JP5260856B2 - 天然藍による木綿藍染め物品の染色方法 - Google Patents

天然藍による木綿藍染め物品の染色方法 Download PDF

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本発明は、天然藍による木綿藍染めの布帛、織物、衣服、その他の藍染め物品の染色方法に関する。
藍染め製品はジーンズとして広く流通しており、特に、天然藍による木綿の藍染め物品の商品価値は高いが、最近の綿染色に用いられる反応性染料に比べると、天然藍による木綿染色時の染料の吸収率が低く、染色後に濃厚な染料溶液を残す欠点を有する。そのため、染色後の廃液は環境汚染の原因になり、対策を要する上に、無駄な染料の使用を余儀なくさせている。
周知のとおり、藍染めは建て染めの代表的なものであり、伝統的な染色方法であると同時に、現代工業でも広く行われる手法である。しかし、新しい染色技術と比較すると染料の利用率が極めて低く、染色後の洗浄で未染着の染料が洗浄排水に流れてしまう割合が大きいため、原単位が大きく、排水処理費用が大きい問題点を抱えながら操業しているのが現状である。
藍染めを行う際には、不溶の藍染料であるインジゴを還元してアルカリ水溶液可溶のリュウコインジゴを作り、該リュウコインジゴの溶液に繊維を浸漬して吸収させた後、液を絞って空気にさらし、リュウコインジゴを酸化させて不溶化してインジゴを固着させる。この際に繊維に吸収されていないリュウコインジゴも、撹拌によって空気中から染液に吸収された酸素によって酸化されて、染着不能の状態で染液に懸濁している。不溶化したインジゴの一部は還元剤の作用で、再度リュウコインジゴに戻るが、以降の工程中では大半が汚れとして繊維に付着して染浴から取り出され、多量の染料ロスを生じる原因となる。
分散染料でアセテートのような化学繊維、あるいは合成繊維を染色する場合には染浴に界面活性剤を添加することは周知の技術であるが、それにより染色物の色相が変化することは知られていない。また、天然繊維では界面活性剤は染色後に塗布もしくは添加するのが普通であり、染色物の色相や堅牢度を大幅に変える手段としても用いられてはいない。
また、界面活性剤をインジゴで染色後のデニム布帛の処理に用いることについては、特許文献1にも記載がある。この方法では、水性媒質中で布帛を染色布帛の表面の色濃度における局部的変化を与えるために有効量のセルロース分解酵素および熱膨張真珠岩と接触するに際して、セルラーゼ、熱膨潤真珠岩および緩衝剤および所望により、単なる分散剤としての界面活性剤又はキレート化剤を用いる方法である。
非特許文献1は、綿/ポリエステル混紡糸のバット染料染色技術の開発に関する研究報告であり、ここではインジゴ染色浴に界面活性剤を添加した事例が記載されているが、セルロース繊維しか染まらない温度範囲においてインジゴ染料を綿/ポリエステル混紡糸に連続で糸染めする技術の開示である。
特表平9−503032号公報 広島県立東部工業技術センター研究報告第15号(2002.5.31)
天然藍による木綿藍染めは、新しい染色技術と比較すると染料の利用率が極めて低く、染色後の洗浄で未染着の染料が洗浄排水に流れてしまう割合が大きいため、原単位が大きく、排水処理費用が大きい問題がある。本発明は藍染めのこのような欠点を解決することにある。
藍染めをした物品は染色条件により色相が微妙に異なっており、染着量の相違では到底説明ができない差が存在する。この現象を利用できれば単一の染料から色の濃さ以外の幅広い変異を有する色相の製品が得られる。従来は天然藍による木綿藍染めの不安定さとして管理の困難さの原因とされてきた現象であるが、本発明はこの現象を利用して多様な色相の製品を製造することを目的とする。
また、染浴に懸濁するインジゴは繊維に付着して取り出されるが、繊維内部に吸収されていないので、外界からの力等に対しては安定に存在しない。従来からインジゴで染色した繊維製品は摩擦によって脱落しやすく、特に湿摩擦堅牢度が低いことが問題とされている。本発明は、天然藍による木綿染色物の湿摩擦堅牢度を改善することを、もう一つの目的とする。
更に、天然藍を用いて染色する場合、インジゴ含有量の少ない染浴で染色すると、合成インジゴを高濃度で染色する藍染めとは異なる色相が得られることが知られていたが、高濃度での染色では染浴を建てる際に染浴中に多量のインジゴが生成し、その含有量の制御が難しいことから希望する色相が得られない問題、及び染色物に付着して染料が失われるため、ロスが多い問題があり、解決策が求められていた。本発明はこのようなインジゴのロスを減少させることをもう一つの目的とする。
このように、本発明の解決課題は、天然藍による木綿藍染めにおける色相の多様化を図ること、染料の吸収率を高めること、それによって染色排水の汚れの減少、染料原単位の削減を図り、コスト削減を達成することにある。
本発明は、藍染めにおいて「建てる」と呼ばれているインジゴのリュウコ体を形成させる木綿の藍染め工程において、該建て染め浴を形成する発酵成分もしくは還元剤とpH制御のために添加するアルカリに加えて、建て染め浴に界面活性剤を添加して藍染めを行うことを特徴とする藍染め物品の染色方法である。更に、この藍染め過程で、染浴の表面に酸素の少ない気体を流しながら染色する藍染め物品の染色方法についても提案した。すなわち、染浴の表面周辺の雰囲気を非酸化性気体、例えば窒素や二酸化炭素等の気体で置換して染浴を建てたときの前後から非酸化性気体で置換するのである。本発明の場合、非酸化性の不活性気体としては、窒素ガスよりも炭酸ガスの方が重いので使いやすい。
藍を建てた液の中に懸濁するインジゴ粒子は、その大部分が建てたときに残留していた原料インジゴではなく、染色物を扱ううちに染浴中に混入する空気に含まれる酸素によりリュウコインジゴの酸化が起こって不溶化して生成したものである。界面活性剤はこのような染浴中で生成するインジゴ粒子の量を削減するのに有効であることがわかった。酸化抑制の機作は明確でないが、染浴からインジゴの青い色が消え、リュウコインジゴの汚い黄色が出てくることから、浴中でのリュウコインジゴの酸化が抑制されているのが原因である可能性が高い。これには浴の表面に集まった界面活性剤が膜状物を形成して、酸素透過を妨害している可能性が高い。
本発明に使用することが好ましい界面活性剤は、通常洗浄剤や潤滑剤に使用される、線状分子の一端が親水基であり、残余が疎水基であるタイプのものでもよいが、分子の中心部に疎水基を、両端部に親水性基を有する(H−L−H型)か、あるいは逆に分子の中心部に親水性基を、両端部に疎水性基を有する(L−H−L型)、陰イオン活性剤もしくは非イオン活性剤あるいはこれらの組成物のものが好ましい。添加する界面活性剤は陰イオン活性剤もしくは非イオン活性剤が好ましいが、これらを単独で使用することも、数種混合して使用することもできる。カチオン界面活性剤は微生物の繁殖を妨害するので、スクモ(「すくも」、植物の藍葉を発酵させて堆肥状にしたもの)等を発酵によって建てる場合に使用することは好ましくないが、ハイドロサルファイト、ブドウ糖、アルデヒド類、水あめ等の還元剤によって建てる場合には使用できる。
具体的に好ましい界面活性剤は、H−L−H型では、ポリプロピレングリコールを親油基としてその両端に酸化エチレンを親水基として付加重合させたブロックポリマー型の多様な性質を有する非イオン界面活性剤が挙げられる。他に長鎖のω二塩基酸のポリエチレングリコールエステルも好ましい。また、L−H−L型の非イオン界面活性剤ではポリエチレングリコールジラウレート、アニオン界面活性剤ではアルキルリン酸ジエステル、アルキルエーテルリン酸ジエステル、アルキルアリルリン酸ジエステル又はこれらのトリエステルなどのリン酸エステル塩混合活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ジエステル型)、あるいはジアルキルスルホサクシネート系アニオン活性剤、ロート油が挙げられる。ロート油はグリセライドの中心から3方向にリシノレイン酸の鎖が伸び、中間にスルホン基が結合していて親水基部分を形成している。疎水基は分子の3個の末端と中心部にある。スルホン化の過程でリシノレイン酸の一部はグリセリンから外れているが、この型の界面活性剤も親水基部分を2個持っている。
ここで、界面活性剤の添加量は、界面が界面活性剤の膜状構造で覆われる濃度、即ち臨界ミセル濃度以上であることが必要である。臨界ミセル濃度は分子量の小さい界面活性剤では小さく、分子量の大きいものでは大きい。通常用いられる界面活性剤程度の分子量では溶液濃度として0.1%程度であるものが多い。臨界ミセル濃度よりも極端に濃厚な溶液の場合には、界面を覆う膜状物が多層になるので、欠陥部が出来るものと推定され、本発明の効果は若干低下する傾向を示す。これら界面活性剤の効果が発現する添加量は、建て染め浴の0.05重量%乃至5重量%、好ましくは0.01重量%乃至3重量%である。
天然インジゴで染色したデニムにおいて、セルロース分解酵素および熱膨張真珠岩が、染色布帛の表面の色濃度における局部的変化を与えることのできることは従来から用いられている。しかし、分散剤としての界面活性剤が色調の変化に寄与することについては聞かない。
本発明は、天然藍による木綿藍染めの際に、スクモ(すくも)を用いて発酵を開始し、染液に微生物の栄養源とインジゴを追加しながら建てる際、もしくはインジゴに還元剤およびアルカリを加えてリュウコ体溶液を形成させて建てる際に、上記の界面活性剤を添加することにより、建て染め浴に微細なインジゴ粒子が浮遊している量が可及的に少ない状態で染色し、天然藍による木綿藍染め物品を製造する方法である。
染浴中のリュウコインジゴの酸化は空気中から侵入する酸素によって起こると推定される。この反応が界面活性剤により強く抑制される理由は、見かけ上の現象かもしれないが、界面活性剤が酸素バリヤーとして作用している可能性を示唆する。しかし液状と考えられる界面活性剤の中を酸素が拡散する速度は概して小さくないと推定されるので、これはそれほど単純な現象でない。酸素の総括的な拡散係数を低下させている要因としては境膜の特異性を考慮する必要があると思われる。
このような酸化抑制効果は染浴が繊維表面から失われると急速に失われる。その結果、繊維に残留する染浴の中では酸化が進み、遊離のインジゴが生成する。これは製品の摩擦堅牢度の低下の要因であるので速やかに除去することが望ましい。しかし実際の工程では処理の高速化に限度があるので、染浴を搾り取った後、直ちに短時間水洗して液中に残留するリュウコインジゴを除去することが好ましい。この過程では周辺の雰囲気を窒素や二酸化炭素等の非酸化性気体で置換することが望ましい。特に、実際の染色では染浴を建てたときの前後から空気より重い炭酸ガスを流しながら置換することがより望ましい。
本発明は、天然藍による木綿藍染めに用いる染浴中に上記の界面活性剤を添加することで、染浴中に分散している既に不溶化したインジゴ粒子の濃度を可及的に少なくなるように制御することで、染色物の染着量及び染着濃度ばかりでなく、染色された物品の色相を変化させることのできる新規な染色方法である。従来の建て染め浴は染色過程で生成してきたインジゴ粒子を多量に分散しており、濃い藍色を呈するが、この粒子はインジゴのリュウコ化以前の、染浴を建てる工程において既に存在していた粒子と異なり、粒子サイズが大きく、その存在量によって染着後の色相が微妙に異なっている。存在量の多い染浴で染着した繊維は色相が紫側に変移し、黒味を帯びる傾向を示す。この粒子が多量に存在する条件では染色物を浴から取り出すときに、繊維表面に粒子が多量に付着するため、得られた染色物の摩擦堅牢度が特に低くなる。
このように、天然藍による木綿藍染めにおける色相の多様化を図ることを目的としたものであるが、別の効果として染料の吸収率を高める効果があり、さまざまな利点を有する。これには染色排水の汚れの減少、および染料原単位の削減の効果があり、コスト削減にも有効である。すなわち、本発明の染色方法では建て染め浴に浮遊するインジゴ微粒子が極めて少ないため、染色後の洗浄で系外に失われる染料が少なく、染料の原単位が小さい利点があるほか、作業者の手や染色機器に付着する染料も少なくなり、工場もきれいになる利点がある。また排水に流れ込んで失われる染料も少なくなり、排水処理費用も削減できる。
界面活性剤は気液及び固液界面に分子がほぼ垂直に近い状態で、分子同士がほぼ平行に近い状態で集合していると考えられ、その構造が気体の吸収を妨害すると推定されるが、その程度は明らかでない。一方、境膜拡散係数を含めた液体膜の中の拡散係数の実測は極めて困難であり、その大きさから反応の抑制の機構を推定することは困難である。リュウコインジゴの酸化が抑制される現象が特定の界面活性剤でなく、広範な化学構造の界面活性剤で発生し、いずれもが類似の特性を示すことから、界面活性剤分子が界面に集合することが気体の拡散妨害の原因になっていると推定される。界面活性剤は気液界面もしくは固液界面に集合し、ほぼ平行に配列して微細結晶に類似した膜を形成すると考えられており、分子の方向が界面となす角度は、界面活性剤により一定であると考えられる。界面活性剤の量が多い場合には、膜が乱れるのではなく、多層に積み上がって膜が厚くなると一般に考えられている。結晶に近い分子配列は有しているが、流動性は残っているので液晶に近い構造である。比較的長い分子の密着した空間を気体が通過しにくい結果、遊離するインジゴ染料が少なくなるのであろう。
本発明の染色法では天然藍による木綿染色物である織物等の布帛およびその他の物品は、従来の方法により洗い加工などの処理を施すことが可能であり、製品の多様化に有効で、従来の加工と類似の効果を示す。本発明の染色物は染料が内部に多く浸透しており、洗い加工による脱色速度が従来の方法によるものよりも小さいが、処理時間や条件を変えることにより、加工速度をほぼ従来の大きさに調節できる。
天然藍による木綿藍染めの染液の中に、建て染め浴の0.05重量%乃至5重量%、好ましくは0.01重量%乃至3重量%の界面活性剤が混入することと、空気より重い炭酸ガスを流しながら酸素の少ない気体雰囲気中で染色することにより、従来の仕様による染浴よりも染浴内で浴に不溶の粒子として生成するインジゴが少なくなり、総括的には、染料の吸収率を従来の染色方法よりも高くすることができる。これにより、染料の利用率が改善されるばかりでなく、多くの場合、従来法に比べて、より濃厚な色相を持った物品が製造できる。
更に、本発明の染色物の湿摩擦堅牢度は、従来の方法の染色物よりも概して高くなる効果が認められた。色相は従来の藍染めよりも緑がかっており、繊維種類による差が大きい。絹と綿では青みが強いが、レーヨンでは紫味を帯びる。このような特性から、本発明の方法による木綿染色物は従来の藍染めとは異なる色相になる利点がある。そして、上述のように染浴に懸濁するインジゴの量が少ないため、排水の汚染が少ない効果が得られる。
天然藍染め物品の湿摩擦堅牢度を改善するために従来の界面活性剤が存在しない染浴を窒素ガスでシールすることを試みた。具体的には染色装置に対して窒素ガスの導入口及び排出口を設け、染浴に酸素が溶解しないようにして染色するものである。この方法の欠点は染色後に脱液、洗浄する際に染色物を空気中に取り出し、運搬する必要があることである。そのため小規模の試験では優れた性能が得られても、実用試験では十分な改良が得られていない。本発明の方法による界面活性剤を使用する染色では、染色物の表面の上に界面活性剤が存在しておればリュウコインジゴの酸化が抑制されるので、染色装置から取り出して直ちに水洗浴に投入すればよい。水洗と脱水を一つの機器で行なうことは周知の方法なので、この機器の中にも不活性気体を導入すれば、湿摩擦堅牢度の改善ができる。すなわち、天然藍染めの染液の中に界面活性剤が混入しているので、染浴の表面に非酸化性気体を流しながら、酸素の少ない気体雰囲気で染色する本発明の藍染め物品の染色方法が生きてくるのである。ここで、前述のように、窒素ガスよりも炭酸ガスの方が重いので比重差による浮力により発生する容器の口の近傍の上昇気流が少なく、空気が流入し難いので使いやすい。
以下、本発明の実施に際して最良の結果をもたらす実施例にについて説明する。一般的には、染料としてインジゴに他の建て染め染料を混合した場合でも、異種染料を混合して使用する場合には、染着速度の差が強調され、速度の大きい染料が濃く染着することが多い。染着速度の大きい反応性染料や直接染料を混合して使用した場合には、染浴の中でのインジゴ成分の生成の抑制が認められる。比較的容易に混合可能な染料はスレン染料および硫化染料である。
デニム織物における経糸の染色のように、インジゴを含む濃厚な染液から濃い色に染める場合には、界面活性剤を添加し、更に直接還元剤とアルカリを加えてインジゴのリュウコ化を進めることが好ましい。スクモ(すくも)を発酵法によって還元して染液を作る場合には、藍を建てるのに使われる微生物で界面活性剤が分解されないことが望ましく、ポリエーテル型の非イオン活性剤を中心に使用することが好ましい。したがって、カチオン活性剤は微生物の繁殖を妨害するので好ましくない。
デニム織物の経糸の染色の場合、従来よりもインジゴ濃度を低めに設定する。また、搾液後の染液のインジゴ濃度を低く抑えることで、インジゴの原単位の削減をする。インジゴ濃度は従来の8割程度にするのが好ましい。以下実施例によって、具体的に数値を示して説明をする。
実施例1
内容積45リットルの容器に蒸留水40リットルを入れ、40℃に保ちながら苛性ソーダ3g/リットル、炭酸ソーダ40g/リットルになるように、各薬剤を投入し均一化した後、天然インジゴ(乾燥粉末状すくも)を1600g、非イオン界面活性剤のPEG1000ジラウレートを400g投入し、均一化させた。この液にハイドロサルファイトを12g/リットルになるように15分掛けて混合し、インジゴのリュウコ化を行った。界面活性剤を添加しない系では液は濃い紺色に着色するが、この液は黄緑色に濁った色を示した。
この液に木綿織物を10kg投入し、30分間ゆっくり撹拌して染色した後引き上げ、脱水し、水洗した後、ハンガーに掛けた状態で空気酸化を進め、発色させた。この染色物は波長400〜700nmでのトータルK/Sが536、色相は比較例(ブランク)よりも赤みに偏り、湿摩擦堅牢度は3級と従来の藍染め品及び比較例より大幅に改善されていた。
実施例2
実施例1と同様の容器に蒸留水40リットルを入れ、40℃に保ちながら苛性ソーダ3g/リットル、炭酸ソーダ40g/リットルになるように各薬剤を投入し、均一化した後、容器の上部に設けたかごの中にドライアイスを投入して空間に炭酸ガスを充満させ、天然インジゴ(乾燥粉末状すくも)を1600g、非イオン活性剤のPEG1000ジラウレートを400g投入し、非酸化性雰囲気中で均一化させた。この液にハイドロサルファイトを12g/リットルになるように15分掛けて混合し、インジゴのリュウコ化を行なった。染色開始時にサンプリングした染浴は黄緑色に濁った色を示した。
この液に木綿織物を10kg投入し、30分間ゆっくり撹拌して染色した後引き上げ、炭酸ガス雰囲気下で脱水し、水洗した後、ハンガーに掛けた状態で空気酸化を進め、発色させた。この染色物は波長400〜700nmでのトータルK/Sが523、色相は比較例(ブランク)よりも赤みに偏り、湿摩擦堅牢度は4級と比較例よりも大幅に改善されており、直接染料で染色したものと同程度の値が得られた。
実施例3
実施例1の界面活性剤のPEG1000ジラウレートの代わりにジアルキルスルホサクシネート系のアニオン活性剤を使用したところ、同様に湿摩擦堅牢度の優れた染色物が得られた。得られた染色物のトータルK/Sは543、色相は若干赤みが強く、濃色化していた。
実施例4
実施例1の界面活性剤のPEG1000ジラウレートの代わりにロート油を使用したところ、同様に湿摩擦堅牢度の優れた染色物が得られた。ロート油はグリセライドの中心から3方向にリシノレイン酸の鎖が伸び、中間にスルホン基が結合していて親水基部分を形成している。疎水基は分子の3個の末端と中心部である。得られた染色物のトータルK/Sは399、色相は若干青みが強く、色の純度が高く、やや淡色化していた。
実施例5
実施例1の界面活性剤のPEG1000ジラウレートの代わりに松本油脂製薬株式会社製のアニオン活性剤、アクチノールKP−100を使用したところ、同様に湿摩擦堅牢度の優れた染色物が得られた。得られた染色物のトータルK/Sは316、色相は若干青みが強く、色の純度が高くなり、かなり淡色化していた。
実施例6
界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用したところ、同様に湿摩擦堅牢度の優れた染色物が得られた。得られた染色物のトータルK/Sは325、色相は若干青みが強く、やや淡色化していた。
実施例7
界面活性剤として、アルキル燐酸ナトリウム(リンの平均アルキル化度2.5)を使用したところ、同様に湿摩擦堅牢度の優れた染色物が得られた。得られた染色物のトータルK/Sは408、色相は若干青みが強かった。
比較例
実施例1と同じ装置を用い、界面活性剤の添加のみを省いて染液を調整した。この方法は従来の天然藍染めに用いられる方法である。得られた液は通常通り濃い紺色を呈していた。この液に実施例1と同様の木綿織物を10kg投入し、同様にして染色し、炭酸ガス雰囲気下で脱水し、水洗した後、ハンガーに掛けた状態で空気酸化を進め、発色させた。
この染色物は波長400〜700nmでのトータルK/Sが469、色相は通常の紺色であった。湿摩擦堅牢度は2級であった。堅牢度は染液から取り出し、脱水するまで不活性ガス雰囲気に保持したため、従来の不活性ガスを使用しない方法による染色物よりも堅牢度が優れていた。
以上の各実施例及び比較例の結果から明らかなように、藍建ての際に比較的高濃度の天然インジゴと還元剤及びアルカリに加えて、特定の界面活性剤を共存させることにより、広い範囲のインジゴ濃度の採用が可能になり、多様な色相の藍染めを行うことが可能となったのである。

Claims (4)

  1. 天然インジゴのリュウコ体を形成させるスクモからの木綿藍染めの工程において、建て染め浴を形成する発酵成分もしくは還元剤及びアルカリに加えて、陰イオン界面活性剤もしくは非イオン界面活性剤あるいはこれらの混合物からなる界面活性剤を添加して藍染めを行う際に、染浴の表面に空気より重い炭酸ガスを流しながら酸素の少ない気体雰囲気で染色することを特徴とする天然藍による木綿藍染め物品の染色方法。
  2. 界面活性剤が分子の中心部に親水性基を、両端部に疎水性基を有するものである請求項1記載の天然藍による木綿藍染め物品の染色方法。
  3. 界面活性剤が分子の中心部に疎水基を、両端部に親水性基を有するものである請求項1記載の天然藍による木綿藍染め物品の染色方法。
  4. 界面活性剤の添加量が建て染め浴の0.01重量%乃至3重量%である請求項1乃至3いずれか記載の天然藍による木綿藍染め物品の染色方法。
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