、移動動作の開始直後の移動動作は速度が大きく、判定移動距離よりも大きくなりすぎ、一回分のみならず二回分のスクロール処理の指示入力を行ってしまう可能性がある。これに対し、携帯端末1は、移動動作開始直後の判定移動距離を大きくすることで、ユーザの移動動作の移動距離が大きくなりすぎた場合であっても判定移動距離の移動動作を容易に行うことができる。
次に、携帯端末1で実行される第二の判定移動距離変更処理について説明する。
図6は、本実施形態における携帯端末1の主制御部30により実行される第二の判定移動距離変更処理を説明するフローチャートである。この第二の判定移動距離変更処理は、図4の第一の判定移動距離変更処理と同様に、ユーザが一回のみ(または少ない回数)のスクロール処理の指示入力を行う場合の移動動作に対して有効な処理である
ステップS21は、図4の第一の判定移動距離変更処理の開始判定ステップS11とほぼ同様であるため、説明を省略する。
主制御部30は、移動動作の検出が開始したと判定した場合(ステップS21のYES)、ステップS22において、移動動作の検出の開始後、スクロール処理を実行する指示入力の一回目の検出に用いられる判定移動距離を変更する。主制御部30は、判定移動距離をデフォルト値から、第二の距離としてのデフォルト値より小さい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて小さい距離の動作が必要となる。
ステップS23は、図4の第一の判定移動距離変更処理の指示入力検出判定ステップS13とほぼ同様であるため、説明を省略する。
主制御部30は、スクロール処理一回分の指示入力を検出したと判定した場合(ステップS23のYES)、ステップS24において、移動動作の検出の開始後、スクロール処理を実行する指示入力の二回目の検出に用いられる判定移動距離を変更する。主制御部30は、判定移動距離をデフォルト値から、第三の距離としてのデフォルト値より大きい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて大きい距離の動作が必要となる。
ステップS25は、図4の第一の判定移動距離変更処理の指示入力検出判定ステップS13とほぼ同様であるため、説明を省略する。
主制御部30は、スクロール処理一回分の指示入力を検出したと判定した場合(ステップS25のYES)、ステップS26において、判定移動距離を再びデフォルト値に変更する。これに伴い、移動動作の検出開始後、一回目のスクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも小さい判定移動距離が要求され、二回目のスクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも大きい判定移動距離が要求され、少なくとも三回目のスクロール処理の指示入力にはデフォルト値の判定移動距離が要求される。
図7は、第二の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。
主制御部30は、ユーザにより地点A2から開始された指Fの移動動作に基づく指示入力(一回目のスクロール処理の指示入力)には、デフォルト値より小さい24dotを判定移動距離として適用した。この一回目のスクロール処理の指示入力に用いられる判定移動距離は、例えばタッチスクリーン12が検出可能な移動動作の最小距離(ここでは24dot)が用いられる。また、地点B2を始点とする二回目のスクロール処理の指示入力には、デフォルト値より大きい120dotを判定移動距離として適用した。さらに、地点C2を始点とする三回目のスクロール処理の指示入力には、デフォルト値である50dotを判定移動距離として適用した。
携帯端末1は、第二の判定移動距離変更処理により一回目のスクロール処理の指示入力に適用される判定移動距離を小さく、二回目のスクロール処理の指示入力に適用される判定移動距離を大きい値にすることで、一回分のスクロール処理の指示入力を入力したいユーザにとっての操作性を向上させることができる。
ユーザが指示入力のための移動動作を開始したということは、最低一回はスクロール処理を実行するつもりであると考えられる。このため、携帯端末1は、一回目の指示入力のための単位移動動作をデフォルト値より小さくすることで、移動動作開始直後の短い移動動作を一回目の指示入力と認識した。また、携帯端末1は、二回目の指示入力のための単位移動動作をデフォルト値より大きい値とすることで、一回目のスクロール処理が実行された後に二回目のスクロール処理が実行されるまでの時間を長くとることができるようにした(ただし、移動動作の速度がほぼ一定である場合)。これにより、携帯端末1は、ユーザの移動動作の移動距離が大きくなりすぎた場合であっても、二回目のスクロール処理の実行指示が入力される前に移動動作を停止することができ、移動動作開始直後の判定移動距離の移動動作を容易に行うことができる。
次に、第三の判定移動距離変更処理について説明する。
図8は、本実施形態における携帯端末1の主制御部30により実行される第三の判定移動距離変更処理を説明するフローチャートである。この第三の判定移動距離変更処理は、移動動作の移動速度を考慮することにより、操作性を向上させる処理である。
ステップS31において、携帯端末1はユーザによりタッチスクリーン12に対する移動動作を検出中である。
ステップS32において、主制御部30は、移動動作の移動速度は基準値より大きいか否かの判定を行う。主制御部30は、入力制御部32よりタッチスクリーン12上で検出された移動動作の位置情報を所定時間毎に取得するようになっている。主制御部30は、この位置情報から得られる移動距離および時間より、移動動作の速度を取得する。ステップS32で判定に用いられる移動速度は、直前の判定移動距離を移動した時の速度や、過去に検出された所定回数の位置情報より求まる移動速度の平均値などを元に取得することができる。なお、ステップS32で判定に用いられる移動速度の基準値は、直前の判定移動距離を移動した時の速度や、過去の所定回数の移動速度の平均値などを元に設定することができる。また、移動速度の基準値には所定の幅を持たせてもよく、基準値より大きい場合とはこの基準値の最大値よりも大きい場合が該当する。
主制御部30は、移動動作の速度が基準値よりも大きいと判定した場合(ステップS32のYES)、ステップS33において、次回(直後)の入力指示の検出に用いられる判定移動距離を第二の距離としてのデフォルト値より小さい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて小さい距離の動作が必要となる。
一方、主制御部30は、移動動作の速度が基準値よりも大きくないと判定した場合(ステップS32のNO)、ステップS34において、主制御部30は、移動動作の移動速度は基準値より小さいか否かの判定を行う。ステップS34で判定に用いられる速度の基準値に幅を持たせた場合、基準値より小さい場合とはこの基準値の最小値よりも小さい場合が該当する。
主制御部30は、移動動作の速度が基準値よりも小さいと判定した場合(ステップS34のYES)、ステップS35において、次回(直後)の入力指示の検出に用いられる判定移動距離を第三の距離としてのデフォルト値より大きい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて大きい距離の動作が必要となる。
一方、主制御部30は、移動動作の速度が基準値よりも小さくないと判定した場合(ステップS34のNO)、すなわち移動動作の速度が基準値内である場合、ステップS36において、判定移動距離を第一の距離としてのデフォルト値とする。
ステップS37において、入力制御部32からの検出信号の伝送の有無に基づいて、タッチスクリーン12上の指の移動動作の検出を終了したか否かの判定を行う。主制御部30は、移動動作の検出が継続されていると判定した場合(ステップS37のNO)、速度判定ステップS32に戻り以降の処理を繰り返す。
一方、主制御部30は、移動動作の検出が終了したと判定した場合(ステップS37のYES)、処理を終了する。
この第三の判定移動距離変更処理は、直前に行われた移動動作の移動速度が基準値Vmax(基準値の最大値)より大きい場合、スクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも小さい判定移動距離を要求する。また、第三の判定移動距離変更処理は、移動動作の移動速度が基準値Vmin(基準値の最小値)より小さい場合、スクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも大きい判定移動距離を要求する。
すなわち、判定移動距離f(n、V
n)(V
nは移動動作の移動速度)は、
図9は、第三の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。
主制御部30は、既に行われた判定移動距離に相当する地点A3〜B3の移動動作の移動速度を取得したところ、基準値よりも大きい速度による移動を検出した。このため、次回の地点B3を始点とする移動動作に基づく指示入力の検出に用いられる判定移動距離をデフォルト値50dotより小さい30dotとした。また、主制御部30は、地点B3〜C3の移動動作の速度を取得したところ、基準値の速度による移動を検出した。このため、次回の地点C3を始点とする移動動作に基づく指示入力の検出に用いられる判定移動距離をデフォルト値50dotに変更した。
また、主制御部30は、地点C3〜D3の移動動作の速度を取得したところ、基準値よりも小さい速度による移動を検出した。このため、次回の地点D3を始点とする移動動作に基づく指示入力の検出に用いられる判定移動距離をデフォルト値50dotより大きい100dotとした。
この携帯端末1は、第三の判定移動距離変更処理により移動動作の移動速度に応じて判定移動距離を変更することで、操作性を向上させることができる。
具体的には、携帯端末1は、ユーザによる移動動作の移動速度が大きい場合には、大きいスクロール操作量を所望するとみなし、小さい距離の移動動作で一回分のスクロール処理を検出できるようにした。また、携帯端末1は、ユーザによる移動動作の移動速度が小さい場合には、細かいスクロール操作量を所望するとみなし、大きい距離の移動動作で一回分のスクロール処理を検出できるようにした。
このため、ユーザは、大きいスクロール操作量を所望する場合には、少ない動作でスクロール処理の指示入力を行うことができる。一方、ユーザは小さいスクロール操作量を所望する場合には、一回分のスクロール処理に対する指示入力が行われたか否かを確認しながら必要な回数の指示入力を行うことができる。
次に、携帯端末1で実行される第四の判定移動距離変更処理について説明する。
図10は、本実施形態における携帯端末1の主制御部30により実行される第四の判定移動距離変更処理を説明するフローチャートである。この第四の判定移動距離変更処理は、移動動作の連続性を考慮することにより、操作性を向上させる処理である。
ステップS41において、携帯端末1はユーザによりタッチスクリーン12に対する移動動作を検出中である。
ステップS42において、主制御部30は、タッチスクリーン12上の指の移動動作の検出が終了したか否かの判定を行う。主制御部30は、移動動作の検出が終了していないと判定した場合(ステップS42のNO)、検出が終了するまで待機する。
一方、主制御部30は、移動動作の検出が終了したと判定した場合(ステップS42のYES)、ステップS43において、所定時間を計測するタイマをセットする。このときタイマにより計測する時間は、ユーザが移動動作を終了した後に再度開始した場合、この終了から開始までの時間がスクロール処理に対して連続した指示入力を意図したものであると判別できる時間である。
ステップS44において、主制御部30は、タッチスクリーン12上の指の移動動作の検出が再度開始されたか否かの判定を行う。主制御部30は、検出が開始されていないと判定した場合(ステップS44のNO)、検出が開始されるまで待機する。
一方、主制御部30は、検出が開始されたと判定した場合(ステップS44のYES)、ステップS45において、タイマセットステップS43においてセットした所定時間のタイマが満了したか否かの判定を行う。主制御部30は、タイマが満了したと判定した場合(ステップS45のYES)、すなわち、検出終了判定ステップS42における移動動作の検出終了後、検出開始判定ステップS44における移動動作の検出開始時まで所定時間が経過したと判定した場合、ステップS46において、移動動作の検出開始後の指示入力の検出に用いられる判定移動距離を第一の距離としてのデフォルト値とする。
一方、主制御部30は、タイマが満了していないと判定した場合(ステップS45のNO)、ステップS47において、主制御部30は、移動動作の検出開始後の指示入力の検出に用いられる判定移動距離を第二の距離としてのデフォルト値より小さい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて小さい距離の動作が必要となる。
なお、主制御部30は、終了した前回の連続した移動動作に適用された判定移動距離がデフォルト値ではない場合には、その前回の移動動作に適用された判定移動距離より小さい値に設定される。
この第四の判定移動距離変更処理は、移動動作の検出が終了した後、所定時間内に再度移動動作の検出が開始した場合、スクロール処理の指示入力にはデフォルト値よりも小さい判定移動距離を要求する。
すなわち、判定移動距離f(M、T
M_s、T
M_e)(Mは移動動作の検出が開始された後終了されるまでを一回の移動動作とした場合の連続する移動動作の回数、T
M_sはM回目の移動動作が開始された時間、T
M_eはM回目の移動動作が終了された時間)は、タイマの計測時間をTとすると、
図11は、第四の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。
主制御部30は、図11(A)に示すように、連続した移動動作の検出を終了した。その後、時間Tが設定されたタイマの満了前に、再度図11(B)に示す地点A4を始点とする移動動作の検出が開始された。このため、移動動作開始後の判定移動距離は、図11(A)に示す前回の連続した移動動作で検出に用いられた判定移動距離50dotよりも小さい判定移動距離30dotに変更した。
この携帯端末1は、第四の判定移動距離変更処理により、移動動作が短い間隔で連続して行われた場合に移動速度に応じて判定移動距離を小さくすることで、操作性を向上させることができる。
具体的には、携帯端末1は、ユーザが短い間隔での連続した移動動作を行った場合には大きいスクロール操作量を所望するとみなし、小さい距離の移動動作で一回分のスクロール処理を検出できるようにした。このため、ユーザは、大きいスクロール操作量を所望する場合には、少ない動作でスクロール処理の指示入力を行うことができる。
また、短い間隔での連続した移動動作(タイマ満了前に開始された移動動作)が連続した回数Mに基づいて、以下に示すように判定移動距離を変更してもよい。
[数5]
f(M)=デフォルト値−β4M
次に、第五の判定移動距離変更処理について説明する。
図12は、本実施形態における携帯端末1の主制御部30により実行される第五の判定移動距離変更処理を説明するフローチャートである。この第五の判定移動距離変更処理は、連続して検出された移動動作の相対位置を考慮することにより、操作性を向上させる処理である。
ステップS51において、携帯端末1はユーザによるタッチスクリーン12に対する移動動作の検出が終了した後、再度検出を開始したか否かの判定を行う。なお、このステップS51において「検出が終了した後、再度検出を開始した」と判定される移動動作は、例えば前回の移動動作の検出の終了から所定時間が経過する前に検出された短い間隔で連続された移動動作である。
ステップS52において、主制御部30は、移動動作が開始された位置が前回移動動作が終了された位置に対して移動を生じているか否かの判定を行う。例えば、タッチスクリーン12の短辺方向(または長手方向)とほぼ平行に移動動作が行われる場合、移動動作の開始位置が終了位置に対して長手方向(または短辺方向)に移動を生じているか否かの判定を行う。なお、長手方向(または短辺方向)は第一の方向およびこの第一の方向と逆方向である第二の方向に伸びているものとする。
主制御部30は、移動動作の開始位置が前回の移動動作の終了位置に対して移動を生じていないと判定した場合(ステップS52のNO)、ステップS53において、再開された移動動作に基づく指示入力の検出に用いられる判定移動距離を第一の距離としてのデフォルト値とする。
一方、主制御部30は、移動動作の開始位置が前回の移動動作の終了位置に対して移動を生じていると判定した場合(ステップS52のYES)、ステップS54において、移動動作の開始位置は、第一の方向に移動を生じたものであるか否かの判定を行う。主制御部30は、第一の方向に移動を生じたものであると判定した場合(ステップS54のYES)、ステップS55において、再開された移動動作が終了するまで指示入力の検出に用いられる判定移動距離を第二の距離としてのデフォルト値より大きい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて大きい距離の動作が必要となる。
一方、主制御部30は、移動動作の開始位置は、第一の方向ではなく第二の方向に移動を生じたものであると判定した場合(ステップS54のNO)、ステップS56において、再開された移動動作が終了するまで指示入力の検出に用いられる判定移動距離を第三の距離としてのデフォルト値より小さい距離に変更を行う。これに伴い、スクロール処理を一回実行する指示入力を行うための移動動作は、デフォルト値が設定された通常時に比べて小さい距離の動作が必要となる。
ステップS57において、主制御部30は、開始判定ステップS51において開始された連続した移動動作の検出が終了したか否かの判定を行う。主制御部30は、移動動作の検出が終了しておらず継続されていると判定した場合(ステップS57のNO)、移動動作の検出が終了するまで待機する。
一方、主制御部30は、移動動作の検出が終了したと判定した場合(ステップS57のYES)、第五の判定距離移動動作変更処理を終了する。
この第五の判定移動距離変更処理は、前回移動動作の終了位置に対して、再開された移動動作の開始位置がユーザの意図的な動作により所定の方向に移動を生じている場合、要求される判定移動距離を変更するものである。
すなわち、判定移動距離f(M、Y
M_s、Y
M_e)(Y
M_sはM回目の移動動作の所定軸上の開始位置座標、Y
M_eはM回目の移動動作の所定軸上の終了位置座標)は、
なお、(YM_s−YM−1_e)<0の場合と、(YM_s−YM−1_e)<0の場合の判定移動距離fは、逆であってもよい。また、変更された判定移動距離f(M−1)を次回の変更処理のデフォルト値として用いてもよい。
図13は、第五の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける様子を概念的に説明する図である。図14は、第五の判定移動距離変更処理が実行された場合にタッチスクリーン12が指示入力を受け付ける他の様子を概念的に説明する図である。
図13および図14においては、タッチスクリーン12の短辺方向(図示X方向)とほぼ平行に移動動作が行われる場合であって、移動動作の開始位置が終了位置に対して長手方向の第一の方向(図示Y方向)またはこの第一の方向と逆方向である第二の方向(図示Y方向と逆方向)に移動が生じているか否かの判定を行うものとする。すなわち、終了位置に対する開始位置の移動の有無を判定する軸に、長手方向(図示Y方向)を適用した。
図13および図14に示す一回目の移動動作に適用される判定移動距離は、デフォルト値50dotであるものとする。また、図13および図14では変更された判定移動距離(f(M−1))を次回の変更処理のデフォルト値として用いた例を説明する。なお、図13の地点A5を始点とする移動動作、地点C5を始点とする移動動作、地点E5を始点とする移動動作、および図14の地点A6を始点とする移動動作、地点C6を始点とする移動動作は、短い間隔で連続して行われた移動動作とする。
図13に示すように、主制御部30は、既に行われた判定移動距離に相当する地点A5〜B5の移動動作における終了位置B5の位置座標(一回目の終了位置座標Y1_e)と、地点C5で開始された移動動作における開始位置C5の位置座標(二回目の開始位置座標Y2_s)とを用い、Y軸方向の移動が生じているか否かの判定を行った。主制御部30は、上述した[数6]に示す(Y2_s−Y1_e<0)であると判定したため、地点C5で開始された移動動作で用いられる判定移動距離を、デフォルト値50dotより小さい40dot(デフォルト値(f(1))−α5)とした。
その後、主制御部30は、既に行われた判定移動距離に相当する地点C5〜D5の移動動作における終了位置D5の位置座標(二回目の終了位置座標Y2_e)と、地点E5で開始された移動動作における開始位置E5の位置座標(三回目の開始位置座標Y3_s)とを用い、Y軸方向の移動が生じているか否かの判定を行った。主制御部30は、上述した[数6]に示す(Y3_s−Y2_e<0)であると判定したため、地点E5で開始された移動動作で用いられる判定移動距離を、地点C5〜D5で用いられた判定移動距離40dotより小さい30dot(f(2)−α5)とした。
また、図14に示すように、主制御部30は、既に行われた判定移動距離に相当する地点A6〜B6の移動動作における終了位置B6の位置座標(一回目の終了位置座標Y1_e)と、地点C6で開始された移動動作における開始位置C6の位置座標(二回目の開始位置座標Y2_s)とを用い、Y軸方向の移動が生じているか否かの判定を行った。主制御部30は、上述した[数6]に示す(Y2_s−Y1_e>0)であると判定したため、地点C6で開始された移動動作で用いられる判定移動距離を、デフォルト値50dotより大きい70dot(デフォルト値(f(1))+β5)とした。
なお、図13および図14の例は一例であって、長手方向に移動動作が行われ、短辺方向の移動の有無を判定してもよい。
この携帯端末1は、第五の判定移動距離変更処理により移動動作の終了位置とその後短い間隔で開始された移動動作の開始位置の相対位置に応じて判定移動距離を変更することで、操作性を向上させることができる。
具体的には、携帯端末1は、移動動作の終了位置に対し、ほぼ連続的に短い時間で開始された移動動作の開始位置が第一の方向に移動を生じたものである場合には、ユーザにより意図的に多いスクロール処理を所望しているものとみなして、判定移動距離を小さくした。また、携帯端末1は、第一の方向とは逆方向である第二の方向に移動を生じたものである場合には、ユーザにより意図的に細かいスクロール操作量を所望しているものとみなして、大きい距離の移動動作で一回分のスクロール処理を検出できるようにした。
このため、ユーザは、大きいスクロール操作量を所望する場合には、少ない動作でスクロール処理の指示入力を行うことができる。特に、短辺方向に移動動作を行う場合には、寸法制約上移動動作距離が制限されてしまうが、判定移動距離を大きくすることで少ない動作で多くのスクロール処理を実行することができる点で有効である。
一方、ユーザは小さいスクロール操作量を希望する場合には、一回分のスクロール処理に対する指示入力が行われたか否かを確認しながら必要な回数の指示入力を行うことができる。
以上の第一〜第五の判定移動距離変更処理を実行するように構成された携帯端末1は、移動動作の入力単位としての判定移動距離を好適に変更することで、接触物の移動動作に基づく指示入力の操作性を向上することができる。
この第一〜第五の判定移動距離変更処理は、個別に実行することもできるし、適宜組み合わせて実行することもできる。
また、本実施形態における携帯端末1は、ディスプレイと入力装置が一体となったタッチスクリーン12を備えた構成を適用して説明したが、ディスプレイと入力装置とが個別に構成されたタッチパッドなどのポインティングデバイスであってもよい。
本発明に係る携帯端末は、携帯電話機、PDA(PersonalDigitalAssistant)、パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機、携帯型音楽再生機、携帯型動画再生機、その他の携帯端末にも適用することができる。
また、本発明の実施形態において説明した一連の処理は、ソフトウェアにより実行させることもできるが、ハードウェアにより実行させることもできる。
さらに、本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。