JP5247043B2 - 試料中のチオレドキシン類の濃度に関する情報取得装置、ストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法 - Google Patents

試料中のチオレドキシン類の濃度に関する情報取得装置、ストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法 Download PDF

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本発明は、チオレドキシン類の濃度に関する情報を取得するための情報取得装置、それを用いたストレスセンサ、ストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法に関する。より詳細には、チオレドキシンの酸化体と還元体を区別してこれらの濃度を測定する測定方法、及びこの測定方法を利用したチオレドキシン類の濃度に関する情報を取得するための装置およびその用途に関する。
個体や細胞が受けるストレスには、数多くの種類のストレスがある。また、それらに対する応答の機構は、互いに共通の要素があり、同時に多くのシグナル経路が活性化し、密接に関係しながら調節を行っている。これらストレスの中でも、酸化ストレスは、ストレスの中でも重要な位置を占める。酸化ストレスの原因としては、活性酸素種、紫外線、放射線、化学物質や、細胞内で活性酸素種を産生する刺激が挙げられる。酸化ストレスは、生体中の脂質、たんぱく質、DNAなどに修飾、障害を与える事が知られている。この程度が強度である場合には、細胞の機能障害や、細胞死を引き起こし、時には、発ガン、老化、動脈硬化、認知症、神経疾患の原因となる。一方では、この障害を修復する機構の存在も知られている。すなわち、酸化ストレスを受けた生体内において、抗酸化機構や抗酸化物質が誘導されることなどにより、障害を受けた物質の分子レベルでの修復が行われ、生体が防御される。この抗酸化物質の中でも、細胞内の抗酸化機構を担う代表的なたんぱく質のひとつとしてチオレドキシンが挙げられる。
チオレドキシンは、1964年ribonucleotide reductaseの補酵素として発見されたものである。この酵素は、分子量 12 kDa のたんぱく質で、活性部位に異種間でよく保存された-Cys-X-X-Cys- (Cys: システイン、X: 任意のアミノ酸)配列を有する。このチオレドキシンは、酸化ストレスを引き起こす原因等によって誘導されるため、チオレドキシン濃度が生体内の酸化ストレスによる炎症の程度を反映する。
このチオレドキシンの測定法として現在報告されているのは、抗原抗体反応を利用した酵素免疫定量法 (ELISA 法) である。例えば、非特許文献1は、ELISA 法を用い、血清中のチオレドキシン濃度が、C 型肝炎ウィルス感染患者の酸化ストレスの指標として有用であることを示している。
Yoshio Sumida, Toshiaki Nakashima, Takaharu Yoh, Yoshiki Nakajima, Hiroki Ishikawa, Hironori Mitsuyoshi, Yoshikuni Sakamoto, Takeshi Okanoue, Kei Kashima, Hajime Nakamura, Junji Yodoi Journal of Hepatology 2000, 33, 616-622.
非特許文献1に開示されるように、従来のチオレドキシン濃度の測定法は、 ELISA 法を使用している。この方法では、ターゲットであるチオレドキシンが抗体によって認識、捕捉され、捕捉されたチオレドキシンの量が標識等の利用により検出される。本発明者らが、ELISA法に関して検討したところ、ストレス度合の判断にバラツキが大きい場合があり、ストレスセンサとしては、更なる改良の余地があることが分かった。
そして、バラツキの原因に関して検討を進めたところ、ストレス度の判断に際しては、測定したチオレドキシン類の濃度が、酸化体であるのか還元体であるのかを区別して測定した方が、被験者のストレス度を的確に判断できるという認識にはじめて至った。ELISA法では、測定溶液中のチオレドキシンが酸化体であるか、還元体であるかを区別しないで測定する。このために、従来のチオレドキシンの測定法では、チオレドキシンの酸化体、還元体の濃度、もしくは、酸化体/還元体比を測定することが、原理的に不可能である。
本発明の目的は、試料溶液中に存在するチオレドキシンの酸化体と還元体を区別して、その濃度に関する情報を取得する情報取得装置を提供することにある。本発明の他の目的は、この酵素電極を用い、チオレドキシンの酸化体と還元体を区別して、これらの濃度や濃度比に関する情報の取得を可能とする装置を提供することにある。本発明の他の目的は、かかる情報取得装置によりチオレドキシンの酸化体と還元体の濃度比が測定可能であるという利点を利用して、ストレス度の分類のための情報を得ることのできるストレス度表示装置を提供することにある。
本発明の情報取得装置は、チオレドキシン類の濃度に関する情報を取得する情報取得装置であって、試料中におけるチオレドキシン類の酸化還元反応を利用して、該チオレドキシン類の酸化体の濃度と還元体の濃度の少なくとも一方を、区別して測定することを特徴とする情報取得装置である。また、本発明にかかるストレスセンサは、上記構成の情報取得装置と、ストレス度判定部とを有するストレスセンサである。
本発明のストレス度情報取得装置は、計測対象者のストレス度に関する情報を取得するためのストレス度情報取得装置であって、計測対象者由来の試料中におけるチオレドキシン類の酸化還元反応を利用して、該チオレドキシン類の酸化体の濃度と還元体の濃度の少なくとも一方を、区別して測定し、でのチオレドキシン類の酸化体の濃度、還元体の濃度及びこれらの濃度の比から選択される第1の情報と、前記第1の情報とストレス度合との関係に関する第2の情報とに基づいて、計測対象者のストレス度を判定するストレス度判定手段を有することを特徴とするストレス度情報取得装置である。
本発明のストレス度判定方法は、計測対象者のストレス度を判定するためのストレス度判定方法において、計測対象者からの試料中におけるチオレドキシン類の酸化還元反応を利用して、該チオレドキシン類の酸化体の濃度と還元体の濃度の少なくとも一方と、予め設定されている基準と、に基づいてストレス度を判定する工程を有することを特徴とするストレス度判定方法である。
本発明の酵素電極は、導電性部材と酵素とを有する酵素電極において、前記酵素がチオレドキシン類の酸化還元反応を触媒する酵素であることを特徴とする酵素電極である。
本発明のチオレドキシン類濃度の測定方法は、試料中のチオレドキシン類の濃度を測定する方法において、試料中におけるチオレドキシン類の酸化還元酵素の反応を利用して、該チオレドキシン類の酸化体の濃度と還元体の濃度の少なくとも一方を、区別して測定することを特徴とするチオレドキシン類の濃度の測定方法である。
本発明によれば、チオレドキシン類の濃度に関し、酸化体の濃度であるのか還元体の濃度であるかを区別することのできる情報取得装置等を提供できる。
本発明のチオレドキシン類の濃度に関する情報を所得するための情報取得装置は、試料中におけるチオレドキシン類の酸化体の濃度と還元体の濃度の少なくとも一方を区別して測定するための構成を有する。
かかる装置の好ましい態様は、チオレドキシン類の酸化体の濃度、還元体の濃度及びこれらの濃度の比から選択された項目の少なくとも1つを該チオレドキシン類の酸化還元反応を利用することにより測定するための構成を有する。かかる装置は、前記試料と、チオレドキシン類の酸化還元反応を触媒する酵素と、を反応させるための反応領域と、前記反応領域における前記試料と前記酵素の反応に基づいて前記項目の1以上を算出するための検出手段と、を少なくとも有する。
本発明におけるチオレドキシン類の濃度の測定や濃度に関する情報の取得には、試料中の濃度自体を求める場合や規定量の試料中の測定対象物(化合物)の絶対量を求める場合も含まれる。例えば、10ml血を採って、その中の絶対量を調べることも、本発明における濃度を測定していることに他ならない。
まず、チオレドキシン類について詳述する。チオレドキシンには、既述の2つのシステイン残基間で、ジスルフィド結合を作る酸化型と、ジチオールとなる還元型が存在する。このうち還元型は、抗酸化物質として機能し、単独で活性酸素種を消去するほか、ペルオキシレドキシンとの作用により、細胞内の活性酸素種を消去し、酸化体となる。一方で、酸化体は、チオレドキシン還元酵素の存在下、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)により還元体へと変換される。
チオレドキシン類の酸化還元反応を触媒する酵素は、チオレドキシン類が、酸化体、もしくは、還元体であることを区別し、その酵素に対応した反応を触媒する。このため、従来のELISA法では、原理的に不可能であったチオレドキシン類の酸化体の濃度、還元体の濃度、もしくは酸化体と還元体の濃度比を測定することができる。
この場合のチオレドキシンの酸化還元反応を触媒する酵素としては、チオレドキシン酸化酵素、チオレドキシン脱水素酵素、チオレドキシン還元酵素、ペルオキシレドキシンが適用でき、中でも、チオレドキシン還元酵素が好ましく用いられる。この酵素は、単独で用いてもよいし、他のチオレドキシンの酸化還元を触媒しない酵素とあわせて使用してもよい。特に、チオレドキシンが関与しない反応を触媒する酵素を、チオレドキシンの酸化還元反応を触媒する酵素と共役させて用いることは好ましい。この例としては、チオレドキシン還元酵素とフェレドキシン NADP+レダクターゼの組合せが挙げられる。
この場合のチオレドキシン類とは、チオレドキシン(TRX)に加えて、チオレドキシンスーパーファミリーと呼ばれるチオレドキシン用のドメインを持つ一連のたんぱく質群を含む。このチオレドキシンスーパーファミリー分子は、-Cys-X-X-Cys-からなる活性部位を持ち、活性部位のジスルフィド/ジチオール基によりその酸化還元能を担う分子である。また、チオレドキシンスーパーファミリーの中には、複数のチオレドキシンモチーフを持つものも含む。これらチオレドキシンスーパーファミリーの例としては、TRX、Sptrx、PDI、ERp72及びERdj5が挙げられる。
この場合の酵素反応による測定方法とは、チオレドキシン類の濃度測定のための反応に酵素反応が含まれている測定方法である。チオレドキシン類に酸化還元酵素を作用させる酵素反応及びチオレドキシン類の酸化還元反応にリンクした酵素反応の少なくとも一方を用いてチオレドキシン類の濃度が測定される。先に述べたとおり、チオレドキシン類の酸化還元酵素による反応に加えて、検出手段で検出可能な変化を取り出すための他の酵素反応をチオレドキシン類の酸化還元酵素反応にリンクさせてもよい。濃度測定のための酵素反応に用いる酵素は、担体に固定した状態で、すなわち固定化酵素として用いることができる。
酵素反応に基づく反応領域に得られる変化を検出するための検出法は特に限定されるものではない。検出法としては、好ましくは、酵素電極法、吸光度法(比色法を含む)、発光検出法が用いられ、さらに好ましくは、酵素電極法、比色法が用いられる。
この比色法の例としては、NADPHがNADP+に変化するときの340nmにおける吸光度変化を利用する方法や、このNADPHに加えて、色素を用いる方法が挙げられる。この色素の例としては、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)、ジチオスレイトールが挙げられる。
この場合の測定を行う際の環境は、特に限定されるものではないが、チオレドキシン類が液体中に存在する環境が好ましく用いられ、さらに水、アルコール類、イオン性液体を含む溶液がさらに好ましく用いられる。
酵素電極は、導電性部材とチオレドキシン類の酸化還元反応を触媒する酵素とを少なくとも有して構成される。酵素としては、必要に応じて、チオレドキシン類の酸化還元反応を触媒する酵素に加えて他の酵素を併用しても良い。
導電性部材は、酵素反応で生成した電気的な変化を外部回路に取り出して、これを測定可能とするためのもので、導電性が高く、酵素反応を行う条件下において充分な電気化学安定性を有する材料からなるものが利用される。このような導電性部材の構成材料の例としては、Au、Ptなどの金属、ポリアセチレン類、ポリアリーレン類などの導電性高分子、In、Sn、Znなどを含む金属酸化物などを挙げることができる。更に、導電性部材の構成材料の例としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン化合物などの炭素材料などを挙げることができる。あるいは、これらの2種以上の複合材料や、基体の表面に導電性材料の層を設けた複合材料でもよい。
導電性部材への酵素の固定化は、目的とする酵素電極の機能が得られるように酵素を固定できる方法であれば特に制限されず、公知の方法が利用できる。また、酵素とともに、酵素と導電性部材間の電子の受け渡しを促進させる、金属錯体、キノン類、複素環式化合物などのメディエータを併用しても良い。
上記の構成の酵素電極によりチオレドキシン類の酵素電極法を用いた情報取得装置を構成することができる。この情報取得装置は、以下の構成要素を少なくとも用いて構成することができる。
(1)試料溶液を収容し得る反応領域。
(2)反応領域中に設置された酵素電極。
(3)反応領域に収納された試料溶液と酵素電極との反応を電気的変化として検出することにより、先の挙げた項目の少なくとも1つの測定を行うための反応検出手段。
この装置を用いることで、チオレドキシン類の酸化体、還元体に関する濃度、並びに酸化体と還元体の濃度に関する比率の少なくとも1つ項目を測定することができる。
酵素電極法とは、電極反応で検出される信号に酵素反応が関与している測定法であり、具体的には電極上で反応する物質の濃度が酵素反応によって変化するものや、電極間の電気的な信号が酵素反応によって変化するものが挙げられる。これらの例としては、前者として、電極上における酸素や過酸化水素、もしくは、キノン類、金属錯体化合物を含む酸化還元物質の濃度が酵素反応と関連して変化するもの、後者としては、電極間のインピーダンスが酵素反応に関連して変化するものが挙げられる。また、この前者と後者の区別は便宜的なものであり、ある測定法が両者に属することを否定しない。また、この酵素電極において、酵素、あるいは酵素と電極間の電荷を媒介する物質の一方、もしくは両方は、電極に固定化されていてもよい。
電極を用いて測定を行う場合には、電極表面の粗化や微細な構造をもつ材料の形成により表面積を増大させること及び電極の表面にバックグラウンド電流を低減する処理を施すことが好ましく行われる。この処理の例としては、化学的に電極を修飾する方法や物理的に修飾することが挙げられる。具体例として、前者としては、チオール化合物やシラン化合物の吸着が挙げられ、後者としては、電極表面をフッ素樹脂膜や、透析膜で覆うことが挙げられる。またこれらの手法は、単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。
酵素電極を利用して、チオレドキシンの酸化体及び還元体の少なくとも一方が関与する酵素反応に基づく電気化学的変化を測定してチオレドキシンの酸化体及び還元体の少なくとも一方の濃度を算出することができる。この電気的変化としては、電流、電荷量、電位、電圧及びインピーダンスを挙げることができ、これらの1以上を測定し、その値からチオレドキシンの酸化体及び還元体の少なくとも一方の濃度を算出することができる。ここで測定される電流とは、電極上における物質の反応に起因する電流であってよく、これは、定常電流であっても過渡電流であってもよい。ここで測定される電荷量とは、観測される電流値の積算であってよく、これは、試料溶液中の特定の物質の全電解であっても、部分電解であってもよい。ここで測定される電位とは、酵素の活性中心の電位や、酵素反応に関与して酸化還元比が変化する化合物の電位が関与するものであってよく、これらは、静的なものでも動的なものであってよい。ここで測定されるインピーダンスとは、電極間のインピーダンスが酵素反応に関連して変化するものであってよく、インピーダンスのうち虚数成分、実数成分、あるいはこれらの組合せを用いて評価するものであってよい。
すなわち、酵素反応に伴う電気化学的変化を検出する場合は、かかる電気化学的変化を電流、電荷量、電位、電圧及びインピーダンスの少なくとも1種として検出し、所望とする酸化体または還元体の濃度を算出することができる。
電気化学的変化を検出する方法としては、以下の具体例を更に挙げることができる。
(A)チオレドキシン類の酸化体を還元する酵素反応に関連して移動する電子の量を、電流、電荷量で評価する方法。
(B)チオレドキシン類の酸化体を還元する酵素反応に関連して移動する電子の量を、媒介物質を利用して電極において電流、電荷量で評価する方法。
(C)チオレドキシン類の酸化体を還元する酵素反応に関連して酸化される媒介物質の酸化体/還元体の比を電極において、電流、電荷量、電位、電圧で評価する方法。
なお、上記の評価とは、予め設けた基準、例えば検量線に従って、測定により得られた電流、電荷量、電位、電圧から測定対象物質の濃度を算出することをいう。
測定されるチオレドキシン類の源は、特に限定されるものではないが、生体の体液、組織が好ましく用いられる。なかでも、動物の体液がさらに好ましく用いられ、そのなかでもヒトの体液が最も好ましく用いられる。この体液は、特に限定されるものではないが、血液、血液を構成する成分(血清、血漿を含む)、尿、唾液が好ましく用いられる。
この場合の装置においては、チオレドキシン類の測定を行う前後の、別途処理が好ましく行われる。この処理の例としては、分離、分画、ろ過、洗浄、抽出、精製、温度変化、分散、混合、沈殿、透析、蒸留、修飾(化学反応を含む)、脱酸素、脱泡、超音波処理、マイクロ波処理、磁場の印加を伴う処理、電解、電気泳動、クロマトグラムが挙げられる。必要に応じてこれらから選択された1つの処理を、あるいは2以上の処理を組み合わせて用いることができる。これらの前後処理を自動化して装置の一部として組み込む手法も好ましく用いられる。また、マイクロ流路等の微小な空間をこの前後処理、かつまたは、測定に利用することも好ましく用いられる。
酵素反応を用いる測定方法の具体例としては、チオレドキシン類の還元酵素(チオレドキシン還元酵素)を用いる測定方法がある。この測定方法では、試料に中に含まれるチオレドキシン類の酸化体に特異的にチオレドキシン還元酵素が作用し、還元体に還元される。その際の酸化還元反応を各種の検出法により検出して酸化体の濃度を、還元体と区別して求めることができる。更に、チオレドキシン類の酸化酵素を用いることで同様にして試料中の還元体の濃度を酸化体と区別して求めることができる。
更に、チオレドキシン還元酵素を用いてチオレドキシン類の還元体の試料中の濃度を求めることもできる。例えば、まず試料中の酸化体濃度を測定しておき、試料にチオレドキシン類を酸化する酸化剤を加えて試料中に存在する還元体を酸化体に変換し、余剰の酸化剤を酵素反応等で除去しておく。次に、試料中の酸化体の濃度を測定する方法と同様の濃度測定法を実施する。そして、検出された数値から酸化剤添加前の酸化体濃度を差し引くことで還元体の濃度を求める。
本発明のストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法は、以下の第1の情報と第2の情報から計測対象者のストレス度を判定するものである。
(1)計測対象者からの試料中におけるチオレドキシン類の酸化体と還元体とを区別してこれらの濃度を測定して得られる第1の情報。
(2)この第1の情報とストレス度との関係に関する第2の情報。
前記第1の情報には、チオレドキシンの酸化体の濃度、還元体の濃度及びこれらの濃度の比の少なくとも1つの項目を用いることができる。この装置は、好ましくは、チオレドキシン類の濃度に関する上記の項目の少なくとも1つを、第2の情報に基づいて分類して、計測対象者のストレス度を判定するためのストレス度判定手段を有する。このストレス度判定手段からストレスセンサのストレス度判定部を構成することができる。
かかる装置の構成ユニットのブロック図の一例を図13及び図14に示す。
図13に示す装置は、入力装置、CPU及び出力手段を少なくとも有し、必要に応じて設けられた記憶装置及び表示装置を更に有する。計測対象者からのチオレドキシン類の濃度の値または濃度を示すデータは入力装置により入力される。ここで、濃度を示すデータは、濃度測定に用いた検出法に対応した吸光度や電流値などである。CPUには、入力されたデータを予め設定された基準に基づいて処理して計測対象者のストレス度を分類して、判定するプログラムを書き込んである。このプログラムによって判定されたストレス度、すなわち判定結果は出力手段、すなわち判定結果出力手段により出力可能となっている。例えば、表示手段としてディスプレーを用いた場合には、判定結果をディスプレーに表示する。あるいは、出力手段から紙などの適当な媒体に判定結果を出力してもよい。
ストレス度を分類するための予め設定された基準は、統計学的に収集したデータに基づいて作成することができる。例えば、ストレス度を複数の段階にランク付し、各ランクに相当するチオレドキシン類の酸化体の濃度の範囲を統計学的に収集したデータに基づいて決定しておく。計測対象者からの試料中のチオレドキシン類の酸化体の濃度をこのランク付に応じて分類し、どのランクのストレス度を計測対象者が有するかをCPUで自動判定させる。このストレス度の分類、判定の指標とし、チオレドキシン類の酸化体の濃度、還元体の濃度及びこれらの濃度比の少なくとも1つの項目を用いることができる。また、必要に応じてチオレドキシン類(酸化体+還元体)の試料中での濃度も指標として追加利用可能である。
図13に示すように、記憶装置を設けておくことで、計測対象者からのチオレドキシン類の濃度に関するデータや、判定結果を記録しておくことができ、時間、日、週、月または年ごとの経時的変化に関するデータの作成をCPUに行わせることも可能となる。
図14に示す装置は、チオレドキシン類の試料中における濃度の測定を行う情報取得装置を更に有する。この情報取得装置として、上述した酵素反応を利用した測定を行う装置を少なくとも用いることが好ましい。
ストレス度情報取得装置で利用するチオレドキシン類の濃度に測定値は、以下のようにして求めたものを利用することができる。
(1)チオレドキシン類の酸化体の濃度
(1−1)試料を用いて測定したチオレドキシン類の酸化体の濃度。
(1−2)試料中に含まれる酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度から還元体の濃度を引いて得られる濃度。
(1−3)試料中に含まれる酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度と、酸化体と還元体の濃度比から得られる酸化体の濃度。
(2)チオレドキシン類の還元体の濃度
(2−1)試料を用いて測定したチオレドキシン類の還元体の濃度。
(2−2)酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度から酸化体の濃度を引いて得られる濃度。
(2−3)試料中に含まれる酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度と、酸化体と還元体の濃度比から得られる酸化体の濃度。
(3)チオレドキシン類の酸化体と還元体の濃度比
(3−1)試料を用いて測定した酸化体と還元体の濃度から求めた比。
(3−2)酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度と、酸化体の濃度から求めた比。
(3−3)酸化体と還元体の合計としてのチオレドキシン類全濃度と、還元体の濃度から求めた比。
(3−4)チオレドキシンの活性部位の電位、もしくは活性部位の電位に関連して電位が変化する物質の電位を測定して得られる比。
チオレドキシンの活性部位の電位、もしくは活性部位の電位に関連して電位が変化する物質の電位を測定して得られる比を求める方法としては以下の方法を挙げることができる。
まず、電位の測定は、チオレドキシンの活性部位と測定上充分な速度で電子移動を行う電極、もしくは、この活性部位と電極間の電気的な接続を可能とする物質が存在し、チオレドキシンの活性部位の電位を測定できる条件で行う。この条件下で、チオレドキシンの酸化体/還元体の比によって変化する電位をネルンストの式を用いて算出する。
ネルンストの式:
(E=E0+(RT/nF)ln(aO/aR
E:電極電位
0:標準電極電位
R:気体定数
T:絶対温度
n:反応に関与する電子数
F:ファラデー定数
O:酸化体の活量
R:還元体の活量
なお、チオレドキシン類の全量を測定する方法として、酵素を使用しない方法を組み合わせてもよい。そのような方法としては、酵素免疫測定法(ELISA)などを挙げることができる。
抗酸化物質であるチオレドキシンは、生体に酸化ストレスが加わると誘導され、その濃度が増大するため、非特許文献1のように酸化ストレスの指標として用いられる。しかし、この指標は、
1.酸化ストレスの発生、
2.生体による酸化ストレスの検知、
3.チオレドキシンの誘導、及び
4.チオレドキシンの濃度増大
のように、複数のステップを経由する間接的なものである。
このため、酸化ストレスの発生からチオレドキシンの濃度が増大するまでの間に時間差が発生し、また、これら複数のステップを経由する過程で個体によるレスポンスの差が生じ、結果として観測されるチオレドキシン濃度に個人差が生じるといった問題点がある。このために、この指標を基に、更に、精度の高いストレスの評価、疾患の診断、経過観察等を行うことが困難な場合があった。
そこで、本発明者らは酸化ストレスの発生とそれを評価するための指標との関係について検討した。その過程で、生体内のチオレドキシンの酸化体の濃度(あるいは酸化体/還元体比)は、以下の1から4のようにチオレドキシンの濃度と比較して少ないステップで応答する点に着目した。
1.酸化ストレスの発生。
2.チオレドキシン還元体による酸化ストレスの消去とチオレドキシン酸化体の生成。
3.チオレドキシンの酸化体の濃度(あるいは酸化体/還元体比)の上昇。
更に、生体による酸化ストレスの検知やチオレドキシンの誘導といった個人差が大きいと考えられる過程を含まない点に着目した。そして、これらの着目点に基づいて、チオレドキシンの酸化体の濃度、あるいは酸化体と還元体の濃度比を指標として酸化ストレスを評価する方法に到達した。
この方法では、上述のように指標が従来法と比較して酸化ストレスに対して直接的である。このため、酸化ストレスの印加から検知までの時間応答性に優れる。また、チオレドキシンの酸化体は、チオレドキシンが酸化を受けることによって生成し、加えられた酸化ストレスを直接に反映するために、従来のチオレドキシンの全体量を測定するよりも個人差が少ないといった特長を有する。その結果、より正確な酸化ストレスの評価、疾患の診断、経過観察等を行うことができる。
また、酸化ストレスに限らず多くのストレスに対する応答の機構は、互いに共通の要素があり、同時に様々なシグナル経路が活性化して密接に関連しあって調節を行っている。そのため、本発明にかかる酸化ストレスを評価できる手法によって、その他のストレスを評価することができる可能性がある。
この場合のストレス評価の指標としては、チオレドキシン類の酸化体の濃度、もしくは酸化体と還元体の濃度比を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、さらにはその他の指標と組み合わせて用いることが好ましい。組み合わせて用いる場合の評価方法の例としては、以下の方法を挙げることができる。
(1)x、yの2軸において存在する象限によってストレス度を分類して評価する方法。
(2)2軸のx、y座標と原点を頂点とする三角形の面積で評価する方法。
(3)図1のように2軸で座標上の位置を用いる方法。
(4)x、y、zの3軸において、x、y、z座標と原点を頂点とする四面体の体積によって評価する方法。
(5)図2のように多軸で描き出される図形の形状を用いてパターンを評価する方法。
チオレドキシンの酸化体と還元体の濃度比を単独指標とする場合で説明すると、統計学的に得られたデータから、かかる濃度比とストレスの程度(ストレス度)の関係を予め設定しておく。例えば、濃度比に応じてストレス度をAからDのストレス度の高い順に4段階とする。測定対象者由来の試料に含まれるチオレドキシンの酸化体と還元体の濃度比を、上記の方法で測定し、得られた測定値から測定対象者のストレス度がAからDのいずれかに分類する。この分類処理は、酸化体と還元体の濃度比の実測値を所定のプログラムに従ってコンピュータ処理することで自動的に行うことができる。この場合、コンピュータのCPUなどが分類手段を構成する。分類結果は、出力手段によって、紙や各種のディスプレーなどの所望とする媒体を介して出力してもよいし、記憶手段に記憶、蓄積させておき、必要に応じて取り出せるようにしておいてもよい。このようなストレス度情報取得装置の構成ユニットのブロック図の一例を図13に示している。
本発明のストレス度情報取得装置には、上記の分類手段及び分類結果出力手段に加えて、チオレドキシンの酸化体の濃度、還元体の濃度及びこれらの濃度比の少なくとも一つの項目を測定するための情報取得装置を有するものであってもよい。図14に、濃度情報取得装置を付加したストレス度情報取得装置の一例のブロック図を示している。
本発明のストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法は、疾患の診断、疾患の経過観察に有用なストレス度に関する情報の取得のために好適に利用できる。この疾患としては、チオレドキシン類の酸化体に関する濃度、チオレドキシン類の酸化体、還元体濃度に関する比率の変化を伴うものであれば特に限定されるものではない。この疾患の例としては、肺疾患、循環器疾患、肝疾患、消化器疾患、腎疾患、糖尿病、後天性免疫不全症候群、腫瘍、皮膚疾患が挙げられる。
本発明のストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法は、チオレドキシン類を医薬として使用する場合におけるチオレドキシン類の投与前にその効果を評価あるいは予測することや、投与後にその効果を評価あるいは予測する上で、好適に利用できる。
例えば、図13及び図14の装置においてストレス度情報取得装置で判定された計測対象者のストレス度に基づいて疾患の可能性を表示装置に表示させてもよい。この場合、ストレス度と疾患の相関を手統計学的に収集したデータに基づいて予め求めておき、このデータを利用して判定されたストレス度に応じて可能性のある疾患を選択するプログラムをCPUに組み込んでおくことでかかる処理を行うことが可能である。また、記憶装置に測定対象者の経時的なデータを記憶させ、計測対象者の経時的なストレス度の変化を出力可能としておき、この変化に基づいて関連する疾患の経過を計測時ごとに「経過良好」や「変化なし」などに、分類して表示するようにすることも可能である。かかる分類も、統計学的に収集したデータに基づいて作成した基準に応じて作成可能である。
本発明のストレス度情報取得装置及びストレス度判定方法は、チオレドキシン類を医薬として使用する場合におけるチオレドキシン類の投与前にその効果を評価あるいは予測することや、投与後にその効果を評価あるいは予測する上で、好適に利用できる。
例えば、図13及び図14に示す装置の記憶装置に、投薬が有効であるストレス度のパターンを記憶させておき、このパターンと計測対象者からのデータとを対比して、計測対象者における投薬の有効性の予測の補助となるデータを作成することも可能である。
また、投薬が有効であった場合や有効でなかった場合に関するストレス度の変化のパターン(例えば経時的変化)を保存データとして図13及び図14の装置の記憶させておく。そして、この保存データを用いて、投薬を行なった計測対象者からのデータと、このストレス度の変化のパターンとを対比して投薬が有効であったか、あるいは有効であることが予測できるかに関する評価を行うこともできる。これらの評価の基準として利用するストレス度のパターンやストレス度の変化のパターンも統計学的に収集したデータに基づいて作成可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明の方法は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
NADPH酵素電極系
図3は、本発明のチオレドキシン類の酸化体、還元体に関する濃度、もしくは、酸化体と還元体の濃度比を測定する装置の一例を示す図である。図3において上面として示された部分は、各部材を上方から下方に順に展開して得られる平面図を示している。また、図3の断面として示されている図は、装置の垂直方向における断面図である。図3は、酵素電極を用いたチオレドキシンの酸化体濃度センサの感応部の基本構造の一例を示している。
この装置における感応部は、大きくは、反応槽カバー1、反応槽壁2、基板3、絶縁層4からなる。反応槽カバー1は、例えば粘着剤付のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなり、これには、試料の導入口とエアの排出口となる開口5が設けられ、それぞれ反応槽6の対角に位置している。反応槽壁2は、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)からなり、基板3の電極7、8、9上に一定量の試料(一例をあげると500μL)が保持できるように設計されている。基板3には、例えばポリイミドからなる板材を用い、基板3上には作用極8、対極9、参照極7が設けられている。それぞれの電極は、スルーホール13を通して基板3の背面に接続され、リード11を通じて集電パッド12に接続されている。スルーホール13とリード11は、あらかじめ銅張りポリイミド基板のめっき、フォトリソグラフィーによって形成しておく。
作用極8としては、ポリアミノアニリン処理したグラッシーカーボン電極を使用する。グラッシーカーボン棒から薄片を切り出し、仮の基板(不図示)に導電性ペーストで接着する。背面からリードを取り、ポリアミノアニリン処理用の参照極及び対極(不図示)を使用して、0.01Mの2-ニトロアニリンを含む1.0 Mの硫酸水溶液中で、作用極8となるグラッシーカーボンの円筒形薄片に対しポテンショスタットを用いて電位を印加する。1.5Vを10秒、−0.5Vを50秒のサイクルを1時間繰り返した後、-0.5Vを10分間印加、その後水洗し、作用極となる電極を得る。水洗後、仮の基板からこの電極を取り外し、センサ基板3へ導電性ペーストで接着する。対極9は、基板3上にTi/Ptをスパッタ製膜することによって調製する。膜厚は、一例として、Ti 100 nm、Pt 200 nmを挙げる。参照極7は、対極9と同様にTi/Ptを形成した後に、さらにスパッタでAg層を形成し、その後、塩化処理を行うことで調製する。Ag層の膜厚は、一例として500 nmを挙げる。Ag層の厚さは、使用環境、時間により膜厚を最適化する必要がある。Ag層の塩化処理としては、FeCl3の50 mM水溶液に10分間浸漬することで行う。各電極上には、一定組成、一定量の試薬層が塗布される。試薬層は、事前に一定量の酵素、必要であれば、酵素担体、メディエータ分子を混合し、容易に水溶液に溶け出すよう調製される。試薬層調製法を以下に説明する。
アルギン酸に固定化されたビオローゲン誘導体50 nmol(ビオローゲン分子相当)、NADPH 1μmol、フェレドキシン NADP+レダクターゼ0.1ユニット、チオレドキシンレダクターゼ 1 ユニットを混合した水溶液を調製する。この水溶液を作用極8に滴下後、乾燥槽で乾燥することによって形成する。
このアルギン酸層内に固定化されたビオローゲン誘導体の合成法について次に説明する。
4,4'-ビピリジンに等モルのヨウ化メチル、1,4-ジブロモブタンを加え、オートクレーブ中110℃で6時間反応させる。得られた生成物から原料を減圧溜去で除き、水溶性成分をシリカゲルのカラムにかけ、目的とする 1-メチル-1'-ブロモブチル-4,4'-ビピリジン臭化物、ヨウ化物塩(BrBuV)を得る。市販のアルギン酸ナトリウム(分子量 20000) 28.7 mgと0.15 mmolの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸(EDC)を20 mLの水に溶かす。40分攪拌した後、市販のポリエチレンオキサイドジアミン0.75mmolを加え、さらに、1時間攪拌する。この溶液を水に対して24時間透析し、BrBuV 0.3mmolを加え5℃で水に対し12時間透析することで、アルギン酸に固定化されたビオローゲン誘導体を得る。
測定に先立ち、酸化体、還元体のチオレドキシンを調製する。チオレドキシンの酸化体は、市販のチオレドキシンと充分量のペルオキシレドキシンを含むリン酸緩衝液中に充分量の過酸化水素を添加し、チオレドキシンを酸化させた後、ゲルろ過クロマトグラフィーにて分離して取得する。一方、チオレドキシンの還元体は、充分量のチオレドキシンレダクターゼを含むリン酸緩衝溶液中に充分量のNADPHを添加し、チオレドキシンを還元させた後、ゲルろ過クロマトグラフィーにて分離、取得する。
測定部をポテンショスタットに接続し、50mMリン酸緩衝液pH7.0中にチオレドキシンの酸化体を加えた溶液、50mMリン酸緩衝液 pH7.0中にチオレドキシンの還元体を加えた溶液をそれぞれ調製する。37℃に調温、窒素バブリングした後、測定部の注入口より調製した溶液を添加し、参照極に対し−0.9Vの電位を作用極に印加する。観測される定常電流量、もしくは、積算電荷量を縦軸に、添加した酸化体または還元体のチオレドキシン濃度を横軸にとると、観測される電荷量は、図4のような傾向をもつ。すなわち、チオレドキシンの酸化体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度の増大と共に、定常電流値、もしくは、電荷量が増大する。これに対し、チオレドキシンの還元体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度を増大させても、定常電流値、もしくは、電荷量が増大しない。要するに、酸化体の場合は、チオレドキシンの酸化体がNADPHからチオレドキシン還元酵素の触媒作用を通して電子を受け取り、還元体となる図5に示す反応が進行する。そして、この反応量は、溶液中のチオレドキシンの酸化体の量、すなわち溶液中で還元されうるチオレドキシンの量に比例する。これに対し、還元体の場合には、チオレドキシンがすでに還元体であるためにNADPHから電子を受け取ることができない。また、この測定部を用いてチオレドキシンの還元体量(R/mol)を定量する場合には、あらかじめ前処理として、試料溶液に一定量のペルオキシレドキシンと予想されるチオレドキシンの還元体量よりも多いモル量の過酸化水素を添加する。これにより、溶液中のチオレドキシンの還元体を酸化体としておく。その後、系中にカタラーゼを添加して余剰のH2O2を分解する。その上でチオレドキシンの酸化体の量を測定するときと同様の手法で電荷量(X/C)を測定する。そして溶液中のチオレドキシンの酸化体量(O/mol)とXを用いて(R)=(X/2F)-(O)(F: ファラデー定数)の式を用いて試料中の還元体の量を求めることができる。この場合に縦軸に算出された還元体量、横軸に酸化体、還元体溶液それぞれのチオレドキシン濃度を取った場合のグラフは、図6のような傾向をもつ。
実施例2
NADPH比色系
図7は、本発明のチオレドキシン類の酸化体、還元体に関する濃度、もしくは酸化体と還元体の濃度比を測定する装置、具体的には、比色法を用いたチオレドキシンの酸化体、還元体濃度センサの基本工程を説明するための図である。このセンサは、反応領域を構成するセルと、セル中で生じる反応に基づく光学的変化を測定するための光源と受光素子を有する検出手段とを有する。このセンサを用いた測定処理は、大きくは、光学セルの導入工程、試料導入工程、反応工程、検出工程、排出工程からなる。光学セル導入工程では、反応試薬を導入した光学セルをホルダに固定する。反応試薬の一例としては、チオレドキシン還元酵素、NADPHを溶解させたリン酸緩衝液が挙げられる。また、濃度、量の一例としては、チオレドキシン0.1ユニット、NADPH 50nmolを含む0.1 Mリン酸緩衝液pH7.0を0.5mLが挙げられる。試料導入工程では、光学セルに試料が導入される。導入される試料の量は、一例として0.5 mLが挙げられる。反応工程では、溶液は攪拌され、セルは、酵素反応に適した温度 (例えば25℃)に保持される。このときの反応時間は、チオレドキシンの酸化体が全て還元体へと変化するのに充分な時間(例えば20分間)をかけてもよいし、試料の導入からの時間を正確に計測して、変化中の吸光度を観測してもよい。検出工程では、単色光源、多色の光源、多色の光源をグレーティング等で分光した光を光学セルに透過させ、透過光を受光素子で検出する。排出工程では、測定の終了した光学セルを排出する。
反応試薬としてチオレドキシン還元酵素0.1ユニット、NADPH 50nmolを含む0.1 Mリン酸緩衝液pH7.0を0.5mLを用いる。試料としては、0から10nmolのチオレドキシンの酸化体もしくは還元体を含む0.1 Mリン酸緩衝液pH7.0を各0.5mLを用いる。各試料について、25℃、20分の反応時間をかけた際の検知部位において観測される吸光度を求める。一方、この試料の比較対象としてチオレドキシンを含まないリン酸緩衝液0.5mLを用い、25℃、20分の反応時間をかけた際の検知部位において観測される吸光度を求める。得られた吸光度について(比較対象)−(試料)の値を縦軸に、加えるチオレドキシンの濃度を横軸にとると、図8のような傾向をもつ。ここで、NADPHは、340nmに吸光係数 6220 M-1 cm-1の吸収を持つのに対し、この酸化体である NADP+は、吸収を持たない。そして、チオレドキシンの酸化体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度の増大と共に、NADPHがNADP+と変化することによって340 nmにおける吸光度が比較対象に対して減少する。これに対し、チオレドキシンの還元体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度を増大させても、NADPH の濃度は変化せず、吸光度は変化しない。要するに、チオレドキシンの酸化体を加えた溶液の場合は、チオレドキシンの酸化体がNADPHからチオレドキシン還元酵素の触媒作用を通して電子を受け取り、還元体となる図9に示す反応が進行する。この反応量は、溶液中のチオレドキシンの酸化体の量、すなわち溶液中で還元されうるチオレドキシンの量に比例する。これに対し、還元体の場合には、チオレドキシンがすでに還元体であるためにNADPHから電子を受け取ることができない。
また、このセンサを用いてチオレドキシンの還元体量(R/mol)を定量する場合には、あらかじめ前処理として、資料溶液に一定量のペルオキシレドキシンと過酸化水素を添加し、溶液中のチオレドキシンの還元体を酸化体としておく。その後、チオレドキシンの酸化体の量を測定するときと同様の手法で吸光度を測定し、その比較対象からの差分(Y)を算出する。そして添加した過酸化水素量(H/mol)、溶液中のチオレドキシンの酸化体量(O /mol)とYに対応する NADPHの量(Y'/mol)を用いて(R)=(H)+(O)-(Y')の式で求めることができる。この場合に縦軸に算出された還元体量、横軸に酸化体、還元体溶液それぞれのチオレドキシン濃度を取った場合のグラフは、図10のような傾向をもつ。
実施例3
前処理
C 型肝炎患者、および健常者の上腕から血液を採取、3000rpm、10分遠心分離し血清を取得する。この血清中のチオレドキシンの酸化体および、還元体濃度を実施例1の電極を用いて測定する。一方で、同様の血清のチオレドキシン濃度を市販のサンドイッチ ELISA 法(レドックスバイオサイエンス社製キット)で測定する。このときの測定結果は図11のような傾向をもつ。すなわちチオレドキシンの酸化体濃度を指標とした場合は、チオレドキシン全体の濃度を指標とした場合と比較して個人差が小さく、酸化ストレスに対する応答性が向上する。この理由は、測定されるチオレドキシン濃度全体と酸化ストレスの関係が、1.酸化ストレスの発生、2.生体による酸化ストレスの検知、3.チオレドキシンの誘導、4.チオレドキシンの濃度増大、のように、複数のステップを経由する間接的なものである。これに対し、チオレドキシンの酸化体濃度は、チオレドキシンが酸化を受けることによって直接上昇し、加えられた酸化ストレスを直接に反映する。そのために、チオレドキシンの全体量を測定するよりも個人差が少なく、レスポンスのよい酸化ストレスの評価が可能になるためであると考えられる。
実施例4
ストレス評価
図12は、酸化ストレスの評価の一例として、縦軸にチオレドキシンの総濃度、横軸にチオレドキシンの酸化体/還元体の比をとったものである。ここで、記号Aで示される領域に属する人物は、強い酸化ストレスを受けている可能性があると考えられ、これが疾患に起因する場合には、医薬としてのチオレドキシンの投与により症状が改善する可能性があると考えることができる。次に、記号Bで示される領域に属する人物は、チオレドキシン濃度は高いものの、強い酸化ストレスは受けていない、もしくは、かつて強い酸化ストレスを受けていたものの、現在では低下している可能性があると考えることができる。また、この記号Bで示される領域に属する人物が、酸化ストレスを生じる疾患にかかっていた場合でも、医薬としてのチオレドキシンの投与により症状が改善する可能性は高くないと考えることができる。これは、すでに還元体のチオレドキシンが体内に多く存在する状況下で、さらに外部からチオレドキシンを投与しても酸化ストレスが低減される可能性はそれほど高くないと考えられるためである。次に、記号Cで示される領域に属する人物は、どちらの指標からも強い酸化ストレスを受けていない可能性が高いものと考えることができる。最後に、記号Dで示される領域に属する人物は、チオレドキシン全体の濃度のみの判断では、強い酸化ストレスを受けていない可能性が高いものと判断される可能性が高い。しかし、最近に強い酸化ストレスを受けた可能性、すなわちチオレドキシンが誘導され、チオレドキシンの全体濃度上昇するまでの過渡期にある可能性、また、チオレドキシンの誘導能の低い体質である可能性があると考えることができる。この記号Dで示される領域に属する人物が、酸化ストレスを生じる疾患にかかっていた場合、医薬としてのチオレドキシンの投与により症状が改善する可能性は高いと考えることができる。
このように、チオレドキシンの全体の濃度を指標とする場合と比較して、チオレドキシンの酸化体/還元体比を更なる指標として導入する。その結果、現時点での酸化ストレスによる生体への影響、酸化ストレスが加わった時期、チオレドキシンを医薬として用いる場合の有効性といった新たな、そして有用な知見を得ることができる。
実施例5
酵素電極還元体測定系
図15は、本発明のチオレドキシン類の還元体、酸化体に関する濃度、もしくは、酸化体と還元体の濃度比を測定する装置の一例を示す図である。測定電極部位の基本構造は、図3において示されたものと同様で、作用極8の調製法が異なること、試薬層10がないこと、酵素層14があることが異なる。この相違点を中心に調製法について以下に説明する。
作用極8は、たとえば、カーボン電極にオスミウム錯体を含むポリマーとそれに固定化された酵素からなる。この調製法を以下に説明する。
市販のカーボンペーストスクリーンプリント法を用いてを基板3上に塗布し、UV−O3処理により親水化を行う。この上にオスミウム錯体を含むポリマー、酵素、架橋剤水溶液を混合したものを滴下(滴下量の例として50μLcm-2)し、乾燥させることによって作用極を調製する。滴下液の例としては、下記の構造を有する化合物1、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ポリエチレングリコールジグリシデルエーテルからなり、濃度の例としては、それぞれ5mgmL-1、1mgmL-1、0.2mgmL-1が挙げられる。
Figure 0005247043
化合物1の調製法について説明する。
還流管をつけた100mLのナスフラスコに20mLのエチレングリコール、0.08gの(NH42[OsCl6]、0.38gの4,4’−dimethyl−2,2’−bipyridineを加えた。次に、スターラ攪拌、窒素気流下マイクロ波合成器(Milestone microsynth)で300Wを20分間照射した。溶液を室温までさました後、0.4gのNa224を溶解させた25mLの水を加えた。室温で1時間攪拌した後に生じた黒紫沈殿をろ過、水洗して過剰の塩を除いた。その後に、ジエチルエーテルで洗浄し、未反応の配位子を除き、減圧下、60℃に加熱することで乾燥、Os(4,4’−dimethyl−2,2’−bipyridine)2Cl2を得た。
温度計、還流管を取り付けた100mLの三口フラスコに15mLの水、2.63gのアクリルアミド、0.403mLの1−ビニルイミダゾール、0.069mLのN,N,N’,N’−tetramethylethylnediamineを加えた。窒素気流下、さらに0.06gの過硫酸アンモニウムを加えた。ウォーターバスで40℃、30分間加温し、その後、反応容器を空冷した。生じた粘調な液体を強攪拌下の500mLのメタノールに滴下し沈降させ、沈降物を遠心分離で回収し、沈降物を溶かしうる最小量の水を加えて溶かし、さらに強攪拌下の500mLのメタノールにこの水溶液を滴下し沈降させた。沈降物を再び遠心分離で回収し、減圧下、60℃に過熱することで乾燥、ポリアクリルアミドーポリビニルイミダゾールの7.49/1共重合体を得た。分子の生成、ユニット比は、1HNMR測定(D2O)によって決定した。
還流管をつけた100mLのナスフラスコを用意した。これに25mLのエチレングリコール、17.5mLのエタノール、先に調製した0.19gのOs(4,4’−dimethyl−2,2’−bipyridine)2Cl2,0.22gのポリアクリルアミドーポリビニルイミダゾールの共重合体を加えた。次に、スターラ攪拌、窒素気流下マイクロ波合成器で400Wを2時間照射した。溶液を室温までさました後、20mLのエタノールを加えた溶液を、強攪拌下の500mLのジエチルエーテル溶液に滴下して生じる粘調な沈殿にさらに20mLのエタノールを加えた。これを再び、強攪拌下の500mLのジエチルエーテル溶液に滴下、得られた粘調な沈殿を減圧下、60℃に過熱することで乾燥した。乾燥した錯体ポリマー0.0755gにヒドラジン0.59g、1.6mLの水を加え、40℃で6時間加熱、150mLのエタノールを加え、減圧溜去で9割の溶媒を除いた。その後、遠心分離、上清をエーテルに滴下して生じた沈殿を回収、減圧下乾燥することで、目的とする式(1)に記載の錯体ポリマーを得た。
酵素層14としては、たとえばポリビニリデンフルオライドの膜にペルオキシレドキシンを保持させたものが使用される。保持量は、例えば250ユニットcm-2が挙げられる。これは、酵素水溶液を膜に滴下し乾燥することで調製できる。この膜は、作用極8を覆うように配置される。
測定部をポテンショスタットに接続し、50mMリン酸緩衝液pH7.0中にチオレドキシンの酸化体を加えた溶液、50mMリン酸緩衝液pH7.0中にチオレドキシンの還元体を加えた溶液をそれぞれ調製する。37℃に調温、窒素バブリングした後、測定部の注入口より調製した溶液を添加し、さらに予想されるチオレドキシンのモル量に対して1から数倍程度のモル量の過酸化水素水溶液を添加する。参照極に対し+0.2Vの電位を作用極に印加する。観測される定常電流量、もしくは、積算電荷量を縦軸に、添加した酸化体または還元体のチオレドキシン濃度を横軸にとると、観測される電荷量は、図16のような傾向をもつ。すなわち、チオレドキシンの還元体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度の増大と共に、定常電流値、もしくは、電荷量が減少する。これに対し、チオレドキシンの酸化体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度を増大させても、定常電流値、もしくは、電荷量が減少しない。この意味は、図17を用いて説明できる。チオレドキシンの還元体が存在しない場合には、溶液中のH2O2の酸化反応が、西洋ワサビペルオキシダーゼの触媒反応とオスミウム錯体の電子伝達作用により、電極上で電流、電荷として観測できる。ここで、チオレドキシンの還元体が系中に存在すると、酵素層においてペルオキシレドキシンの触媒作用によりチオレドキシンの還元体によって溶液中のH2O2が消費される反応が進行する。このため、チオレドキシンの還元体が存在する場合では、H2O2の酸化反応に起因する電流、電荷が低下し、この低下量は、溶液中のチオレドキシンの還元体の量、すなわち溶液中で酸化されうるチオレドキシンの量に比例する。これに対し、酸化体の場合には、チオレドキシンがすでに酸化体であるために西洋ワサビペルオキシダーゼが存在してもこれ以上酸化されることはないために、チオレドキシンの酸化体の濃度を増大させても、定常電流値、もしくは、電荷量が減少しない。
また、この測定部を用いてチオレドキシンの酸化体量 (O/mol)を定量する場合には、あらかじめ前処理として、試料溶液に一定量のチオレドキシンレダクターゼと予想されるチオレドキシンの酸化体量よりも多いモル量のNADPHを添加する。これにより、溶液中のチオレドキシンの酸化体を還元体としておく。その後、系中にNADPHオキシダーゼと酸素を導入し、余剰のNADPHをNADP+としておく。その上でチオレドキシンの還元体の量を測定するときと同様の手法で電荷量(X/C)を測定する。そして、溶液中のチオレドキシンの還元体量(R/mol)とXを用いて(O)=(X/2F)-(R)(F: ファラデー定数)の式を用いて試料中の酸化体の量を求めることができる。この場合に縦軸に算出された還元体量、横軸に酸化体、還元体溶液それぞれのチオレドキシン濃度を取った場合のグラフは、図18のような傾向をもつ。
NADPH修飾電極系
図19は、本発明のチオレドキシン類の酸化体、還元体に関する濃度、もしくは酸化体と還元体の濃度比を測定する装置、具体的には、修飾電極を用いたチオレドキシンの酸化体、還元体濃度センサの基本工程を説明するための図である。このセンサは、反応領域を構成するセルと、セル中で生じる反応に基づく電気化学的変化を測定するための電気化学測定セルを有する検出手段とを有する。このセンサを用いた測定処理は、大きくは、試料の導入工程、薬剤導入工程、反応工程、反応溶液導入工程、検出工程、排出工程からなる。試料導入工程では、反応容器に一定量の測定試料が導入される。薬剤導入工程では、反応に用いられる薬剤が反応容器に導入される。反応試薬の一例としては、チオレドキシン還元酵素、NADPHを溶解させたリン酸緩衝液が挙げられる。反応工程では、反応工程では、溶液は攪拌され、セルは、酵素反応に適した温度に保持され、試料と加えられた薬剤との反応が行われる。このときの反応時間は、チオレドキシンの酸化体が全て還元体へと変化するのに充分な時間(例えば20分間)をかけてもよいし、試料の導入からの時間を正確に計測して、変化中のシグナルを後の検出工程で観測してもよい。その後の、反応溶液導入工程では、電気化学セルが反応セルを兼ねていない場合には、反応後の溶液は、電気化学セルに移される。検出工程ではポテンショスタットから金電極に電位が印加され、応答電流、電荷が検出、記録される。その後、排出工程では、測定後の反応液が排出される。
図20は、本発明のチオレドキシン類の還元体、酸化体に関する濃度、もしくは、酸化体と還元体の濃度比を測定する装置の一例を示す図である。測定電極部位の基本構造は、図3において示されたものと同様で、作用極8の調製法が異なること、試薬層10がないことが異なる。この相違点を中心に調製法について以下に説明する。
作用極8は、たとえば、金電極と、金電極上に修飾された分子、例えば pyrroloquinoline quinone (PQQ) からなる。この調製法を以下に説明する。
基板3上にチタンを下地として金を蒸着、スパッタリング等で製膜する。金電極をUV−O3処理により清浄化を行う。この上に cystameine 水溶液を滴下し、水洗する。その後、カップリング材であるN-(3-Dimethylaminopropyl)-N′-ethylcarbodiimide hydrochloride(EDC)を含むPQQの緩衝溶液溶液を滴下し、緩衝溶液で水洗する。薬剤としてチオレドキシン還元酵素0.1ユニット、NADPH 50nmolを含む0.1 Mリン酸緩衝液pH7.0を0.5 mLを用いる。試料としては、0から10nmolのチオレドキシンの酸化体もしくは還元体を含む0.1 Mリン酸緩衝液pH7.0を各0.5 mLを用いる。各試料について、25℃、20分の反応時間をかけた際の検知部位において観測される電流値、または電荷量を測定する。一方、この試料の比較対象としてチオレドキシンを含まないリン酸緩衝液0.5 mLを用い、25℃、20分の反応時間をかけた際の検知部位において観測される電流値、または電荷量を求める。
電極部をポテンショスタットに接続し、反応溶液を37℃に調温、窒素バブリングした後、測定部の注入口より調製した溶液を添加し、参照極に対し0.2 Vの電位を作用極に印加する。観測される定常電流量、もしくは、積算電荷量を縦軸に、添加した酸化体または還元体のチオレドキシン濃度を横軸にとると、観測される電荷量は、図21のような傾向をもつ。
チオレドキシンの酸化体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシン濃度の増大と共に、定常電流値、もしくは、電荷量が減少する。これに対し、チオレドキシンの還元体を緩衝液に加えたサンプルでは、チオレドキシンの濃度を増大させても、定常電流値、もしくは、電荷量が減少しない。この現象を、図22を用いて説明する。電極では、PQQを通したNADPHの酸化反応に起因する電流が観測され、この電流値、もしくは電荷量は、溶液中のNADPHの濃度に比例して増減する。その上で、チオレドキシンが酸化体の場合は、チオレドキシン還元酵素の触媒作用により、NADPHによって還元されて溶液中のNADPHの濃度が低下する。これに対し、チオレドキシンが還元体の場合には、もはや NADPHによって還元されえないために溶液中のNADPHの濃度は、低下しない。
また、このセンサを用いてチオレドキシンの還元体量(R/mol)を定量する場合には、実施例2で記載したように前処理として、溶液中のチオレドキシンの還元体を酸化体としておく手法が利用できる。
本発明によれば、チオレドキシン類の酸化体、還元体に関する濃度、もしくは酸化体、還元体濃度に関する比率を測定する装置を提供でき、これらを指標として用いたストレスの評価を行う装置として利用でき有用である。
ストレスの評価として2種類の指標を用い2軸で座標上の位置を用いる評価方法の例である。 ストレスの評価として複数の指標を用い多軸で描き出される図形の形状を用いてパターンを評価する方法の例である。 酵素電極を用いたチオレドキシンの酸化体濃度センサ感応部の概略図である。 酵素電極を用いて測定した電流、もしくは積算電荷量のチオレドキシン濃度依存性の概念図である。 酵素電極で進行するチオレドキシン酸化体の還元に関する一連の反応の模式図である。 酵素電極を用いて測定したチオレドキシンの還元体量の、添加チオレドキシン濃度依存性の概念図である。 比色法を用いたチオレドキシンの酸化体、還元体濃度センサの概念図である。 比色法を用いたチオレドキシンの比較対象からの吸光度変化のチオレドキシン濃度依存性の概念図である。 反応工程で進行するチオレドキシン酸化体の還元反応の模式図である。 比色法を用いて測定したチオレドキシンの還元体量の、添加チオレドキシン濃度依存性の概念図である。 C 型肝炎患者と健常者のストレス評価をチオレドキシンの酸化体濃度、もしくは、チオレドキシン全体の濃度を指標として行った結果の概念図である。 ストレスの評価としてチオレドキシン全体の濃度、チオレドキシンの酸化体/還元体比の2種類の指標を用いた場合の2軸評価の概念図である。 ストレス度情報取得装置の構成の一例を示すブロック図である。 ストレス度情報取得装置の構成の一例を示すブロック図である。 酵素電極を用いたチオレドキシンの還元体濃度センサ感応部の概略図である。 酵素電極を用いて測定した電流、もしくは積算電荷量のチオレドキシン濃度依存性の概念図である。 酵素電極で進行するチオレドキシン還元体の酸化に関する一連の反応の模式図である。 酵素電極を用いて測定したチオレドキシン量の、添加チオレドキシン濃度依存性の概念図である。 NADPH 修飾電極系を用いたチオレドキシンの酸化体、還元体濃度センサの概念図である。 修飾電極を用いたチオレドキシンの還元体濃度センサ感応部の概略図である。 NADPH 修飾電極系を用いた電流、電荷量のチオレドキシンの酸化体、還元体の濃度依存性の概念図である。 NADPH 修飾電極で進行するチオレドキシン還元体の酸化に関する一連の反応の模式図である。
符号の説明
1 反応槽カバー
2 反応槽壁
3 基板
4 絶縁層
5 試料導入口、エア排出口
6 反応槽
7 参照極
8 作用極
9 対極
10 試薬層
11 リード
12 集電パッド
13 スルーホール
14 酵素層

Claims (4)

  1. チオレドキシンの酸化体を測定するための測定装置と、
    前記チオレドキシンの酸化体の濃度から酸化ストレス度を分類する分類手段とを有し;
    前記チオレドキシンの酸化体を測定するための測定装置は、
    チオレドキシン還元酵素と検出部とを有し、
    前記検出部は、前記チオレドキシン還元酵素が前記チオレドキシンの酸化体と反応したことを検出する検出部である
    ことを特徴とする酸化ストレス度分類装置。
  2. 前記検出部は、導電部材と前記チオレドキシン還元酵素とを有する酵素電極である
    ことを特徴とする請求項1に記載の酸化ストレス度分類装置。
  3. 前記検出部は、前記チオレドキシン還元酵素を収容するための収容部と前記収容部を透過した光を受光する受光部である
    ことを特徴とする請求項1に記載の酸化ストレス度分類装置。
  4. 前記収容部は試料を収容するための光学セルであり、
    前記受光部は前記光学セルを透過した光を受光するための受光素子である
    ことを特徴とする請求項3に記載の酸化ストレス度分類装置。
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