以下、本発明を詳細に説明する。なお本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明において(a)熱可塑性樹脂は、溶融成形加工できる合成樹脂のことである。
その具体例としては、例えば、非液晶性半芳香族ポリエステル、非液晶性全芳香族ポリエステルなどの非液晶性ポリエステル樹脂、液晶ポリマー(液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステルアミド樹脂など)、ポリカーボネート、脂肪族ポリアミド、脂肪族−芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる(“/”は共重合を表す。以下同じ)。
上述した熱可塑性樹脂のうち機械的性質、成形性などの点から非液晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等の液晶ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、から選ばれる1種または2種以上の混合物が好ましく用いられ、なかでもポリアミド樹脂、非液晶性ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂等の液晶ポリマー、ポリアリーレンスルフィド樹脂が特に好ましく用いられる。
さらに非液晶性半芳香族ポリエステルの具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等が挙げられる。上記のうち機械的性質、成形性などの点からポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびポリエチレンテレフタレートなどを好ましく用いることができ、なかでもポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられ、具体的にはナイロン6、ナイロン4・6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ポリ(メタキシレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ポリ(テトラメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)などの脂肪族−芳香族ポリアミド、およびこれらの共重合体が挙げられ、共重合体として例えばナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などを挙げることができる。なお、共重合の形態としてはランダム、ブロックいずれでもよいが、ランダムが好ましい。上述したポリアミド樹脂のうち機械的性質、成形性などの点からナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン4・6、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)などのポリアミド樹脂を好ましく用いることができ、なかでも耐熱性の観点から、ナイロン4・6、あるいは、ポリノナンメチレンテレフタルアミド、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン12/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ナイロン6/ナイロン6・6/ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(メチルペンタメチレンテレフタルアミド)/ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)等の半芳香族ナイロンが好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、流動性、特性バラツキの低減(フィラーの良分散性)の観点から、好ましくはサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.0〜4.0の高分子量ポリアミド樹脂であり、より好ましくはその相対粘度が2.0〜3.0のものである。
また、液晶ポリマーの代表例としては、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミド樹脂などが挙げられ、具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなど、また液晶性ポリエステルアミド樹脂としては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位以外にさらにp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドである。
上述した液晶性ポリマーのうち、液晶性ポリエステル樹脂が好ましく、機械的性質、成形性などの点からp−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルが好ましく用いられ、なかでもp−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルが特に好ましく用いられる。
本発明に使用する液晶性ポリエステル樹脂は、成形時の歪みによる不良を抑制するため、溶融粘度は0.5〜80Pa・sが好ましく、特に1〜50Pa・sがより好ましい。また、流動性がより優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を40Pa・s以下とすることが好ましい。
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略す場合もある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンスルフィドが特に好ましく使用される。かかるポリフェニレンスルフィドは、下記構造式で示される繰り返し単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%以上の場合には、耐熱性が優れる点で好ましい。
また、かかるポリフェニレンスルフィド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。
かかるポリアリーレンスルフィド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは200〜270℃の範囲が選択して使用され、処理時間としては、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは2〜50時間の範囲が選択されるが、この両者をコントロールすることによって、目標とする粘度レベルを得ることができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率良く、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。かかる加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合に、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく使用することができる。例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが使用される。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
かかる有機溶媒による洗浄の具体的方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンスルフィド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンスルフィド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンスルフィド樹脂と水との割合は、水の多い方がよく、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンスルフィド樹脂200g以下の浴比で使用される。
ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンスルフィド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが用いられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンスルフィド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水で数回洗浄することが好ましい。上記水洗浄の温度は50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明で用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、成形時の成形品の歪みを低減し、かつ得られた樹脂組成物に組成ムラ(特性バラツキ)をなくすために300℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、30Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度の下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイド樹脂を併用して用いてもよい。
なお、ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5〜1.0mmの条件により測定することができる。
本発明に用いる(b)無機フィラーとしては、繊維状もしくは、非繊維状(板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など)のフィラーが挙げられ、具体的には例えば、繊維状フィラーとしてガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、チタン酸バリウムストロンチウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等が挙げられ、ガラス繊維あるいは炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記フィラーはエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物で被覆あるいは集束されていてもよい。
非繊維状フィラーとしてマイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、ナノカーボンチューブなどが挙げられる。また、金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
非繊維状フィラーについても可能なものは、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、シラン化合物、チタネート系化合物、アルミ系化合物などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
また、例えば、高い放熱性が必要な用途には、高熱伝導性フィラーが好ましく用いられ、具体的には、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物(アルミナ、酸化亜鉛等)、カーボン粉末、黒鉛、PAN系あるいはピッチ系炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化珪素、炭化珪素などが挙げられる。
ここで、上記金属粉、金属フレークおよび金属リボンの金属種の具体例としては、銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロムおよび錫などを例示することができる。
上記金属酸化物の具体例としては、SnO2(アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)およびZnO(アルミニウムドープ)などを例示することができ、これらはチタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
上記カーボン粉末は、その原料および製造法から、アセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラックおよびディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料および製造法については特に限定されないが、なかでもアセチレンブラックおよびファーネスブラックが特に好適に用いられる。また、カーボン粉末としては、その粒子径、表面積、DBP(ジブチルフタレート)吸油量および灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造され、市販されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性については特に制限はないが、強度および電気伝導度のバランスの点から、一次粒径の平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、さらには10〜70nmの範囲にあることが好ましい。また、表面積(BET法)が10m2/g以上、さらには30m2/g以上の範囲にあることが好ましい。さらに、DBP給油量が50ml/100g以上、特に100ml/100g以上の範囲にあることが好ましい。さらにまた、灰分が0.5%以下、特に0.3%以下の範囲にあることが好ましい。
かかるカーボン粉末は、チタネート系、アルミ系およびシラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。また、樹脂との溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
本発明においては強度と流動性の高位でのバランスのため、繊維状と非繊維状を2種以上併用することが好ましい。具体的には、(イ)黒鉛とアルミナ、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーおよび酸化亜鉛ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせ、あるいは(ロ)アルミナと炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーおよび窒化ケイ素ウィスカーから選択される一種以上の組み合わせ、あるいは(ハ)黒鉛と炭素繊維と、酸化亜鉛ウィスカーおよび/または非繊維状フィラーから選択される一種以上の組み合わせが挙げられる。
本発明において(a)熱可塑性樹脂と(b)フィラーとの比率は、用いるフィラーの特性を発揮し、かつ溶融加工性とのバランスの点から、配合される(a)熱可塑性樹脂と(b)無機フィラーの合計量100重量%に対して(a)熱可塑性樹脂10〜90重量%、(b)無機フィラー90〜10重量%であり、好ましくは(a)熱可塑性樹脂15〜70重量%、(b)無機フィラー85〜35重量%、より好ましくは、(a)熱可塑性樹脂20〜40重量%、(b)無機フィラー80〜60重量%が好ましい。
また、繊維状フィラーと非繊維状フィラーを併用する場合は、成形流動性、機械強度のバランスの点から、繊維状フィラーに対して非繊維状フィラーの方が多いことが好ましく、具体的には、2重量%以上多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましい。
本発明の特徴として用いる(b)無機フィラーにおいてフィラー間の空隙率を低下させ、より密に充填することで流動性と機械強度を高位でバランス化させるため、特に温度変化での成形品歪みによる割れを抑制するため、粒径が広い範囲に亘って分布していること、特にフィラー間の空隙率が低下し、より密に充填せしめるには、無機フィラーの粒径分布において大きい粒径と小さい粒径の粒径比が大きいことが好ましく、具体的にはレーザー光回折法(無機フィラーが非繊維状フィラーの場合)と組成物を灰化し、走査型電子顕微鏡観察によって測定(無機フィラーが繊維状フィラーの場合)された累積粒度分布曲線より得られる累積度95%粒度(D95)と累積度5%粒度(D5)の比(D95/D5)が30以上であることが必須であり、好ましくは、33以上、さらには35以上である。上限としては特に限定しないが、生産性等を考慮すると500である。
さらに個々のフィラー特性を細密充填化により、最大限に発揮させるため、レーザー光回折法(非繊維状フィラー)および組成物を灰化し、走査型電子顕微鏡観察(繊維状フィラー)によって得られた(b)無機フィラーの平均粒子径(D50)が0.5〜80μmであることが好ましく、3〜70μmがより好ましく、5〜60μmがさらに好ましい。
本発明で用いるフィラーを上記のような粒度分布にするには、例えば平均粒径や粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用したり、篩い分け等により粒度毎に分画したものを、所望の粒度分布になるよう混合する方法、粒径分布の異なるフィラーを2種以上併用する方法などが採用できる。
本発明の特徴として用いる(b)無機フィラーにおいて、上記のような粒度分布にする手法として(b)無機フィラーとして平均粒子径(D50)が3倍以上異なる少なくとも2種以上の無機フィラーを配合することが好ましく、3.5倍以上異なることがより好ましく、4倍以上異なることがさらに好ましい。
本発明の特徴として用いる(b)無機フィラーにおいて、上記のような粒度分布にする手法として少なくとも(b1)平均粒子径(D50)が0.5〜7μmの無機フィラーと(b2)平均粒子径(D50)が7〜80μmの無機フィラーの2種以上を配合することが好ましく、(b1)無機フィラーの平均粒子径(D50)が1〜4μmと、(b2)無機フィラーの平均粒子径(D50)が8〜70μmの2種以上を配合することがより好ましく、(b1)無機フィラーの平均粒子径(D50)が2〜5μmと、(b2)無機フィラーの平均粒子径(D50)が9〜60μmの2種以上を配合することがさらに好ましい。
また、配合量の多い2種の(b)無機フィラーの配合量を比較した際に、平均粒子径(D50)の小さい無機フィラーの配合量が、平均粒子径(D50)の大きい無機フィラーの配合量より多いことが機械強度、成形品充填密度バラツキの点から好ましく、具体的には、2重量%以上多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましい。また、配合量の多い2種の(b)無機フィラーの配合量を比較した際に、平均粒子径(D50)の大きい無機フィラーの配合量が、平均粒子径(D50)の小さい無機フィラーの配合量より多いことが薄肉の成形品を製造する際の樹脂組成物の流動性の点から好ましく、具体的には、2重量%以上多いことが好ましく、5重量%以上多いことがより好ましい。
なお、上記粒度分布は、無機フィラーが非繊維状無機フィラーの場合は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される各粒子径区間における粒子量(%)をプロットした曲線により示されるものであり、累積粒度分布曲線は、その粒子径以下の粒子量(%)を累積した曲線であり、特定の粒子径以下の粒子量が全体の何%であるかを表わすものである。
レーザー光回折法による測定は、水または溶剤等の分散可能な液体を分散媒として濃度100ppmでレーザ回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100)を用いて測定する。
無機フィラーが繊維状無機フィラーの場合の粒径、粒度分布は、樹脂組成物を灰化した物を100mg採取し、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S2100A)を用いて観察、10000倍で写真撮影し、ランダムに500本サンプリングし、各繊維(粒子)の最長部の長さを粒子径として算出し、各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D95とD50およびD5として算出する。
非繊維状フィラーと繊維状フィラーを両方配合している場合は、配合する前の非繊維状フィラーのレーザー光回折法により得られる分布曲線、電子顕微鏡で観察した分布曲線を配合比率でかけあわせた分布曲線から、非繊維状フィラーと繊維状フィラーの分布を複合した場合のD95とD50およびD5を求める。
また、本発明には、フィラー界面の接合性および加工時の流動改良性付与の観点から、以下の(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルを添加することが好ましい。このような添加剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウムなどの脂肪酸金属塩、およびその誘導体、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアレートなどの、ステアリン酸エステル、ミリスチン酸ミリスチルなどのミリスチン酸エステル、モンタン酸エステル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、カプリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチドデシル、オレイン酸イソブチルなどの脂肪酸の一価アルコールエステルおよびその誘導体、フタル酸ジステアリル、トリメリット酸ジステアリル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸エステル、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルグリコール、フタル酸2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシルなどの多塩基酸の脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸・ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノ・ジグリセライド、ステアリン酸・オレイン酸・モノ・ジグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどのグリセリンの脂肪酸エステルおよびそれらの誘導体、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセキスオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシメチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシメチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシメチレンソルビタンテトラオレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸エステル、およびそれらの誘導体、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、ステアリルエルカミドなどのアミド基含有化合物、ノボラックフェニール型、ビスフェノール型単官能および多官能エポキシ系化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルなどのリン酸エステルが挙げられる。
特にリン酸エステルについては、リン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルから選ばれ、好ましくは、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
まず前記式(1)で表されるリン酸エステルの構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は分散性の点から40以下が好ましい。
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また前記式(1)の式中、R1〜R8は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる芳香族基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられ、なかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
このようなリン酸エステルの具体例としては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR−747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、中でも好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR−747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、最も好ましくはPX−200である。
本発明においてリン酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。このような添加剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂と(b)無機フィラーの合計量100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部、より好ましくは0.3〜6重量部の範囲が選択される。
(c)脂肪酸金属塩、エステル系化合物、アミド基含有化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステルの添加量が本発明の範囲より多すぎる場合、得られた成形品表面にブリードアウトしてくると共に、それによって熱可塑性樹脂とフィラー界面の剥離を引き起こし、機械物性が低下する傾向にある。
本発明で用いる(d−1)エポキシ基含有オレフィン共重合体は、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体である。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、前述の如きα−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用な(d−1)エポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル等を共重合することも可能である。
本発明においては特にα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須成分とするオレフィン系共重合体の使用が好ましく、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を必須共重合成分とするオレフィン系共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、
(Rは水素原子または低級アルキル基を示す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。 α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましく用いられる。
また、本発明で特に有用な(d−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、エチレンおよび炭素数3〜20を有する少なくとも1種以上のα−オレフィンを構成成分とする共重合体である。上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとして、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。
本発明の(d)オレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下MFRと略す。:ASTM D 1238、190℃、2160g荷重)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなる場合もあるので注意が必要である。
本発明の(d)オレフィン系樹脂の密度は800〜870kg/m3が好ましい。密度が870kg/m3を越えると低温靭性が発現し難く、800kg/m3未満ではハンドリング性が低下するため好ましくない。
(d)オレフィン系樹脂の添加量は、(a)熱可塑性樹脂と(b)無機フィラーの合計量100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部の範囲が選択される。オレフィン系樹脂が1重量%より小さすぎると柔軟性及び耐衝撃性の改良効果が得にくく、逆に、20重量%より多すぎると熱可塑性樹脂本来の熱安定性が損なわれるばかりでなく、溶融混練時の増粘が大きくなり、射出成形性が損なわれる傾向が生じるため、好ましくない。
更に、本発明においては、上記の如く(d−1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と(d−2)エチレン・α−オレフィン系共重合体を併用して用いることが必要であり、その併用割合は、両者の合計に対し、(d−1)成分が5〜60重量%、(d−2)成分が95〜40重量%であり、好ましくは(d−1)成分が10〜50重量%、(d−2)成分が90〜50重量%であり、更に好ましくは(d−1)成分が10〜40重量%、(d−2)成分が90〜60重量%である。(d−1)成分が、5重量%より小さすぎると熱可塑性樹脂への分散性がが得られにくい傾向にあり、また、60重量%より多すぎると溶融混練時の増粘が大きくなる傾向にある。
本発明における樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。 本発明の樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(a)成分、(b)成分中および、(c)成分および(d)成分などのその他の必要な添加剤を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。また、(b)フィラーを添加する場合、特に繊維状フィラーの繊維の折損を抑制するために好ましくは、(a)成分、(d)成分およびその他必要な添加剤を押出機の元から投入し、(b)および(c)成分をサイドフィーダーを用いて、押出機へ供給することにより調整される。
樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”(R)タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
また、(d)オレフィン系樹脂を添加する場合、例えば、単軸、二軸、三軸押出機、およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができるが、(d)オレフィン系樹脂の分散をより細かくするには、せん断力を比較的強くした方が好ましい。具体的には、ニーディング部を2箇所以上有する2軸押出機を使用して、混合時の樹脂温度が(a)熱可塑性樹脂の融解ピーク温度+10〜70℃となるように混練する方法が得られた組成物の冷熱サイクルによるウエルド強度保持の点から好ましい。 また、フィラーを多量に添加する場合、例えば配合量が(a)100重量部に対して150重量部を越える(b)無機フィラーを配合するフィラー高充填樹脂組成物を得る方法として、例えば、特開平8−1663号公報の如く、押出機のヘッド部分をはずして押し出し、粗粉砕、均一ブレンド化する方法、あるいは、原料を圧縮成形して錠剤化する方法が挙げられる。特に原料を圧縮成形して錠剤化する方法が、得られた組成物の品質安定性の点から好ましい。
本発明の樹脂組成物の成形方法は、通常の成形方法(射出成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することが可能であるが、なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、高放熱用途、金属代替用途、セラミック代替用途、電磁波シールド用途、高精度部品(低寸法変化)、高導電用途等に有用であり、具体的には、各種ケース、ギヤーケース、LEDパッケージおよびLEDランプ関連部品、コネクター、リレーケース、スイッチ、バリコンケース、光ピックアップレンズホルダー、光ピックアップスライドベース、ランプリフレクター、各種端子板、変成器、プリント配線板、液晶パネル枠、パワーモジュールおよびそのハウジング、プラスチック磁石、半導体、液晶ディスプレー部品、投影機等のランプカバー、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、アクチュエーター、シャーシ等のHDD部品、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・デジタルビデオディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、印字ヘッドまわりおよび転写ロール等のプリンター・複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、モーターコア封止材、インシュレーター用部材、パワーシートギアハウジング、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスィッチ基板、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ランプハウジング、点火装置ケース、空気圧センサー、ヒューズ用コネクター、車速センサーなどの自動車・車両関連部品、パソコンハウジング、携帯電話ハウジング、携帯電話基地局のアンテナケース、その他情報通信分野においてチップアンテナ、無線LAN用アンテナ、ETC(エレクトロリックトールコレクションシステム)用、衛星通信などのアンテナおよびその他の各種用途で有用に用いられ、特に小型精密化による製品設計自由度および成形品の急激な温度変化による成形品クラック発生の抑制、かつ機械強度、特性バラツキ低減に優れることから、特に成形品の形状自由度が要求され、金属代替が熱望されている自動車部品用途、電気・電子部品用途、熱機器部品用途等に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
参考例1 熱可塑性樹脂
PA(ポリアミド樹脂);ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸の等モル塩12重量%(360g)、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸を25重量%(750g)、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸を62重量%(1860g)の混合水溶液(固形原料濃度60重量%)を加圧重合缶に仕込み、攪拌下に昇温し、水蒸気圧3.43MPaで3.5時間反応させた後反応混合物を重合缶下部吐出口から吐出、回収した。ここで得られたポリアミドプレポリマの硫酸溶液相対粘度(1%濃度)は1.45であった。このものを真空下220℃/10時間固相重合することにより、相対粘度2.4、312℃のポリアミドを得た。
LCP(液晶ポリマー):攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶性ポリエステルはp−オキシベンゾエート単位がp−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位が4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して70モル%、テレフタレート単位がテレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対して65モル%からなり、Tm(液晶性ポリエステルの融点)は314℃であり、高化式フローテスターを用い、温度324℃、剪断速度1,000/秒で測定した溶融粘度が15Pa・sであった。
なお、融点(Tm)は示差熱量測定において、ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)とした。
PPS(ポリフェニレンスルフィド):調整撹拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.11kg(1.35モル)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.756kg(25.55モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄し、次に100℃に加熱されNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥して、乾燥PPSを得た。キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用いて、孔直径1.0mm×長さ10mmのオリフィスを使用し、樹脂温310℃、剪断速度1000/秒の条件で測定すると、PPSの溶融粘度は270Pa・sであった。
PBT(ポリブチレンテレフタレート):1100S(東レ社製)
参考例2 無機フィラー
AL−1(アルミナ):AL−32B(住友化学社製)平均粒子径(D50)2.9μm
AL−2(アルミナ):AL−33(住友化学社製)平均粒子径(D50)11.5μm
CFW−1(グラファイト):CFW−50A(中越黒鉛社製)平均粒子径(D50)48μm
CFW−2(グラファイト):BF−5A(中越黒鉛社製)平均粒子径(D50)5μm
BT−1(チタン酸バリウム):BT−05(堺化学工業社製)平均粒子径(D50)0.9μm
BT−2(チタン酸バリウム):BT−01(堺化学工業社製)平均粒子径(D50)0.2μm
CF(炭素繊維):MLD300(東レ社製)繊維状フィラー、繊維径7μm、平均繊維長(D50)150μm
GF(ガラス繊維):JAFT523(オーウェンス・コーニング社製)チョップドストランドガラス繊維、繊維径10μm、平均繊維長(D50)3000μm
参考例3 添加剤
HWE(モンタン酸エステルワックス):“リコワックス”E(クラリアントジャパン社製)
PX(芳香族縮合リン酸エステル):PX−200(大八化学工業社製、CAS No. 139189-30-3)融点95℃
EP(ビスフェノールA型エポキシ化合物):“JER”1004(ジャパンエポキシレジン社製)
参考例4 オレフィン系樹脂
オレフィン−1:エチレン/グリシジルメタクリレート=88/12重量%共重合体 MFR=3g/10分
オレフィン−2:エチレン/1−ブテン共重合体 密度864Kg/m3 MFR=3.5g/10分
実施例1〜13、 比較例1〜10
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2の無機フィラーおよび参考例3の添加剤をリボンブレンダーで表1に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きPCM30(2軸押出機;池貝鉄工社製、ニーディング1箇所)にて表1に示す樹脂温度でスクリュー回転数150rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。
実施例14
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2の無機フィラーをリボンブレンダーで表2に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きPCM30(2軸押出機;池貝鉄工社製、ニーディング1箇所)にて表2に示す樹脂温度でスクリュー回転数150rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。
実施例15〜18
参考例1の熱可塑性樹脂、参考例2の無機フィラーおよび参考例4のオレフィン系樹脂をリボンブレンダーで表3に示す量でブレンドし、3ホールストランドダイヘッド付きTEX30(2軸押出機;日本製鋼所社製、ニーディング2箇所)にて表3に示す樹脂温度でスクリュー回転数200rpmで溶融混練を行い、ペレットを得た。ついで130℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、後述する評価を行った。
(1)フィラー累積頻度分布
射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、表1の樹脂温度、金型温度の温度条件で、70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の成形品を作成し、突き出しピン側を表側として反ゲート側左側隅を1cm×1cmで切り出し、るつぼに入れて550℃×8時間電気炉で焼成する。その後、フィラー約0.05gを水50ccにいれて撹拌し、さらにスポイトで、予め100ccに“マイペット”(花王社製)2,3滴いれた界面活性剤希薄溶液を数滴(泡が立たない程度)いれ、超音波洗浄機で分散させた後、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−3100を用いて各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D95とD50およびD5を求めた。なお、繊維状フィラーが複合されているものに関しては、灰化した物を100mg採取し、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S2100A)を用いて観察、10000倍で写真撮影し、ランダムに500本サンプリングし、各繊維(粒子)の最長部の長さを粒子径として算出し、各粒子径区間における粒子量(%)をプロットし、その累積した分布曲線より、D95とD50およびD5として算出し、非繊維状フィラーの分布曲線と配合比率でかけあわせた分布曲線から、非繊維状フィラーと繊維状フィラーを複合した場合のD95とD50およびD5を求めた。
(2)引張強度
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度でASTM 1号ダンベル型試験片を作成し、ASTM D638に準拠して評価した。
(3)冷熱衝撃
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で中心部に2mmφ×10mm長の金属ピンをインサートした50×50×3mm厚の角形試験片(フィルムゲート)を50個作成し、冷熱衝撃器(ESPEC社製TSA−70L)にて冷熱衝撃試験を行った。
なお、試験条件は、常温(23℃)→5分で降温→−40℃で30分保持→5分で昇温→130℃で30分保持を1サイクルとして、50サイクルと100サイクル時の成形品樹脂部にクラックが発生した個数を測定した。
(4)充填密度
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表1に示す樹脂温度、金型温度で70mm×70mm×3mm厚の角形試験片を作成し、アルキメデス法により、密度測定を行った。100枚評価を行い、その密度の最大値と最小値の差を算出し、その値を密度バラツキとした(数値が大きいほど密度バラツキが大きい)。
(5)薄肉流動依存率
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表2に示す樹脂温度、金型温度で幅10mm、厚さ0.5mmと厚さ0.3mmの棒流動長測定金型で射出速度100mm/s、圧力98MPaで短冊状成形品を各20個作成した。次いで得られた成形品の流動末端までの長さを測定し、平均値をそれぞれ0.5mm厚流動長、0.3mm厚流動長とした。下記式(a)により0.3mm厚流動長を0.5mm厚流動長で除し、薄肉流動依存率を求めた(数値が大きいほど成形品厚みによる流動性低下が小さく、薄肉流動依存性に優れる)。
薄肉流動依存率=0.3mm厚流動長÷0.5mm厚流動長×100・・・(a)
(6)ウエルド疲労強度保持率
射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用いて表3に示す樹脂温度、金型温度で、中央部が樹脂会合(ウエルド)部になるように成形品両端にゲートが形成されたJIS4号引張試験用成形品を50個作成し、この成形品25個についてASTM D790に準拠し、曲げ強度の測定を行った。測定した曲げ強度をウエルド強度とした。
また、上記成形品の残り25個について成形品両端を治具により固定し、冷熱衝撃器(ESPEC社製TSA−70L)にて冷熱処理を行った。
なお、試験条件は、常温(23℃)→5分で降温→−40℃で30分保持→5分で昇温→130℃で30分保持を1サイクルとして、100サイクル冷熱処理を行った。この成形品25個について、ASTM D790に準拠し、曲げ強度の測定を行った。測定した強度を熱処理後ウエルド強度とした。下記式(b)により、熱処理後ウエルド強度をウエルド強度で除し、ウエルド疲労強度保持率を求めた(数値が大きいほど、熱処理による疲労が少なく、ウエルド疲労強度に優れる)。
ウエルド疲労強度保持率=熱処理後ウエルド強度÷ウエルド強度×100・・・(b)
表1〜表3の結果から明らかなように本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、高強度、耐冷熱衝撃性で、成形品間の特性バラツキが小さく、特性安定性に優れることがわかる。このことから、これら強度、耐冷熱衝撃性およびその特性の信頼性が特に必要とされる自動車用電装部品関連および電気・電子部品関連、特に筐体、モーターなどの用いる碍子などに有用である。