JP5257334B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析装置に関し、さらに詳しくは、質量分析装置においてイオンを輸送するイオン輸送光学系に関する。
一般に質量分析装置は、試料分子や原子をイオン化するイオン源と、イオンを質量電荷比m/zに応じて分離して検出する質量分析部と、イオン源と質量分析部との間に配置され、イオン源で生成されたイオンを質量分析部まで輸送するイオン輸送光学系とから構成される。MS/MS分析を行ったり反応ガスによる反応過程を利用したりする質量分析装置では、イオン源と質量分析部との間に衝突室を備えるが、質量分析部へイオンを輸送するという点で衝突室もイオン輸送光学系に含まれると捉えることができる。
ガスが残存しており圧力が比較的高い雰囲気の下でイオンを輸送する場合、例えばエレクトロスプレイイオン源(ESI)や誘導結合プラズマイオン源(ICP)などのイオン源が用いられる質量分析装置においては、通常、イオン光学輸送系として高周波電場によるイオンの収束作用を利用した高周波イオンガイドが用いられる。これは、高周波イオンガイドが静電型イオン輸送光学系と比較して、ガス衝突によるイオン輸送効率の低下が小さいためである。以前は、こうした高周波イオンガイドでは、残存ガス圧力が低いほど、つまり真空度が高いほどイオン輸送効率が高いと考えられていた。しかしながら、特許文献1等により明らかにされたように、実際には、高周波イオンガイドの内部空間を適当な圧力のガスで満たすことで、検出感度が向上することが見い出された。これが、コリジョナルクーリング(衝突冷却)と呼ばれる効果である。
衝突冷却により検出感度が向上するのは次のようなメカニズムによると考えられる。即ち、イオン通過経路に適度な圧力のガスが存在すると、そこに導入された分析対象のイオンとガスとの間で衝突が繰り返し起こる。そのため、イオンが進行するに伴い該イオンの運動エネルギーは徐々に低下し、高周波電場の作用によるイオンの振動振幅が小さくなって高周波イオンガイドの中心軸(イオン光軸)近傍に収束する。その結果、高周波イオンガイドから射出されるイオンビームのエミッタンスは小さくなり、四重極質量フィルタ等の質量分離部に対しより多くのイオンが供給され、イオン検出器に到達するイオンの量も増加する。
上記のような衝突冷却効果を利用した高周波イオンガイドにおいて、イオン輸送効率に影響を与える主なパラメータは、ガスの種類、ガス圧力、ガス領域長(高周波イオンガイドの長さ)、高周波イオンガイドに入射するイオンが有する運動エネルギー、である。
ガスの種類としては化学的に安定なものを使用するのが一般的である。特に質量電荷比の小さなイオンを分析するICP−MSでは、ヘリウム(He)や窒素(N2)のような分子量の小さなガスが好ましい。一方、ガス圧力、ガス領域長、及びイオンの運動エネルギーは、真空排気能力(真空排気ポンプの性能)、装置のサイズ、イオン輸送光学系の前段の電位などに依存する。上記4つのパラメータを適宜調整しイオン輸送効率が最大となる条件で高周波イオンガイドを動作させることで高効率のイオン輸送が可能となり、分析感度を高めることができる。
高周波イオンガイドで衝突冷却を利用する場合の問題点の1つは、イオンが高周波イオンガイドを通過し排出されるまでに掛かる時間(排出時間)が長くなり、極端な場合、イオンが高周波イオンガイドの内部に滞留してしまうことである。これは、衝突冷却が、高周波イオンガイドの中心軸に垂直な方向の運動エネルギーの低下だけでなく、イオン光軸方向(輸送方向)の運動エネルギー低下をも引き起こすためである。冷却の結果、イオン光軸方向の運動エネルギーが低下したイオンは排出に(つまりイオンガイドから出て来るのに)長い時間を要することになり、例えば液体クロマトグラフ質量分析装置等のように連続的に異なる試料を分析する場合に、クロマトグラムにゴーストピークが発生する要因となる。また高周波イオンガイドからのイオン排出時間が極端に長くなってその内部にイオンが滞留すると、空間電荷効果の影響によりイオンが空間的に発散しイオン輸送効率の低下を引き起こすことも考えられる。
上記問題を改善する方法として、高周波イオンガイドの内部にイオン光軸方向に電位勾配を有する直流的な加速電場を発生させ、衝突冷却でイオン光軸方向運動エネルギーが低下したイオンを加速することにより排出速度を上げる方法が知られている。このようなイオン光軸方向直流電場の発生方法として、次に挙げるような手法が知られている(例えば特許文献2、3など参照)。
(1)多重極ロッド電極からなる高周波イオンガイドにおいて、通常、イオン光軸に平行に配置されるロッド電極を傾けて配置することにより、イオン光軸方向に直流電位勾配を形成する。
(2)多重極ロッド電極の各ロッド電極表面にイオン光軸方向に連続的な抵抗体層を形成し、その両端に直流電位差を与えることにより、イオン光軸方向に直流電位勾配を形成する。
(3)1本のロッド電極をイオン光軸方向に分割された複数の小電極で構成した仮想多重極ロッド電極の構造とし、分割された各小電極にそれぞれ異なる直流電圧を与えることにより、イオン光軸方向に直流電位勾配を形成する。
(4)多重極ロッド電極の隣接ロッド電極間に、上記(1)〜(3)のいずれかの構成による補助ロッド電極を配置してこの補助ロッド電極により、イオン光軸方向に直流電位勾配を形成する。
上述したように高周波イオンガイドにおいてイオン光軸方向に加速直流電場を形成することにより、イオンの排出時間を短縮することができる。こうした手法は、残存するガスが多いために圧力が比較的高い雰囲気の下でイオンを後段へ輸送する場合のみならず、三連四重極型質量分析装置において衝突室内でプリカーサイオンを衝突ガスに衝突させて衝突誘起解離(CID)によりプロダクトイオンを生成させる際にも有用である。
なお、イオン光軸方向の直流電場はイオンの排出時間を短縮する以外の目的で使用される場合もある。例えば特許文献4などに開示された質量分析装置では、衝突冷却させたイオンをイオンガイド後部に一旦蓄積し、蓄積したイオンを所定のタイミングで一斉にパルス状(パケット状)に送り出して後段のイオントラップや飛行時間型質量分析計へ導入するようにしている。この場合のイオン光軸方向の直流電場の作用は、イオンをイオンガイド内部に蓄積するために後端部ではイオンを前方側に押し返しつつ堰き止めることであり、またこの堰き止めが解除されたときにイオンを一斉に加速することである。
米国特許第4963736号明細書 米国特許第5847386号明細書 米国特許第6462338号明細書 特開2002−184349号公報
近年、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせたクロマトグラフ質量分析装置では、連続的に供給される試料中のごく微量な成分を検出するという要求が非常に高まっており、そのためにイオン輸送光学系においてはイオン輸送効率を一層高めることが必要になってきている。衝突冷却を利用した高周波イオンガイドでは、イオン光軸方向の直流電場が用いられる場合でも、その目的は専らイオン排出時間の短縮化やイオンの一時的蓄積などである。そのため、イオンの輸送効率を向上させるという観点では、直流電場は必ずしも有効に利用されているとは言えない。
本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、高周波電場と衝突冷却とを利用して連続的に導入されるイオンを後段へ輸送する高周波イオンガイドを備えた質量分析装置において、イオン光軸方向の直流電場を適切に活用して高いイオン輸送効率を達成し、分析感度の向上を図ることを主たる目的としている。
ガスとの衝突を利用してイオンを冷却するには、イオンが或る程度の速度で進行することが必要であり、またイオンガイド内部にイオンが滞留するのを回避するには加速電場によりエネルギーを与える必要がある。ところが、衝突により十分に冷却され高周波電場によりイオン光軸付近に収束された状態のイオンが加速電場により無理に加速されると、冷却ガスに衝突してイオン光軸に直交する方向の速度成分を持ち、却って発散する(イオン光軸から遠ざかる)ことになる。そこで、本願発明者は、イオンガイドにおいてイオンが通過するイオン輸送領域を一体として捉えるのではなく、イオン光軸方向に複数に分割し、分割した各領域毎にイオン輸送効率を上げるという観点から最適となる直流電場を設定することに想到した。
上記課題を解決するために成された本発明は、高周波電場及び衝突冷却を利用してイオンを収束させつつ輸送するイオンガイドを具備する質量分析装置において、
前記イオンガイドは、イオン入射面からイオン出射面までのイオン輸送領域をイオン光軸に沿って複数に分割した各分割輸送領域毎に、イオン光軸方向に異なる電位勾配を有するイオン加速用の直流電場を形成するものであり、前記複数の分割輸送領域における前記直流電場の強度がイオンが進行するに従い小さくなるようにしたことを特徴としている。
即ち、本発明に係る質量分析装置において、前記イオン輸送領域はNを2以上の整数とした個の分割輸送領域に分割され、イオン入射面側からn番目の分割輸送領域のイオン光軸方向の直流電場の強度をEnとしたときに、1≦n≦N−1に対してEn>En+1となるように各分割輸送領域のイオン光軸方向直流電場の強度を設定した構成とすることができる。
上記イオンガイドにおいて、衝突冷却に利用されるガス(冷却ガス)は、イオンとともに導入される空気や溶媒気化ガスである場合と、衝突励起や反応を生じさせるために積極的に外部から供給されるガスである場合とがある。ESI、ICP、大気圧化学イオン源(APCI)等の大気圧イオン源を用いた場合には、多段差動排気系の構成が採られることが多く、そうした構成ではイオン源に近い真空室内のガス圧は比較的高い。そうした真空室内に配置されたイオンガイドでは、イオンとともに前段の部屋から導入されるガスを冷却ガスとして利用することができる。MS/MS分析のためにイオンを衝突誘起解離させる衝突室内に配設されたイオンガイドでは、衝突ガス自体が冷却ガスとして作用する。また、ICP−MSにおいて妨害イオン除去の目的で導入される反応ガスも、冷却ガスとして作用する。
本発明に係る質量分析装置で用いられるイオンガイドにおいて最も単純で基本的な構成は、N=2の場合、つまり、イオン輸送領域が2つの分割輸送領域に分割されるものである。この場合、前半の分割輸送領域はイオンの衝突冷却が進行する領域であり、後半の分割輸送領域は衝突冷却が十分になされイオン光軸付近にイオンが収束した状態から外部へと送り出される領域である。
イオンガイドに入射する際にイオンは或る程度大きな運動エネルギーを持っている。そのため、イオンガイド前半部で冷却ガスと衝突するイオンは、衝突の角度によってはイオン光軸方向に直交する方向(動径方向)に比較的大きな運動エネルギーを持つことがある。そうしたイオンも効率良くイオンガイド下流へと輸送するためには、動径方向へ向かうイオンをイオン光軸方向へと加速する必要がある。このため、衝突冷却が進行するイオンガイドの前半の分割輸送領域では、相対的に大きなイオン光軸方向直流電場を形成する必要がある。これに対し、イオンガイドの後半の分割輸送領域まで進んだイオンは、それ以前の衝突冷却により、イオン光軸方向及び動径方向の運動エネルギーがともに小さくなっている。この状態で大きな直流電場によりイオンを加速すると、ガス衝突を介してイオン光軸方向から動径方向へと運動エネルギーが分与されてしまう。そうなると衝突冷却によるイオンビームの収束効果が減じられてしまうこととなり、イオン輸送効率は相対的に低下してしまう。そこで、十分に衝突冷却されたイオンがイオン光軸付近に収束した状態をできるだけ保ったままイオンガイドから出射させるために、イオンガイドの出射面に近い分割輸送領域では、前半の分割輸送領域に比べてイオン光軸方向直流電場の強度を相対的に下げる。
なお、ここでいう電場強度は、分割輸送領域のイオン光軸方向の両端に与えられる電位の差ΔV、その分割輸送領域のイオン光軸方向の長さLに対し、|ΔV/L|で求まる値である。
本発明に係る質量分析装置によれば、衝突冷却によりイオン光軸付近に十分に収束されたイオンが空間的に広がらずにイオンガイドから出射されて後段へと送られる。また、衝突冷却によりイオンの運動エネルギーが減じすぎて、イオンガイド内部に滞留することも回避することができる。これにより、従来に比べてイオンの輸送効率が一層向上し、より多くの量のイオンを後段の、例えば四重極質量計(マスフィルタ)等の質量分離器へと送り込むことができ、結果的に、イオンの検出感度を向上させることができる。
衝突冷却によりイオン光軸付近に収束されたイオンを発散させないためには、イオン出射面側に位置する分割輸送領域におけるイオン光軸方向直流電場の強度をできるだけ小さく、好ましくはゼロ又は殆ど無視できる程度(つまり略ゼロ)にし、イオンガイドの後段に配設された電極の電場の作用によりイオンガイドからイオンの引き出しを行うようにするとよい。つまり、イオンガイド自体で形成する直流電場の作用でイオンを出射させるのではなく、むしろ後段の電極で形成される直流電場の作用でイオンガイドからイオンを引き出すようにするとよい。但し、そうした引き出し電場によってイオンを効率よく取り出すためには、引き出し電場がイオンガイドの後半の分割輸送領域中に有効に(引き出し用の電位勾配を形成できる程度に)入り込むようにする必要がある。そのためには、イオンガイドの後半の分割輸送領域の領域長がイオンガイドの開口径と比べて極端に長くならないようにするとよい。
本発明に係る質量分析装置において、イオン輸送領域をイオン光軸に沿って複数に分割し、分割輸送領域毎に異なる強度の直流電場を形成するには、具体的には様々な形態をとることができる。即ち、衝突冷却のための冷却ガスが存在する雰囲気中に配設された電極部の構成としては、従来から知られている、イオン光軸方向に電位勾配を有する直流電場を形成可能な各種の構成を採用することができる。
例えば、イオン光軸に沿って並ぶ複数の電極板(又は「板」とは呼べない程度の厚さを有する金属ブロック)からなる仮想ロッド電極をイオン光軸の周りに複数本配置した仮想多重極ロッド電極の構成、抵抗体層を表面に設けた略円筒状の抵抗体ロッド電極をイオン光軸の周りに複数本配設した多重極ロッド電極の構成、高周波電場を形成するための主ロッド電極の間に上記のような仮想ロッド電極や抵抗体ロッド電極を補助ロッド電極として配置した構成、などを用いることができる。
また、3以上に分割された分割輸送領域毎に適宜直流電場の強度を設定するようにしてもよい。この場合、イオン入射面側からN−1番目の分割輸送領域とN番目の分割輸送領域との境界付近でイオンの衝突冷却による収束が終了するようにN−1番目までの分割輸送領域の電場強度を設定すればよい。さらにそのN−1個の分割輸送領域の電場強度は、衝突冷却が進行中であるイオンに対するイオン輸送効率が最適になるように、それぞれ適宜に分配すればよい。N≧3とするのが適当である典型的な例として、イオンガイドのイオン光軸をずらした軸ずらし(Off-axis)型のイオンガイドが考えられる。軸ずらし型イオンガイドでは、入射端面から入射したイオンがほぼ直進する(高周波電場による振動を除く)範囲と、その直進するイオンの光軸に対し斜交する光軸を持つ軸ずらし範囲とでは、最適なイオン光軸方向直流電場が異なる。そこで、イオン直進範囲と軸ずらし範囲とをそれぞれ1つの分割輸送領域とし、それらの直流電場の強度を独立に設定することにより、軸ずらし型イオンガイドのイオン輸送効率を向上させることができる。
本発明に係る質量分析装置の一実施例(第1実施例)におけるイオンガイドの概略構成図及び直流電場の模式図。 第1実施例の質量分析装置の概略構成図。 第1実施例の変形例によるイオンガイドの概略構成図。 第1実施例の変形例によるイオンガイドの概略構成図。 第1実施例の変形例によるイオンガイドの概略構成図。 第2実施例の質量分析装置の概略構成図。 第2実施例によるイオンガイドの概略構成図。 第2実施例の構成における実測結果を示す図。 イオン軌道のシミュレーション結果を示す図。 冷却ガス(He)のガス圧とイオン強度との関係の実測結果を示す図。
[第1実施例]
本発明に係る質量分析装置の一実施例(第1実施例)について添付図面を参照して説明する。
図2は第1実施例による質量分析装置の概略構成図、図1は本実施例の質量分析装置におけるイオンガイドの概略構成図及び動作説明図である。この質量分析装置は大気圧イオン源としてESIイオン源を用いたものである。
図2に示すように、この質量分析装置において、試料液はESIプローブ21に導入され、該プローブ21から略大気圧雰囲気中に噴霧されることにより試料成分がイオン化される。発生したイオンはサンプリングコーン22を経て第1中間真空室24に導入され、さらにスキマー23を経て第2中間真空室25に導入される。第2中間真空室25内には後述するイオンガイド1が配置され、イオンはこのイオンガイド1で収束されつつ後段の高真空室26に送り込まれる。高真空室26内には質量分離部としての四重極質量フィルタ27とイオン検出器28とが配設されており、特定の質量電荷比を有するイオンのみが選択的に四重極質量フィルタ27を通過してイオン検出器28に到達して検出される。
上記構成では、ESIプローブ21は略大気圧雰囲気中に設置され、高真空室26内は図示しないターボ分子ポンプ等の真空排気ポンプにより高真空雰囲気に維持される。その両者の間に位置する第1中間真空室24、第2中間真空室25もそれぞれ図示しない真空排気ポンプにより真空排気され、高真空室26に向かって段階的に真空度が高くなる多段差動排気系の構成となっている。通常、第1中間真空室24内のガス圧は10〜100[Pa]程度、第2中間真空室25内のガス圧は0.1〜1[Pa]程度であるが、第2中間真空室25内には冷却ガス供給管29からHe等の冷却ガス(クーリングガス)が供給されることで、第2中間真空室25内のガス圧は1〜10[Pa]程度に高められる。
次に、本実施例の質量分析装置の特徴であるイオンガイド1について図1により詳述する。図1の(a)はイオンガイド1の電極部10及び回路部100の概略構成図、(b)は電極部10をイオン入射側から見た図、(c)はイオン光軸C上の直流電位を概略的に示した電位勾配図、(d)は各分割輸送領域の電場強度を概略的に示した模式図である。
図1(a)、(b)に示すように、イオンガイド1は、4本の仮想ロッド電極11、12、13、14からなる電極部10と、電極部10に電圧を印加するための回路部100と、を含む。4本の仮想ロッド電極11〜14は、イオン光軸Cを中心軸とする円筒の外周に接し、周方向に隣接する2本の仮想ロッド電極の角度間隔が90°であるように配置される。各仮想ロッド電極11〜14は、イオン光軸Cに沿って互いに所定間隔離して並べられた複数(この例では9枚)の略円盤形状の電極板(図1(a)中には111〜119のみを示している)からなる。
1本の仮想ロッド電極11、12、13、14を構成する各電極板(例えば111〜119)にはそれぞれ独立に電圧を印加可能であり、イオン光軸C方向に隣接する電極板はネットワーク抵抗104に含まれる同一抵抗値の抵抗器で接続されている。さらに、直流遮断用のコンデンサ105を介して各電極板は高周波電源部102に接続され、全ての電極板(例えば111〜119)に同一の高周波電圧が印加される。また、イオン入射面側(図1では左側)から1番目、6番目、9番目(イオン出口)の電極板(例えば111、116、119)はそれぞれ直流電源部101に接続され、制御部103の制御の下に直流電源部101からそれぞれ異なる直流電圧が印加される。
図示しないが、4本の仮想ロッド電極11〜14のうちのイオン光軸Cを挟んで対向する2本の仮想ロッド電極11、13に属する電極板には同一の高周波電圧VRF・cosωtが印加され、別の2本の仮想ロッド電極12、14に属する電極板には上記高周波電圧とは極性が反転した高周波電圧−VRF・cosωtが印加される。一方、直流電圧については、4本の仮想ロッド電極11〜14にあってイオン光軸Cに直交する同一面上に位置する4枚の電極板には同一の直流電圧が印加される。
前述のように、4本の仮想ロッド電極11〜14に印加される高周波電圧により、仮想ロッド電極11〜14で囲まれる空間、つまりイオン輸送領域にはいわゆる四重極高周波電場が形成される。イオンガイド1の電極部10に入射したイオンはこの高周波電場の作用により振動しながら進む。この高周波電場の作用は従来の高周波イオンガイドと同様である。
各仮想ロッド電極11〜14の1番目の電極板(例えば111)には直流電源部101より直流電圧V1が印加され、6番目の電極板(例えば116)には直流電源部101より直流電圧V2が印加され、9番目の電極板(例えば119)には直流電源部101より直流電圧V3が印加される。上述したようにイオン光軸Cの方向に隣接する電極板の間にはそれぞれ抵抗器が介挿されているため、2番目〜5番目の電極板(例えば112〜115)には、V2−V1=ΔV1の電圧差が抵抗比でそれぞれ分割された電位がV2に加算された電圧が印加される。それにより、1番目〜6番目の電極板(例えば111〜116)までの間の第1分割輸送領域#1では、イオン光軸C上の直流電位が図1(c)に示すような勾配を示す直流電場が形成される。これに対し、7番目〜8番目の電極板(例えば117〜118)には、V3−V2=ΔV2の電圧差が抵抗比でそれぞれ分割された電位がV3に加算された電圧が印加される。それにより、6番目〜9番目の電極板(例えば116〜119)までの間の第2分割輸送領域#2では、イオン光軸C上の直流電位が図1(c)に示すような勾配を示す直流電場が形成される。
イオン光軸C上の概略的な電位分布は、図1(c)に示すように、第1分割輸送領域#1と第2分割輸送領域#2とでそれぞれ直線状となり、それぞれの直線の傾きは電位差により決まる。第1分割輸送領域#1における電位勾配の傾きはΔV1/L1となり、第2分割輸送領域#2における電位勾配の傾きはΔV2/L2となる。L1、L2はそれぞれの分割輸送領域の領域長である。このΔV1/L1及びΔV2/L2が各分割輸送領域における直流電場の強度である。L1、L2は電極部10の構成で決まるパラメータであるが、ΔV1、ΔV2は印加する直流電圧V1、V2、V3により決まるパラメータであるので、直流電場の強度は制御部103からの指示により適宜に設定が可能である。そこで、図1(d)に示すように、第1分割輸送領域#1における電場強度が第2分割輸送領域#2における電場強度よりも大きくなるように、つまりΔV1/L1>ΔV2/L2となるように、また、次のような作用が発揮されるように印加電圧V1、V2、V3を設定しておくようにする。
本実施例の質量分析装置では、ESIプローブ21で正イオンが連続的に生成され、この正イオンが第2中間真空室25に入ると、イオンガイド1の電極部10に入射する。イオンは高周波電場により振動しつつ第1分割輸送領域#1中を進むが、その途中で冷却ガスと衝突を繰り返し運動エネルギーを徐々に失う。また、衝突によって運動エネルギーはイオン光軸C方向に直交する方向に分配されるが、相対的に大きな直流電場によりイオン光軸C方向に加速されるため、イオン光軸C方向の運動エネルギーはあまり減じず、イオンはイオン光軸C付近に収束する。領域長L1に対して電位差ΔV1を適切に設定すれば、第1分割輸送領域#1の終点に達した付近でイオンは十分に衝突冷却され、イオン光軸C付近に収束した状態となる。
イオンが第2分割輸送領域#2に入ると、イオン光軸C方向の電位勾配は急に緩くなり、イオンに対する加速は弱くなる。そのため、イオン光軸C付近に収束したイオンはそのまま比較的緩慢に進む。このときにもイオンは冷却ガスに衝突するが、もともとイオンが持つ運動エネルギーが大きくないので、衝突により分与されるイオン光軸Cから遠ざかる方向に向かうエネルギーは小さい。その結果、高周波電場による捕捉の作用が十分に機能し、イオンはあまり拡がることなく出射面から出て次の高真空室26へと送られる。したがって、電位差ΔV2はイオンが領域長L2の第2分割輸送領域#2を通り抜けることが可能な程度のエネルギーを付与できるものであれば十分である。
以上のように、この質量分析装置におけるイオンガイド1では、前半の第1分割輸送領域#1では相対的に大きな直流加速電場を形成することで、衝突冷却効果を十分に発揮させてイオンをイオン光軸C付近に収束させつつ、途中でイオンがエネルギーを完全に失って滞留することを防止することができる。一方、後半の第2分割輸送領域#2では相対的に小さな直流加速電場を形成することで、それ以前にイオン光軸付近に十分に収束したイオンが拡がることを避けつつ、確実にイオン出射面まで移動させることができる。それによって、高い輸送効率でイオンを輸送して後段へと送ることができる。
上述したように第1分割輸送領域#1に形成した直流電場はイオンに運動エネルギーを付与しイオンが滞留することを防止する作用を有するが、このイオンガイド1はイオンの排出速度を短縮することを意図した構成を有するものではない。イオンの排出速度を短縮するためであれば、第2分割輸送領域#2のイオン光軸C方向の直流電場の強度E2は第1分割輸送領域#1のイオン光軸方向の直流電場の強度E1よりも大きくすることが望ましい。これは、イオンの速度が落ちる後半部でより大きな加速電場を与えることが排出時間を短縮するのに有効であるからである。しかしながら、後述するような実験結果やイオンの挙動の定性的解析からの知見によれば、イオン輸送効率という観点ではE2>E1とすることは逆効果である。上記実施例のようにE2<E1に設定することは、排出時間を短縮するという点では不利であるが、イオン輸送効率を上げるには効果的である。
実際の装置において、電場強度E1、E2を決める電圧V1、V2、V3の値を予め実験的に決めておくことができることは後述の説明から明らかである。
なお、電極部10においてイオン光軸Cと各電極板とは離れており、またイオン光軸Cに沿った両端部では端縁場の影響があるため、図1(c)に示した電位分布(勾配)や図1(d)に示した電場強度は厳密なものではなく、あくまでも理解を容易にするために単純化した図である。これは、以下の図3(c)、(d)及び図7でも同様である。
[第1実施例の変形例]
上記第1実施例で説明したイオンガイド1の変形例を図3〜図5に示す。
第1実施例では、仮想ロッド電極11〜14に直流電圧を重畳させた高周波電圧を印加することにより、仮想ロッド電極11〜14で囲まれる空間に高周波電場と直流電場とを形成していた。これに対し、図3に示した構成では、高周波電場を形成するための主ロッド電極31〜34と別に、直流電場を形成するために第1実施例と同様の仮想ロッド電極からなる補助ロッド電極11〜14を備える。主ロッド電極31〜34は円筒状(又は円柱状)の導電体であって、イオン光軸Cを取り囲むように4本配置された一般的な四重極ロッド型の構成である。一方、補助ロッド電極11〜14の各電極板にはネットワーク抵抗104を介して直流電源部101からそれぞれ直流電圧が印加され、それによって第1実施例と同様に、2つの分割輸送領域#1、#2に所定の強度の直流電場が形成される。
図4及び図5は仮想ロッド電極に代えて、抵抗体層を表面に形成したロッド電極を用いた例である。
図4の例では、イオン光軸Cを取り囲むように配置される4本のロッド電極41〜44は、円筒形状の絶縁体の両端表面と中間(イオン入射面側からの距離が約L1でイオン出射面側からの距離が約L2である位置)の3箇所に導電体層(例えば411、412、413)が形成されている。また、隣接する導電体層の間には連続的に抵抗体層(例えば414、415)が形成されている。抵抗体層は例えば所定の抵抗率を有する抵抗体材料を絶縁体の表面に所定厚さで塗布したものである。したがって、導電体層411と導電体層412の間に抵抗が接続され、導電体層412と導電体層413の間に別の抵抗が接続されているのと同等である。各導電体層411、412、413に直流電源部101からそれぞれ所定の電圧を印加することで、第1実施例と同様に、2つの分割輸送領域#1、#2に所定の強度の直流電場を形成することができる。
図5の例は図4に類似しているが、各ロッド電極41〜44に中間の導電体層412を設けず、両端の導電体層411、413の間に連続的な抵抗体層416、417を設けている。抵抗体層416、417は連続的であるが、イオン入射面側からの距離が約L1(イオン出射面側からの距離は約L2)である位置を境界として、前半部の抵抗体層416と後半部の抵抗体層417とは異なる抵抗率の抵抗体材料からなり(又は同じ抵抗体材料で塗布厚さが異なり)、単位長さ当たりの抵抗値が異なる。この単位長さ当たりの抵抗値を適宜に調整し、各導電体層411、413に直流電源部101からそれぞれ所定の電圧を印加することで、第1実施例と同様に、2つの分割輸送領域#1、#2に所定の強度の直流電場を形成することができる。
なお、図4、図5に示したロッド電極を図3に示した構成の補助ロッド電極として用いることもできる。
[第2実施例]
次に、本発明に係る質量分析装置の別の実施例(第2実施例)であるICP−MSについて説明する。図6はこのICP−MSの概略構成図、図7はこのICP−MSに用いられるイオンガイドの概略構成図及び動作説明図である。上記第1実施例と同一又は相当する構成要素には同一符号を付して詳しい説明を略す。
このICP質量分析装置では、略大気圧雰囲気の下でプラズマトーチ50で生成されるプラズマ炎中で試料成分がイオン化され、発生したイオンがサンプリングコーン22、スキマー23を経て第2中間真空室25内に設置されたイオンガイドに挿入される。この構成では、プラズマ炎から発せられる光がイオンとともに第2中間真空室25内に侵入するため、これを排除するために軸ずらし型のイオンガイド6を設けている。上記第1実施例及びその変形例はイオンガイド1によるイオン輸送領域をイオン光軸C方向に2つに分割しているが、この第2実施例におけるイオンガイド6ではその分割数を3としている。このイオンガイド6の電極部60は第1実施例と同様に、イオン光軸Cを取り囲むように配置された4本の仮想ロッド電極61〜64(但し、図6、図7には仮想ロッド電極61、63のみが現れている)から構成される。
図7に示すように、軸ずらし型のイオンガイド6の電極部60は、イオン入射面におけるイオン光軸とイオン出射面におけるイオン光軸とが一直線上に位置していない。イオンは高周波電場に捉えられて進行するに伴い曲げられるが、イオンとともに入射してくる中性粒子や光は電場の影響を受けずに直進する。そのため、中性粒子や光はこのイオンガイド6の電極部60のイオン出射開口に到達せず、ノイズの原因となる中性粒子や光などを除去することができる。このイオンガイド6では、イオンが通過するイオン輸送領域は、入射面から入射して来たイオンが直進する入射直進範囲、イオンが斜め方向にスライド移動する軸ずらし範囲、出射面から出射する手前でイオンが直進する出射直進範囲、の3つに分けられ、入射直進範囲が第1分割輸送領域#1、軸ずらし範囲が第2分割輸送領域#2、出射直進範囲が第3分割輸送領域#3である。
図7では回路部の記載を省略してあるが、第1実施例において2つの分割輸送領域#1、#2の直流電場の強度が独立に制御可能であるのと同様に、この第2実施例では3つの分割輸送領域#1、#2、#3の直流電場の強度が独立に制御可能である。イオンが分割輸送領域#2の終了点付近に達するまでの間に、冷却ガスとの衝突によりイオンが十分に冷却されてイオン光軸C付近に収束するように、第1分割輸送領域#1と第2分割輸送領域#2の直流電場強度が設定されている。一方、第3分割輸送領域#3の直流電場強度は、その手前で衝突冷却によりイオン光軸C付近に収束された状態にあるイオンを発散させることなく放出できるように、相対的に小さく設定されている。
この例では、スキマー23のオリフィスを通してイオンを前段から引き出して加速しイオンガイド6の電極部60に入射させるために、電極部60とスキマー23との間に引き出し電極51を配置している。また、電極部60の出射面と後段の四重極質量フィルタ27との間には中間真空室と高真空室とを隔てる隔壁を兼ねるアパーチャ電極52が配置され、このアパーチャ電極52にはV4よりも低い直流電圧が印加され、この直流電圧により形成される電場は電極部60の出射面から電極部60の内部(4本の仮想ロッド電極61〜64で囲まれる空間)に入り込み、イオンを電極部60から引き出して四重極質量フィルタ27に送り込む作用を有する。
図6に相当するICP−MSの構成において、軸ずらし型のイオンガイド6の3つの分割輸送領域#1、#2、#3の直流電場強度を変化させたときに検出器で得られるイオン強度を実測した。この実測結果を図8に示す。ΔVin、ΔVoff、ΔVoutは分割輸送領域#1、#2、#3の両端の電位差(相対値)である。図8(a)はΔVoutを0(相対値)に固定した条件の下で、ΔVinとΔVoffを変化させたときの相対イオン強度の測定結果である。図8(b)はΔVoutを0.125(相対値)に固定した条件の下で、ΔVinとΔVoffを変化させたときの相対イオン強度の測定結果である。図8(c)はΔVinを0.17(相対値)に固定した条件の下で、ΔVoffとΔVoutを変化させたときの相対イオン強度の測定結果である。
これらの結果から、各分割輸送領域#1、#2、#3の両端の電位差ΔVin、ΔVoff、ΔVoutの最適な関係は、ΔVin>ΔVoff>ΔVoutであることが分かる。即ち、各分割輸送領域#1、#2、#3のイオン光軸C方向の直流電場の強度をそれぞれE1、E2、E3とすると、最適なイオン光軸C方向の直流電場の強度の大小関係はE1>E2>E3〜0であると結論付けることができる。
また、図7に示した軸外し型イオンガイド6においてイオン軌道をシミュレーションにより計算した結果を図9に示す。イオンはY(イットリウム)の正イオンを想定し、ΔVin、ΔVoff、ΔVoutはΔVin>ΔVoff>ΔVoutの下でイオン輸送効率が最大となるように調整した。また、第2分割輸送領域#2と第3分割輸送領域#3との境界付近で衝突冷却によるイオンビーム収束がほぼ終了するように、上記の電位差やガス圧、ガス領域長などを適当に調整した。
図9から、第1、第2分割輸送領域#1、#2において、冷却ガスとの衝突冷却によりイオンビームが空間的に収束される状況が観測できる。また、イオン光軸C付近に収束されたイオンは、第1、第2分割輸送領域#1、#2に比べてイオン光軸C方向の直流電場強度の小さい第3分割輸送領域#3において、ビーム径が広がることなく輸送されていることも分かる。さらにまた、第3分割輸送領域#3の終端付近に達したイオンは、アパーチャ電極に印加される引き出し電圧により形成される電場によって効率的に引き出されている。
以上のイオン軌道のシミュレーション計算からも、上述したような直流電場の強度の制御がイオン輸送効率を高めるのに有効であることが確認できる。
上記のイオンガイド1、6はいずれも冷却ガスによる衝突冷却を利用してイオンを収束させるものであるから、高いイオン輸送効率を達成するには冷却ガスのガス圧が重要な要素である。第1実施例の構成で、Heを冷却ガスとして導入した場合のガス圧と検出されるイオン強度との関係を実測により調べた結果を図10に示す。調べたイオンはYイオンとBi(ビスマス)イオンであり、図10の横軸はガス圧[Pa]、縦軸は相対イオン強度である。
この結果のように、検出感度の点からみて最適なガス圧の範囲があり、ガス圧がその範囲より低くても高くてもイオン輸送効率が下がるために検出感度が下がることが分かる。この例では、この最適なガス圧範囲はおおよそ2〜3[Pa]である。ガス圧が低い場合にはイオンガイドにおいて十分な衝突冷却が行われずにイオンの収束性が良好でないためにイオン輸送効率が下がり、逆にガス圧が高い場合にはイオンガイドにおいて衝突冷却によりイオンの運動エネルギーが奪われすぎてイオンガイドからイオンを引き出しにくくなるためにイオン輸送効率が下がると考えられる。こうした結果から、予め適切なガス圧の範囲を調べておき、このガス圧範囲に収まるように、真空排気能力と冷却ガス供給量とを決めるようにするとよい。
上記実施例では、イオンガイドによるイオン輸送領域をイオン光軸C方向に2又は3に分割しているが、4以上に分割して各領域毎に適切な電場を設定してもよいことは明らかである。また、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオンガイド
6…軸ずらし型イオンガイド
10、60…電極部
100…回路部
101…直流電源部
102…高周波電源部
103…制御部
104…ネットワーク抵抗
105…コンデンサ
11、12、13、14、61、62、63、64…仮想ロッド電極
21…ESIプローブ
22…サンプリングコーン
23…スキマー
24…第1中間真空室
25…第2中間真空室
26…高真空室
27…四重極質量フィルタ
28…イオン検出器
29…冷却ガス供給管
31…主ロッド電極
41…ロッド電極
411、412、413…導電体層
414、415、416、417…抵抗体層
50…プラズマトーチ
51…引き出し電極
52…アパーチャ電極

Claims (8)

  1. 高周波電場及び衝突冷却を利用してイオンを収束させつつ輸送するイオンガイドを具備する質量分析装置において、
    前記イオンガイドは、イオン入射面からイオン出射面までのイオン輸送領域をイオン光軸に沿って複数に分割した各分割輸送領域毎に、イオン光軸方向に異なる電位勾配を有するイオン加速用の直流電場を形成するものであり、前記複数の分割輸送領域における前記直流電場の強度がイオンが進行するに従い小さくなるようにしたことを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置であって、
    前記イオン輸送領域はNを2以上の整数とした個の分割輸送領域に分割され、イオン入射面側からn番目の分割輸送領域のイオン光軸方向の直流電場の強度をEnとしたときに、1≦n≦N−1に対してEn>En+1となるように各分割輸送領域のイオン光軸方向直流電場の強度を設定したことを特徴とする質量分析装置。
  3. 請求項2に記載の質量分析装置であって、
    イオン出射面側に位置する分割輸送領域におけるイオン光軸方向直流電場をゼロとし、該イオンガイドの後段に配設された引き出し電極の引き出し電場の作用により前記イオンガイドからイオンの引き出し行うことを特徴とする質量分析装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量分析装置であって、
    前記イオンガイドは、衝突冷却のための冷却ガスが存在する雰囲気中に配設された電極部と、該電極部に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含み、
    前記電極部は、イオン光軸に沿って並ぶ複数の電極板からなる仮想ロッド電極がイオン光軸の周りに複数本配置された仮想多重極ロッド電極を含むことを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量分析装置であって、
    前記イオンガイドは、衝突冷却のための冷却ガスが存在する雰囲気中に配設された電極部と、該電極部に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含み、
    前記電極部は、抵抗体層を表面に設けたロッド電極がイオン光軸の周りに複数本配置されてなることを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量分析装置であって、
    前記イオンガイドは、衝突冷却のための冷却ガスが存在する雰囲気中に配設された電極部と、該電極部に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含み、
    前記電極部は、高周波電場を形成するための複数のロッド電極からなる主電極部と、該主電極部の隣接するロッド電極の間に配設され直流電場を生成する補助電極とを含み、該補助電極はイオン光軸に沿って並ぶ複数の電極板からなる仮想ロッド電極がイオン光軸の周りに複数本配置された仮想多重極ロッド電極であることを特徴とする質量分析装置。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量分析装置であって、
    前記イオンガイドは、衝突冷却のための冷却ガスが存在する雰囲気中に配設された電極部と、該電極部に直流電圧を印加する電圧印加部と、を含み、
    前記電極部は、高周波電場を形成するための複数のロッド電極からなる主電極部と、該主電極部の隣接するロッド電極の間に配設され直流電場を生成する補助電極とを含み、該補助電極は抵抗体層を表面に設けたロッド電極がイオン光軸の周りに複数本配置されてなるものであることを特徴とする質量分析装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の質量分析装置であって、
    前記イオンガイドは、イオン入射面のイオン光軸とイオン出射面のイオン光軸とがずれた軸ずらし型のイオン光学系であり、前記複数の分割輸送領域の少なくとも1つが軸ずらし輸送領域であることを特徴とする質量分析装置。
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